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P38~50(事例1)(PDF:2363KB)

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P38~50(事例1)(PDF:2363KB)
2-1
事例集の構成と事例リスト
◆◆構 成◆◆
この事例集は、「家・庭一体の住まいづくり」を進めていくうえで、参考となる代表的事例
を具体的に取上げ、「自然との触れ合い」「家族の団らん」「地域とのつながり」の 3 つの柱
や「維持管理」の視点を踏まえた事例のポイントを紹介します。
また、その他の参考事例を、テーマ別に概要を紹介します。
事例リスト
家・庭一体の住まいづくりを実現する代表的な事例
【戸建住宅団地】
●池田の森(静岡市)
開発者のこだわりのあるエコロジ―住宅団地
●ガーデンシティ舞多聞みついけプロジェクト(兵庫県神戸市)
専門家、大学、入居者の協働による住宅団地
●ビレッジガルテン小野原西Ⅱ(大阪府箕面市)
居住者が庭を共同利用する住宅団地
●ブルームガーデンのぞみ野(兵庫県姫路市)
エリアマネジメントなどを取り入れた住宅団地
【共同住宅】
●県営住宅東部団地(静岡市)
多様なコミュニティに配慮した公営住宅
●ハーモニア新町(浜松市)
中心市街地の緑をつなげる民間共同住宅
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事例リスト
家・庭一体の住まいづくりを実現するその他の事例(テーマ別)
【定期借地権型の住宅団地】
カルチャータウン学園8丁目(兵庫県三田市)
シャルドネヒルズ(愛知県豊田市)
つくば春風台(茨城県つくば市)
東村山むさしのアイタウン(東京都東村山市)
MINA GARDEN 十日市場(神奈川県横浜市)
【戸建住宅団地】
照葉スマートタウン(福岡県福岡市)
びゅうベルジェ安中榛名(群馬県安中市)
高幡鹿島台ガーデン 54(東京都日野市)
フォレステージ高幡鹿島台(東京都日野市)
緑花園(磐田市)
【子育て支援・若者定住支援型住宅】
育実の丘(埼玉県さいたま市)
川根本町若者定住促進住宅(川根本町)
【建替住宅団地】
多摩平の森AURA243(東京都日野市)
【優良田園住宅】
由仁ビレッジ(北海道由仁町)
田園せきない(北海道伊達市)
ブレストガーデン恵庭(北海道恵庭市)
アーバンビレッジ(新潟県上越市)
新潟北潟地区(新潟県新潟市)
富山開ヶ丘(富山県富山市)
【中山間地への住み替え】
①空き家モニター
②古民家、広大な敷地
③行政による定住促進住宅
④趣味を充実させる移住
⑤リタイア後の移住
⑥農業を志した移住
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2-2 家・庭一体の住まいづくりに活かすポイント
家・庭一体の住まいづくりに活かすポイントを、実践事例による取組に基づき段階別に
整理し紹介します。
計画段階
■コンセプトを明確にする
・開発者のこだわり(エコロジーのまちづくりなど)を伝える[池田の森]
・その他の事例に見られる
■建設前からの入居者の理解促進・仲間づくり
・ワークショプで入居者による計画の理解~ルールづくりへ[ガーデンシティ舞多聞]
■エリアマネジメントの考え方を取り入れる
・エリアマネジメント※による維持管理と組織づくり[ガーデンシティ舞多聞]
・住民による管理・運営の仕組み(拠点・管理組合・まちの管理人)
[ブルームガーデンのぞみ野]
※地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための住民・事業主・地権者等による主体的
な取組
■自然環境との共生を目指す
・環境共生型のまちづくり[ガーデンシティ舞多聞]
・その他の事例に見られる
■共有庭など居住者でシェアする共有空間
・農園を介したコミュニティづくり[池田の森]
・共有庭を持つまちづくり[ビレッジガルテン小野原西Ⅱ]
■手の届く範囲の価格設定の工夫
・定期借地権方式で購入価格を抑える[ビレッジガルテン小野原西Ⅱ]
・その他の事例に見られる
■安全・安心なまちづくり
・街区内に交番設置など安全・安心への備え[ブルームガーデンのぞみ野]
・その他の事例に見られる
■コミュニティ形成の工夫
・コミュニティ形成の工夫を取り入れる[県営東部団地]
■多世代の生活様式等に対応
・多様な世代構成への対応[県営東部団地]
■自然環境との共生を目指す
・自然エネルギーや県産材の活用による環境配慮[池田の森]
■良好な住環境を連続させる
・空地の緑地をつなげ、地域の緑を連続させる[ハーモニア新町]
