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局部発振器を内蔵した 周波数コンバータの群遅延測定

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局部発振器を内蔵した 周波数コンバータの群遅延測定
局部発振器を内蔵した
周波数コンバータの群遅延測定
Application Note 1408-18
はじめに
ミキサや周波数コンバータは、無線通信システムと衛星通信システムの心臓部分で
す。これらの周波数コンバータの周波数応答と位相リニアリティの要件は、特に、
衛星システムで使用される周波数コンバータの場合は厳しくなります。特に、その
相対/絶対群遅延特性が重要ですが、その測定には新しい手法が待望されています。
それは、内蔵 LO(ローカル発振器)にアクセスできないという問題があるからです。
仮に、内蔵 LO にアクセスできるとしても、それをフェーズ・ロックするための周
波数標準(通常 10 MHz)が得られないこともあります。
このアプリケーション・ノートでは、外部周波数標準にフェーズロックできない
LO 内蔵の周波数コンバータ(DUT)をテストするための新しい手法を説明します。
その特長は、DUT IF 出力周波数にトラッキングして基準ミキサの外部 LO が調整
されることです。すなわち、DUT に内蔵された LO のオフセットとドリフトに対
応するように、基準チャネル・ミキサに使用されている外部 LO の周波数を調整で
きる DUT の IF 周波数のトラッキングです。さらに、位相シフトまたはわずかな周
波数エラーに対応するために、DUT の IF の位相トラッキングも行います(遅延測
定にはオフセットが 1Hz 未満である必要があります)。この周波数トラッキングは、
フェーズロック・ハードウェアの追加が必要のないソフトウェアによって行います。
この新しい測定手法である内蔵 LO 測定(PNA および PNA-X オプション 084)では、
周波数コンバータ・アプリケーション(FCA、オプション 083)オプションが必要
です。測定確度は内蔵 LO の周波数安定度に依存します(付録 A 参照)。
2
測定システムの詳細
校正システムと測定システムを図 1 と図 2 に示します。測定システムの校正は、
Apllication Note 1408-3(周波数コンバータ測定オプションを用いた測定/校正確度
の向上、カタログ番号 5988-9642EN)に記載された手順を実行します。校正プロセ
ス中、基準ミキサと校正ミキサは同じ LO 信号源を共用します。その LO 信号源と
して、PNA-X は第 2 信号源オプションが使えますが、標準の PNA では外部信号源
を使います。
校正
測定
校正ミキサ/
フィルタ
10 MHz タイムベース
10 MHz タイムベース
図 1a. PNA 校正
図 2a(校正)
図 1b. 測定
図 2b(測定)PNA-X の校正/測定のセットアップ
DUT を測定中は、外部 LO ではなく DUT の LO を使用します。LO のおおよその
周波数は既知であることを前提にしています。LO 周波数を求める方法には以下の
2 つがあります。
●
Broadband 掃引: 内蔵 LO の周波数の粗い測定を、選択したデータ・ポイント
を中心に、選択した周波数スパンで行います。DUT への入力信号は一定です。
基準ミキサは使用しません。B レシーバを使用して DUT の出力を測定します。
掃引の分解能は、選択した Tuning IF Bandwidth の約 1/3 です。
●
Precise 掃引:最初に、Broadband 掃引の結果に基づいて、基準ミキサの LO と
PNA レシーバをオフセットします。位相対時間掃引を行って、基準ミキサの外
部 LO の精密な周波数を求めます。選択したデータ・ポイントで VC21 を測定し
ます。測定は、許容値(Tolerance)または最大反復回数(Max Iteration)を満たす
まで行われません(図 3 参照)。
内蔵 LO 周波数の設定確度(Max Iteration または Tolerance)を決定するために、
各 DUT 測定掃引の前にバックグラウンド掃引(付録 B)がなされます。DUT の LO
周波数は、VMC 測定のための基準ミキサの LO 周波数と PNA レシーバの設定に使
用されます。
3
内蔵 LO 測定のユーザ・
