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製品差別化と市場細分化の補完的性質に関する再検討

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製品差別化と市場細分化の補完的性質に関する再検討
商学研究論集
第25号 2006.9
製品差別化と市場細分化の補完的性質に関する再検討
経済学と産業組織論およびマーケティング戦略の分析視座から
AReview on Complementary Features of Product
Differentiation and Market Segmentation
:From the Viewpoint of Economics, Industrial Organization,
and Marketing Strategy
博士後期課程
仁
商学専攻 2004年度入学
平 京 子
NIHEI Kyoko
【論文要旨】
企業の製品政策は,製品差別化と製品多様化および市場細分化の3つの政策を中心に展開され
てきた。マーケティング学説史上,製品差別化と市場細分化は,対立・矛盾する概念すなわち,
二者択一的概念として捉えることが通説化し,両老の相互関係を明確化する作業は,諸概念の多様
性と曖昧性という特質から,多くの検討の余地が残されている。本稿では,経済学と産業組織論お
よびマーケティング戦略を分析視座として,製品差別化と市場細分化の諸概念の特質や同義語の相
互関係,製品差別化の分類基準を考察の焦点に再整理し,消費財に対する製品差別化と市場細分化
の補完的性質の問題を学説史的に検討することを目的とする。第一に,製品差別化と市場細分化の
補完的特質に対するポストモダソ・マーケティソグのパラダ・イムの適用を試みる。第二に,経済学
における生産物の分化と差別的優位性の諸概念,産業組織論における製品差別化と差別化の諸概念
の形成・発展過程を概観する。第三に,マーケティング戦略における差別化と広義の製品差別化お
よび狭義の製品差別化の諸概念,市場等高線と市場細分化および異質市場の諸概念の形成・発展過
程を概観する。
【キーワード】
ポストモダン・マーケティソグ,生産物の分化,差別的優位性,製品差別化,市場
細分化
論文受付日 2006年5月8日 掲載決定日 2006年6月14日
一69一
目次
1.はじめに
皿.ポストモダソ・マーケティソグのパラダイムの適用
皿.経済学と産業組織論における生産物の分化と差別的優位性の諸概念
1.生産物の分化と差別的優位性の経済学的特質
2.製品差別化と差別化の産業組織論的特質
N.マーケティング戦略における製品差別化と市場細分化の諸概念
1.差別化のマーケティング戦略的特質
2.広義の製品差別化と狭義の製品差別化のマーケティソグ戦略的特質
3.市場等高線と市場細分化および異質市場のマーケティング戦略的特質
V.おわりに
1.はじめに
今日のゼロ・サム社会(zero sum society)1)では,ある企業が収益性を伸ばせば競合企業が収益
性を減らすという熾烈な「競争(competition)」の時代であり,競争という概念なしには,企業の
「戦略(strategy)」2)を語ることは困難な時代である。企業の競争戦略(competitive strategy)3)で
は,競合企業と一線を画する競争的地位(position)の占有のために,「差別化(differentiation)」
による需要の奪い合いから,自社の製品寿命と収益性の保持に腐心している。そのため,従来から
の競争対応的な企業の競争戦略では,次善の競争優位(competitive advantage)の構築を求め,
競争こそが戦略の中心,すなわち,競合企業の排除のために競争に応戦していくことこそが,企業
の成長・存続のための戦略のゴールであるとの見解を重要視してきたといえよう4)。
しかし,今日の企業のマーケティング戦略では,消費老志向(consumer oriented)もしくは顧
客志向(customer oriented)のマーケティソグ・コソセプト(marketing concept)5)や市場志向
(market oriented),市場駆動型(market driven)の諸概念を経営上の指針としながら,市場を構
成する消費者と競争者への統合的視点から,その実践の結果としての競争優位の獲得を目指すべき
なのではないだろうか。
企業の製品政策(product policy)は,「製品差別化(product differentiation)」6)と「製品多様化
(製品多角化:product diversi丘cation)」7)および「市場細分化(market segmentation)」の3つの
政策を中心に展開されてきた。製品差別化と市場細分化の諸概念の比較や相互関係を中心とする論
議では8),概念の使用の混乱や解釈の相違による明確な概念規定の欠如から,必ずしも統一した見
解があるわけではない。マーケティソグ学説史上,製品差別化と市場細分化は,対立・矛盾する概
念,すなわち,二者択一的概念として捉えることが通説化し,両者の相互関係を明確化する作業
は,諸概念の多様性と曖昧性という特質から,多くの検討の余地が残されているといえる9)。
一70一
そして,今日の市場観と競争観の動態的変化とその変容から,両者を伝統的な二分法に帰する二
者択一的概念として捉えるのではなく,両者は,マーケティング・コソセプトを根本的基軸とし
て,相互補完的概念として捉える必要性があるのではないだろうか。このような問題意識から,本
稿では,経済学と産業組織論およびマーケティング戦略を分析視座として,製品差別化と市場細分
化の諸概念の特質や同義語の相互関係,製品差別化の分類基準(特徴づけの手段による分類)10)を
考察の焦点に再整理し,消費財(consumer goods)に対する製品差別化と市場細分化の補完的性
質の問題を学説史的に検討することを目的とする。
その際,本稿の方法的・分析視点の独自性は,以下の諸点にある。第一に,製品差別化と市場細
分化の補完的性質に対する「ポストモダソ・マーケティソグ(postmodern marketing)」のパラダ
・イムの適用を試みる。第二に,経済学における生産物の分化と差別的優位性の諸概念,産業組織論
における製品差別化と差別化の諸概念の形成・発展過程を概観する。第三に,マーケティソグ戦略
における差別化と「広義」の製品差別化および「狭義」の製品差別化の諸概念,市場等高線と市場
細分化および異質市場の諸概念の形成・発展過程を概観する。
1.ポストモダン マーケティングのパラダイムの適用
1970年代から「モダソ(modern)」の近代合理性の在り方を否定する「ポストモダン
(postmodern)」の現代思想の動きが台頭し,1980年代からのポストモダンの現代思想は,マーケ
ティソグ戦略の研究領域に浸透し始めた。すなわち,通説化したモダン・マーケティソグ
(modern marketing)の体系的理論が,実務的応用可能性への限界と矛盾の問題を内包していたと
いえる。
今日において,「解釈主義」的に消費者を探求するポストモダソ・マーケティソグの現代思想は,
マーケティング戦略への適用やポストモダソ消費者行動研究(postmodern consumer research)11)
へと汎用され,その研究の守備範囲を徐々に拡大してきた。ポストモダン・マーケティソグの中心
的論点は,(1)モダソ・マーケティングの批判的見直し,(2)消費に関する文化現象学の発展,(3)コミ
ュニケーショソのシソボル性をその中心とする傾向にある12)。図表1に示したように,桑原
(2001)は,1980年代からの「ポストモダソ(あるいは解釈的)消費者研究」13)の出現を背景とし
て,モダンとポストモダソの現代思想の特徴の対比を図示する。
これに対して,図表2に示したように,Sherry(2001)は,「ポストモダニティ(post・
modernity)」14)の6つの特徴として,(1)断片化(fragmentation),(2)脱構築(deconstruction),(3)
ハイパーリアリティ(hyperreality),(4)消費(consummation),(5)模造(pastiche),(6)多重人格
