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摩擦攪拌法によるポーラスアルミニウム/緻密鋼板 サンドイッチパネルの

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摩擦攪拌法によるポーラスアルミニウム/緻密鋼板 サンドイッチパネルの
1013
日本機械学会論文集(A 編)
77 巻 779 号 (2011-7)
ノート No.2011-JAN-0029
摩擦攪拌法によるポーラスアルミニウム/緻密鋼板
サンドイッチパネルの作製*
宇都宮 登雄*1,石井 伸幸*2,半谷 禎彦*3,小山 真司*3
長谷川 誠*4,桑水流 理*5,吉川 暢宏*6
Manufacturing of Sandwich Panel with Porous Aluminum/Dense Steel Plate
by Friction Stir Processing Route
Takao UTSUNOMIYA*1, Nobuyuki ISHII, Yoshihiko HANGAI, Shinji KOYAMA,
Makoto HASEGAWA, Osamu KUWAZURU and Nobuhiro YOSHIKAWA
*1
Research Organization for Advanced Engineering, Shibaura Institute of Technology
307 Fukasaku Minuma-ku, Saitama-shi, Saitama 337-8570 Japan
Porous aluminum is expected to apply as multifunctional material in various industrial fields because of a very
lightweight material with high energy absorptivity. In this study, by using friction stir processing (FSP) route, the
porous aluminum/dense steel sandwich panel was manufactured. In the FSP route, both mixing a blowing agent into
aluminum and bonding the aluminum precursor to dense steel plate can be conducted simultaneously. It was shown
that the sandwich panel of porous aluminum/dense steel which have high interface strength with high porosity of 80%
and comparatively good pore structure is successfully manufactured by optimizing the foaming condition.
Key Words : Porous Material, Sandwitch Panel, Aluminum Alloy, Friction Stir Processing, Foam
1. 緒
言
ポーラスアルミニウムは軽量で衝撃吸収特性等に優れた材料であり,自動車用の構造用部材として利用する
ことが期待されている(1).またポーラスアルミニウムは引張り強度や曲げ強度が低いため,構造用部材として用
いる場合,緻密な板材と組み合わせるサンドイッチパネル化が有効であり,緻密な部分も有することで他部材
との接合も容易になるものと思われる.現在,ポーラスアルミニウムのサンドイッチパネル化は,接着剤によ
り接合する方法(2)や,クラッド接合する方法(3),(4)が提案されている.接着剤による方法は簡便であるが,耐久性
やリサイクル性,高温での利用などに課題を残している.クラッド接合による方法は,金属間接合が達成され,
接着剤による方法の欠点を克服するものであるが,接合工程が新たに加わるため生産性に問題があると思われ
る.
著者らは,ポーラスアルミニウムの作製法として,摩擦攪拌プロセッシング(Friction Stir Processing, FSP)(5),(6)
を利用した方法(以後,
“摩擦攪拌法”と呼ぶ)を提案した(7),(8).摩擦攪拌法は,FSP による塑性流動現象を用
いてアルミニウム合金板中に発泡剤等の粉末を混合させ,このプリカーサを加熱することでポーラスアルミニ
ウムを作製するもので,この方法を用いて種々のアルミニウム合金のポーラス化を試みている(7)-(9).ところで,
*
原稿受付 2011 年 1 月 13 日
正員,芝浦工業大学 先端工学研究機構(〒330-8570 埼玉県さいたま市見沼区深作 307)
*2
群馬大学 工学部(〒376-8515 群馬県桐生市天神町 1-5-1)
*3
正員,群馬大学大学院 工学研究科(〒376-8515 群馬県桐生市天神町 1-5-1)
*4
横浜国立大学大学院 工学研究院(〒240-8501 神奈川県横浜市保土ケ谷区常盤台 79-5)
*5
正員,福井大学大学院 工学研究科(〒910-8507 福井県福井市文京 3-9-1)
*6
正員,東京大学 生産技術研究所(〒153-8505 東京都目黒区駒場 4-6-1)
E-mail: [email protected]
*1
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摩擦攪拌法によるポーラスアルミニウム/緻密鋼板サンドイッチパネルの作製
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FSP はもともと摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding)を応用した技術であり,摩擦攪拌による金属の接合能力を
有効利用することで,プリカーサの作製と同時に他の金属材と接合することも可能である(10),(11).そこで本研究
では,この摩擦攪拌法を用いて,アルミニウム板材に発泡剤等を攪拌混合させると同時に緻密鋼板との接合を
行い,ポーラスアルミニウムと緻密鋼板の界面結合が強固なサンドイッチパネルの作製を試みたので報告する.
