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クラス図書館員: 図書館サービスに親しみやすい顔をもたせる
クラス図書館員: 図書館サービスに親しみやすい顔をもたせる The class librarian: Putting a friendly face on library service の翻訳 C&RL News, July/August 2007, Vol. 68, No. 7 レベッカ・スターキー(Rebecca Starkey)、バーバラ・カーン(Barbara Kern) 今日の広大な情報世界を使いこなすことはおそらく大変なことである。シカゴ大学のような大規模研究大学に通 う学部学生には特に困難に思われるかもしれない。シカゴ大学のカレッジに入学する者は毎年増加を続けてい るが、依然として全学生のおよそ 2/3 は大学院生と専門職大学院生が占めている。そのため、図書館は主に大 学院生や教員の研究ニーズに奉仕し支援するよう設計されている。コレクションの規模や図書館の組織構造を 前に新入生は怖気づくかもしれない。大学院生や教員であれば何百万冊もの蔵書を閲覧できるということに喜 びを感じるだろうが、多くの学部学生は論文執筆に使用する数冊の本を見つけることだけでも圧倒感や苛立ち を感じてしまうだろう。 クラス図書館員のウェブサイトは www.lib.uchicago.edu/classlibrarians で見ることができる このような環境で学部学生により良いサービスを提供するために、シカゴ大学図書館は学部学生の図書館エク スペリエンスを向上させることを目的とした委員会を発足した。この委員会(CIAO: College Instruction and Outreach)は、学内各図書館の参考図書館員とビブリオグラファーで構成されている。CIAO が直面した主な課 題の 1 つは学部学生の図書館への不安をいかに軽減するかであった。たとえ、図書館が手を差し伸べても、多 くの場合、学生は職員に助けを求めることを嫌がることが分かった。シカゴ大学の学部カリキュラムでは最初の数 年は研究に重点を置いていない。そのため、各専門分野の教育はほとんど、3 年生や 4 年生が受ける上級クラ スで行われるが、この図書館を利用し始める頃に学生が正式な図書館利用教育を受けることはほとんどない。 新入生向けの必須の図書館オリエンテーションもない。図書館利用教育の機会は義務化されていないので、学 生は図書館員との出会いという大規模研究図書館を使いこなす上で欠かせない重要なコネクションを作れてい ない可能性があることが分かった。学生が早い機会に図書館員との関係を深め、気軽に援助を求められるように するにはどうしたら良いのか。その答えがクラス図書館員プログラム(Class Librarians Program)であった。1 プログラムの起源 クラス図書館員プログラムは、大学に在籍する全期間にわたって図書館員が学部学生と関係を持つ方法として 2002 年に制定された。このプログラムは現在シカゴ大学図書館で実施されている大学院生と教員に対するリエ ゾンモデルの成功に由来する。 シカゴ大学図書館には、コレクション形成に責任を持ち、各自の主題分野に関する参考業務や指導サービスを 行うことにより、教員と大学院生の研究を支援するビブリオグラファーが 30 名以上いる。新大学院生はキャンパ スに着くとすぐに担当のビブリオグラファーが紹介され、多くの場合博士号取得後にも続く担当図書館員との関 係を築く機会が与えられる。 クラス図書館員プログラムは同等な関係を学部学生に提供するものである。各学年に一人、シカゴ大学図書館 への連絡窓口となる図書館員が任命される。クラス図書館員は自発的に 4 年間にわたって担任クラスに奉仕す るので、学生はシカゴ大学に在学中、常に同じ人に質問ができることになる。 クラス図書館員に会う クラス図書館員は様々な方法で学生に「紹介」される。1 年生は入学前の夏に配布されるオリエンテーション資 料の 1 つとしてクラス図書館員から歓迎書簡を受け取る。まだ自宅にいる段階ですでに、新入生はワークスタ ディの口や図書館利用教育の開催など、気になることについてクラス図書館員に連絡を取ることができる。 キャンパスに到着すると、秋期オリエンテーション期間中に図書館が開催するワークショップやツアーの間に学 生はクラス図書館員と直接会う機会を持つことができる。 20008 年度のクラス図書館員への連絡フォーム 電子メールやウェブページなどのインターネットサービスが学生とクラス図書館員の関係を構築するもう一つの 方法である。