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指導手引書

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指導手引書
改訂 情報デザイン試験 (J 検)
指導手引書
文部科学省後援 財団法人 専修学校教育振興会
改訂 情報デザイン試験 (J 検)
指導手引書
指導の手引き
情報デザイン教育のすすめ
主な問う内容
1.専修学校教育振興会が考える
「情報デザイン教育」
「情報デザイン」を取り巻く現状
情報化社会と言われるように、今私たちが生きているのは多種
多様な情報が溢れている時代である。生活は、情報の利用無くし
ては成り立たない。社会では、物事を提案したり諸問題を解決し
たりする場面で、いかに情報を円滑に利用するかがビジネス成功
の大きな要因の一つとなった。人々は、選ばれ加工された情報を
利用することで日々の生活を成立させており、よりわかりやすく使
いやすい情報の出現が、豊かさのレベルを高めているとも言える。
数年前からビジネスや研究の一部で取り上げられ始めた「情
報デザイン」は、現代社会に必要な分野として注目され、今で
は多方面で当然のことの如く言われるようになった。それに呼
応するように研究現場である大学や専門学校を中心に、その名
を冠した学科やコースも増えている。
情報教育の「第三のベクトル」として「情報デザイン教育」
を掲げるべきとの時代の流れを踏まえ、J 検では、情報の収集・
分析力、発想、編集、表現・構成力などを評価する新しい検定
試験分野を発足させた。「情報デザイン試験」は、先駆的な取
り組みとして 2007 年から始めたものである。
しかし、「情報デザイン」の定義は、各分野や専門的な観点
から出てはいるが、実践として活かす場合に求められるレベル
II
は明確に定まっていないのが現状である。そのため、企業人や
研究者、教育者、それぞれの立場から多種多様な解釈による提
唱や提案が 出ており、
「情報デザイン」は重要な分野であるら
しいという印象だけが一人歩きしているようにもみえる。
「情報デザイン」の浸透
教育現場における「情報デザイン」への対応も動きを見せて
いる。文部科学省は、2009 年 3 月に新高等学校学習指導要領
を公示した。この中で、主として専門学科において開設される
各教科の「情報」の科目として、これまでの「コンピュータデ
ザイン」が「情報デザイン」として改訂された。これは、
「情
報デザイン」を実際に活用する能力と態度を育てるという方向
を国から教育現場へ初めて示したものであり、これからの基準
となるものでもある。
また、企業へのヒアリングからも、
「情報デザイン力」を身
に付けた人材への期待が年々高くなっていることが明らかに
なっており、採用人事への影響も出始めている。
「現行情報デザイン試験」の再考
このように「情報デザイン」の高等教育現場への導入やこれ
からの社会人が身に付けるべき能力としての期待が背景に現れ
ている。このことから、学生の「情報デザイン力」の習熟度を評
価するツールを早くから導入した J 検でも、
「新しい情報デザイ
ン」
の定義を検討し、
試験内容の見直しを行う必要性が出てきた。
III
そのため、2007 年始めから、より幅広い観点から学んだ知
識や技能の評価として行う試験への改良と、
その対象となる
「情
報デザイン」の定義自体からの根本的な見直しを開始した。デ
ザインという狭義な専門ではなく誰にでも必要なものとしての
「情報デザイン」の姿と、どんな力をどのように身に付けるべ
きかということを中心とした再検討であった。
専修学校教育振興会「新しい情報デザイン教育」の提案
自分の思いを明確に伝えることや、受け取った様々な内容を
的確に処理して次の段階につなげ、より良い結果へ導くこと
が、社会でやりがいを持って物事に取り組む第一歩である。そ
の観点から、財団法人専修学校教育振興会は、すべての専門分
野を対象として、より幅広い実践に対応するための知識と技能
を身に付けさせる「これからの情報デザイン教育」を提案し、
その習熟度を評価するツールとして、
「新情報デザイン試験」
を設定した。知っておくべきであったと後から後悔しない「情
報デザイン力」の登場である。
2.将来の活用を前提とした実践型情報デザイン教育
「情報デザイン」を身に付けるべき対象者
実践に即応する「新情報デザイン教育」とは、学校教育の一
教科として知識を学ぶだけのものではない。社会人として身に
付けておくべき役立つ知識であり技能である。
IV
「情報デザイン」を最も活かすべき人物像を広く設定し、高
等学校、専門学校、短大・大学等を卒業してこれから社会で多
様な仕事に携わるすべての若者とした。学ぶ分野や学校種の差
はあるが、社会に出た直後に知っておくべき最小限の「情報デ
ザイン力」である知識・技能は、彼らに等しく必要である。
情報デザイン教育の導入
「情報デザイン教育」導入の可能性は学校によって様々であ
る。就職を意識した専門学校を中心に、教科としてカリキュラ
ムに組み入れることが、第一歩である。また、大学や高校など
の既存のカリキュラムの変更が困難な場合、まずは授業内容の
一部として、情報デザインを意識させる程度の事柄から取り上
げ、導入を視野に入れて取り組んでほしい。
情報デザイン試験新旧対照表
情報デザイン
旧試験
新試験
受験者設定
専門学校生
社会に出る人
主な対象
コンテンツ系
デザイン系
すべての分野
共通科目
初級
試験科目
選択科目
(ビジュアルデザイン分野)
(インタラクティブメディアデザイン分野)
(プレゼンテーションデザイン分野)
上級
(2010 年度後期予定)
試験形態
ペーパー方式
CBT(コンピュータ)方式
試験日
年2回(9月/2月)
希望日
V
今まで積み上げられた教育実践を織り交ぜながらの着実な取
り組みが、必ず学ぶ側の成果となるはずである。
さらに、指導者は、J 検の研修会や各地域の勉強会に積極的
に参加しながら横のつながりを持っていただきたい。この新し
い分野の教育を多くの仲間と共にさらに発展させていくこと
が、次の展開へのスタートになると思われる。
情報デザイン試験の活用
終わりに、本手引書は、実践型の身に付けたい力とそれを実
現する「新しい情報デザイン」の導入に向けた概略をわかりや
すく掲載しており、各学校独自の取り組みのきっかけとして是
非参考にしていただきたい。そして、学習した内容の到達度を
評価するツールとして、J 検「新情報デザイン試験」をしっか
り活用していただきたい。
試験合格こそが、これからの社会での生きる力として「情報
デザイン」が最低限は身に付いたという証である。
必要とされる
情報デザイン力
到達度
評価
受験
情報デザイン試験
(初級・上級)
※上級試験は 2010 年度後期から予定
情報デザイン試験の流れ
VI
社会からの
信用評価
社会における人材評価
各分野での情報デザイン教育
カリキュラムに組み入れた授業または学習機会
目 次
指導の手引き………………………………………………… II
情報デザイン教育のすすめ………………………………………… II
1身に付けたい力…………………………………………… 8
身に付けたい力とは………………………………………………… 8
1−1考え方 ……………………………………………………… 10
1−2分析力 ……………………………………………………… 12
1−3論理力 ……………………………………………………… 14
1−4表現力 ……………………………………………………… 16
1−5提案力 ……………………………………………………… 18
情報デザインの活用事例………………………………………… 20
2出題範囲………………………………………………… 28
情報デザインの範囲……………………………………………… 28
2−1情報デザインの考え方 …………………………………… 30
2−2情報の収集と整理 ………………………………………… 36
2−3問題解決と発想 …………………………………………… 42
2−4情報の構造化と表現 ……………………………………… 48
2−5情報の伝達と評価 ………………………………………… 54
試験概要…………………………………………………… 60
CBT 試験 ………………………………………………… 62
VII
1
身に付けたい力
身に付けたい力とは
主な問う内容
情報デザインで「身に付けたい力」
情報デザインは、社会活動をより円滑に行うための知識と技
能である。社会に出て初めて仕事をする人、企業・団体等でよ
り円滑な仕事や活動の進め方を考えようという人を対象とする。
この分野では、様々な職業に共通する仕事上の課題で必要と
なる要素を整理し、そこから導かれる普遍的な枠組みを現代社
会における「生きる力」として位置づけている。
ここで取り上げている内容の骨となる考え方と身に付けたい
力は、「人や社会の役に立つ」ということを前提としている。
1ステップ
考え方
情報デザインとは
…
情報とモラル
2ステップ
3ステップ
提案力
