Comments
Description
Transcript
予算削減に苦しむ地方の消費者行政 サプリで病気になるかもしれない
文 / 安藤 佳子 アメリカ Ando Yoshiko サプリで病気になるかもしれない ● CR ホームページ http://www.consumerreports.org/vitamins-supplements/supplements-can-make-you-sick/?loginMethod=auto http://www.consumerreports.org/vitamins-supplements/15-supplement-ingredients-to-always-avoid/?EXTKEY= NH67S00H&utm_ source=acxiom&utm_medium=email&utm_campaign=20160728_nsltr_healthalertjuly2016 ● FDA ホームページ http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm516197.htm ほか アメリカはダイエタリーサプリメント (以下、サプ の成分と腎臓や肝臓等の臓器障害、心臓発作への関 リ) 大国。年間売上 400 億㌦の市場には約 55,600 以上 連、発がん物質の含有性などについて医師や研究者 のサプリがあり、毎年少なくとも 5,560 の新製品が による調査を行った。その結果トリカブト、カフェ 発売される。消費者はサプリの安全性を信じている イン粉末、緑茶抽出粉末、紅麹などを 「常に避けるべ が、医薬品のような承認を要せず、販売前にFDA (食 きサプリの 15 成分」として発表。CR では、FDA に 品医薬品局)への届出を定めた 1994 年の 「ダイエタ 対し規制強化を求めるとともに、病院・診療所でサ リーサプリメント健康教育法(DSHEA) 」成立以後、 プリを販売する医師もいるので、消費者も知識を深 届出は 1,000 件にも満たない。2013 年の会計検査院 め自己防衛するほうがよいとしている。 報告書では 2008 ~ 2011 年に FDA に報告されたサ FDA ではサプリ部門の体制強化のため 2015 年 12 プリによる健康被害は 6,300 件以上、1,000 件以上 月に独立部門に格上げし、2016 年8月にはサプリ企 が重篤で犠牲者は 92 人。なかには、大学病院の新生 業向けにガイダンス案を改訂した。1994 年 10 月 15 児集中治療施設で、医師が 1,500g に満たない未熟児 日以前に市場になかったサプリ成分を新規成分 (NDI) にプロバイオティックを与え8日後に死亡させた事 として、企業が販売 75 日前までに安全性や成分の 案 (係争中)もある。 分析結果等を FDA に届出、消費者に届く前に安全 CR(コンシューマーレポーツ)では、市販サプリ イギリス 性を明確にすることが可能になるとしている。 予算削減に苦しむ地方の消費者行政 ● CTSI ホームページ http://www.tradingstandards.uk/extra/news-item.cfm/newsid/1949 ほか 地方の Trading Standards (取引基準局) はイギリス な訴訟など1件でさえ取り扱えないのが実情であ の消費者行政の重要な役割を担い、消費者保護・食品 る。今回の報告書は全国 192 カ所の取引基準局のう 安全等に関する法執行機関であるとともに、商品テ ち 122 カ所からの回答に基づくものであるが、その ストや消費者からの苦情に対応している。 ところが、 約 80%で予算削減による業務の縮小、スタッフの この取引基準局の国民 ( 北アイルランド以外) 1人当 意欲低下などの影響があるという。消費者問題に詳し たりの年間予算が 1.99㍀(約 260 円)にまで減少した い弁護士は、全国的な事案1件か多数の地方の問題 ことが、CTSI(取引基準協会)の報告書で明らかになっ かの選択を迫られ、10 年前なら訴訟のケースでも た。2009 年以降、各地取引基準局の人員は 53%削減 「厳重注意」で決着せざるを得ない現状を指摘する。 され、予算総額は 2 億 1300 万㍀( 約 282 億円 ) から CTSI は、EU 離脱による経済状況の悪化が取引基 1億 2400 万㍀( 約 164 億円)に減少している。CTSI 準局への負担となり、さらに地方の緊縮財政が継続 は消費者保護の大きな後退であるとしている。大手 するのではないかと懸念する。しかし、EU 域外から 自動車メーカーの排ガス不正事件、ホバーボードの 主要市場圏へのアクセスのためには、イギリスが法 発火事故、ビーフバーガーへの馬肉混入事件など大 規制の順守や消費者保護に高いレベルを維持するこ きな問題が続発している折に、 年間予算が20万㍀(約 とがこれまで以上に重要であるとして、政府主導に 2650 万円 ) に満たない少人数の取引基準局には複雑 よる取引基準局の戦略的再構築を求めている。 