クラス図書館員のウェブサイトには各図書館員の写真と連絡先の他に、担当する学年の講義に関 する情報が含まれている。このサイトは、講義の各時点で必要となる様々な図書館資料や図書館サービスを学 生に案内するために定期的に更新される。たとえば、1 年生は講義指定資料に関する情報を見つけることがで き、3 年生は留学中の電子資料使用法に関する情報を入手できる。このような各学生向けにカスタマイズされた コンテンツは学生宛てのメールにも使用される。図書館員は大学のメーリングリストを使用することにより簡単に 担当するすべての学生にメールを送ることができる。およそ 3 ヶ月に一度、学生に図書館サービスを思い出させ たり、図書館の行事や研修会を通知したりするためにメールが送られる。たとえば、4 年生のクラス図書館員は、 卒論を作成する際には研究支援が受けられることを学生に次のように通知する。 こんにちは。そろそろ卒論について考え始めましたか? 資料の発見や(目録やデータベースの)検索 の方法、あるいは、どこから研究を始めたら良いかなど、何か助けが必要な場合はお知らせください。 連絡はメールや電話でもいいですし、もちろん直接会いに来ても構いません。 メールはリマインダーとして機能するだけでなく、気軽に質問をする機会を学生に提供することにもなる。「返信」 をクリックするだけで済むからである。「メールをもらえてちょうど良かった。研究を始めるにあたって『研究の方 法』をどうやって見つけるかがずっと悩みの種でした...」とある学生が書いているように、クラス図書館員が勧誘 メールを送ると、直ちに様々な話題に関する質問が学生から返されることがほとんどである。 クラス図書館員が質問に答えられない場合は適切な職員やビブリオグラファーに質問を転送する。たとえば、延 滞金に関する質問であれば、図書館の閲覧係に送られて対応されることになるだろう。この適切な職員への照 会は、学生が最高のサービスを受けられることを保証するだけでなく、援助してくれる様々な図書館職員がいる ことを学生に広く知らせることにもなる。 たとえば、公立学校における教員評価に関する論文を作成中の学生を支援したあるクラス図書館員は「でも、図 書館には教育学を専門とする図書館員がいます。面会を希望するなら手配します」と返事をした。この学生はそ れまで図書館に主題専門家がいることを知らなかったが、このメールのやり取りの結果、直ちに教育学担当のビ ブリオグラファーに研究に関する相談を依頼した。 ウェブ以外のリーチ法 クラス図書館員のアウトリーチはインターネットに留まらない。このプログラムは毎年作成される『大学図書館ガイ ド』に毎回大きく取り上げられ、様々な学生行事で配布されるしおりで宣伝される。スタディ・ブレイクや特殊コレ クション研究センターの展示会など、学部学生向けの図書館行事がクラス図書館員により毎年開催される。さら に、大学中にこのプログラムが認識されるように、クラス図書館員はキャリアセンターや学生アドバイザーなど大 学の様々な部署や管理者と会っている。 結論 全体的に見て、クラス図書館員プログラムに対する反応は非常に肯定的であった。2006 年 6 月に行われた卒 業生に対する調査では回答者の 89%が自分にクラス図書館員がいたことを知っていた。これらの学生のすべて が研究支援を求めてクラス図書館員に連絡を取ったわけではないが、我々はこのプログラムが学生にシカゴ大 学図書館とその図書館員を紹介する効果的で革新的な方法であったと確信している。ある卒業生の言葉を借り れば、「図書館とクラス図書館員は最高だ」。 我々は新たな学生へのリーチ法やプログラムの改良法を絶えず探している。2006 年秋には学生とコミュニケー ションを図るために Facebook とインスタントメッセージを使用し始めた。我々の希望は学生生活の早期にこれら の関係を築くことにより、学生が常に図書館員を情報源として考えるようになることである。そうなれば、大学院に 入っても、あるいは将来仕事についてもこの考えは続くはずである。 注記 1. このプログラムについてさらに知りたい場合は、www.lib.uchicago.edu/classlibrarians のシカゴ大学クラス図 書館員サイトにアクセスされたい。 レベッカ・スターキーはシカゴ大学図書館の参考図書館員であり、図書館利用教育サービスの専門家でもある (e-mail: [email protected],)。バーバラ・カーンは 2 人いるシカゴ大学図書館科学図書館部長の 1 人で あり、天文学、天体物理学、科学技術のビブリオグラファーでもある(e-mail: [email protected])。 ©2007 Rebecca Starkey and Barbar Kern