(multiphrenia)を挙げている15)。 Sherry(2001)は,「ポストモダソ時代は,“どちらか一方
(either/or)”ではなく,“両方とも(and/both)”の世界として解釈するのが正しい」16)と主張し,
伝統的なモダソの二分法に帰する二者択一的概念の境界線を解消する必要性を指摘する。
このように,ポストモダソ・マーケティングでは,二者択一的な「どちらか一方(either/or)」
−71一
図表1 モダンとポストモダンの対比
モ ダ ソ
ポストモダン
①真実は1つ
①複数の真実がある
A真実は文脈や時間に依存しない
A真実は文脈と時間に依存する
認識論
①知識は客観的なもの
①知識は主観的なもの
価値論
①研究は価値の影響を受けない
①研究者の価値が入り込む
①因果連鎖を同定可能(見極めることが
①同時に発生する相互依存関係を切り離
@できる)
@して理解することは可能
①「法則定立的」な(普遍的な法則を目
①「個性記述的」な(個別の形態を描く
@指すような)知識
A他の場面に適用可能
@ような)知識
代衷的方法
①実証主義的方法(仮説演繹的方法)
①解釈主義的方法(解釈学・記号学)
手本となる学問
①自然科学
①人文科学
①主題:合理的人間
①イソフォーマソト:非合理的人間
A反応者:マシソ(機械)としての消費者
Aテクスト:動物(生物)としての消費者
①実験
①深層面接
A調査
A詳細な読み込み
①計量的方法
①質的方法
A数学的分析
A直感的分析
B標準化された提示方法(数字による説
B新しい提示方法(言葉やビジュアルで
@得など)
@納得を得るなど)
①購買意思決定
①消費経験(獲得→使用→廃棄)
Aブラソド選択
B商品属性
C経営実践的重要性
A商品の使用 ’
B商品の持つ意味
C基礎的・ピュアな知識
存在論
内的妥当性
外的妥当性
消費者をどうみるか
研究デザイン
測定・分析・提示方法
研究のフォーカス
A研究したケースにのみ適用可能
出所:桑原武夫稿「ポストモダン・アプローチの展開と構図」,『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュ
ー』第26巻第6号,2001年,ダイヤモンド社,p.119。
の発想であるモダソ・マーケティソグの効率性の在り方を否定し,モダン・マーケティングが前提
とする伝統的な二分法の境界線を曖昧なものにする。そのため,両義的な「両方とも(and/both)」
の発想であるポストモダソ・マーケティングでは,対立・矛盾する要素を融合させる傾向が顕著に
なる。
すなわち,製品差別化と市場細分化を対立・矛盾する概念として捉える考え方は,「代替的アプ
ローチ」の視点によるモダン・マーケティング的発想であり,両者を両義性のある概念として捉え
る考え方は,「補完的アプローチ」の視点によるポストモダソ・マーケティング的発想であるとい
える。このような問題意識から,本稿では,両者の概念を補完的アプローチの視点から捉えるポス
トモダソ・マーケティングのパラダイムの適用可能性を提示する。
一72一
図表2 ポストモダン・マーケティングの特徴
内 容
特 徴
断 片 化
我々が確立した構造や育んできた概念の解体である。経験は解体され,不連続なものにな
ifragmentation)
驕Bその一方で,従来ならば別個のものだったカテゴリーやプロセスは,融合される。
脱構築
全てのストーリーを体系的,包括的,分析的に解体し,その恣意性を暴露することを奨励
ideconstruction)
キる。これまでの権威を拒絶する。基本に反抗する態度は,昨今の風潮である。
ハイパーリアリティ
表面上,リアルな物質世界ではなく,より大きな重要性を帯びた象徴的な世界を構築す
驕B我々は,その経験を形づくる超介在的(supermediated)な文化の中に生きている。
ihyperreality)
消 費
iconsummation)
模 造
ipastiche)
消費は付加価値を創造するプロセスとして,生産の向こうを張る。消費者は,マーケター
フ共同創造者ないし共同生産者である。消費者は,消費による経験を生み出すために,マ
[ケターとコラボレーショソを図る。
文化的記号を遊び心に満ちてコラージュしたり,モンタージュしたりすることである。社
?I規範を流動化させ,価値観や信念,イメージを緊密に結合させる中心的メカニズムで
?驕B矛盾や両義性,混乱は,ありのままに許容される。
自己は,単一の認知中枢とは見なされない。むしろ,分割可能,サイパネティック,状況
多重人格
K応型,ダイナミックである。さらに,多声性(polyvocality)が基本である。ポストモ
imultiphrenia)
_ソ時代は,「どちらか一方(either/or)」ではなく,「両方とも(and/both)」の世界と
オて解釈するのが正しい。従って,あらゆる可能性が増殖されていく。
注:consummationは,「成就」を意味するが,ここでは文脈上, consumptionまたはフランス語のconsom−
mationと解して「消費」と訳す。
出所 ジョンF.シェリー稿「ポストモダソ・マーケティソグの思想」,『DIAMONDハーバード・ビジネス
レビュー』第26巻第6号,2001年,ダイヤモソド社,pp.102−103。
皿.経済学と産業組織論における生産物の分化と差別的優位性の諸概念
競争戦略やマーケティソグ戦略において,なぜ競争の概念が重要性を認識され始めたのであろう
か。そのためには,従来の経済学における競争の概念の根本的性質を明らかにしなければならな
い。また,競争戦略やマーケティング戦略では,経済学の影響を強く受け,特に産業組織論におけ
る業界構造の見方として,競争戦略の理論が,広く受け入れられるようになった。
しかしながら,今日のゼロ・サム社会において,競争を基礎とした戦略の有効性は,その効力を
失いつつあるといえる。本章では,経済学における生産物の分化と差別的優位性の諸概念,産業組
織論における製品差別化と差別化の諸概念の形成・発展過程を概観し,参入障壁と製品差別化との
関連性や製品差別化戦略の一要素を構成する「ブラソド(brand)」17)の機能とその今日的役割につ
いて検討する。
L 生産物の分化と差別的優位性の経済学的特質
経済学の研究領域では,市場の「不完全性(imperfection)」の一要素として,「製品の異質性」
の問題を取り扱うことが一般的とされている。実際の市場経済の中での競争に関する現実的描写を
試みたのが,伝統的な競争理論の大幅な改訂に着手したChamberlin(1933,1962)である。
−73一
Chamberlin(1933,1962)は,「独占(monopoly)」と「純粋競争(pure competition)」の伝統的
概念から,独占と競争という二者択一的概念を合成物として融合し,「独占的競争(monopolistic
competition)」の理論を定式化したことで広く知られている。このような独占的競争の概念は,
「不完全競争(imperfect competition)」と類似する概念として捉えられている18)。
Chamberlin(1933,1962)は,「生産物の分化(生産物の質的分化:the differentiation of the
product)」について,「分化が生産物それ自体の特徴に基づく場合がある(例えば,パテントのつ
いた排他的な特徴や商標,商品名,包装,容器が用いられる場合は,その特異性が利用されるし,
品質・デザイン・色・スタイルなどで目立つ特徴も利用される)。次に,生産物の販売をめぐる諸
条件に関連して,分化が存在する場合がある。小売業では,売手の立地の便利さ,店の一般的格調
や性格,商売の運び方,公正な取引をするという信望,丁寧さ,能率の良さ,顧客と商店主やその
使用人との間の個人的つながりなどが,この諸条件に含まれる」19)と指摘する。すなわち,Cham−
berlin(1933,1962)は,生産物の分化を生産物それ自体の特徴に基づくものと生産物の販売を取
り巻く諸条件に基づくものとに大別したといえる20)。
これに対して,Clark(1961)は,「差別的優位性(差別的有利性:differential advantage)」の
概念を定式化し,Chamberlinの独占的競争の理論と生産物の分化の概念を発展させた。 Clark
(1961)は,差別的優位性について,「競争は,ライバル同士の異なる代替物の入手可能な状況が,
