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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向 - Nomura Research Institute

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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向 - Nomura Research Institute
ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
野村総合研究所
情報技術調査室 副主任研究員
一瀬 寛英(いちのせ ひろひで)
情報技術調査室にて IT 動向の調査と分析を行う IT アナリスト。専門は、IP ネットワーク関
連技術。現在は主に、IP 電話/ IPv6 /情報家電に対する調査、分析に従事。
1.デジタルに移行する家電機器 ............................................................................... 14
2.デジタル情報家電の分類 ....................................................................................... 15
3.デジタル情報家電のネットワーク化の技術動向 ................................................ 16
4.注目技術の動向 ...................................................................................................... 20
5.企業向けサービスにおけるデジタル情報家電のコンテンツ視聴技術の提案 .. 26
6.終わりに .................................................................................................................. 33
要旨
ブロードバンド時代、IT 技術は、まず生活者向け市場で普及が始まり、実績が積まれ、企業向け市場で利用される
という流れになっている。今後はデジタル情報家電のネットワーク化に関する IT 技術が有力であると予想し、その動
向と今後の方向性を調査および検討した。その結果、デジタル情報家電のネットワーク化は、屋内 LAN で閉じた A/V
ネットワークの利用から普及が始まり、遠隔地からのデジタル情報家電の利用が実用化され、最終的には電子タグとの
連携といったユビキタスネットワークとの融合といった方向性であることがわかった。注目技術としてデジタル情報家
電のコンテンツ視聴技術を取り上げ、さらに、企業向けサービスの提案として、e ラーニングや IP カメラで撮影した映
像といったエンタープライズコンテンツに対する適用を検討した。
キーワード: デジタル情報家電、ブロードバンド、ユビキタスネットワーク、A/V ネットワーク、DLNA、コンテンツ視聴技術、
SIP
In this broadband era, Information Technology has started at a market targeting home consumers, and upon gaining good
achievements there would move on to be used in the business and enterprise markets. It is predicted that Information
Technology for Networking Digital Information Home Appliances would be the promising market to come. In this regard,
we investigated and examined its trend and directions in the future. The results have been that in the beginning
Networking of Digital Information Home Appliances begin by Networking Audio/Video devices using closed circuit home
LAN environment and becoming popular, followed by utilizing digital information home appliance from remote areas, and
finally it heads for the unite with Ubiquitas Network such as implementing & coordinating electric tags. Furthermore, as a
service to utilize the technology for digital information electric devices to be proposed to enterprise market, applying them
to the content for the enterprises, such as e-learning materials or pictures taken by IP cameras have been studied.
Keywords : Digital information home appliances, Broadband, Ubiquitas Network, A/V Network, DLNA, Contents watching
technologies, SIP
13
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NRI 技術創発
1.デジタルに移行する家電機器
ットワーク社会の実現においても不可欠であ
る。そして、その用途は生活者向きサービス
近年、テレビ、CD プレーヤ、DVD レコーダ、
デジタルカメラなど、デジタル技術を組み込
ばかりでなく、企業向けサービスでも新たな
んで高機能化された製品が広く普及しつつあ
可能性をもたらすであろう。
る。機器の種類や分野によりある程度の違い
万
700
はあるものの、家電機器全般についてデジタ
DVDビデオ
VTR
600
ル化の傾向が顕著であるといえよう(図 1、
500
図 2 参照)。
400
300
一方、パソコンも広く一般に普及しており、
200
最近では、パソコンで音楽や、ビデオ、テレ
100
ビ放送を楽しむ利用者も増え、パソコンが家
0
2000年末
電の仲間入りをしたとも考えられる。
2003年末
万
900
ブロードバンドや携帯電話通信といった高度
デジタルカメラ
800
な情報通信サービスが急速に普及している。
フィルムカメラ
700
我が国のブロードバンドサービスの世帯普及
600
500
率は既に 3 分の 1 を超えており、家庭におい
400
てもブロードバンドサービスは一般的になっ
300
ている(図 3 参照)。この点もデジタル情報家
100
200
0
電への進展を後押ししている。
2000年末
2001年末
2002年末
2003年末
