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実験・観察を安全に行うために

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実験・観察を安全に行うために
5
(1)
実験・観察を安全に行なうために
理科授業中の事故による負傷の実態
右のデータから,小学校の理科
授業では子どもの落ち着きのな
理科の授業中における負傷(小学校)
い行動による挫傷(うちみ)・打撲
やガラス器具の破損などによる
切創(きりきず)等の事故が多い
ことが推測できます。
しかし,事故を恐れるあまり,
実験を子どもにさせず,教師の演
示実験ばかり見せたり,野外へ観
察に行かず,教科書の写真の説明
だけですませたり…でよいので
しょうか?
小学校の理科学習は,実験・観
察などの活動により,五感を通し
て自然事象についての理解を図
り,科学的な見方や考え方などを
養っていくことが大切です。つま
り,実験・観察を重視した学習を
「学校管理下の災害−20」平成 18 年度
進めなくてはなりません。
(独立行政法人日本スポーツ振興センター)
しかし,事故は絶対に起こして
はいけません。そのためには,事故防止のための「配慮と指導」が大切です。
(2)
事故につながりやすい子どもの行動
実験に気を取られて,周りの様子に注
意を払わない。
初めて使う器具や薬品の扱いに緊張した
り,あわてたりする。
「まだ,熱いかもしれない」「ひょっとし
たら飛んでくるかもしれない」などの警戒心
が薄い。
教師の説明を聞かず(分からず?),自分勝
手な操作をする。
野外に出ると,開放的な気分になって
机上の整理整頓をしないまま実験を行う。
はしゃいでしまう。
- 73 -
(3)
事故防止のためのポイント
①
油断禁物
・
事故につながりやすい子どもの行動をいつも想定しながら,実験・観察の指導を行うよう
にします。
・ 実験・観察中は子どもたちから目を離さず,
「6年生で,まさかこんなことはしないだろう」
など,油断しないようにします。アルコールランプの使い方など既に学習していることでも操
作上の注意点は繰り返し指導しましょう。
②
習慣化
・
学校生活全般に落ち着いて行動し,真剣に活動する習慣を付けておきましょう。
・
教師の話,特に実験上の注意をしっかりと聞き取る習慣を付けておきましょう。
・ 教師から「やめ!ストップ!」などの指示があったら,活動途中でも必ずやめる習慣を付け
ておきましょう。
・
体育のときには体操服が動きやすいように,実験のときにも,実験にふさわしい身なりを
するような習慣を付けておきましょう。特に,火を使う実験の際のだぶだぶの服,前を閉め
ない上着,燃えやすい布地の服,長い髪などは気を付けさせましょう。
・
③
実験机の上はいつも整理・整とんをしながら実験をするような習慣を付けておきましょう。
理由の説明
・ 「…してはいけない」
「…しなさい」という指示だけでなく,その理由
を子どもの発達段階に応じて指導しましょう。
④
予備実験・事前調査
・ 理科の授業前にあらかじめ試しの実験を行っておくことを予備実験と言います。特に,薬品
を使う実験や加熱実験を行なわせる前には予備実験を行っておきましょう。
・ 予備実験を行っておくと安全面でのチェックはもちろん,実験のコツなどをつかむことがで
きます。また,実験で使う器具の数や状態も確認できます。試薬の調整を授業中に行なったり,
器具が不足して実験ができなかったりなどの不都合が未然に防げます。
・
⑤
屋外に観察に出かける際も危険箇所等をチェックするため事前調査を必ず行いましょう。
環境整備
・
割れたビーカーの破片が放置されていたり,実験器具がきちんと整理して保管されていな
かったりすると,児童がそれでけがをすることがあります。また,雑然とした環境の中では
落ち着いた学習態度は期待できません。
・
後片付けをきちんと行うことが基本です。子どもたち任せにしないで,教師も一緒に後片
付けを行いながら,ガラス器具の洗い方,扱い方,燃えがらの処分の仕方など指導を行いま