単に存在しているということではない。競争は,状況やライバル同士の関係を変えるという性格を
帯びた行為により導かれる1つの活動のタイプである。競争は,動態的過程であり,その主たる
要素は,他企業との自由な取引選択に直面する者に対して,当該者と取引をせしむほど十分な好条
件取引をその者に提供すること,すなわち,差別的優位性の条件を提供することである」21)と指摘
する。すなわち,差別的優位性とは,企業が競合企業との競争優位な差別化を保つために,あらゆ
る側面で差別的優位性を獲得しようと努めることである。
このように,Chamberlinは,伝統的な競争理論から実際の市場経済の中での競争へと動態的な
競争理論に置き換える必要性を指摘した。それゆえ,競争と独占の概念を包括した独占的競争の理
論や生産物の分化の概念化は,製品差別化の概念形成において,多くの経済学やマーケティング戦
略の研究領域での関心を惹きつけるに至った。製品差別化のための手段に着目した場合,製品差別
化は,製品それ自体の実体的な差別化と製品以外の手段を包括した観念的な差別化とに大別できる
ともいえる。
2,製品差別化と差別化の産業組織論的特質
Chamberlinの製品差別化の概念は,ミクロ経済学の応用分野である産業組織論の研究領域の理
論的基盤となっている。産業組織論における製品差別化は,ある産業の多種多様な生産物の買手に
対する代替可能性の不完全性の程度により示される。そのため,製品差別化の程度は,ある産業に
所属する売手の競争関係に対して重要な影響力を与えているのである。
一74一
「構造(structure)→行動(conduct)→成果(performance)」というSCPパラダイムを提唱した
Bain(1968)は,「製品差別化とは,一産業における競合的な売手の生産物の一買手にとっての一
代替可能性の不完全性である。すなわち,買手がある特定の競争製品に,他のものより強い選好を
持つということである。産業内部での製品差別化の概念は,産業という基本概念に依存する。産
業,すなわち,生産物の集まり(生産物の売手の集団)は,共通の買手グループに売られ,これら
の買手にとって相互に密接な代替品であるが,それ以外のすべての生産物に対しては,相対的に疎
遠な代替品であるものの集まりである」22)と指摘する。
そして,Bain(1968)は,競争製品を別の競争製品よりも買手に選好させるための産業内部に
おける製品差別化の諸要因として,(1)生産物間の品質やデザインの差異,(2)商品の基本的特徴と品
質に関する買手の無知,(3)売手の説得的な広告やその他の販売促進活動,(4)広告による一層進んだ
重要な製品差別化の商品種類を生む可能性(例えば,「贈答用品」や「示威的用品」など),(5)同種
の財の売手の所在地の差異(「地理的な製品差別化」)を主要な要因として挙げ23),(6)顧客を引き
つける魅惑的な「包装」の機能を製品差別化の要因の拡張項目として挙げている24)。
また,産業組織論における代表的な「参入障壁」25)には,(1)規模の経済性,(2)必要投資額および
サソク・コスト,(3)製品差別化,(4)チャネルの確保,(5)特許,(6)法的・行政的規制が挙げられ
る26)。三浦(1996)は,このような参入障壁と製品差別化との関連性について,「業界内の製品が
品質,イメージ,付加的サービスなどで差別化されている場合,それは新規参入企業にとっての参
入障壁となる。とくに,それら差別化製品が強力なブランド・イメージを核とするブランド・エクイ
ティ(プラソド資産)を確立している場合,新規参入は容易ではない」27)と指摘する。
これに対して,Porter(1980)は,「差別化とは,自社の製品やサービスを差別化して,楽界ゐ
中そも特異であると見られる何かを創造しようとする戦略である。差別化のための方法には,製品
設計やブランド・イメージの差別化,テクノロジーの差別化,製品特長の差別化,顧客サービスの
差別化,ディーラーネットワークの差別化,その他の差別化がある。理想的には,複数の面で差別
化するのが好ましい」28)と指摘する(傍点原著)。
このように,産業組織論における製品差別化は,ある産業の多種多様な生産物の買手に対する代
替可能性の不完全性の程度により示され,差別化は,製品それ自体と製品以外の手段を包括した概
念として捉えられている。そして,ブラソドは,自社製品と競合製品との識別,すなわち,製品差
別化の確立を可能にし,ブランド・イメージは,プロモーション戦略による伝達から自社製品の独自
性に対する消費老の認識レベルを促進する機能を持つといえる。
N.マーケティング戦略における製品差別化と市場細分化の諸概念
マーケティング戦略における製品差別化や市場細分化の諸概念には,一義的な定義は存在せず,
経済学におけるClarkやChamberlinを代表とする製品差別化の概念規定の援用・応用が,その根
本的特質として見受けられる。このような製品差別化の研究成果の多くは,主に広告論やマーケテ
ー75一
イング管理論と密接な研究領域である。これに対して,市場細分化の概念も一義的な定義は存在せ
ず,多義的な概念として捉えられているのが現状である。
本章では,両者の概念の密接な関連性を解明するために,マーケティング戦略における差別化と
広義の製品差別化および狭義の製品差別化の諸概念,市場等高線と市場細分化および異質市場の諸
概念の形成・発展過程を概観し,これらの相互関係を考察の焦点として検討する。
1.差別化のマーケティンゲ戦略的特質
今日の熾烈な競争の時代では,競合企業の市場提供物やイメージとの識別のために,自社の標的
とする消費者または顧客の心理的要因に対して,自社の一連の独自性のある違いのデザイン,すな
わち,自社の独自の意味のある差別化を図っていかなければならない。図表3に示したように,
Kotler(2001)は,自社の市場提供物やイメージの差別化の要素として,(1)製品,(2)サービス,(3)
スタッフ,(4)チャネル,(5)イメージを挙げている29)。
すなわち,(1)製品による差別化(①形態,②特徴,③性能,④適合性,⑤耐久性,⑥信頼性,⑦
修理可能性,⑧スタイル,⑨デザイン),(2)サービスによる差別化(①注文の容易さ,②配達,③
取りつけ,④顧客トレーニング,⑤顧客コンサルティング,⑥メソテナンスと修理,⑦多様なサー
ビス),(3)スタッフによる差別化(①コンピタソス,②礼儀正しさ,③安心感,④信頼性,⑤迅速
な対応,⑥コミュニケーション),(4)チャネルによる差別化(①カバレッジ,②専門技術や専門知
識③パフォーマソス),(5)イメージによる差別化(①シンボル,②メディア,③雰囲気,④イベ
ント)などを中核的な差別化要素に考慮していかなければならない30)。
このように,差別化の戦略的手段は,一様ではなく多様性・複雑性があり,製品それ自体の差別
化と製品以外の差別化手段の諸要素という二側面は,密接不可分な関係性を持つといえる。そし
て,差別化の概念は,マーケティング戦略全体の差別化の統合的把握,すなわち,マーケティング
・コミュニケーショソ全体を包括的に意味し,製品以外の差別化手段は,製品それ自体の差別化を
図表3 差別化の変数
甲
製品
サービス
チャネル
スタッフ
イメージ
①形態
①注文の容易さ
①コソピタンス
①カバレヅジ
①シンボル
②特徴
②配達
②礼儀正しさ
②専門技術や専門知
②メディア
③性能
③取りつけ
③安心感
④適合性
④顧客トレーニソグ
④信頼性
⑤耐久性
⑤顧客コンサルティ
⑤迅速な対応
⑥信頼性
⑦修理可能性
⑧スタイル
⑨デザイソ
ソグ
識
③パフォーマンス
③雰囲気
④イベント
⑥コミュニケーション
⑥メンテナンスと修
理
⑦多様なサービス
出所:Kotler, P., Marketing Management:AFrameworle for Marketing Management,1・t ed., Prentice−Hall,
2001.(フィリップ・コトラー著,恩蔵直人監修,月谷真紀訳『コトラーのマーケティソグ・マネジメ
ソト基本編』,ピアソン・エデュケーション,2002年,p.218。)をもとに筆者作成。
一76一
維持・強化する役割がある。今日の消費社会の進展において,差別化の戦略的重点は,製品それ自
体の「実質的傾向」から,サービスやスタッフ,チャネル,イメージなどの製品以外の差別化手段