問題解決の考え方
題解決の考え方
情報構造の考え方
情
報構造の考え方
情報の伝達
報の伝達
調査手法
問題解決手法
情報表現の手法
評価とフィードバック
分析と整理
…
調査の考え方
…
表現力
…
論理力
…
分析力
身に付けたい力の枠組み
最初に全体の仕組みを知るための「考え方」を学ぶ。次に考
え方の推進力となる「分析力・論理力・表現力」というの3つ
の力。そして、この3つの力に支えられて成り立つ「提案力」
を身に付けるという3つのステップになっている。
8
1身に付けたい力
問題に直面した時に役立つ本質的な「知識と技能」
バラバラの知識と技術では問題に直面した時に、その解決に
役立つ知恵にはならない。
例えば、外国の人と話をする時に、単語をたくさん知ってい
ても、物事をうまく言い表せない場面がある。これは構文や用
法についての力が不足していて、単語が話し言葉にならないか
らである。
知識と技術についても同様に、使い分けや組み合わせ方を知
り、作業の流れに従って学ぶことで、
個別の内容を結びつけ「技
能」として発揮できるようになる。
知識・技能と生きる力の育成
社会に出たときに立ちはだかる問題に対して、うまく対応す
るためのトレーニングは、毎日の授業で出される課題である。
しかし、課題は科目ごとに違う内容で、学生はそれぞれの関
係性をうまくつかめていないというのが現状である。
そこで、「身に付けたい力」の分析力から提案力までの論理
的なつながりを活用することで、課題の要素相互のつながりを
「ある問題を解決するための課題」という視点から捉えなお
す。相互のつながりを意識してトレーニングを積むことで、知
識と技術が網の目のようにつながった能力になる。
これが、課題に直面した時に役立つ知恵として浮かび上がっ
てくる「社会に出て生きる力」となる。
9
1
1−
考え方
生きるために身に付けたい力の考え方
はじめに全体の流れを理解し問題解決に必要な手順を踏むと
いう考え方から始まり、情報の収集から分析までをまとめた分
析力。分析した情報から問題解決策を導きだす論理力。論理的
な情報の関係性を構造化して具現化する表現力。表現した内容
を相手にわかりやすく伝える提案力へとつながっている。
それぞれの項目の中に、情報デザインで取り上げている基本
的な内容の手順があるという構造になっている。
問題解決に必要な手順を踏む
問題と課題を整理すると、問題は現状で発生した解決すべき
事柄、課題は現状とあるべき姿とのギャップを埋めるために設
定したものとなる。問題発生をスタート地点とすれば、課題を
解決してあるべき姿にした状態がゴールである。
ゴール(目標)は、目的を達成した状態でもある。目的はス
タート地点で持っている意図で、ゴールへと向かう自分の動機
である。
問題が発生した時にゴールに向かう姿勢や考え方をみると、
問題をできるだけ回避しようとする人、問題を即解決しようと
する人、問題の解決に必要な手順を踏む人の3通りに分かれ
る。それぞれ、場当たり的な問題解決、表面的な問題解決、本
質的な問題解決、を目指す人と言える。
10
1身に付けたい力
体験・経験
言語
読解
編集
知識
基
構成
礎
ルール
力
モラル・道徳
調査
整理
力
企画
分析
分析力
構造化
考え方
収集
発見
表現
問
力
決
解
題
コミュニケーション
判断
発想
論理力
表現力
身に付けたい力
情報デザイン
プレゼンテーション
伝達
フィードバック
実現力
評価
改善
提案力
身に付けたい力の全体像
情報収集の時間を主
体的に作らない
できない理由を先に言う
解決策は場当たり的
その場に合わせて適
当に答えを出してしまう
タイプ②
考える習慣が少ない
問題を意識し即解決方
法を考える
集まった情報から問題
を捉える
収集した情報を整理せ
ず解決策を考える
思いついたアイディア
を解決策にする
問題解決に必要な手順を踏む ↓ 本質的な問題を考えての解決
問題意識を持たない
問題に対して即問題解決をはかる ↓ 表 面 的 な 問 題 を 解 決
で き る だ け 問 題 を 回 避 す る ↓
タイプ①
主体的に考えない
情報デザイナー
タイプ③
考える鍛錬をしている
納得できる解決策を導
き出す方法を考える
考え方
直接原因と間接的条
件の分析に必要な情
報を収集して不足分は
仮説で補う
分析力
原因と結果の関係から
問題点を見い出して情
報を構造化する
論理力 表現力
柔軟な発想で解決策
となるアイディアを考え
検証して解決策を探る
提案力
考え方から見た3つのタイプ
1−1考え方
11
1−
2
分析力
分析するための情報
分析の目的は、適切な判断をするための判断基準を得るこ
とにある。その根拠となる情報を手元に集めるのが情報収集
である。
このために行う調査は、ある物事を明らかにするために調べ
ることで、何をなぜ明らかにしようとするのかという動機(目
的)が出発点となり、進める方向として調査方針がある。この
動機と方針は重要である。
これらが不明確なまま行われた情報収集では、関連性の薄い
雑多な情報が集まるだけに終わってしまう。
意味や傾向を見い出し予測につなげる分析
集まった情報をただ並べ立てるだけでは、雑然とした情報群
になるだけで、その情報から判断基準のもととなる意味や傾向
を見出すことは困難となる。
物事をいくつかの要素や性質に分けて整理し、その成り立ち
を明らかにすることを「分析」と言う。
そこで、情報を要素化したり、グループ化、構造化の作業を
通じて、収集した情報の中から分析の目的である判断するため
の基準とその根拠となる意味を取り出していくことになる。こ
こで具体的な課題を見い出すことができる。
正しい判断にもとづいて新たなあるべき姿の目的や目標の設
定を行う段階へと移る。
12
1身に付けたい力
課題や問題点など
調査方針
課題や問題点に関係する調査内容
とその手法の方針を決める
ヒアリング
アンケート
情報
情報
情報
情報
文献
必要な情報
情報
観察
情報収集
特徴
情報
実験
情報
情報
情報
情報
情報
収集した情報の特徴や意味、成り
立ちなどが捉えられるように分析
して整理する
分析と整理 情報
情報収集から分析への流れ
脈絡なく整理されていない情報
一旦情報を分解する
集めた情報
要素化
グループ化された情報を構造化する
関連する情報をまとめる
構造化
グループ化
意味や傾向を見い出す分析の例
1−2分析力
13
3
1−
論理力
物事を筋道立てて考え解決策を探る
単純な問題解決は普段行っている行動の中に内在する。例え
ば「テーブルに置かれたグラスの水を飲む」という行動を問題
解決の観点から考えてみる。
グラスに入った水があれば、
目的である
「のどの渇きを癒す」
こと自体は容易に解決できる。しかし、周りが真っ暗闇になっ
た途端に状況は一変する。手探りでテーブルの位置、グラスの
位置など手からの情報と過去の記憶を照らし合わせ筋道を立て
考えることになる。さらに両手が使えない場合、解決すべき問
題はさらに複雑化する。
しかし、ここで問題解決の基本的な流れは同じで、問題の要
因が増え解決に至る筋道が少し長くなり絡み合っているだけ、
と仮定してみる。すると、問題解決は要素を整理し要因同士の
関係性を明らかにして筋道を立てて解決策を探れば良いという
ことになる。
問題解決の手順と論理的思考術
問題解決の筋道を整理し直面する課題に適応できるよう簡素
化すると、
「問題を把握」して「情報を集める」
、
となる。次に、
「情報の関係性を組み立て」て「柔軟な発想で解決策を探る」
という手順になる。この手順が論理的思考の枠組みとなる。
この問題解決の手順である枠組みを様々な課題に当てはめて
トレーニングすることで論理的思考の技術は身に付いていく。
14
1身に付けたい力
理想
あるべき姿
ギャップ
論理的思考
課題n
=
課題nの目標
課題3
問題
課題3の目標
・解決することが目的の達成になる
・できる人は達成にスピード感がある
課題2
② 現状分析
③ 課題設定
④ ゴールの設定
⑤ 実行計画の策定
⑥ 実行
⑦ 検証・知識化(共有)
課題2の目標
⑧ 改善
課題1
課題1の目標
① 問題認識
現在の姿
現実
①∼⑧までを順番
に意識して行う
問題解決と論理的思考
解決すべき課題の設定例
①問題解決の動機(目的)を明確にする。
②問題定義の糸口となる調査方針は現状を俯瞰して決める。
③問題に関連する原因や要因と思われる情報を収集する。
④問題の原因となる事柄と問題との関係性を整理する。
⑤問題群の中から解決すべき問題を定義する。
⑥問題点を解決した状態の「理想のあるべき姿」を書き出す。
⑦あるべき姿を目標とし現状とのギャップを課題とする。
⑧課題に含まれる要素を分解して「小課題」リストを作る。
⑨「小課題」の難易度や流れを考えクリアするべき順番を決める。
1−3論理力
15
4
1−
表現力
表現を支える情報の構造化
例えば、鉄道の路線図は、その路線を読みとってわかりやす
い形に構造化して表現したものである。一本の線路とその上の
駅という単純な構造では、駅の位置関係を直線上に配置して表
せば良い。しかし、東京の地下鉄のように複雑に路線が絡み