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建設~完成初期段階
■専門家などと協働したまちづくり
・専門家、地域の大学、入居者の協働によるまちづくり[ガーデンシティ舞多聞]
■共同作業や交流を通じてお互いを知りコミュニティを図る
・農園を介したコミュニティづくり[池田の森]
・情報の共有化とコミュニティの形成[ガーデンシティ舞多聞]
・暮らしやすいまちなみの維持・形成(住民が顔を合わせる仕掛け)
[ブルームガーデンのぞみ野]
■維持管理の組織づくり
・住民による管理・運営の仕組み(拠点・管理組合・まちの管理人)
[ブルームガーデンのぞみ野]
維持管理段階
■エリアマネジメント
・エリアマネジメントによる維持管理と組織づくり[ガーデンシティ舞多聞]
・居住者の意見を反映する仕組みの活用[ガーデンシティ舞多聞、ブルームガーデンのぞみ野]
■維持管理のルールづくり(ゆるやか~法的な位置づけ)
・維持管理のルールは人間関係づくりから[池田の森]
・状況に応じた管理[池田の森]
・これからの維持管理の課題[池田の森]
・地区計画、建築協定、景観条例、まちづくり条例、独自協定などによる、建物に関
するルール、居住環境に関するルールを定めている。[多くの事例に見られる]
■維持管理を記録に残す
・「まちかるて」による管理・運営の記録と保存[ブルームガーデンのぞみ野]
■活動に対する評価
・愛着や維持管理の意欲を生む第三者からの評価取得[ブルームガーデンのぞみ野]
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2-3
代表的事例における推進のポイント
●池田の森(静岡市駿河区)
★★取組の特徴
①開発者のこだわり(エコロジーのまちづくり)を伝える
②農園を介したコミュニティづくり
③維持管理のルールは人間関係づくりから
④状況に応じた管理
⑤これからの維持管理の課題
■コンセプト
「環境(住環境のエコロジー)、暮らし(コミュニティ)、食(農園)」が
テーマのエコビレッジである。
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【概要】
【基本データ】
所在地
静岡市駿河区
販売開始 平成16年
区域面積 約1.3ha
開発手法 民間開発事業
開発者
所有者
用地地域 第1種中高層住居専用地域
住宅戸数 35 戸
敷地面積 約 148 ㎡~297 ㎡(最多約 182 ㎡)
ルール
まちづくり協定
維持管理組織 (有)池田の森ランドスケープ
池田の森農園クラブ
ゴルフ練習場だった13,000㎡の土地の中心に約300坪の農園を置き、周りに35区画の戸建分
譲地、オフィス・アトリエ棟、ベーカリーカフェ、ショップなどを配置した。
雨水の利用、雨水を大地に戻す工夫、風力と太陽光の発電、落葉は堆肥に、農園は大きな緑
の空間・食べるランドスケープ、実のなる木、通過車両の入り込まない安全な道路計画、無農薬
で作る野菜、畑が育む安全なコミュニティなどエコロジーを目指したまちづくりである。
【取組の特徴】
①開発者のこだわり(エコロジーのまちづくり)を伝える
購入者募集、建設時には開発者のこだわりを、一人ひとりに伝え、それに沿った建築物が多く
建設されている。
森
・雨水…建物敷地と駐車場には雨水を溜めて浸透させる大きなタンクが埋設してある。庭木へ
の散水や夏の打ち水に雨水利用できる。(貯水量1.5㎥)
・緑化…緑地は4ヶ所に分散、ヒートアイランド化の防止に役立つ。農園(1,000㎡)を含めると全
体の15%が緑地である。
・街路樹…緑地以外にも木を植えるスペースを確保するとともに、団地内道路(幅6m)に、車の
スピードを抑制する出っ張り(イメージハンプ)を設けている。
・間伐材の利用…緑地の柵には間伐材を利用した丸太柵を設けた。質感や色彩において、金
属やコンクリート等の人口素材によりもまちなみに溶け込む。
・風力・太陽光発電…街区内の5灯の街路灯電力をまかなっている。
・農園…畑や田んぼは夏場には自然の冷却装置になる。
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②農園を介した人間関係づくり
・池田の森のコミュニティを取り持つのが“農園”である。
貸し農園が19区画(各5坪)あり、利用者で「池田の森農園クラブ」を組織。定例会では情報
交換をしたり、収穫した野菜で親睦バーべキューを開催しています。親睦バーベキューは、オ
フィス・アトリエ棟の前庭と、アトリエ内の板の間を利用し、農園クラブメンバー以外の団地住人
にも参加を呼びかけて親睦に役立てている。
・畑は父親が主役
池田の森の畑は無農薬が基本のエコガーデン。野菜の支柱も竹と麻ひもで作る。使用する