図2 デジタルカメラとフィルムカメラの国内出荷台数
(出所:カメラ映像機器工業会)
デジタル情報家電は、来たるユビキタスネ
2000万
1600
2002年末
図1 DVDビデオとVTRの国内出荷台数
(出所:電子情報技術産業協会)
また、情報通信技術の著しい進歩に伴い、
1800
2001年末
35.9%
ブロードバンド契約数
40.0%
世帯普及率
30.0%
29.0%
1400
1200
1000
16.6%
800
1,692
600
10.0%
400
200
20.0%
1,364
6.0%
63 1.3%
0
781
283
0.0%
2000年
12月
2001年
12月
2002年
12月
2003年
12月
2004年
8月時点
図 3 国内ブロードバンド契約数と世帯普及率
(出所:総務省資料をもとに作成)
14
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
のゲートウェイを介した接続」のどちらかに
本稿では、まず、デジタル情報家電のネッ
なる。
トワーク化の方向性について論じ、次に注目
技術としてデジタル情報家電のコンテンツ視
(2) 高速ネットワーク上で利用する
聴技術を取り上げ、この技術の企業向けサー
ものを中心に扱う
ビスにおける適用を検討する。
IP ネットワーク上で利用するデジタル情
2.デジタル情報家電の分類
報家電を、ネットワークの種類でさらに分類
した(図 4 参照)。横軸は、
「LAN 上(屋内)」、
デジタル情報家電は、非常に多岐にわたる
「WAN 上(屋外)
」のどちらで利用するのかで
ため、始めに、本稿で取り扱うデジタル情報
ある。縦軸は、
「高速」、
「低速」のどちらのネ
家電の範囲について述べる。
ットワークを利用するのかである。本稿では、
(1) IP ネットワークに接続して利用する
図の点線に囲まれた範囲、つまり高速なネッ
トワークで利用するデジタル情報家電を中心
本稿では、直接または間接的に IP ネット
ワークに接続するデジタル情報家電を扱い、
に扱う。
IP ネットワーク上で利用しないデジタル情
たとえば、オーディオビジュアル家電(以
報家電は扱わない。つまり、そのネットワー
下 A/V 家電)は、大容量コンテンツの配信の
クの形態は、
「オール IP 網」、
「IP 網と非 IP 網
ために高速なネットワークを必要とする。現
A/V家電
高
速
情報通信家電
DVDレコーダ、ステレオ、テレビ
マルチメディアPC など
携帯電話、ノートPC
IP電話、IPテレビ電話
IPカメラ、オフィス機器
ソフトウェア
ダウンロード
今回の対象
環境、白物家電
低
速
Web連携
センシング
操作、制御
LAN系(屋内利用)
:オールIP網
WAN系(屋外利用)
:IP網と非IP網のゲートウェイを介した接続
図 4 デジタル情報家電の分類
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一方で、電子レンジなどの白物家電や、空
在は技術の制限から屋内(LAN)での利用に
なるが、今後は携帯電話やノート PC と連携
調や照明、防犯センサーなどの環境家電は、
し、屋外(WAN)からの利用が予想される。
機器のコントロール情報やセンシング情報の
情報通信機器は、高速な WAN を必要とす
やり取りが主な用途と考えられ、常時接続は
るものが多い。IP 電話機や IP テレビ電話機
必要であるが、低速なネットワークで利用で
は、ブロードバンドや企業ネットワークとい
きる。
った遠隔地で音声通話を行なう。
IP カメラは、
3.デジタル情報家電のネットワーク化の技術
映像をリアルタイムに遠隔地に配信する。コ
動向
ピー機などのオフィス機器は、障害対策のた
(1) パソコンやインターネットの技術の利用
めに、遠隔地からのメンテナンスや自動的な
従来の電話やテレビ放送のネットワーク
ソフトウェアの更新が必要となるであろう。
フォーラム/デファクト(市場認定)
【特定の技術や製品】
●ガイドラインの作成
DLNA(旧 DHWG)(Digital
Living Network Alliance)
デジタルコンテンツの相互利用
ECHONET
(Energy Conservation
and Homecare Network)
設備系ネットワークの相互接続
宅内フォーラム
(宅内情報通信・放送高度化
フォーラム)
情報家電や通信・放送ネット
ワークを含む、多様な機器同
士の相互接続
●伝送技術の開発
OIF(光)
(Optical Internetworking
Forum)
HomePNA(電話線)
(Home Phoneline
Networking Alliance)
PLC フォーラム(電力線)
(Power Line
Communications)
HomePlug(電力線)
Wi-Fi (無線 LAN)
Bluetooth SIG
●ミドルウェア技術の開発
UPnP フォーラム
(Universal Plug and Play)
インターネットの標準技術を
基盤とし、機器をネットワー
クにつなぐだけで自動に機能
する技術
OSGi
(The Open Services
Gateway Initiative)
ユビキタスネットワークを介
して使用する多様な機器の機
能を柔軟に構築・変更する
Java 言語に基づいたオープン
なソフトウエア部品化技術
●その他
CE Linux フォーラム
(Consumer Electronics
Linux Forum)
Liberty Alliance
(シングルサインオン)
FIPA(エージェント)
(Foundation for Intelligent
Physical Agents)
など
デジュール(公的認定)
【広範囲な技術】
IETF(IP ネットワーク)
(Internet Engineering
Task Force )
【国際】
ITU
(International
Telecommunication Union:
国際電気通信連合)
IEEE(電気通信)
ISO
(Institute of Electrical and (International Organization for
Standardization:国際標準化機構)
Electronic Engineers)
IEC
3GPP(携帯電話)
(International Electro technical
(3rd Generation
Commission:国際電気標準会議)
Partnership Project)
【域内】
OMA(モバイル)
ETSI
(Open Mobile Alliance)
(European Telecommunications
Standards Institute:
W3C(Web)
欧州電気通信標準化機構)
(World Wide Web
Consortium)
【ドメスティック】
OASIS(XML)
(Organization for the
Advancement of
Structured Information
Standards)
ユビキタス ID センター
(IC タグ)
EPCglobal(IC タグ)
(Electronic Product Code
global)
TTC
(the Telecommunication
Technology Committee:
情報通信技術委員会)
ARIB
(Association of Radio Industries
and Businesses :電波産業界)
ANSI
(American National Standard
Institute)
など
など
図 5 デジタル情報家電のネットワーク化に関連する標準化団体
