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IT from the Home 研究会 報告書

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IT from the Home 研究会 報告書
IT from the Home 研究会
報告書
平成 13 年 12 月 10 日
“IT from the Home ”研 究 会
委員名簿
(50 音順)
●委員長
羽鳥 光俊 国立情報学研究所 教授
●委員
相澤 清晴 東京大学 新領域創成科学研究科 教授
入鹿山 剛堂 ㈱エヌ・ティ・ティ・ドコモ MMターミナル開発部 課長
大山 裕 日本電気㈱ パーソナルカスタマーリレーション事業部
技術開発グループ グループマネージャー
小川 英子 花王㈱ 商品開発部 マネージャー
北村 俊幸 ㈱ニチイ学館 マーケティング本部 HCマーケティング部
取締役本部長
佐藤 政行 ㈱セブン−イレブン・ジャパン 営業システム部 総括マネージャー
須甲 松伸 東京芸術大学 保健管理センター 教授
田中 智則 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ㈱ ソリューション事業部
ソーシャルプラットフォーム推進室 担当課長
千葉 滋 シャープ㈱ 技術本部 情報家電開発センター 副所長
東崎 太郎 ヤマト運輸㈱ 経営企画本部 アシスタントマネージャー
富田 誠一郎 三井物産㈱ eMitsui 事業部 eコマース事業室 マネージャー
中村 雅一 綜合警備保障㈱ 開発技術部長
野坂 千秋 味の素㈱ 食品研究所 食品事業モデル開発室 室長
深水 祥光 ㈱日立製作所 家電グループ 事業戦略部 部長
藤尾 昌宏 日本アイ・ビー・エム㈱ 公共システム事業部
社会ITインフラ推進部 副部長
前多 克英 富士通㈱ ソリューションビジネス開発室 主席部長
宮沢 和正 ビットワレット㈱ 執行役員 企画統括部長
安川 秀樹 松下電器産業㈱ マルチメディアシステム研究所
企画推進グループ グループマネージャー
山本 隆治 ㈱東芝 家電機器社 LIFE NET クリエーション部
LIFE NET クリエーション技術部長
1
目 次
序 ”IT FROM T HE H OME”研究会の背景と目的.................................................... 1
(1)研究会発足の背景................................................................................................................................1
(2)研究会の目的..........................................................................................................................................1
(3)研究会を踏まえた実証実験の意義 ...............................................................................................1
1.現状認識 ................................................................................................................ 3
(1)生活における情報化の現状とニーズ............................................................................................3
(2)生活における情報化を進める上での問題点..........................................................................10
2.2005 年における生活の情報化 ....................................................................... 14
(1)
2005 年における「世界最先端の IT 国家」のイメージ.........................................................14
(2)
2005 年における生活の情報化のイメージ..............................................................................14
3.生活の情報化を巡る課題 ................................................................................. 19
(1)生活の情報化を図る上での共通の技術的課題...................................................................19
(2)個別サービスに係る課題................................................................................................................22
4.今後の方策.......................................................................................................... 29
(1)実証実験の在り方 ..............................................................................................................................29
(2)実証実験の内容(案)........................................................................................................................29
(3)実証実験の体制..................................................................................................................................30
参考資料1 消費者ニーズ調査について............................................................. 31
(1)調査の概要............................................................................................................................................31
(2)調査結果.................................................................................................................................................33
参考資料2 法制度に係る共通課題 .................................................................... 37
(1)個人情報の保護..................................................................................................................................37
(2)署名・認証 ..............................................................................................................................................39
(3)コンテンツに係る著作権...................................................................................................................40
参考資料3 技術に係る共通課題 ........................................................................ 44
参考資料4 実証実験に関する各社からの提案................................................ 57
序 ”IT from The Home”研究会の背景と目的
(1)研究会発足の背景
我が国の電気電子産業は、高品質な家電製品や情報通信機器等を供給して世界市場で
高い競争力を保持するとともに、生活水準の向上を支えている。今後、様々な形で生活
に IT が浸透してくる際には、我が国電気電子産業が重要な役割を担うことが期待される。
また、我が国国内においては、生活の様々な場面でインターネットに接続しうるイン
フラが整っている。IPv6 や無線通信技術等、新たな製品やサービスを支える技術も次々
に実用化されつつある。
さらに、6月 26 日に取りまとめられた「e-Japan2002 プログラム」においては、世界最
先端の IT 国家の姿を広く提示するため官民の総力を結集し「e!プロジェクト」を推進し
て IT 革命の果実を実感できるようにすることとされている。
しかしながら、国民の生活場面にどのように IT が浸透し、IT 革命の果実がもたらされ
るのかについては具体的な将来像が明確になっているとは言い難い。このため、IT 革命
の意義が生活実感を伴って理解されないのみならず、今後の国民生活向上を支える新た
な家電製品や情報通信機器等を我が国電気電子産業が生み出すことができないのではな
いか、といった懸念がある。
(2)研究会の目的
今回の研究会では、生活場面に密接に関係する事業者等が委員となり、IT を用いて生
活場面を変える事業形態としてどのようなものがありうるかという観点から議論を行っ
た(生活の観点から IT の普及を促すことから本研究会を「"IT from the Home"研究会」と
称することとする)。その際、事業形態に即した技術の応用方法や将来的な課題、事業
形態を実現するための規制や制度面での課題についても検討を加えた。さらに、 「eJapan2002 プログラム」に即して IT による国民生活の変化を国民に提示するため、事業
者による新たな事業形態の立ち上げを支援していくこととする。これによって、豊かな
生活の実現を図ると共に、生活レベルでの IT 需要の喚起を図り我が国電気電子産業の健
全な発展を図るものである。
(3)研究会を踏まえた実証実験の意義
昨今のビジネス分野での IT の活用により、各企業内や物流分野等におけるコスト削
減・効率化による産業の高度化は個別に進展しているところである。他方、家庭におけ
る IT 化については、平成 13 年3月にはパソコンが 50.1%の家庭に普及するなど1 、機器
1
内閣府「消費動向調査」(普及率)平成 13 年3月調査
1
は広く普及しつつあるものの、その果実についての実感は、依然として不明であるとい
うのが概ねの状況である。これは、現状のパソコンのアプリケーションやインターフェ
ースが必ずしも家庭でのニーズに即したものではなく、さらに、提供されるサービスは
限定的なもの(デジタル・コンテンツや定型的なショッピングなど)であり、かつ、サ
ービス事業者の連携が取れていないことが背景にあるものと考えられる。
これに対し、従来の解決方策は、パソコンのハード・ソフト面の向上や、検索サービ
スを行う ISP 側での検索高度化などで対応するという現状の延長線上での解決策に終始
しているところである。また、サービス・プロバイダー間の統合も、B to B の一部につ
いては、IT 化によるサービスの統合(物流等)が進展しているが、家庭に向けたバーチ
ャル/リアル・サービスの統合がなされていないのが現状である。
ついては、新規の解決方策が必要であると考えられ、例えば、インターフェースにつ
いては、キーボード以外のインターフェースの導入などアクセシビリティ技術の活用に
よる操作性の向上や、携帯電話や家電製品との連携による付加価値の増大が求められる。
根本的には、サービス内容の高度化が必要であり、具体的には、IT の活用により可能と
なる膨大な情報処理・高速通信技術を利用して、個人個人の多様なニーズに個別に対応
するとともに、ニーズに合わせた適切な情報提供を行うことが肝要である。また、これ
を可能とするには、B to B における一層の IT 化の進展と、家庭に向けたリアル・サービ
スの IT 化の拡大を前提として、これらサービスの間が IT 上で統合されることにより効率
的なサービス提供を可能とする仕組みが必要となると考えられる。
そこで、いわゆる IT 企業のみならず、小売、物流、介護、警備、食材、日用品等生活
に必要なサービスを提供する分野で我が国を代表する企業がコンソーシアムを結成し、
実証実験により当該事業の実現可能性を e!プロジェクトの一環として国民に提示するこ
とにより、異分野融合も含め IT で統合された新たなサービスを家庭向けに本格供給する
新規事業分野の可能性を提言するとともに、当該分野における我が国の標準的なルール
作りも実証実験における課題とすることにより、今後の事業化の基礎を形成する。
これに合わせて、新たなサービス供給を受けるための家庭用端末を、アクセシビリテ
ィ技術、セキュリティ技術、相互接続技術等、我が国 IT 産業の技術力を結集して開発・
実証し、本格的なサービス供給と併せて情報家電普及に必要な環境を一挙に整備する。
これにより、我が国 IT 産業の復活を図ることとする。
なお、本実証実験は、国民生活に IT 活用が実感できる実験となり、e-Japan における政
府の取り組みのショーケースとしてアピールすることが必要である。
2
1.現状認識
(1)生活における情報化の現状とニーズ
我が国は、ITへの取り組みがアメリカをはじめとする先進諸外国に比べ出遅れてき
たと言われてきたものの、ビジネス分野においては、各企業内や物流分野等においてIT
が積極的に活用されるようになってきており、コスト削減・効率化による産業の高度化
が進展しているところである。また、SCM2に見られるように、B to Bの一部について
は、IT化によるサービスの統合(物流等)が進展している。
国民の日常生活においても、情報化に対するニーズが内在している場面は少なくない。
ここでは、①教育、②健康、③食事、④買い物、⑤安全、⑥街角、⑦行政、⑧コミュニ
ティ、の8つの生活シーンを想定し、情報化の現状と消費者のニーズを見てみたい。な
お、一部の生活シーンについては、我が国でもネットワーク環境が整備された地域の在
住者の中から生活の情報化ニーズを強く持つものと考えられる消費者層(主婦、若い女
性、一人暮らしの男性、単身・二人暮らしの高齢者)を抽出し、グループインタビュー
調査(以下「消費者ニーズ調査」)を通じてニーズの把握を試みた3。
①教育
初等中等教育の現場では、生徒が問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組
むことが求められつつあり、学習のスタイルは双方向型に移行しようとしている。こ
のような学習で重視されているのが、インターネットの活用であり、文部科学省は学
2
SCM;サプライ・チェーン・マネジメント。IT を駆使し、メーカーから消費者の手に
渡るまでの製造・販売・物流の全過程の情報と製品の流れの効率化を図り、無駄を極
力追放する管理手法。各過程の活動が鎖のようにつながっていることから、サプライ
チェーンと呼ばれている。さらに、各過程の経営戦略と連動させ、スピードを重視し
た経営手法としても注目されている。
3
下記の属性を有するグループに対し、「食事」、「買い物」、「健康」、「安全」の
各テーマを中心に 2001 年 8 月に実施。詳細な調査の実施要領、調査結果については参
考資料1参照。
グループ
年齢層
ベテラン主婦
若い主婦
一人暮らしの女性
一人暮らしの男性
家族と同居している女性
単身・二人暮しの高齢者
40 代(3)、50 代(1)、60 代(1)
30 代(5)
20 代(3)、30 代(2)
10 代(1)、20 代(3)、30 代(1)
20 代(4)、30 代(1)
60 代(2)、70 代(3)
3
居住地
港北ニュータウン
世田谷区
世田谷区
世田谷区
港北ニュータウン
世田谷区・目黒区
校教育の情報化への対応を最も重要な課題の一つとしている(ミレニアムプロジェク
ト)。また、完全週休2日制へ移行することから、学校ができることは限られてくる
ため、学校と家庭での情報の共有は一層重要なものとなるが、インターネットの活用
はこの学校と家庭の情報の共有にも大きく役立つものと見られている。
大学をはじめとする高等教育機関でも、時間の制約から学習の機会を得ることが難
しかった社会人に門戸を開放しつつある。とりわけ昨今では、ネットワーク環境を活
かして時間と距離の壁を乗り越え、いつでもどこからでも受講できる遠隔教育システ
ムが注目を集めている。
このほか、生涯学習(自分の人生を楽しく豊かにするために、生涯の様々な時期に
自ら進んで行う学習やスポーツなどの社会教育、文化活動、ボランティア活動、趣味
などの様々な活動)については、これまで参加ニーズは高かったものの、時間的制約
から参加できないという生活者が少なくなかった。このため、生涯学習の分野につい
