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子どもたちの手でつくる新聞
一般社団法人 キッズ・メディア・ステーション 代表理事 太田 倫子(おおた・みちこ)氏 土曜日の午後の編集会議。小学生から高校生までのこども記 者たちが集まり掲載内容の企画を練る。現場での取材や写真撮 影、原稿作成・編集といった新聞制作のほとんどをこども記者が こなしている。『石巻日日こども新聞』は、子どもたちの力で「石 巻の今」を発信している。 取材・写真撮影・原稿作成など新聞制作は、こども記者が行なっている 子どもたちの手でつくる新聞 『石巻日日こども新聞』を発行するのは『一般社団法人 キッズ・メディア・ステーション』。代表の太田倫子さんは震災後に子どもたちへ接したとき、「大きな 震災を体験し気持ちが萎縮したのか、閉じこもって小さくなっているように感じました」と言う。その姿を見て、「このつらい体験を乗り越えるために、震災の体 験を逆に活かして、子どもたちで新聞をつくり情報発信をしよう」と考えた。しかし、太田さんは新聞発行に携わったことはなく、石巻出身だがしばらく地元を離 れていたため地域の人脈が強いわけでもない。新聞をつくるまでのハードルはいくつもあった。 まずは、新聞をつくるのだからと石巻日日新聞を訪ねた。理由は「小さいころ家にあったから」という単純なこと。門 前払いを覚悟していたが、意外にも話を聞いてもらったうえに、「どうせやるなら通常の新聞サイズにしてみては」と提 案された。しかも印刷まで協力してくれると言う。思わぬ味方が現れた。また、地元の子育て世代の母親たちが立ち上 げた「石巻復興支援ネットワーク」の協力が得られ、ジュニアリーダーとして活動する子どもたちをこども記者にと紹介し てくれた。 さらに、全国で子どもの遊びと学びをテーマに活動しているNPO法人CANVASから、「イベントの中で被災地の情報 を発信してみてはどうか」と誘いを受けた。2日間で10万人も集まるイベントでのデビューが決まった。 こうして、つくり手、つくる場所、発信する場所を得て「石巻日日こども新聞」は2012年3月11日に創刊を迎えた。 取材前の名刺交換もさまになってきた 新聞の制作は、子どもたちの自主性を尊重している。発行した月の月末から、次号に向けた新聞制作がスタート。こ ども記者たちは、毎週土曜日の午後に集まり、編集会議や取材、ワークショップなどを行なっている。活動当初は、石巻日日新聞の記者の方たちから、取材 の仕方や写真の撮り方、原稿の書き方など、一から教わりながらの制作だった。しかし今では、こども記者たちが自分たちで取り上げたい企画を持ち寄り、 取材から写真撮影、原稿の作成・編集まですべて自分たちが行なっている。一緒に参加している大人のスタッフは、必要に応じてアドバイスをしたり、取材先 との日程を調整したりするだけだ。 (C)Tohoku-Electric Power Co.,Inc. All Rights Reserved. 紙で情報を伝えたい 印刷は、通常の新聞とまったく同じように行なわれる。全紙4ページで、もちろん使用する紙も同じもの。石巻 日日新聞は、震災直後から津波に浸からなかった新聞用ロール紙を使って手書きで壁新聞を作成し、避難所な どで情報を発信し続けた。こども新聞といえども、同じものでつくってあげたいとの心遣いがあったのだろう。太田 さんも、「電子媒体で、インターネットなどを使って発信する方法もありますが、新聞という紙で情報を伝えたかっ たんです」と言う。両者とも紙に対するこだわりがあった。 2013年9月11日発行の第7号では、牡鹿半島の先に浮かぶ金華山を紹介した「みらいの金華山」や、「石巻を 世界一のまちにしたい」などの意見が交わされた「子ども未来づくりフォーラム」の記事が掲載されている。また、 こども記者たちが石巻を題材にしてつくった、小説「たらこ家族」や紙芝居劇「女の子スパイいしのまき」なども紹 介されている。 石巻日日新聞の協力を得て、通常のサイズの輪転機で印 刷している キッズ・メディア・ステーションは、子どもたちの『創る力』『伝える力』『つながる力』を育むことを設立の目的とし ているが、子どもたちは新聞作りの活動を通して確実に成長し、「石巻日日こども新聞」という形になった。 現在、この新聞は3月、6月、9月、12月の11日に4万部を季刊発行し、石巻日日新聞とともに石巻市内と、こども記者サポーター※に届けている。「子ども たちの取材スキルも上達してきたので、将来は月刊にして、よりたくさんの『石巻の今』を発信したいですね」と、太田さんは目標を語ってくれた。 震災でつらい体験をしながらも閉じこもることなく、活動を続けるこども記者たち。彼らがつくる新聞には、瓦礫だらけだった街から、復興に向け変わってい く石巻と、子どもたちが創る『未来のいしのまき』が描かれている。ぜひ、手にとって読んでもらいたい。そしてこども記者サポーターとなり、未来の石巻を応 援してみてはどうだろうか。 ※こども記者サポーター 一口10,000円/年のサポートに対して、石巻日日こども新 聞各100部(3月11日、6月11日、9月11日、12月11日発 行)を毎回送付している。 http://kodomokisha.net/boshu/index.html こども記者サポーターになると、3ヵ月ごとに新聞が手元に届く 一般社団法人キッズ・メディア・ステーション 〒980-0011 仙台市青葉区上杉5-3-47大浦ビル202 石巻日日こども新聞のこども記者たち 2013年10月取材 (C)Tohoku-Electric Power Co.,Inc. All Rights Reserved.