による「観念的傾向」へと比重を高めていく傾向にある。
2.広義の製品差別化と狭義の製品差別化のマーケティンゲ戦略的特質
マーケティング戦略における製品差別化の捉え方は,製品差別化の経済学的特質に依存し,経済
学とマーケティング戦略での捉え方が,重複しながら概念形成に影響を与えてきた。製品差別化の
概念の端緒といわれるShaw(1912)は,「製品差別化とは,競争よりもより正確に人々のウォン
ッを満たすことである。その結果が,生産者の製品のための“需要の増強”と既存の在庫商品より
もより高価格水準を実現する可能性を得られるのである」31)と指摘し,経済学的・社会学的な市場
区分の認識とこれらの市場に対するマーケティング問題の異質性の重要性を主張した。
これに対して,製品差別化と市場細分化を代替的関係として位置づけたSmith(1956)は,「製
品差別化とは,戦略的視点から製品と競争業老の製品との間の相違を広告し,販売促進することに
より,製品の需要をコントロールするための手段の確保である。基本的には,売手が市場ポジショ
ソの確保や価格競争に対し,自己の企業を守りたい結果として生じたものである」32)と指摘する。
また,機能主義(functionalism)的アプローチを展開したAlderson(1957)は,経済学におけ
るChamberlinの独占的競争の理論やClarkの差別的優位性の諸概念を導入し, Clarkの差別的優
位性に依拠した生態学的な競争行動分析の中で製品差別化の問題を位置づける33)。
Alderson(1957)は,「製品差別化は,様々な形態をとってあらわれる。製品差別化は, i襲品老
れ自体のある特性,すなわち,特許をとった特徴,商標,商号,包装や容器の特色,品質・デザイ
ン・色・スタイルの独自性に基づくかもしれない。また,製品差別化は,その阪売をとめまく諸条
件に関しても存在しうる。この例として,売手の立地の便宜性,売手の名声やのれん,売手の提供
する用役,顧客を売手にひきつける他の要素が挙げられる。製品差別化は広義た餌萩すれば,ある
1人の売手のみがその製品名と実体をもつ製品を提供するという意味での供給への支配を表現す
る。他の売手と異なった製品を提供する売手は,猛占的地位を占める。特定の立地に位置する売手
は,地理的立地がある顧客と売手とを結びつけていることから,“空間的独占”とも呼称される」34)
と指摘する(傍点筆者)。すなわち,Aldersonは,広義の製品差別化の観点から「非価格競争要因
(nonprice competition factor)」35)として捉えていたといえる。
これに対して,経済学を基礎に体系化を試みたGrether(1958)は, Chamberlinの独占的競争
の理論における製品差別化の概念を応用し,製品差別化の拡張要素として,(1)基本的製品差別化
(basic product differentiation),(2)企業差別化(enterprise differentiation),(3)外縁的製品差別化
(external product differentiation)に分類する36)。 Grether(1958)は,製品それ自体の特徴をさす
(1)基本的製品差別化,製品の販売を取り巻く諸条件をさす(2)企業差別化,福引類や他の製品の無料
贈呈,景品,“報償”,賞金,コソテスト,クーポソ,トレーディソグ・スタンプ,特別な恩典など
一77一
図表4 製品差別化手段の分類
製品差別化の方式
同 質
同質に近いもの 異質に近いもの
異 質
サービス
プ ラ ソ ド
素 材
ァ 地
gレード・マーク
i 質
謌
pッケージング
ォ能(機械)
堰@ ベ ル
チ 許
条件
シ 声
フ れ ん
Xタイル
fザイン
広告,イメージ・ビルディング
心理的製品差別化(表面的) 実質的製品差別化
その効果 ←製品差別化から受ける利益の割合は少ない
出所:徳永豊稿「製品差別化の諸様態」,清水晶・三上富三郎・北島忠男編『現代の流通論一2つのマーケテ
ィングー』,同文舘,1968年,p.173。
の製品以外の差別化手段をさす(3)外縁的製品差別化を付加する37)。
この他にも多種多様な観点から,製品差別化が検討されている38)。図表4に示したように,徳
永(1968)は,「同質的性格」の製品差別化方式をさすサービスや立地,取引条件,名声,d)表ん
の確立による一連のイメージ,「異質的性格」の製品差別化方式をさす素材や品質,性能(機能),
特許,スタイル,デザイン,両者の中間に位置する製品差別化方式をさすブランドやトレード・マ
ーク,パッケージング,ラベルに分類し,同質的性格と異質的性格を持つ製品では,ブランドやト
レード・マーク,パッケージングを有力な製品差別化手段として挙げている(傍点原著)39)。
そして,徳永(1968)は,製品属性のイノベーションとそれを助長する手段の観点から製品差
別化を理解する必要性から,(1)製品の属性に関するもの(材料や製品デザイン,特異性,性能,機
能,品質,スタイル),(2)製品の属性を助長せしめるもの(ブランドや包装・容器,ラベル,広告
一製品の属性を助長するとともにそれらを伝達するための手段一)とに大別する40)。
さらに,徳永(1990)は,市場細分化の製品差別化的性格について,「市場細分化に基盤を置く
製品開発が行われようとも,市場細分化は,特定の企業のみの占有物ではない。あるいは,後発メ
ーカーが,“同一市場”を標的として市場参入を試みることは,“競争戦略行動”においては,普通
の姿である。市場細分化に基づいて開発した製品であっても,“製品差別化”は当然行わなければ
ならないし,市場細分化の中に既に“製品差別化”的性格があることも事実である」41)と指摘する。
これに対して,光澤(1968)は,製品差別化の特徴づけの手段の観点から,(1)製品の本来的な
品質に関するもの,(2)製品の形状・や外粧に関するものに大別する42)。光澤(1968)は,「Grether
やKruseは,広告やその他の販売努力をも製品差別化の要素として採り上げているが,これは,
Chamberlin以後の論者に広く一般的にみられる傾向である。しかし,製品差別化概念をこのよう
に拡張することは,逆にそれが持つ内容を不明確にならしめる。広告その他の販売努力を製品差別
化の範囲から除外し,製品差別化を製品それ自体の差別化として扱うべきである」43)と主張し,広
一78一
義に拡張した製品差別化とマーケティソグ戦略との概念問範閥の境界線が,多義性・複雑性を帯び
ることを問題点として指摘する。
また,猿渡(1999)は,製品それ自体による差別化をさす「狭義」の製品差別化と製品以外の
差別化手段までをも含めた「広義」の製品差別化に大別し,広義の製品差別化の次元までを包括し
て製品差別化を捉えることは,「非価格競争要因」との類似を意味することを指摘する44)。図表5
に示したように,猿渡(1999)は,狭義の製品差別化としての(1)実質的差別化と(2)表面的差別化,
(3)心理的差別化,広義の製品差別化としての(1)実質的差別化と(2)表面的差別化,(3)心理的差別化,
(4)外縁的差別化,(5)企業差別化に大別する45)。
これに対して,西村(2002)は,製品差別化を「マクロ・レベル」と「ミクロ・レベル」の観
点から捉え,前者を経済学,特に産業組織論における製品差別化,後者をマーケティング戦略にお
けるプロモーション戦略と製品戦略のための製品差別化であると指摘する46)。西村(2002)は,
狭義
︵製品それ自体︶ 販促
︵非価格競争︶
広義の製品差別化
狭 義
図表5 製品差別化手段の分類
その他
実質的差別化
品質,性能,機能
表面的差別化
カラー,デザイン,スタイル
心理的差別化
≠
外縁的差別化
賞金,景品,くじ,クーポン,スタンプ,サンプル
企業差別化
謌オ販売業者
広告物,ブランド,ラベル,マーク,ネーミング,包装,
立地,建物,評判,冠イベント企業メセナ,従業老態度,
出所:猿渡敏公著『マーケティング論の基礎』,中央経済社,1999年,p.138。
図表6 卜一タル・プロダクト・コンセプト
製品の付随機能
製品の形態
製品の核
出所:Kotler, P. and G. Armstrong, Marketing:、4 n lntroduction, Prentice−Hall,1987, p.235.
