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なぜ科学を学ぶのか
自然科学概論 A(原科) なぜ科学を学ぶのか 学校で「理科」を学ぶ理由・必要は何だろう? 将来の仕事で使うから,学校の授業であったから仕方なく, ・・・ みなさんが,学校の「理科」の授業で身につけた力は何? 法則, 式, 計算の仕方, 用語, 知識, ??? 産業経済発展・生活改善と科学 技術と科学 技術(Technology) 役に立つ 職人技 語源:技巧(テクニック),経験知 便利になる 安全になる 価値を生み出す 経験的にうまく行けばよい 「知りたい」という科学とは別の営み 近代科学成立・産業革命以前は,職人(技術者)に 高等教育(大学教育)は必要ないと考えられていた。 (親方に弟子入りして修行する) 技術から科学,科学から技術 経験的にうまく行っていた技術の理由を考える → 科学として発展 例:ガリレオも職人の作業場に通って,職人の技から学んだ ⇒ 実験,力学 新しい科学知識 → 技術への応用(経験だけに頼らない) 例:物理学(力学,熱学)の発展と蒸気機関 → 産業革命 科学と技術が密接な関係に → 科学技術(科学・技術) 科学技術による社会・生活の変化 機械化 自動化 交通・移動 エネルギー利用 情報通信 インフラ 人工合成物 防災 医療・医薬品 ・・・ 専門家(科学者,技術者)でなくても,科学技術と関わらないでは 生活できない。 それは,必ずしも良い面ばかりではない。 5 自然科学概論 A(原科) 地球環境と科学 科学技術を利用→産業や経済の発展・生活の改善 一方で 1945 年 日本に原爆投下 1953 年 水爆実験 1960 年ごろ サリドマイド副作用による障害児(薬害) 1950 年代~60 年代 公害の多発・表面化 水俣病,イタイイタイ病,四日市ぜんそく, ・・・ 2011 年 福島第一原発事故 1962 年 「沈黙の春(新潮文庫) 」 レイチェル・カーソン(1907~1964) 農薬など化学物質による生態系破壊を警告 新しい科学技術によって,誰もが被害者になるかもしれない。 科学技術の暴走によって,人類が滅びるかもしれない。 科学技術は必要ないか? → ≪センス オブ ワンダー≫ いまだ経済的に貧しい国も多くある。 経済発展か,自然環境保護か ⇒ 1992 年 国連は,その両方という難しい道を選択 国連環境開発会議(地球サミット) 「持続可能な開発」 リオ宣言 Sustainable Development 人類が 自然と調和 しつつ健康で生産的な生活を送る権利 現在および 将来の世代 の発展と環境のための必要を公平に すべての国の生活水準の格差を減らし,貧困を撲滅 科学的な理解の増進と市民参加 1992 年 ユネスコ(国連教育科学文化機関) 「すべての人のための科学技術リテラシー」 Scientific and Technological Literacy for All 自然と調和しつつ,経済的にも発展していくことを目指す。 そのためには,すべての人が科学の知識(科学リテラシー)を 持つ必要がある。 6 自然科学概論 A(原科) 科学リテラシー リテラシー = 識字教育,「読み・書き・そろばん」 →基本的な知識,理解,判断能力 情報リテラシー,環境リテラシー,・・・ 民主的な社会の一員(市民)として,主体的に判断・行動するためには 文字が読める 表現できる 情報にアクセスできる/活用できる 権力者にだまされない 現代の科学技術は巨大な力を持っている 専門家(科学者,技術者)だけにはまかせておけない 科学技術の市民によるコントロール(シビリアン・コントロール) どうやったら素人にそんなことができるのか? 科学リテラシーを備えた人物とは (ヨーク大学ジョン・ホルマン教授 笠潤平訳を若干修正) ① 科学が関係する問題についてのメディアの報道・記事を読み,その 本質的なポイントを理解できる。 ② その記事に含まれている情報とその意味について,批判的に考察できる。 ③ 日常生活に対する科学技術の影響を認識できる。 ④ 科学が関係した,意見が分かれる問題について,議論に参加できる。 ⑤ 科学の考えや洞察から喜びを得ることができる。 リテラシーをはかるための国際学力調査(PISA) 例 科学リテラシーを身に付ける ・科学的知識を得る 科学的に考えて理解するために必要な最低限の知識 力,エネルギー,熱,原子,電子,遺伝子,・・・ ・科学的考え方を身に付ける 論理的,批判的,証拠・事実に基づく, (モデル化,近似,) ・・・ ・科学について知る・考える 科学の有効範囲と限界,社会の中での科学と科学者, ・・・ 7 自然科学概論 A(原科) 「科学」を学ぶだけでは不十分 想像力,対話力,質問力,人間力, ・・・ 健康食品,インチキ商法,遺伝子組み換え,薬の副作用,脳死移植, ・・・ 専門家と素人 事例 放射線被ばくの影響 専門家 A:100 ミリシーベルト以下の被ばくなら健康に影響は無い。 専門家 B:1 ミリシーベルト以上の被ばくは避けるべきだ。 ⇒どうしたらいいの? 原子力発電所の再稼働 専門家 C:どんなに対策しても事故が起こる可能性がある。動かすな。 専門家 D:対策を十分にすれば,安全は確保できる。動かしてよい。 ⇒どっちが本当? 専門家だけで決めてよい問題か? もし対応が間違っていた場合,不利益・被害を受けるのは市民(素人) 専門家と市民(素人)との対話が必要 専門家は市民に説明する力 市民は専門家に疑問を投げかける力 科学コミュニケーションの未熟 専門家もまだ権威主義的 「無知なしろうとに教えてやる」 (欠如モデル) 双方向のコミュニケーション(対話)へ 専門家を変えていく努力も必要 次回は,近代科学への発展について見ていく。 ☆本日のミニレポート課題 (300字以上,〆切までに提出) ○ 市民に科学リテラシーの力が必要とされる問題・課題を,1つ以上あげて説明 しなさい。なぜ必要と考えるのか,その問題を解決することの難しさ,どう科 学リテラシーと関係するのか,などに触れてまとめなさい。 8