竹は父親たちが必要なときに近くの山に採りに行く。畑のコンポストも父親たちの手作りで、定
例会に出席するのもほとんどが父親たちである。父親のコミュニケーションがある池田の森に
は安全・安心な空気が流れている。子供たちも外で元気に遊んでいる。
③維持管理のルールは人間関係づくりから
建設に関する協定はあるが、維持管理に関する協定内容は無い。貸し農園利用者による
「池田の森農園クラブ」が、農地を介在した畑仕事やバーベキューなどのイベント開催で顔の
見えるコミュニケーションを作り、人間関係が築かれることにより、ゆるやかな目に見えないル
ールが存在している。人間関係づくりは、ゆるやかなルールの基礎ともいえる。
④状況に応じた管理
行政からの道路沿い緑化清掃等協力依頼に応えるため、「池田の森 緑地愛護会」を居住
者全員で結成し、行政と協力し、相互役割分担しながら実施している。
このような対応ができるのは、比較的コンパクトな住宅団地で、顔見知りの居住者が畑作業
等で、さらに人間関係を築き、お互いを理解しているため、柔軟な対応につながっている。
⑤今後の維持管理の課題
維持管理の明確な取り決めが無い状況の中で、現在の池田の森の雰囲気をどのように維持
していくのかが、今後の課題である。
当初の所有者から次世代に移るときに、どの程度池田の森の理念が伝わるのか不安要素も
残る。
管理・運営を担う事業者と所有者の間では環境に配慮した浸透性の駐車場整備が認識され
ていたが、実際の居住者は所有者の息子であったため、理念等の意図するところが伝わらず
駐車場がコンクリート床となった例もある。
そうした不安もあるが、農園を通じた人間関係づくりができており、維持管理に関する話し合
いの環境は整っているといえる。
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■住宅地の様子
父親のコミュニティ-野菜談義
○戸建住宅に囲まれた道路・緑地帯、ボンエルフ型道路、間伐材の活用、自然エネルギーの活用
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●ガーデンシティ舞多聞みついけプロジェクト(兵庫県神戸市)
★★取組の特徴
①環境共生型のまちづくり
②ワークショプで入居者による計画の理解~ルールづくりへ
③専門家、地域の大学、入居者の協働によるまちづくり
④情報の共有化とコミュニティの形成
⑤エリアマネジメントによる維持管理と組織づくり
■コンセプト
「ゴルフ場の地形と緑を活かした、
ゆとりある宅地規模のコミュニティ育成型自然住宅地」
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【概要】
【基本データ】
所在地
兵庫県神戸市垂水区
販売開始 平成 16 年
区域面積 約 6ha
開発手法 土地区画整理事業
開発者
独立行政法人都市再生機構
用地地域 第1種低層住居専用、第1種住居
住宅戸数 68 戸
平均区画面積 363 ~ 1,642 ㎡
(平均面積 708 ㎡)
募集形態 個人向け定期借地 28 画地
グループ向け定期借地 40 画地
ルール
建築協定、緑地協定、ガイドライン
維持管理組織 地区協定運営委員会
舞多聞みついけプロジェクト航空写真 UR都市デザインポータルサイトから引用
「ガーデンシティ舞多聞」は、地域の環境を活かしながら魅力ある居住環境の創造を目指し、
旧舞子ゴルフ場跡地を舞台に市民協働による新しいまちづくりを実現している UR 都市機構の
プロジェクトである。
UR都市機構は、魅力ある郊外居住のあり方とその実現のための取組の方向性を提言した
「『新・郊外居住』宣言」の一環として、神戸芸術工科大学齊木崇人学長の提言「新・田園都市
構想」をもとに、ゴルフコース跡地の現況地形を活かした緑豊かな住宅地(自然住宅地)のプロ
ジェクトを展開した。
世界で初めての「田園都市レッチワース」は、イギリスの産業革命末期(1903 年)に、荒廃し
た土地利用と劣悪な居住環境の改善をめざして建設が始まり、健康な生活と優良な居住環境
づくりをめざす世界の都市計画等のモデルとなった。100 年経た今でも、レッチワースには 4k
m四方に 3 万 4 千人が住み、その周りにはグリーンベルトと呼ばれる田園地帯がある。
この「田園都市レッチワース」から学び、新しい田園都市として展開したのが、「ガーデンシテ
ィ舞多聞みついけプロジェクト」である。このプロジェクトは、「緑豊かな質の高いコミュニティを
作る」という考え方に基づいて進められた。
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【取組の特徴】
①環境共生型まちづくり
