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要約 - 研究産業・産業技術振興協会
南米資源国 BOP ビジネス技術 に関する調査研究報告書 (要約版) 平成 23 年 3 月 財団法人 委託先 国際経済交流財団 社団法人研究産業協会 この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。 http://ringring-keirin.jp 南米資源国 BOP ビジネス技術に関する調査研究 (報告書の概要) 先進国市場が伸び悩む中、40 億人といわれる途上国低所得者層を対象とした BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスが注目されている。また、日本経済にとって金属資源 などを豊富に産出する南米資源国は、資源セキュリティの面から重要であり、貧困など現 地の社会課題の改善にも繋がる BOP ビジネスを通して、当該国との経済関係の交流を深め る事は重要である。本調査では、重要性が高まりつつある南米資源国(ペルー共和国、ボ リビア多民族国)を対象として、水処理、食品加工、再生可能エネルギーなど日本の優れ た技術分野について、現地ニーズを調査するとともに、具体的な事例による現地調査を通 じて、BOP ビジネスとしての可能性を調査した。 まず、当該国の経済、産業、貧困状況などを整理するとともに、各対象分野の状況や技 術的ニーズをまとめた。これらの結果を踏まえ、現地調査のための具体的事例として、 (1) 水処理分野:①汚水処理システム、 (2)食品加工分野:②超高圧加工処理装置、③ふりか け、(3)再生可能エネルギー分野:④ソーラーランタン、⑤バイオディーゼルエンジン、 (4)その他(教育分野):⑥文房具、の 4 分野、6 種の日本の技術・製品を選定した。 現地調査は、リマ、クスコ(ペルー)、ラパス、サンタクルス(ボリビア)の 4 都市を訪 問し、現地の日本大使館、日系人協会、商工会議所などの協力を得て、250 人を超える現地 関係者に技術・製品紹介を行い、アンケートや意見交換を通じて各技術・製品の現地への 導入の可能性やビジネス展開のための現地パートナーの可能性を確認した。特に、 「キヌア」 などの特産品の生産性や付加価値向上に繋がる技術・製品に対する期待が大きく、また、 工場などの排水処理に対するニーズが高いことが分かった。 今後、南米 BOP ビジネスを推進するために重要と思われる点としては、①現地でのビジ ネス展開において日系人組織が活用できる、②一部の日系人を除いて、現地企業や組織等 とはスペイン語でのコミュニケーションが必要である、③ビジネスを具体化させるために は、支援組織との連携による現地での実証試験や FS 調査が必要である、などが挙げられる。 (報告書の主要構成) (1)調査の概要 (2)BOP ビジネスの捉え方と推進に向けた動き (3)南米資源国における技術的ニーズ (4)南米資源国 BOP 層への提案技術・製品 (5)具体的事例による BOP ビジネスとしての可能性調査 (6)現地調査のまとめと BOP ビジネス推進のための課題 (7)添付資料 当該事業結果の要約 先進国市場が伸び悩む中、40 億人といわれる途上国低所得者層を対象とした BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネスが世界的に注目されており、日本としても、BOP ビジ ネスに取り組むための技術的対応を新たに検討する事の意義は大きい。 また、日本経済にとって金属資源を豊富に産出する南米資源国は、資源セキュリティの 面から重要であり、貧困など現地の社会課題の改善にも繋がる BOP ビジネスを通して、当 該国との経済関係の交流を深める事は重要である。 本調査では、重要性が高まりつつある南米資源国を対象として、食品加工、水処理、再 生可能エネルギーなど日本の優れた技術分野について、現地ニーズを調査するとともに、 具体例な事例による現地調査を通じて、BOP ビジネスとしての可能性を調査することを目 的とした。 