−79
「製品差別化の範囲を拡大するのが,ミクロ・レベルのプロモーション戦略と製品戦略によるもの
である。Chamberlinのマーケティング論への貢献は,独占的競争における差別化された諸要素を
非価格変数として利用する重要な理論的基礎を提供する」47)と主張する(傍点筆老)。
また,菊池(2006)は,製品差別化について,Alderson(1957)の定義を広義の製品差別化,
徳永(1968)の定義を狭義の製品差別化に大別して捉えている48)。図表6に示したように,菊池
(2006)は,Kotler=Armstrong(1987)の「トータル・プロダクト・コンセプト」の概念を引用
しながら,「製品あ形態のレベルまでは,狭義ゐ簸品差SiJILの範疇に入るものといえるが,製品あ
待薩機能レベルは,広義あ鍍品差励花の範疇に入るものと捉えることができる」49)と指摘する(傍
点筆者)。このように,製品差別化は,広義と狭義の観点から捉えることができ,広義の製品差別
化とは,差別化,すなわち,非価格競争要因と類似するといえる。
3.市場等高線と市場細分化および異質市場のマーケティング戦略的特質
市場細分化の概念の萌芽は,Shaw(1916)の市場階層分析における「市場等高線(market・con−
tour)」の概念に,その源流がみられることを特筆できる。 Shaw(1916)は,「そのような分析の
中でより重要なことは,市場等高線と呼ばれるものを認識することである。市場等高線は,決して
平坦な平地ではない。市場等高線は,さまざまな経済的階層や社会階層から構成される」50)と指摘
する。このように,Shaw(1916)は,「等高線」という地理学の概念を市場階層分析に応用し,消
費者市場を異質的なニーズを持つ消費者グループから構成されると捉えた。
これに対して,市場細分化の重要性を最初に提唱したSmith(1956)は,「市場細分化とは,異
質市場(多様な需要により特徴づけられた市場)を価値のある市場セグメソト間の異なる製品選好
に応じて,多数のより小さな同質市場とみなすという観点から成り立つ。それは,異なるウォンツ
のより正確な充足のために,消費老あるいは使用者の欲望に起因する」51)と指摘する。
また,Alderson(1965)は,消費者市場を(1)同質市場(homogeneous market),(2)完全異質市
場(perfectly heterogeneous market),(3)異質市場(heterogeneous market)に大別したが52),市
場細分化の問題を検討する上で重要となるのが,Chalnberlin(1962)の「異質市場論」の中で指
摘された(3)異質市場の概念である。Alderson(1965)は,伝統的な経済学における「完全競争
(perfect competition)」の前提とする価格のみを調整メカニズムとした同質市場の捉え方ではな
く,現実の動態的な消費者市場では,多種多様な需要,すなわち,消費老の異質性を前提とする異
質市場の存在の重要性を指摘した。
そして,Alderson(1965)が,「市場細分化とは,全体としては異質なある消費財の領域から,
相対的に同質な需要を持った顧客集団を選び出し,その選び出しによって生産ゐ経済性を実現する
政策である」53)と主張するように,市場細分化では,「規模の経済性」の構築・獲得を戦略的課題
として捉えている(傍点筆者)。
これに対して,澤内(2002)は,「市場細分化とは,市場を何らかの基準でいくつかに分割する
一80一
ことである。これらの分割された市場を,市場セグメントと呼ぶ。したがって,市場セグメソト内
はある程度の同質性を持つ一方で,セグメント間は基本的には異質である」54)と指摘する。澤内
(2002)は,マーケティング戦略の中核的理論としての市場細分化の意義として,①消費者志向と
いうマーケティング・コンセプトの実践,②当該企業の差別的優位性を発揮するための競争空間の
明示化を指摘し55),市場細分化に差別的優位性を内包して捉えている。
このような市場細分化の概念の一般的定義について,田中と古川(1992)は,「市場細分化とは,
市場を構成する消費者は,本来,異質であるという認識の下に,消費者全体をなんらかの意味で同
質的な消費者グループ,すなわち,Ctセグメント(segment)”に分割することである」56)と概略的
に定義する。
V.おわりに
本稿では,経済学と産業組織論およびマーケティング戦略を分析視座として,製品差別化と市場
細分化の諸概念の特質や同義語の相互関係,製品差別化の分類基準を考察の焦点に再整理し,消費
財に対する製品差別化と市場細分化の補完的性質の問題を学説史的に展望しながら検討してきた。
これらの主な特質として,以下の3点が挙げられる。
第一に,ポストモダソ・マーケティングでは,二者択一的な「どちらか一方(either/or)」の発
想であるモダン・マーケティソグの効率性の在り方を否定し,モダン・マーケティソグが前提とす
る伝統的な二分法の境界線を曖昧なものにする。すなわち,製品差別化と市場細分化を対立・矛盾
する概念として捉える考え方は,代替的アプローチをさし,両者を両義性のある境界線の曖昧な概
念として捉える考え方は,補完的アプローチをさす。
第二に,生産物の分化と差別的優位性の諸概念の経済学的特質として,Chamberlinの独占的競
争の理論の定式化は,伝統的な競争理論から独占と競争という二老択一的概念を合成物として融合
し,実際の市場経済の中での競争へと動態的な競争理論に置き換える必要性を提示した。それゆ
え,製品差別化の概念形成への影響において,経済学や産業組織論およびマーケティソグ戦略の研
究領域の中で,多くの研究者達の関心を惹きつけるに至ったのである。
第三に,差別化と広義の製品差別化および狭義の製品差別化の諸概念のマーケティング戦略的特
質として,経済学におけるClarkやChamberlinを代表とする製品差別化の概念規定の援用・応用
が,一般的に広く見受けられる傾向にある。マーケティング戦略では,差別化と広義の製品差別化
および狭義の製品差別化に大別することができ,差別化,すなわち,広義の製品差別化は,非価格
競争要因の捉え方と類似するものである。
次に,これらの論議の問題点として,以下の4点が挙げられる。第一に,Kim=Mauborgne
(2001)が,「バリューイノベーショソを追求した企業の戦略的目標は,疵存4)蜜境4)中七畿争1と
勝らととそほなぐ,’畿争ふら誰れそ全ミ薪しい車麸した価宿を築ぎ,’畿合他社あ職べ・を無意味なも
ゐ1としようと妾るところにある。疵存ゐ希場そ畿争を縁ら広ゆるととを趨越し,°壽要サォF・を広げ
一81一
ることに専念したのである」57)と指摘するように,消費者志向もしくは顧客志向のマーケティソグ
・コンセプトや市場志向,市場駆動型の諸概念との関連から検討する必要性がある(傍点筆者)。
第二に,自社の経営資源を考慮して,競合企業の手薄な市場や製品分野に経営資源を集中して攻
勢することも戦略の一つであり,また,競合企業が圧倒的に優勢な局面では,直接競争を避け,防
御に徹することも戦略の代替案であるといえる。そのため,企業は競争への執着心や既存顧客や既
存の組織能力に対する依存心を捨て,「リポジショニング(repositioning)」による再定義から戦略
の焦点を移行し,自社の標的市場と製品の境界線を超越していくことが重要となる。
第三に,大友(2001)が「製品コンセプトは,マーケティソグ戦略の中核的位置付けにあるの
であり,これを中心にミックス戦略の細部が検討されていかなければならない。この製品コソセプ
トが一貫して整合的体系的に市場に浸透していくことが重要となる」58)と指摘するように,非価格
競争要因をさす広義の製品差別化では,「シングルベネフィット・ポジショニソグ」戦略やマーケ
ティング・ミヅクスの全ての要素と顧客との接触点でのポジショニングの効果的伝達を検討する必
要性がある。
第四に,広義の製品差別化にみられるように,製品差別化は,広範囲な内容を包括する概念であ
るため,消費者の「知覚(perception)」とも関連性があるといえる。それゆえ,プロモーション
戦略による製品の「便益の束(bundle of benefits)」の可視化の作業は,消費者の心理的要因に対