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
は、各サービスを提供するために、特定の標
階的に進歩し、新技術も次々に登場している。
準化団体で専用の技術が開発された。一方、
そのため、多様なデジタル情報家電に対応し、
デジタル情報家電のネットワーク化で利用さ
屋内や屋外にかかわらず多様なネットワーク
れる要素技術は多岐にわたる汎用的技術であ
環境で利用できるような万能かつ完全なネッ
り、数多くの標準化団体で検討されている
トワーク技術がいきなり登場することはな
(図 5 参照)。デジタル情報家電のために独自
い。数多くの標準化団体が、それぞれの最終
に開発および標準化されている技術というの
的な目標と、その時々で実用可能で認知され
は意外と少ない。IP ネットワークにおけるデ
た技術を照らし合わせながら、最適な技術を
ジタル情報家電の自動検出や自動接続を実現
選択する。最終的に目標とするネットワーク
する UPnP(ユニバーサルプラグアンドプレ
は、段階的に実用化される。
イ)くらいである。大部分は、パソコンやイ
ンターネットのサービス向けに開発された技
(2) デジタル情報家電のネットワーク化の
実用化ロードマップ
術や、標準化団体によってデジタル情報家電
向けに拡張された技術である。これらの技術
各種標準化団体の活動から、デジタル情報
は、電話やテレビ放送の技術とは異なり、段
家電のネットワーク化の実用化ロードマップ
⇒2004年度以前
デジタル情報家電
のネットワーク化
利
用 ネットワーク
ス
タ
イ
機器
ル
伝送技術
(有線無線)
2005年度
はじまり
Audio/Visual向け
機器が中心
2008年度
2009年度以降⇒
本格化
屋外から屋内への接続
ユビキタスネットワーク
生活家電やセキュリティ設備
などの機器が加わる
モノに付けられる電子タグ
と情報家電が連携
多様な新伝送技術の利用
既存の伝送技術の利用
・近距離無線通信の充実、電灯線通信など
・無線LAN、イーサネット
ネットワー
LANにおける機器の簡易接続
要 キング゙技術 ・UPnP
・A/Vネットワークアーキテクチャ(DLNA)
素
技
術 セキュリティ PC用既存セキュリティ技術の利用
・暗号通信(IPSEC、SSL)、認証(RADIUS)
技術
の
・簡易な著作権保護
方
向
A/Vネットワークサービス
性 アプリケーション/
サービス技術 ・音声操作
コンテンツ
視聴
2007年度
普及期
屋内で閉じた利用
・家電向けマークアップ言語
2006年度
WANにおける機器の簡易接続
さらなる高速化と利便性の向上
・第4世代携帯電話
自律分散(アドホック)ネットワーク
・ゲートウェイ技術の確立
・拡張性、信頼性の高度化
・IPv6、品質保証技術、SIPによる機器接続
認証技術の高度化
さらなるセキュリティ機能の強度化
・ICカード、生態認証、Liberty Alliance など ・メタデータによるコンテンツの著作権保護
・プライバシー保護の強化
遠隔機器制御サービス
・プレゼンス(SIP)
・家電向けWEBサービス
コンテクストアウェア
・電子タグ技術
・サービスディスカバリ
単純な認識技術に基づく視聴 (音の強弱、顔やモノの形状等)
複雑な認識技術に基づく視聴 (音声の文章化、声紋、ヒトや物体の動き等)
図 6 デジタル情報家電のネットワーク化の実用化ロードマップ
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を作成した(図 6 参照)。ネットワーク化の実
用化の進展は大まかに 3 段階に大別できる。
② 普及期:屋外から屋内への接続が可能
2007 年度までには、前述した屋外から屋内
に接続するために必要な IPv6 や、品質保証
① はじまり:屋内で閉じた利用
2005 年度までは、屋内でデジタル情報家電
技術、セキュリティ技術が実用化される。無
線 LAN 以外の近距離無線通信や電灯線通信
を利用するための LAN 技術が実用化される
など多様な伝送技術が実用化される。そして、
段階である。特に、A/V 家電向けネットワー
これらの伝送技術を利用する非 IP の機器を
ク技術がこの傾向を後押しする(詳細は「4.注
IP ネットワークに接続するためのゲートウ
目技術の動向」参照)。そして、無線 LAN の
ェイ技術が実用段階になる。
普及は、LAN 配線の煩雑さを解消するため、
その意味は大きい。
巨大なインターネット上で端末を接続する
ための手順として注目される SIP(Session
しかし、この時期は、逆を言えば、屋内で
Initiation Protocol)は、この時期にデジタル
閉じた利用だけであり、屋外から屋内のデジ
情報家電の接続に対応し、ユーザやデバイス
タル情報家電を利用することは困難である。
の状態を交換する SIP プレゼンス機能も実用
なぜならば、パソコンでも、屋外から屋内に
化される
(詳細は「4. 注目技術の動向」参照)
。
接続する技術は実用レベルに達していないか
一方で、遠隔地に分散するデジタル情報家
らである。たとえば、屋外からの接続を容易
電を、ネットワークに接続するためや、Web
にする次世代 IP プロトコルである IPv6 や、
アプリケーションと連携させるために、Web
屋内外の通信の信頼性を確保するための品質
サービスが利用されるようになる。デジタル
保証技術やセキュリティ技術はまだ実用段階
情報家電用の Web サービスが実用化される
にはない。また、非 IP の機器を IP ネットワ
ことによって、デジタル情報家電は、ネット
ークで利用するためのゲートウェイ技術も実
ワークから最適なサービスをダイナミックに
用化されていない。
発見し、利用できるようになるのだ。たとえ
一方で、A/V 家電のユーザインターフェ
ば、家電機器を遠隔制御するための設定情報
イスについては、携帯電話と同じように Web
や、1 台の機器を複数の利用者が使う場合の
ブラウザで表示できるようなマークアップ言
ユーザインターフェイスの切り替え情報の提
語が実用化される。さらに、VoIP によって情
供が考えられる。
報家電と会話をしながら操作するような音声
以上から、この時期に、デジタル情報家電
リモコンを実現するマークアップ言語が実用
のネットワーク化の基礎技術が整い、それに
段階になる。
あわせて白物家電や環境家電が IP ネットワ
ーク上で利用可能となる。
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
③ 本格化:ユビキタスネットワークの技術
あろう。たとえば、洗濯機が衣類に付与され
る電子タグの情報を読み込み、外部情報サー
が整う
2008 年度より、デジタル情報家電は、ユビ
ビスを参照することで、生地や色に適したプ
キタスネットワークと融合し始めるだろう。
ロフェッショナルな仕上がりを実現すること
ネットワークについては、装置自身が、個
が考えられる。
別のユーザやアプリケーションに必要な機能
さらに、場所や時間、環境、人の嗜好など
を把握(自覚)し、装置同士が必要な情報を
といったコンテクスト情報によって、その場の
交換することで、自らネットワークの設定や
状況に最適なサービスを提供するコンテクス
構成を更新する自律分散ネットワーク(アド
トアウェアアプリケーションが実用化される。
ホックネットワーク)が実用レベルに達して
以上、デジタル情報家電のネットワーク化
の進化について、3 段階のロードマップを示
いるだろう。
アプリケーションについては、電子タグ技
した。デジタル情報家電のネットワーク化は、