調査は、まず南米資源国のペルー共和国(以下、ペルー)及びボリビア多民族国(以下、 ボリビア)について、公開情報などから、現地の経済や貧困状況ととともに、水処理、食 品加工、再生可能エネルギーの分野を中心に技術的ニーズを調査した。 次に現地のニーズも踏まえて、水処理、食品加工、再生可能エネルギーなどの分野から 南米 BOP ビジネスとして展開が期待できる我が国の技術・製品を調査検討し、事例として 現地で紹介する技術を決め、現地で用いる技術紹介資料を作成した。 現地調査は、南米資源国としてペルー(リマ、クスコ)、ボリビア(ラパス、サンタクル ス)の 2 ヶ国 4 都市を訪問して行った。現地日本大使館、日系人協会、現地商工会議所な どの協力を得て、現地企業や政府関係機関などへの技術紹介を行い、意見交換やアンケー トを利用して、紹介技術・製品の現地への導入の可能性や現地パートナーの有無などを調 べることにより、BOP ビジネスとしての可能性を調査した。 1. 南米資源国における技術的ニーズ (1)水処理分野の技術的ニーズ:汚水処理、農村や地方での安全な水の供給 ペルーでの上水道普及率は全国平均で 76%、特に首都圏周辺部や農村での普及率が低く、 浄水場の建設や上下水道の整備が国家的急務になっている。下水処理の問題がきわめて重 大で、下水処理の普及率は 24%で、汚水が未処理のまま河川、海洋などに放出されている。 ボリビアでの上水道は巨額の国家資金を注入し、普及率が全国平均で 77%まで改善した が、地方では 47%と低い。下水処理の普及率は全国平均で 25%であり、工場や大都市から の未処理汚水の放出による水質の劣化が大きな問題となっている。 (2)食品加工分野の技術的ニーズ:栄養改善、農業生産性向上、特産品の付加価値向上 ペルーでは、乳幼児の栄養失調が大きな問題で、政府は基本政策として、貧困緩和、栄 養問題改善を最も重視している。一方、ペルーの農業は、必ずしも近代的ではないが、農 産物が豊富で、農業従事者の割合も高いことから、農業競争力の強化が重要な課題である。 ボリビアでも乳幼児の栄養不良問題は深刻であり、政府は「栄養不良撲滅運動」を推進 している。ボリビアは、労働人口の約 40%が農業に従事しているが、低い農業技術の改善 が課題となっている。最近では、特産物の「キヌア」による産業化に力を入れている。 i (3)エネルギー分野の技術的ニーズ:地方の無電化地域への電力供給、農村部の灯り ペルーでの電気へのアクセスは 79%まで改善してきたが、依然として地方でのアクセス 率は低く、地方の改善が重要な課題である。発電は、火力と水力が中心であるが、太陽光、 風力、マイクロ水力、バイオマス、地熱などのクリーンエネルギーへの期待も大きい。 ボリビアの電気へのアクセス率は全国平均で 67%であり、地方では 28%と、南米の中で も低い。無電化の農村部では、蝋燭、ライター、電池など低級な代用品に高い費用を払っ ている。ボリビアでも、風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーへの関心が高まっ てきている。 (4)その他(教育):地方でも利用できる文房具、学習機材 ペルー、ボリビアとも、教育に対する関心は高いものの、教育の水準や状況は「都市部」 と「地方」では大きな格差が存在する。地方や農村部を対象とした教育・訓練などの取組 みも始まっている。 2. 南米資源国 BOP 層への提案技術・製品 (1)水処理分野 ・汚水処理システム(目的:汚水処理、対象:コミュニティー) :牡蠣殻を利用したトイ レ汚水の浄化システムで、上水道や電気が無い地域でも、トイレ排水を再利用するこ とで衛生的に水洗式トイレが使用できる。 (2)食品加工分野 ・超高圧加工処理装置(目的:産業育成、対象:現地企業等) :圧力を利用して農水産品 を簡単にエキス化、殺菌、熟成することが可能な装置で、操作や維持管理が容易であ るなどの特徴があり、アンデス特産の「キヌア」などの産業化への応用が期待される。 ・ふりかけ(目的:栄養改善・産業育成、対象:個人、家庭):使う原料を工夫すること で、貧困層の栄養改善食材として期待できる。また、現地の食材を使い、現地で生産 すれば、産業育成や雇用面でも期待できる。 (3)再生可能エネルギー分野 ・ソーラーランタン(目的:無電化地域での照明、対象:個人、家庭):太陽光パネル、 バッテリー、LED 照明から成り、簡単・高品質で長期間に亘って安心して使用できる。 ・バイオディーゼルエンジン(無電化地域での電力供給、対象:コミュニティー):ジ ャトロファなどの現地植物油によるバイオディーゼルで稼働するエンジンで、無電化 地域での発電機として長期実証試験を行っている。 (4)その他 ・文房具(目的:教育の質の向上、対象:個人、家庭、学校):価格が安く、教育や学習 に役立つものとして、携帯用のホワイトボード「そのまんまシート」、暗記に役立つ「チ ェックシート」、値段は必ずしも安くないが金属針のいらないホッチキス「ハリナック ス」を紹介。 3. 具体的事例による BOP ビジネスとしての可能性調査 (1)汚水処理システム トイレとしては、観光地、ホテルなどへの適用の関心が高く、有料トイレとすることに ii より、維持管理のための雇用が期待され、導入の可能性が示された。課題としては、スペ ースの問題が顕在化し、首都圏近郊の貧困層密集地などへ適用するためには、コンパクト 化が必要である。また、牡蠣殻に代わる現地資材適用の可能性検討も望まれる。なお、本 システムでの適用は難しいが、工場などの排水処理に対する現地ニーズが非常に高い。 (2)超高圧加工処理装置 現地での関心は高く、 「キヌア」などを用いた具体的な実験依頼や現地調査後の問い合わ せもあり、導入への期待は高い。単に設備売りということではなく、現地の産業育成にも 貢献できるように、どのようなビジネスモデルを構築するのが良いか検討する必要がある。 なお、ボリビアは国を挙げて「キヌア」の産業化に力を入れており、関連設備のニーズは 高い。 (3)ふりかけ 現地で試食してもらったところ、各地とも非常に好評であった。 「ふりかけ」はすでに日 系人経営のスーパーなどで販売されているが、日本の 3 倍近い価格であり、現地との連携 により、貧困層にも購入できる価格にするとともに、入手しやすい販売ルートを築くこと が課題である。 (4)ソーラーランタン リマ郊外の貧困層密集地等での需要はあまり高くないが、ボリビアなどの日照量が多い 無電化農村地帯への導入の可能性がある。更にビジネス化の検討を進めるためには、国際 的な支援機関等との連携が必要である。また、キヌア農地へのソーラー系ソリューソンの 提供が期待の大きいニーズである。 (5)バイオディーゼルエンジン 現地での関心は低く、今回の調査では導入に関して期待できる結果は見いだせなかった。 アクセスが困難な山岳地帯やジャングルなどの無電化地域での可能性をどのように確認す るかが今後の課題である。 (6)文房具 今回は時間の関係もあり、限られた範囲での紹介であったが、日本の文房具ビジネスに 関心を示す企業もあり、製品の種類、価格、販売方法等を検討すれば導入の可能性がある。 100 円 SHOP のような形式も含め、更なる調査が必要である。 4. BOP ビジネス推進のための今後の課題 今回の現地調査では、ペルーとボリビアを合わせ、日本の技術・製品に関心のある 250 人を超える人たちに技術や製品の紹介を行い、現地への導入の可能性や現地パートナーの 可能性を確認することができた。今後南米 BOP ビジネスを推進するために重要と思われる 点としては、①現地でのビジネス展開において日系人組織が活用できる、②一部の日系人 を除いて、現地企業や組織等とはスペイン語でのコミュニケーションが必要である、③ビ ジネスを具体化させるためには、支援組織との連携による現地での実証試験や FS 調査が 必要である、などが挙げられる。 iii