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第39回 日本毒性学会学術年会 シンポジウム12 「In vitro毒性試験法の探索毒性試験への展開」 S12-5 ヒト肝細胞スフェロイド培養法を用いた in vitro 代謝・毒性評価 ○太田 之弘1,6,王鞍 孝子2,6,長井 大地3,6,岩井 久和4,6,片木 淳5,6 1中外製薬株式会社,2丸石製薬株式会社,3日本化薬株式会社, 4株式会社三和化学研究所,5小野薬品工業株式会社, 6安全性評価研究会 スフェロイド分科会 背景 医薬品の開発において化合物及びその代謝物のin vitro肝毒 性評価が,肝細胞や組織等を用いた種々の方法により試みら れてきた. しかし,従来法では代謝能を長期間維持することが難しく,より 生体に近い機能が維持された肝細胞培養系による毒性評価法 の確立が望まれてきた. また,ヒト-動物種差およびIVIVCの問題をクリアできるin vitro評 価系が望まれていた. 近年,より生体に近い培養デバイスとして三次元培養基材が開 発されIn vitro代謝毒性評価での使用が可能となってきた. 目的 肝細胞の長期培養が可能で,より生体に近い機能維持が可能 といわれている三次元(スフェロイド)培養法の有用性について 『代謝および毒性』の側面からヒト肝細胞を用い多施設で検討 した. ・従来法で困難であった代謝物の検出系の構築 ・長期暴露時に発現する肝毒性の評価系の構築 をめざし実施した. Method 【Cell-able】 使用したプレート フィーダー細胞と共培養した場合,より安定したスフェロイド形成が可能 細胞非接着領域 肝細胞スフェロイド 細胞接着領域 【Micro Sphere Array】 肝細胞のみでスフェロイドを形成することが可能 Method 培養条件 Cell-able プレート Micro Sphere Array (96well プレート) (48well プレート) トランスパレント STEMバイオメソッド Lot 228 ( 日本ベクトン・ディッキンソン : BD ) ヒト凍結肝細胞 Lot Hu8110 ( 日本チャールス・リバー : CR ) 2 x 104 cells/well 5.7 x 104 cells/well 3T3-Swiss albino フィーダー細胞 JCRB9019 (Lot 04052005) 8 x 103 cells/well 培地 ー 肝細胞と1:1播種 RM101培地(トランスパレント) Williams’E 培地 1%FBS添加、フェノールレッド不含 10%FBS添加、フェノールレッド不含 100 μ L/well 400 μ L/well Result 長期間の細胞維持 スフェロイド培養における細胞形態の推移 【Cell-able】 Lot Hu8110(フィーダー細胞有り) 肝細胞播種直後 (Day -4) 播種1日後 (Day -3) 暴露開始後 (Day 7) スフェロイド形成後,約1ヶ月まで の培養が可能であり,培養期間 中のスフェロイド形態は安定して 維持されていた. 施設間でハンドリングの差が生じ にくい系であると感触を受けた. Day 14 Day 21 Result 長期間の細胞維持:スフェロイド培養における Albumin分泌量及び細胞形態の経時的推移 Albumin secretion (ng/day/well) 1500 Lot: 228 Lot: Hu8110 1000 500 0 0 3 6 9 12 15 18 Albumin secretion (ng/day/well) 【Micro Sphere Array (MSA)】 【Cell-able】 250 200 150 100 50 0 0 21 7 14 Experimental period (day) (Lot 228) 21 3 6 9 12 15 18 21 Experimental period (day) Experimental period (day) 2 Lot: 228 Lot: Hu8110 2 14 7 21 Experimental period (day) (Lot 228) 肝特異機能の一つであるAlbumin産生は,肝細胞ロット間差あるいは培養日数毎の増減はあるものの, 培養期間を通じて維持されていることが確認された. Method 代謝物予測に関する検討 <実験スケジュール> Cell-able (肝細胞2Lot間で評価) Day -5 :Feeder細胞を播種 Day -2 :肝細胞を播種 肝細胞数 2×104 cells/well (96 well plate) 培地交換 → (3回/週) MSA (Feeder細胞の有/無で評価) Day -7 :Feederなし:肝細胞を播種 Co-culture :Feeder細胞と肝 細胞を1:1で播種 肝細胞数 5.7×104 cells/well (48 well plate) ←Day 0 ←Day 2 ←Day 7 各時点で化合物を曝露し,48時間(2日)もしくは168時間(7日)の ←Day 14 代謝反応性を評価. ( 化合物暴露濃度は 10μmol/L ) ←Day 21 培養上清をアセトニトリルにより除蛋白後、LC/MS/MSで分析内標(IS)に対するresponseを求めた. 代謝活性の指標として基質減尐率を算出.