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九州地域の人工林での帯状伐採等の伐採が 多面的機能に及ぼす科学

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九州地域の人工林での帯状伐採等の伐採が 多面的機能に及ぼす科学
森林総合研究所
交付金プロジェクト研究 成果 No.60
九州地域の人工林での帯状伐採等の伐採が
多面的機能に及ぼす科学的評価と
林業的評価を考慮した取り扱い手法の提示
森林の公益的機能の発揮と低コスト化を両立させる試みとして、
国有林を中心に帯状伐採が行われています。帯状伐採前後の森林
環境や生物相の変化の測定等を通じて、林地保全や生物多様性
保全等の機能評価を行いました。
独立行政法人 森林総合研究所
2014. 3
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森林を伐採する際には木材生産と公益的機能発揮との両立が求められます。
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目的
そのため、九州森林管理局では、小面積伐採のひとつである帯状伐採を採用
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し、森林の公益的機能をできるだけ維持しつつ効率的に林業生産を行おうとして
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います。帯状伐採等の公益的機能への寄与について科学的データにより説明するため、本
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研究では、樹高の2倍程度までの幅で伐採した帯状伐採地とそれより広い幅の伐採地にお
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いて森林環境や生物相の変化を測定・観察し、林地保全や生物多様性保全などの多面的機
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能の評価手法を開発し、帯状伐採の環境影響を評価することを目的としました。
図1 伐採後(2013年4月〜2014年1月)の平均日射量
図2 地表高の変化と測定期間中の
最大日雨量
帯状伐採等が地表物理環境に及ぼす影響
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林内の気象や地表面の安定性は生物相や植生に影響を与えますが、伐採によって樹木
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の被覆がなくなるので地表面はより直接的に日射や雨水の影響を受けるようになりま
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す。帯状伐採が地表付近の微気象や地表の土砂移動等の物理環境に及ぼす影響を明らか
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にするために、日射量、地温などの観測と地表高変化の測定を伐採前後を通して行いま
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した。
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微気象観測の結果からは、伐採後林縁から離れるにしたがい地表付近に到達する日射
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量は増加しますが、樹高の2倍程度までの幅の帯状伐採では、伐採地全体が周囲の残存
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木の影響を受けていることがわかりました(図1)。また、個々の環境要素により影響
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の受け方は異なるものの、林内気象については伐採幅を狭くすることで伐採による変化
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を緩和できていることがわかりました。
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土砂移動は、伐採後は斜面全体として活発化しました。また測定期間中の降雨と比較
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すると、伐採後にはより強度の小さい雨でも土砂が移動するようになることがわかりま
した(図2)。
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森林総合研究所 交付金プロジェクト研究
成果 60
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帯状伐採等が生物相に及ぼす影響
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森林性の生物のもつ機能に対する伐採の影響を評価するため、腐肉食性甲虫という昆
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虫に着目しました。腐肉食性甲虫は動物遺体を分解して「土に還す」という重要な生態
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系サービスの一翼を担っています。彼らの捕獲数を伐採前後で比較しました。
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伐採前は、林内の腐肉食性甲虫の種構成はほぼ均一でしたが、伐採後は、林縁部と伐
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採地内で森林性の種が少なくなり、伐採地内での減少度合いは林縁から距離が離れるほ
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ど大きくなりました。樹高の2倍程度までの幅の帯状伐採地中央では、森林性の種があ
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る程度みられたのに対し、それより広い幅の伐採地中央ではほとんどみられなくなりま
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した(図3)。このように、帯状伐採は森林性の種が生息できる環境を維持する、伐採
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のインパクトがより小さくてすむ伐採方法であることがわかりました。
図3 20m間隔で設置したトラップに捕獲された腐肉食性昆虫の変化
センチコガネやヨツボシモンシデムシ等の森林性腐肉食性昆虫は伐採後、
幅広の伐採地中央での捕獲数はゼロになりましたが、帯状伐採地中央では数は少ないですが捕獲されました。
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本研究の成果は、小面積皆伐のひとつである帯状伐採が、林内微気象
成果の
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や地表の安定性、生物の多様性などの森林の公益的機能に対して影響の
利活用
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少ない伐採方法であることを示唆しています。林業生産の観点からは、
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ある程度まとまった面積を皆伐するほうが効率的ですし、皆伐後の草原的環境が草地性
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の動植物の多様性に貢献することも知られています。本研究の成果は、成熟した森林が
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持つ公益的機能に対する伐採の影響を最小限にとどめたいという配慮のもとで皆伐を進
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める際に、帯状伐採の採用を検討する科学的根拠として利活用が期待されます。
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森林総合研究所 交付金プロジェクト研究
要
成果 60
旨
今後も木材生産と公益的機能発揮との調和・両立への国民的要求は高まり続けると
思われます。森林の公益的機能への影響が小さいと言われる帯状伐採について、伐採
による森林環境や生物相の変化を測定・観察し、データに基づき林地保全や生物多様
性保全などの多面的機能の変化を評価しました。その結果、日射量や地温などの個々
の環境要素により影響の受け方は異なるものの、伐採幅を狭くすることで変化を緩和
できることがわかりました。また、生物相に対しては、森林性腐肉食性甲虫に着目す
ると、帯状伐採はそれらの生息への影響も相対的に小さいことがわかりました。これ
らのデータは帯状伐採が公益的機能への影響が相対的に小さい伐採方法であることを
示唆しています。
詳しくは、萩野裕章、浅野志穂、壁谷直記、黒川潮、清水晃(2014)帯状伐採による
森林の微気象変化について . 九州森林研究 .67:68-71、上田明良 (2014) 異なるトラッ
プで採集した植林地・広葉樹林・林道沿いのオサムシ科および腐肉食性甲虫群集 . 九州
森林研究 .67:29-32 をご覧下さい。
研究代表者
九州支所長 森 貞 和 仁
▼プロフィール
温暖化対応推進拠点においてわが国の森林土壌による炭素
貯留に関する研究に従事。
担当研究機関(独)森林総合研究所 九州支所
問い合わせ先 TEL
029-829-8377(相談窓口)
ISSN 1349-0605
森林総合研究所交付金プロジェクト研究 成果No.60
「九州地域の人工林での帯状伐採等の伐採が多面的機能に及ぼす
科学的評価と林業的評価を考慮した取り扱い手法の提示」
発行日 平成26年7月31日
発行者 独立行政法人森林総合研究所
〒305−8687 茨城県つくば市松の里1番地
電話 029−873−3211(代表)
※本誌掲載記事及び写真の無断転載を禁じます。
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