○ゴルフコースの地形及び既存樹木を可能な限り残した宅地造成。
○保全した現況樹林を含んだ自然住宅地の供給。
○ゆとりある宅地規模。(平均約 700 ㎡)
・大規模宅地でありながら、なるべく少ない資金で居住できるよう、一般定期借地方式(50
年)で宅地供給。
○シンプルな街路パターン、現況林を活かした自然豊かな街区公園。
○宅地内のセットバック空間。
・地中化された電線類の埋設空間。
・景観や歩行性から芝生とエコブロック舗装(廃タイヤのリサイクル製品。透水性に富む)を採
用。
○ソフト面でも、専門家による講義の開催を通じて「みついけエコ倶楽部」の発足などを誘導。
②ワークショップで入居者による計画の理解~ルールづくりへ
○宅地募集前の平成 15 年からプロジェクトの理解や住まい手としての意識向上、入居後に向
けたコミュニティ形成等を目的に公開講座・ワークショップを実施した。
・その過程で、価値観を共有するもの同士でグループを形成。
・募集画地の一部で「グループ向け宅地募集」を実施。(8 グループ、40 画地)
○平成 16 年に宅地募集を予約販売で実施し、平成 18 年の引渡しまでの期間、更なるコミュニ
ティ形成や将来の住まい方に関する議論の場として、コミュニティワークショップを開催。入居
予定者自らによるまちづくりを実践した。
・入居後のイメージ形成を図るため、個別ヒアリングや住宅プランを作成する。
・全員合意による建築協定・緑地協定の内容を決定する。
・エコライフや緑地管理の勉強を行う。
・「協定運営委員会」「地中化運営委員会」の組織を入居前に立上げる。
・電線地中化やセットバック部分の整備内容は住民の合意形成のもとに決定する。
○募集後のコミュニティワークショップを通じて入居前にコミュニティ形成がなされ、宅地引渡し
後における委員会の主体的な活動に発展している。
③地域の大学との連携によるプロジェクトの実施
○上記取組を地区に近接した、神戸芸術工科大学との連携のもとに実施する。
④情報の共有化とコミュニティの形成
○公開講座やワークショップといった、事前に入居希望者同士が顔を合わせる過程を通じた、
住まい手自身によるコミュニティの育成を促進する。
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○みついけプロジェクトでは、舞多聞ホームページを通じてコミュニティづくりの実践内容を公
開し、今後順次開発される新しいコミュニティや周辺の既存コミュニティに向けての情報発信
を行っている。
⑤エリアマネジメントの維持管理と組織づくり
○エリアマネジメントの実践
「ガーデンシティ舞多聞みついけプロジェクト」は、国土交通省による「平成 19 年度エリアマネ
ジメント推進調査」の対象6地域の一つに選ばれ、都市再生機構と神戸芸術工科大学では、
みついけプロジェクトを舞台にエリアマネジメントの実践を行った。
○「みついけ役員会」の活動
①役員会の結成
みついけプロジェクトでは住民がまちづくリヘの継続的な参加を目的に様々なサポートを行っ
ており、「みついけ役員会」のメンバーは、コミュニティ自らがまちの運営を行うためのワークシ
ョップを通じて決定した。役員はまちづくりのルールを見守る「協定運営委員会」と、電線類の
地中化施設の管理を行う地中化運営委員会」の役員としての役割を兼務している。
②協定運営委員会
役員会は、都市再生機構や神戸芸術工科大学のサポートを受けながら、各住民から提出さ
れる「建築・緑地協定」などの審査を行っている。
これを契機に、神戸芸術工科大学では、建築・緑地協定などのルールを分かりやすく説明す
る「デザインガイダンス(ルールブック)」の作成をサポートしている。
みついけプロジェクトは、住まう前に住民によってルールを確定したために、実際に住みはじ
めてから不便を感じる項目や、各画地の立地や形状が異なることによる不都合が住民から指
摘されはじめていた。ここでは、自ら構築したルールをいかにして運用するかが課題となり、こ
れについても協定運営委員会で、ルール修正の検討などを自発的に行っている。
③自治会設立
宅地引き渡しから1年が過ぎ、実際に住み始める人が増えると、住民同士の交流といった課
題が主となりはじめた。これを契機に自治会設立の機運が高まり、協定運営委員会とは別に
自治会が設立された。
みついけプロジェクトでは、既存の自治会の定義にこだわらない組織を目指し、団体名を「舞
多聞みついけコミュニティ」とすることが決定した。
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■住宅地の様子
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