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「留学生交流における危機管理の考え方とその実践」明治

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「留学生交流における危機管理の考え方とその実践」明治
留学生交流における
危機管理の考え方と
その実践
2013年3月6日 九州大学
第4回 九州・山口地域の大学国際化
ワークショップ : 大学と危機管理
明治大学国際日本学部
国際教育センター長
横田雅弘
2013/3/27
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危機(Crisis)管理とリスク(Risk)管理
1. 危機が発生したときのマネージメント
= Crisis マネージメント
すでに発生してしまったダメージをどう最小に抑えるか
2. 危機が発生しないようにリスクを回避
しつつ、積極的に学びのチャンスを活かす
マネージメント
= Risk マネージメント
リスクを予測し、そこから学ぶ教育的な営み
→ 異文化間リスク・マネージメント・カリキュラム
危機とは何か
『留学生をめぐる危機的状況にどのように対応するか』花見他、1998
1. 難局に対処するリソースに欠ける状態
2. 外部からの要求が自分が持てるリソース
以上であるような状態
3. 難局を切り抜けるためのリソースが不首
尾に終わること
•
•
リソースとは、社会環境、情報や知識、判断力、精神
力、行動力、経済力、人間関係など
学生本人の持つリソースと大学の持つリソースがある
→ 留学はこれまで持っていたリソースを一時的に失う体験
3
である。すなわち、留学にリスクはつきものである。
受入れと送り出しにおける
危機を考える視点
1. 危機のリスト どのような種類の危機なのか
2. 危機のレベル どの程度の危機なのか
3. 危機発生の場所 どのような場所で起こったのか
(日本・移動中・外国、途上国・先進国、宗教)
4. 危機対処の責任 誰が対処する危機なのか
5. 危機の予防と教育 (異文化間リスク・マネージメントの可能性)
異文化間教育的カリキュラムとしての実施
2013/3/27
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1. 大学に持ち込まれる危機のリスト
(受入れと送出しの比較)
①受入れ
事故、病気、精神障害/ストレス、死亡、犯罪、
セクハラ、行方不明、学業不振、日本語、経済的困窮、
奨学金、アルバイト、宿舎、指導教員との人間関係、
友人関係、ビザ・パスポート、就職、家族など
②送出し
テロ、革命、反日騒動、災害、疫病、重病、大事故、
精神障害、死亡、行方不明、犯罪(被害・加害)など
当然のことながら、①と②は大きく異なるが、
実は相手大学との間では裏腹の関係にある
5
送り出しにおける
危機を考える視点
1. 危機のリスト どのような種類の危機なのか
2. 危機のレベル どの程度の危機なのか
3. 危機発生の場所 どのような場所で起こったのか
(日本・移動中・外国、途上国・先進国、宗教)
4. 危機対処の責任 誰が対処する危機なのか
5. 危機の予防と教育 (異文化間リスク・マネージメントの可能性)
異文化間教育的カリキュラムとしての構築
2013/3/27
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2. 危機のレベルと大学の関与
留学生受入れ・日本人学生送出しにおけるイメージ
危機の程度大
危機の程度小
①受入れ
(危機はないか、または不明)
送り出し(引率あり)
(危機はない)
②送り出し(引率なし)
(危機はないか、または不明)
重大な危機 : テロ、革命、災害、疫病、重病、大事故、精神
障害、死亡、行方不明、犯罪(被害・加害)など。
かなり重大な危機でも、大学に知らされずに解決されるものも少
なからずある。内々で解決したい。知らせても仕方がない。
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送り出しにおける
危機を考える視点
1. 危機のリスト どのような種類の危機なのか
2. 危機のレベル どの程度の危機なのか
3. 危機発生の場所 どのような場所で起こったのか
(日本・移動中・外国/途上国・先進国/宗教等)
4. 危機対処の責任 誰が対処する危機なのか
5. 危機の予防と教育 (異文化間リスク・マネージメントの可能性)
異文化間教育的カリキュラムとしての実施
2013/3/27
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交換留学における
3. 危機発生の場所と対処者
国内
海外
学生
親
生活・遊び
ネット・Eポートフォリオ
日本の大学
選考・説明会
オリエンテーション
ハンドブック
危機管理会社
往復の渡航中
引率教職員
キャンパス
相手先大学
オリエンテーション
臨床カウンセリング
担当者同士の連携
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送り出しにおける
30校の大学にみる危機管理施策 (参考)
送出しを行っている大小国公私立30校を見てみると
 基本は国際センター(または危機管理室)、マニュアル、
オリエンテーション、海外旅行保険、連絡網
 保険加入の義務化はかなり多く、大学負担のところや
会社と包括契約しているところもある。
 比較的大きな8大学で危機管理会社と契約していた。
 教職員の危機管理セミナー等実施経験は6大学。
 短い派遣では引率者がいる場合も少なくない。
 比較的規模の小さい大学で引率多い。
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送り出しにおける
危機を考える視点
1. 危機のリスト どのような種類の危機なのか
2. 危機のレベル どの程度の危機なのか
3. 危機発生の場所 どのような場所で起こったのか
(日本・移動中・外国、途上国・先進国、宗教)
4. 危機対処の責任 誰が対処する危機なのか
5. 異文化間リスク・マネージメントの可能性
異文化間教育的カリキュラムとしての実施
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4. 協定校への送出しにおいて、
大学は何をするべきか/誰が対処するのか
1. 本人がいないので、日常的なことに対応できない
2. 本人がいないので、よほどの危機以外は出番はない
大学はどのような立場にあるのか ? → 協定校、危機管理会社への「依存」
できることは全くないのか ? → 連携、予防と教育の観点からできることがある
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3. 引率者がいる場合は、日常的なことから大きな危機まで全てに
かかわる。
1と2とは全く状況が異なる → 引率者のトレーニングが必要ではないか ?