合っている場合は、駅の位置関係や線のつながりを色や線種で
分け、
関係性がわかるように構造化し表現しなければならない。
路線の構造は、路線に関する情報の中に存在しており、それを
読み取ってわかりやすく再現したものが路線図として表現される。
この仕組みを単純化すると「構造は情報に内在し、情報の構
造化は情報を読みとって視覚的に再現すること」となる。
構造化と表現
表現は相手が理解しやすいように、情報の利用法や、内容と
の親和性を考慮して、
最も伝えたい構造を軸にする必要がある。
例えば、切符売り場で路線図を見る目的が、行き先までの経
路と料金を知ることであれば、利用者の視点で構造化と表現を
行うことが大切である。
目的を捉え、それを達成できるように伝えるべきことを構造
化する。そして、その情報が持つ意味を様々な手法を適切に用
いてわかりやすく表現する。情報の構造化と表現は、まず単純
な事柄の関係性をどう表現すれば「どのように伝わるのか」か
ら入ると技術を習得しやすくなる。
16
1身に付けたい力
並列・順列・分岐・因果・階層
関係
要素A
要素B
関係性
度合い・性質
情報の関係と関係性
左の図は三角形を描いたものである
単独で存在しているように見えるが
実は背景との関係で三角形に見えて
いる。もし背景が同じ色であれば描
かれていても見えないことになる。
2つの図形と真ん中の矢印が描かれ
ている場合には、左から右への変化
や、左から右へ影響を与えているよ
うな印象を与える。矢印が「+」や
「=」などの記号になると印象も変
化する。
表現と印象
1−4表現力
17
1−
5
提案力
伝わらなければ存在しないのと同じ
最初に行うべき作業は、提案の目的を明確にすることであ
る。次に考えるべきことは、目的を達成するためには聞き手は
何を見て何を聞く必要があるのかということである。
提案の内容は、相手の視点に立って考えた目的とゴールまで
の物語とならなければ共感を得ることはできない。そのために
は事前の準備が大切で昔から職人の間では「段取り八分」と言
われている。残りは相手に伝える時点で、考えや気持ちを身ぶ
り・表情・言葉などに表わす態度の印象で決まることになる。
より良くするための評価
評価を行う目的は、提案する内容や態度に対して良し悪しの
値打を決めることである。評価を受けることで「もっと」が実
現できる。
また、仕事の達成度を客観的に知ることが可能になり、さら
なる良い結果に結びつけることができる。
学生は評価し批判されることが自分にとっては良くないこと
だと思いがちである。しかし、評価や批判には良くない点を示
し、それにより相手が正すことを期待する意味が込められてい
る。良し悪しがわかれば次の改善につながる。
また、他人のやり方の良し悪しを評価できれば、他人の提案
や過去の成功事例・失敗事例などからも学ぶことができるよう
になり実践的な改善につながっていく。
18
1身に付けたい力
① 誰に
相手
② 何のために
内容
目的
③ 何を伝えるのか
「情報伝達」3つの大切な要素
有効性
到達度
達成度
評価
効率性
問題点 良い点
活動など
課題
etc
満足度
経済性
価値
etc
効果
・振り返り
・見直し
・検証
より良い
結果へ
改善
評価の効果
情報デザイン「身に付けたい力」の活用手順例
①考え方・分析力・論理力・表現力・提案力の概要を理解する。
②授業内容はある問題の解決とし目的を明確にする。
③授業が目指す「あるべき姿」をゴールとする。
④現状とあるべき姿のギャップを課題として設定する。
⑤課題の中に「考え方」と「4つの力」を位置づけする。
1−5提案力
19
情報デザインの活用事例
活用事例1
体験的に学ぶ情報デザインの考え方
情報デザインの考え方を理解させるためには、その学習を体
系化し、身近なテーマの課題を体験的に学ばせることが良い。
情報の収集と整理→問題解決と発想→情報の構造化と表現→
情報の伝達と評価の各段階。これが情報デザイン試験が示す試
験構造である。ここでは、これらを連続して体験する課題の実
践例を見てみる。
テーマ:電車が走る高架壁面のデザインおよびリサーチ
目 的:公共性の高い空間に設置するデザインを検討する時に
は、その空間を共有する人や施設について調査し、ふ
さわしいアイディアと表現を検討すること。
方 法:高架壁面の近隣住民にアンケート調査を実施。ニーズ
や意識調査をして問題点を抽出。問題点から導いたコ
ンセプトと表現について近隣住民に説明し、意見をも
らいアイディアと表現を改善する。
課題のテーマ、目的、方法
どんな授業であっても、課題の目的が何かを学習者に理解さ
せることが重要である。特に情報デザインを学ぶ場合では、デ
ザインによって制作される作品が誰に、いつ、どのように、ど
こで使用されるものなのかを把握させることが大切である。こ
れらを把握することにより、ターゲットや利用状況について確
20
1身に付けたい力
認することができるからである。
問題の解決に活用する方法は、情報デザインの様々な手法や
ツールを組み合わせて構成する。
ここでは、情報収集と整理の方法として、
フィールドワーク、
訪問調査(アンケート)
、カードソート法、グラフを活用した。
制作物が設置される場所を理解するには、文献調査だけでな
く実際にその場所へ足を運びたい。その地域にどんな文化があ
りどんな人々が暮らしているのかを、より良く知ることができ
る。さらに、人々がどんな思いを持ち生活しているのかなどに
ついて知るためには、実際に訪問しアンケートやインタビュー
を行うことが有効である。このように、知りたい情報が何であ
るのかによって調査方法も異なることに気をつけたい。
次に、集めた情報から問題点を発見し、アイディアを発想
する。フィールドワークの結果を分析・整理するために、撮
影した写真や記録した内容を、項目ごとにカード(ポストイッ
トなど)に書き出し、それらを共通項によって分類していく
方法を取る場合がある。共通項を表わす名前を付けることを
ラベリングと言う。収集した情報の分類方法についてどのよ
うに考えたのか、その視点をラベリングで明確にさせること
が大切である。
問題に対する課題が見え視点がはっきりすると、次は情報を
構造化しコンセプトを視覚化していくことになる。
情報デザインの活用事例
21
ここではスケッチ、分類とラベリング、プロトタイプを活用
した。調査やフィールドワークで理解された内容をもとに、イ
メージをスケッチする。壁面のデザイン案を制作者の好みや思
い込みで考えるのではなく、まずは情報収集の結果からわかっ
たことを視覚化することが大切である。調査に関わった人がそ
れぞれに案を出し合い、いろいろな考え方を共有するよう心が
けたい。複数のアイディアを表現方法や内容の共通項で分類し
ラベリングを行うと、グループの考えが把握しやすくなる。完
成作品のイメージがつかめるように、代表的な例を選び簡単な
プロトタイプを作ってみると、サイズや表現など細かい点につ
いての改善点に気付くことができる。
作品の方向性がある程度固まってきたら、もう一度調査対象
者に見てもらい、進行内容を伝えて意見をもらう。デザイン案
を作品が設置される場所を利用する人に評価してもらうこと
で、調査段階では気が付かなかったニーズについて聞き出すこ
ともできる。この事例では、まず 1/50 サイズのモックアップ
を制作し作品の完成イメージを伝えた。制作者のイメージを理
解してもらえるように工夫したい。
情報デザインの学習では、各段階を踏むことで客観的に考える
ことができるようになる。学生たちははやく作品を作りたいという
気持ちから、自分の好みや思い込みだけで表現しがちであるが、
はやる気持ちを抑え、
利用者の目線で考えさせることが大切である。
22
1身に付けたい力
ワークフロー
活動
ドキュメント
調査
情報の収集と整理
分析と整理
①フィールドワーク
(A)アンケート調査用紙
15
Q. 現状の壁画について
(人)
どのようなイメージ
12
を持っていますか?
9
6
調査結果
3
0
派手な
楽しそう
カジュアルな
わかりやすい
大久保らしい
好ましい
問題解決と発想
情報の構造化と表現
情報の伝達と評価
実行
②調査結果をカードソート分類
(B)アンケート調査結果 ③ブレーンストーミング法でアイデア発想
(C)ブレスト結果
④スケッチ案を表現特徴別にカテゴライズ
(D)プロトタイプ
⑤プレゼンテーション近隣住民へ報告
(E)1/50モックアップ
⑥壁画ペイント作業
(F)壁画デザイン
(部分)
問題の発見
アイディア発想
情報の構造化
情報表現
情報の伝達
評価とフィードバック
実行
情報デザインの活用事例
23
活用事例2
様々な形で有効な「情報デザイン」
「情報デザイン」を学習させようとする場合、難しい用語を
単に記憶させたり、難しい理論を読み聞かせたりするばかりが
有効というわけではない。簡単で身近なテーマについて、実際
に考察しながら体験型の授業展開をする方が、よりわかりやす
く、身に付きやすい。次に、
「情報デザイン」を学ぶための簡
単なテーマの授業展開例を挙げてみたい。
「イチゴ」は果物か野菜か?