ても、今後ネットワークによる遠隔教育が普及していく可能性は高いと言える。
②健康
高齢化の進展に伴い、要介護者が急速に増加している。このような状況の中、2000
年に介護保険制度が創設されたが、特別養護老人ホーム等の基盤整備は遅れており、
在宅での介護需要の増加は避けられない見通しにある。
また、高血圧、糖尿病、心臓病、脳卒中、動脈硬化といった「生活習慣病」が増加
し、対症療法による急性疾患への治療中心の医療システムから、予防や運動・食事療
法による生活管理を中心としたプログラム・システムの重要性が増しており、在宅で
の健康管理ニーズが高まっている。
さらに、患者・国民の医療に対する要求は多様化しており、医療や医療関連サービ
スについては、患者個々人に合ったものを選択できるサービスの種類と量が求められ
ている。また、快適性を含むサービスの質の高さについても求められるようになって
いる。
サービスの向上を実現するものとして期待されているのが、カルテの電子化である。
電子カルテによって、例えば複数の病院や診療所が同じ患者のカルテを共有すること
で重複検査という無駄を省くほか、地域の中核病院と複数の診療所がネットで患者の
診療情報を共有し、連携して医療サービスを提供する(地域診療ネットワーク)こと
などが考えられる4 。この地域診療ネットワークについては、現在経済産業省と厚生労
働省が共管する財団法人医療情報システム開発センターを通じ、地域ごとにモデル的
4
米国ではピッツバーグ大医学部を核にした三百以上の医療機関の連携システムなど大
規模ネットワークが発達している。(日本経済新聞 2001/09/28)
4
なシステムの導入の支援が 2001 年度から開始されているところである5 。また、カルテ
を電子化することにより、患者のニーズの高い診療情報の開示も一層進展することが
考えられる。現在、カルテの開示を行っている医療機関は 0.5%程度に過ぎない6 が、一
部の先進的な医療機関では、診察後、患者はカルテの内容についてネットを通じて閲
覧することができ、気になったことを医師に質問したり、その後の経過状況を伝える
ことができる仕組みを用意しており、患者から好評を得ている7 。
加えて、そもそも病人が病の身体をおして医療機関へ通うことは患者にとって大き
な負担となっており、在宅での診察に対するニーズは強い。消費者ニーズ調査による
と、性別、年齢層を問わず健康管理に対する意識は強く、ネットワークを活用した在
宅での健康管理等のサービスのイメージに対して高い関心を持っていることがうかが
えた。
③食事
女性の社会進出、1人暮らしの増加など、家族形態の変化を背景に、惣菜といった
中食市場は急激に拡大している。中食市場の動向を見ると、「健康」や「手作り感」
をアピールしたメニューが人気を集めており、生活者は「家事を出来るだけ簡単にし
たい」と願う反面、「健康に良いもので、かつ手作りに近いものを食べたい」という
ニーズを持っていることがうかがえる。
今後、高齢化などを背景に家事労働の省力化への欲求の高まりは一層強まるものと
見られる。一方、健康に対する意識が高まり、伝統的な料理や家族との団欒を重視す
る「スローフード」の見直しも進みつつあり8 、ジレンマが強まっていくものと見られ
る。
消費者ニーズ調査でも、食事に関する懸案事項として健康や栄養バランスが指摘され
る一方、主婦層を中心にネットワークを活用した食事サービスへの高い期待がうかがえ
た。サービスに対する期待としては、①献立のバラエティが増える、②健康管理までし
てもらえる、③賞味期限を見逃すことがなく無駄がなくなる、④不足した際の自動注文
が便利である、などがあった。一方、主婦層以外の消費者層でのサービスに対する期待
感は低い。また、①電子レンジにどの程度のことが期待できるのか、②食材のデータの
管理をどのように行うのか、③冷蔵庫の中身を把握されることは怖い、といった意見も
見られた。
5
6
財団法人医療情報システム開発センター(http://www.medis.or.jp/)
日本経済新聞 2001/02/02
7用賀アーバンクリニック(東京・世田谷)(http://www.plata-net.com)など
8
日本スローフード協会(http://www.slowfood.gr.jp/)など
5
④買い物
女性の社会進出や高齢化社会の進行によって、消費生活のオケージョンニーズは多
様化してきており、買い物の時間を出来るだけ省略したいと思っている消費層も増え
ている。
こうした消費者ニーズの声を反映した形で、従来からある「御用聞き」スタイルに
よる販売手法が、時代のニーズにマッチした商品・サービスの提供形態として再び注
目され始めており、一部のスーパーや商店街などではインターネットによる受注・宅
配サービスが行われている9 。また、ホームページ等で注文した商品を近所のコンビニ
エンスストアで受け取るサービスが、留守にしがちな独身者を中心に好評を得ている。
消費者ニーズ調査でも、最寄り品の中でも重いもの、かさばるものについては、こう
した宅配サービスをすでに利用している消費者が多いことがうかがえた。しかし、サー
ビス価格については概してシビアであり、生鮮食料品(鮮度を見て確かめたい)や買い
回り品(見てさわりながら選ぶこと自体が楽しみ)の購入については否定的な意見も多
く見られた。また、高齢者については、地域内でのコミュニケーションを密にとりたい
という理由から、従来からある近隣商店からの「ご用聞き」を好む傾向が見られた。
⑤安全
警察庁「犯罪統計資料」によると、平成 12 年の刑法犯の認知件数は 244 万 3470 件と
戦後最悪となっており、犯罪の内容も凶悪化している。このような中、「水と安全は
ただ」といわれていた我が国でも、防犯意識が高まっており、企業だけでなく一般住
宅も警備システム(ホームセキュリティ)への加入などが浸透しつつある。
これまでのホームセキュリティは、外出している生活者には家の異変を伝える方法
がなかった。しかし、携帯電話の多機能化、高性能化や、センサーを備えた情報家電
の普及により、より低いコストでホームセキュリティに加入することが可能となるも
のと思われる。
消費者ニーズ調査では、サービスへの期待として、①玄関にカギをかけるとすべての
ロックがかかるシステム、②来訪者に対するカメラモニター、③インターホン代わりに
なる携帯電話、④幼稚園等の様子のリアルタイム把握、などの自己防衛を補完するもの
が多く見られた。
⑥街角
屋外でインターネットを通じて情報を得ようとした場合、携帯端末等を用いて、大
9
スーパーでは、西友ネットスーパー(http://www.the-seiyu.com/)、eJUSCO.COM
(http://www.ejusco.com/)など。商店街では「ふくしま宅配サービス」
(http://www.emachi-jp.com/)など。
6
量の(グローバルな)情報群から必要な情報を検索する作業が求められる。むしろ屋
外では、その場に必要でかつその人が望むであろう情報が簡単に得られるサービスに
対するニーズが多いものと考えられる。また、情報によっては限定的な表示装置しか
付属していない携帯端末ではなく、高解像度の大きなディスプレイで見たいというニ
ーズが多いものと思われる。
なお、ユーザーの位置情報に応じた情報提供サービスとしては、すでに携帯電話・
PHS 等のエリア情報に基づいた情報サービスが開始されている。NTT ドコモは、i モー
ド対応電話機のエリア情報を利用し、エリア関連コンテンツを簡単に検索できるサー
ビス「i エリア」を、2001 年 7 月 2 日から全国一斉に開始した。気象情報や交通情報、
観光情報などの情報サービスが提供されている。エリア情報は、全国を 400 以上に分
割した地域データを、ユーザーに最寄りの基地局情報を元に特定する。ユーザーの現
在地およびその近隣エリアに関連したコンテンツだけ自動的に絞り込んで表示し、閲
覧したいエリアの検索を省くことができる。
また、GPS と携帯電話の基地局情報を融合した位置検索技術により、外出時に突然
体調が悪くなった際などに、簡単な操作で携帯電話から警備会社に救急信号を送信で
きるサービスも開発が進められている。
⑦行政
行政サービスの情報化については、生活者から強く期待されているところである。
平成 13 年版「情報通信白書」の 電子政府に対する国民意識に関する調査結果による
と、「電子政府・電子自治体への期待」としてのトップは、「手続きや予約等が自宅や
職場から何時でもできて便利になる(74.8%)」であり、「電子自治体で必要なサービ
ス」は、「各種申請・届出等(86.2%)」となっている。さらに、「電子自治体で必要
な各種申請・届出等の内容」としては、
「住民票や印鑑登録等各種証明書の発行(93.5%)」
となっている。
さらに、インターネットを利用した行政への市民参加も全国各地の自治体で実施な
いしは実施が検討されている。中でもその先駆けとしての藤沢市の「市民電子会議室」
10
は、市民の声を行政に反映させる有効な方法として成果を上げつつある事例として各
方面から高い評価を受けている。慶応義塾大学、藤沢市産業振興財団の協力を得て開
設したホームページ「電縁都市ふじさわ」は、「開かれた市政」を基本とした「共生
的自治システム」の構築とネットワーク上の「コミュニティの形成」を目的としてい
る。ここに設けられた「市民電子会議室」のうち「市役所」関係の会議室は、市政に
関するテーマを元に参加者が意見、情報を交換する場となっており、地元の環境問題
や公園整備のあり方などについて活発な議論が行われている。そして、その中で一定
10
http://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/
7
の合意が得られたものについて、運営委員会を通じて「市政への提案」として提出さ
れる仕組みとなっている。
⑧地域コミュニティ
これまでインターネットは、世界のニュースが分かる、地球の裏側の人とメールが
できると、グローバルなものとして語られることが多かった。しかし、生活者として
日常的に欲しい地域の身近な情報がインターネットからは得られにくい、との指摘も
少なくない11 。
一方、生活者にとって身近な地域に目を転じると、近年では地域コミュニティの喪
失が深刻化している。最近では情報ネットワークによるコミュニティが形成され、同
じ趣味などを持つ者同士の顔の見えないコミュニケーションやバーチャルな関係も生
まれつつある。しかしながら、地域において安全に安心して「住む・暮らす」という
生活者の基盤である地域コミュニティの機能低下は、今日頻繁に取り上げられる子供
のいじめや悲惨な少年非行の多発化現象などの教育問題や、増加しつつある高齢者の
介護、有職主婦の子育て問題など、地域社会が抱える様々な社会問題の背景として指
摘されている。また、1995 年の阪神淡路大震災では、非常時における地域コミュニテ
ィとのつながりがきわめて重要であることが再認識されたことは記憶に新しい。12
こうした生活者のニーズに対応するとともに、地域コミュニティを支援する手段と
して、情報ネットワークの活用可能性が検討されている。現在、e-Japan 構想を受けた
任意団体の E ジャパン協議会13 が、「eコミュニティ推進委員会」で、
「生活者に安全・
便利・容易で有益な情報空間を地域コミュニティに提供し、情報通信技術を基盤とす
るコミュニティの創生・再生・発展を支援するとともに、コミュニティ相互間の連携
を図りネットワークの拡大を目指す」事を目的とした活動を展開している(図)。
11
『AERA』2001.11.5 号 p.30 など
12
産業基盤整備基金「中心市街地活性化のための新たな事業手法に関する調査研究」
(平成 12 年)(http://www.isif.go.jp/hokoku/index.htm)
13
http://www.ejf.gr.jp/
8
図 eコミュニティ・ネットワークの概要
出所:E ジャパン協議会(http://ejf.gr.jp/ecn/project/aim.html)
同様の取り組みとして、町内会単位で CATV 網による電子コミュニティを平成 11 年
度から構築している、岡山県の吉備高原都市14 や、⑦でも紹介した藤沢市の事例をあげ
ることができる。例えば藤沢市の場合、行政参加のための会議室に加え、参加者が日
頃の想いやアイデアをテーマとして会議室を自由に開設し、意見や情報を交換し編集
し蓄積するための場としての会議室が多数設置されている。なお、会議室のインター
フェースは、慶應義塾大学と民間企業が共同開発したもので15 、誰でも簡単に会議室の
開設や発言、閲覧が出来るなど工夫が凝らされている。これらの会議室では活発な情
報交換が行われているだけでなく、地域におけるいわゆる「オフ会」16 に発展する例も
少なくないようである。
このような地域コミュニティの活動の範囲は、「街づくり」、「商店街活性化」、
「趣味の交流」など、市場視点による事業性を追求せざるを得ない企業、公共性や公
平性を重視せざるを得ない行政ではカバーしにくい分野が多い。しかし、企業、行政
14
http://www.kibicity.ne.jp/
15
http://www.vcom.or.jp/fujisawa.html
16
オフ会:「オフライン・ミーティング」の略称であり、インターネットやパソコン
通信を通じて知り合った人たちが、実際に集まって会合を開くこと。普段はオンライ
ンで付き合っているのに対して、実際に会う、つまりオンラインでないからオフライ
ン・ミーティングという。
9
が、ネットワーク上、及びリアルな世界でこうした地域コミュニティ活動と連携し、
それぞれの特徴を生かして地域社会の多様なニーズに応えていくことが、生活者の
QOL(生活の質)の向上や地域コミュニティの再生に大きく寄与するものと考えられ
る。さらに、前述の街角での情報提供サービスとも連動することにより、生活者の地
域コミュニティへの参加は一層活発化するものと思われる。
(2)生活における情報化を進める上での問題点
(1)に見たように、様々な生活シーンにおいて情報化に対するニーズが存在する
ものの、これらのニーズに応えるサービスは、一部を除いて登場していない。その要
因としては、主として以下の3つの問題がクリアされていないということが考えられ
る。
①インターフェースの問題
パソコンは、至近距離から画面に向かい、キーボードやマウスを用いて作業を行う
ように設計されているため、家庭においてリラックスして手軽に情報を利用するのに
は必ずしも向いていない。初期設定等も一般消費者には依然として容易なものではな
い。また、膨大な情報から機械的な検索結果が表示され、個別に人間が判断して情報
を絞り込むことが求められる。以上のように、ハード・ソフトの両面から、使い易く、
馴染みやすいヒューマンインターフェース技術の開発が求められている。
人間は、他者とインタラクションを行う際、視覚、聴覚、触覚やその他の感覚を用
いて、情報のやり取りを行っている。人と機械のコミュニケーションにおいても、人
間同士のインタラクションをモデル化した手法を用いることで、より自然で、扱いや
すいマン−マシン・インターフェースが実現できると考えられている。複数のメディ
ア・モダリティを利用した「マルチモーダル・インターフェース」17 や、顔と姿を持
ち音声対話能力を有する「擬人化インターフェース」など、様々なアプローチにより
研究が進められており、その成果が期待されている。
17
「モダリティ」は、視覚、聴覚、触覚などの感覚を用いて外界からの情報を知覚す
る方法および、そのような感覚に働きかける情報伝達の方法。人間同士の会話におい
て、言葉以外にも身振りなどのモダリティを用いて会話の情報を補うことができる。
「マルチモーダル・インターフェース」は、コンピュータと人間とのインタラクショ
ンにおいて、複数のモダリティを活用することで、より自然で柔軟なコミュニケーシ
ョンを実現するインターフェース技術を指す。(情報処理学会 音声言語情報処理研究
会資料等より)
10
画像表示
タッチ
パネル
音声合成
自然言語
処理
画像認識
AI
音声認識
キーボード
図 ヒューマンインターフェースの概念
②家庭内におけるネットワーク(ホームネットワーク)の問題
様々な生活シーンをサポートする情報サービスを展開していく上では、家庭内の
様々な機器の間をネットワークで結ぶ必要があるが、メーカーの異なる機器同士が、
ネットワーク上で相互に接続され、連携して動作するためには、機器の識別や制御情
報の伝達・管理、API などを規定するミドルウェアが必要となる。ミドルウェア規格は、
IP ベース/非 IP ベースの 2 種類に大別されるが、国内外の電子機器メーカー、コンピ
ュータメーカー、OS メーカーの団体等が規格化を進めている。
各規格の普及に関しては、現在各規格とも対応する製品は出荷されていないものの、
プロダクトアウトの段階には到達しつつある。ここ 1、2 年の間に、対応製品のリリー
スが予想される。各ミドルウェアは規格の内容が固まる段階では、相互にかなり重複
する部分があると見られていたが、現段階ではそれぞれ対象分野が明確になりつつあ
る。その一方で、これらの規格は、互換性に欠ける点が課題となっている。一部では、
緩やかなブリッジによる相互運用を確保しようとする取り組みも見られるが、いずれ
も相互運用のための仕様が確定するまでには至っていない。今後、製品化が進む中で、
規格の選別や連携が進むものと見られるが、規格の乱立が消費者の利便性を損なう可
能性もある。
11
表 ホームネットワークのミドルウェアの概要
応 AV 機器
用 PC 関連
分 白物家電
野 事務機器
ネットワーク
推進企業
HAVi
Jini
ミドルウェア
UpnP
○
○
△
○
○
○
○
○
○
○
○
非 IP
シャープ
ソニー
東芝
日立製作所
松下電器
フィリップス
トムソン
グルンディッヒ
etc.
IP
サン・マイクロ
システムズ
IP
マイクロソフト
インテル
コンパック
ヒューレットパ
ッカード
デル
ゲートウェイ
エコーネット
サリュテーション
△
○
非 IP
シャープ
東芝
日立製作所
東京電力
松下電器
三菱電機
etc.
○
非 IP
キャノン
富士ゼロックス
富士通
コニカ
京セラ三田
松下電器
日立製作所
三菱電機 etc.