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4. 重大な危機に対応できるシステムを整える
危機管理室、海外拠点事務所、危機管理会社
5. 重大な危機が発生したら、すぐに動く組織(チーム)をあらかじめ
設置する → 危機管理チームの結成とシミュレーション・トレーニング
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6.
7.
8.
9.
危機に対応するスタッフの力量を高める
危機を予防するハンドブック、スキット、ケーススタディを作成する
危機を予防する学生向けオリエンテーションを実施する
異文化間リスク・マネージメントを授業として実施する
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送り出しにおける
危機を考える視点
1. 危機のリスト どのような種類の危機なのか
2. 危機のレベル どの程度の危機なのか
3. 危機発生の場所 どのような場所で起こったのか
(日本・移動中・外国、途上国・先進国、宗教)
4. 危機対処の責任 誰が対処する危機なのか
5. 危機の予防と教育(異文化間リスク・マネージメント教育の可能性)
異文化間教育の授業あるいはカリキュラム
として実施する
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5. 危機の予防は教育として実施する
~異文化間リスク・マネージメント・カリキュラムの可能性~
(1) 協定校との顔の見える連携(チームワーク)の重要性
①まだ余裕のある行く前に相手校や相手国の情報はで
きるだけとっておく。到着初期は学生の混乱は必須で
ある。
②相手校も受入れオリエンテーションを行う。その内容に
ついて知っておけば、出発前から連携した内容を提供
できる。
③相手校の留学生支援制度がどうなっているかを理解す
ることは、こちらでどこまでやらねばならないかを決め
る上での大切な情報となる。
④相手校担当者(現場)との具体的連携のアプローチは、
送り出す大学の評価を確実に高める。
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5. 危機の予防は教育として実施する
~異文化間リスク・マネージメント・カリキュラムの可能性~
(2) 教育として実施することの重要性
①オリエンテーションは留学への不安を低減したい気持ちや、これ
から留学するワクワク感に応える学習であり、極めて自我関与の
高い(学生にとってインセンティブのある)教育的な学びの機会で
ある。
②留学する者にとって、入念なオリエンテーションが必須であり、
参加を義務づけ、時間をかけられる教育カリキュラムとして提供
することがふさわしい。
③認知(知識)・情動(感情)・行動(スキル)のすべてを扱う専門的な
教育者(担当教職員)によってなされるべき内容である。カルチャー
ジェネラルとカルチャースペシフィックの内容を含めるとよい。
④外国人留学生(協定校からの留学生など)や帰国した先輩学生も
含めて発表やディスカッションなどを楽しく行うことができる。
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5. 危機の予防は教育として実施する
(3)異文化間リスク・マネージメント・カリキュラムの案
①ステップ1 : 「留学」とは何か (4回)
現代における留学の意味、先輩留学経験者の体験談、外国人留
学生の日本での体験談、シミュレーション・ゲームによる疑似体験
②ステップ2 : 危機管理(Crisis Management)とリスク管理(Risk
Management) (4回)
留学における危機とは何か、カルチャーショック、危機を予防する
ための知識(ハンドブックなどのテキストを読む) 、危機を乗り越え
て学ぶ
③ステップ3 : 危機に対応するスキルのトレーニング (4回)
シミュレーション・ゲームによる疑似体験、スキットやビデオを用いた
ソーシャルスキル・トレーニング、危機から脱するための表現(英語)
④ステップ4 : リエントリーのための準備~まとめ (3回)
リエントリーカルチャーショック、キャリアとしての留学を考える
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送出しにおける
危機を考える場合の条件(参考)
1. 大学の留学プログラムか
VS
個人的な留学か
2. 一定期間以上のものか(留学的)
VS
ごく短いものか(旅行的)
3. 協定校か
VS
協定校ではないか
4. 相手校の担当者を知っているか
VS
知らないか
5. 相手校の危機管理体制はあるか
VS
ないか
6. 先進国か
VS
途上国か
7. 英語圏か
VS
他の外国語圏か
8. 政情不安、テロ、疫病の危険があるか VS
ないか
9. 教職員の引率者がいるか
VS
いないか
10.自分の大学の危機管理体制あり
VS
なし
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参考文献
1. 『留学生アドバイジング~学習・生活・心理をいかに支援するか』
横田雅弘・白土悟、ナカニシヤ出版、1-360、2004.
2. 『留学生をめぐる危機的状況にどのように対応するか』研究代表者 :
花見槙子、JAFSA助成研究報告書、1-94、1998.
3. 『海外留学ハンドブック』早稲田大学留学センター、2013
4. 『派遣候補者ハンドブック』早稲田大学留学センター、2013
5. 『海外留学セーフティ・ハンドブック』明治大学、2012年度版
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