4∼6名で少人数のチームを作り、次の課題を与える。
課題
野菜や果物の写真が貼り付けられた数枚のカードを自由にグルーピングしなさい
作業手順
①カードを自由にグルーピングする
②グループごとにラベルをつける
③手順①∼②を数回繰り返し、いろんな分け方を考える
24
1身に付けたい力
何を基準にグルーピングするかで、いくつかの分け方が考え
られる。例えば「野菜と果物」
「色」
「サイズ」
「収穫される時期」
などで分けられるのではないだろうか。
今、「野菜と果物」に分類する作業を想定したとき、イチゴ
について、メンバーの誰かは果物だと言い、またあるメンバー
は野菜だと主張する状況になることもあるだろう。
ここで大切なのは、
「なぜ野菜(果物)なのか?」をメンバー
で話し合いながら仮説を立てさせることである。
次に、その仮説を検証するために、様々な調査を行わせる。
調査によって野菜・果物・イチゴなどに関連する知識を関連づ
けながら学習することが可能になる。
このように、簡単なテーマで、
「論理力」
「分析力」を身に付
けるための授業を展開を試みてもらいたい。
野 菜
果 物
?
情報デザインの活用事例
25
活用事例3
システム開発の指導には情報デザインの活用を
情報システムの開発を実習させるには、開発するシステムの
ユーザを想定し,テーマを決めさせることから始まる。その際
に活用できるのが、ブレーンストーミング、KJ 法等の発想法
である。
分析の工程では適切な調査方法の指導が要求される。また、
分析結果の表現方法の指導も必要である。
設計の工程では、特に GUI の設計や画面遷移において人間
中心設計を心がけさせる。プログラムとして矛盾なく動作して
も、使いにくい情報システムはそのライフサイクルが短いとい
うことを認識させる。
開発を通じて幾度となくレビューを実施するが、伝えたいこ
とをわかりやすく表現する工夫と努力を心がけさせる。
指導過程と身に付けさせたい力の関係は次のようになる。
テーマ決め
分析
分析力
提案力
設計
プログラミング
論理力
表現力
身に付けたい力の考え方
26
プレゼンテーション
1身に付けたい力
ユーザーへの配慮を怠ると、使いにくいシステムになってし
まう。業務上で実際に遭遇した Web ページの例を示す。
例 1)
“1995”のところにカーソルを移動させ、 数値を入力
したが値を変更できなかった。使い方がわからず、諦めて“次
へ”ボタンを押下したら訂正する画面も出ずに、そのままサー
バへ送信されてしまった。後日、偶然に“1995”の左右にある
“<>”をクリックすると数値が変化することに気が付いた。
例 2)事前にメールで“連絡先ご担当者様”としてローマ字
の姓と名が連絡されてきていた。そのため姓をローマ字で入力
し、送信したが認証されなかった。電話サポートに問い合わせ
たところ、姓は漢字のみ有効とのことであった。
情報を整理し、相手に適切に伝えることの重要性を痛感した
事例だった。
情報デザインの活用事例
27
2
出題範囲
情報デザインの範囲
主な問う内容
情報デザインとは、社会で生きていく上で必要な「身に付け
たい力」を習得し活用することで、仕事等を円滑に進める知識
と技能である。そのため、部分的でムラのある理解では、現場
で十分に活かすことはできない。それぞれの力が連携すること
が重要である。
情報デザイン試験 身に付けたい力
情報デザイン 大項目
1.情報デザインの考え方
考え方
「社会で働き始めるすべての人に必要な力」として情報デザインの考え方や流れ、倫
理を理解する。
2.情報の収集と整理
分析力
現実を正しく捉えて重要な問題や課題に気付くために、情報を収集し分析・整理する
手法を理解する。
3.問題解決と発想
論理力
個人やチーム力を活かしながら、問題を適切な方法で解決する。また、アイディアを
発想する手法を理解する。
4.情報の構造化と表現
表現力
情報の性質や関係性を明確化し感覚や認知の特性を踏まえてわかりやすく表現する手
法を理解する。
5.情報の伝達と評価
提案力
28
相手の納得と共感を得るために、情報を効果的に伝達する手法と、様々な活動を改善しな
がら継続する手法を理解する。
2 出題範囲
本章では、「身に付けたい力」に連動した情報デザインの流
れに沿った具体的な出題範囲を示し、その流れに沿って学ぶべ
き内容とポイントを概説する。
以下の内容が、情報デザインで学ぶべき範囲であり、情報デ
ザイン試験の出題範囲である。
の出題範囲 の範囲 中項目
小項目
1-1 情報デザインとは
①情報社会とデザイン ②情報とコミュニケーション
③情報デザインの活用 ④情報デザインの作業とプロセス
情報デザインの意義と役割、基本的な流れ。
1-2 情報とモラル
情報を扱う際に求められるモラルとルール。
2-1 調査の考え方
調査を行う様々な場面と、基本的な流れ。
2-2 調査手法
代表的な調査手法とその使い分け。
2-3 分析と整理
集められた情報の分析と整理、活用。
3-1 問題解決の考え方
適切に問題を捉え、解決する基本的な流れ。
3-2 問題解決手法
問題解決の手法とその使い分け。
4-1 情報構造の考え方
情報を整理、構造化するための考え方。
4-2 情報表現の手法
情報を伝えるための表現の基礎。
5-1 情報の伝達
対話やプレゼンテーションのスキル。
5-2 評価とフィードバック
活動を振り返り、改善していく方法。
①モラルの必要性 ②情報社会におけるルール
①調査の目的 ②調査の基本的な手順
①調査手法の選択 ②代表的な調査手法
①情報の分析手法 ②調査結果の表現と活用
①問題の捉え方 ②問題解決の手順
①問題解決手法の概略 ②問題解決手法の選択
①情報構造の捉え方 ②情報の関係性 ③情報構造の種類
①表現の基礎 ②情報表現の種類
①伝える目的 ②コミュニケーション
③プレゼンテーション
①評価の目的 ②評価の種類 ③改善の方法
情報デザインの範囲
29
1
2−
情報デザインの考え方
主な問う内容
情報デザインが求められている社会的背景や役割など情報デザ
インの考え方についての理解を問う。
情報デザインの流れを理解し、各ステップにおける情報デザイ
ンの手法についての理解を問う。
情報を扱う上で身に付けるべきモラルと情報社会における様々
なルールについての理解を問う。
指導のポイント
❶情報デザインの役割について理解させる。
❷情報デザインの活用事例について理解させる。
❸社会人として必要なモラルやルールを身に付けさせる。
情報社会とデザイン
ICT(Information and Communication(s) Technology)の成長とともに、
身の回りの情報量は日々増加する一方である。
他方、
課題も生じている。
・情報機器に触れる機会・能力差による入手可能な情報量の
格差の発生。
・複雑化するインフラや機器のしくみとその操作。
こうした背景を踏まえ、
・ユニバーサルデザインの考え方など、情報デザインに必要
となる考え方を知り、役割を理解させる。
・情報デザインの扱う対象は物(モノ)のみならず、無形の
サービスや情報の振る舞いといった事(コト)のデザイン
にも及ぶことを理解させる。
30
2出題範囲
情報デザイン
デザイン
整理・構想
計画・理解
情報
活用
身の回りの
ものごと
表現・伝達
情報デザインについての理解
1. 見る(観察)
2. 考える(仮説・可視化)
3. 表現する(実行)
人
人
行っていること
人工物
観察データ
仮説
可視化
製品やサービス
人工物
環境
分析力
論理力
表現力
環境
提案力
