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平成 18 年度「宇宙ストレス生物学研究班WG」活動報告書

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平成 18 年度「宇宙ストレス生物学研究班WG」活動報告書
平成 19 年 4 月 17 日
平成 18 年度「宇宙ストレス生物学研究班WG」活動報告書
信州大学医学部
1.
構成メンバ(あいうえお順)
氏
名
所属
浅島
誠
東京大学総合文化研究科
石岡憲昭
宇宙航空研究開発機構
石原昭彦
京都大学人間・環境学研
究科
泉
郎
宇宙航空研究開発機構
龍太
大石浩隆
佐賀大学医学部
大森克徳
宇宙航空研究開発機構
鎌田源司
宇宙航空研究開発機構
黒谷明美
宇宙航空研究開発機構
芝
京都府立医科大学医学部
大
鈴木ひろ
日本宇宙フォーラム
み
曽我部正
名古屋大学医学研究科
博
高橋昭久
奈良県立医科大学医学部
二川
健
徳島大学ヘルスバイオサ
イエンス部
東谷篤志
東北大学生命科学研究科
東端
晃
宇宙航空研究開発機構
藤本信義
宇宙航空研究開発機構
馬嶋秀行
鹿児島大学医歯学総合研
究科
矢野幸子
宇宙航空研究開発機構
山崎
宇宙航空研究開発機構
丘
宇佐美真一
2. 本年度 WG 会合開催実績
(1)第1回:平成18年12月23日
3. 活動目的
平成16年度、平成17年度の活動を踏
まえ、研究班WGの名称を「宇宙ストレス
生物学」とし、
「Human Exploration」に向
け、個体のストレス応答を分子レベルから
の解析を中心に、宇宙医学や関連する研究
班 WG と連携しながら宇宙実験の具体的テ
ーマ、利用計画や宇宙生物科学における宇
宙ストレス生物学の今後の方向性、方針を
明確にしていくことを目的として活動し
ている。現在までの活動内容について報告
する。
4. 活動内容
4.1. 宇宙ストレス生物学の意義
宇宙環境、特に微少重力と宇宙放射線は
生物個体や組織、細胞に対するストレス刺
激である。宇宙ストレス生物学は宇宙環境
によるストレス応答をその生物学的過程
の基本的単位である分子、細胞レベルから
組織、個体レベルまで視野に入れた研究で
ある。ストレス応答は、個々の細胞の内因
性イベントや環境要因への細胞の反応に
集約される。従って、この分野の研究は発
生、筋、骨、物質代謝、心循環系やその他
のホメオスタティックな系、免疫系、運動
感覚系を含む宇宙生物学をその根幹から
支えるものと考えられる。
ヒト遺伝子を始め多くのモデル生物の
遺伝子が明らかにされ、ゲノミックス、プ
ロテオミックスからバイオインフォマテ
ィクスという機能と情報を一体とした新
しい学問分野に発展している。性格や行動、
精神活動までもが遺伝子支配を受けてい
るとすれば、その発現の最小単位である細
胞を中心に宇宙環境ストレスが細胞にど
のような影響を及ぼすかを系統的、網羅的
に解析することは、今後ヒトが宇宙環境下
に長期滞在する上での生物学的課題克服
に寄与するだけでなく、ヒトの活動領域を
地球から宇宙へ拡大するための科学的、技
術的基盤となる。さらに地球上の1Gとい
うストレスの下で進化してきた地球生命
が宇宙環境に応答し適応するメカニズム
を理解することで、生物の多様性、適応性
の基本的なメカニズムの解明につながる
はずである(図1参照)
した。
図2.宇宙ストレス生物学の研究課題
と利用可能な実験生物
4.3. 細胞の重力ストレス応答に関する研
究成果
上記研究課題(1)に関連した重力スト
レス応答に関して、地上模擬微小重力実験
として小型クリノスタットで培養した血
管内皮細胞を用い実験を行った(図3)。
図1.宇宙ストレス生物
4.2. 宇宙ストレス生物学の研究課題
2006 年から 2013 年における研究課題と
予想される成果と将来の展望を検討した。
ストレス応答のバイオインフォマティク
スから免疫系や筋骨格系、神経系、放射線
影響等に焦点を絞り、時系列的に、
(1)重力ストレスセンサーとそのネッ
トワーク、
(2)宇宙環境ストレス応答の基礎生物
医学、
(3)宇宙環境ストレスの長期的影響、
の3つの研究課題と利用可能な生物種を
設定し(図2参照)、それぞれ具体的実験
テーマを提案、実施することとした。2013
年以降は生理的機能とストレスの関係を
明らかにしていくことで、生物の多様性の
基本的なメカニズムの解明やヒトの活動
領域を地球から宇宙へと拡大するための
科学的、技術的基盤の確立を目指すことと
図3.三次元クリノスタット
クリノスタットで重力ベクトルを変化さ
せた環境下では、細胞の増殖がコントロー
ルに比べて 80%程度に抑制されるが、死細
胞はほとんど無くアポトーシスも起こし
ていなかった。これはクリノスタット培養
では増殖の速度あるいは細胞周期に影響
を及ぼすものと考えられた(図4参照)。
また、細胞骨格のチューブリン抗体を用い
た形態観察の結果、コントロールでは中心
体が明確であったが、クリノスタット培養
細胞では 70~80%の細胞で中心体形成が確
認されなかった(図5矢印)。さらに微小
管繊維の密度もコントロールに比べ低か
った(図5)。
図4.血管内皮細胞の増殖(A)と
生存率(B)
図5.微小管繊維の免疫染色像と
中心体(矢印)
以上の結果は、リンパ系培養細胞を用いた
宇宙実験の結果と同様であり(図6)、ク
リノスタット実験の有効性を示すと同時
に微小管やその関連タンパク質群が細胞
の重力ストレス応答に関与することを明
らかにした。
微小管観察と同様にローダミン・ファロ
イジンでアクチンファイバーを染色した
結果、コントロールではアクチンストレス
ファイバーの形成が観察されたが、クリノ
スタット培養細胞では少なく、異なる形態
を示した。この結果も宇宙実験の結果と良
い一致をしめしており、重力変化が明らか
にアクチンファイバー再構成に影響する
ことを示している。
図5.宇宙実験:細胞内微小管形成への微
小重力影響
図6.
4.5.研究提案
研究班 WG 活動の目標の一つである公募
地上研究への提案と研究費獲得に関して、
班員から提案された以下の2研究課題が
採択された。
・重力変化に対する内耳末梢前庭器の可塑
的応答に関する研究(共同研究者:宇佐美)
・宇宙フライトにより発現変動するゲノム
遺伝子の網羅的な機能解析とデータベー
ス構築(代表研究者:東谷、共同研究者:
東端)
5.
成果
宇宙ストレス生物学研究班WG活動報告、Space
Utiliz Res. 23, 349-350, 2007.
Seki,M., Imamizo-Sato,M., Yamazaki,T., Ishioka,N.,
Higashibata,A. Suppression of Rho activation process
due to simulated microgravity induced cytoskeletal
disorganization, Biological Sciences in Space, 20,
75-79, 2006.
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