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水政策研究 - 株式会社建設技術研究所

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水政策研究 - 株式会社建設技術研究所
水政策研究
Research report of a world water policy
伊藤 一正 *1
Kazumasa
ITO
本論文は、世界の主要な国別・機関別の水に関する政策を調査し、21 世紀の水問題を概観するとと
もに、日本が世界の水問題にどのように貢献できるか、特に建設コンサルタントは世界の水問題の解
決に何ができるか提案したものである。21 世紀は水の世紀と言われ、多くの識者は、各国が安定的に
成立するためには如何にして水を確保できるかが最大の課題であるとも言われている。衛生を確保す
るための水、食料を確保するための水などを含めて、水に関する正しい知識の共有のあり方を示した
ものである。
キーワード:水政策、地球温暖化、仮想水、水配分、統合的水資源管理、衛生と水、食料と水
1.研究の背景と目的
現在、世界では6人に1人、すなわち10億人以
上が十分に安全な淡水を手に入れられずに生活し
ている。国連の発表データによれば 2025 年までに
全世界の半分以上の国で必要量が使用可能量を超
過する完全な水不足になり、2050 年までには世界
人口の3/4が淡水不足に直面する可能性がある
という(世界水発展報告書、第 1 版「Water for
People, Water for Life(人類のための水、生命の
た め の 水 )」、 第 2 版 「 Water, a shared
responsibility」)。*1)
水不足の原因は、世界人口の増加、さらには人々
がより経済的に豊かになり、需要量が増大すること
と、地球の気候変動に伴い乾燥化が進み、多くの地
域で水供給量が低下することである。
地球表面への降水量は年間 12 万 km3 である(表
-1、平成 18 年版水資源白書。世界平均降水量
880mm に面積 133,935 千 km2 を乗じて求めた値)。
この値は世界の水需要量 3,570km3(1995 年、世
界水ビジョンより)に対して十分であり、必要とさ
れる場所と時間に行き渡れば、十分に満たされる量
に見えるが、大半の水は捕捉できないし、捕捉でき
た水の配分には偏りがある。*2)
トとして、何をなすべきか、その取り組み策の考え
を示したものである。将来の日本の水政策を考える
上での基礎情報をレビューし、今後の研究の内容・
方法を提案する。
表-1世界の水資源
水の需要は人口やその増加率だけでなく、所得水
準の改善によっても上昇する傾向があると言われ
ている。裕福な地域、特に都市部や工業地帯では多
量の水が消費され、豊かな生活には汚水処理や集約
的な農業灌漑が必要となる。特にアジアやアフリカ
の人口密度の高い国では水の需要量が急激に増大
している。地域の構造、都市の構造が水需要量に大
きく影響を与える。
このような背景のもと、水危機、水の統合的管理、
水戦争、水利用など水をめぐる話題が、学術、行政、
水ビジネスなど様々な分野で将来政策が議論され
ている。
ここでは、資源としての水の実態を共有し、安全
で安心な世界を構築するために、建設コンサルタン
*1
国土文化研究所
企画室
国 名
カナダ
ニュージーランド
ノルウェー
ブラジル
ロシア
オーストラリア
アルゼンチン
スウェーデン
アイルランド
インドネシア
アメリカ
ハンガリー
オーストリア
ルーマニア
世界
スイス
カザフスタン
タイ
フィリピン
オランダ
メキシコ
トルコ
フランス
日本
国 名
カナダ
ニュージーランド
ノルウェー
ブラジル
ロシア
オーストラリア
アルゼンチン
スウェーデン
アイルランド
インドネシア
アメリカ
ハンガリー
オーストリア
ルーマニア
世界
スイス
カザフスタン
タイ
フィリピン
オランダ
メキシコ
トルコ
フランス
日本
①面積
(千km2)
②人口
(千人)
③平均降水量
(mm/年)
9,985
31,792
271
3,932
324
4,570