術が、この時期までにパソコンを中心とする
数多くの標準化団体が、それぞれの最終的な
システムの中で実用化されていることが予想
目標と、その時々で実用可能で認知された技
され、そこで成熟した技術がデジタル情報家
術を照らし合わせながら、最適な技術を選択
電のシステムの中で利用されるようになるで
することで、着々と整備されていく。
◇アップルコンピュータのAirMacExpress(無線LAN機器)
◇バッファローのLinkStation(メディアプレイヤ)
・PC内の音楽ソフト(iTunes)とステレオを接続
・PCのメディアコンテンツをA/V機器で閲覧する
AirMac Express
LinkStation
LAN
メディアコンテンツの配信
音楽コンテンツの配信
◇マイクロソフトのWindows Media Center Extender
◇松下電器 DIGA DMR-E500H(DVDレコーダ)
・ PCやインターネットのメディアコンテンツをA/V機器で閲覧
・DVDレコーダに録画した番組をPCで再生可能
・もう1台E500Hがあれば、LAN経由で他のE500Hに録画した
番組の再生可能
※NECのAX300(DVDレコーダ)や米TiVoの製品でも同様のこ
とが可能
・Digital Living Network Alliance(DLNA、旧Digital Home
Working Group)のガイドラインに準拠
(家庭用普及機としては業界初)
Media Center対応PC
インターネット
LAN
Media Center
Extender対応A/V機器
メディアコンテンツの配信
◇フィリップスのStreamium製品(テレビ、ステレオ)
・インターネットのメディアコンテンツを直接視聴
LAN
インターネット
映像コンテンツの配信
(DLNA準拠)
DIGA
LAN
UPnP
UPnP
メディアコンテンツの配信
映像コンテンツの配信(DLNA準拠)
図 7 A/V ネットワークの製品例
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4. 注目技術の動向
(1) A/V ネットワークから始まる
デジタル情報家電のネットワーク化
パソコンのマルチメディア対応が浸透し、
応のテレビやステレオを提供。
¡ 松下電器産業は、DVD レコーダで録画し
たテレビ番組を、パソコンやもう 1 台の
DVD レコーダに配信できる製品を提供。
音楽やテレビ放送をパソコンで視聴するスタ
同様の機能は、米 Tivo や NEC の製品でも
イルが定着してきた。そのため、パソコンや
実現できるが、Digital Living Network
インターネットのコンテンツをステレオや大
Alliance(DLNA)の相互接続ガイドライン
画面テレビなどの A/V 家電に転送し、視聴
に準拠した家庭用普及機としては業界初の
したいというニーズが出てくることは自然な
製品。
流れである。デジタル情報家電のネットワー
ク化は、A/V ネットワークが牽引する。
② Digital Living Network Alliance 相互接続
ガイドライン
① 製品例
既に A/V ネットワークを実現する製品は
DLNA は 、旧 Digital Home Working
Group(DHWG)として 2003 年 6 月に設立さ
市場に数多く提供されている(図 7 参照)
。
れた。HP、インテル、マイクロソフト、ノキ
¡ 米アップルコンピュータ社では、パソコン
ア、松下電器産業、フィリップス、サムスン
内の音楽コンテンツをステレオに配信する
電子、ソニーを設立メンバーとし、現在 179
無線 LAN 機器を提供。
社(2004 年 9 月末時点)の会員がいる。
¡ バッファロー社は、パソコンで録画したテ
DLNA は、本年 6 月に、デジタル情報家電
レビ番組を、テレビで閲覧できるメディア
のオープンな相互接続環境を実現すべく、業
プレイヤを提供。
界標準技術に基づいた技術的な製品設計ガイ
¡ 米マイクロソフト社は、デジタルデバイス
ドライン「ホーム・ネットワーク・デバイ
とデジタルコンテンツを自然な形で連携さ
ス・インターオペラビリティー・ガイドライ
せる「シームレスコンピューティング」の
ン ver.1.0」を発表した(図 8 参照)。製品例で
実現に向けて技術開発。Windows Media
紹介した松下電器産業の DVD レコーダのよ
Center 対応パソコンは、映画や写真、音楽
うに、このガイドラインに準拠した製品の間
などのデジタルコンテンツを集中的に保存
では、デジタルコンテンツを煩わしい操作な
および管理し、各種デジタル家電にコンテ
しで手軽に楽しめる。
ンツを配信することが可能。
今回策定されたガイドラインは、LAN 環
¡ 蘭フィリップス社は、インターネットのメ
境におけるメディアサーバとその中のコンテ
ディアコンテンツを直接視聴する UPnP 対
ンツを再生する機器間の相互接続について定
20
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
義している。先に述べたように、デジタル情
DLNA は、設立から 1 年で最初の相互接続
報家電の標準化団体の大部分は、それぞれの
ガイドラインを発表し、1 年半で認定製品の
最終的な目標と、その時々で実用可能な技術
提供開始と、非常に展開が速く、既に実用化
を照らし合わせながら、最適な技術を選択す
段階に入っている数少ない標準化団体であ
ることに重きをおいている。DLNA も同様で
る。今後、
注目すべき標準化団体の1 つである。
あり、この設計ガイドラインは、IP や無線
LAN、UPnP などのように認知された標準技
(2) コンテンツ視聴の高度化
術を活用する。また、ガイドライン ver.1.0 で
① 高度化の必要性
は音楽、写真、ビデオの必須メディアフォー
ネットワーク技術が整備されデジタル情報
マットを規定している。今後は、屋外からの
家電が実用化されたとき、始めて表面化して
接続技術や新たなメディアフォーマットの追
くる課題もある。本稿で注目したのがデジタ
加が予定される。
ル情報家電の普及がもたらす HDD に保存さ
【 Home Networked Device Interoperability Guidelines v1.0(2004年6月発表)】
2004
2005
2006+ DLNAで検討中
Digital Rights
Management
/Content Protection
DRM/CP技術
メディアフォーマット
必須:JPEG, LPCM, MPEG2
オプションナル:PNG, GIF, TIFF, MP3, WMA9, AC-9,
AAC, ATRAC3plus, MPEG1, MPEG4, WMV9
DRM/CP Interoperability
DLNAメディアフォーマット
JPEG2K
MPEG4
DLNA技術候補
メディア転送
HTTP
[デバイスごと]
UPnP
A/V v1
[ベース]
UPnP
Arch v1
デバイス検出と制御
ネットワークプロトコル
IPv4
物理ネットワーク
Ethernet IEEE802.11a/b/g
UPnP Arch v2
IPv6
IEEE802.11e/i
Future Potential Technologies
図 8 DLNA 相互接続ガイドライン
(出所: DLNA)
21
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れるコンテンツの急増である。実際に生活者
に「頭だし視聴」と「ダイジェスト視聴」に大
向け製品では、個人が所有する HDD 容量は 1
