Comments
Description
Transcript
最近の試験研究成果
最近の試験研究成果 H25.6月 1 総合農業試験場 儲かる農業の実現に向けた試験研究の取組 1)本県独自の新品種の育成 ◆早期水稲「夏の笑み」 【作物部】 「夏の笑み」は、品質・食味が優れ、「コ シヒカリ」よりも多収で、倒伏に強い品種で、 平成23年度に奨励品種に採用されました。 平成24年産から一般栽培が行われ、収量 も多いことから、近年国産の需要が伸びてい る焼酎原料用等の加工用米への活用も検討さ れています。 左:コシヒカリ 中央:夏の笑み 右:さきひかり 左:夏の笑み 中央:コシヒカリ 右:さきひかり ◆ピーマン土壌病害抵抗性台木「みやざきL1台木1号」 【生物工学部・野菜部】 ピーマンの生産現場では青枯病が多発し 深刻な問題となっており、最も効果的な対 策である抵抗性台木品種が求められていま した。 「みやざきL1台木1号」は、トバモウ イルス抵抗性L1を持つ青枯病抵抗性台木 で、主要な品種の一つである「京ゆたか」 に接ぎ木可能な台木です。 接ぎ木後の活着や栽培中の生育も順調で、 青枯病に対しては、市販品種「台助」と同 程度の抵抗性を有します。 みやざき L1台木1号 K9-11 (罹病性) 青枯病菌接種試験 -1 - ◆夏秋イチゴ「みやざきなつはるか」 【野菜部】 「みやざきなつはるか」は四季成り性の品種で、 夏季冷涼な気候を利用し、国内産の端境期(6~ 10月)に出荷できるよう、中山間地域等において 産地化に向けた取組が進められています。 みやざきなつはるか ◆スイートピー「ムジカスカーレット」 【花き部】 「ムジカスカーレット」は、春咲き性の巻きひげが無いスイートピーです。花色は旗 弁中央部が明紫赤、翼弁中央部が鮮紫ピンクの単色花です。 誘引作業での巻きひげ除去作業が不要となるため、労働時間が12%程度削減でき ます。 左:巻きひげあり(従来) 右:巻きひげ無し(ムジカ) ムジカスカーレット ◆きんかん「宮崎王丸」、「宮崎夢丸」 【果樹部・亜熱帯作物支場】 「宮崎王丸」は、既存品種に比べ、”たま たまエクセレント”規格の3.2㎝~3.6㎝ (2L級)以上の果実の割合が高く、糖度は 同等以上で酸味は同等かやや低いことから、 食味が非常に良好です。 「宮崎夢丸」は種が無いことが最大の特徴 で、果実はやや小さいものの、糖度が高く、 酸味をほとんど感じないため、お菓子のよう な甘さが特徴です。生食から加工向けまで既 存のきんかんの枠を超えた新しい需要が見込 まれています。 -2 - 左:ニンポウキンカン 中央:宮崎王丸 右:宮崎夢丸 2)需要を先取りした品目等の安定生産 ◆キャベツの新作型「寒玉キャベツ晩秋まき春どり」の開発 【畑作園芸支場】 加工・業務向けキャベツについては、加熱調 理に適した「寒玉」キャベツの需要が高いこと から、品不足となる端境期の4~5月に出荷可 能となる新作型を開発するとともに、適応品種 の選定を行いました。 北・西諸県地域において産地化が進みつつあ ります。 適応品種:さつき女王 3)コスト低減・省力化 ◆サトイモのタイヤ式いも分離収穫調整作業機の開発 【畑作園芸支場】 サトイモの収穫調製作業は、作業時間の多く を占め、人手による作業が多いことから、小型 トラクタへ直装し、堀取りから子芋の分離、収 容までを可能とする収穫調製作業機を開発しま した。現地試験でも多数の生産法人から高評価 を得て、既に購入を予定されているところもあ ります。 