③サービスが事業として成立する見通しが不透明であるという問題
こうしたサービスが成立するためには、利用者がサービスによって得られる便益を向
上させる必要があることは言うまでもない。そのためには、サービス提供に必要な費用
を低減させ、消費者が安価にサービスを利用することができるような体制を用意するこ
とが求められる。こうした図式を成立させるためには、前述のように分かりやすいイン
ターフェースを備えた機器の開発等を進めるとともに、以下のような検討を進める必要
がある。
第一に、例えば、食事献立相談と素材や弁当の宅配、介護訪問と買い物代行、ホーム・
セキュリティと家電製品の遠隔操作等の異なったサービスを、各事業者が個別に提供す
るのではなく、連携して提供するような仕組みを構築することが一つの方法であると考
えられる。こうした事業者間の連携によって、サービスに要するコスト低減に加え、一
層きめ細かいサービスの実現が可能となり、消費者の利便性は大きく向上し、消費者に
対する訴求力を高めることができるものと考えられる。
第二に、物流、決済、情報の送受信といったサービスを受けるための基礎的なインフ
ラは、消費者の利便性を高めるよう共通的なプラットフォームとしてデザインされるこ
とが求められる。これは提供されるサービス自体のコストの削減にもつながると考えら
れる。
第三に、新たなサービスは、個人の健康や嗜好といったプライバシー情報を取り扱う
ため、サービス供給形態の構築に当たっては、情報の漏洩や悪用に対する消費者の不安
感を払拭するため、個人情報の保護や家庭内ネットワークのセキュリティ確保に加え、
ビジネス・イメージのマネジメントを検討する必要がある。
第四に、新たなサービスを供給するためには、サービスの提供事業者と消費者の双方
にとって便益が拡大するように既存の事業形態を変化させる必要がある。こうした変化
12
を促進するよう、新たな事業形態を実験的に実証するとともに、例えば医療・健康管理
関係の規制は今後柔軟にそのあり方を検討していく必要がある。
①∼③問題を解決した上で、初めて生活の情報化に係るサービスのビジネスモデルを
描くことができ、サービスが登場する可能性が生まれると言えよう。
13
2.2005 年における生活の情報化
(1)2005 年における「世界最先端の IT 国家」のイメージ
本研究会において、参加委員より情報家電が活用される将来イメージについて様々
なプレゼンテーションがなされた。これらを踏まえた上で、我が国が推進している eJapan 重点計画において、2005 年には世界最高水準の高度情報通信ネットワークを形成
するとしていること、また、デバイス技術についても、2005 年には飛躍的に発展する
ことが期待されていることを念頭に、前章で指摘したようなインターフェース、ホー
ムネットワーク、サービス・プロバイダーの統合、といった生活の情報化のビジネス
モデルを支える条件が備わると、生活の情報化は例えば以下のような姿で展開するも
のと思われる。
自分の居場所や行動パターン、嗜好、買い物のパターン、病歴、プロフィール等の
個人情報がサービス・プロバイダーの間をシームレスに流通することにより、日常生
活の随所で情報サポートを少ない労力で受けることが可能となる。
例えば買い物を行う際は、個人情報をもとに自分の趣味等にあったものが自動的に
提示され、わかりやすいタッチパネルに触れるだけで注文することができる。配達に
ついても、住所を入力することなく宅配業者に届けてもらうことが出来る。高品質の
動画コンテンツも短時間でダウンロード、購入が可能である。
また、例えば洗濯機に不具合が発生した場合、不具合情報は居間にいた場合にはテ
レビ画面に、台所にいた場合は冷蔵庫のタッチパネルに自動的に表示される。不具合
の対処については、ネットに接続することにより修復用データをダウンロードするこ
とによりメンテナンスを行うことが出来る。
屋外においても、自分にとって興味のある店などに接近すると携帯端末が自動的に
知らせてくれるなど、様々な情報サポートを受けることができる。
なお、個別の生活シーンについては、(2)に示すような姿が実現することが期待
される。
(2)2005 年における生活の情報化のイメージ
①教育
今までの教育は、場所と時間が限定されていたわけだが、2005 年においては、時間
的・空間的制約がなくなる。
学校では、いろいろな教育の現場でネットワークが活用されるようになる。例えば、
校外活動において、生徒は与えられたモバイル端末を利用し、様々な情報を収集する
14
ことができる。他方、先生は生徒が保有するモバイル端末の電波によって、生徒の現
在地をリアルタイムで把握できる。同時に、生徒と先生はモバイル端末を利用するこ
とで、適宜連絡を取り合うことも可能となる。
また、自宅にいても、学校にいるのと同等の教育を受けることができるようになる。
教室での授業がリアルタイムで自宅に配信される。自宅にいる生徒は、ネットワーク
を介して質問などを行うことも可能である。授業参観や運動会などの学校行事に際し
ては、同じシステムを用いることで、家庭や勤務先から父母が行事に参加することも
できる。
ネットワークが普及したことによる恩恵は、学校以外での教育分野にももたらされ
る。カルチャースクールを中心とした生涯学習、あるいは企業の研修なども、時間的・
空間的制約がなくなり、ネットワークを介したインタラクティブ教育に生まれ変わる。
②健康
多様な医療が在宅で受けられるようになる。風邪程度であれば、医師の診断も自宅
で受けられる。処方された医薬品も自動的に配送される。配送された医薬品には、飲
み忘れ防止機能が付いており、決まった時間(食後など)にアラームが発せられる。
また、重い病気にかかった場合でも、様々な恩恵を受けられる。その病気の治療に
適した病院や医師の検索、診察の予約、治療に要する費用の見積などは、自宅で行え
る。また診察後、患者はカルテの内容についてネットを通じて閲覧することができ、
気になったことを医師に質問したり、その後の経過状況を伝えることができる。医師
はその情報を見て、すぐに何らかの対応をすべきか、次回の診察時の処置にも活かす
ことができる仕組みになっている。なお、カルテ情報は診療所、病院間で共有化され、
かかりつけの医師では対応が難しい場合、大病院への紹介をスムーズに行うことが出
来る。入院患者の家族は、ネットワークを介することで、時間的・空間的制約を受け
ることなく患者を見舞うことができる。これらにより、高齢化社会において一層ニー
ズが高まる医療サービスを省力化し合理化することが可能となり、医師等の負担を低
減するとともに、国民が簡便かつ確実な医療を享受することができる。
一方、日常的な健康管理についても、高脂血症や糖尿病のような生活習慣病予備軍
の健康管理をサポートするサービスが存在し、将来の発病予防を抑えることができる。
ネットワーク化されたベッドやトイレなどから医療機関に自動的に送られたバイタル
サインのデータは、過去の診断歴及び自治体や企業で行われている健診情報と統合さ
れ、医者もしくは健康アドバイザ等のアドバイスを受けることができる。そして、健
康状態が悪化していれば、警告が発せられる。あるいは、運動や食生活のバランスに
関するアドバイスをもらうことも可能である。
介護サービスも、介護業者、宅配業者、医療機関などによるサービスがシームレス
に提供されることにより、要介護者の快適性が向上するだけでなく、常にネットワー
15
クによってこれらの事業者等と繋がっているということが要介護者の安心感を増す。
また、健康管理データは遠隔地にいる家族に配信することも可能なので、家族は安
心して要介護者の住む家を留守にできる。独居高齢者の健康状態についても、日常的
に把握できることになる。
なお、政府では「規制改革推進3か年計画」(平成 13 年3月 30 日閣議決定)に基づ
き、こうしたサービスを実施するための規制の在り方も検討が進められているところ
である。
③食事
家族の人数、1回に要する食費、調理人の腕前、家族の健康状態等のデータを入力
しておくことで、一定期間の献立を自動的に決めてくれる。もちろん、それでよけれ
ば、食材も自動的に発注される。仮に冷蔵庫に残り物等があっても、そのデータを入
力すれば、改めて献立を考え直してくれる。健康状態なども配慮されているので、カ
ロリー計算や食事のバランスなどに気を遣う必要はない。
調理に際しては、献立に基づいて、作り方が提示される。家族の人数だけではなく、
各人の食事量も組み込まれているので、必要な食材の量は自動的に計算されている。
コンロの火力や電子レンジの作動時間などもすべて自動である。調理人は味付けなど、
個人の好みに関する部分だけに腕を振るえば済む仕組みになる。
④買い物
ほとんどの商品の売買は自宅において行えるようになる。テレビで見かけた商品は、
その画面を選択することで、自動的に発注される。必要なお金は口座から自動的に引
き落とされ、家計簿も自動で作成される。なお、過去の購買履歴は、年齢、性別等の
個人情報、及び過去のウェブ閲覧、テレビの視聴記録などの情報と組み合わせ、デー
タマイニング18 の手法によって分析されることによって、より嗜好や興味に沿った広告
情報がユーザーの手元に届けられるようになる。
商品の発注についても自動化される。例えば、日常的に購入する食材やトイレタリ
ィ商品などは、不足した時点で自動的に発注するように設定しておくこともできる。
⑤安全
ネットワーク化されたカメラを自宅内外に設置することで、外出先から自宅の内外
の状況を確認できるようになる。例えば、自宅に小さな子供を残してきたのであれば、
18
データマイニング:コンピュータに蓄積された膨大なデータの中から、傾向やルール
を見つけ出すこと。マイニング(mining)は、炭坑を採掘するという意味。つまり、デ
ータの山からビジネスの鉱脈を探すといったイメージである。
16
その状況を確認できる。あるいは、台風などの災害が近づいている場合には、自宅の
外の環境を確認できる。
カメラだけではなく、各種センサーを設置し、ホームセキュリティの質も高められ
る。センサーの作動状況は外出先でも確認できるので、安心して長期出張等に出るこ
とができる。警備会社のネットワークと接続することによって、警備会社のサービス
を受けることも可能となる。
さらに、家庭での常時接続が一般化することから、家庭がハッキング/クラッキン
グの標的となる危険性が高まるが、警備会社のネットワークと接続することによって、
ハッキング/クラッキング監視サービスを受けることも可能となる。
⑥街角
街区・公共施設の要所に設置された多数の街角公共ディスプレイは、個人を特定し
た上で、その人が望む情報を映し出す。目的地までの経路を知りたいと望んでいる人
であれば、現在地から目的地までの地図が表示される。あるいは、電車やバスの時刻
表、付近の商店の安売り情報なども表示される。
また、街角公共ディスプレイには電子メールを通じて個人が手軽に「サークルの参
加者募集」といった情報を出すことができる。
さらに、街角や車中の広告に表示された情報に興味があるものを見つけたユーザー
が手持ちデバイスのボタンをクリックすると、その街角公共ディスプレイが表示して
いた情報が電子メールにてユーザーの情報家電に送付される。この機能により、オフ
ィスに到着後あるいは帰宅の後、発見した情報の詳細をゆっくり確認することができ
る19 。
⑦行政
国、地方公共団体の行政手続が時間的・地理的な制約なく行えることが可能となり、
快適・便利な生活が実現する。即ち、自宅や職場からインターネットを経由し、原則
として、行政手続が 24 時間受付可能となり、利便性が飛躍的に向上する。
例えば、パスポートや住民票の取得、免許証の更新、税金の申告などの行政サービ
スは、基本的にいつでも自宅で受けられるようになる。引越しに関係した手続きなど
では、複数の機関(公共機関、銀行、電話会社、カード会社など)に対しての手続き
を要するが、すべて一括して自宅で処理できるようになる。もちろん、氏名、年齢、
19
このような機能については、独立行政法人産業技術総合研究所サイバーアシスト研
究センターの山本吉伸氏の「パブボード」
(http://www.etl.go.jp/~yoshinov/projects/pubboard/index.html
)のイメージを参考とし
た。
17
銀行の口座番号、引越し前と引越し後の住所など、重複する情報の記入は1度で済む。
また、図書館や公民館などの利用にあたっても、自宅で手続きが行える。費用を要
するような場合であっても、自動的に口座から引き落とされる。
なお、これらのサービスは、個人の属性や行政サービスの利用度によりカスタマイ
ズされた個人ポータルサイトにアクセスすることにより、受けることができる。
さらに、行政への住民参加も活発化し、自治体の電子会議室では例えばゴミ問題に
ついての住民による意見交換が行われる。議論の進行役も、ボランティアの市民によ
って行われることも珍しくない。ネット上での意見交換は、実際に集まって行う意見
交換会に発展し、さらにそれがネット上での議論を活発化させるという相乗効果が発
揮される。
⑧地域コミュニティ
地域コミュニティについては、日頃の地域ネット上での住民同士の情報交換により
一層充実したものとなっている。例えば、在宅介護に悩む住民に対し、地域住民によ
りネット上のみならず実際の会合でアドバイスが行われるほか、要介護者の話し相手
など介護事業者では対応が難しい分野については、地域住民のボランティアによって
行われるようになる。また、共通の趣味を持つ住民同士のつきあいも活発化し、この
ような交流は、例えば学校行事や地域のイベントへの参加を促す方向で作用し、地域
コミュニティが活性化する。
これまで深刻な空洞化が進展していた中心市街地では、TMO20 が地域コミュニティ
のネットワークの運営者となり、行政や地元商工業者のみならず、地域住民、さらに
は遠方からの買い物客、観光客等も巻き込んだ形でまちづくりに関する意見交換が活
発に行われる。ネットワーク上での意見交換は、地域のブランド開発やイベントの実
施のみならず、町内での清掃活動等を通じた人間関係の活性化といった「住み・暮ら
す」拠点としての中心市街地の再生につなげられている。
また、地域コミュニティのネットワークでは、商店街の商店主もコミュニティの一
員として、地域住民向けに時間帯限定の安売り情報を発信するほか、「暮らしの知恵」
的な情報を積極的に発信する。さらに、地域住民自身も、自家製のお菓子や工芸品、
または自作の音楽などを、例えば介護などの対価として提供する仕組みも考えられる。
20
TMO;タウンマネージメント機関。中心市街地商業の一体的な活性化を推進する組
織であり、商工会議所・商工会、地元商業者なども関与した第3セクターなどによっ
て運営されることが多い。
18
3.生活の情報化を巡る課題
前章では 2005 年におけるイメージとして、8つの生活シーンの情報化を提示したが、
実際に事業化するにはコストや収益性を客観的に精査することが必要であることは言
うまでもない。また、サービスを広く普及させていく上では、サービス間で共通のプ
ラットフォームを活用するなどにより、生活者にとって購入しやすい価格帯とするほ
か、コンテンツについては娯楽的な要素も盛り込む、共通のロゴやインターフェース
を用意するなど生活者が理解しやすい仕組みを用意することが、普及促進に大きく寄
与するものと考えられる。
しかしながら、技術的、制度的な課題を解決することが、サービスを実現する上で
の大きな前提となる。以下では、まず、生活の情報化を図る上での共通課題として、
1章で述べたインターフェース、ホームネットワーク、サービス・プロバイダーの統
合、の問題を取り上げ、これら3条件の整備を図る上での技術的な課題について論じ
る。次に、個別の生活シーンの情報化についての技術的、法的な課題について検討し
ていく。
(1)生活の情報化を図る上での共通の技術的課題
①インターフェース
今後、遠隔医療や遠隔教育等などの普及に伴って、高精細、高速、低消費電力のフ
ラットパネルディスプレイへの需要が高まってくるものと見られる。高齢者などへも
利用が拡大することから、文字や画像を見みやすく表示する目に優しい表示技術も不
可欠となる。
また、従来の PC のマウスやキーボードに代わって、音声や画像・ジェスチャーによ
り入力し処理する、音声・画像認識や自然言語処理技術、ユーザーの好みや関心に応
じて適切に反応する人工知能技術(AI)などの技術も重要になるものと思われる。
さらに、テレビのリモコン感覚でネットワークに接続された各機器を効率良く制御
できる操作機器も必要となる。これらは、ホームネットワークのミドルウェアと連動
し、機器の種類やメーカーの種類を問わずに、利用できることが望ましい。
なお、家庭の情報化では、高齢者・障害者といったユーザー層の生活をより快適な
ものにすることも重要な目標の一つであり、遠隔医療、遠隔介護等のサービスの普及
などが期待されている。「アクセシビリティ」の概念は、ハンディキャップを持った
人も含め、だれもが同様の時間的・金銭的・技術的コストで、情報にアクセスできる
ようにすることを目標とするものである。家庭の情報化においては、PC 等従来の情報
機器のユーザーよりもユーザー層の幅が拡大することが見込まれることから、アクセ
シビリティを考慮することが、今後重要になってくるといえる。
経済産業省では、「障害者・高齢者等情報処理機器アクセシビリティ指針」を平成
19
12 年 6 月に公表している。同指針は、キーボード及びディスプレイ等の標準的な入出
力手段の拡充や専用の代替入出力手段の提供を促進することで、障害者・高齢者等の
機器操作上の障壁を可能な限り低減し、使いやすさを向上させることを目的とするも
のである。また、ウェブのアクセシビリティの分野では、W3C の Web Accessibility
Initiative (WAI)が精力的な活動を行っている。WAI では、アクセシビリティを考慮した
ウェブページやオーサリングツール、ブラウザ等を開発する際のガイドラインを策定
している。
しかし、現状ではインターネット上のホームページ等において、アクセシビリティ
が十分に考慮されているものは多くないとの指摘もある。今後、ホームネットワーク
の本格的な普及にあたっては、上記のようなガイドライン等を十分に考慮した関連機
器、ソフトウェアの製品開発が求められており、そのような取り組みを支援する環境
整備が重要になるといえる。
②ホームネットワーク
現在、家庭内ネットワークは、第1章(2)でも述べたように、規格が乱立してい
る状態にあり、現在のところ1つに集約される可能性は見られない。このため、AV 機
器やパソコン、白物家電機器などを相互接続するには、伝送媒体間の電気的な接続の
みならず、アドレスの自動認識や、接続されたそれぞれの機器が備える機能の集中管
理などを、異なるネットワーク間で一元化することが求められる。しかも、現状では
VTR とテレビ受像器を接続することを苦手とする消費者層も少なくないことから、接
続性を容易にしなければ普及は見込めないといえる。このため、機器メーカーではミ
ドルウェア同士の連携を進めており、HAVi−Jini、HAVi−UPnP などで一部着手されて
いるものの、具体化の動きは遅々としている。
なお、我が国では、既存の家屋に有線のネットワークを施設することは構造上難し
いことから、ホームネットワークの媒体して有望視されているのが無線ネットワーク
である。特に、オフィス LAN を中心に普及している無線 LAN(IEEE 802.11b)や PDA・
携帯電話などのモバイル機器を中心とする Bluetooth をはじめとする無線ネットワーク
技術への期待は大きい。しかし、これらの規格は同一の周波数帯を使うため、相互干
渉の問題が指摘されている。技術的な解決策としては、5GHz 帯を用いた IEEE802.11a
の普及が期待されている。802.11a は、利用する周波数帯が異なるため混信が少なく、