別できる。
テラバイトが目前である(図 9 参照)。企業で
頭だし視聴とは、希望する特定の“コンテ
も、セミナービデオや製造工程学習ビデオな
ンツ”や“シーン”を検出し、見始めることが
どの e ラーニング、企業代表者から従業員に
できる視聴スタイルである。特定のコンテン
向けたスピーチ、財務広報や商品宣伝などの
ツやシーンを何回も確認したりするときに有
企業 PR、IP カメラで撮影したデジタル画像
効である。
といったように映像コンテンツを扱う機会が
一方、ダイジェスト視聴とは、希望する特
急増し、取り扱うコンテンツの総容量は 1 テ
定の“内容”を検出し、長時間のコンテンツ
ラバイトを超えていくだろう。そこで、1 テ
を短時間に要約して視聴するスタイルであ
ラバイト以上のデータの中から、希望するコ
る。コンテンツの概略を短時間で把握すると
ンテンツやシーン、内容を短時間で特定およ
きに有効である。
この 2 つの視聴スタイルは共に、音や映像
び閲覧するためのコンテンツ視聴の高度化に
の特徴をトリガーにして、コンテンツの中か
関する技術が必要となる。
らその特徴にマッチする部分を抽出する検索
技術の利用が基本となっている。トリガーと
② コンテンツ視聴のスタイル
なる検索キーには次のものが考えられる。
コンテンツを視聴するスタイルは、大まか
[GB]
450
ノートPC(NEC)
400
400
デスクトップPC(NEC)
350
iPod
300
300
HDD内蔵DVD(松下)
250
250
250
200
160
150
120
100
100
80
0
30
12
40
20
30
80
60
60
50
40
5
160
120
10
40
20
30
40
2000年 2000年 2001年 2001年 2002年 2002年 2003年 2003年 2004年 2004年
1月
7月
1月
7月
1月
7月
1月
7月
1月
7月
図 9 製品別 HDD 容量の推移
(出所:各メーカーのプレスリリースより作成)
22
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
¡ 曲名
プを自動検出し、テロップごとに関連映像
¡ テロップ/スライド
を分類する技術を開発。ユーザは、興味を
¡ 顔の画像
持ったトピックの映像のみを閲覧できる。
¡ 音声(文章化されたもの/声紋)
¡顔画像の自動認識とトラッキング
¡ 物体の形状
顔画像認識ソフトウェアのリーディングカ
¡ 音の強弱(曲調/音声/効果音など)
ンパニーの 1 つである米ニブンビジョン
¡ 人や物体の動き(激しさ/停止など)
は、動画の中からでも顔認識を検出するこ
¡ 時刻/時間
とができる。さらに、鼻や口、眉毛など、
顔の各部位も認識し、その動きをリアルタ
通常は、人手を煩わせないために、各種特
イムに追跡することも可能とする。この技
徴は自動的に認識および検出される。さらに、
術は、既にボーダフォンの携帯電話の 1 つ
検索キーとして利用するために自動的にメタ
のアプリケーションである「ムービー変装」
データ化される。メタデータは、検索だけでな
に採用されている。
く、
コンテンツのカテゴライズにも利用できる。
¡顔画像からの検索
NEC は、人物の顔画像を検索キーとし、
③ 自動認識と検索機能の事例
映像中からその人物が登場するシーンを
デジタルコンテンツの検索キーは、内容の
検出するシステムを開発している。たとえ
複雑さによって実現の困難さに差がある。し
ば、携帯電話で撮った顔写真を検索キーと
かし、既に実用レベルに達しているものもあ
することもできる。映像コンテンツの中の
るので紹介する。
顔の特徴をメタデータ化することによっ
¡曲名の検索
て実現している。通常のパソコンで 24 時
英グレースノートは、音楽の波形特性の分
間の映像の中から、特定の顔を 1 秒で検索
析によって、楽曲を検索する技術を開発。
することが可能。同技術は、映像中の登場
既に、携帯電話などの音声受信が可能な端
人物を自動的に探し出す技術として、マル
末に曲を聴かせるだけで、曲名や演奏者や
チメディアコンテンツの内容記述方式の
作曲者などの情報を教えてくれるサービス
国際標準規格 MPEG-7 に採用が決定して
を提供している。このサービスは、曲や写
いる。
真、ビデオといった大容量コンテンツのダ
ウンロードサービスへの展開も可能である。
¡テキストおよびテロップの自動検出
パイオニアは、ニュース番組の冒頭テロッ
¡映像とテキストの自動マッピング
NEC は、音声認識技術を活用して文章化さ
れる映像内の音声と、その映像に関する議
事録やプレゼンテーション資料などのテキ
23
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NRI 技術創発
ストコンテンツを自動的にマッピングする
にタイムスタンプを付けることができる。
技術を開発。既に、議会映像検索システム
さらに、同じコンテンツを持っている人に、こ
として応用しており、テキスト検索で希望
の情報をメールなどで送付すると、同じシ
の場面の議会映像や議事録を短時間で容易
ーンから視聴することができるようになる。
に再生することを可能としている。
¡物体の形状の認識
④ コンテンツ視聴技術の方向性
米ニブンビジョンは、カメラで撮影したオ
コンテンツ視聴技術の進化の様子を、デジ
ブジェクトの画像を元に、物体の形状やそ
タル情報家電のネットワーク化の実用化ロー
の動き、向きを認識する技術を開発。たと
ドマップ(図 6 参照)の下部に示す。検索技術
えば、空港などでの安全検査で特定の形状
を利用する頭だし視聴やダイジェスト視聴の
の物体を危険物として検出することに利用
高度化は大きく 2 段階に大別できる。
できる。
¡曲調による曲のカテゴライズ
まず、2006 年度までに、音の強弱や、顔や
物体の形状など、比較的単純な自動認識技術
パイオニアの HDD カーナビの音楽プレー
によって得られる検索キーに基づく視聴が実
ヤ機能は、CD から HDD への録音時にキー
用化される。
やビート、コード、音圧などから「明るい、
その後に、2008 年度までに、音声の文章化
ノリがいい、静か、悲しい、癒し」といった
や声紋、人や物体の動きなど、比較的複雑な
曲調を自動検出し、メタデータ化する。こ
自動認識技術によって得られる検索キーに基
れによって、ユーザはフィーリングにあう
づく視聴が実用化される。
曲だけを聴くことができる。
¡ 音や映像の特徴からダイジェスト映像の作
成
(3) 機器間の柔軟な接続を実現する SIP
デジタル情報家電を巨大なインターネット
NTT や KDDI は、音の強弱や、人や物体の
上で利用する場合、機器間を接続する技術が
動きの特徴を検索キーとしてダイジェスト
重要であり、SIP
(Session Initiation Pro-tocol)
映像を作成するシステムを開発。たとえば、
という新技術が注目されている。SIPは、イン
サッカービデオの中で、歓声が大きく盛り上
ターネット技 術 の 標 準 化 組 織 で あ る I E T F
がっている部分の要約映像や、シュートシー
(Internet Engineering Task Force)で標準
ンだけを抽出した要約映像が作成できる。
化されているため、Web などインターネット上
¡ タイムスタンプをキーとする頭だし視聴
で提供されるサービスと相性がよい。実際に、
NTT ドコモが開発している地上デジタル
SIP は、IP 電話機を接続する標準的プロトコ
放送対応携帯電話は、お気に入りのシーン
ルの第一候補であり、既に国内外の多くの製