(対照wellのresponseを100%とした時の減尐率) (対照wellはFeeder 細胞のみ(Feeder-freeの系では培地のみ)に化合物を暴露) Acetaminophen 肝細胞 2Lot(BD及びCR)間の代謝能比較 Acetaminophenの48時間反応 (Cell-able) Lot BD 50 0.8 40 0.6 30 0.4 20 0.2 10 0 0 Day 0 Day 2 Day 7 Day 14 Day 21 Lot CR 0.4 Response 基質減尐率(%) 60 60 0.3 40 0.2 20 0.1 0 基質減尐率(%) Response 1 0 Day 0 Day 2 Acetanimophen sulfate 基質減尐率 Day 7 Day 14 Day 21 Acetanimophen glucuronide 用いた2つのロットの凍結ヒト肝細胞では、代謝の相違は質的な差は小さく、量的な差が認められた. 基質の反応率(基質減尐率)からみた代謝活性はほぼ試験期間中28日間持続していた. MSA(Feeder-free)についてもCell-able,と同等に活性を維持していた. Imipramine 反応時間による代謝能の推移の比較 Imipramineの代謝能 (Cell-able, Lot BD) 反応時間:48時間 100 3 80 2 60 40 1 20 0 0 Day 0 Day 2 Day 7 Day 14 基質減尐率(%) Response 4 Day 21 反応時間:168時間 Response 80 3 60 2 40 1 20 0 0 Day 0 Day 2 Day 7 Demethyl desipramine Hydroxy desipramine Imipramine-N-glucuronide Hydroxy imipramine glucuronide2 基質減尐率 基質減尐率(%) 100 4 Day 14 Day 21 Desipramine Imipramine-N-oxide Desipramine-2-O-glucuronide Hydroxy imipramine glucuronide1 茶色系の棒グラフは第1相代謝物 緑色系及の棒グラフは抱合体 Result Cell-able とMSAの培養系における各代謝 物の検出結果(全培養期間) 実施施設内訳 Cell-able 5施設 (A, B, C, D, E) MSA 1施設 (E) 化合物名の下段は主代謝酵素を示す *保持時間の異なる位置異性体 臨床で認められるグルクロン酸抱 合及び硫酸抱合の第2相代謝物の 検出が可能であった. MSAではCo-cultureの方が Feeder-freeの場合よりも代謝物 産生能が高かった. LamotorigineとSulbtamol の代 謝物は、 in vitro試験において検 出困難と報告されていたが、本検 討のspheroid培養(Cell-able)で は検出可能であった. Lamotorigine, Salbutamol Lamotorigine (左)及びSalbutamol (右)の 代謝物のLC/MS/MS分析 (Cell-able) Lamotorigine Salbutamol 256.0>109.0(ES+) 3.62×105 240.1>148.0 (ES+) 7.29×106 Lamotorigine-N-glucronide Salbutamol-4-O-sulfate 432.0>256.0(ES+) 320.0>240.0 (ES+) 5.26×103 8.84×104 <分析条件(共通)> LC条件: UPLC 逆相系 リニアグラジエント MS条件: ESI MRMモード I.S.: デキストロルファン酒石酸 Method 肝毒性評価予測に関する検討 <実験スケジュール> Day -9 -7 -5 -2-1 0 2 5 7 9 12 14 16 19 21 共通作業 Cell-able Micro Sphere Array 化合物暴露と試料採取 (3W) フィーダー細胞播種 フィーダー細胞播種 肝細胞播種 培地交換 肝細胞播種 培地交換 曝露,サンプル採取(逸脱酵素,Albumin) 暴露,サンプル採取 ( 逸脱酵素,Albumin ) 測定項目: AST, ALT, LDH, γ -GTP, Albumin Acetaminophen albumin Cumulative Albumin secretion(μg) secretion (mg) 2.0 Cumulative albumin secretion (mg) Cell-able (Lot 228) Albumin 1.5 1.0 0.5 0.0 7 25 14 (day) 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 0 21 AST 20 2.5 AST Cumulative Cumulative AST leakage (mIU/well) leakage (mIU/well) Cumulative AST leakage(mIU/well) Cumulative AST leakage (mIU/well) 0 15 10 5 0 0 7 0 mol/L 0 mol/L 14 (day) 250 mol/L 250 mol/L Cell-able (Lot 228) Cell-able Cell-able (Lot Hu8110) Albumin 3.0 21 500 mol/L 500 mol/L 14 12 10 8 6 4 2 0 7 14 (day) 21 AST 0 1000 mol/L 1000 mol/L 7 2000 mol/L 2000 mol/L 14 (day) 21 4000 mol/L 4000 mol/L Hepatocyte Lot No.228 Day7_Control Day7, Control Day21_Control Day21, Control Day7_4000uM Day7, 4000uM Day21_250uM Day21, 250uM 両lotのスフェロイドとも高用量で早期からAlbumin産生量の低下 がみられ,投与の延長により低用量でも同様の変化がみられた. Lot 228は最高用量でASTの増加がみられたが,その他の項目で は明らかな逸脱酵素の増加はみられなかった. 