データ転送速度は 802.11b の 5 倍となる最大 54Mbps となる。欧米の規格競争もあり、
対応機器の登場が遅れていたが、2001 年末頃から一般消費者向け製品が出荷される見
通しである。5GHz 帯は、現在気象レーダー等が使用していることから、屋内の利用に
限られている。高速インターネット利用ニーズの増大に応える形で、総務省は 2001 年
10 月、情報通信審議会に対して 5GHz 帯の一部(4900−5000MHz)の利用可能性に
ついて検討することとし、当該周波数で実現すべき無線アクセスシステムの技術的条
20
件及び既存システムとの周波数共用条件について、情報通信審議会に審議を求め、2002
年 3 月頃までに答申がなされる予定である。
③サービス・プロバイダーの統合
サービス・プロバイダーが統合されることにより、ネットワーク化された情報家電
は、インターネットなど外部ネットワークに接続し、リアルとバーチャルが融合した、
双方向でシームレスな複合サービスが提供することが可能となる。例えば、お年寄り
を対象とした買い物支援サービスでは、介護支援サービス事業者等のデータベースに
格納されたその人の健康や好みに関するデータを基に、オンラインショッピング事業
者がテレビの画面等に商品を提示、ユーザーが選択した商品が宅配業者から配達され
るとともに、金融機関等で決済が行われる、といった具合である。
このようなサービス・プロバイダーの統合の基盤となる技術の1つが、「Web サー
ビス」と呼ばれるものである。Web サービスとは、XML などによるオープンなメッセ
ージ交換プロトコルによって、インターネット上に散在するアプリケーションを必要
に応じて組み合わせ、1つのアプリケーションのように実行するものである。現在は
B2B(Business to Business)の電子商取引や企業内のイントラネットで普及が進みつつ
あるが、今後は、家庭を含めた B2C(Business to Customer)への展開が予想される(詳
細については参考資料3参照)。
また、家庭の情報化においては、オンラインショッピング、遠隔教育(e ラーニング)、
遠隔医療などが、ニーズの高いサービスとして期待されている。これらのサービスで
は、動画を中心とするデジタルコンテンツをネット上で配信する「デジタルコンテン
ツ流通技術」がその基盤となる。デジタルコンテンツ流通技術は、デジタルコンテン
ツの作成から蓄積/管理、配信、ネットワークの制御、課金・決済を含む著作権管理
(DRM)技術、受信・再生・閲覧技術などの幅広い分野にわたり、それぞれ急速な進
展を見せている。こうした基盤技術の一層の開発と、これらを統合し一貫したシステ
ムとして構築することが求められている。
こうした技術的基盤については、特別かつ高価な仕組みを構築することは避け、サ
ービス間で共通のプラットフォームを活用することにより、コストミニマムを実現す
ることが、サービスが広く普及していく上での重要な鍵であると言えよう。
21
デジタルコン
テンツの検索
デジタル
デジタル
コンテンツの
コンテンツの
作成
作成
デジタル
デジタル
コンテンツの
コンテンツの
蓄積/管理
蓄積/管理
デジタル
デジタル
コンテンツ
コンテンツ
の配信
の配信
認証
課金
デジタルコンテ
デジタルコンテ
ンツの受信およ
ンツの受信およ
び再生・閲覧
び再生・閲覧
ネットワーク
の制御
セキュリティ処理
(透かし、暗号化等)
権利処理
著作権管理(DRM)技術
著作権管理(DRM)技術
デジタル
コンテンツ
動画像
静止画像
音声
デジタル
ドキュメント
アニメーション
3DCG
プログラム
(ゲーム等)
デジタルコンテンツの流通技術(出典:富士総研)
(2)個別サービスに係る課題
①教育
a)技術的課題
現在主流の WBT(Web Based Training)では、ADSL 等の高速回線で対応可能だが、
より高度な専門教育、今後協調型の遠隔授業などが家庭においても普及するにつれて、
光ファイバ等の超高速回線の必要性が高まる。
現在、eラーニングの普及を阻害している要因の一つに、標準への対応の遅れがあ
る。いつでも、どこでも、誰もが、学べる環境を実現するためには、教材コンテンツ
フォーマット、学習履歴情報、コンテンツ配信サーバーとクライアント間の API など
の標準化が不可欠である。ウェブを用いたeラーニングの分野では、米国の標準化団
体 A D L (Advanced Distributed Learning Initiative)が 策 定 し た S C O R M (Sharable
Content Object Reference Model)規格が国際標準として認知されつつある。日本におい
ても、先進学習基盤協議会(ALIC)がSCORMの普及に向けた活動を推進して
いる。
b)法制度に係る課題
法制度に係る問題としては、生徒の個人情報保護の問題、及び教育コンテンツの著
作権保護の問題が伴う。これらの問題については、巻末の参考資料2でまとめて論じ
ることとしたい。
②健康
a)技術的課題
遠隔診療においては、高精細の画像をリアルタイムに双方向でやり取りする。現在
22
の普及しつつある ADSL 等の上り回線の帯域幅(数百 Kbps∼1Mbps 程度)では不十分
であり、超高速回線の整備が不可欠である。
遠隔メディカルカウンセリングや処方薬の宅配のニーズは高いが、ネットワーク上
で個人情報をやり取りすることへの懸念は多い。医療・健康に関する個人情報は特に
センシティブなものであり、高い水準のプライバシー保護技術が求められる。
b)法制度に係る課題
法制度に係る問題としては、①個人情報保護、②「医業」の範囲、③「対面医療」
の原則、④処方箋、⑤健康保険制度といった点を指摘することができる。①個人情報
保護の問題については、すべてのサービスに係る問題であるので、巻末の参考資料2
でまとめて論じることとしたい。
「医業」の範囲の問題
医師法第 17 条に係る「医業」の範囲についての定義は明記されておらず、医師と他
の医療従事者との役割分担の明確化を妨げる一因ともなっている。また、保健婦をは
じめとする他の医療従事者がその業務を行うにあたっては医師の指示が必要であるこ
とが多い。このため、「健康」サービスでこれらの有資格者が独自に判断を下せる内
容は限られざるを得ないものとなっている。
「対面医療」の原則の問題
医師法第 20 条は、医師は自ら診察することを求めている。この診察とは従来直接の
対面診療と解釈されてきた。しかし、この法規は 1998 年の厚生省通知で拡大解釈され
るようになった。すなわち「直接の対面診療による場合と同等ではないにしてもこれ
に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔
医療を行うことは直ちに医師法第 20 条に抵触するものではない」というものである。
この通知で、遠隔医療の法的規制の大きな部分が取り除かれたが、「診療は、医師又
は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療は、あくまで
直接の対面診療を補完するものとして行うべきものである。」ともあり、直接の対面
診療が主で、遠隔医療が従との位置付けであり、遠隔診療が対面診療と同等であると
の考えは見出せない。遠隔診療の対象者については、直近まで相当期間にわたって診
療を継続してきた慢性期疾患の患者など、病状が安定している患者に限定されている。
たとえかかりつけ医がいても、かぜのような急性疾患については対象外になり、主治
医以外の医師から治療についての意見をもらうセカンドオピニオンには適応できない
などといった、患者の使い勝手における問題がある。
23
処方箋の問題
医師法施行規則第 21 条は、「医師は患者に交付する処方せんに、患者の氏名、年齢、
薬名、分量、用法、用量、発行の年月日、使用期間及び病院若しくは診療所の名称及
び所在地又は医師の住所を記載し、記名押印又は署名しなければならない。」として
いる。近年では規制が緩和されつつあり、厚生省医薬安全局企画課通知第 90 号「ファ
クシミリを利用した処方箋受入体制と患家での薬剤の受け渡しについて」
(平成 10 年)
において、ファクシミリで送られた処方箋をもとに薬局が調剤を行うことを認めてい
る。しかし、「健康」サービスに示すように、医師からメール送付された処方箋デー
タのみで薬局が医薬品の処方を行うことはおそらく認められていないものと思われる。
また、医師法第 22 条(歯科医師法第 21 条)は、「医師(歯科医師)は,患者に対し
治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護
に当たっている者に対して処方せんを交付しなければならない。」としている。加え
て、薬事法第 37 条では、販売方法等について、医薬品の特殊性に鑑み、責任の所在を
明確にするため薬局開設者及び店舗ごとに許可を受けた医薬品販売業者は、その店舗
を根拠とした販売方法(一般に対面販売と言う)により販売する事としている。したがっ
て、露天販売や、セールス的な訪問販売等は禁じられるべきものとされている。さら
に、前出の厚生省医薬安全局企画課通知第 90 号によれば、「一般の宅配業者など、当
該薬局の従事者以外の者が処方箋を回収し、また薬剤を配達することは認められない」、
とある。しかし、同通知によると、「薬剤師以外の薬局の従事者か薬剤の配達を行う
場合には、当該薬局の薬剤師は、薬剤師法第 25 条の 2 に基づき、患者等に対し電話等
により必要な情報提供を適切に行うとともに、患者の質問等に応じること」とある。
健康保険制度の問題
現行の健康保険制度においては保険対象となる医療行為は、疾病の治療が中心であ
り、疾病の予防のための投薬、処置、指導についてはほとんど認められていない。前
に述べたように、現行の医師法では「健康」サービスを実施するにあたり、医師を常
駐させざるを得ない。このため、これらのサービスについては、患者にとってはメリ
ットがあるものの、医師や医療機関にとっては収入がない上に負担が増えることとな
り、医療機関にとっては導入することが不利に働くこととなる。また、健康保険制度
で 24 時間受付可能な体制にした時、そのための準備や待ちなどのコストを医師は保険
者には請求できない。仮にこれを患者が支払うと診療全体が保険外の自由診療となり、
患者の負担が増すこととなる。
さらに、一疾患に対する一連の診療行為において保険診療と自由診療を併用するこ
とは、原則として認められていない。このため、診療行為の一部にでも保険診療対象
外の行為を用いた場合、全ての診療行為が保険対象外となり、患者の自己負担は格段
24
に大きくなる。なお、この問題については、内閣府総合規制改革会議「重点6分野に
関する中間とりまとめ」(平成 13 年7月)においても取り上げられており、公的医療
保険の対象範囲を平成 14 年度から逐次実施していくことが掲げられている。
c)その他課題
医療の IT 化については、厚生労働省は積極的に取り組んでいる。1999 年4月に厚生
省(当時)局長通知により診療に関する諸記録の電子保存を容認する決定を下し、電
子カルテの制度的な壁が撤廃された。現行法では電子カルテの病院敷地内の施設への
保管が義務づけられ、効率的保管のために秘密保持を条件に民間企業に外部委託する
ことはできないが、2001 年秋に発表された医療制度改革試案の中では、2001 年度内に
電子カルテの施設外保存を可能とする規制緩和が進められる見込みである21 。なお、電
子カルテの施設外保存の規制緩和については、オンラインで施設間情報がやり取りで
きる社会作りを目的としており、安全に共有、保存するシステム及び安全な伝送のた
めには電子認証システムの開発等が不可欠であり、厚生労働省では 2001 年度予算にお
いて「高度医療情報普及推進事業(仮称)」を盛り込んでいる2223 。
電子カルテが本格化することにより、複数の医療機関による患者情報の共有化、二
重検査や二重投薬などの無駄や事故の防止が進み、医療の質や効率が高まるほか、患
者へのカルテの開示も進展することが期待される。しかし、費用、用語等の統一、医
師のコンピュータリテラシー、といった問題点が指摘されている。
まず費用については、日本医師会の試算によると、全国の医療機関を IT 化するイン
フラ整備、維持・管理に必要なコストは年間1兆8千億円が 10 年で合計 18 兆円にのぼ
る。しかし、現時点では医療機関経営にとって投資に見合う効果は得られないと言わ
れ、民間病院間では「情報を電子化する費用を診療報酬に反映すべきだ」との意見も
見られる24 。また、電子カルテ普及に必要な用語やコードの標準化は 2003 年度に行わ
れる予定であり、医師同士でやり取りする医療情報データベース作りもこれからとさ
れている25 。医師の多くがパソコンに不慣れであることも、電子カルテの普及にとって
大きな障害となっている。医療機器メーカー関係者によると「開業医の半数以上はキ
ーボード操作が苦手」との指摘もある26 。
21
日経産業新聞 2001/10/25
22
福祉 NEWS チャンネル(http://www.fukushi.com/news/2001/02/15kiseik.html)
cyber MED “保健医療情報システムのグランドデザインについて/厚生労働省医療技
術情報推進室・武末文男室長補佐の講演 “
(http://www.cybermed.co.jp/saishin/iryou/011009_keisansyou_3.htm)
23
24
日経産業新聞 2001/10/25
25
日本経済新聞 2001/09/28
26
日経産業新聞 2001/07/12
25
さらに、カルテの内容を患者に開示する問題については、厚生省(当時)は、1997
年に「カルテ等の診療情報の活用に関する検討会」を発足させ、1998 年 6 月にまとめ
た報告書において、カルテ等の診療情報の開示を法制化すべきとする旨を提言した。
しかし、日本医師会は、医療に法律による強制はなじまないとして法制化に強く反対
し、法律によらずに日本医師会が作成したガイドラインに沿って任意に診療記録の開
示を行うべきであると主張した。この結果、法制化は時期尚早として見送られること
となったが、なお法制化に対する要望は強い27 。
③食事
インターネットに接続可能な冷蔵庫によるネットショッピング機能や在庫管理機能
に期待が高まる。特に在庫管理では、食品の数量、賞味期限等を管理するために、バ
ーコードよりも扱いやすい視覚タグや電波タグなどによるデータ入力方法の開発が望
まれる。
なお、献立メニューが決める際には、健康データや嗜好といった個人情報が参照さ
れるため、個人情報保護には十分に留意する必要がある(個人情報保護については、
参考資料2参照)。
④買い物支援
家に居ながら生活に必要なものを購入できる買い物代行サービスは、体の不自由な
お年寄りや身体障害者などにおいて需要が高い。これらの人たちを対象とした機器や
アプリケーションはアクセシビリティを考慮したインターフェースの開発が不可欠で
ある。
今後、ネットショッピングに加え、家計簿サービスなどの提供によるサービスの差
別化が図られる。電子マネーを含めた簡便でセキュアな決済方法が重要になるほか、
商品やサービスのライフサイクルにあわせた顧客関係管理(CRM)システムの構築が
求められる。
なお、買い物代行サービスでは、個人情報にあわせた買い物メニューが提示される
仕組みとなっているため、個人情報保護について十分留意する必要があるほか、電子
署名などにより本人であるか否かの確認(認証)を確実に行うことが求められる(個
人情報保護、電子署名については、参考資料2参照)。さらに、今後は電子的な領収
記録を、現状の紙ベースの領収証と同等の証拠能力を持たせるための仕組みづくりが
必要となるものと考えられる。
27
森島昭夫(名古屋大学名誉教授)「診療情報開示の法制化へ向けて」(日本医療企
画「医療白書 2000 年度版」pp42-49)
26
⑤安全
携帯電話を用いたセキュリティサービスを展開する上では、他人によってハッキン
グされない、緊急時に通信が切れない(ベストエフォートであっても確実に通信が行
われる)、といったセキュアなネットワークを構築することが求められる。
⑥街角
個人の位置情報を利用したユビキタスなサービスにおける技術的課題としては、個
人のプライバシとサービスの利便性の調和を図る必要がある。これらのサービスは、
ユーザーの行動を追跡することも想定されるため、適切な個人情報の保護と、取得す
る情報の種類やその情報の取り扱い方等の情報について、ユーザーが得られるような
状態になっていることが望ましい。
なお、独立行政法人産業技術総合研究所サイバーアシスト研究センターでは、空間
内の相対的・絶対的位置を宛名として通信・サービスを行う技術(サイバーアシスト)
について研究開発が進められている、この技術が実現した場合、IP アドレスのような
個人が特定されるような情報を用いず、ユーザーのプライバシーを明かすことなくサ
ービスの実施が可能となる。同センターでは、屋外 GPS と屋内測位システムの融合を
計るためし街や屋内にセンサーやタグ群を設置するとともに、上記インフラと通信す
る超小型 PC の開発を進めている。同センターは、目標として、獲得ユーザー数 200
万人、普及台数 800 万台、PC 市場及び新規サービス業の新規開拓等による経済波及効
果総額を 400 億円∼800 億円と見込んでいる28 。
⑦行政
行政手続の申請等のオンライン化を行い、電子政府を実現するためには、①申請者
からの申請等が真に当該名義人によってなされたものであるかどうか、②送信途上で
文書が改竄されていないかどうか、を確認できる仕組みが不可欠である。2003 年度か
らの申請等のオンライン化に対応するため、電子署名を地方公共団体が認証する個人
認証制度の構築が進められている(認証については参考資料2参照)。
⑧地域コミュニティ
住民の情報発信を支援する技術としては、情報発信そのものを容易にできるように
する作成支援と、具体的な出会いを通じて情報発信を拡張する交流支援という側面が
ある。
前者については、基本的なものとしてホームページ作成支援ツール、オーサリング
28
サイバーアシスト研究センター(http://www.carc.aist.go.jp/carc/j/index.htm)
27
ツールなどがあり、さらにワードプロセッサやプレゼンテーションツール、表計算ソ
フトなどドキュメント作成ツールもネット対応しつつある。最近は、作成されるコン
テンツをインテリジェント化し、的確な翻訳や要約を実現することなどを通じてより
多くの利用者に提供する技術なども展開している。
後者については、基本的なものとして電子掲示板やチャットなど具体的な情報発信
の場を提供するものがある。最近は、オークション技術やマッチング技術により発信
者と受信者間で、趣味等が一致する相手を捜すことが容易なものとなっている。こう
して生まれる関係は、ネット上でのやりとりのみに飽きたらず実際に相手と会ってみ
るという関係にまで発展する可能性が高いものと思われる。
28
4.今後の方策
(1)実証実験の在り方
本研究会の成果を基に、健康、医療、教育、買い物、セキュリティ等、生活に関連す
る新規サービスが家庭向けに本格供給されるようになるためには、①使い易いインター
フェースを備えた端末機器の普及、②相互接続性のあるネットワーク技術に加え、③
様々なサービスを連携させたり、物流・決済・情報流通等の基礎的インフラを整備した
りするとともに、家庭内の IT を活用した新たなサービス提供モデルを実験的に実証する。
なお、e-Japan2002 プログラムにおいて、「2005 年に実現される世界最先端の IT 国
家の姿を国民のみならず世界に広く提示するためのショーケース」とされている「e!
