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September 2009
二輪車用新型
オートマチックトランスミッション
本田技研工業株式会社
広報部
はじめに
H o n d aはこれまでお客 様 の 生 活 の 役 に 立 つ 商 品 の 提 供を目的 に 、簡 単な操 作 で 運 転 の
できるオートマチック技 術を搭 載した 二 輪 車を開 発・販 売してきました 。1 9 5 8 年 にはオート
マチック時 代 のさきがけとして、自動 遠 心クラッチ 機 構を備え、クラッチ 操 作 無しでギアを変 速
しながら運 転 ができるスーパーカブ C 1 0 0を 発 売 。1 9 7 7 年 発 売 のスポーツバイクの エアラ
( 7 5 0 c c )には 、大 型 二 輪 車 初 のオートマチック機 構としてトルクコンバーターを搭 載 。さらに
1 9 8 0 年 発 売 のタクトには H o n d a 独 自 技 術 の 無 段 変 速 機 構( V マチック)を採 用 するなど、
新 機 構を開 発しながら現 在 に 至っています 。
現 在 、アジアを中 心とした新 興 国 において、二 輪 車 は 生 活 に 密 着した移 動 手 段 や 趣 味 の
商 品として 広く活 用され ており、特 にオートマチック・トランスミッションはスクーターを中 心 に
広く普 及しています 。そのような中 、利 便 性と耐 久 性 の 高さで 、多くの お 客さまからご 愛 顧
いただい ているスーパーカブタイプ にも、フルオートマチック化を 望 む 声 が 高まっています 。
今 回 発 表 する「 C V マチック」は 、これらの 市 場 ニーズに 合ったカブタイプ 用 のオートマチック
技 術として 、お客 様 の 利 便 性を飛 躍 的 に 向 上 することで 、新 興 国 市 場 に 新しい 価 値を提 案
していくものと考えています 。
-1-
CVマチック 開発の狙い
手 軽 に 、そして 便 利 に 使えることから、今 やコミューターは 世 界 中で 多くの 人 々に 愛 用され
ています 。その 使 わ れ 方 や 使 用 環 境も、初 心 者 の 入 門 用として 、タフネスさを 要 求される
業 務 用として 、あるいは 道 路 整 備 が 十 分 ではない 国 での 貴 重 な 移 動 手 段としてなど、多 種
多 様なものとなっています 。
近 年 、世 界 的な潮 流として、こうしたコミューターに 求 められ ているのが 、ギアチェンジ操 作
の 不 要なオートマチック・トランスミッションを搭 載したエンジンです 。コミューターのエンジンの
A T 化 に つい ては 、スクーターに 代 表されるV ベ ルト式 無 段 変 速 機 構を採 用したエンジンが
一 般 的 で す が 、今 回 H o n d a は 既 存 の V ベ ルト式 無 段 変 速 機 構をよりコンパクトにした C V
マチックを開 発 。バネ上に配 置される小 型モーターサイクルエンジンのクランクケースに、Vベルト
式 無 段 変 速 機 構 の 搭 載を可 能としました。
これによりエンジン搭 載 位 置を大きく変 更 することなく、スクーター以 上に様 々なシチュエー
ションで使 用されるうえ耐 久 性も要 求されるスーパーカブタイプの 車 体にも搭 載が可 能となり、
コミューターのさらなる用 途 拡 大 が 図 れます 。
カブタイプ
スクータータイプ
カブタイプは、エンジン搭載位置により、スクータータイプと比べ容易に大きなタイヤサイズを選択できる。
-2-
CVマチックの構造
■ エンジン形 態 の 違 い
CVマチックエンジンのサイズは前後長・左右幅ともに、ベースとなるマニュアル・
トランスミッション
( 以 下 M T )エンジンに比 べ やや 大きくなりますが、M T エンジンのフレームに搭 載 可 能なサイズ
に 収 めることができ、ベース車 両 の 特 長を活 かしたままオートマチック化 することができます 。
V ベ ルト式 無 段 変 速 機 構 自 体 の 基 本 構 造 は 従 来 のスクーターと同じで す が 、プーリーの
軸 間を約 半 分 にしてコンパクト化したことと、クランクケース右 側 に 変 速 機 室を配 置した点 が
大きく異なっています 。
カブタイプ
スクータータイプ
エンジンサイズ比較
CVマチック
マニュアルトランスミッション
Top View
Side View
-3-
CVマチック
エンジンの特徴 (1)
■ 効 果 的な冷 却 マネジメント
Vベルト式無段変速機構は、ベルトとプーリーの摩擦熱、
そしてエンジン油温などにより変速機室
の温 度が著しく上 昇してしまいます 。軸 間を短くしたプーリーとベルトをエンジンのクランクケース
に 搭 載 するC V マチックの 場 合 、既 存 の V ベルト式 無 段 変 速 機 構 以 上 にその 影 響 が 大きく、
変 速 機 室の冷 却がより重 要となります 。
C Vマチックでは導 風プレートとリブ形 状 、そして導 風 構 造に工 夫を凝らすことなどにより、冷 却
風を変 速 機 室 全 体 へくまなく行き渡らせ 、変 速 機 室 内 の 温 度を下げる冷 却 構 造を採 用して
います( 特許出願中)。
さらに走行風の当たりやすいシリンダーブロック側方に、小型オイルクーラー
を配 置 。変 速 機 室と隣 接 するオイル 室 のオイルを積 極 的に冷 却 することで、変 速 機 室 の 温 度
上 昇を抑えています 。こうした変 速 機 室 の 効 果 的な冷 却 は 、変 速 機 の 耐 久 性 向 上 に 大きく
寄 与しています 。
また冷却用の吸・排気ダクトは、両方とも変速機室上部に配置。道路冠水が多発するような環境下に
おいても、ダクトが水面上に出ている限りは変速機室に水が入ることはなく、走行不能となるベルトの
スリップは発生しません。
冷却風の流れ
OUT
冷却風出口
IN
冷却風入口
オイル冷却通路
●CVマチック
外気を上から吸って上に吐き出す構造。
冠水路面などでも、
ダクトが水面上に出てい
れば変速機室に水が入ることはなく、
ベルトの
スリップは発生しない。
小型オイルクーラーでエンジン油温を下げるこ
とで、変速機室温度も下げている。
ドライブプーリー
ドライブベルト
ドリブンプーリー
冷却風入口
IN
冷却風の流れ
ドライブベルト
ドリブンプーリー
ドライブプーリー
OUT
冷却風出口
-4-
●既存のベルトコンバーター
外気を上から吸って下に吐き出す構造。
冠水路面などでは、
下部の排気ダクトから水が
入るので、
ベルトのスリップが発生してしまう。
エンジンの特徴 (2)
■ 耐 久 性を確 保 する湿 式クラッチ
既 存 の V ベルト式 無 段 変 速 機 構が乾 式
クラッチを使用しているのに対し、CVマチック
はスーパーカブやATVで採用実績のある湿式
クラッチを組み合わせて採用することで、従来
のスーパーカブと同 等 の 耐 久 性を確 保して
います。
■ 耐 久 性 に 優 れるドライブ ベ ルト
ベルトが短くなり、従来よりも屈曲回数が多くなることへの対策として、ベルトの材質に高弾性ゴム材
を採用することで、従来のスクーターと同 等 以 上の耐 久 性を持たせています。
-5-
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