サトイモのタイヤ式いも分離収穫機 4)環境への負荷軽減や未利用資源の活用 ◆残さの腐熟処理によるキュウリ緑斑モザイク病防除技術の開発 【生物環境部】 キュウリ緑斑モザイク病(KGMMV)は臭化メチルでしか防除できませんが、臭 化メチルは2013年以降は一切使用できません。全廃後も生産現場で安心してキュウ リ栽培が行えるように、罹病残さを腐熟処理し、ウイルスを死滅させる防除技術を開 発しました。現地発生圃場でも試験を行っており、この効果が実証されています。 土壌水分の違いによる腐熟処理約1ヵ月後の根の 状況(左:乾燥、中央:適湿、左:湛水) -3 - ◆多成分リアルタイム診断技術の開発 【土壌環境部】 環境に優しく、効率的な施肥を行うため、作物汁液を測定することにより生育状況 に応じた追肥ができる多成分(窒素、リン酸、カリ等)リアルタイム診断技術の開発 に取り組んでいます。 測定用の汁液の採取 測定機器(RQフレックス) 5)食の安全・安心や健康志向への対応 ◆残留農薬及び栄養・機能性成分の一斉分析技術の開発 【生産流通部】 全国でトップクラスとなる残留農薬420成分、栄養・機能性成分120成分の分析 が可能となる技術を開発しており、「みやざきブランド力」の向上に大きく貢献して います。また、平成24年度から、大阪大学や島津製作所等と共同で、世界初の残留 農薬等分析装置(オンライン型超臨界流体抽出分離装置)の開発に取り組んでいます。 残留農薬の分析状況 大手スーパーでの機能性成分表示販売 ◆薬草の国内生産に向けた安定栽培技術の検討 【薬草・地域作物センタ-】 薬草・地域作物センターでは、民間企業や大学、農業法人等と連携・協力しながら、 薬草やハーブ、ニンニク等の健康食品に関する研究に取り組んでおり、薬草について は、国内生産に向けて、実需者のニーズを踏まえた試験栽培を行っています。 カモミール(獣医薬原料用) カキドオシ(薬草茶原料用) -4 - 2 地球温暖化に対応した試験研究の取組 1)地球温暖化に適応した新品種の開発 ◆高温登熟性に優れる水稲新品種 「おてんとそだち」【作物部】 平成23年度に奨励品種に採用 され、平成24度は約175haで 作付が行われました。 高温での白未熟粒の発生が少 なく、1等米比率は67%でした (ヒノヒカリは23%)。 左:「おてんとそだち」 ◆耐寒性に優れる茶新品種「宮崎31号」 右:「ヒノヒカリ」 【茶業支場】 温暖化が進む中、初冬期の急激な温度低下 から、近年、茶の裂傷型凍害や越冬芽の凍害 が頻繁に起こるようになり、早生種を中心に 幼木の枯死や収量の低下が懸念されています。 このため、茶業支場では、耐寒性が強く高 品質で多収な早生品種「宮崎31号」を育成 しました。 「宮崎31号」一番茶摘栽期の新芽 2)施設園芸における燃油使用量削減に向けた新技術の開発 ◆太陽熱ハウス暖房システム 【生産流通部】 三鷹光器等と共同で、平成23年度から太陽熱を利用したハウス暖房システムの性 能検証を行いました。この中で、最低温度を15℃に設定した場合の太陽熱暖房シス テムの暖房効果を実証するとともに、最低温度を24℃に設定し、灯油ボイラーに太 陽熱暖房と高断熱内張カーテンを併用したハウスと灯油ボイラーのみの通常仕様のハ ウスとを比較した結果、燃油を60~80%削減するデータが得られました。 平成25年度からは国の委託プロジェクトに参画し、実用化を目指したシステムの 小型化に取り組むこととしています。 太陽熱暖房システム全景(集熱板と保温タンク) -5 - 温水を温風に換えて送風するファンコイル