論理的・創造的発想による情報デザインの考え方
情報デザインの指導では、以下の力を身につけた人材育成を目指す。
情報収集の方法を知り、課題の理解ができるようになる。
行動に先立ち手順や筋道を設計できるようになる。
アイデアを可視化し他者と共有できるようになる。
相手に考えやアイデアを提案できるようになる。
仕事や課題のゴールに効率よくたどり着けるようになる。
情報デザインを指導する目標
2−1情報デザインの考え方
31
生活と情報デザイン
情報デザインは、情報技術そのもの同様に日常生活に浸透してお
り、情報を利用・活用するものであると同時に、考え方や暮らし方
を改善する知恵として必要とされることを、実例を交えて指導する。
また、情報を必要とする人の立場や目線に立って情報を整理
し、やさしく、わかりやすく伝えることで豊かなコミュニケー
ションが達成できることを理解させる。
・ニュースや天気予報といった一般情報の提供。
・高機能な家電の表示、操作と動作。
・その他電子的な基盤の上にある各種有形・無形のサービス。
など。
ビジネスと情報デザイン
仕事をする中での各相・場面での情報デザインを知る。
・人と協同・共有する。
・相互理解、伝える、説得する−オリエンテーション、プレ
ゼンテーション、会議など。
ものづくりと情報デザイン
情報デザインの考え方をもとに物事がつくられるものとし
て、3つの領域を扱う。
①インフォメーショングラフィックス
②道具とインタラクションデザイン
③コミュニケーションとサービス
32
2出題範囲
目的
「何のために?」
方法
「どのように?」
収集した
情報
価値ある
情報
伝達内容
対象
「誰に?」
知識
技能
コミュニケーションに必要な情報
情報とは
コンテキスト
経験
知恵
知識
知識を実践で昇華したもの
情報を経験から解釈したもの
情報
データを理解できる形に整理したもの
データ
事実を記号や数値で表したもの
情報とは
身振りや手振り
言葉や文字
情報の入力器官:目と耳
送り手
意味内容
暗号化
記号
受け手
記号の解釈
意味内容の理解
コミュニケーションのモデル
2−1情報デザインの考え方
33
情報デザインとモラル
社会で人間が快適に暮らすには、互いにモラルを尊重する必
要があるのと同様、情報を扱う上でのモラルも重要である。ま
た、互いに顔の見えないネットワーク社会においては、気安さ
や便利さの反面、安易な操作でモラルに反する行為をしてしま
いがちである。モラルの尊重を身に付けさせるために、主に次
のような項目についての確認と指導が必要である。
・メールを扱う上で基本的なルールを守っているか。
・レポート作成などにおいて Web ページから安易にコピー
&ペーストしていないか。
・情報収集のためにデジタル万引きをしていないか。
・安易な情報発信でプライバシーは侵害していないか。
・個人情報を尊重し、その漏洩防止に留意しているか。
・意図的な情報操作はしていないか。
・怪しいサイトを閲覧していないか。
・知識を悪用して、クラッキングやフィッシング等の反社会
的行為をしてい ないか。
・セキュリティについて理解し、適切な対策をとっているか。
・著作権を尊重し、他人の著作物の正しい引用方法を理解し
ているか。
・自分の所属する組織のセキュリティポリシーを理解し、実
践しているか。
34
2出題範囲
情報デザインとルール
情報社会では多くの権利があり、様々な法律でそれが守られ
ている。一例として、ネットワーク上での不正行為に対処する
ために、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」
、
「プロバ
イダ責任制限法」が制定されている。
また、形のない知的創造物はコピーや模倣が簡単にできるた
め、知的財産権として財産的な価値が認められている。なじみ
の深い著作権は知的財産権の一部である。産業財産権と異な
り、
著作権は申請することなく著作者に与えられる権利である。
知的財産権
著作権
産業財産権
特許権
その他
実用新案権
意匠権
商標権
知的な財産を守る法律
・無形のものも含む知的財産権をはじめとした他者の権利の尊重。
・関連法規の基礎知識と遵守。
・関連法規の理解と積極的な活用。
キーワード例:ユビキタス社会,ユニバーサルデザイン,人間中心設計,
デジタルデバイド,メンタルモデル,ユーザビリティー,プライバシー保
護,情報操作,知的財産権,個人情報保護,著作権,産業財産権など
2−1情報デザインの考え方
35
2
2−
情報の収集と整理
主な問う内容
解決するべき問題に気が付いたり、要求を理解するために必要
な資料や、人々の意見・活動を調べる方法について問う。
調査によって得られた情報を分析・整理して、設定した目的に
対する示唆をくみ取り、それを他者に説明したり、アイディア
を生み出したりする方法について問う。
指導のポイント
❶事前に目的を明確にすることの重要性を理解させる。
❷正しい調査の手法とその使い分けを理解させる。
❸情報を整理して理解し、
示唆を得る方法を理解させる。
調査の考え方
「話し上手は聞き上手」と言われるように、現実を正しく、
深く理解することができれば、発想力や表現力も向上する。
情報デザインでは、現実に即し適切なアイディアを提案する
ことが目標となるが、誤った前提にもとづく提案では意味がな
い。調査を通じて現実を正しく捉えることの必要性を理解させ
る。次のような項目についての確認と指導が必要である。
・まず目的と方針を明確に定める。
・目的に適した手法を採用する。
・結論はプロジェクト全体の目的に沿って整理する。
現状に関する理解が不足している場合には、事前に軽量な調
査を行うことで目的が明確になることも認識させる。
36
2出題範囲
❶ 目的を設定する
❷ 調査の方法、調査対象を計画する
❸ 質問や調査対象を準備する
❹ 調査を実施する
❺ 得られた情報を分析・整理する
❻ 報告して共有する
( 次のアクションへ)
情報の収集と整理の手順
気付きを得る
自然な状況での観察
参加型デザイン
インタビュー調査
日記法
活動の様子を知る
意見や感情を知る
何気ない会話
操作履歴の分析
アンケート調査
実験
検証する
人々の活動や意見に関する様々な調査手法
2−2情報の収集と整理
37
文献調査
書籍など既存の情報を使った文献調査については、
・観察や質問を行って独自に行う調査との違い。
・短期間で多くの情報を集めることができるインターネット
を利用した情報収集。
・曖昧・不正確な情報を排除する適切な読み解き方。
といった点を指導する。
インタビュー調査・アンケート調査
質問を通じて人々から情報を得る調査の代表的な手法とし
て、インタビューとアンケートを取り上げ、次のようなそれぞ
れの特性について理解させる。
・インタビュー調査は対話を通じ、深い理解(活動の背後に
ある動機や価値観等)を得たい場合に有効。
・アンケート調査は、多くの調査対象から全体の傾向を調べ
る場合や、特定条件による差を明確にして、仮説の検証を
行う場合に有効。
・調査票の構成や表現には、分析目的に合致したものが必要。
その他の調査手法
その他の調査手法についても触れ、
特性等の知識を持たせる。
・観察や日記法、参加型デザインなど。
既存の手法にとらわれず、プロジェクトの目的に合った方法
を自ら工夫する姿勢を促す。
38
2出題範囲
活動の時間的流れ、
場所(空間)
、
人間関係、
情報と道具など、
多角的な視点で現実を捉える。
http://www.○○○○○.○○/○○
あなたは、コンピュータを所有していますか?