プロジェクト」として実施するため、内閣IT室の下で、実証地区を選定することと
する。
(注)
本プロジェクトの名称については、IT を活用した生活の変革を目指すという本実
証実験の主旨に鑑み、実証実験への市民参加を促すため、実験実施自治体の市民から
愛称を公募することとする。
(2)実証実験の内容(案)
”IT from the home”研究会において、参加委員である各社より、IT が家庭へ普及した
場合におけるサービスの案として各種提案がなされた(参考資料4参照)。これら検
討成果をもとに、平成 14 年度の実証実験においては、事業化が可能となるサービスと
してのビジネスモデルが成立するかについて、情報家電を実装した家庭環境における
検証・評価を実施することとなる。
実証実験において検証するサービスのイメージは、研究会終了後における実証実験
参加メンバーによる打合せにおいて、今後整理されることとなるが、現時点における
イメージ案は以下のとおり。
①健康管理・医療等
○ 慢性疾患等の健康管理として、蓄積された健康管理データを医師が閲覧、健康状況
を把握し、必要に応じてテレビ電話により問診を実施。
○ 予防の観点から健康に留意する中高年を対象に、蓄積された健康管理データの随時
参照による自己管理支援と、必要に応じテレビ電話を通じたアドバイスの提供、医
師・病院の紹介。
○ 健康維持のため食事に注意している家庭に対し、健康情報を元に、食事アドバイス
29
や健康管理情報を配信。健康メニュー料理の作り方の配信や、調理に必要な素材セ
ットなどを宅配するサービスも検討。
○ また、家庭の安全の観点から、侵入者があると、情報家電等のセンサが反応し、携
帯電話等へ異常事態を自動的に通報し、当人が画像等で確認の上、警備会社が出動
し対処。
②教育
○ これまでに形成された IT インフラや教育用コンテンツ・アーカイブの活用を前提
に、教育現場でのニーズを踏まえ、教師、生徒、親それぞれが利便性の向上を実感
できる教育形態を検討する。
○ 教師にとっては、IT 化教材の作成により負担が追加されるのではなく、既存コンテ
ンツの選択・アレンジにより短時間で効果的な予習用教材の作成を可能にする。魅
力的な教材による生徒の予習を前提に、限られた授業時間内での効率的な指導が可
能。
○ 生徒にとっては、学習が学校という場と時間に限定されず、インターネットを通じ
て、家庭においても同様の学習を継続することが可能。
○ 父母は家庭内のパソコンで、「掲示板」や「電子連絡帳」等によって、学校から発
信される行事予定、給食、学校における子どもの学習状況等の情報を得ることが出
来、学校との密なコミュニケーションが実現される。更に PTA 活動など保護者同
士のコミュニケーションも促進できる。
また、上記の情報を父母が持つモバイル機器に発信し、職場や外出先においても
学校の情報を逐次得ることが出来るほか、子どももモバイル機器により屋外でも父
母や学校とのコミュニケーションを図ったり、学習を継続して行うことが出来る。
(3)実証実験の体制
実証実験を実施するため、年内中を目処に実験参加企業からなるコンソーシアムを
結成。ホーム・ヘルスケアや教育などのテーマ別にワーキング・グループを形成し、
事業化を前提としたビジネス・モデルの検証や、技術的なソリューション等、実証実
験内容の細部について検討・準備を進めることとする。
30
参考資料1 消費者ニーズ調査について
(1)調査の概要
①調査目的・主旨
情報家電、及び、情報家電を利用したサービスに対する具体的なニーズを把握する。
②実施要領
以下の属性を持つグループに対してグループインタビュー(高齢者については個別
ヒアリング)を実施した
グループ
ベテラン主婦
若い主婦
一人暮らしの女性
一人暮らしの男性
家族と同居している女性
単身・二人暮しの高齢者
年
齢
層
居住地
40 代(3)、50 代(1)、60 代(1)
30 代(5:全員)
20 代(3)、30 代(2)
10 代(1)、20 代(3)、30 代(1)
20 代(4)、30 代(1)
60 代(2)、70 代(3)
港北ニュータウン
世田谷区
世田谷区
世田谷区
港北ニュータウン
世田谷区・目黒区
③調査内容
「食事」、「健康」、「買い物」、「安全」の各テーマを中心に、生活の現状と不
満を把握した。
上記テーマについて、情報家電を利用した具体的なサービス・イメージを提示し、
興味がある場合にはコスト面を含めて利用意志について質問した。また、興味が無い
場合にはその理由を回答してもらった。
「ITを用いてどんなことができればよいか」等の調査も併せて実施した。以下の
属性を持つグループに対してグループインタビュー(高齢者については個別ヒアリン
グ)を行った。
a) ベテラン主婦(30 歳以上)
タイプ
小∼中学生の子
供あり
高校∼大学生の
子供あり
年齢
未既婚
住所
横浜市
都筑区
横浜市
青葉区
横浜市
青葉区
43才
既婚
44才
既婚
社会人(
独身)
56才
既婚
子供夫婦と同居
68才
既婚
横浜市
都築区
親と同居(2世帯
住宅)
43才
既婚
横浜市
都筑区
職業
家族構成
専業主婦 夫(43)、長女1(2)
在宅で 夫(45)、長男
塾講師 (17)、次男(14)
主婦
夫(56)、娘(28)
娘、娘の夫、孫
(
中2女子、小6
男子)
夫(41)、長女
専業主婦 (12)、次女(10)、
父(70代)、母(70
主婦
31
ネット利用状況 CATV
CATVを
有
通じて利用
CATVを
有
通じて利用
CATVを
有
通じて利用
未使用
無
CATVを
通じて利用
有
b) 若い主婦(20 歳代∼30 歳代)
タイプ
子供なし。専業主
婦。
子供なし。共働
き。
乳児∼幼稚園の
子供あり。専業主
乳児∼幼稚園の
子供あり。専業主
乳児∼幼稚園の
子供あり。共働
年齢
未既婚
住所
職業
33才
既婚
世田谷区 専業主婦 夫(39)
36才
既婚
世田谷区
30才
既婚
世田谷区 専業主婦
39才
既婚
32才
既婚
商社
家族構成
夫(37)
夫(29)、長男
(1)
夫(44)、長男(8・
世田谷区 専業主婦
小2)、長女(4・年
夫(29)、長男
世田谷区 リース業
(11ヶ月)
ネット利用状況 CATV
利用
CATVを
通じて利用
CATVを
通じて利用
無
有
無
利用
無
利用
無
c) 一人暮らしの女性(20 歳代∼30 歳代後半)
タイプ
都区内の企業に
勤務するOL。一
人暮らし。
都区内の企業に
勤務するOL。一
人暮らし。
都区内の企業に
勤務するOL。一
人暮らし。
大学生。一人暮ら
し。
大学生。一人暮ら
し。
年齢
未既婚
住所
職業
25才
未婚
世田谷区 教育関係
札幌市
利用
無
31才
未婚
世田谷区
愛知県
利用
無
39才
未婚
世田谷区 団体職員
石川県
利用
無
21才
未婚
世田谷区
大学生
福岡県
利用
無
22才
未婚
世田谷区
大学生
福井県
利用
無
会社員
出身地
ネット利用状況 CATV
d) 一人暮らしの男性(20 歳代∼30 歳代後半)
タイプ
都内の企業に勤
務するサラリーマ
ン。一人暮らし。
都内の企業に勤
務するサラリーマ
ン。一人暮らし。
都内の企業に勤
務するサラリーマ
ン。一人暮らし。
大学生。一人暮ら
し。
大学生。一人暮ら
し。
年齢
未既婚
住所
職業
出身地
24才
未婚
世田谷区
会社員
東京都
26才
未婚
世田谷区
会社員
新潟県
利用
無
39才
未婚
世田谷区
会社員
静岡県
利用
有
19才
未婚
世田谷区
大学生
広島県
利用
無
23才
未婚
世田谷区
大学生
鳥取県
利用
無
32
ネット利用状況 CATV
有(ネット
利用
は未接
続)
e) 家族と同居している若い女性(20 歳代∼30 歳代)
タイプ
都内の企業に勤
務するOL。親と
同居。
都区内の企業に
勤務するOL。親
と同居。
大学生。家族と同
居。
年齢
未既婚
住所
職業
家族構成
28才
未婚
横浜市
青葉区
派遣社
父(56)、母(56)
員、事務
24才
未婚
横浜市
港北区
サービス 父(52)、母
業
(57)、姉(28)
21才
未婚
横浜市
都筑区
大学生。家族と同
居。
22才
未婚
横浜市
港北区
兄の経営する塾
に勤務。家族と同
居。
37才
未婚
横浜市
都築区
年齢
未既婚
住所
一人暮らしの女
性
77才
既婚
一人暮らしの女
性
76才
既婚
一人暮らしの男
性
72才
既婚
夫と二人暮しの女
性
60才
既婚
妻と二人暮しの男
性
62才
既婚
ネット利用状況 CATV
利用(CATV
も利用)
有
利用
無
利用
有
利用
無
利用
無
両親(53・48)、
弟(19)、妹(15)
父(56)、母
大学生 (52)、姉(29)、
兄(28)、祖母
父(65)、母
(65)、兄(41)、
塾講師
兄夫婦(40)、兄
の子供(男9・女
大学生
f) 高齢者
タイプ
職業
家族構成
ネット利用状況 CATV
現在、要介護の
夫が施設入所
世田谷区
無職
未使用
無
中。娘2人は結
婚し別居。
一人暮らし。息
テーラー
世田谷区
子と娘はそれぞ
未使用
無
業
れ結婚し、別居。
一人暮らし。奥
様とは死別、娘2
世田谷区
無職
未使用
有
人のうち、長女は
近所に在住。
夫(58)。娘2人
世田谷区
無職 は、現在米国在
利用
無
住。
妻。2人の息子
目黒区
自営業
利用
無
は結婚して別
(2)調査結果
①日常生活での感じること
食事については、家族を含めた健康に配慮し、栄養バランス、多くの種類の摂取、
食品の安全性等に注意が払われていた。中には、栄養補助食品、及びそれに準ずるも
のを食している人も少なくなかった。ただし、一人暮らしの男女については、そうし
たことができずに、悩みの種になっている人が多かった。その他の悩みとしては、日々
の献立をどうするか(主婦層)、ダイエット(女性)、ご飯を作りすぎてしまう(高
齢者)・一人分を作るのが難しい(一人暮らし)などであった。
買い物については、人数分に合わせた買い物ができず不便といった指摘をする層が
多い。また、配達サービスを使っている層も多いが、生協は、配達の時間や場所が決
まっていて利用しずらいといった声もあった。ただし、大手スーパーによるネット販
33
売は好評だった。高齢者は、コミュニケーションといった理由からスーパーよりも近
くの商店からの配達を好む傾向があった。ネット通販については、女性は概して割高、
入力面倒といった声があるが、男性は好意的だった。その他、一人暮らし男女、家族
同居女性は店舗の営業時間延長を望んでいた。
健康について、日常生活では食事面と運動への注意が中心である。若い主婦からは、
健康チェックが日常的にできればよいとの意見も寄せられた。病院関係では、待ち時
間の長さを問題視する意見が多かった。また、病院情報へのニーズもあった。一方、
高齢者はかかりつけ医の存在を重視していた。
安全面では、泥棒が出没していることもあり、戸締りには気をつけているが、多く
は自己防衛で対応していた。玄関に戸締り状況を一目でチェックできるパネル、玄関
のかぎをかけると全てのロックがかかるといったシステムへの要望もあった。若い女
性を中心に、来訪者のカメラモニターへのニーズも少なくなかった。若い主婦は子供
の安全への意識も高かった。
②サービスの機能に対する意見
食事サービスについては、肯定的な意見として、献立のバラエティが増える、健康
管理までしてくれる、賞味期限を見逃すことがなく無駄がなくなる、不足した際の自
動注文が便利などの指摘があった。一方、否定的な意見として、レンジにどのくらい
のことができるのか、食材のデータ入力・管理をどのようにするのか、冷蔵庫の中身
を把握されるのが怖い、宅配弁当の方がよいとの意見もあった。また、料理(買い物)
には、自分の趣味・ストレス解消と重なる場合もあり、そうした人はサービスに否定
的な見解を示していた。
買い物サービスについては、概ね、日用品や雑貨、加工食品等の購入には便利との
声が多かった。しかし、生鮮食料品の購入には否定的な意見が多数寄せられた。決済
方法を重視する声、近くにコンビニがない場合の対応等への質問もあった。その他、
海外の珍しいもの等、ネットならではの製品の購入に期待する意見もあった。ただし、
今のインターネットで十分とする声もあった。
健康サービスについては、自分たちで使うよりも、むしろ親に使ってもらいたいと
する声が多かった。一方、高齢者は、「便利だが今は要らない。もっと年をとったら
使うかもしれない」といった評価を示していた。さらに、使い勝手やセキュリティ、
果たして適切なアドバイスがえられるかといった不安の表明もあった。
安全サービスについては、携帯電話がインターホン代わりになること、幼稚園等の
様子がリアルタイムで把握できるようになることなどが好評であった。一方、本当に
鍵がかかるのか、異変時には警備会社ではなくて警察に通報される方がよいといった
声もあった。他のリクエストとして、開いたドアでも遠隔で閉めることができる、雨
が降ってきたら窓が自動的に閉まる、遠隔操作で犬にえさを与えるといった意見があ
34
げられた。
③サービスへのニーズに関する意見
食事サービスについて、ベテラン主婦・高齢者は、一部で利用意向は見られるが、
概して今はまだ不要とする意見が多かった。若い主婦は、利用したいという声も見ら
れた。料金は1万円程度との認識を示していた。一人暮らしは、こうしたシステムを
活用すると、食事の幅を広げられることにメリットを感じている様子だった。料金は、
メニュー検討が 1,000 円/月で、宅配が生協と同程度の金額と認識していた。家族と同
居の女性は、自分よりも親に活用してもらいたい意向が強いように見受けられた。料
金は数万円でも可と回答していた。
買い物サービスについて、概してベテラン主婦・老人は利用意向が低く、それ以外
の層はやや高いという結果になった。ただし、購入シーン・購入対象となる商品は、
層・個人によって様々だった。利用価格は層によってまちまちだが、1回当たりの利
用料で見た場合、数百円程度と思われる。ベテラン主婦・老人は、自ら確かめながら
購入したいとする意見が多かった。
健康サービスについては、今回提示したサービスの中で最もニーズが高く、特に、
若い主婦は全員が使ってみたいとする意向を示した。ニーズが比較的高かったのは、
自分で使用する場合は、薬の処方・配達サービス、体重等のチェック、病院予約など
だった。ただし、必ずしも毎日使うといった利用は想定されていなかった。利用価格
は、ばらつきがあるが、特に健康に留意している人は、月5万円でも可としていた。
安全サービスについては、携帯電話がインターホンになることは好評であったが、
ドアを開けて中に入れることに関してはかなりの抵抗感が見られた。家の中に入れる
のは、家族・親戚がせいぜいであり、友人にも拒否反応があった。料金は、月数千円
程度と考えられる。遠隔操作よりも、玄関でドアを閉めたときに、スイッチの切り忘
れ等を通知してくれる方がよいとする意見もあった。また、サービスそのものを、今
は不要とする意見も少なからず見られた。
④サービスへのニーズに関する意見
サービス全体を利用しようとすると、かなり高額になることが想定されるため、必
要なものだけをオプションで選べるようにすべきとの意見が見られた。
サービスの管理については、1社に集中させるべきという意見と、複数に分散させ
るべきという意見に分かれた。1社に集中させるのは、窓口が一本化されることによ
る利便性を理由としていた。一方、複数社に分散させるのは、システムダウン、デー
タ流出といったリスク管理によるといったものだった。
そのほかにも、全てを IT 機器に依存してしまうことへの「恐れ」、人間中心とした
システム構築の重要性を指摘する声もあった。
35
情報家電そのものについては、実際に購入するには、現在の家電の 20%増程度が上
限と思われる。ただし、家の新築時等においては、一気に導入を促すよい機会である
ともいえる。
また、特に高齢者にとって、情報家電の使い勝手は大きな関心事であった。
その他、新たなサービスとしては、掃除に対するニーズが非常に高かった。清掃以
外について、家事に関しては食事を完全自動で調理するシステム、食事の後片付け、
ゴミだし、洗濯物の仕分け、外からの風呂の給湯・空調管理などだった。余暇・娯楽
等では、バーチャルヘアスタイル、ドライブ時における情報サービスなどである。教
育では、在宅での習い事・運動、風邪を引いた場合の在宅での授業などである。その
他、携帯電話を使っての落し物創作サービス、検索をスムーズに行うためのシステム、
行政サービスへのニーズも少なからず指摘されていた。
36
参考資料2 法制度に係る共通課題
(1)個人情報の保護
個人情報がその主体(本人)のプライバシーないし人格権の一部を構成し、あるい
は密接に関係しており、保護を必要とするものであることに異論の余地はない。しか
し、個人情報が他人によって利用されることで、本人のみならず、社会に多くの利便
がもたらされることも疑いのないところである。第2章に示したような、家庭の情報
化に係るすべてのサービスは、まさに個人情報を他人が利用することを前提としてお
り、それによって個人のニーズに即して高度にカスタマイズされたサービスの提供が
可能となっている。
しかし、IT の発達を背景に、すでに個人情報が本人の予想もしなかった形で利用さ
れる事態が生じており、インターネット等を介して事業者の保有する顧客情報等が漏
えいする事案が相次ぐなど、個人情報保護にかかわる問題が顕在化している。身近な
アプライアンスで、いつでも、どこでも、常時接続できる 2005 年においては、個人情
報が悪用される危険性がさらに増すことが予想される。
これまで我が国では、個人情報保護に関する法制度として、行政機関を対象とした
「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」(1988 年)
などが施行されている。また、民間部門では、業界ごとに通商産業省や郵政省等のガ
イドラインにもとづいた民間団体が策定したガイドラインやプライバシーマーク等の