(b)
(a)
(d)
(c)
(e)
Fig. 1 Schematic illustration of the manufacturing process of porous aluminum/dense steel sandwich panel.
2. 実験方法
2・1 サンドイッチパネルの作製法
図 1 に,摩擦攪拌法を用いたサンドイッチパネルの作製法の概略を示す.図 1(a)の A および B 板として,そ
れぞれ板厚が 3 mm および 1.5 mm の A1050 アルミニウム板,C 板として板厚 2 mm の SPCC 鋼板を用いた.板
材は全て市販品であり,表面は前処理など行わず購入したままの状態で試験に供した.A, B 板の間に発泡剤と
して粒径 45 µm 未満の水素化チタン(TiH2)粉末および気孔形態安定剤として粒径約 1 µm のアルミナ(α-Al2O3)
を挟み積層板とした.TiH2 粉末およびアルミナ粉末の添加量は,FSP による攪拌の対象体積(幅方向 35 mm×
走査方向 160 mm×厚み 4.5 mm)分のアルミニウムの質量に対して,TiH2 粉末の場合 1 mass%,アルミナ粉末
の場合 10 mass%とした.図 1(b)~(d)に示すように,A1050 の積層板を SPCC 鋼板に重ねて,大気中でマルチパ
ス FSP(11)を行い,TiH2 粉末およびアルミナ粉末をアルミニウム合金中に混合させるとともに板同士を接合した.
すなわち,TiH2 粉末およびアルミナ粉末の散布範囲の端部でツールを走査(1 パス目)させ,走査方向に対し
て直角方向に 5 mm ずつずらして 7 回走査させた(図 1(c)参照)
.これら 1~7 パス目と同一箇所を,さらに逆方
向からツールを走査させた
(図 1(d)参照)
.
FSP には日立設備エンジニアリング株式会社の FSW 装置 SHH204-720
を用い,ツール回転速度は 2200 rpm,送り速度は 100 mm/min,ツール押込量は鋼板に対して 0.2 mm,前進角
は 3°とした.ツールは高速度工具鋼 SKH51 製で,ショルダ径 17 mm,プローブ径 6 mm,プローブ長さ 5 mm
のネジ付きである.図 1(d)で得られた積層板から,機械加工により FSP を施した部位を,接合した鋼板ととも
に切り出しプリカーサとした.プリカーサのアルミニウムと TiH2 粉末等の混合部の大きさは長さ 35 mm×幅 35
mm×厚さ 4.5 mm,鋼板の厚さは 2 mm である.
2 つのプリカーサを,図 1(e)に示すように,ジグを用いて 21 mm の間隔で向かい合うように配置し,さらに
ポーラスアルミニウムの充填補助用として,別途同様の摩擦攪拌で作製した長さ 35 mm×幅 17.5 mm×6 mm の
アルミニウムと TiH2 粉末等の混合部(Aluminum precursor)を追加設置した.このように設置したまま,あらか
じめ 1003K に温めておいた電気炉(デンケン KDF-S80)内に入れ 9 分 30 秒保持し,その後,電気炉から取り
出し空冷した.なお,このプリカーサの発泡の際,治具の方向には発泡を拘束しているが,その垂直方向(紙
面に垂直方向)に拘束はしていない.