2016.10 24 文 / 岸 葉子 オーストリア Kishi Yoko 硝酸塩の多いホウレンソウも ● VKI 『消費者』2016 年8月号http://www.konsument.at/cs/Satellite?pagename=Konsument/MagazinArtikel/Detail&cid=318897575642 ● VKI『消費者』 2016 年 2 月号http://www.konsument.at/cs/Satellite?pagename=Konsument/MagazinArtikel/Detail&cid=318896143410 ●欧州委員会規則 1258/2011 http://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32011R1258&from=DE ヨーロッパでは、ホウレンソウの売り方が日本と 酸塩は自然界に広く分布する物質だが、体内で亜硝 かなり異なる。無洗浄の葉をばらして量り売りにし 酸塩に変化すると、発がん物質ニトロソアミンの生 たり、洗浄した葉を袋詰めにして店に並べる。オー 成に関与すると言われる。 ストリア消費者情報協会(VKI)は、ウィーン市内で そこで、同協会は葉柄を取り除くか、湯がくこと 購入した生鮮ホウレンソウ6商品 (無洗浄3、洗浄 で硝酸塩を低減できると助言する。また、ビタミン C 3)を対象に、有害物質、硝酸塩、衛生面等をテス がニトロソアミンの生成を抑制することから、食事 トした。このうち3商品が、若い葉のうちに収穫し のときに果物を食べるよう勧める。 なお、同国では冷凍ホウレンソウが多用されてい たベビー(ヤング) ホウレンソウだった。 生のホウレンソウは傷みやすいため、購入後ただ る。葉をそのまま冷凍した商品のほか、裏ごしした ちに実験室に持ち込み、外観、におい、味を検証した 葉に脱脂乳を加えて冷凍したクリームホウレンソウ ところ、全商品が文句なしと評価された。残留農薬 (Cremespinat) もある。調理の手間が省けるとして、 や衛生面も問題なかった。しかし、最高額の有機ベ 根強い人気がある。同協会は、生鮮品に先立って冷 ビーホウレンソウから、4,470㎎/㎏の硝酸塩が検出さ 凍品のテストも行ったが、クリームホウレンソウに れた。EU が定める硝酸塩の基準値 (生鮮ホウレンソ は塩分が多い商品もあることから、購入の際は原材 ウ)は 3,500㎎/㎏なので、かなりの超過となる。硝 料表示を確認するよう助言している。 ドイツ 問題が多い 「ラクトースフリー」表示食品 ●ベルリン消費者センター ホームページ http://www.verbraucherzentrale-berlin.de/abmahnung-laktosefreie-produkte ●ハンブルク消費者センター ホームページ http://www.vzhh.de/ernaehrung/257198/laktosefrei-glutenfrei-eine-werbestrategie.aspx ●ヘッセン消費者センター ホームページ https://www.verbraucherzentrale.de/laktosefreie-lebensmittel 牛乳を飲むと消化不良を起こす乳糖 (ラクトース) 食品だが、乳糖を体内で分解できる大多数の人にとっ 不耐症のドイツ人は、約 15% とされる。小腸内の乳 ては、健康上のメリットがないばかりか、経済的な 糖分解酵素が不足するため、牛乳に含まれる乳糖を デメリットが大きいと指摘する。ハンブルク消費者 分解できずに起こる症状である。このような症状に センターの調査によると、ラクトースフリー表示の 悩む人を対象に、「ラクトースフリー」 (乳糖抜き) 表 ソーセージ、チーズ、パン、クッキー等は、表示の 示の牛乳、乳製品が販売されている。 ない類似品に比べて価格が数倍高いとのことである。 ところが、ラクトースフリー表示がある食品は、 しかも、乳糖が元々少ない食品に「ラクトースフリー」 牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター等にとどまらず、 と表示し、高い価格で販売する手法は、消費者をだま ソーセージ、パン、クッキー、チョコレート等、幅 す行為だと批判する。パンやクッキー等はいうまで 広い。ラクトースフリー表示の商品が氾濫するなか もなく、乳製品の中でもゴーダのようなハードチー で、乳糖不耐症ではない消費者も興味を示し、同商 ズには、乳糖が少ないからである。 はんらん このように問題が多いラクトースフリー表示だが、 品の売れ行きは伸びているという。各地消費者セン ターは、「ラクトースフリー食品は健康的」 と消費者 法的整備は遅れている。各地消費者センターは、統 に思い込ませる企業の宣伝戦略に苦言を呈する。 一的な表示制度の実現を求めるとともに、不耐症の まず、乳糖不耐症の人には有効なラクトースフリー 自覚がある人には専門医の受診を勧めている。 2016.10 25