マーク制度など、自主的な取り組みによって運用されてきた(表)。
37
表 個人情報の保護に関する現行制度等について
国・地方自治体
民間事業者等
(国)
行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人
情報の保護に関する法律
個人情報保護制度
(求職者等の個人情報の保護)
職業安定法、労働者派遣事業の適正な運営の確
保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する
法律
(地方公共団体)
(信用情報の保護)
個人情報の保護に関する条例(1,529 団体)
割賦販売法、貸金業の規制等に関する法律
個人情報の保護に関する規則、規程等(865 団体) ガイドライン
(医療情報の保護)
刑法、診療放射線技師法等
医療法、ガイドライン
関連制度
(その他)
ガイドライン(経済省、総務省、各事業者団体
等)、JIS
マーク付与制度(民間団体等)
個人情報保護に関する条例(民間も対象とする
もの:311 団体)
(特定業務における守秘義務)
刑法(弁護士等)
行政書士法、宅地建物取引業法等
(守秘義務)
国家公務員法、地方公務員法等
(統計調査等における秘密の保護等)
統計法
(通信の秘密の保護)
電気通信事業法等
(住民票コードを利用する情報の保護)
住民基本台帳法
その他
民法(名誉毀損、プライバシー侵害等に関する不法行為)
刑法(名誉毀損罪、窃盗罪、横領罪等)、不正アクセス行為の禁止等に関する法律
著作権法、特許法等
(第2回個人情報保護法制化専門委員会資料より作成)
しかしながら、高度情報通信社会の進展に伴う個人情報の利用の拡大を背景として、
民間事業者も含めた包括的な法制度の確立が求められるようになってきた。このため
政府では、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的に、
平成 12 年 2 月より個人情報保護法制化専門委員にて検討を進め、平成 13 年 3 月 27 日
の閣議で「個人情報保護法案」として決定された。
この法案では、まず、公的部門・民間部門を通じ、個人情報を取り扱うすべての者
が、個人情報の取り扱いに当たって、個人情報の保護のために自ら努力すべき一般ル
ールを「基本原則」として定めている。さらに、特に、個人情報をコンピュータ・デ
ータベースなどに入れて事業に用いている事業者(「個人情報取扱事業者」)につい
ては、「個人情報取扱事業者の義務」の規定を設け、より具体的で明確なルールを定
めている。
しかしながら、「公的分野の個人情報保護を先に図るべき」との批判もあり、年度
内での成立は見送られることとなった。民間部門を対象とする本法案は、行政機関法
38
の改正案と合わせて来年の国会で本格審議される見込みである。
(2)署名・認証
オンラインによる物品やサービスの購入(以下「電子商取引」)や行政手続きにお
いては、本人であるか否かの確認(認証)が問題となる。実際、他人が自分になりす
ます、料金だけをだまし取るといった犯罪の例は少なくない。
安全に電子商取引や行政手続きが行われるためには、電子的な相互確認手段の確立
と、法的な保証が求められる。技術的には、公開鍵暗号技術の応用を中心とする電子
署名が開発されており、米国、欧州ではすでにこの電子署名に実社会の手書きサイン
と同等の効力を認める法律を制定している。しかしながら、これまで我が国では電子
的な認証に対する法的な根拠がなく、諸外国に対して遅れを取っていたことは否定で
きない。
このような状況の中、我が国においても電子的な認証手段を、これまで我が国の実
社会で取られてきた認証制度である「印鑑登録証明書」と同等の効力を持つものとす
るための法整備が進められている。
まず、民間から政府、政府から民間への行政手続きを行う際の電子的な認証につい
ては、政府は平成 11 年 12 月の内閣総理大臣決定において基盤構築を進めることを決定
し、これを受けた「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組み」(平成 12
年 3 月 31 日 行政情報システム各省庁連絡会議了承)に沿って、総務省、経済産業省
及び国土交通省は先導的に府省認証局を、また総務省においてはこれらを接続するブ
リッジ認証局を構築した。また、その他府省認証局については、「e-Japan 重点計画」
に基づき、平成 14 年度までに整備することとしている。
なお、総務省「地方公共団体による公的個人認証サービスあり方検討委員会」中間
とりまとめ(平成 13 年 8 月)によると、住民が行政手続きのオンライン申請等を行う
にあたって必要となる個人認証については住民に身近な行政機関であり、住民基本台
帳等に基づく厳格な本人確認を行える市町村が担うことが不可欠であるとしている。
中間まとめによると、各市町村は都道府県と連携しながら、電子申請を行う住民に
対して原則として IC カード(但し、IC カードの読取・書込装置の普及状況に鑑み、当
面、フロッピーディスク等に格納する選択肢も検討)に格納した電子証明書を発行す
ることとなっている。また、報道資料によると、総務省は約 1,000 万人の国民が利用す
ると想定し、平成 14 年度より個人認証システムを開発するとしている。
また、民間の電子商取引についても、2000 年 5 月 31 日に電子署名法(「電子署名及
び認証業務に関する法律」)が公布され、2001 年 4 月 1 日より施行されており、今後、
安全な電子商取引の認証基盤として普及していくことが期待されている。
39
(3)コンテンツに係る著作権
プログラム
著作権法第 2 条において、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができる
ようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」と定義されたプロ
グラムは、小説や音楽などと同様、著作権が保護されている。したがって、ゲームソ
フトのようなパッケージ型ソフトのプログラムであれば、「ゲーム内容を記号語によ
って表現するソフトウェア・プログラムとして、作者の独自の学術的思想の創作的表
現であり、著作権法上の著作物」と認められ、製作者の権利は保護される。
しかし、プログラム著作物は、その性質上、一般の著作物と同様に扱えないとされ、
特別の規定が設けられている。すなわち、プログラムの著作権は、①プログラムの作
成のためのプログラム言語、規約(プロトコル)、解法には及ばない、②プログラム
を他の電子計算機で利用するため、またはより利用効率をアップするための改変は、
同一性保持権の除外項目とする、③いわゆるバージョンアップも同一性保持権や、著
作物改変による著作権侵害とは解されない、④プログラムの複製物の所有者が電子計
算機で利用するために行う複製・翻案は許される、⑤プログラムの創作年月日を登録
することができるなどと規定されている。この中で近年論議の対象になっている権利
は、同一性保持権と複製権である。
同一性保持権は著作権法第 20 条において、「著作者は、その著作物及びその題号の
同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受
けないものとする」と規定されている。プログラム著作物の場合、この規定に従って
しまうと、著作者以外リプレースやバージョンアップも行えなくなる。そのため、上
記のような特別の規定が設けられている。しかし、この特別規定の条件は必ずしも明
確ではなく、裁判に至るケースも多い。可能な限りプログラムの改変を行わせたくな
いとする著作者と、リプレースやバージョンアップを自由に行いたいユーザーの対立
の構図が浮かび上がっており、著作権法による保護の限界も指摘されている。
複製権は著作権法第 21 条において、「著作者は、その著作物を複製する権利を専有
する」と規定されている。プログラム著作物の場合、バックアップや記憶媒体の変換
などを行う必要性があるため、上記のような特別の規定が設けられている。この複製
権を悪用した違法コピーが後を絶たないことも問題だが、リヴァース・エンジニアリ
ングに関する議論も見逃せない。リヴァース・エンジニアリングとは、製品を分析・
分解して、その構造や性能などを知ることを指す。製品の生産プロセスを逆方向に進
む技術という意味でリヴァースと呼ばれ、新製品や競争相手の製品の分析・評価をす
る目的で利用されている。プログラムはその本質において、技術としての特性を備え
ている。したがって、技術の累積的発展を考慮すれば、リヴァース・エンジニアリン
グを許容する(それに係る複製権を認める)必要がある。他方、内容が解明できれば
40
容易に類似品を製作できるプログラム著作物の場合、リヴァース・エンジニアリング
の許容は著作権の侵害につながるとの指摘もある。この問題については、未だに法的
な結論が出ていない。
データベース
データベースは著作権法第 2 条において、「論文、数値、図形その他の情報の集合
物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的
に構成したもの」と定義されている。ただし、著作物として保護される範囲について
は、同法第 12 条で「データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性
を有するもの」と限定されている。したがって、データベース自体に創作性がなけれ
ば、保護の対象と見なされない。例えば、気象データやPOSデータなどを集積した
だけのデータベースは、情報自体が極めて貴重なものであったとしても、基本的に保
護の対象と認められないのである。
近年、上記のようなデータベースが増えつつあり、保護の対象にすべきだとする議
論が強まっている。貴重なデータの収集には多額の費用を要する以上、何らかの保護
制度を設けるべきだという方向で意見は概ね一致しつつあるといえる。
著作物のデジタル化
テレビ放送、映画(ビデオ)、音楽など、数年前まではアナログコンテンツが基本
だった多くの著作物のデジタル化が進んでいる。アナログコンテンツとデジタルコン
テンツの大きな違いは、コピーによる質の劣化の度合である。アナログコンテンツの
場合、コピーをするたびに、画質・音質は確実に劣化する。他方、デジタルコンテン
ツの場合、コピーをしてもほとんど質は低下しない。したがって、デジタルコンテン
ツの方が違法にコピーされ、著作者の権利を侵害される可能性が高い。ネットワーク
化が急速に進展している昨今、その危険性は急速に高まっている。
しかし、それは運用面でコピーが容易だということに過ぎず、著作権法上の枠組み
はアナログコンテンツと変わらない。デジタルコンテンツであっても、既存のアナロ
グコンテンツと同等の保護を受けられる。
著作権等管理事業法と規制緩和
著作権等管理事業法が 2001 年 10 月から施行された。半年間の移行期間を経て、翌年
4 月から適用される。従来の仲介業務法では、著作権を委託する管理業者が特定の団体
に限られていた。その規制を緩和する法律である。
音楽など利用頻度が高い著作物の場合、著作者自身が個別に利用料を徴収すること
は事実上不可能である。そのため、どの国でも特定の団体が著作権者と契約を結んで
著作権を集中管理する形態をとってきた。しかし、インターネットの普及などによっ
41
て利用形態が多様化し、より自由な著作権管理制度が望まれるようになってきた。そ
の要望に応える形で成立したのが著作権等管理事業法である。同法の成立によって、
管理業務は民間にも開放されることになった。
ネットワーク化の課題と展望
ネットワーク化の進展によって、多くのデジタル情報がネットワーク上でインタラ
クティブに送受信されるようになったが、これは従来の著作権法では想定しなかった
ものである。著作権法は公衆送信権を認めることでこれに対応したが、すべての問題
に対応できているわけではない。例えば、他者が作成した情報をホームページにアッ
プロードした場合、複製権侵害だけではなく、公衆送信権と可能化権侵害の可能性も
生じる。しかし、角田政芳東海大学教授によると、アップロードが外国のサーバーを
利用して行われた場合、わが国の著作権の効力は及ばなくなるという。
平成 13 年 6 月に発表された「e-Japan2002 プログラム」では、知的財産権の適正な保
護及び利用に関し、「インターネット上での知的財産権等の適正な保護及び利用を促
進するため、コンピュータ・ソフトウェアや映像、音楽などのコンテンツの円滑な流
通の確保等に関する著作権、特許等の関連制度について所要の法整備等を行う」とし
ている。
特許法について
特許法とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である発明を保護する法律
である。したがって、「自然法則を利用した技術的思想の創作」という要件を充足す
るものであれば、ソフトウェアとしてのプログラムであっても適用される。
2000 年 12 月に改訂された特許庁の「特定技術分野の審査基準(コンピュータ・ソフ
トウェア関連発明)」によると、ソフトウェア関連発明が「自然法則を利用した技術
的思想の創作」として認められるのは、「①ソフトウェアによる情報処理が、ハード
ウェア資源を用いて具体的に実現されている場合」29 、もしくは「②当該ソフトウェア
29
「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されてい
る」とは、ソフトウエアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウエアと
ハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又
は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はそ
の動作方法が構築されることをいう。そして、上記使用目的に応じた特有の情報処理
装置(機械)又はその動作方法は「自然法則を利用した技術的思想の創作」というこ
とができるから、「ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体
的に実現されている」場合には、当該ソフトウエアは「自然法則を利用した技術的思
想の創作」である。
42
が①の条件を満たす場合、当該ソフトウェアと協働して動作する情報処理装置(機械)
及びその動作方法、当該ソフトウェアを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒
体」のいずれかとされている。また、ソフトウェア関連発明が「自然法則を利用した
技術的思想の創作」であるためには、「請求項に係る発明が一定の目的を達成できる
具体的なものでなければならない」とされている。特に、ソフトウェア関連発明とし
て特有の判断が必要な場合には、「ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資
源を用いて具体的に実現されている場合、つまり、ソフトウェアとハードウェア資源
とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算または加工を実現す
ることにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)またはその動作方法が
構築されている場合」という条件に該当するかがポイントとなる。該当しなければ、
ソフトウェア関連発明として認められない。
出願の際に添付が義務づけられている明細書の「特許請求の範囲」については、ソ
フトウェアによるプロセスを「方法の発明」、あるいはソフトウェアを含む装置や記
録媒体を「物の発明」と構成して記載することができる。この運用指針によって、プ
ログラムを記録した記録媒体の形式による保護が可能となり、パッケージの侵害品追
及もできるようになったのである。
上記のような細かい規定があるにもかかわらず、ソフトウェア(デジタルコンテン
ツ)に関連する特許は着実に成立している。また、自民党内部の「知的財産制度に関
する議員連盟」においても、「特に経済・産業を巡る環境の急速な変化に対応して、
さらに制度・運用の改善が必要」との認識に立ち、「知的財産制度を所管する通商産
業省・特許庁、文部省・文化庁等の関係省庁は、知的財産制度に関する連携を一層強
化すべき」との議論がなされている。「ネットワーク化の課題と展望」でも述べたが、
「e-Japan2002 プログラム」にて「インターネット上での知的財産権等の適正な保護及
び利用を促進するため、コンピュータ・ソフトウェアや映像、音楽などのコンテンツ
の円滑な流通の確保等に関する著作権、特許等の関連制度について所要の法整備等を
行う」と明記されていることもあり、さらなる法的整備が進むと思われる。
43
参考資料3 技術に係る共通課題
家庭の情報化においては、a)異なる種類の機器・家電が家庭の内外のネットワークと
接続され、b)双方向かつシームレスに融合した複合サービスが、c)誰でも、簡単かつ安
心して利用できるようになること、が重要である(図 1)。
異なる種類の機器・
家電
異なる種類の機器・
家電
が家庭の内外と接続
が家庭の内外と接続
IPv6(Internet Protocol version 6)
ブロードバンド・アクセスネットワーク
ホームネットワーク・ミドルウェア規格
双方向かつシームレスに
双方向かつシームレスに
融合した複合サービス
融合した複合サービス
誰でも、簡単かつ
誰でも、簡単かつ
安心して利用
安心して利用
動画配信技術
著作権管理技術
課金・決済システム
セキュリティ・プライバシー保護
アクセシビリティ
ヒューマンインターフェース
図 1 家庭の情報化の課題
本章では、家庭の情報化の本格化を目前に、民間部門・公共部門双方がクリアすべ