(個人で購入し、自分や、自分を含む家族で利用するもの)
持っていない
1台持っている
2台以上持っている
台
あなたが所有しているコンピュータの形態は以下のいずれですか。
もっともよく利用するものについてお答えください。
ノート型(サブノート型、タブレット型を含む)
デスクトップ型(タワー型、画面一体型等を含む)
あなたが所有しているコンピュータのうち、もっともよく利用する
ものの、画面のサイズを教えてください。
10 インチ未満
10 インチ以上 17 インチ未満
17 インチ以上 20 インチ未満
20 インチ以上
そのコンピュータにインストールしているソフトウェアを、
以下からいくつでも選んでください。
ワードプロセッサ(文書作成ソフト。Microsoft Word など)
お絵描きソフト(ドロー系が贈編集ソフト。Adobe Illustrator など)
Web ブラウザ(InternetExplorer, Safari など)
電子メールソフト度
PDF 作成ソフト(Adobe Acrobat など)
予定管理ソフト
はがき・年賀状作成ソフト
インターネットを使ったアンケート調査とインタビュー調査
2−2情報の収集と整理
39
分析と整理
分析と整理についてその手法の基本を示して指導する。
・定性データの分析におけるグループ化、構造化(表やマッ
プなどの形式の活用)によるデータの整理とその解釈。
・調査結果を踏まえたシナリオやペルソナ等の想定。
・定量データの分析におけるグラフや統計解析の基本。
・データ処理に適切な尺度や代表値、分析方法などとその数
学的な解釈。
・丁寧な分析ではなく印象的な気付きから発想へ直接つなげ
る方法の是非、調査結果の確認による補強の必要性。
ここでは、論理的な分析力だけでなく、チームで協調して理
解を深めたり、発想を行ったりする力を身に付けさせる。
調査結果の表現と活用
報告書やプレゼンテーションで現状の課題を納得させ、人の
心を動かすことは容易ではない。調査のもたらすデータを活か
す表現、そのための考え方と手法について指導する。
・調査結果、解決すべき課題等のポイントを簡潔に伝える表現。
・明快な論理の構成につながる整理。
・写真や対象者の発言の提示等でリアリティに訴えるといっ
た各手法。
例えば、何らかの提案活動を課題にとり、現状の深い理解に
もとづく発想と説明が力を持つことを体験させる。
40
2出題範囲
①要素化
②グループ化
③構造化
A
B
B
A
C
C
定性データ分析の流れ
電気自動車は気軽なママチャリがわり
浜田三智子(24)
大学で国文学を勉強した後、仙台市の編集プロダクションに就職して2年。仕
事には慣れてきて、取材や読書とのコミュニケーションを楽しんでいる。仙台
の街と人が大好きで、担当する地方誌を通じて、人々が生活の中で「あたたか
い小さな喜び」
を見つけてくれることを望んでいる。活発でおしゃべりが大好き。
運転行動:仕事、買い物や食事に出るときも、ほとんど電気自動車を使う。取材
運転行動:浜田三智子
のため、週に2日はカメラとノートを持って、1人で読者から紹介された近郊の
年齢:24 歳
カフェやレストランに出かける。週末に松島などに車で出かけることもある。
職業:会社員
(編集プロダクション勤務)
所有する車:電気自動車 XX-RR
(ライトグリーン)
を1年前に 10 年ローンで購入。
結婚:未婚/既婚
子供:なし
コンパクトで小回りが利くのでお気に入り。内装は購入時のまま。
困ること:休日に出かけた際、事故で渋滞につかまったり、ちょっと欲張って
足を伸ばしたりしたときは、バッテリーの残量が気になる。 「電気自動車利用者」のペルソナ例
キーワード例:形成的調査、検証調査、事前調査、定性調査、定量調査、
文献調査、インタビュー、アンケート、比較調査、クロス集計、参加型デ
ザイン、グループ化、構造化(モデル化)、ペルソナ、シナリオなど
2−2情報の収集と整理
41
3
2−
問題解決と発想
主な問う内容
何事かをなそうとする場合、必ず何らかの問題にぶつかる。そ
の問題の原因がどこにあるのかを究明することが、問題解決の
第一歩になる。そのような問題の原因究明についての知識や方
法について問う。
問題の原因を明確にした後、問題解決を行うために必要な方法
論や発想法などの知識や手段について問う。
指導のポイント
❶問題の原因究明のために仮説の立て方を理解させる。
❷問題点把握のために表や図を使う方法を理解させる。
❸様々な発想法を使い、情報を整理しまとめさせる。
問題解決の重要さ
社会生活において、何らかの問題との遭遇は不可避である。
・問題への対処、最善の解決策の立案と実施が重要。
・問題解決力のもたらす利点。
これらをしっかりと認識できるような指導を心がけたい。
・「問題とは何か」を理解させる。
・現在の問題、将来の問題はどんな種類なのかを知る。
問題解決について学ぶ前に理解しておきたいことは、
「問題
とは何か」ということである。そして、問題を整理・分析する
ためには、
問題を3つのタイプに分けて考えるとわかりやすい。
タイプ別に最善な対策を立案することの重要性と、なぜ問題解決
力が必要なのかを理解させておくことが問題解決の第一歩である。
42
2出題範囲
あるべき基準
問題
ギャップ
現 状
問題とは
目標
目標
問題発生
目標
現状
現状
復帰
悪化?
現状
発生型問題
設定型問題
将来型問題
3つのタイプの問題
解決
ゴール
方向性が違った!
遠回りかな?
解決
スタート
問題解決力が身に付くと
2−3問題解決と発想
43
問題解決の流れ
問題がどのようなものなのかを認識できるようになった後、
次の段階として、問題解決の手順を指導する。
・全体の流れを把握させた後、各過程におけるポイントを理
解させる。
特に重要なのは、グループによる作業を考えさせることである。
解決手法のポイント
ここでは、「情報の収集と整理」で学習した手順に沿って、
各過程ごとの作業のポイントをより具体的に指導する。
・問題解決に際しての冷静で、論理的な判断の必要性。
・「ロジカルシンキング」の手法を利用。
・マーケティングの考え方。
複数の手法を合わせた説明で、より深い学習が可能になる。
ツールの活用
実際に問題解決にあたる場合、ロジカルシンキングを有効に
利用できるように開発されたツールを使うと効率的である。
・諸説ある発想法や思考法の特徴を比較しながら指導する。
・目的に応じた適切なツールの選択方法と使い方を理解させる。
ここでも簡単な事例を用意し、適切なツールを使って実際に
発想を展開させるといったワークショップ的な授業展開を行う
と良い。手法の名称や用語の意味だけを憶える学習に留まらな
いようにする。
44
2出題範囲
ロジックツリー
SWOT分析
外部環境
機会(Opportunity)
脅威(Threat)
積極化行動
差異化行動
弱み
(Weakness)
消極化行動
撤退化行動
内部環境
強み
(Strength)
PPM分析
高
問題児
金のなる木
負け犬
市場成長率
花形
低
高
マーケットシェア
低
ロジカルシンキングのツール群
2−3問題解決と発想
45
ワークショップ型演習課題のすすめ
問題解決について学習させる場合、講義形式の授業に加えて
実際に簡単な事例を使った体験型の講座を行うと効果的であ
る。次に、簡単な事例を紹介する。
ロジックツリーで分解…Whereツリー
問題を解決するためには、
原因がどこにあるのかを究明することが大切である。原因究明の
ためによく使われるツールに、
ロジックツリーがある。
ロジックツリーをつくるときは、
MECE(もれなくダブリなく)
であることが大切であるが、
これがな
かなか難しく慣れを要する。
そこで、
「身近にあるものを使って、
ロジックツリーで分解を試みる」
という課題に取り組ませる
とよい。
トップボックス
トップボックスにあたる
部分にいろんなものを
入れて分解してみる
例えば…
・机の引き出しの中
・冷蔵庫の中
・お弁当の中
など
上記の例で、
「お弁当の中」
と
「お弁当」
とどちらをトップボックスにもってくるかで、
次の階層が
どうなるかは、
大きく違ってくる。
鶏の唐揚げ
袋(巾着)
卵焼き
きんぴらごぼう
お漬け物
ごはん
食べられ
ないもの
ミートボール
箸
おかず
食べられ
るもの
事例1:ロジックツリーの応用
46
箸箱
弁当箱
お弁当
お弁当の中身
おかず
ごはん
2出題範囲
フロー図で因果関係…Why?
問題には必ず原因がある。原因を特定しようとするとき、多くの人は、
パッと思いつくただ1つ
の原因に特定しようとする傾向がある。
しかし、
問題が起こっている原因は、
1つではないことが
多い。
原因となる事象を洗い出したり、
その緊急度を測るためには、
仮説思考で、
因果関係を見直
してみるとよい。
このようなときに有効なツールの1つにフロー図がある。
①問題の事象を付
病気がち
学校を
よく休んだ
箋に書いて貼る
授業につい
ていけない
成績が悪い
②左から原因を
たどる
勉強時間
の不足
③付箋を入れ替
えてみる
事例2:フロー図の応用
PPM分析を応用して打ち手を選択
立案された数個の解決策の中から
最 適なものを選 択 する手 段として、
PPM分析を応用したマトリックスを使う
とよい。
❸
対策の効果
<携帯ゲーム機獲得の対策>
❶バイトしてお金を貯める
❷おこづかいアップを頼む
❸ローンで買う
❹懸賞に応募して当てる
❺友達から譲ってもらう
❻中古品を手に入れる
高
❻
❶
❷
❺
低
❹
難
対策の難易度
易
事例3:PPM 分析の応用
キーワード例:ゴール、発生型問題、設定型問題、将来型問題、発散的思
考、収束的思考、仮説思考、定量化、層別、ブレーンストーミング、KJ 法、
特性要因図、MECE、ロジックツリー、SWOT 分析、PPM 分析など
2−3問題解決と発想
47
4
2−
情報の構造化と表現
主な問う内容
収集した情報の中に関係性を見つけ、ユーザにわかりやすいよ
うに分類・組織化する技術についての理解を問う。
メディアの特徴を理解し、意図した考えを伝えるために適切な
情報構造を組み立てられる力を問う。
人間の感覚や認知の仕組みの特性を踏まえ、わかりやすく情報
を伝える表現手法の理解を問う。
指導のポイント
❶様々な情報の中に関係性を見い出し、分類手法を理解させる。
❷ユーザが求める情報を得られるよう構造化の方法を理解させる。
❸表現要素とその特徴・心理的な働きの効果を理解させる。
情報構造の捉え方
入口の五感から認知、情報を捉える姿勢とその後の処理であ
る構造化までの流れの基本を実践を交えて指導する。
・人間が情報を取り込む、感覚・知覚・認知のプロセス。
・客観的な視点の必要性。
・メタ認知と他者視点による物事の推量。
・認知された要素の統合/分解、要素相互の関係性とそれに
よる構造、という関係。
・情報を構造化する第一段階としての分類とその方法。
・情報分類における分類基準の重要性。
・リチャード・ソール・ワーマンの分類法。
・カードソート法や KJ 法などの分類の体験。
48
2出題範囲
永続的な記憶の貯蔵
Apple
エピソード・
手続き記憶
意味記憶
......