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摩擦攪拌法によるポーラスアルミニウム/緻密鋼板サンドイッチパネルの作製
2・2 気孔率評価と気孔形態観察
サンドイッチパネルのポーラスアルミニウム部の気孔率 p は, p = ( ρ i − ρ f ) / ρ i により算出した.ここで,ρi
は発泡前のプリカーサの密度,ρf は発泡したポーラスアルミニウム部の密度である.プリカーサの密度は,純
アルミニウムの密度(12)を用いた.ポーラスアルミニウム部の密度は,鋼板が接合した状態のまま測定した質量
から,鋼の密度(13)と SPCC 鋼板部体積から求めた質量を減じた値をポーラスアルミニウム部の体積で除するこ
とにより算出した.また,ポーラスアルミニウム部の気孔の状態を評価するために,マイクロフォーカス X 線
CT システム(島津製作所 SMX-225CT)により撮像した.画像サイズは 512×512 ピクセル,スライスピッチ
は 1 ピクセルの長さに等しく 88.5 µm であった.撮像に用いた X 線管電圧は 80 kV,X 線管電流は 30 µA であ
る.
(a) position ①
(b) position ②
10 mm
(c) position ③
Fig. 3 Pore structures of sandwich panel.
Fig. 2 Obtained sandwich panel.
3. 実験結果および考察
図 2 に,作製したサンドイッチパネルの外観写真を示す.ポーラスアルミニウム部の気孔率は 80%の高気孔
率のものが得られた.図 3(a)~(c)は,それぞれ,図 2 に①~③で示した,サンドイッチパネルを四等分した断
面での X 線 CT 画像を示している.これらの図より,ポーラスアルミニウム部には若干粗大化した気孔が見ら
れるものの,ほぼ均一な気孔形態を有するポーラスアルミニウムと緻密鋼板が界面接合されたサンドイッチパ
ネルが作製できたことがわかる.ただし,図 3(a)の円で示した部分のように,押しつぶされたような気孔が現
れることがあった.これはプリカーサ表面の強固な酸化皮膜が存在したため現れたものと考えられる.しかし
ながら,このような形態の気孔は局所的で小さく,ポーラスアルミニウム部の圧縮特性などに大きく影響を及
ぼすものではないと思われる.また,今回のプリカーサの発泡の際の 2 つのプリカーサの間隔(図 1(e)参照)
として 21 mm を用いたが,この間隔や,補助プリカーサの設置の仕方,さらに発泡温度,発泡時間をより最適
化することにより,発泡の際に酸化皮膜を破壊し新生面同士を接合させて,このような気孔形態の発生を減少
させることが可能と考えられる.
ポーラスアルミニウム部と SPCC 鋼板の結合に関しては,その界面に割れや空孔などは観察されず強固な界
面接合が行われていた.過去の実験より,A1050 のポーラスアルミニウムと SS400 の緻密鋼板の摩擦攪拌によ
る接合界面には,Fe2Al5 などからなる数十µm 程度の金属間化合物層が生成することがわかっている(10).緻密材
同士の接合であれば,このような金属間化合物層の生成は界面強度の低下を招く.しかしながら,ポーラスア
ルミニウム部と鋼板の界面に対して衝撃せん断荷重を与えると界面ではなくポーラスアルミニウム部で破断し
た(11)ように,本研究のようなポーラスアルミニウム部と鋼板の接合では,界面強度よりもポーラスアルミニウ
ム部の強度の方が弱いことが示唆される.なお,ポーラスアルミニウム部と界面強度の関係は,ポーラスアル
ミニウム部の気孔率によって変化することが予想されるため,今後さらに,ポーラスアルミニウム部の気孔率
を変化させたサンドイッチパネルに対して引張り荷重やせん断荷重下の試験を行う予定である.