する戦略的課題となる。
最後に,今後の検討課題として,以下の3点が挙げられる。第一に,消費者に対してコミュニ
ケーショソを行う場所としての役割を果たすプロモーション戦略が,製品差別化の範囲を強化・拡
張するため,消費者の「知覚マップ(製品ポジショニング・マップ)」やCI(corporate identity)
もしくはCC(corporate communication)の企業のイメージ・ポジショニングとの関連性を検討す
る必要性がある。
第二に,本稿では,消費財に対する製品差別化と市場細分化の問題を中心に扱ってきたが,生産
財(industrial goods)59)に対する消費財の製品差別化と市場細分化の概念の適用可能性とその戦略
的課題の固有性を検討する必要性がある。
第三に,今日の「日本の高齢社会(aged society)」60)の進展から,サービス・マーケティソグ
(service marketing)における「サービスの差別化」や「スタッフの差別化」の問題についても検
討する必要性がある。
注
1)「ゼロ・サム社会」とは,参加者の勝ち負けを合計するとゼロとなるゼロ・サム・ゲームのように,成長が
止まった社会経済的状況をいう。ある部門が先行すれば,必ず利害の対立が生じ,勝者と敗者が出て問題の
解決が困難となる状況をさす。[金子泰雄・中西正雄・西村林編著『現代マーケティング辞典』,中央経済社,
1998年,P.201。]
2)「戦略」とは元来,軍事用語であり,戦争の目的を達成するために戦闘を計画し,それを遂行するために必
一82一
要な資源を調え,タイミソグを図ることである。「戦術」の概念と混同されやすいが,戦争における複数の
戦闘をいつ,どこで,どのように組み合わせて行うかを考えることが戦略であり,個々の戦闘を勝利に導く
ように指揮することを戦術という。戦略の基本的特徴は,競争対応的な点である(傍点原著)。[同上書,
pp.205−2060]
3)「競争戦略」とは,経営戦略の主な分野の一つであり,競合企業の活動に対応して,自社の活動を調整する
戦略をさす。Porterは,競争戦略の基本的類型として,(1)コスト・リーダーシップ,(2)差別化,(3)集中を
挙げているが,各企業は自社の強みと弱みを検討し,限られた経営資源をこの3類型のどれに投入すれば
競争を有利に運べるかを検討する必要性がある。その際の市場における自社の位置一〈a)リーダー,(b)チャレ
ソジャー,(c)フォロワー,(d)ニッチャー一により,競争戦略に相違が生じることは当然である。[同上書,
P.75。]
4)Kim−Mauborgne(2001)は,競争のみを目的とした戦略において,(1)イノベーションではなく模倣戦略
に陥る,②競合の動きに対して受け身になる,(3)市場の大きな動きや変化する消費者ニーズに鈍感になる,
という3つの副作用が潜むことを指摘する。Kim=Mauborgne(2001)は,既存の市場において全く新し
ミ痩乳た価宿を捷洪ナるととそ畿争を無意廉}とし,その新しい価値から新しい市場を生み出す「バリューイ
ノベーション(value innovation)」の戦略的思考を提唱する。バリューイノベーションを実践する企業では,
競合に対する優位性を構築するよりも,顧客に革新的な価値を提供することにより,競争を超越することを
志向する(傍点筆者)。[Michae1, A. C. and C. M. Constantions, Stra tegic Thinkingプ’or the Next Economy,
Massachusetts Institute of Technology,2001.(W・チャソ・キム,レネ・モボルニュ稿「戦略とバリュー
イノベーションと知識経済」,マイケル・A・クスマノ,コンスタソチノス・C・マルキデス編,グロービス
・マネジメント・インスティテユート訳『MITスローソ・スクール戦略論』,東洋経済新報社,2003年,
pp.109−1110)]
5)「マーケティング・コソセプト」とは,組織がマーケティソグ戦略を実行していく上で基本とする考え方を
さす。マーケティソグ・コンセプトでは,消費者ニーズに焦点を当て,4Pなどのマーケティング手法を統
合的に活用することを基本とする。マーケティング・コンセプトの主な推移は,(D“生産志向”,②“販売
志向”,(3)“消費者志向”である。今日のマーケティング・コンセプトの基本要素は,(1)広義の消費者志向,
(2)社会利益の考慮,(3)社会利益をクリアした適切な企業利益の確保である。[金子・中西・西村,前掲書
(注1),p.336。]
6)猿渡(1999)は,「製品差別化とは,自己の製品を競争業者の製品と区別するための何らかの特徴づけのこ
とであり,生産物分化あるいは製品特異化とも呼称される」と指摘する(傍点筆老)。[猿渡敏公著『マーケ
ティング論の基礎』,中央経済社,1999年,p.137。コ
7)「製品多様化」は,「製品多角化」と同義語である。製品多角化とは,「今までの製品ライソに属さない新製
品を開発し,製品ライソを追加することである」と定義される。その目的は,(1)新市場の開発から市場獲得
を図る,②現在の市場の活性化を図り需要拡大を図る,(3)新たな製品ラインの追加による市場競争力の拡大,
(4)市場における潜在需要の顕在化,(5>生産設備や生産投資,生産と商業との融合などである。〔金子・中西
・西村,前掲書(注1),p.194。]
8)村田(1968)は,製品差別化と製品多様化,市場細分化の概念の3者の相互関係を総合的に把握するため
に,「D・V・S立体」の概念を提唱する。[村田稔雄稿「製品差別化・製品多様化・市場細分化(上)−D・V
・S立体による分析一」,『マーケティソグと広皆』,株式会社電通,7月号,1968年,p.70。]
9)Dickson ・・ Ginter(1987)は,「“市場細分化”と“製品差別化”の概念の使用は,広く普及しているにもか
かわらず,それらの概念の意味や用法には,解釈の相違が存在する。16冊の最新のマーケティソグの教科
書を展望すれば,かなりの混乱を呈する。それらの中の5冊の原典(Evans= Berman (1982);Mande1;
Rosenberg(1981);Neidell(1983);Pride=Ferre11(1985);Stanton(1981))では,製品差別化を市場細分化
に対する“代替的アプローチ”として記述するが,他の11冊の原典(Abell=Hammond (1979);Buel1
(1984);Busch=Houston(1985);Cravens(1982);Dalrymple=Parsons(1983);DeLozier=Woodside
(1978);Enis(1980);Guiltinan・ Paul(1985);Hughes(1978);Kotler(1984);Reibstein(1985))で}ま,両
者を“補完的アプローチ”,あるいは実現手段として記述する。さらに,3冊の原典(Evans = Berman
一83一
(1982);Mandel=Rosenberg(1981);Pride=Ferrell(1985))では,製品差別化を非物理的な製品の特徴に
のみ限定して記述する。解釈の相違を生じさせる可能性は,“無差別的マーケティング”と“差別的マーケ
ティング”の論議により,より一層高められてきたといえる。これらの概念は,マーケティング戦略が,市
場セグメソトの認識の上に基礎を置くのかどうかという点を指摘する際に使用されている。製品差別化が市
場細分化に対する代替的アプローチとして論議される場合では,無差別的マーケティソグとして記述され
る。このような概念の使用の混乱の要素は,さまざまな研究者達が,“市場”と“製品”,“戦略”の各々の
“差別化”を論議する場合やそれらの概念の区別が明確化されていない場合などから生じる」と指摘する。
[Dickson, P. R. and J. L Ginter,‘‘Market Segmentation, Product Differentiation, and Marketing Strategy”,
ノburnal Of Marleeting, Vol.51. No.2(April 1987),pp.1−2.]