き技術的課題について、上記の 3 つの観点から整理することとする。
a)異なる種類の機器・家電が家庭の内外と接続
ネットワークにより、機器を接続し情報をやり取りするためには、単に物理的に線
でつながるだけでなく、互いの機器が共通の取り決めに従う必要がある。
しかしながら、機器の種類ごとに有線・無線の伝送媒体が異なったり、プロトコル・
ミドルウェアの互換性が確保されていないなど、シームレスで一貫したホームネット
ワークを形成するための技術的課題は少なくない。ここでは、ホームネットワークに
おける技術的課題について、次世代インターネットの基盤となる「IPv6」、我が国でも
急速な普及が進む「ブロードバンド・アクセスネットワーク」、家庭内の機器の相互
接続性を確保する「ホームネットワークのミドルウェア規格」の 3 つの観点から整理
する。
IPv6 への移行に向けた課題
IPv6(Internet Protocol version 6)は、現在利用されている IPv4 に代わるインターネ
ットプロトコルである。IPv6 ではアドレス空間が 32 ビットから 128 ビット(2128 個=
44
約 3.4 × 1038 個)へ飛躍的に拡大することから、PC や情報家電を含めた全てのネット
ワーク機器・端末に固有の IP アドレスを割り当てることも可能になる。しかしながら、
IPv6 への本格的な移行を達成するためには、クリアすべき課題は少なくない。
IPv6 網と IPv4 網の相互接続は、IPv4 システムから IPv6 システムへのスムーズな移
行を推進するためには必須の技術である。これまで、ソフトウェアによるトランスレ
ータ技術の研究開発は行われてきたが、今後は、早急に実運用に耐えられる、高性能
で高信頼なトランスレータシステムの研究開発を行う必要が指摘されている30 。
また、IPv6 対応のネットワーク機器の小型化とモバイル対応へのニーズも高い。PDA、
携帯電話といったモバイル機器のみならず、今後はウェアラブルコンピュータ(身に付
けることのできるコンピュータ)や自動車内のコンピュータシステム等がインターネッ
トに接続するようになることが期待されている。接続機器の小型軽量化とともに、移
動しながらインターネットに接続することが可能なモバイル IP も重要な技術となる。
IPv6 の普及により、家庭内の情報機器が固定的にインターネットへと接続されるよ
うになる。このような環境における、セキュリティ機能とプライバシーの保護に関す
る技術の確立は急務の課題である。また、IPv6 の普及の過程では、IPv4 と IPv6 が混在
した環境でのセキュリティ対策も必要となる。
急速な普及が進むブロードバンド・アクセスネットワークとその問題点
家庭の情報化の本格的な普及に向けて、その前提となるのが、家庭がインターネッ
トに接続するアクセス・ネットワークのブロードバンド化である。遠隔医療や遠隔教
育、オンラインショッピングなどでは、画像や音声を伴う、いわゆるリッチコンテン
ツの利用が進むことが予想される。現在のダイアルアップによる低速接続環境では、
これらのサービスの真価を発揮することは難しい。
これまで米国や韓国等と比較して遅れているといわれていた我が国においても、
ADSL、CATV、光ファイバなどによるブロードバンド化が急速に普及しつつある(図 2)。
また、それに伴って接続料金も国際水準まで下がってきている。特に、ADSL の市場は
急拡大しており、2001 年内に利用者が 100 万人を突破するとの見方もある。
30
INTAP「平成 12 年度 オープンネットワーク化推進のための調査研究報告書」
45
図 2 ブロードバンド・アクセスネットワークの加入者数の推移(出典:総務省)
ブロードバンド化に関する課題としては、ブロードバンド普及の状況は地域によっ
て差が見られることから、新たなデジタルデバイドの要因となることが懸念されてい
る。加えて、ADLS や CATV 等はベストエフォート型のネットワークであるため、利用
者が爆発的に増加した場合でも実効的な通信速度が継続して得られるか、疑問視する
声もある。
また、ブロードバンド化と併せて、家庭においても常時接続環境の普及が進むもの
と見られる。この場合、ホームネットワークが直接インターネットに接続されるため、
効果の高いセキュリティやプライバシー保護の対策が低コストに得られることが今後
重要になる(「(3)誰でも、簡単かつ安心して利用」参照)。
ホームネットワークのミドルウェア規格の現状
(→本編 p 参照)
b)双方向かつシームレスに融合した複合サービス
ここでは、家庭内の情報機器・家電が外部ネットワークと接続され、リアルの世界
と複合化されたサービスを実現するために不可欠な、Web サービスやデジタルコンテ
ンツ配信などに関連する各種の技術課題を整理する。
電子データ交換プロトコルと Web サービス
インターネットにつながった情報家電は、機器としての単体の機能だけでなく、物
流、決済など、現実世界のサービスと連携し、多様なサービスを提供するようになる
ことが期待されている。この場合、複数の事業者の異種システム間で、スムーズなデ
46
ータのやり取りを実現するための技術基盤が必要となる。
企業間取引の分野では、紙の伝票で行われていた注文書/納品書/請求書/領収書
などの処理をネットワーク上で電子的に行う、電子データ交換(EDI:Electronic Data
Interchange)の利用が進められてきた。さらに EDI は、インターネット上の B2B(Business
to Business)の電子商取引(EC)の急激な発展と相まって、製造から物流、販売まで
複数の企業のシステムが連携したサプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain
Management)の一部へと組み込まれていく。特に、PC の消費者への直販で急成長を遂
げた米 Dell コンピュータの SCM モデルは、在庫の削減や機械損失の最小化の面で多大
な効果をあげたことが知られている。
従来の EDI では、その企業または業界独自のデータフォーマットを利用するケース
も少なくなかった。サプライチェーンに、より多くの企業や複数の業界にまたがった
企業が関わるようになるにつれ、その分野における標準化された企業間電子商取引プ
ロトコルが求められるようになってきた。PC 産業および電子部品産業における企業間
取引の効率化を目的とした取り組みとして、米国の「RosettaNet」がある。RosettaNet
では、「PIP(Partner Interface Process)」とよばれる企業間で情報交換する際の手順(ワ
ークフロー)を 100 以上定義するとともに、PIP の規定に従ってメッセージを交換する際
に必要となる通信規約、セキュリティなどシステム構築に必要な技術的要件を定義し
ている。RosettaNet の日本における活動としては、「ロゼッタネットジャパン」が提携
組織として 2000 年 4 月に設立され、2001 年 10 月末現在、103 社が会員となっている。
また 2001 年 6 月には、ロゼッタネットジャパンに加盟するパソコン関連メーカー大手
6 社(インテル、NEC、ソニー、東芝、日立製作所、富士通)が、PC を中心とした電
子部品の調達・販売を RosettaNet 標準によって開始することを表明している。
RosettaNet の PC・電子部品産業をはじめ、多くの業界やソフトウェアベンダにおい
て、SCM 構築のためのプロトコル等の規格化が進められている。表 1に主な取り組み
を示す。
表 1 電子データ交換プロトコル
規格
業界/策定企業
RosettaNet
PC・電子部品
IFX(Interactive Financial eXchange)
金融業界(インターネット・バンキング)
OTA 標準(Open Travel Alliance)
旅行業界
cXML(Commerce XML)
米アリバ(電子市場)
xCBL(XML Common Business Library)
米コマースネット
TEDI(Trade Electronic Data Interchange) 国内大手商社 5 社
こうした標準化・規格化が進む一方、各業界がそれぞれ独立にプロトコルの開発を
47
続けると、各業界間でのインターオペラビリティ(相互運用性)の確保が難しくなる
ことが懸念されている。
「ebXML(Electronic Business XML Initiative)」は、XML(eXtensible Markup Language)
ベースの B2B EC プロトコルのメタ標準(各標準のベースとなる標準)開発に取り組ん
でいる。ebXML は、国連の EDI 標準「UN/EDIFACT(United Nations / Electronic Data
Interchange for Administration, Commerce and Transport)」を開発している「UN/CEFACT
(United Nations Center for Trade Facilitation and Electronic Business)」と、XML による
情報交換用技術標準を推進する会員制の非営利コンソーシアム「OASIS
(Organization for
the Advancement of Structured Information Standards)」がスポンサーとなって、1999 年
9 月に設立された標準化組織である。ebXML は、設立後約 1 年半の活動を通して B2B EC
の実現に必要な一連の XML ベースの標準を開発し、2001 年 5 月に作業を完了したとこ
ろである。これと相前後して、流通業界における地球規模の業界コンソーシアム「GCI
(Global Commerce Initiative)」、自動車業界の部品部材の調達コンソーシアム「Covisint」、
北米での自動車販売コンソーシアム「STAR(The Standards for Technology in Automotive
Retail)」、化学業界の XML/EDI 標準化コンソーシアム「CIDX(Chemical Industry Data
Exchange)」等、世界中の多くの業界コンソーシアムが、ebXML 標準の支持と利用を
表明した。我が国においても、電子商取引推進協議会 (ECOM)に設置された「次世代
EDI 技術調査委員会」、「XML/EDI 標準化調査委員会」及び「標準 XML/EDI 普及促進
WG」が、「標準 XML/EDI 実装フレームワーク」を 2001 年 3 月に公表している。同フ
レームワークは、細部の仕様を除き ebXML 技術アーキテクチャに準拠したものである。
近年、上記の電子データ交換をさらに拡張する動きとして、XML などの技術背景と
したよりダイナミックな企業間アプリケーション/サービス連携を可能にする「Web
サービス」と呼ばれるアーキテクチャが注目されるようになってきた。
ここでいう Web サービスとは、「Web 上で提供されているサービス一般」のことで
はなく、XML、SOAP、UDDI、WSDL といったテクノロジを核としたオープンな分散ア
プリケーション環境のことを指す。例えば、図 3の例で考えると、従来のシステムで
は、出張する場合、社内の出張申請システムに入力する作業と、実際に航空券の予約
を行う作業を別々に行わなくてはならない。しかし航空券の予約を行う Web サービス
があれば、その作業が 1 つで済む。つまり、各サーバー上のアプリケーション(また
はサービス)が連携し、様々な業務の自動化を実現できるわけである。
48
図 3 Web サービスを使ったアプリケーション間連携の例
(出典:Nikkei Business Publications, Inc.)
図 4に Web サービスの基本的なアーキテクチャを示す。
図 4 Web サービスの仕組み
(出典:Nikkei Business Publications, Inc.)
Web サービス・アーキテクチャにおいては、Web サービスの提供者であるソフトウ
ェア部品は「サービス・プロバイダー」と呼ばれる。はじめに、サービス・プロバイ
ダーは、自分自身のサービスの内容や利用方法を、UUDI ディレクトリサーバー等の「サ
ービス・ブローカー」に対して登録しておく。Web サービスの利用者であるアプリケ
ーション(「サービス・リクエスタ」)がある機能のサービスを必要としたとすると、
サービス・リクエスタはサービス・ブローカーに対して、その機能を持つサービスが
存在するかを問い合わせる(①)。サービス・ブローカーはそのようなサービス・プ
ロバイダーがあればそれのインターフェース情報、すなわち入出力のデータ型 (e.g.,
DTD)、トランスポート・プロトコル(e.g., HTTP/SOAP)、及びアクセスポイント(e.g.,
49
URL)を返す。この情報に基づいて、リクエスタはプロバイダーに接続し、サービスを
呼び出す(②)。
このようなアーキテクチャを実現する技術として期待されているのが、「SOAP」、
「UUDI」、「WSDL」の3つの標準である。
SOAP(Simple Object Access Protocol)は、XML でフォーマットしたテキスト形式の
メッセージを転送し、サービスを呼び出すためのプロトコルである。W3C で策定され
た。CORBA や EJB(Enterprise Java Beans)等の分散オブジェクト・プロトコルと違っ
て単純なテキストを HTTP のトラフィックを介して送信するので、一般に企業ネット
ワーク間に設置してあるファイヤウォールにブロックされない。
UDDI はインターネット上にあるサービスのリポジトリで、Web サービスの登録、検
索、閲覧するための仕組みを提供する。これについては米 IBM、米 Microsoft、米 Ariba
などの企業 30 数社が集まり 2000 年 9 月に業界団体「UDDI Project」を設立している。
WSDL は XML メッセージの形式や通信プロトコル、サービス提供者のアドレスなど
の Web サービスに必要となる情報を記述するための言語であり、W3C で策定された。
具体的には利用者側がサービスを要求する際、まず先に WSDL を要求し、サービス提
供者からこれを受け取る。こうすることでサービスを受ける際に必要な一連の情報を
利用者側で実装する必要がなくなる。
Web サービスは、次世代のインターネットを支える主要テクノロジーと注目されて
おり、IBM、Sun Microsystems、マイクロソフトといった大手ベンダが、Web サービス
の普及に向けた事業戦略を推進している。各社とも、XML、SOAP、UUDI、WSDL など
のテクノロジーに対応したアプリケーションサーバーやデータベース、開発環境など
の製品群のリリースを計画しており、トータルソリューションとしての覇権争いが激
しさを増している。特に、マイクロソフトは 2001 年 11 月、家電製品をネットワークで
結び、外部から家庭内の機器をコントロールしたり、ユーザーが家庭内のどこにいて
もインターネット経由で情報が得られる環境を実現する「e ホーム構想」を発表した。
この中の中核技術として、マイクロソフトの Web サービスフレームワークである「.NET
フレームワーク」を位置づけている。
下表に Web サービスに対応した開発ツールや,実行環境となる Web アプリケーショ
ンサーバー製品の例を示す。
50
表 Web サービス対応製品例(開発ツール/実行環境)
分類
製品名
提供会社
提供時期
開発ツール
Delphi V6.0
WebSphere Studio V4.0
Visual Studio .NET
Mono(プロジェクト名)
INTERSTAGE Application Server V4
WebLogic Server 6.1
Oracle9i Application Server
.NET Framework
WX .NET
Dot.GNU Platform
ボーランド
日本 IBM
マイクロソフト
米 Free Software Foundation
富士通
日本 BEA システムズ
日本オラクル
マイクロソフト
東芝テック
米 Free Software Foundation
2001 年 7 月
2001 年 9 月
現在β版
未定
2001 年 8 月
2001 年 8 月
2001 年秋
現在β版
MS .NET と同時期を予定
未定
実行環境
(出典:Nikkei Business Publications)
Web サービスに関するテクノロジは、まだ登場して間もないものもあり、成熟する
にはもう少し時間が必要との声も多い。特に、SOAP に関しては、改ざんや否認の防止
といったセキュリティ上の課題や、複数の Web サービスをまたがったトランザクショ
ン管理の問題が指摘されている。
また、ネット上の UUDI ディレクトリサーバーから不特定のサービス・プロバイダー
を呼び出す実装の場合、そのサービス・プロバイダーが信頼できるものか確認できる
方法やサービスレベルを担保できる手段が現時点では確立されていないことから、ル
ールや制度を含めた環境整備の必要性が指摘されている。
動画配信技術
遠隔教育(e ラーニング)や遠隔医療などにおける動画コンテンツのニーズは高く、
今後急速に利用が進むものと見られる。家庭から動画を伴ったコンテンツやサービス
をネットワーク上で手軽に利用できるようになるためには、数百 kbps∼数 Mbps 程度の
ブロードバンド・アクセスネットワークが必須である(「(1)異なる種類の機器・
家電が家庭の内外と接続」参照)。その他にも、配信フォーマットの互換性確保やコ
ンテンツデリバリー技術の開発といった技術的課題がクリアされる必要がある。
ネットワーク上で配信される動画の配信フォーマットは、ストリーミング・ビデオ
やライブ・ビデオと呼ばれるものが主流になりつつある。ストリーミングとは、音声