インタフェース
図 3a および図 3b
Response、Measure、Embedded LO を選択
して、Embedded LO Mode 画面にアクセス。
Embedded LO Mode On
チェックマークを付けると、内蔵 LO 測定がオンになります。
Tuning Point
内蔵 LO 周波数を見つけるためのデータ・ポイントを選択または指定します。マー
カがオンの場合は、そのデータ・ポイントを使用できます。ノイズが最も小さいポ
イントを選択します。通常、このポイントは掃引の中心、またはフィルタが使用さ
れている場合はフィルタの中心になります。
LO Frequency Delta
測定した LO 周波数と Mixer Setup ダイアログに入力する LO 周波数との差です。
この値は、内蔵 LO 周波数を測定するたびに更新されます。LO 周波数を再入力し
て LO 周波数を変更すると、校正が有効のままでこの周波数差を適正に保つことが
できます。内蔵 LO の周波数変化が速すぎる場合は、一度この値を Reset し、改め
て LO 周波数にロックし直す必要が生じることがあります。また、これは、DUT
を取り外したときなどのように一時的に信号が無くなったときにも行う必要があり
ます。
Reset
LO Frequency Delta の設定を 0 Hz に戻します。
Find Now
PNA は、現在のダイアログ設定を使用して実際の LO 周波数を検出して測定します。
データは Status ボックスに表示されます。
”Find Now”機能は、DUT を最初にア
ナライザ(PNA または PNA-X)に接続したときに使うと便利です。
Clear
ステータス・エリアをクリアします。
Graph
チューニング・グラフを表示します(付録 B 参照)。
4
Tuning Settings
これらの設定により、LO 周波数測定の時間と測定の確度を指定します。Broadband
と Precise Only の両方の設定では、バックグラウンド掃引のたびに、すべてのチュー
ニング・プロセスを実行します。
Broadband and Precise
すべてのチューニング・プロセスをバックグラウンド掃引のたびに実行します。内
蔵 LO 周波数の粗測定を、選択したデータ・ポイントを中心に選択した周波数スパ
ンで行います。DUT への入力周波数は一定です。基準ミキサは使用しません。B
レシーバを使用して DUT の出力を測定し、基準ミキサの LO を Broadband 測定の
結果にチューニングし、その後、後述の Precise Only と同じ精密な方法を使います。
VMC 測定は、許容値または最大反復回数を満たすまで行われません。
Precise Only
基準ミキサの LO は、前述の Broadband 測定で得られた周波数または直接入力され
た周波数と今の LO 周波数との差が修正されます。VMC 測定は、許容値または最
大反復回数を満たすまで行われません。これは、各掃引時に Broadband チューニン
グを行いません。内蔵 LO が安定なときに使用し、Tuning IFBW の 1/3 未満の内
蔵 LO のドリフトに対して推奨します。
Reset
すべての Tuning Settings の設定をデフォルト値に戻します。
Disable Tuning
前に測定した LO 周波数差(LO Frequency Delta)だけを基準ミキサの LO と PNA
レシーバに適用します。
Sweep Span
これは Broadband 掃引用です。掃引スパンを狭くすると、Broadband 掃引で測定
されるデータ・ポイント数が制限され、測定が速くなります。
Max Iterations
実行する Precise 掃引の最大回数です。この値に達したときの最終測定値が使用さ
れます。
Tolerance
この Tolerance の範囲内で Precise 測定が 2 回連続して行われると、その時点で 2
回目の測定が使用されます。逆に、それが Max Iterations の回数内で達成されなかっ
た場合、最後の測定が使用されます。これは、設定された Tuning Settings 条件に
おいて、よりよい確度をもたらします。Tolerance は、概ね 1 Hz 以下であるべきで
す。ノイズによって測定可能な周波数の確度が制限され、一般に確度 0.02 Hz 以下
を達成するのは非常に困難です。したがって、適当な始めの値は 1 Hz(デフォルト)