24
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
相手の置かれている状況(在席、外出中、移
品やサービスで採用されている。
SIP を利用することで、デバイス同士を接
動中など)を確認し、相手が一番利用しやす
続するとき、別のシステムと連携して、認
い方式(IP 電話、携帯電話、ボイスメールな
証/暗号通信/ QoS を利用するためのネッ
ど)へ発信することが可能となる。
トワーク設定などを自動的に実行することが
デジタル情報家電の場合は、機器の状態通
可能になる。たとえば、NTT が開発している
知に利用される。デジタル情報家電は、基本
ネットワーク家電の接続プロトコル「m2m-x」
的にコンピュータであり、ソフトウェアによ
(mono 2 mono for x)は SIP をベースとして
って制御される。よって、バグ対応やセキュ
おり、機器間の接続時に、アクセス管理/ファ
リティ対策などでソフトウェアの更新がどう
イアウォール/暗号通信といったセキュリテ
しても発生し得る。しかし、これらは利用者
ィ機能をオートマチックに設定できる。
からは気が付き難いことであり、たとえ、気
SIP には、もう 1 つ重要な機能がある。ユ
が付いたとしても利用者の手を煩わせること
ーザや機器間の状態を交換する「プレゼンス
は避けたい。そのために、デジタル情報家電
機能」である。
から、メーカーなどのサポートセンターに自
プレゼンス機能を IP 電話に利用する場合、
動的に状態を通知する仕組みに SIP プレゼン
コミュニケーションを始める前に相手の状態
スが使われる。これによって、機器が故障し
を確認することで、適切なコミュニケーショ
た場合、自動的にメーカーの管理システムに
ンを行うことができるようになる。たとえば、
通知し、利用者が気付く前に、ソフトウェア
【デジタル情報家電とSIPプレゼンス機能の連携】
機器の状態通知にSIPプレゼンスを利用
コピー機
プレゼンス
トナー交換
ソフトウェアの
自動アップグレード
インターネット
DVDレコーダ
プレゼンス
故障
図 10
オンサイトサポート
機器の管理やサポート、メンテナンス
25
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NRI 技術創発
プログラムの更新による自動修理や、必要な
しかし、2000 年以降その構造が逆転した。
らばオンサイトサポートが可能となる
(図 10
IT 技術は、家庭向け市場で普及し、その後に
参照)
。
企業向け市場で普及するようになった。たと
また、このような状態通知機能は、コピー
えば、携帯電話インターネット、ブロードバ
機のトナー交換など、消耗品の自動発注とい
ンド、無線 LAN、IP 電話などが相当する(こ
った利用者の意向を先取りするようなサービ
れらの技術は、最初は企業向けに開発された
スにも展開できる。
が、その利用は伸びなかった)。生活者の方が
企業よりも高度な IT 技術を先に利用するよ
5.企業向けサービスにおけるデジタル
うになったのだ。
情報家電のコンテンツ視聴技術の提案
この現象は、インターネットに接続するため
(1) IT 技術の成長は生活者向け市場から
の回線速度が大きく影響したと考えられる。
ブロードバンドの普及が始まった 2000 年
1990 年代のインターネット接続の回線速
以降、IT 技術の成長の構造に変化が生じた。
度は、企業側は 64k ∼ 1.5Mbps であったのに
1990 年代、IT 技術は、最初に企業向け市
対して、生活者側は 64kbps 以下であった。つ
場で普及し、その後に生活者向け市場で普及
まり、企業側は快適な環境で、生活者側はス
するような構造になっていた。たとえば、電
トレスがたまる環境であった。
子メールや Web アクセスなど、初期のイン
ターネットアプリケーションが相当する。
一方、2000 年以降は、企業側が 0.5M ∼
10Mbps であるのに対して、生活者側はブロ
[万]
1,400
BB加入者数
1,200
利用サイト数の逆転
26.0%
(世帯利用率)
インターネット利用企業数
1,000
インターネット利用事業所数
800
600
79.1%
(利用率)
400
96.1%
(利用率)
200
0
2000年
(12月末)
図 11
2001年
(12月末)
2002年
(12月末)
2003年
(9月末時点)
企業および事業所のインターネット利用と、家庭のブロードバンド利用の比較
(出所:総務省)
26
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
ードバンドの普及によって、1M∼100Mbps に
また、企業は利用する IT 技術やサービス
なった。つまり、企業側はストレスがたまる
に対して、安全や確実という信頼性を要求す
環境で、生活者側が快適な環境になったのだ。
る。そのため、新しい IT 技術やサービスの利
回線速度の向上は、ただ通信環境を快適に
するだけではない。IP 電話やインターネット
用は慎重になる傾向が強い。
以上のようなことが要因となり、今後、IT
放送など大容量の帯域を必要とするアプリケ
技術は、まず生活者向け市場で実用が始まり、
ーションが利用できるようになる。つまり、
実績が積まれ、企業向け市場で利用されると
アプリケーションに対する発想が変わり、新
いう流れになるだろう。よって、企業で普及
しい IT 技術にもチャレンジすることができ
が予想される IT 技術を見つけ出すには、既
るようになるのだ。
に市場が立ち上がっているブロードバンドと
また、IT 技術の成長は、利用実績に大きく
依存する。利用されるサイト数やユーザ数が
携帯電話に加えて、次はデジタル情報家電が
有力であると予想される。
多い方が速く成長する。現在、インターネッ
トを利用する企業および事業所の数は、ブロ
(2) 事例紹介
ードバンドを利用する家庭の数よりも少な
デジタル情報家電は、生活者側でも最近普
く、2001 年から 2002 年の間で逆転している
及し始めたばかりであり、企業での利用事例
(図 11 参照)。つまり、新しい IT 技術をチャ
は非常に少ない。しかし、最近 IP カメラや IP
レンジできるフィールドは生活者向け市場の
テレビ電話を利用する事例が出てきたので紹
方が多いことになる。
介する。
【三井住友銀行IPカメラで1200拠点を遠隔集中監視】
・デジタル画像をデータセンターのストレージ(1ペタバイト以上)に一括保存、管理
・店舗ごとのビデオテープ交換など保守、システム維持、更新費用で、数億円の削減を見込む
データセンター
(ソニー)
店舗(全国400拠点)
デジタル画像配信
VPN
装置
ストレージ
企業ネット
ATMコーナー(全国800拠点)
1ペタバイト
インターネット
VPN
VPN
装置
VPN
装置
図 12
IP カメラの利用事例
27
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NRI 技術創発
¡ 電子メールやボイスメール
① IP カメラ
本年より、三井住友銀行が防犯カメラに IP
カメラを採用した(図 12 参照)。全国 1200 か
所の店舗や ATM コーナーに IP カメラを設
置し、店舗で撮影されるデジタル画像をデー
¡ ホテルから送信されるテキストメッセージ
の閲覧
¡ 電話やミニバーなどの勘定チェックや、会
議室など設備の予約
タセンタへリアルタイム配信し、遠隔集中管
¡ ホテル施設案内、両替率、市内案内、天気
理する。ビデオテープ交換など従業員の作業
予報など、ホテルが提供する情提コンテン
