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“I like dog.” と言ったら「えっ、犬の肉が好き!?」 - a

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“I like dog.” と言ったら「えっ、犬の肉が好き!?」 - a
“I like dog.
”と言ったら「えっ、犬の肉が好き!?」
1946.“
dog.”
DIAMOND Online2013.6.26. 大野和基
(傍線:吉田祐起引用)
『実践 日本人の英語』著者 マーク・ピーターセン氏に聞く ネイティブに通じない、間違いだらの
ニッポン英語
ベストセラー『日本人の英語』から25年。日本人が書く英語が、確認不足によるささいなミスのせい
でネイティブに通じないケース指摘し、「もったいない」と訴え続けてきたマーク・ピーターセン氏が
『実践 日本人の英語』(岩波新書)を上梓した。日本人の英語はなぜダメなのか? 最新作のエ
ッセンスを、英語でのインタビューを本業とするジャーナリストの大野和基氏が聞く。
アメリカ人の多くは非ネイティブが言いたいことを察してはくれない
マーク・ピーターセン(Mark Petersen)
アメリカ・ウィスコンシン州出身。コロラド大学で英米文学、ワシントン大学大学院で近代日本文学を
専攻。1980年フルブライト留学生として来日、東京工業大学にて「正宗白鳥」を研究。現在、明治大
学政治経済学部教授。著書に、『日本人の英語』 『続 日本人の英語』 『心にとどく英語』(以上、岩
波新書)、『英語の壁』(文春新書)、『日本人が誤解する英語』『マーク・ピーターセンの英語のツボ』
(以上、光文社知恵の森文庫)、『表現のための実践ロイヤル英文法』(共著、旺文社)ほか。
――今回、『実践 日本人の英語』(岩波新書)を出版されました。最初に『日本人の英語』を出され
たのは1988年ですから、あれから25年たちました。『実践 日本人の英語』の第11章<脱・カタ
コト英語>(「大人の」英語表現)に、<本人は頭がいいのに、書いた文章が極めて「子どもっぽい」
というミスマッチにびっくりすることが多い>と書かれています。私は仕事上英語でインタビューす
ることが多いのですが、相手は日本語や日本人英語のことはまったく知らないことが多い。そういう
ときにカタコト英語を使うと、<この人の頭は大丈夫か>と思われますよね。
外国語を覚えるのがどれほど大変かわかっているアメリカ人もいますが、そうでない アメリカ人
は、とかく英語ができて当然だと思いがちです。それは 残念なことですが、現実です。とりわけ英
文を書くときに、日本人がただ単に注意不足で初歩的な間違いをして、悪い印象を与えてしまうケ
ースがよくあります。非常にもったいないことだと思います。
――例えば、「犬が好き」と言うつもりで“I like dog.”と言うと、相手のネイティブの人は「犬の肉を
食べるのか」と思いますから、かなりいやな顔をしますね。
そう、ちょっとしたことで、いやな印象を与えてしまいます。dogs と複数形にすればきちんと通じ
るのに、もったいないことです。ちょっと意識すればそういう印象を与えなくて済むのです。
“I like dog.”の dog のように、単数形の名詞の前に a や the の冠詞など何の限定詞もないと、
それは必然的に「数えられないもの」を表すことになってしまいます。これに関しては意識がほとん
どないようです。数えられない dog と言えば、素材として意識される「犬肉」しかないのです。
-1-
私は日本人が単数形と複数形や冠詞の使い方をあまり意識しないことを知っているので、“I like
dogs.”と伝えたいのだろう、ということがわかりますが、日本語を知らないネイティブは気持ち悪が
りかねません。中1のときに one boy, two boys と習っているはずなのに、それを一生涯無視す
る日本人もいます。しかし英語では単数形と複数形は非常に重要で、それを無視すると通じないこ
とも 多々あるのです。もっと意識すれば直ることです。日本語にはない文法なので無視してもよさ
そう、という気持がわからないわけではないのですが、これもとてももったいないことです。
文章こそ正確さが大切 セルフチェックで確認を
――いいかげんに覚えると英語は身につきませんね。細かいところまで注意してはじめて身につく
と思います。
海外旅行に行ってタクシーに乗るなら、何とか行きたいところに連れて行ってもらえればそれで
済みますが、文章で何かを伝える際には、相手とその場でのやりとりができないので、相手は書か
れた英語だけでしか判断しません。そのときにいいかげんなカタコト英語を書くと誤解される可能性