8,515 182,798
17,098 141,553
7,741
20,092
2,780
39,311
450
8,895
70
4,040
1,905 225,313
9,629 300,038
93
9,784
84
8,120
238
22,228
133,972 6,455,554
41
7,157
2,725
15,364
513
64,081
300
82,809
42
16,300
1,958 106,385
784
73,302
552
60,711
378 126,926
⑤1人当たり
⑥水資源
年降水総量
量
(=④÷②)
(km3/年)
(m3/人・年)
167,702
2,902
119,165
327
100,174
382
83,007
8,233
55,564
4,507
205,744
492
41,800
814
31,589
174
19,446
52
22,840
2,838
22,946
3,051
5,600
104
11,465
78
6,832
212
16,758
55,255
8,865
54
44,339
110
12,988
410
8,506
479
1,982
91
13,842
457
6,339
214
7,876
204
5,114
424
Research Center for Sustainable Communities, Research Planning Section
- 11 -
537
1,732
1,414
1,782
460
534
591
624
1,118
2,702
715
589
1,110
637
807
1,537
250
1,622
2,348
778
752
593
867
1,718
④年降水総量
(=①×②)
(km3/年)
5,362
469
458
15,174
7,865
4,134
1,643
281
79
5,146
6,885
55
93
152
108,179
63
681
832
704
32
1,473
465
478
649
⑦1人当たり
水資源量
(=⑥÷②)
(m3/人・年)
90,767
83,164
83,589
45,039
31,841
24,487
20,707
19,562
12,871
12,596
10,169
10,630
9,569
9,534
8,559
7,475
7,134
6,397
5,784
5,583
4,298
2,913
3,355
3,337
世界水発展報告書は、世界の水資源の全体像を把
握するために国連環境計画や国連人間居住委員会
など 23 の国連機関と、国連条約事務局が作成した
報告書であり、第 3 回世界水フォーラムに合わせ
て 2003 年 3 月に発表された。
世界水発展報告書では「生命と福祉」「管理上の課
題」を 2 大テーマとし、11 の課題について現状と
解決策などを紹介している。
3
億m /年
オーストラリア・
オセアニア
60,000
50,000
40,000
オーストラリア・オセアニア
アフリカ
ヨーロッパ
南アメリカ
北アメリカ
アジア
36,790
アフリカ
50,310
南アメリカ
ヨーロッパ
北アメリカ
30,000
20,000
13,590
アジア
10,000
0
1950
1995
2025
図-1世界の水需要
国土交通省「平成 19 年版日本の水資源」ほかより作成
2.世界各国機関の水政策
21世紀の水に関する予測は世界の様々な水関
連機関により公表されている。ここでは、
その中でもっとも基本となる国連の世界水発展報
告書 1)、欧州連合での水政策報告について見てみる。
(1)世界の認識
1970 年代後半から、経済の成長が地球の環境に
様々な影響を与える事が認識され始め、経済の成長
と社会の発展の調和をいかにもたらすかが議論さ
れ始めた。そのような中で、1987 年に、国連が後
援したブルントラント委員会(環境と開発に関する
世界委員会)の報告書「地球の未来を守るために」
において、「将来世代の欲求を満たしつつ、現代世
代の欲求をも満たすような発展」として、初めて「持
続可能な開発」が定義された。
この、地球の持続可能な開発のための最優先目標
は貧困の撲滅であり、もっとも本質的な要件であり、