........
....
長期記憶
認知的活動を
推進する
心の作業台
OUTPUT
処理中の情報を
一時的に保存
筋肉運動過程
INPUT
りんご
感覚器から
の情報を極
短時間保持
と言う
物・事
感覚過程
作業記憶
情報の入力
感覚器官
感覚記憶
短期記憶
情報の出力
情報の認知プロセス
果物を分類する場合
5つの情報の整理
LATCH
位置(生産地)
Location 位置
国やエリア、
住所など
文字(名前順)
Alphabet アルファベット
(文字)
アルファベット順や五十音順など
いちご
ぶどう
みかん
めろん
りんご
時間(旬の季節)
Time 時間
時系列、
日時、
季節など
春
Category 分野
科目、関連や範囲など
Hierarchy/Continuum 階層/連続体
大小、
値段、
重要性等の量など
夏
秋
冬
ミカン科
ウリ科
分野(種類)
バラ科
ブドウ科
連続体(大きさ)
情報の整理手法の例
2−4情報の構造化と表現
49
情報の関係性
効率の良い問題解決には、収集された情報相互の関係性の整
理が有効であることを理解させる。整理され構造化されたものを
視覚化などの手法で、問題の明確化につなげることを指導する。
・情報同士の関係性の整理。
・関係性にもとづいた情報の組み合わせと構造化。
・情報構造の視覚化による問題点の明確化。
問題に対して抜けや漏れ無く情報を包み込むには、情報の適
切な組み合わせによる構造化が必要だということを理解させる。
情報構造の種類
情報を構造化する目的には以下があげられる。
・複雑な情報を扱いやすくする。
・情報同士の関係性を明らかにし、わかりやすくする。
・構造の種類を示しそれぞれの特性を理解させる。
情報は構造化されてつながりを持つことにより、元とは違っ
た形のモノになる。建築資材という部品を構造化して組み立て
ることで、ビルになるというイメージと言えよう。情報構造の
種類は右の7つに分類される。
生活の場で見られる料理のレシピのプロセスや映画の字幕、
ボーリングのスコアの情報構造などから情報の視覚化の実際を
知り構造化の実践的な学習につなげる。
またウェブサイトにおけるナビゲーションなどを例に、利用
50
2出題範囲
者を導くしくみを実際に示し、体感させて理解させる。
情報伝達に役立つ構造化の仕組みを理解するために次のよう
な項目について指導する。
・情報の視覚化と利用者の操作性について。
・ウェブサイトのナビゲーション等で実際を体験的に知る。
構造名
線形
Linear
リニア構造
階層
Hierarchy
ツリー構造
放射状
Web
ネットワーク構造
並列
Parallel
パラレル構造
行列
Matrix
マトリックス構造
重ねあわせ
Overlay
レイヤー構造
空間の拡大
Zoom
ズーム構造
構造の図解
解 説
例
線形(リニア)構造は物
語のように、始まりから終
わりまでの順序が決まって
おり、全体の流れをつか
みやすい。
書籍
マニュアル
レシピ
スライドショー
手順など
階層(ツリー)構造はカ
テゴリーなど、グループ単
位のまとまりに上下関係を
つけて表現する場合に適
している。
図書館書籍分類
組織図
家系図
コンビニエンスストアの棚
百貨店の売場
放射状(ネットワーク)構
造は Web 構造とも呼ば
れ、情報の中に様々な関
係が共存する場合に適し
ている。
ハイパーリンク
ゲーム
ウィキペディア
類語辞典
並列(パラレル)構造は、
あるコンテンツの時間軸
や空間軸などと平行して
別の情報が提示される。
映画の音声と字幕
テレビ欄の他局
運航と機内サービス
各クラスと授業
祭事の同時開催
行列(マトリックス)構造
は、縦横2方向の直線的
な情報を組み合わせた構
造で、物事の比較図でよ
く使われる。
将棋やチェス
商品比較表
授業時間割表
カレンダー
重ね合わせ(レイヤー)
構造は、ある情報に別の
情報を重ね合わせること
で関係の強調や解説など
に適している。
地図と天気図
解剖図
航空写真と地名
アニメの人物と背景
空 間 の 拡 大(ズ ー ム)
機能は元の階層から別の
階層が飛び出したり拡大
され、さらに詳細な情報
が提示される。
ソフトウェアの
・ヘルプシステム
・ズームツール
カーナビの地図拡大
顕微鏡や虫眼鏡
7つの構造モデル
2−4情報の構造化と表現
51
表現の基礎
情報を効果的に伝える表現では、適切な手法を選択することが
重要であることを理解させる。そのためには人間の感覚・認知の特
性を学び、それを活かす方法を次のような項目について指導する。
・表現の背景にある、文化的・社会的な心理や認知に関わる
解釈項の理解。
・情報受信者への適正な伝達のための情報の整理。
・色彩や形態などに関わる人間の感覚・認知の特性。
視覚的要素の扱いの基礎を通じて、効果的な視覚コミュニ
ケーションのための方法を指導する。
・情報を構成する各要素(文字、静止画像、動
画、音楽・音声など)とその特性。
・要素の組み合わせと関係性から構成されるレイアウト。
・実際のレイアウトに見る効果的な視覚コミュニケーション。
それぞれの表現要素の性質を理解し、レイアウトの基本を活
用した視覚表現ができるように指導する。
近接
整列
反復
コントラスト
互いに関連する項目は、グルー
プ化してまとめる。それらは一
つのまとまりとして認識される。
それによって情報を構造化し、
混乱を減らす事ができる。
左揃え、中央揃え、均等揃
えのように、全てのものを
意図的に配置する事。他と
の視覚的な関係性を持たせ
る。
色、形、質感などの 視 覚 要
素を体系的にまとめ、一貫性、
継 続 性をもた せる。それに
よって関連のあるものどうし
のつながりを強化する。
ページ状の要素に強弱関係
をつけて、視覚的吸引力を
演出すること。ある要素を
他と差別化すること。
レイアウトの 4 つの基本
52
2出題範囲
情報表現の種類
情報を伝える各種媒体の特性とそれぞれにおける表現と効果
について理解させ、効果的な表現と利用ができるように次のよ
うな項目について指導する。
・グラフや図解などのインフォメーショングラフィックスに
よる視覚化とその効果。
・提示の順や文脈の考慮など要素相互の関係づけ。
・関係づけによって変わる伝達内容。
・認知の特性を踏まえた色彩、比喩の利用。
視覚言語とも言える可視化された表現が溢れる中、情報を目
的に則し、媒体の特性を活かした表現を学ぶ。
ビジュアルな表現が果たす役割 (Tversky, B.