です。しかし、安定した内蔵 LO の場合、これを 0.3 Hz に下げることによってより
優れた結果が得られています。
Tuning IFBW
Broadband および Precise チューニング掃引に使用される IF 帯域幅です。IFBW が
大きいほど掃引は速くなりますが、信号が検出できない可能性が高くなります。
Tune Every
測定掃引の前に実行されるチューニングの間隔を設定します。“Tune every 3
sweeps”は、3 回目の測定掃引の前にチューニング掃引を行うことを意味します。
内蔵 LO にドリフトがある場合、
または一定の間隔で変化する DUT の場合は、
‘Tune
every 1 sweep’を使用します。
5
測定例
以下の測定は一例です。他のベクトル・ネットワーク・アナライザと周波数コンバー
タ(DUT)の場合は、実際の測定ステップ、周波数、パワーは、このアプリケーショ
ン・ノートの説明と異なることがあります。
セットアップ
凡例[ハードウェア・キー]、ソフトウェア / ダイアログ・キー
基準ミキサを、校正用の図 1a または図 2a に示すように接続します。
1. [Preset]、[Meas]、Measurement Class…、Vector Mixer/Converter、Next を押し、
Delete を選択します。
2. [Freq]、Input を押し、DUT の“周波数”または図 4 のように“周波数”および
“パワー”を入力し、OK を選択します。
図 4. 周波数/パワー要件の入力
3. [Avg]、IF Bandwidth を押し、1 kHz(トレース・ノイズと速度を最適化するた
めの推奨値)と入力します。
4. [Cal]、Start Cal、Cal wizard、next を押します。Mixer の特性評価項目の 1 つを
選択します。
● 推奨の特性評価(基準ミキサが必要)を実行
● ファイルから特性評価をロード
5. DUT コネクタと Cal キット(可能な場合は、Ecal を推奨)を選択し、Next を押し、
校正ガイドに従います。このステップでは 2 ポート校正を行います。
6. PNA/PNA-X 上に示された図のように Cal-Mixer/Filter ペアを接続し、Measure
を押し、校正ガイドに従います。このステップでは Cal-Mixer/Filter ペアの評価
を行います。
7. ミキサ特性評価データを後で使うために保存する(Save)、または保存しない
(Next)を選択します。上記のステップから分かるように、Cal Mixer/Filter ペ
アの評価試験は高速で簡単です。データの保存は任意です。
8. PNA/PNA-X 上に示された図のように、Cal-Mixer/Filter ペアの出力をポート 2
に接続します。
9. Measure、Next、Finished を押します。
10. Cal-Mixer/Filter ペアを取り外し、DUT を接続します。
6
11. Embedded LO メニュー / ウィンドウにアクセスします。
図 5a と図 5b.
Embedded LO Mode ウィンドウ
12. Tuning Point エリアで、チューニング・ポイントを Middle Point(リニア位相応
答領域)に設定し、その後 Reset をクリックします。注記:Find Now(チュー
ニング)をクリックする前に、Reset をクリックします。
13. Tuning Settings エリアで Broadband and Precise を選択します。内蔵 LO のド
リフトが Tuning IFBW の 1/3 以下の場合は、Precise only モードを選択します。
14. Tolerance を必要な値に設定します。この値により、測定のトレース・ノイズ
と確度が決まります。
15. 残りの設定はデフォルトのままにします。
16. OK をクリックします。
図 6 は、新しい測定手法(内蔵 LO 測定オプション)を使用した場合と基準ミキサ用
の外部 LO にフェーズロックした LO 内蔵の DUT の場合の比較を示しています。
図 6. オレンジ色のトレース = 基準ミキサ用の外部 LO にフェーズロックした LO 内蔵の DUT の場合。
黄色のトレース = 内蔵 LO 測定オプション(オプション 084)を使用した場合。
7
測定ノイズの改善
LO の位相雑音は直接 IF 位相に変換されます。ネットワーク・アナライザの通常の