が高いです。ネイティブの人が読んで不可解に思っても「どういう意味か?」とその場で聞けません
ので、できるだけ正確な英語で書かないと損することが多いのです。
一度書いたあとに、時制や複数・単数など、英語で特に厳しいところをセルフチェックすればかな
り直せると思います。正確に通じる英語を作るには、「時」をはっきり表す時制に対する意識を高め
ることも重要だと思います。
――日本人が英語を覚えるときに、よく犯す間違いは、英単語をひとつの日本語訳で覚えようとす
ることだと思います。たとえば、life という英語には、人生、生活、生物、活力、生命、一生など実に
たくさんの意味があり、それは文脈で意味が決まりますね。
そうです。ですから単語ではなく、例文の中で覚えるのがベストです。それと、英文を書くときに
和製英語でもそのまま辞書でチェックせずに、ローマ字にして使う大学生も少なくないです。 “I
live in a one-room mansion.”(私は、部屋が1つしかない邸宅に住んでいます)などのような英
文をよく見かけます。問題意識がなさすぎます。
これがビジネスでメールのやりとりを英語でするとなると、とんでもない誤解が生じることがあり
ます。もうちょっと自分が使う単語を辞書で引いてみて、それが出てくる例文を見れば、使い方が合
っているかどうかわかるはずです。そういうセルフチェックは非常に重要です。
また動詞のあとにくる前置詞が on なのか by なのか、そういう点は正確でなければ伝えたい意
味にはならないケースも多い。それも、辞書を引けばわかることです。例えば、「彼も行くよう説得し
た」と伝えたいときに、“I talked him into going.”と書くべきところを、“I talked him to going.”
と書くと、不可解な英語で意味不明になります。ちょっと辞書を引くだけで解決できることです。せっ
かく電子辞書もあるのに、もったいない。とにかくもっと辞書を引くべきです。
――書くときにできるだけ正確に書こうとすると、それが話すときに反映されるのではないでしょう
か。
そうですね。それと英文をたくさん読んで語彙を増やそうと努力すると、それも話すときに反映さ
れます。
――私がインタビューするアメリカ人は、教養ある人が多いですが、彼らは非常に難しい単語や言
い回しを使います。つまり教養レベルが上がれば上がるほど、難しい語彙を使います ね。
それがそのネイティブにとっては普通ですからね。それを録音して丁寧に聞くだけでも勉強にな
-2-
ります。
各国語のなかで実は英語が一番難しい
――英語圏で日本語を勉強しているアメリカ人が勘違いしやすい日本語は何でしょうか。
初歩の段階では、まず「結構です」とか「いいです」とか「いいかげん」とか「適当」の使い方が難
しいですね。日本人はネガティブな意味でこれらを使いますが、辞書には元々の意味として、ポジ
ティブな意味が出ています。「いいかげんなもの」という言葉は、日本語を学習しているアメリカ人
が見ると、良いものだと思ってしまいます。実際に言葉が日本人の間でどのように使われているか
を知らないとだめですね。
――私はかつてイギリスの諜報部MI6にいたスパイにインタビューしたことがありますが、彼は英
語が母語で他に数ヵ国語を母語とまったく変わらないレベルで話せます。訛りもありません。そんな
彼が言っていたのは、英語が一番難しいということです。
そうでしょうね。語彙の数だけでも圧倒的に多い。ラテン系やゲルマン系などあちこちから語彙を
取り入れ、さらに綴りと発音が一致しない。合理的でない。文法もドイツ語系かもしれないが、そうで
ない部分も多い。
――村上春樹の作品を英訳しているジェイ・ルービンも“English is tough.”と嘆いていましたね。
日本人はこれほど難しい英語を、難しいと思っていないのではないでしょうか。簡単だと勘違いして
いると思います。
そうですね。英語は本当に難しいですね。永遠の学習になってしまいますが、面白さも十二分に
あると思います。
――最近日本人の英語力が落ちてきたと思われる、と本に書かれていますね。
簡単な会話が重要視されすぎて、読み書きがいいかげんになっていると思います。書く英語はし
っかりしないと、やはり損すると思います。また、特に大事な英文の場合、できることなら、書いたあ
とは、ちゃんと添削してもらうことが理想的です。
昔と比べると学生の英語の発音と聴き取りはよくなっていますが、読めなくなっているというの
が、最近の現象です。読めなくなっているのは英語学習にとってかなりマイナスの影響がありま
す。聴き取りがよくなり、発音がよくなっているのは、iPod やDVDがありますから、そのおかげだと