適切に管理された水を貧困層が容易に得られれば、
貧困の撲滅に大きく寄与することができる事が認
識されるようになった。具体的には、地球の持続的
発展に水管理が不可欠であること、それには飲料水
を確保することと、良質な水を得られるように衛生
を確保することに集約される。
このような認識のもと、1992 年の国連環境開発
会議(UNCED)においてアジェンダ 21 が採択さ
れ、淡水に関する七つの行動プログラムが提案され、
水管理の実践開始が始まった。そして、2000 年国
連サミットで 2015 年に向けた貧困・教育・健康に
注目したミレニアム開発目標が設定され、もっとも
基本的な資源とは水およびエネルギーであること
を国連は認識した。
(2) 世界水発展報告書
①生命と福祉に関する課題について
課題 1 基本的ニーズと健康に対する権利
課題 2 人類および地球のための生態系の保護
課題 3 都市 ̶ 都市環境において競合するニーズ
課題 4 増大する世界人口に対する食糧確保
課題 5 すべての人の便益のため、よりクリーンな
工業の奨励
課題 6 開発需要に見合うエネルギーの開発
②管理上の課題 ̶ 管理と統治について
課題 7 リスクの軽減および不確実性への対処
課題 8 水の分配 ̶ 共通の利益の明確化
課題 9 水の多面性の認識および価値評価
課題 10 知識ベースの確立 ̶ 共同責任
課題 11 持続可能な開発のための賢明な水管理
報告書では、水危機が人類の生存および地球環境
の存続の核心である事を示している。
そして、2002 年の持続可能な開発に関する世界
首脳会議(WSSD)でコフィ・アナン国連事務総長
は持続可能な開発のための首尾一貫した国際的取
組みとして WEHAB(上下水道設備、エネルギー、
健康、農業、生物多様性)を提起した。各分野を成
功に導くには、水が不可欠で、この世界首脳会議
(WSSD)で、下水道設備を利用できない人の割合
を 2015 年までに半減させるという目標が追加され
た。
(3)欧州連合水政策枠組指令(Water Framework
Directive、欧州内法律)
欧州連合は「共同体の水政策の行動に関する枠組
を定める指令」(Directive 2000/60/EC)として、欧
州連合圏内の水資源(表流水、河口水、沿岸水、地
下水)を保全するために統一的な水管理を行うこと
を目的に 2000 年 10 月に採択施行され、加盟国に
以下を課している。
■ 2003 年に河川を中心とした集水域管理区を設定
し,管理区ごとに管理所管組織を指定する。
■ 2004 年に集水域管理区内の水質状況や汚染原因
の把握と経済分析に着手する。
- 12 -
■ 2006
年にモニタリングネットワークを設置し,
遅くとも 2006 年中に関係情報と見解を開示して住
民を含む関係者の意見を求める。
■ 2008 年に集水域管理区ごとに管理プラン案を策
定し,2009 年に管理プランを確定する。
■ 経済分析と汚染者負担原則を踏まえて,水質浄
化・維持に要するコストを回収できる水利用価格を
2010 年までに導入する。
■遅くとも 2012 年までに 2021 年までの第 1 期対
策プログラムを実施する。この中で表流水について
は 2015 年までに目標を達成する。
■ 目標が達成できない場合には,2027 年を最終達
成期限とする第 2 期対策プログラムを実施する。
欧州連合は 1973 年以降、水質保全のために様々
な規制やルールが設けられたが、政策が細分化され
すぎて実効が伴わないという反省から、本指令にて
全体的、統一的アプローチで管理するという方式に
改められた。このため、地表水と地下水を対象とし
て、河川を行政的、政治的境界で区切らず流域を管
理対象にしているなどの特徴があり、すべての水系
を 2015 年までに良好な水質状態にするとの目標を
掲げている。
図-2事業者別水道料金
(家庭用料金、20m3/月使用時)
出典:(社)日本水道協会
図-3
3.21 世紀水問題とは
2025 年までに全世界の半分以上の国々で淡水資
源が逼迫し、2050 年には世界人口の3/4が淡水
不足に直面する可能性があるという。