しょう。最後に元の場所に返却されたかを確認するようにしましょう。
・
理科主任を中心に全職員の協力の下で理科室の環境を整えましょう。
- 74 -
(4)
実験の安全指導
安全に実験を行うための注意点については,日常的
液を熱しているときは,熱い液が飛び
な指導が必要です。日ごろから教師の話をきちんと聞
散ることがあるので,注意させましょ
く態度を身に付けさせ,指導を徹底しましょう。
う。安全メガネを使うとよいでしょう。
長い髪は
燃えやすいもの,汚れたら
大きい上
必ず束ねさ
困るものは片付けさせます。
着やひらひ
せましょう。
らした服装
は,器具を引
っかけやす
いので,注意
させます。
アルコー
ルランプ
一般的に,
やマッチ
実験すると
は理科準
きは椅子を
備室に保
しまって,立
管しまし
って行わせ
ょう。
ます。
実験は机の真ん中で行わせます。
・
私語やふざけがないように注意しましょう。
・
器具・装置の組み立てを順序よく念入りに行なわせ,実験を急がせすぎないようにしましょう。
・
他人の実験にも気を配らせましょう。
・
どんな小さな事故でも報告させましょう。
<実験後の安全>
・
片付け時に,加熱して熱くなったものを触ってやけどをしたり,ガラス器具を割って手を切った
りする事故が多いので必ず声を掛けましょう。
・
使った器具は点検をして,元の場所に責任をもって片付けさせましょう。
・
使った薬品は捨てるための容器に回収し,中和などの処理を行ない大量の水と一緒に流すなど,
環境に配慮しましょう。
・
ごみは自治体の分別方法に従って種類ごとの入れ物に入れさせましょう。
・
実験後は必ず手を洗わせましょう。
何と言っても,安全性を確認するために「予備実験」を行なうことが大事で
す。危険の予測ができるとともに,実験のコツをつかむことができます。
- 75 -
(5)
実験・観察における応急対策
ア
応急対策
○
救急用品を備えておく
理科室には,常に救急箱を取り出しやすい場所に備えておきましょう。
○
消火の備えをしておく
理科室やその周辺の消火器設置場所を確認し,万一のときに使えるようにしておきましょう。
また,ぬれ雑巾や砂の入ったバケツなども備えておきましょう。
○
緊急連絡網
普段から,学校医との連絡を密にし,緊急の場合の医療機関との連絡網を確認しておきまし
ょう。
イ
実験における応急処置の方法
○
薬傷に対する処置
・
軽傷の場合は,次の方法で応急処置をした
後,医師の治療を受けさせます。
皮膚に付いた場合
(酸の場合)
十分な水洗い後,10%重曹(炭酸水素ナトリウム)水溶液で中和します。
(アルカリの場合)
直ちに水洗いして,ぬるぬるがとれるまで洗います。その後,2%程度
の酢酸水溶液で中和します。
※
中和剤を使う前に十分な水洗いが必ず必要です。
・
目に入った場合
多量の水の入った洗面器で,水道水を流しながら,目を開閉して 20 分以上洗います。そ
の後,必ず眼科医で手当を受けさせます。
・
飲み込んだ場合
基本的には,多量の水を飲ませて,指を入れて吐き出させます。その後,毛布などで体を
温かくしてやり,医師の手当を受けさせますが,酸やアルカリの場合はその限りではありま
せんので注意しましょう。
・
(酸の場合)
吐かせてはいけません。呼吸困難になることがあるので,直ちに牛乳,卵白
などを与えて速やかに医師に診せましょう。
(アルカリの場合)
吐かせてはいけません。粘膜を痛めるので,レモン汁,卵白,薄めた
食酢などを与えて速やかに医師に診せましょう。
○
やけどに対する処置
・
第1度(赤くなる程度)は,冷水で 15 分以上冷やします。
・
第2度(水ぶくれができる)は,水ぶくれを破らないようにしながら,冷水でよく冷やしま
す。その後,チンク油を塗って軽く包帯をします。
・
第3度(皮膚の表面が黒く焼けている)は,消毒した布で覆い,冷水で冷やし,医師の手当
を受けさせます。
○
※
衣服の上からのやけどは,皮膚がはがれてしまうので脱がさないでそのまま冷やします。
※
体表の 1/5 以上のやけどは,第 1 度でも直ちに医者の手当を受けさせます。