10)光澤(1968)は,製品差別化について,(1)製品差別化に与えられる特徴づけによる分類:(a>特徴づけの手
段による分類,(b)特徴づけの実質性の有無による分類,(2)製品差別化の効果の持続期間による分類などの
観点から区分できることを指摘する。[光澤滋朗稿「製品差別化及び製品差別化費用」,『大阪経大論集』,
第63号,大阪経大学会,1968年,p.87。]
11)「ポストモダン消費者行動研究」は,実証主義的で客観主義的な従来の消費者行動研究に対して,Holbrook
らが展開する新たな研究アプローチである。その理論的背景には,現代思想に見出されるポストモダンの
考え方があり,その主な特徴は,解釈主義や主観主義,相対主義,多文化性などで表現される。現状で
は,仮説発見に有用な「ポストモダン消費者行動研究」,仮説検証に有用な「従来型消費者行動研究」とい
う方法論の役割分担が可能である。[宮澤永光・亀井昭宏監修『マーケティソグ辞典一改訂版一』,同文舘
出版,2003年,pp.250−251。]
12)ジョンF.シェリー稿「ポストモダン・マーケティソグの思想」,『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビ
ュー』第26巻第6号,2001年,ダイヤモンド社,p.104。
13)桑原(2001)は,「消費者に関する研究は,“行動としての消費”が主な研究対象であり,消費者“行動”
研究,あるいは,購買者“行動”研究と呼称されていた。しかし,1980年代から,その呼称から“行動”
というラベルを外し,“消費者研究”という名称を意識的に用いる研究者達が現れてきた。このような気運
から,より広い文脈から消費の“経験”的側面に光を当て,その意味を理解する“経験としての消費”へ
とシフトした」と指摘する。[桑原武夫稿「ポストモダン・アプローチの展開と構図」,『DIAMONDハーバ
ード・ビジネス・レビュー』第26巻第6号,2001年,ダイヤモソド社,p.118。]
14)Sherry(2001)は,「ポストモダニティは,“モダニティ(modernity)”(工業化,機械化,定量分析に代表
される近代的思考)の前提と約束の不十分さへの反動である。モダニティは,知るための方法として科学
に特権を与え,現実を普遍かつ唯一の存在として解釈する。ポストモダニティは,モダニティの教義の徹
底的な批判である。そのような意味から,一種の合成物であり,集合体であるともいえる」と指摘する。
[前掲論文(注12),p.102。コ
15)同上論文,pp.102−103。
16)同上論文,p.103。
17)「ブランド」とは,「商標」と同義語であるが,商標がある商品に与えられた固有の名称,記号,デザイン
などの標章を意味するのに対して,ブランドは,「知名度の高い登録商標(銘柄)」または「銘柄がついた
商品」という意味で使用されることが多い。ブラソドは,商品を提供する製造業者や販売業者を特定し,
購入者が競合商品を識別できるようにするとともに,商品の品質や機能に関する責任を明確化し,購入者
のリスクを軽減するという機能を持つ。ブランドがついていなければ,製品差別化は不可能であるし,製
造者や販売者が広告に力を入れることも無意味になる。また,ブランドには,商品に個性を与える機能が
あるため,その個性を強調することにより,顧客にとって競合商品にはない独自の存在にすることも可能
となる。[金子・中西・西村,前掲書(注1),p.307。]
18)しかし,Chamberlin(1933,1962)の「独占的競争」の理論は, Robinsonの「不完全競争」の概念と根本
的特質に相違がある。詳細については,以下の文献を参照されたい。[Chamberlin, E. D., The T伽ηof
Monopolistic ComPetition’ A Re−orientation(of the Theo7y of Value, Harvard Economic Stzadies XXXVIII,8th ed.,
Harvard University Press, Cambridge, Massachusetts,1962〔c1933〕.(E. H.チェンバリン著,青山秀夫訳
一84一
『独占的競争の理論一価値論の新しい方向一』,至誠堂,1966年,pp.236−267。)]
19)同上書,pp.72−73。
20)Chamberlin(1933,1962)は,生産物の販売をめぐる諸条件の要素である小売商の「立地」について,「《あ
る商品が,他の立地においてではなく,この立地において入手可能であるという事実》が,購買者にとっ
てきわめて重要である場合には,これらの財が,空間的に分化している(dtlfferentiated sPatially)とみなし
てよく,“空間的独占”(“spαtial monoPoly”)という用語を売手側が立地に基づいて有する供給の支配に対
して適用して差支えない。ある小売商についての“生産物”という場合,この概念に特定の立地が買手に
与える便宜をも含めて考えるとすれば,この小売商は,“生産物”の供給に対して,完全かつ絶対なる支配
を持つことになる」と指摘する。[同上書,pp.80−81。]
21)西村栄治稿「オルダースソのマーケティソグ理論への経済学の影響」,マーケティソグ史研究会編『オルダ
ースン理論の再検討』,同文舘出版,2002年,p.106。
22)Bain, J. S.,Industrial Organization,2nd ed.,xiv+678p.,(John Wiley&Sons, Inc.),New York, London, Syd・
ney,1968.(J. S.ベイソ著,宮澤健一監訳r産業組織論(上)』,丸善株式会社,1970年, p.234。)
23)同上書,pp.237−239。
24)同上書,p.239。
25)Bain(1968)は,「参入障壁」として,(1)潜在的参入企業にまさる既存企業の製品差別化による優位性,(2)
潜在的参入企業にまさる既存企業の費用の絶対的優位性,(3)潜在的参入企業にまさる既存企業の大規模企
業の経済性による優位性を挙げている。参入障壁の原因の詳細については,以下の文献を参照されたい。
[同上書,pp.269−286。]
26)和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦著rマーケティソグ戦略』,有斐閣アルマ,1996年,p.129。
27)同上書,p.130。
28)Porter, M. E., Competitive Strategy, The Free Press,1980.(M. E.ポーター著,土岐坤,中辻萬治,服部照
夫訳『競争の戦略』,ダイヤモンド社,1982年,p.59。)
Porter(1980)は,他社に打ち勝つための競争戦略の基本的類型として,(1)コストのリーダーシップ,(2)
差別化,(3)集中を挙げている。[同上書,pp.55−63。]
29)Kotler, P. , Marleeting Management:.A Frameworle for Marketing Management,1st ed.,Prentice−Hall,2001.(フ
ィリップ・コトラー著,恩蔵直人監修,月谷真紀訳『コトラーのマーケティング・マネジメソト基本編』,
ピアソソ・エデュケーショソ,2002年,pp.217−219。)
30)同上書,pp.217−221。
31)原典は,Shaw, A. W.,‘‘Some Problems in Market Distribution”, Quarterly Journal of Economics, August,
1912.