注意や興味を引く
情報を記録する
記憶を助ける
コミュニケーションを促す
2001)
・交通標識
・サイン
・ポスター
・パンフレット
・チラシ など
・ゲーム結果を記録する○×などのマーク
・古代の壁画 など
・日常におけるメモ
・PC インターフェース上のアイコン
・ソフトウェアのプルダウンメニューの作業リスト など
・地図
・グラフ
・表
・関連図
・図解 など
キーワード例:構造化、体系化、ラベリング、KJ 法、関係性、LATCH、
認知の心理、叙述化、可視化、色彩、文字、図解、グラフ、表、写真、音、
映像、レイアウト、ダイアグラム、コンテキスト、情報表現の媒体など
2−4情報の構造化と表現
53
5
2−
情報の伝達と評価
主な問う内容
情報伝達の目的や意義を理解し、
「伝えるべきこと」⇒「伝え
たいこと」⇒「伝えたことに対する他者の評価からの改善点を
見い出し修正する」という一連の流れについて問う。
信頼関係を形成するためのコミュニケーションと、提案・説得
から相手の理解を導き、自分の目的を達成するためのプレゼン
テーションについて問う。
指導のポイント
❶他者に情報を伝える目的や意義について理解させる。
❷コミュニケーションとプレゼンテーションについて理解させる。
❸評価の目的、方法、改善について理解させる。
情報の伝達と評価では、情報の効果的な伝達手法と活動を改
善しながら継続する方法を次のような項目について指導する。
・情報発信における「伝えるべきこと・伝えたいこと」の目
的を捉える。
・伝える相手を理解するための「コミュニケーション」
。
・相手へ伝えたいことを提案・説得し、理解に導く「プレゼ
ンテーション」
。
・伝えたいことが相手に伝わったかどうか、どのように相手
は理解したのかを検証する「評価・フィードバック」
。
以上の各相を通じて、
“Face To Face”
(対話)による情報
伝達の目的や意義と重要性を理解させる。
54
2出題範囲
「伝えるべきこと」
を伝える
「伝えたいこと」
「伝えたことに対す
を伝える
る他者の評価から
改善点を見い出し
修正する」
情報伝達の流れ
相手のニーズに対しての「伝えるべきこと」と自分が「伝え
たいこと」が、発信する者の独自性として新しい価値になる。
相手のニーズ
伝えるべきこと
(何を伝えなければならないのか)
伝えたいこと
(何を伝えたいのか)
独自性=新しい価値
新しい価値→社会への価値の提供
他者へ伝えるには「何を」
、
「どの程度」
、
「どういう順番で」
ということを整理することが重要である。
2−5情報の伝達と評価
55
信頼関係を形成するためのコミュニケーション能力
社会生活において何らかの活動を達成し成果を上げるために
は、コミュニケーションとそれを裏打ちする他者との信頼関係
が重要であることを指導する。
・情報通信機器全盛の中における対面コミュニケーションの有用性。
・社会的活動における信頼・親和関係の形成の重要性。
コミュニケーションから形成される信頼関係の深まりは、職
位、年齢、性別、価値観、場面などの違いを超え、より適切な対
応を可能にする。様々な活動や成果の向上のためにも信頼性や親
和性を高めるためのコミュニケーションの意味を理解させる。
提案・説得から理解に導くプレゼンテーション能力
異なる立場の人たちと協働し、業務を成し遂げるには、アイディア
などを他者に提案・説得し理解に導く能力が重要なことを指導する。
プレゼンテーションに必要な次の3つのスキルにおける重要
性やポイントについて理解させ、このスキルを実践的に行える
ように指導する。
・コンセプトスキル。
・コミュニケーションスキル。
・ヒューマンスキル。
高い提案力や説得力で、相手が納得をして同じ考えで一緒に行
動するようになり、協力者・理解者・支援者を増やすことができ
る。また活動の達成やその成果の大きさを期待できるようになる。
56
2出題範囲
コミュニケーション
プレゼンテーション
親和関係(ラポール)と
信頼関係の形成
相手が納得し一緒に行動して
いくための提案力・説得力
他者との協働により
チームワーク力の発揮
協力者・理解者・支援者
を増やす
コミュニケーションとプレゼンテーション
プレゼンテーションもコミュニケーションの一つであるが、
その役割は異なる。
伝える
聴く
伝える相手
1 対多のコミュニケーションは 1 対 1 のコミュニケーション
の延長線上にある。しかし状況や媒体の違いによってコミュニ
ケーションの取り方やプレゼンテーションのスキルは異なって
くる。
2−5情報の伝達と評価
57
物事をより良くするための評価とフィードバック
様々な社会活動において評価の必要性を指導する。継続的に
評価結果をフィードバックさせて、改善しながらより良い結果
に結びつくように次のような項目について指導する。
・評価の目的と必要性。
・評価の種類。
・評価の手法。
・評価の視点。
・評価を実施する効果。
・評価は情報の価値。
・受けた評価の検証と見直し、修正。
評価は問題点の把握や改善につながり、情報に新しい付加価値
を生むことになる。
改善のために次のような項目について指導する。
・改善の方法。
・改善目標の立て方。
・改善方法の組み立て方。
・評価−問題の見直し−改善から新しい価値を生むこと。
・新しい価値は、情報を活きたものにする。
・PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルの考え方。
情報デザインにおいても、評価を受けて改善することで、
「新
しい価値を提供する」ことができることを理解させる。
58
2出題範囲
修正・改善
他者からの客観的な評価
伝える
を受けてフィードバック
修正・改善し再発信
フィードバックを受け止め発信する情報を見直す
Plan(計画)
従来の実績や将来の
予測などをもとにして
業務計画を作成する。
Action(改善)
Do(実行)
問題点に対して改善策
を考え次の段階へ反映
させる。
計画に沿って業務を
行う。
Check(評価)
業 務の実 施 が計 画に
沿っているか、問題が
ないかを確認する。
PDCA サイクル
現状に留まらず、より良い成果を目指して評価を行う。
キーワード例:伝える、情報交換、情報共有、自己表現、他者理解、信頼
関係、相互理解、コミュニケーション、プレゼンテーション、フィードバッ
ク、言語、対話、評価、達成度、到達度、満足度、検証、改善、提案力など
2−5情報の伝達と評価
59
試験概要
試験実施概要
試験名称 文部科学省後援 情報検定 情報デザイン試験
試験機関 財団法人 専修学校教育振興会
試験方式 インターネットに接続しパソコン画面で試験を実施します。
試験期間 通年(サーバメンテナンス日は除く)
試験設定日 上記期間の中で自由に設定、回数制限はありません。
試験開始
時刻設定
原則 24 時間可能
※初回受験の場合は試験センター事務取扱時間内を推奨
(平日9:30 ∼ 17:30)
受付期限 試験設定日の 14 日前(再受験も同様)
受付
出願者数
1名∼
受験願書・出願要項等の詳細は Web 上からダウンロー
ド頂きご確認ください。
使用機材
出願団体にてご用意頂きます。
(パソコン等)
試験会場
出願団体が所有する施設等、個人受験の場合は検定試験セ
ンターが指定する会場」
(実施日は会場によって異なります)
実施
情報デザイン試験 初級/上級(2010 年後期から予定)
試験区分
受験料
出題形式
初級 3,500 円 上級 4,000 円
多肢選択方式、正誤判断形式
(受験者全員が異なる試験問題となります)
試験時間 初級:試験時間 60 分 合格点 60 点/ 100 点満点
合格点/配点 上級:試験時間 60 分 合格点 60 点/ 100 点満点
60
試験事務の流れ
事務項目
願書受付
日程
4月1日∼
備考
電子メールで申し込み、または
宅配便での郵送
受験料振込 試験設定日の7日前
指定口座い振込(振込手数料はご
負担願います)
受験票等書類 試験設定日の7日前
検定試験センターから電子メー
ルにて送信
合否結果
試験終了直後
試験終了と同時に採点、合否結果
を表示します
合否通知
試験終了後約 40 日後
文書による通知、合格者には合
格証を交付
出願にあたって
インターネットに接続できる環境があれば基本的にはご利用
いただけますが、お申し込みいただく際は必ず、事前に貴団体
のパソコン環境のご確認をお願いいたします。
ご 確 認 は J 検 ホ ー ム ペ ー ジ(http://jken.sgec.or.jp/index.
html)内の「CBT 方式動作環境テスト」にて行 うことができ
ます。希にファイアウォールやフィルタの設定、常駐ソフト等
の関係でご利用いただけない場合 があります。その際は画面
に表示されている対策をご確認いただきご対応をお願いいたし
ます。
61
CBT 試験
CBT 受験の流れ
1.試験準備
・ID とパスワードを入力してログインします。
・動作チェックを行い、
[受験する]ボタンを押します。
ログイン マイページ
2.受験開始
・[操作説明]で操作を確認して受験開始へ進みます。
・受験開始画面の[開始]ボタンを押すと試験開始です。
操作説明 受験開始
62
3.受験
・問題に答えていきます。解答群の選択肢を選びます。
・後から見直すこともできます。
問題と解答群の例1 問題と解答群の例2
・受験画面の
[受験を終了する]
ボタンを押すと採点開始です。
4.受験終了
・採点終了後に、即時に合否結果と得点が表示されます。
・各出題分野ごとの得点を確認することができます。
・合否得点は Web 上で 40 日間閲覧できます。
合否結果
J 検のホームページに無料体験版があります。http://jken.sgec.or.jp/
(体験版の内容は予告なく変更される場合があります)
63
改訂 情報デザイン試験(J検)
指導手引書
2010 年4月1日 初版第1刷発行
発行者 財団法人 専修学校教育振興会
〒 102 − 0073 東京都千代田区九段北 4 − 2 − 9
TEL 03 − 5275 − 6336
FAX 03 − 5275 − 6969
http://jken.sgec.or.jp/(ホームページからダウンロードできます)
乱丁・落丁はお取り替えいたします
ⓒ 2010 jken Printed in Japan
非売品
新試験対応版 J検情報デザイン完全対策公式テキスト
5つの情報デザイン力が身に付く教科書
講義&演習問題&コラム&用語集
J検情報デザイン試験をめざす方
専門学校、大学・短大、高校等を卒業
し、
これから社会で多様な仕事に携わ
るすべての若者を対象としています。
財団法人専修学校教育振興会 監修
A5判並製 212頁(別冊解答20頁) ¥2,310(税込み)
株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
「創る」
「使う」
「伝える」
文部科学省後援
財団法人 専修学校教育振興会
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