IFBW を狭くしてもこのノイズは減少しません。この理由は、周波数誤差により出
力位相に掃引間でオフセットが生じるので、内蔵 LO と基準ミキサの LO の位相雑
音が組み合わされて遅延測定応答の雑音になるからです。
IFBW を狭くすることが測定の遅延雑音の除去につながらない理由を理解するに
は、この雑音が各ミキサの LO の位相雑音に関係していることを理解する必要があ
ります。位相雑音は周波数シフトと考えられます。IF フィルタの位相対周波数応答
は IFBW に比例し、その雑音の減少も IFBW に比例します。したがって、本質的
には、IFBW に対する位相の偏移は一定です。すなわち、IFBW を狭くすると、
IFBW に比例して実効周波数偏移は減少しますが、フィルタの帯域が狭くなると周
波数に対する位相の傾きが急峻になり、同じ位相偏移が発生します。ただし、ベク
トル・アベレージングを使用すると、IFBW を狭くすることなく、雑音を減少させ
ることができ、遅延雑音を改善することができます。
図 7 から、20 kHz の IFBW を使用すると、かなりの高速測定で最小の遅延雑音と
なる、最良の測定結果が得られます。これが推奨設定です。IFBW の最良の選択は、
内蔵 LO の個々の位相雑音に依存します。
10000
RMS遅延ノイズ(ps)
1000
100
10
共有LO掃引遅延
10 MHz ロック遅延
10 MHz 10アベレージング遅延
10 MHz 200アベレージング遅延
1
1
図 7. 遅延ノイズ対速度
8
10
100
1000
10000
100000
1000000
まとめ
このアプリケーションノートでは、周波数コンバータの群遅延測定の新しい手法に
よる結果が DUT 内蔵 LO 信号源を基準ミキサの LO にロックする方法と同じであ
ることを示しました。この新しい手法のキー・ポイントは、バックグラウンド掃引
で内蔵 LO をトラッキングし、許容レベルまで雑音を減少させるのに必要なアベレー
ジングを行う前に、測定全体の周波数ドリフト誤差を補正するソフトウェアを使用
することです。この新しい手法は、振幅変調または I/Q 変調が必要な他のいくつか
の方法では不可能な、狭帯域デバイスに対して使用できます。
付録 A
群遅延測定の品質は各 LO の位相雑音により制限されます。したがって、十分な測
定確度を得るには、コンバータ(DUT)の内蔵 LO には一定のレベルの周波数安定
度が必要です。以下に、測定に影響する周波数ドリフトについて説明します。内蔵
LO の周波数はほとんどが既知で、この要件を満たしています。
内蔵 LO の周波数ドリフト速度:
●
周波数ドリフトが 1 Hz/s の場合:測定に影響はありません。
●
周波数ドリフトが 10 Hz/s の場合:絶対群遅延測定には小さな(100 ps)影響が
ありますが、相対群遅延測定には影響はありません。
●
周波数ドリフトが 100 Hz/s の場合:相対遅延測定には小さな影響があります(遅
延トレースでの遅延雑音が約 10 ∼ 20% 増加)。周波数トラッキングには影響は
ありません。
●
周波数ドリフトが 10 kHz/s の場合:周波数トラッキングは問題ありませんが、
群遅延測定には使用できません。
9
付録 B
グラフはバックグラウンド掃引の場合を示しています(一例)。
図 8. 内蔵 LO の周波数の検出には2つの手法を使用します。1つは、おおよその IF 周波数を検出する周波数掃引手
法(broadband)、もう1つは、位相対時間手法(precise)です。
図 9. この図は、基準チャネルと DUT チャネルを比較した、最初の位相対時間の結果を示しています。
この位相変化(スケールは 200°/div)は、予測した DUT の LO 周波数が約 1000 Hz ずれていることを示してい
ます。
10
図 10. 基準 LO の更新後の位相変化です。予測した DUT の LO 周波数がまだ約 30 Hz ずれていることを示してい
ます。このスケールでは、位相雑音の影響が位相トレースに見られます。
図 11. 基準 LO の更新後の位相変化です。予測した DUT の LO 周波数がまだ約 1 Hz(デフォルトの許容値)ず
れていることを示しています。この基準 LO 周波数で VMC を実行します。
11
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