今後水不足はますます拡大すると予測されてお
り、その要因は人口増加による食糧増加と経済成長
に伴う水需要の拡大、さらには地球の気候変動によ
る水資源量の低減とにあるとも。しかしながら、地
球全体での水供給能力は予想される水需要量に対
して、まだ十分に能力を有していると見られるが、
地理的な条件、季節的な変動などを含む水配分の問
題において多くの課題のあることも実際である。
日本をはじめ、先進各国の水価格を比べると図-
2のとおりとなる。日本の水道料金は全国平均でお
よそ 2,000~3,000 円/m3・月である。世界と比較す
ると、20m3 を使用した場合、東京都では、約 2,500
円、ニューヨーク 1,500 円、ロンドン 4,700 円、パ
リ 4,300 円、ベルリン 6,900 円に比べて安価なほう
である。ハーバード大学の Peter Rogers 教授の調
査では 2000 年から 2050 年の世界全体での水需要
は、所得に占める水費用の割合が変化しない場合は
1.5 倍であるが、低所得者層の収入が現在の中所得
層まで上昇すると 3 倍近くまで増大する結果を示
している 5)。つまり、水価格が所得に比して低下す
ると需要が増大すると読み取れる。
世界各都市の水道料金比較
(家庭用で 20m3/月使用時。各市の水道事業
者の価格表から推計)
水問題における経済と所得の面を考えると、家庭
や企業に水の節約を促すような合理的な価格決定
方法が必要であることが推察される。
また、世界の水使用量の70%は農業用水、工業
用水が20%、生活用水が10%である(水資源白
書)。つまり、食料生産に世界の水の70%が用い
られており、この面が、まさに今後の人口増加と水
資源逼迫の関係を明示している。日本を見ると、食
料自給率はカロリーベースで39%しかないこと
を農水省統計は示している(2006 年)。つまり、6
0%は世界各国からの輸入によることとなり、その
ための外国での水不足が日本の食糧不足に影響す
る構造となっている。この点は、すでに仮想水の輸
入と言うことで議論され、日本での年間の農業用水
使用量でみると、農業用水 570 億 m3 の需要量に対
して、仮想水で 640 億 m3 が輸入されているという
試算がある(水資源白書)。もちろん、仮想水の概
念から世界の水不足が日本の食糧確保に直結する
と結論付けられる訳ではない。しかし、日本の食料
構造に海外の水事情が大きく影響していることは
事実である。つまり、21世紀の水問題は、すでに
地域の特徴(降水量の多寡等)を超越し、経済原理
- 13 -
に則った水バランスの問題となりつつあるといえ
る。
日本では様々な給水施設や水資源インフラが整
備され、水不足を実感することはほとんどない。そ
のため、一般には今後、如何にして持続的に水を確
保してゆくかという認識が少ない。しかし、世界は
1.や2.で見たように、3/4が淡水不足に直面
し、それは間接的に日本の食糧供給にも影響を与え
るという事実がある。
日本での課題を見ると、このような安定した水需
給システムの整備の影に既存施設の老朽化が将来
の課題となっており、現在の水コストの継続を考え
た場合は、米国と同じように給水施設が「壊れたら
直す」と言う対応しかできない状況に陥りかねない。
現在の水コストが本来の供給システムを成立させ
る構造になっていないからである。
4.日本の貢献
(1)世界をリードする日本の水要素技術
日本では過去、水資源確保に向けて多くの技術開
発が進められた。効率よい水供給システムを確立す
るための高度な漏水防止技術、節水技術、浄化技術
など、世界の最先端を誇る技術である。世界の水需
要の70%を占める農業用水に給水施設の漏水防
止をはじめ、点滴栽培に見られるような高度にシス
テム化された農業技術の適用などにより、仮に1
0%の節水が達成できるだけで、世界の水需要量増
分の大部分を確保可能となる。一方生活用水の利用
面では、水使用量の少ない衛生設備の投入が、水使
用量を少なくし、また、結果として、衛生問題の改
善となり、水質改善につながることとなる。日本で
は既にバイオトイレなどの開発に成功しており、そ
の普及が水の衛生問題を解決するとともに、水資源