負担がなくなるほか、システム維持、更新費
ツの配信
用も数億円削減される。
「カラーディスプレイ」と「タッチパネル機能」
同様の IP カメラの利用が企業向けサービ
がついた IP テレビ電話は、ホテル、店舗、倉
スで増えており、建設現場や駐車場などでも
庫、工場、無菌実験室など、一般にパソコンを
利用されている。
利用するのが困難な環境からでも、業務アプ
リケーションやコンテンツ配信を利用できる。
② IP テレビ電話
世界最大手のネットワーク関連機器メーカ
ーである米シスコシステムズ社は、企業向け
(3) エンタープライズコンテンツに対する
デジタル情報家電技術の適用
IP 電話の分野でも最大手になり、
「カラーデ
デジタル情報家電の技術を企業向けサービ
ィスプレイ」と「タッチパネル機能」がついた
スへ利用することとして、エンタープライズ
IP テレビ電話のソリューションも積極的に
コンテンツへの展開を提案する(図 14 参照)。
展開している(図 13 参照)。たとえば、ポーラ
現在、企業では映像コンテンツをパソコン
ンドのシェラトンクラクワホテルでは、232
で閲覧することは一般的になっている。これ
の客室すべてに、シスコ製の IP テレビ電話機
は通常 1 人での利用となるが、集合研修など
を設置し、次のようなカスタマサービスを提
1 人でなく集団で閲覧することや、工場のラ
供している。
インなどパソコンを設置できない場所で閲覧
することもあるはずだ。BtoC サービスに利
用する場合、顧客はリビングの大画面テレビ
・カラーディスプレイ
・タッチパネル機能
で映像コンテンツを閲覧することを望むこと
もあるだろう。そこで、A/V 家電を中心にデ
ジタル情報家電はエンタープライズコンテン
ツの新たな配信チャネルとして期待される。
エンタープライズコンテンツは、次の 5 つ
図 13 IP テレビ電話の利用事例
(出所:シスコシステムズ)
28
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
を想定する。
電向けの技術で他社との差別化を図るパター
¡ セミナービデオや製造工程学習ビデオなど
ンである。
e ラーニング
¡ 企業代表者から従業員に向けたスピーチビ
① A/V 家電の利用
ここでは、エンタープライズコンテンツを
デオ
¡財務広報や商品宣伝など企業 PR ビデオ
A/V 家電で視聴することを考える(図 15 参
¡テレビ会議の録画ビデオ
照)
。
¡IP カメラで撮影したビデオ
現時点で現実的なものは、コンテンツを
検討するデジタル情報家電の技術は次の 4
DVD にコピーして、従業員や顧客に郵送す
つである。
ることである。DVD プレーヤは「1.デジタル
¡A/V 家電
に移行する家電機器」で示したように既に一
¡IP テレビ電話
般的な A/V 家電であり、DVD 媒体も 1 枚
¡コンテンツ視聴技術
100 円以下になっている。また、DVD プレー
¡ コンテンツ視聴技術対応のネットワークス
ヤの巻き戻しなどの機能は、パソコンのコン
テンツ視聴の機能より優れている。
トレージサービス
A/V 家電と IP テレビ電話はデジタル情報
一 方 、ネ ッ ト ワ ー ク 上 の コ ン テ ン ツ を
家電の機器を利用するパターンである。コン
A/V 家電で視聴する方法は 2 種類ある。1 つ
テンツ視聴技術は、デジタル情報家電向けの
は、コンテンツを LAN 内のパソコンに一度
技術をパソコンで利用するパターンである。
保存し、パソコンから LAN 上の A/V 家電に
ネットワークストレージは、デジタル情報家
コンテンツを配信する方法である。もう 1 つ
エンタープライズコンテンツ
に展開(映像、音声)
デジタル情報家電の技術
①A/V家電
デジタル情報家電
の利用
②IPテレビ電話
・eラーニング
・スピーチ
・企業PR/IR/商品CM
③コンテンツ視聴技術
・自動認識、メタデータ化
・検索
・頭だし、ダイジェスト視聴
PCで利用
④コンテンツ視聴技術対応
ネットストレージサービス
他社差別化
図 14
・社内会議
・IPカメラ
-店舗カメラ
-防犯カメラ
IP カメラの利用事例
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NRI 技術創発
② IP テレビ電話の利用
は、遠距離のコンテンツサーバから A/V 家
ここでは、エンタープライズコンテンツを
電へ直接コンテンツを配信する方法ある。
IP テレビ電話に配信することを考える(図 16
デジタル情報家電のネットワーク化の実用
参照)
。
化ロードマップ(図 6 参照)で示したように、
前者の方法は既に実用化レベルに入っている
IP テレビ電話は店舗や倉庫、工場、学校、
が、後者の方法の実用化は 2007 年頃になるだ
ホテルなど、パソコンの利用が困難な環境へ、
ろう。
パソコン用のコンテンツを比較的容易に配信
郵送
現状
∼
技 2005年度
術
レ
ベ
ル
DVDを郵送
DVDで視聴
メディア
プレーヤ
LAN
コンテンツの
ネット配信
PCから配信される
コンテンツを視聴
メディア
プレーヤ
2006年度
∼
2007年度
PCに保存
コンテンツサーバ
LAN
コンテンツの
ネット配信
コンテンツサーバから配信される
コンテンツを直接視聴
図 15
コンテンツサーバ
A/V 家電によるエンタープライズコンテンツの視聴
LAN
映像コンテンツ
の配信
コンテンツの
ネット配信
企業PR/IR/商品CMなど
LAN
映像コンテンツ
の同報配信
コンテンツサーバ
コンテンツの
ネット配信
警告情報、商品CMなど
LAN
タッチパネル用
業務アプリ
(XML)
タッチパネル
コンテンツサーバ
リアルタイム通信
店舗/倉庫/運輸/製造/自治体/学校/ホテルなど
業務アプリ(XML)
企業ネット
インターネットVPN
工場・支店
店舗
図 16
家
本社データセンター 工場・支店
店舗
IP テレビ電話によるエンタープライズコンテンツの視聴
30
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
できる。そして、IP テレビ電話は、基本仕様
で示したように、顔、テロップ/スライド、物
として、カラーディスプレイを備えているの
体の形状、時刻/時間/タイムスタンプ、音の
で、販売店舗の店員へ、新商品を説明する場
強弱といった単純な認識技術に基づく視聴な
合、詳細なイメージが伝わりやすい。また、
らば、早期に検討可能である。よって、今回
自治体など公共機関では、コンテンツの同報
取り上げたエンタープライズコンテンツに対
配信機能によって、環境災害時など警告情報
しては、既に頭だし視聴やダイジェスト視聴
や行方不明者の探索にも利用可能である。
を検討できる段階にある。
さらに、IP テレビ電話のタッチパネル機能
④ ネットワークストレージサービス
に対応する業務アプリケーションを組み合わ
せることで、インタラクティブなリアルタイ
今後、映像コンテンツなど大容量のデータ
ム通信が実現できる。通信機能付きの PDA
を保存するストレージサービスが次々と出て
で業務アプリケーションを利用することがた
くることが予想される。しかし、単にデータ
びたび検討されるが、IP テレビ電話はその代
を保存するだけのサービスであるならば、価
案になる。
格競争になりがちである。競合他社のサービ
スと差別化する付加価値が必要となる。そこ
で、頭だし視聴やダイジェスト視聴に対応し
③ コンテンツ視聴技術の利用
たネットワークストレージサービスによっ
ここでは、エンタープライズコンテンツをパ
て、他者との差別化を図ることを検討する。
