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平成27年度 日本体育協会スポーツ医・科学研究報告 №Ⅰ ジュニア期

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平成27年度 日本体育協会スポーツ医・科学研究報告 №Ⅰ ジュニア期
平成27年度 日本体育協会スポーツ医・科学研究報告
№Ⅰ ジュニア期におけるスポーツ外傷・障害予防への取り組み
−第3報−
研 究 班 長 福林 徹1)
研 究 班 員 奥脇 透2) 加藤 晴康3) 佐保 泰明4)
谷 諭5) 津田 清美6) 中田 研7)
古谷 正博8) 三木 英之9) 宮崎 誠司10)
山田 睦雄11)
担当研究員 青野 博12)
目 次
1.緒言………………………………………………………………………………………………………… 3
2.各競技におけるスポーツ外傷・障害予防プログラムの検証
2−1.サッカー…………………………………………………………………………………………… 5
2−2.女子バスケットボール…………………………………………………………………………… 16
2−3.柔道………………………………………………………………………………………………… 35
2−4.ラグビー
2−4−1.若年ラグビー選手における脳振盪/脳振盪疑いへの対応…………………………… 56
2−4−2.高校ラグビー選手における脳振盪既往歴と反応速度の関係………………………… 63
2−4−3.高校ラグビー選手におけるタックル動作の特徴……………………………………… 66
3.頭頚部外傷に関する基礎研究
3−1.サッカーのヘディングにおける子供モデルでの頭部衝撃の解析…………………………… 69
1)早稲田大学、2)国立スポーツ科学センター、3)立教大学、4)帝京大学、5)東京慈恵会医科大学
6)日本バスケットボール協会、7)大阪大学大学院、8)古谷整形外科、9)とつか西口整形外科
10)東海大学、11)流通経済大学、12)日本体育協会
─1─
1.緒言
研究班長:福林 徹1)
本研究もいよいよ最終年を迎えた.今回もサッ
外傷として脳振盪が認知され報告が増えた可能性
カー,女子バスケットボール,柔道,ラクビー,
が高いと思われた.
そして基礎的研究として頭頸部外傷に関する研究
ラクビーにおいては最近特に注目を浴びている
が報告された.また研究の成果は第26回日本臨床
脳振盪について二つの報告がなされた.一つ目は
スポーツ医学会でシンポジウム「ジュニア期にお
ラクビー協会医事委員会によるもので若年ラグ
けるスポーツ外傷・障害予防への取り組み」とし
ビー選手に対しての試合現場でのマネジメントに
て取り上げられた.本年度の報告は基本的には昨
関してで,World Rugbyが出しているGraduate
年度の報告を進歩・発展させたものである.以下
Return To Play(GRTP)の実施の巡視である.
各報告を簡単に記載する.
しかしその実施状況が浸透しないため95回全国高
サッカーでは昨年度までのジュニア期サッ
等学校ラグビーフットボール大会においては脳振
カー選手に加え大学女子選手にもFIFA11+を適
盪の判断をチームドクターからマッチドクターに
応した.その結果以下のような結論が得られた.
させる処置が試みられた.また個人研究ではある
FIFA11+をジュニア期サッカー選手に実施する
が,高校選手における脳振盪の既往歴と反応速度
事により傷害発生を全体として予防できること,
の研究が報告された.その結果タックル動作にけ
また大学女子選手においては新たに前十字靱帯損
る選択反応速度は脳振盪による影響をうけておら
傷への予防効果があることが判明した.また同時
ず,タックル動作時の切り返し動作の影響を受け
に行ったオスグッドシュラッター病に関する調査
ている事が示された.
からおよそ1/3のジュニア期の選手に既往歴があ
このほか頭頸部外傷に関する基礎研究として
ることが明らかになった.
サッカーのヘディングにおける子供モデルでの頭
女子バスケットボールでは高校女子バスケット
部衝撃の解析が報告された.本研究ではHIC(頭
ボール選手を対象に膝外傷予防に関する研究を
部損傷基準値 Head Injury Criterion)を用いヘ
行った.その結果膝内側変位量が膝外傷発生と有
ディングの安全性を検討した.その結果通常のヘ
意な関連を持つ事が判明した.また独自の外傷予
ディングでは脳への影響は少ないと考えられる
防プログラムを作成しその効果を検討した.その
が,繰り返しのヘディング等の条件下での安全性
結果介入群においては,左脚の膝内側変位量が有
も考慮する必要がある事がわかった.
意に減少し,
右脚についても減少傾向が認められ,
以上今回は4種目に関して6種の研究報告を頂
ある程度プログラムの有用性が示唆された.しか
いた.研究最終年次としてこれらの研究が満足い
し本プログラムによってはフィジカルパフォーマ
くものであるかは,報告書を読んでいただく皆様
ンスの向上は認められなかった.
にご判断いただきたい.
柔道においては高校の指導者および柔道部員に
ただ今回の研究プロジェクトで我々が目指すも
平成25年度に作成した予防プログラム「柔道きほ
のはジュニア期におけるスポーツ外傷・障害の予
ん運動」を幅広く配付し脳振盪を含む頭頸部外傷
防であり,サッカー・女子バスケットにおける下
の予防に努めた.介入前後での頭部外傷の報告を
肢の外傷や柔道・ラクビーにおける脳振盪に限っ
見ると,頭部外傷は普及直後は頭部外傷は増加し
たものではない.今回この研究がもとになり,野
たが2年目以降は減少した.1年目の増加は頭部
球,バレーボール,陸上,水泳など各種のスポー
ツで同様の研究が行われ,スポーツ医科学がます
1)早稲田大学
ます発展する事が望まれる.また研究のみでなく
─3─
スポーツ現場における実践指導も重要である.こ
ればと思う.
れを実現すべく我々は現在,日本体育協会公認ア
2020年には東京オリンピツクが開催される.そ
スレティックトレーナーの養成に力を注いでお
れに向けてスポーツ医・科学面での成功を祈念す
り,これが公認スポーツドクターと協力して現場
る.
における外傷・障害の予防に取り組んでいただけ
─4─
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