確保にもつながる。また、エネルギー効率の高い洗
濯機や再生水利用、中水道技術、節水型シャワーの
利用など、生活そのものを節水型とする仕組みなど
があげられる。そして、高度な水処理技術は海水の
淡水化や循環再利用を組み入れた水システムなど、
次世代の水問題を解決しうるものであり、その多く
は、日本の技術を背景に、既に実用化済である。
(2)日本政府の取り組み
日本政府は「日本と国際社会の持続可能な未来に
向けて」として、分野横断型の政策提言機関である
「水の安全保障戦略機構(仮称)」を内閣総理大臣
の下に超党派で設ける流れが出来ている(2009 年 1
月 30 日設立)。ここでは、テーマ、分野を各省庁横
断型として、水分野の日本の技術を国内および国際
社会に展開する方針で、JICAには「水の防衛隊」
が組織され、日本国内の民間企業、NPO・NGO・
市民団体、経済団体、学会、政府機関などの取り組
みをシステムとして国際展開する仕組みを設ける
こととなる。既に各省庁の予算案を集約する形で
21 年度の「水の安全保障関連予算(案)」がまとめ
られており、関連予算総額で 2 時補正を含み 2,671
億円が計上された。そのうち水資源確保・水運営・
エネルギーに 1,050 億円、食糧自給のための水に
550 億円、水の安全保障の国際貢献に 81 億円が計
上され、586 億円の新規予算が割り振られており、
水ビジネスに政府として取り組む姿勢が明らかと
なっている。
5.建設コンサルタントとして
21世紀の水問題に関する課題と解決技術とし
て、
(1)経済概念の導入。水コストの再構築。
(2)
農業用水の効率的利用。(3)節水型水利用。(4)
高度な水処理技術などが上げられ、これらはいずれ
も日本の高度水技術として世界に発信可能なもの
である。
シンガポール政府は国を挙げて水ビジネスに取
り組み、自国の水資源開発を行う(高度水処理技術
を用いた海水淡水化、NEW WATER 開発など)とと
もに、これらの水処理技術を組み合わせたシステム
を新規の水資源開発システムとして国外への展開
を計画している。日本も、わが国の水技術を集約し、
システムとしてのビジネスを確立すべき時代に入
ってきている。
日本は海水淡水化技術において、逆浸透膜の技術
で世界の60%のシェアを誇っているが、海水淡水
化のシステムとしてのシェアは少ないという。4.
であげた各要素技術そのものも同じ状況といえる。
各部品については世界最先端で、高い信頼性を持っ
ているにもかかわらず、システムとしてのインフラ
の提供に結びついていない。これは、まさに建設コ
ンサルタントの役割であろう。21世紀の世界の水
危機にシステムとしての対応を提案できる立場に
あるといってよいであろう。ただし、エンジニアリ
ングに頼って、水資源(水供給量)を増やすことで、
すべての物事が解決できるとは思わない。雨水の有
効な利用や少ない資源の中で如何に効率よく水を
リサイクルさせるか、まさに人間活動も含めた自然
界の水循環の見直しである。社会の仕組みに対応し
て、技術を背景としたエンジニアリングを組み込ん
だ水システムが21世紀の水問題解決の仕組みで
ある。
2025 年、水ビジネスの規模は 100 兆円を超える
と言う(図-4、経済産業省、平成 20 年 7 月、我
が国水ビジネス・水関連技術の国際展開に向けて)。
その大部分は、事業運営管理で 100 兆円であり、ほ
- 14 -
かに素材供給が1兆円、エンジニアリング・調達・
建設で 10 兆円である。まさに、今、日本の基本技
術(素材供給技術)を運営管理へのシステム技術と
して提供できる体制が不可欠である。
市場規模
市場規模
営業・情報
対象国・地域とのネットワーク
契約
長期契約(含むリスクヘッジ)ノウハウ
資金調達
大量資金調達(含む金融技術)ノウハウ
事業経営
1 兆円
10 兆円
100 兆円
キーデバイス
膜濾過、オゾン処理等
プラント建設
パイプ、ポンプ調達等
運転管理
日常管理
メンテナンス
緊急時対応、リスクヘッジ
顧客管理
料金徴収、クレーム対応等
コストダウン
漏水対策、運転方法等
補修・更新
軽補修~大規模更新
契約
日系
優勢
資金調達
(特に膜)
・・・
日系も弱くはない。
事業者次第?