ソコンで視聴するときに、頭だし視聴やダイ
これを実現するために必要な機能は、コン
ジェスト視聴の技術を利用することを考える。
コンテンツ別に必要となる検索キーを検討
テンツがネットワーク上のストレージにコピ
した(図 17 参照)。デジタル情報家電のネッ
ーされるとき、コンテンツの音や映像の特徴
トワーク化の実用化ロードマップ(図 6 参照)
を自動的に認識および検出し、メタデータ化
検索キー
(メタデータ)
顔
テロップ
スライド
(PPT)
声紋
文章
eラーニング
○
○
○
○
ー
スピーチ
○
コンテンツ
物体の
形状
時刻
時間
音の
強弱
ヒトや物
体の動き
○
○
△
タイム
スタンプ
○
○
○
ー
○
○
△
○
○
○
ー
○
○
△
○
○
○
○
ー
○
○
△
店舗カメラ
ー
ー
ー
ー
○
○
ー
○
防犯カメラ
○
ー
ー
ー
○
○
ー
○
企業PR/IR/商品CM
社内会議
IP
カメラ
音声
図 17
コンテンツに適用可能な検索キー
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NRI 技術創発
することである(図 18 参照)。この機能をネ
を補足しなければならない。以下の内容が検
ットワークストレージサービスに採用するこ
討項目として挙げられる。
とで、ユーザは各種検索キーに基づく頭だし
① 製品の選定と導入手順の計画
視聴やダイジェスト視聴が可能となる。
また、ユーザが個別に設定するタイムスタ
市販品を利用する場合、同類の製品であっ
ンプなどの検索キーを、メールやホームペー
ても、相互接続性が保てないことがあり、製
ジなどで、他のユーザに伝えることで、映像
品の選定には注意が必要である。たとえば、
の特定シーンの共有も可能となる。さらに、
D V D 媒 体 は 、メ ー カ に よ っ て 利 用 可 能 な
このとき、検索キーのほかにコメントをつけ
DVD プレーヤを制限する場合もあるので注
てネットワークに配信するようなシステムを
意が必要である。
構築することで、映像コンテンツのブログサ
また、ネットワーク上でコンテンツを配信
する場合、受信機によって視聴できるコンテ
ービスの提供も可能となる。
ンツのメディアフォーマットが異なる場合も
(4) 適用における課題
ある。
前節で、エンタープライズコンテンツに対
IPカメラなどは、個人が勝手にネットワーク
するデジタル情報家電の技術の適用を提案し
に接続してしまい、正規に導入した IP カメラ
た。しかし、利用する技術は、生活向けに開
のシステムに悪影響を及ぼす可能性もあり、
発されているため、企業向けに展開する場合、
導入手順や運用ルールの計画が必要である。
安全や確実という信頼性の要求に対する課題
頭だし視聴
ダイジェスト視聴
自動メタデータ作成
企業ネット
インターネットVPN
エンタープライズコンテンツ
(映像、音声)
ネットワークストレージ
タイムスタンプ作成
コメント記述
図 18
ユーザ同士で情報共有
ブログサービス
コンテンツ視聴技術に対応したネットワークストレージサービス
32
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ネットワーク化するデジタル情報家電の動向
② 画質、音質
ワーク化は、パソコンやインターネットで成
コンテンツは、配信先が従業員なのか、顧
熟した技術や先進的な技術、特に生活者向け
客サービスであるかによって、要求される品
サービスの技術を取り込みながら段階的に進
質は異なる。一般的に顧客サービス向けの場
むということがポイントである。それゆえ、
合は高い品質が要求される。そのため、コン
当面、デジタル情報家電のネットワーク化の
テンツのメディアフォーマットの選択や、配
開発やサービスの提供には、パソコンやイン
信ネットワークの設計に十分な検討が必要で
ターネットの技術の獲得が必要となる。たと
ある。
えば、セキュリティや Web コンピューティ
ングのミドルウェアといった技術は、現在の
③ 停電対策、システムの冗長化
デジタル情報家電ではあまり必要とされない
デジタル情報家電は、当然ながら電気で作
技術であるが、デジタル情報家電によるイン
動するため、停電があると機器は停止してし
ターネット上で情報のやり取りが頻繁に行わ
まう。IP カメラは、防犯カメラなど停止が許
れるようになったときには、このような専門
されない用途で利用することもあり、停電時
技術の獲得が必要となるだろう。また、デジ
でも作動するような対策が別途必要となる。
タル情報家電を企業向けにサービス展開する
また、停電だけではなく断線など突然の障
場合、安全や確実という信頼性を確保するこ
害に対応するためにシステムの二重化が必要
とが必要となる。この点においても、パソコ
であるか検討すべきである。
ンやインターネットのサービスから学ぶ点は
多い。デジタル情報家電とパソコンやインタ
④ 保守管理の有無
ーネットは別々の世界ではなく、今後、ます
デジタル情報家電を利用するシステムも信
ます結びつきが強くなっていく。そして、既
頼性を要求する場合、保守管理が発生するこ
存のパソコンやインターネットの技術を保有
ともある。保守メニューを作成すべきである。
している企業との積極的なパートナリング戦
略が実施されるだろう。
6.終わりに
デジタル情報家電のネットワーク化は、現
以上、デジタル情報家電のネットワーク化の
時点では、屋内 LAN 上でのパソコンと A/V
実用化ロードマップ、注目技術の動向、企業向
家電の連携が中心であるが、その範囲はイン
けサービスにおけるデジタル情報家電のコン
ターネットへと広がり、連携する機器もパソ
テンツ視聴技術の提案とその課題について述
コンに加えてデジタル情報家電同士へと広が
べた。
る。携帯電話がインターネットに接続される
全体を通じて、デジタル情報家電のネット
ことによって、電子メールや Web アクセス
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レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法及び国際条約により保護されています。
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NRI 技術創発
など通話以外の目的にも使われるようになっ
たのと同様に、デジタル情報家電も、常にイ
ンターネットに接続されるようになると思い
がけない使い方が生み出されるに違いない。
デジタル情報家電のネットワーク化が数年の
うちに新たな展開を見せるのは間違いない。
●参考文献●
[1]Philips の Streamium ホームページ
http://www.streamium.com/
[2]Digital Living Network Alliance ホー
ムページ
http://www.dlna.org/home/
[3]パイオニア技術情報誌「PIONEER
R&D Vol.14 No.1」2004 年 4 月発行
[4]NEC 技術論文誌「NEC 技報 Vol.57
No.3」2004 年 6 月発行
[5]NTT サイバーコミュニケーション総
合研究所ホームページ
http://www.ntt.co.jp/cclab/
[6]KDDI 研究所ホームページ
http://www.kddilabs.jp/
[7]Cisco Systems ホームページ
http://www.cisco.com/
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