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生活道路におけるハンプ等による 速度抑制対策について

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生活道路におけるハンプ等による 速度抑制対策について
生活道路におけるハンプ等による
速度抑制対策について
国土技術政策総合研究所 道路交通研究部 道路研究室
1.はじめに
通学路をはじめとする生活道路での歩行者の交通安全の確保のためには、車両の速度抑制が重要な要素
のひとつである。図 1 に示すとおり、事故時の車両速度が高いほど事故件数のうちの死亡事故の割合が高
くなること等から、車両速度の抑制が交通事故の軽減に寄与することが期待される。
車両速度抑制のひとつの方法として、道路に凸部(ハンプ)や狭さく部、屈曲部を設け(図 2)、速度
を出しにくくする方法が有効であるが、現状ではこれらの適用方法は体系的にはとりまとめられておらず、
十分に浸透しているとはいいがたい。そのため国土技術政策総合研究所では、それらの対策導入支援のた
めの研究として、ハンプ等の効果的な設置方法に関する調査や、歩行者優先の道路とするための対策立案
手法に関する検討等を行っている。
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今回は、これらの研究のうち、平成 26 ∼ 27
60%
年度にかけてつくば市と連携して実施した、通
50%
学路交通安全対策に関する実証実験について紹
介する。
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狭さく部
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交通事故総合分析センターのデータをもとに国総研が作成
※死亡事故率=死亡事故件数÷死傷事故件数
※ITARDAの平成22年∼平成26年の市町村道のデータを使用
屈曲部
※第一当事者が四輪車、
第二当事者が歩行者の事故データを使用
図 1 死亡事故率と速度の関係
図 2 速度抑制対策
2.実証実験の概要
実証実験は、つくば市立要小学校周辺地区(図 3、4)で行われた。対象地区は、国道と県道に接しており、
これらの行き来に小学校の前を通る市道を利用する交通が見られる。また、大規模な病院が立地しており、
病院を発着地とする交通も多く見られる地区である。周辺区域は、対策実施と並行してゾーン 30 に指定
道路行政セミナー 2016. 1 1
された。実験は、交通安全対策を効果的・効率的に進める手法を検討するため、実際の対策を行う一連の
流れの中で、対策立案、効果計測について調査を行った。
図 3 つくば市立要小学校周辺地区
図 4 通学路の様子(対策前)
3.交通安全対策の立案
住民の立場からの交通安全上の課題箇所を把握するために、小学校の保護者等を対象とした web 調査
を実施し、29 地点(195 件)の情報を入手した。また、学校の授業の中で児童(小学六年生)が web 閲
覧と課題箇所入力を実施した。これらの情報に加え、現地踏査、交通データ(簡易な現地測定による交通
量・車両速度、プローブカーデータによる車両速度、交通事故情報)分析、関係者協議等を経て、図 5 に
示す交通安全対策を立案した。
対策では、車の速度低下等を目的としたハンプ、狭さくの設置、歩行者が安全に道路を横断するための
2 道路行政セミナー 2016. 1
スムース横断歩道の設置、歩行者に配慮したコンパクトなハンプ(スリムハンプ)の設置、運転者・歩行
者の注意喚起を目的としたエンジベルト(路肩のカラー化)、路面標示や看板の設置、見通しが悪い要因
となっている植栽の剪定等が計画され、つくば市により実施された。今回の課題箇所抽出と対策立案につ
いて、対策立案にかかわった行政関係者ら 8 名に聞き取り調査を行ったところ、メリットとして、「多面
的な検討ができる」「対策案の絞り込みが容易になる」などの回答が聞かれた。
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図 5 立案・実施された対策
4.効果計測
各対策箇所において、目的に応じた効果計測を行った。
(1)車両速度の抑制
ハンプと狭さくの併用箇所では、速度低減効果を確認した(図 6)。調査は、通勤・通学時間帯であ
る 7:30 ∼ 8:30 に南方向へ走行した車両を対象とし、単独走行車両(対向車や歩行者等の影響を受け
ていない車両)について計測したところ、ハンプと前後各 20m を含む区間の速度が、42.0km/h から
34.3km/h に低下した。特に 40km/h を超える車両の割合は、62% から 17% に大きく減少した。また、
狭さく部でのすれ違い時に譲り合いが発生し、速度が低下した。すれ違いによる譲り合いは、前後です
れ違った 21 台中 9 台に発生し、狭さく部でのすれ違い車両の速度は 21.5km/ h となった(狭窄部以外
でのすれ違い車両の速度は 31.0km/h )。
道路行政セミナー 2016. 1 3
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(N=64)
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(N=50)
(N=64)
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17%
40km/h㉸
図 6 狭さくとハンプの併用箇所での効果
(2)注意喚起
スムース横断歩道(図 7)、スリムハンプ(図 8)の設置した箇所では、自動車への注意喚起の効果が
確認された。また、エンジベルト(図 9)の設置では、歩行者優先の意識が向上したことが確認された。
あわせて、地区への進入口の狭さく(図 10)設置では、左折進入時の走行位置が歩行部分から離れる
とともに、意識調査からも事故の危険性が低下したとの効果が確認された。
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図 7 スムース横断歩道の効果
4 道路行政セミナー 2016. 1
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図 8 スリムハンプの効果
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図 9 エンジベルトの効果
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(N=50)
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図 10 交差点狭さくの効果
5.おわりに
このように、危険箇所の課題に応じてハンプ等の対策を適切に実施することで、歩道等の設置が難しい
道路においても、安全性の向上が可能であると考えられた。現在、国土技術政策総合研究所では、今回紹
介した事例等をもとに、ハンプや狭さく等の適切な配置方法、効果的な設置形状等についてとりまとめを
行っているところである。
道路行政セミナー 2016. 1 5
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