有毒ガスに対する処置
直ちに,新鮮な空気の所に移し,楽に呼吸ができるようにしてやりましょう。多量に吸った場
合は,安静にし,体を温かくしてやり医師の診察を受けさせましょう。
- 76 -
(6)
野外観察における応急処置の方法
ア
軽傷の場合は,次の
すり傷・かすり傷の場合
①
泥や汚れを水洗いし,オキシドールで消毒します。
②
軟こうを付けて包帯をします。
イ
た後,医師の治療を受
けます。
切り傷・刺し傷の場合
①
方法で応急処置をし
すぐに清潔な布を当て,上から押し付けます。布に血がにじんできたら,更にもう一枚当てて
押さえ続けます。
②
ウ
出血が弱くなったら,消毒ガーゼを当てて,ややきつく包帯をします。
ねんざや骨折の場合
①
患部を心臓よりも高くして,患者を横にします。
②
患部を冷やします。
③
添木をし,三角巾やタオルで固定し,安静にします。
④
さすったり,もんだりしてはいけません。
エ
とげが刺さった場合
①
毛抜きか,深い場合は火で焼いた針の先でとげを抜きます。
②
傷口を水でよく洗った後,オキシドールで消毒し,ばんそうこうを貼ります。
オ
虫に刺された場合[ハチ,アブ,ブヨ(ブユ),ムカデ,ドクガ等]
①
はりが残っていたら,指ではじき飛ばします。(つまんで抜こうとすると,針についた毒が更
に皮膚の中に入ってしまいます)
②
水で冷やすか,抗ヒスタミン含有のヒスタミン軟こうを塗ります。
③
はれたら冷湿布をします。
カ
ヘビにかまれた場合[マムシ,ヤマカガシ等]
①
患者を横にして休ませます。
②
縛ったり,切ったり,冷やしたりといった治療はしません。
③
ショックでおびえている患者を安心させます。
④
気分を落ち着かせて速やかに医師の治療を受けます。
キ
目に異物が入った場合
①
汚れた手でこすりません。
②
上下のまぶたを引っ張り,涙と共に流します。
③
清水の中で目を開閉させて洗い落とします。
ク
耳に異物が入った場合
①
異物の入った側の耳を下に向けて片足でトントン跳ねます。
②
虫の場合は,明るい方へ耳を向けます。懐中電灯で奥の方を照らすのもよいでしょう。
ケ
鼻に異物が入った場合
①
片方の鼻を押さえ吹き出させます。あまり強くすると鼓膜を痛めます。
②
気管に入ると咳き込むことがあるので注意します。
コ
ウルシなどにかぶれた場合
①
薄いアンモニア水をガーゼに浸して塗ります。
②
抗ヒスタミン含有のステロイド軟膏を塗ります。
サ
毒草などを誤食した場合
①
とにかくおう吐させ,速やかに医師の治療を受けます。
- 77 -
(7)
事故の際の対応
【事故発生後の連絡(例)】
初期対応
①
被害を受けた児童の応急処置をする。
状況把握
担当教諭・養護教諭
②
観察・実験を一時中止
し第二の事故を防止す
②
①,②は同時進行の
場合もあります。
他の児童を落ち着か
せる。
る。
③
必要であれば,医療機関へ連絡し,児童を移
送する。
連
絡
校長・教頭へ連絡する。
事後処理は,すべて校長,教頭を通じて行う。
④
⑤
保護者への連絡をする。
警察等への連絡
*
担任から連絡するのが一般的ですが,
状況に応じて適切な人が連絡します。
状況により教育委員会(学校教育課)へ連絡
する。
事後処理
⑥
事故の発生状況,経過観察,事故後の処置などについて
詳細に記録を取り,その後の安全指導に役立てる。
*
毒物,劇物の盗難,紛失が生じた場合は,教育委員会,
警察署及び保健所に届け出ることが必要です。
(毒劇物取締法第16条2の2)
事故が起きたときは,速やかに専門医の診察,処置を受けさせることが必
要です。初期症状が目立たなくても,時間の経過とともに作用が進行したり,
全身作用が強かったりする場合もあるので,医師の処置を必ず受けさせまし
ょう。
事故が起きたクラスの児童には,事故の再発防止や精神的な不安を取り除
くために,適切な事後指導が必要です。
準備室等には,軽微なけが等に対処できる救急箱を備えておきましょう。
- 78 -
再発防止
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