欧州系優勢
事業者:ヴァオリア、スエズ
O&M:デグレモン’(スエズ)
ジャパンウォーター(三菱商事)
営業・情報
図-4
図-5
世界の水ビジネス規模
水の安全保障戦略機構(仮称)
2008 年 12 月に、新たな枠組みとして、水の安全
保障戦略機構が設置されることとなった。
そのなかでは、これまでの国土交通省、環境省、
厚生省、農水省などの縦割り行政に応じた水技術や
ビジネスなどの壁が取り除かれる可能性があり、要
素としての色彩の濃かった技術をシステムとして提
- 15 -
9)世界のよりよい明日のために,独立行政法人国際
協力機構,2005 年 7 月
10)平成 20 年版 日本の水資源,国土交通省水資源
局,2008 年 8 月
11) 経済産業省、平成 2 年 7 月、我が国水ビジネス・
水関連技術の国際展開に向けて
12)迫りくる水危機、日経サイセンス、2008 年 11
月
13)蔵治光一郎、水をめぐるガバナンス、未来を拓
く人文・社会学5、東信堂 2008 年1月
14) クリストファー・フレイヴィン編著:地球白書
2007-2008,ワールドウオッチジャパン,2007,11
15) 地球温暖化時代における水文・水資源と」水管理
~我々は如何に立ち向かうのか~:第 6 回水
文・水資源学会セミナー,2008,7
16) クリストファー・フレイヴィン編著:地球環境
データブック 2007-08, ワールドウオッチジャ
パン,2007,11
17)レスターブラウン:フードセキュリティ誰が世
界を養うのか, ワールドウオッチジャパ
ン,2005,4
18) レスターブラウン:プランB2.0 エコ・エコノ
ミーを目指して, ワールドウオッチジャパ
ン,2006,11
19) Regional Document Asia-Pacific:
Mexico2006 4thWorldWater Forum, Japan Water
Forum
20) Thematic Documents Local Actions for a
Global Challenge: Mexico2006 4thWorldWater
Forum
供できる場の得られる可能性があり、要素としての
色彩の濃かった技術をシステムとして提供できる場
の得られる可能性が高まることとなる。
われわれにとって、真にコンサルタントとしてア
イディアを提案できる場が出来てくる。
6.まとめ
21世紀は水の世紀といわれ、水戦争、水争い、
水ガバナンスなど水に関る技術論争とともに政策に
関る論争も数多く提案されている。本論文では、建
設コンサルタントが将来の水問題、水政策にどのよ
うな役割を果たせるか、現在の世界的な情勢、日本
の技術、各界での議論等を基に整理した。
世界では、水は需要量を満たしうるだけの量が十
分に確保可能であるが、必要な所に必要な時期に必
要な分を供給するシステムが十分でない。特に、こ
れまで見落としがちであった経済との関係、水コス
トの評価が不十分であること、水コストの概念を導
入することにより安全な水システムが確立可能であ
ること。それが、新たな水ビジネスの成立を促すで
あろう事も想像できる。2025年には世界の水市
場は110兆円といわれている。それは、あくまで
もこれらの水コストの概念の確立が前提となろう。
建設コンサルタントの役割は、社会システムのなか
に、水システムを如何に組み込むか、日本の水技術
を組み合わせて次世代の安全・安心で健康な社会の
基本をつくる事である。そのために、水に関する技
術や知識を社会共通の認識にすることが必要で、そ
のことが節水型社会の基礎になり、効率的な農業用
水社会の基盤になる。
今後、水ビジネスに関る国内外の基礎技術、国内
外の水に関る社会システム、水に関る政策や各分野
の取り組みを集約し 21 世紀型水社会のあり方、水社
会システムの提案がこれからのコンサルタントの使
命になるであろう。
参考資料
1)世界水発展報告書、第 1 版「Water for People,
Water for Life(人類のための水、生命のための
水)
」、第2版「Water, a shared responsibility」
2)Fred Pearce,水の未来,2008 年7月,日経 BP 社
3)蔵治光一郎,水をめぐるガバナンス,2008 年1月,
東信堂
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