一方lot Hu8110ではAST以外にもALTやLDHの増加がみられ, その変化は用量依存的であった. Imipramine MSA (Lot 228) 0.5 0.0 4 3 2 1 0 0 7 14 (day) 21 ALT 5 4 Cumulative AST leakage (mIU/well) AST 5 21 (day) (mIU/well) 14 Cumulative ALT leakage (mIU/well) Cumulative ALT leakage 7 Cumulative ALT leakage (mIU/well) 0 3 2 1 0 0 0 mol/L 0 mol/L Cell-able (Lot 228) Day7, Control Day7, 100mM Day14, Control Day14, 30mM 7 3 mol/L 3 mol/L 14 (day) 21 10 mol/L 10 mol/L 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 0 7 14 (day) AST 50 40 30 20 10 0 21 Cumulative ALT leakage (mIU/well) 1.0 Cumulative AST leakage (mIU/well) 10.0 Albumin secretion(μg) Albumin secretion(μg) 1.5 Albumin 12.0 Cumulative ALT leakage (mIU/well) Cumulative albumin secretion (g) Albumin 2.0 Cumulative AST leakage (mIU/well) Cumulative albumin secretion (g) Cell-able (Lot 228) 0 30 mol/L 30 mol/L 7 50 mol/L 50 mol/L 14 (day) 21 ALT 6 5 4 3 2 1 0 0 7 14 (day) 21 100 mol/L 100 mol/L MSA (Lot 228) Day7, Control Day14, Control Day7, 100mM Day14, 50mM Cell-ableにおいて100umol/Lでは曝露初期より Albumin産生能の低下がみられ,5日目には殆ど産生 能は見られなかった. 100umol/Lに続き,50umol/L,30umol/Lの順に,濃 度依存的な時間の遅延を伴い,Albumin産生能低下 と,AST,ALTの上昇が見られた. これらの変化はMSAにおいても同様の推移を示した. Fialuridine 培養液中のASTの漏出 (Lot Hu8110) ヒト肝細胞スフェロイドの形態変化 (Lot Hu8110 ) Day2 Day5 Day9 Day12 Day16 Day19 Control (DMSO 0.5%) Fialuridine 100μmol/L Day7までFialuridineによる変化は認められなかったが,Day9以降, AST量増加および形態変化が, Fialuridineの臨床Cmax 1μmol/Lより濃度に応じて認められた.なお, Lot 228も同様の結果であった. Result まとめ • 今回の検討において,ヒト肝細胞スフェロイド培養法は従来法では 困難であった代謝物検出や肝毒性評価を可能とするポテンシャル を有していることを示唆する結果が得られた. • 長期間の細胞維持が可能となり初めて検出可能な評価系として 有用性が認められた. • 第2相代謝生成物の検出,経時的な代謝物生成の追跡 • 長期培養で発現する毒性評価 ,etc. • 代謝・毒性を総合的に評価可能なIn vitro試験系の構築が可能と なる. • ハンドリングが容易で,施設間差が比較的尐なく, 「In vitro 代謝・ 毒性試験法」として1つの試験法の確立も考えられた. Acknowledgment 本発表にあたり、ご助言、ご指導頂きました 安全性評価研究会 スフェロイド分科会の会員各位に感謝申し上げます アドバイザー 小島 肇 (国立医薬品食品衛生研究所) 絵野沢 伸 (国立成育医療センター) 荻原 琢男 (高崎健康福祉大・薬) 安全性評価研究会 スフェロイド分科会 参加会員 旭化成ファーマ株式会社 小平 輝朊 丸石製薬株式会社 王鞍 孝子 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社(実施時) 和田 一輝 小野薬品工業株式会社 片木 淳, 松本 範人 株式会社三和化学研究所 岩井 久和, 井上 由紀子, 高橋 直希 日本チャールス・リバー株式会社 内藤 一史 株式会社大塚製薬工場 金田 信也, 吉岡 祐一郎 財団法人食品農医薬品安全性評価センター 田中 翔 株式会社トランスパレント 城村 友子, 小関 恵美子, 池谷 武志 エーザイ株式会社 柿木 基治, 大辻 摩希子 株式会社イナリサーチ 小枝 暁子 STEMバイオメソッド株式会社 八尋 寛司, 田村 朊子 日本化薬株式会社 長井 大地 株式会社住化分析センター 長尾 卓也, 楠元 久美子 DSファーマバイオメディカル株式会社 上田 忠佳 中外製薬株式会社 太田 之弘 (順不同,敬称略) ご静聴ありがとうございました. 安全性評価研究会 スフェロイド分科会