但し,本稿では,Shaw(1912)の製品差別化の概念を以下の原典から引用している。[Dickson=Ginter,
op. cit., P.2.]
32)Smith, W. R.,“Product Differentiation and Market Segmentation as Alternative Marketing Strategies”,
ノburnal Of Marleeting, Vo1.21(July.1956),p.6.
33)Alderson, W,, Marketing Behavior and、Executive Action, Richard D. Irwin, Inc.,1957.(ロー・オルダースン
著,石原武政・風呂勉・光澤滋朗・田村正紀共訳『マーケティソグ行動と経営老行為一マーケティング理
論への機能主義的接近一』,千倉書房,1984年,pp.110−112。)
Alderson(1957)は,「機能主義的接近の実体は, Chamberlinが“独占的競争”の理論によって含意し,
また,Clarkが“差別的優位性の経済学”と名づけたものと非常に類似する。競争において重要なのは,差
別的優位性であり,それは,ある企業に同じ領域で他企業が提供するものに対する優位点を与えることが
できる」と指摘する。[同上書,p.109。]
そして,Alderson(1965)は,差別的優位性の一般的基礎として,(1)法的要因,(2)地理的要因,(3)技術
的要因を挙げている。[Alderson, W., Dynamic Marketing、Behavior: A Functionalyst Theoりy Of Marketing,
Richard D. Inc.,1965.(ロー・オルダースン著,田村正紀・堀田一善・小島健司・池尾恭一共訳『動態的マ
ーケティソグ行動一マーケティングの機能主義理論一』,千倉書房,1981年,pp.236−237。)コ
一85一
34)同上書,p.113。
35)Alderson(1957)は,「非価格競争要因」を「製品競争」と呼称することの有効性を主張する。 Alderson
(1957)は,「製品競争の脈絡において製品差別化が競争の本質とみなされる場合,広告の機能は,(1)利用
可能な製品とその相対的価格に関する知識の一般的伝播を高める手段,(2)販売の代替的方法として必要な
セールスマソ,卸売商小売商を減少させる程度に応じて費用を削減する手段という2つの機能を果たす」
と指摘する。[オルダースソ,石原・風呂・光澤・田村,前掲書(注33),pp.133−136。]
36)光澤,前掲論文(注10),p. 88。
37)同上論文,p.88。
38)徳永(1968)は,(1)製品の性格による製品差別化の様相の差異,(2)製品ライフ・サイクルによる製品差別
化の様態の差異,(3)企業間競争という次元からの製品差別化の問題,(4)市場細分化の製品差別化的性格,
(5)製品差別化に対する影響要因と消費者に対する製品差別化の伝達という観点から,製品差別化の諸様相
を指摘する。[徳永豊稿「製品差別化の諸様態」,清水晶・三上富三郎・北島忠男編『現代の流通論一2つの
マーケティソグー』,同文舘,1968年,p.172。]
39)同上書,pp,173−174。
40)徳永豊稿「製品戦略と製品開発」,徳永豊・森博隆・井上崇通編著『改訂版例解マーケティングの管理と診
断』,同友館,1990年,p.176。
4エ)同上書,pp.169−170。
42)原典は,Grether, E. T.,‘‘External Product and Enterprise Differentiation and Consumer Behavior,” in A. L.
Seelye, ed.,Marleeting in Transition,1958, p.182.
但し,本稿では,Grether(1958)の製品差別化の概念を以下の文献から引用している。[光澤,前掲論文
(注10),p.100。]
43)同上論文,pp.88−89。
44)猿渡,前掲書(注6),pp.137−138。
45)同上書,p,138。
46)西村,前掲書(注21),p.104。
47>同上書,p.106。
48)菊池一夫稿「製品戦略」,竹内慶司編著『マネジメント基本全集3・市場創造(マーケティング)一顧客満足
とリレーショソシップー』,学文社,2006年,p.98。
49)同上書,P.99。
50)Shaw, A. W., An Approαch to、Business Problems, Harvard University Press,1916, p. 223.
51)Smith, op. cit., P.6.
52)Alderson,(op. cit., pp. 25−32.(オルダL−一一スソ,田村・堀田・小島・池尾,前掲書(注33), pp.31−38。)
53)Ibid, p.186.(同上書, p.223。)
54)澤内隆志稿「マーケティング戦略」,澤内隆志編著『マーケティングの原理■コソセプトとセンス』,中央
経済社,2002年,pp.26−27。
55)同上書,p.26。
56)田中克明・古川勇吉稿「マーケット・セグメンテーション」,大澤豊編『マーケティソグと消費者行動〈現
代経営学(8)〉』,有斐閣,1992年,p.111。
57)キム,モボルニュ,前掲書(注4),p.115。
58)大友純稿「マーケティング・コミュニケーションの戦略課題とその本質一プロモーション戦略の求心的要
因を求めて一」,『明大商学論叢』,第83巻第1号,明治大学商学研究所,2001年,p.228。
59)商品は使用目的により,「消費財」と「生産財」とに分類できる。消費財は,消費者自身の生活を充足させ
るための使用目的として購入されるものであるのに対して,生産財は,最終消費者が使用するための財を
作り出す目的で購入されるものである。なお,同一種類の生産財でも,使用される目的により消費財にな
る場合や生産財になる場合もみられるが,この区別は,財の性質によるものではなく,使用目的に対応す
るものである。[金子・中西・西村,前掲書(注1),p.190。]
一86一
60)人口の高齢化現象を示す指標の一つが,全人口に対する65歳以上の「老年人口比率」である。7%以上の65
歳以上の老年人口比率を持つ社会は,「高齢化社会(aging society)」と呼称される。また,15歳以上64歳
以下の生産年齢人口に対する老年人口の割合である老年人口指数が,12%以上の社会を「高齢社会」と呼
称する。[濱嶋朗・竹内郁郎・石川晃弘編『社会学小辞典〔新版〕』,有斐閣,1997年,pp.182−183。]
参考文献
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1965.(ロー・オルダースソ著,田村正紀・堀田一善・小島健司・池尾恭一共訳『動態的マーケティソグ
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〔34〕竹内慶司編著『マネジメソト基本全集3・市場創造(マーケティソグ)一顧客満足とリレーショソシップ
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〔38〕和田充夫・恩蔵直人・三浦俊彦著『マーケティング戦略』,有i斐閣アルマ,1996年。
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年。
一88一
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