思います。
――読めないということは、きちんとした英語が書けないということで、さらにきちんとした英語が話
せないということですね。 もちろんそうです。
――教養あるアメリカ人にインタビューすると、書き言葉で話しますね。録音を文字に起こしたもの
を読むと、書き言葉としてそのまま通用する英語になっているのがわかります。
そうです。そういえばびっくりしたのが、ビル・クリントンの英語です。彼は文章が完璧だけではな
く、段落ごとに完璧に話しますね。これはすごいことです。彼の大統領としての8年間は、素晴らし
い英語を聴けるという面で本当によかったと思います。
日本の英語教育の問題点は
――日本では小学校から英語を教科として教えることが義務になりましたが、それについてはどう
-3-
思われますか。
でも一体誰が教えるのでしょうか。英語が普通に話せない人が、英語を使って教えるのは逆効
果だと思います。英語で教えないといけない小学校の先生がかわいそうです。鬱になる人も出てく
るかもしれません。また、どの段階の授業でも、ペアワークなどで日本人同士が英語で話すと、変
な英語でも通じるから、誤解がますます固定されてしまい、正しい英語になりようがありません。
――
――TOEICは日本人用のテストですが、どう思われますか?
外国人用のTOEFLで十分だと思います。全世界共通の英語のテストですから。もちろんビジネ
ス英語の聞き取りや読解で、TOEICは役に立つようですが。
――ところで、本の中に出てくる例文で“I could meet him in New York.”という仮定法の文が出
てきますね。日本人はこれをみて「会うことができた」という過去形の文だと思うことが多いですが、
実際は仮定法の文で、 「ニューヨークに行けば、彼に会えるはず」という意味ですね。
100人のネイティブに聞いたら、100人とも仮定法の意味としてとらえます。日本人の誤解は非
常に大きい。通常、日本の学校英語で仮定法がやっと紹介されるのは 4年目(高1)ですね。それで
は遅すぎます。それまでの教科書の長文や会話では、仮定法が使えないため、不自然な、あるい
は存在もしない英語が紹介されてしまうケースさえあります。
――
――ネイティブは普通の会話でも仮定法をたくさん使いますね。
普通ですね。たとえば、映画「ローマの休日」で、ダンスパーティをやるから来ないかと言われ
て、ヘプバーンが断るときに“I wish I could.” (行けたらいいのに)と言いますね。「行けません」
とは言わずに、やさしく「I wish I could.」という言い方がいいですね。
――ついでに言うと、よく日本人が勘違いしているのは、英語はストレートな言語であるということ
です。でも実際は教養あるアメリカ人は婉曲的にものを言うことが多い と思いますが。
“I wonder if by any chance I could possibly speak to…”と、非常に丁寧に話す人もいま
す。そういう丁寧な英語表現が使えることはもちろん重要です。
ほとんどの日本人にとっては、日本に住んでいる限り、英語は特に要りませんが、それでも、事
実上、必修科目となっています。外国語は、本当は楽器と同じように、本人がそれを“ものにする
“ と決心し、自分から進んで練習して初めて有意義な上達をするものです。幸い、大きな本屋に行
けばわかるように、日本は“英語教材天国” なので、やろうと思えば、できるはずです。
ヨシダコメント:
「教養あるアメリカ人にインタビューすると、書き言葉で話しますね。録音を文字に起こしたものを読
むと、書き言葉としてそのまま通用する英語になります・・・」に強い興味を抱きます。これは日本語
でも言えることです。立派な人(日本人)の講演をテープ起しして愕然とした経験を持ちます。全く日
本語になっていないのです。日本語の日本語翻訳をさせられました。
手前ミソですが、ある方がヨシダの講演を聴いた後で言われました「ヨシダ先生の講演はそのまま
文字化してもイイ文章になりますね」と。教養人を気どるのでなく、正確に意見を伝えるための教科
書として本記事を読みました。そう言えば英語の場合でも、割と書き言葉的に話します。これでヨ
シ!って気分です。ともあれ、本稿は日英語共通の教訓足り得ます。
No.1(1-300) No.2(301-400) No.3(401-500)
No.4(501-700)
No.5(701-900)
No.8(1101-1300) No.9(1301-1500) No.10(1501-1700)
-4-
No.7(996-1100)
No.11(1701-1900)
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