や動画などのマルチメディアデータを、全部ダウンロードし終える前に、再生を開始
できる技術である。そのため、利用者は再生するまでの待ち時間が少なくて済む。ま
た、コンテンツ提供者としては、配信したコンテンツデータは、利用者のローカルな
ハードディスク等に蓄積、保存されないため、違法なコピーを作成される危険が少な
い点もメリットである。
ストリーミング技術の分野では、米国のメーカーによる激しいデファクト争いが続
いている。Real Networks の Real Media を Microsoft の Windows Media が急速にキャッチ
51
アプしている状態である(図 5)。両社の技術とも PC プラットフォームにおいて普及
しているが、PDA にも搭載されるようになってきており、情報家電や携帯電話など家
庭内の機器へと展開していくものと見られる。
現在のところ、Real Media と Windows Media 間に互換性はない。そのため、利用者が
使用している機器によって、利用できるコンテンツ・サービスが異なるようになって
しまう可能性もある。また、コンテンツやサービスの提供者側も、全ての人に提供し
ようとすると、複数のフォーマットを用意する必要があり、コストが倍増することに
なる。そのため、ストリーミングフォーマットの標準化や互換性への要請は高い。
(百万人)
30
25
20
15
27.7
(79%)
10
13.2
(38%)
5
0
7.9
(23%)
RealMedia
Windows Media
QuickTime
図 5 ストリーミングフォーマットの利用者数及びシェア
(Nielsen/NetRatings 資料等を基に富士総研作成)
Apple、Sun Microsystems、Cisco Systems(いずれも米)、Philips(蘭)などが参加す
る「Internet Streaming Media Alliance(ISMA)」は 2001 年 10 月、ストリーミングフォ
ーマットの標準仕様を公表した。同仕様は、MPEG-4 規格をベースとするもので、ワイ
ヤレス用とブロードバンド用の 2 種類のプロファイルを提供する。しかし現時点では、
ストリーミング製品シェア上位 2 社である Real Networks と Microsoft は ISMA に参加し
ていない。
コンテンツデリバリー技術
デジタルコンテンツの配信側では、動画のライブ配信などのように、大容量のコン
テンツに一度に多くの人がアクセスし、サーバーやバックボーンネットワークに負荷
が集中するような場合でも、コンテンツを満足のいく品質で安定的に提供することが
課題になっている。コンテンツデリバリー技術は、コンテンツサーバー(オリジンサ
ーバー)からクライアントに直接配信するのではなく、世界中に分散配置したキャッ
シュサーバーを経由させたり、独自網を中継用回線として使用するなどして、サーバ
ーやバックボーンネットワークのボトルネックを解消する技術である(図 6)。最近
のブロードバンド化に伴い、リッチコンテンツの流通が増加しているのに対応して、
特に有料配信ビジネスにおいて利用が拡大してきている。
52
オリジンサーバ
(コンテンツサーバ)
キャッシュサーバ
独自網
インターネット
クライアント
図 6 コンテンツデリバリー技術のイメージ(出典:富士総研)
コンテンツデリバリー技術では、配信時に障害が起きても遅延無くサービスを継続
できる耐障害性、送信相手を認証し、分散配置されたサーバーからの不正なコンテン
ツ入手を防ぐセキュリティ技術、ネットワーク帯域の状況やコンテンツ容量等によっ
て配信を制御するネットワーク制御技術などの確立が課題である。
著作権管理技術(DRM)
デジタルコンテンツは、大量の複製が容易に作成できるため、コピーコントロール
技術、著作権管理情報といった、著作者または権利者の権利を保護するための技術が
不可欠である。その一方で、権利が保護されたデジタルコンテンツが円滑に流通する
ためには、利用者と権利者または提供者との間で、簡単に権利を処理できるセキュア
な課金・決済システムが求められる。これらのシステムや機能を統合化したものが「著
作権管理技術(Digital Rights Management: DRM)」と呼ばれるものであり、主要な構成
要素には「コピーコントロール技術」、「著作権管理情報」、「課金・決済システム」
等がある。
デジタルコンテンツのコピーコントロール技術は、複製そのものを実質上不可能に
したり、複製できる回数を制限するなどして、違法コピーを防止するための技術であ
る。DVD など、パッケージメディアでは、記録媒体に特定の制御信号等を埋め込み、
録画機器にその信号を識別、反応させるコピーコントロール技術が発展してきた。
ネットワーク上でのデジタルコンテンツ流通においては、配信時にコンテンツを暗
号化し、認められた利用者のみが鍵を入手してコンテンツを復号化する手法が多く用
いられている。鍵管理方式の DRM では、アクセス管理が破られた場合の対策が課題で
ある。いったんアクセス管理が破られると、暗号のかかっていないコンテンツや、暗
53
号を解くための情報(秘密鍵、解読プログラム)が世界中に流出するなどして問題が
拡大することが懸念される。そのため、不正コピーされたコンテンツを流通の各段階
で検出・報告すると共にブロックする、鍵の使用停止と更新(Revocation)の効率化を
図る、といった技術課題について研究が進められている。
特に、デジタル音楽配信の分野では、アメリカレコード協会(RIAA)と大手レコー
ド会社 5 社が中心となって 1998 年に Digital Music Initiative(SDMI)を設立し、SDMI 規
格を策定している。SDMI は、インターネット上で著作権が保護された音楽の配信や販
売に向けた技術を確立することを目的にするものである。しかし、セキュリティ保護
のための単一の技術の使用を義務づけていないことによる互換性の問題やプライバシ
ーの侵害の懸念も指摘されており、レーベル各社の支持が思うように進んでいない現
状もあると思われる。
電子透かし技術は、デジタルコンテンツに人間の目や耳で知覚できない程度の微少
な変化を加え、権利者の ID 等の情報を埋め込む技術である。埋込み情報はコンテンツ
と一体不可分で取り外しが困難、埋込みと検出時のみ特殊なシステムが必要で流通過
程では一般データと同様の取扱いが可能、といった特徴を有していることから、権利
者の ID 埋込みによる著作権情報の確認、配布先の ID 埋込みによる不正コピー者の特定
などの用途に活用できることが期待されている。電子透かしの技術的要件は、以下の 3
点である。
・ 電子透かし処理によるコンテンツの劣化が知覚できないこと(透過性)
・ 透かし入りコンテンツの編集や非可逆圧縮によっても、埋め込んだ情報が消失しない
こと(編集耐性)
・ 電子透かし処理に用いた秘密情報(鍵)が正しく管理されていれば、埋め込んだ情報
が書き換えられたり消されたりしないこと(セキュリティ耐性)
現状では、音楽コンテンツの電子透かしは実用化段階にあるものの、動画ではロバ
スト性の高い耐性を得ることが技術課題となっている。なお、日本音楽著作権協会
(JASRAC)は、デジタル音楽コンテンツ用電子透かしの評価実験である「STEP2001」
を行い、2001 年 10 月に「利用可能な技術水準をクリアする企業」として IBM と米
Verance 社、「利用可能な技術水準のクリアが見込まれる企業」としてエム研と韓国
MarkAny 社の計 4 社を認定した。
電子透かしの中に埋め込まれるデータの 1 つに「コンテンツ ID」がある。コンテン
ツ ID とは、コンテンツを一意に同定できる体系化された識別情報であり、コンテンツ
ID を利用することによって、著作者や配信者は著作権情報や流通情報などを容易に確
認できる。また、コンテンツの不正利用の探索にも効果があると考えられている。
コンテンツ ID は、コンテンツ流通のあらゆるプロセスにおいて、複数の利害関係者
54
によって処理されるため、フォーマットの標準化への要請は高い。コンテンツ ID フォ
ーラム(cIDf)は、ID の国際標準化を進めることを目的とする IT 関連企業を中心とし
た団体である。cIDf の推進するコンテンツ ID 仕様は、センターでの一元管理、コンテ
ンツ保管、メタ透かしの使用、等を特徴としており、今後の普及が期待されている。
一方、コンテンツの提供者が、利用者のコンテンツ利用料金を正確に算出し、徴収
するための仕組みが課金・決済システムである。ネットワーク上で課金・決済情報を
やり取りする場合には、料金のごまかしや不払いを確実に妨げることが重要であるこ
とに加えて、その情報が送信中に破損または、第三者により盗聴、改竄されないよう
に高い信頼性とセキュリティが求められる。現在、SSL や SET によるサーバー管理型、
キャリアやサービス・プロバイダーに料金回収代行型、プリペイド型、IC カード等を
基盤とする電子マネー型などが利用されている。
課金・決済システムにおいては、ユーザーの利便性を確保しつつ、分散環境でもユ
ーザー認証ができ、確実に課金できる仕組みが求められているとともに、利用者のカ
ード番号・口座番号等の漏洩を防ぐプライバシー保護が必要不可欠である。
c)誰でも、簡単かつ安心して利用
ホームネットワークのユーザーは、子供から高齢者まで、非常に幅広い年齢層が想
定されるとともに、コンピュータやネットワークについてあまり多くの知識を持って
いないノービスレベルのユーザーも少なくないことが予想される。ホームネットワー
クの機器・サービスを、誰もが、簡単にそして安心して使えるように、セキュリティ
やヒューマンインターフェース等の技術開発を促進し、関連する環境を整備すること
は非常に重要である。ここでは、「セキュリティとプライバシー保護」、「アクセシ
ビリティ」、「ヒューマンインターフェース」の 3 つの観点から整理する。
セキュリティ・プライバシー保護とブロードバンド化に伴う脅威の増大
家庭のブロードバンド化に伴い、インターネットに 24 時間、常時接続できる環境が
整いつつある。従来のダイアルアップ接続のように限られた時間のみでインターネッ
トに接続している場合と異なり、常時接続環境では、外部から攻撃される危険性が非
常に高くなり、ユーザー側も最低限のセキュリティ対策を行うことが不可欠になる。
例えば、家庭の情報化では、外部ネットワークから家庭内の機器を操作できるよな
アプリケーションの普及が見込まれているが、悪意ある者がこれらの機器を不正に操
作し、火災や事故等を引き起こすことも懸念される。それゆえ、通常のコンピュータ
ネットワークと同様あるいはそれ以上のセキュリティ対策が必要となる。
また、ホームネットワークのユーザーは、コンピュータやネットワークの知識にそ
れほど詳しくない人も増えることが予想されることから、効果が高く、導入・運用が
簡便なセキュティ技術がリーズナブルに提供されること必要である。例えば、ウィル
55
ス対策などにおいても、最新のウィルスに対応するためには、パターンファイルを最
新版に保つことが需要であるが、初心者にはそういったソフトウェアやサービスの利
用は必ずしも容易ではない。昨今のニムダウィルスの騒動などもあり、ユーザーのセ
キュリティに対する視線は厳しくなっていることから、家庭の情報化が本格的な普及
を遂げていくためには、セキュリティの確保は最重要課題であるといえる。
セキュリティと相まって、技術的な課題として優先度の高いのがプライバシー保護
である。ホームネットワークでは、家庭内の機器とインターネットとが直接結ばれる
ことから、個人情報が流出しないよう適切な保護手段が提供されることが非常に重要
である。さらに、ホームネットワークでは、個人の医療情報、教育情報などセンシテ
ィブな個人情報がネットワーク上でやり取りされることから、サービスの提供者はど
のような個人情報を取得するのか、そしてその情報はどのように扱われるのか(第三
者への提供の有無、開示・訂正の有無、等)について、ユーザーに対して十分に説明
する責任が求められる。
ウェブ関連技術の標準化団体である W3C(World Wide Web Consortium)は、ウェブ
上 で 個 人 情 報 を 適 切 にや り 取 り す た め の 規 格 で あ る P3P ( Platform for Privacy
Preferences)の仕様の策定を行っている。P3P は、個人情報の取扱いを定めるプライバ
シーポリシーをコンピュータで自動的に処理することを可能にする。ユーザーは自分
のプライバシーポリシーをブラウザなどに設定しておけば、アクセスしたウェブサイ
トサイトのポリシーが自分のポリシーと合致するかを自動的にチェックすることがで
きる。P3P は、最新版の Microsoft Internet Explorer 6.0 においてサポートされたほか、
BIGLOBE など国内大手 ISP でも対応が進みつつあり、今後利用が広がるものと見られ
る。
アクセシビリティの促進
(→本編 p 参照)
ヒューマンインターフェース技術の開発
(→本編 p 参照)
56
参考資料4 実証実験に関する各社からの提案
①教育
教育用素材/教育コンテンツの提供と学校/家庭での利用(富士通)
・家庭において、インターネットを通してデジタル教材(問題集等の副教材や動
画像による教育用素材など)を引き出せるなど学校での学習の予習・復習、学
習課程・習得度に応じた演習が可能な環境を用意し、子どもの学習の進化・深
化を支援する。
学校においては、デジタル教材を活用して行う基礎学習の内容や家庭における
学習の成果を、教師・他生徒とのコミュニケーションを通して理解を深めてい
く。家庭と学校における「学び」の連鎖を実現し、子どもの理解・能力向上に
繋げる。
学校∼家庭間のコミュニケーション&教育情報提供(富士通)
・家庭(父母)からの連絡・教育相談等をインターネットを通じて受け付ける一
方、子どもの教育関連情報、学校の様子等を家庭に伝え、学校と家庭間の密で
透明な情報共有環境を構築する。
②健康
在宅支援(日本 IBM)
・福祉対象者に持たせた情報タグが、対象者の医療情報を Bluetooth 技術で自動的
に家庭内のホームゲートウェイに送信する。
・収集された医療情報は、福祉情報サーバー(診療計画 DB、患者診療 DB、看護
計画 DB、電子カルテを格納)、福祉ヘルプサーバー(診療・治療ガイド、投薬
ガイド、その他を格納)を備えた福祉サービス・センターに送られる。
・福祉ヘルパーは情報端末で福祉サービス・センターにアクセス、適切な介護を
行うことが出来る。
個人の健康管理と医療サービス、介護サービス(ニチイ学館)
・利用者は PC、携帯電話、電話、TV、測定機器にて健康情報を入力、測定ができ
るほか、診療予約、医療機関情報検索、健康相談ができる。
・利用者から送られる健康情報は総合窓口(情報管理センター)が受信、蓄積し、
かかりつけの医療機関に送信される。かかりつけ医は常時観測し、異常時に対
応する。
・総合窓口(情報管理センター)は利用者からの問い合わせに対応する(医者/
57
看護婦/栄養士が常駐)ほか、医療機関、介護事業者への取り次ぎ等を行う。
③食事
健康管理された食事サービス(ニチイ学館)
・利用者は PC、携帯電話、電話、TV、測定機器にて健康情報を入力、測定。
・また、利用者はデジタルカメラで撮った食事画像を送信。
・利用者から送られる健康情報、栄養管理情報は総合窓口(情報管理センター)
が受信、蓄積し、利用者に対して動画で栄養指導を行う。
・利用者は画像で食事を確認、食事/食材を総合窓口に注文すると、宅配食事業
から健康食が宅配される。
・また、総合窓口(情報管理センター)は必要に応じて利用者の栄養情報を医療
機関に送信、利用者に対して詳細な栄養指導を医療機関が行う。
④買い物支援
生活支援サービスとしての買い物代行(ニチイ学館)
・総合窓口(情報管理センター)は、サーバーに格納されている福祉用具事業者、
宅配食業者、ホテル等宿泊業者、薬局、クリーニング業者、タクシー業者等の
商品情報を利用者に提供。
・利用者は PC、携帯電話、電話、TV で商品の検索、電話/Mail による物品の発注
ができる。
・総合窓口(情報管理センター)から受注情報を受信した福祉用具事業者等は直
接配送、またはコンビニエンスストアに配送。
⑤安全
高齢者の生活安全管理サービス(ニチイ学館)
・利用者が常時身に付ける機器としてのバイタルチェッカー、日常使用する機器
としてのバイタルサイン、みまもり機器、位置情報確認機器、緊急通報装置か
ら、バイタルサイン、生活状況、位置情報、緊急通報が、情報管理センター(コ
ールセンター)に送信される。
・情報管理センター(コールセンター)は常時バイタルサイン等を監視・確認、
利用者と別居している家族に生活状況等を報告するほか、必要に応じて医療機
関(かかりつけ医)、警備会社に連絡する。
58
⑥行政
ワンストップ電子行政システム(富士通)
・自宅内で、行政への電子申請・届出、転出・転入申請、国民健康保健喪失・取
得届、公共料金・住所変更が可能。個人認証は IC カードで行う。
・また、行政からのプッシュ型サービスとして、保険料通知、電子選挙、電子公
聴も可能に。
⑦街角
個人の趣向・位置によって変わる情報提供サービス: Active Poster(日本 IBM)
・携帯情報端末等から、携帯者の位置情報・各個人の特定を行って、時刻やその
人にあった、あるいは、その人が望むであろう情報を提供する。
・位置特定・個人認証等は自動的に行なわれる。
・情報の種類:場所内特有の情報(店舗広告、食事メニュー、文化施設内での各
種情報、地図)
・"デジタル広告ボード"
・公共スペース: "モール"
・ホット・スポット: "ファースト・フード・ショップ"
59
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