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ホーチミンにおける新業態小売業 (1)中心市街地の既存小売業の概況

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ホーチミンにおける新業態小売業 (1)中心市街地の既存小売業の概況
ホーチミンにおける新業態小売業
3 台のバイク程度しか止まれず、一時期に集
中的な集客は望めない体制としか思えない。
(1)中心市街地の既存小売業の概況
また、市街地型ショッピングセンター(S
ホーチミンの公設市場は、非常に活気に満
C)は日本のものとは大きく異なっている。
ちたもので我々が経験したことがない場所で
東京の丸ビルなどの商業施設に似ていて、地
あった。狭い通路にぎっしりと商品が積まれ、
下に大規模の駐輪、駐車場を備えているもの
そのすき間に従業員がいて、精一杯の声掛け
だ。ホーチミンの人気市街地SC(VINC
をしている。想像するに華やかなりし頃の大
OM CENTER、下層階が商業施設)では、
阪の天満・黒門市場、船場・本町繊維街のそ
日本国名の企業(現地法人)も出店している。
れであり、今の京都錦市場を縦横にそのまま
拡大したような市場になっている。700 万人
を超えるホーチミン市民の存在を十分に確認
しうる市場であり、外国人観光客が昼も夜も
多い。電卓を手元に置いて粘り強く価格交渉
する姿が非常に印象に残った。私でもおおよ
そ半額にまで下がる価格には、何を信用すべ
きか疑問に思ったものである。
代表的なSCの概観
この市街地SCは、少ない富裕層の奪い合
い競争が激しいので集客できていない施設で
は空き店舗ばかりの施設も見られた。ホーチ
ミン市民は、まだ所得中間層が充実していな
公設市場の雰囲気
いために、施設を維持するために出店企業に
は、少ない売上を覚悟し、必要経費をかけな
この公設市場と道路沿いの専門店、ショッ
いという経営努力が必要と推測された。
ピングセンターがホーチミン市街地の中心的
な小売業である。少し郊外に入ると現地の人
(2)新業態の小売業
向けのショップ(バイク関連、飲食)が多い
前述したようにホーチミン市街地では、公
が、中心市街地には、観光客、富裕層向けの
設市場、道路沿い専門店、市街地SC、外食
ショップが存在している。
などの道端露店を中心に古い商売が地元の人
このショップ(専門店)は間口が概ね狭く、
向けに(観光客向けにも)欠かせない状況で
20 坪未満の店が多く限られた品揃えで常連、
あるが、当地では小売業の新しい業態が違和
観光客を待ち受けている。しかし、店頭には
感なく同居している。ホーチミンでの移動手
段は圧倒的にオートバイであるため、大型店
きていない。化粧品の販売に市民の関心が高
舗ではオートバイの駐輪場を完備している。
まるのにもう少し時間がかかりそうな感じで
(市街地SCであっても地下に大型の駐輪施
ある。
設が準備されており、満車状態となってい
る。)
サークルK
地元系のスーパーマーケット
市街地のコンビニエンスストア(3坪程度
その業態はスーパーマーケット(視察でき
のサークルケイ)は、まったく駐車スペース
たのは、地場系)およびコンビニエンススト
を確保できていないが、加工食品中心で競合
ア(視察できたのはファミリーマート、サー
もなく品揃えも限られているが、繁盛店であ
クルケイ)であり、また、郊外型大型SC(視
った。このようなオートバイ中心の生活スタ
察できたのは、ロッテ、イオン)がある。
イルでは道端の露店のほうが手軽なせいか、
これらの商業施設はホーチミン市内に地場
未だにこうしたお店にも根強いニーズがある。
系、外資系(日本など)として存在する。こ
コンビニエンスストアも市街地を中心に
れらの業態は、ホーチミン市内に圧倒的に多
徐々に浸透しているものの、実感としては利
く居住する若年層をターゲットとした展開を
用経験のある日本人などの外国人が気軽に立
しており、特に外資系ではおしゃれなデザイ
ち寄っていたように思う。
ンやブランド商品を品揃えするなど、地元の
ごく限られた富裕層向けに営業している(現
状では繁盛しているとは言い難いけれど)。
スーパーマーケットは、市内で地場系の施
設が展開されており、狭い店舗に衣料、飲食
(2 階)、食品、日用品・雑貨(1 階)が品揃
えされている。衣料品はワゴン展開の安価な
ものが多く、食品は日本でもおなじみのロッ
テ、日清食品、エースコックなどの食品が並
んでいる。化粧品などもあり、日本で言うと
ころの美容部員が一部見られたが、活躍はで
ファミリーマート
なお、郊外型ショッピングセンター(SC)
お客の入り込みから判断すると、これら生
には韓国系、日本系の企業が存在する。規模
鮮食品、加工食品、および子供向けゲームセ
に違いが見られるが、視察できたロッテ(韓
ンターの分野では現地化が図られそうに思う。
国)は、日本の昭和 50 年代頃の大手量販店の
しかし、その他衣料品、化粧品、雑貨の分野
ように高層 4 階建て店舗で、4 階が食品売り
については事業展開の可能性が低く見受けら
場となっている。上からのシャワー効果を狙
れる。それは、需要がホーチミン都市部に住
っているのか、3 階は量販低価格の衣料品な
む富裕層に限定されることから、現時点では
ど、2 階はコーディネート衣料、家電などを
現地の人たち向けに浸透させていくには、ま
含む(当地での)高級消費財売場となってい
だまだ時間を要するように推測される。
た。
また、小売業、飲食業などの多店舗化に関
しては、現地法人にしないと進めにくい法制
度も残っているので、進出を考える企業には
その対応が重要な要因となる。
(津田
韓国ロッテのSC
開店したばかりのイオンSCは、店舗正面
に大きなバイク駐輪場を用意して、大きな日
本国内の施設と変わらない雰囲気で、日本か
ら導入した外食テナント、食品売り場にはホ
ーチミンでは見かけない新しい商品、新しい
売り方を現地の人たちに提供している。
イオン正面のバイク駐輪
均)
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