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映像マネジメント3 文化の多様性、番組編成
2015/5/1 映像マネジメント 第4回:デジタル技術と コンテンツの多様性 2015.5.1 大学院映像研究科 宿南達志郎 Textbook • 半澤誠司 「第3章 デジタル技術の発展はコ ンテンツ多様性への福音か?ーアニメ産業 における産業構造変化とデジタル化の関係 性ー」 – 明治学院大学社会学部准教授(2012‐) – 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、 博士(学術) 1 2015/5/1 1.はじめに デジタル技術の発展とビジネスモデルの変容 これまでのコ ンテンツ 高度な映像技 術 大規模コンテ ンツ ↑ 二極化 ↓ 中規模コンテ ンツ? 市民への技術 拡散 小規模コンテ ンツ 2.アニメ制作工程のデジタル化 • アナログ工程のままコンピュータ化 – デジタルアニメの範疇 • 企画→絵コンテ→原画までは、同様 • 仕上げ工程で、「トレス」が「スキャニング」に • 特殊効果も特殊機材からコンピュータに一体 化 • 撮影→ノンリニア編集→ビデオ編集という工 程に 「仕上げ」以降の工程で、ほぼコンピュータ上での作業に 2 2015/5/1 3.「アニメバブル」と海外外注の拡大 • (1)バブル期まで(2000‐2006) – 深夜放送で認知度向上を図り、DVDで回収 – 海外外注の急増、作品の質の低下 • 悪い労働環境の影響で、熟練するまでに転 職する傾向 – 能力不足でも、原画マンや監督に – 更に質が低下 • (2)バブル期後 • 海外発注に偏重、しかし国内も人材不足 – 8割の動画発注→仕上げも含め8割に • 垂直分業型産業構造の崩壊 – 労働環境の改善提言の前提が崩れた 3 2015/5/1 4.動画工程と仕上げ工程の 作業効率格差 • (1)仕上げ工程・・・収益向上と淘汰 • 生産性向上(20‐30枚/日/人→100枚) • しかし、国内の業務縮小により、仕上げ会社 は2社に集約(=大規模化で生き残り) • (2)動画工程・・・苦境 • 生産性の低下 – 20‐30枚/日→15枚/日 – 仕上げとの格差:ほぼ同等→6‐8倍に • 動画マンの賃下げはできないので、教育投資と 位置付け • 必要経費(1枚400円)を明記できない苦悩 – 元請けも下請けになる場合もある(複雑な取引関係) • 外注時に400円支払わざるをえなくなる 4 2015/5/1 • 客層がこどもから青年や成人に移行 – 画質にうるさい – [例] ガンダムは200枚、こども向けは500枚可能 • デジタル化による工程増 – 下書き線が入れられない – 影は裏から塗る必要あり 5.内製工程の強化 • (1)専門会社の存立基盤脆弱化 • 元請けの内製化拡大 – コストと品質管理(出来栄え確認など) • 仕上げ、撮影、編集などの専門会社が存続 の危機 • 発端は制作スケジュールの混乱(2000)か ら? 5 2015/5/1 • 制作スケジュール混乱の原因1 – 海外外注(動画と仕上げ、中韓) • 出来栄えは良くないが速い – かけもち受注=特定作家に集中(二極化) – 細切れ化 • 制作スケジュール混乱の原因2 – 放送局やスポンサーの無理なスケジューリング – 修正要求の増大 • 作画会社への発注減 – 作画会社や、作画監督+原画マン+動画マン – 元請けは部分発注したいが、作画会社はまとめ 受注したい。・・・需給ギャップ 6 2015/5/1 • (2)グロス請け会社の増加 • 専門会社からグロス請け会社への脱皮 – [例] 仕上げ会社→作画工程も – 背景会社は現時点では従来通り • 元請け発注パターンの変化 – バブル時:5‐6本のうち3‐4本はグロス発注、2本は直 営 • グロス請けによる創意工夫で利益増 – バブル後:元請け会社が直営比率を高めた • グロス請けの減少、倒産。(=グロスのリスクも高い) 6.おわりに 中規模コンテンツの存続可能性 • (1)アニメ産業への影響 • 変化 ① DVD市場(映像品質の向上)への対応 ② 表現の高度化を可能にする技術革新 ③ 高価な専門機材から低廉なコンピュータへ • 消費者の期待がアップし、費用削減効果よ りも制作費用(期間 x 人数)増がより大 • アニメ産業はクリエーターの犠牲により費用 の増大を抑えている(一部改善の動きも) 7 2015/5/1 • (2)プラットフォームの多様化 • 合併や垂直統合(大企業傘下入り)によって 規模の拡大 – 資金繰りの安定 – 原作や流通経路の確保 • テレビ局からの制作費に上限あり – 多様性(中規模コンテンツ)の維持に貢献? – or 類似品の濫造=創造性への悪影響? • 結論は?? – プラット―フォームの多様化 – デジタル化経費負担を分散化する仕組み 8 2015/5/1 Intermission • ところで、日本のアニメは、 A) やっぱり凄い? B) もうダメだ? C) どちらとも言えない? 「凄い」論 • 日本のアニメは海外のテレビ局でもシェアが高 い(1時は75%?)。 • ポケモンやキャプテン翼は世界的に有名だ。 • 宮崎駿はアカデミー賞受賞している。 • こども向けだけでなく青年や成人向けのアニメも 多い。 • 3DCGには日本の手書きデジタルの味は出ない。 • アニメやマンガで日本にあこがれる外国人が多 い。 • (たぶん)興行成績も悪くない(はず)。 9 2015/5/1 「オワコン」論 • 作り過ぎで品質の劣化が激しい。 • 海外に輸出することが難しい(こども向けでないもの 多い)。 • 日本のクリエーターを育成する仕組みがますます縮 小している。 • Cool Japanとか自画自賛しているが、一部の放送局や プロダクションが潤うだけだ。 • 一部のオタクが限定盤と称する高価な全巻DVD/BDを 買っているだけ。 – 25時とか26時とかまともな人が観る時間帯にテレビ放送 されていない。 • ジブリの終わりは、日本のアニメの終わりの始まりだ。 – 「トイストーリー3」も「アナ」も大ヒットした。 ヤングアダルト向けは作り過ぎ 9 350 8 300 7 250 海外売上 5 200 (億円) 4 150 キッズ向け 100 (万分) 50 ファン向け 0 (万分) 6 3 2 1 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 0 10 2015/5/1 Textbook2 • 浅井澄子『コンテンツの多様性ー多様な 情報に接しているのか』白桃書房、2013. – 明治大学政治経済学部教授(2012‐) – 博士(公共政策) • 「第2章 データでみる番組編成の変化とその 要因」(pp50‐77) 1.はじめに ① 番組ジャンルの多様性の計測(1987‐2010) ② 番組編成と多様性の変化をもたらした要因 の考察 – 番組制作費用の削減は、(1)効率的な番組制 作、and/or (2)制作費用の安い番組ジャンルへ のシフトを起こす。 – 但し、番組編成の変更は視聴者の嗜好の変化 に起因する可能性もあることから、どちらが原因 なのか検証する必要がある。 11 2015/5/1 2.想定される番組編成の変化要因 • (1)放送局の経営状況 – 図2‐1:キー局の経営状況は、1992‐93年度およ び2000年代後半は厳しかった。 • (2)番組制作費用と経営状況との関係 – 日本テレビ:α2は5%の水準で正の値 – TBS:α2は1%の水準で正の値 – 営業利益の増加は番組制作費用の増加をもたら す。 – 番組制作費用の増加が営業利益の増加をもたら す仮説は採択されず。 12 2015/5/1 • (3)ジャンル別番組制作費用(NHKの場合) – 放送時間1%あたりの制作費用の大小 – 教育(最小)=1 – ドラマ(最大)=5.11 – ニュース・報道=3.62 – バラエティ=3.17 – 情報・ドキュメンタリー=2.74 • (4)視聴率調査方法の変化 – 1997年に機械式個人視聴率調査開始 • それまでは世帯視聴率のみ – 20代にバラエティが支持され、高年齢層にニュー スが支持される傾向が明らかになった。 – 広告主も購買意欲が旺盛な年代を対象とするよ う放送局に求めるようになったのではないか。 13 2015/5/1 • (5)産業構造からみた番組編成の変化要因 – 視聴率の上昇は次の番組編成に影響を与える はず。 – 1997年に導入された個人視聴率測定の影響は 1998年以降に起きたかどうか検証する。 3.ジャンル別放送時間と視聴率 • (1)ジャンル別放送時間の変化 – 表2‐3:「一般実用」と「芸能」の2ジャンルで過半 • 他のジャンルの減少分がこの2ジャンルに • 終日もプライムタイムも同じ傾向 – 図2‐3:ドラマの放送時間の減少率は、プライムタ イムの方が大きい • 終日の減少率が低いのは、再放送が多い影響 14 2015/5/1 • (2)ジャンル別視聴率の変化 – 表2‐4:視聴率合計は大幅に減少 • 終日:124%→86%、プライム:181%→139% • 若年層を中心に地上波テレビ視聴行動が減っ た – 番組ジャンル間の視聴率のばらつきは小 さい • 終日、プライムタイムともに • (3)放送時間比率と視聴率比率 – 図2‐4:「一般実用」放送時間の増加は視聴者の 嗜好の変化への対応ではない。 – 図2‐5:「芸能」の放送時間の増加も視聴者の嗜 好の高まりによるものではない。 – 図2‐6:「一般劇」の嗜好の低下が放送時間の減 少を招いたわけではない。 – 図2‐7、2‐8:番組編成で「芸能」の比重が高まって いる。 15 2015/5/1 4.番組編成の変化要因の考察 • Van Cuilenburg:競争導入後に多様性が低下 • 放送局の番組ジャンル選択は以下の要因 – 視聴者の嗜好、番組制作費用、広告主の意向、放送 法106条(番組編成のバランス) – 一般の市場のように価格メカニズムを通して需給均 衡するわけではない。 • 番組ジャンル間の制作費用の差異が影響した。 – 制作費用の減少は、番組編成にも影響を及ぼした。 今週の課題 • 今日の2つのテーマから一つを選択して 400字程度で論じて下さい。 – ①「アニメの多様性」 – ②「放送番組の多様性」 16