4. 結
言
本研究では,摩擦攪拌法を用いて,A1050 板材に発泡剤等を攪拌混合させるとともに SPCC 鋼板との接合を
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摩擦攪拌法によるポーラスアルミニウム/緻密鋼板サンドイッチパネルの作製
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行い,ポーラスアルミニウムと緻密鋼板から構成されるサンドイッチパネルの作製を試みた.その結果,サン
ドイッチパネルは強固な界面接合が行われるとともに,80%の高気孔率とほぼ均一な気孔形態を有し,軽量な
ポーラスアルミニウム部を作製することができた.すなわち,摩擦攪拌法では,プリカーサの作製と緻密鋼板
の接合が同工程で行うことが可能となり,生産性の向上が期待できるものと考えられる.
謝
辞
本研究の遂行に当たり,元芝浦工業大学横田武男准教授には FSP/FSW の実施方法,群馬大学大学院工学研究
科斉藤勝男教授には発泡実験に関してご助力をいただいた.また,元群馬大学大学院工学研究科久米原宏之教
授には試験結果に対して有益なご助言をいただいた.本研究の一部は,独立行政法人新エネルギー・産業技術
総合開発機構(NEDO)平成 21 年度産業技術研究助成事業および平成 22 年度科学研究費補助金基盤研究(C)の
助成のもと行われました.ここに記して,感謝の意を表します.
文
献
(1) Banhart, J., “Manufacture, characterisation and application of cellular metals and metal foams”, Progress in Materials
Science, Vol. 46, No. 6 (2001), pp. 559-632.
(2) 三好鉄二,濵田猛,金橋秀豪,
“衝突安全性に優れたポーラスアルミニウム複合部材”
,R&D 神戸製鋼技報,Vol.
57, No. 2 (2007), pp. 95-100.
(3) Baumgartner, F., Duarte, I. and Banhart, J., “Industrialization of powder compact foaming process”, Advanced Engineering
Materials, Vol. 2, No. 4 (2000), pp. 168-174.
(4) 財団法人素形材センター, ポーラス金属の利用技術の可能性に関する調査研究報告書,(2006), pp. 1-16.
(5) Mishra, R. S. and Ma, Z. Y., “Friction stir welding and processing”, Materials Science and Engineering R, Vol. 50, No. 1-2
(2005), pp. 1-78.
(6) Ma, Z. Y., “Friction stir processing technology: A review”, Metallurgical and Materials Transactions A, Vol. 39, No. 3 (2008),
pp. 642-658.
(7) Hangai, Y. and Utsunomiya, T., “Fabrication of Porous Aluminum by Friction Stir Processing”, Metallurgical Materials
Transactions A, Vol. 40, No. 2 (2009), pp. 275-277.
(8) 宇都宮登雄,半谷禎彦,大関雄一郎,
“摩擦攪拌プロセスを用いたポーラスアルミニウムの作製におけるアルミ
ナ添加量および保持時間の影響”
,日本機械学会論文集 A 編,Vol. 75, No. 758 (2009), pp. 1334-1339.
(9) Hangai, Y., Kato, H., Utsunomiya, T. and Kitahara, S., “Effect of the amount of gases on the foaming efficiency of porous
aluminum using die castings fabricated by friction stir processing”, Metallurgical and Materials Transactions A, Vol. 41, No.
8 (2010), pp. 1883-1886.
(10) 半谷禎彦,小山真司,宇都宮登雄,長谷川誠,
“摩擦攪拌法によるポーラスアルミニウム/緻密鋼材の複合構造
部材の作製”
,日本金属学会誌,Vol. 74, No. 2 (2010), pp. 131-133.
(11) Hangai, Y., Koyama, S., Hasegawa, M. and Utsunomiya, T., “Fabrication of Aluminum Foam/Dense Steel Composite by
Friction Stir Welding”, Metallurgical Materials Transactions A, Vol. 41, No. 9 (2010), pp. 2184-2186.
(12) 軽金属学会,アルミニウムの組織と性質,(1991), pp. 415.
(13) 日本機械学会,機械実用便覧(改訂第 6 版)
,(1997), pp. 174.
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