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2016 年波乱の幕開け-中国株はどうなる!?

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2016 年波乱の幕開け-中国株はどうなる!?
2016 年 1 月 15 日
第 58 号
2016 年波乱の幕開け-中国株はどうなる!?
大和住銀投信投資顧問
部長
経済調査部
門司 総一郎
前回に続き、中国株などの分析を踏まえて世界の株式市場が下げ止まる条件を考えます。前回は「中
国株は下げ止まらないが、他の株式市場は下げ止まる」とのシナリオを検討しましたが、今回は「中
国株式が下げ止まることにより、他の株式市場も下げ止まる」とのシナリオについて考えます。
まず年初からの中国株安について検討します。前回述べたように、この株安は景気の悪化などによ
るものでなく、政府への期待感の剥落によるものと考えています。
中国株価指数の動き( 日次)
中国株式の予想PER ( 月次、倍、今後12ヵ 月ベー ス)
7000
3500
50
3000
40
5000
2500
30
4000
2000
20
3000
1500
10
1000
0
2011年
上海(左)
6000
2000
15年1月
深せん(右)
15年4月
15年7月
15年10月
深せん
上海
16年1月
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
2012年
2013年
2014年
2015年
出所:ブルームバーグより大和住銀投信投資顧問作成
昨年の株価下落局面において政府は政策総動員で株安を食い止めようとしました。その効果により
株価は底入れ、年末にかけて回復します。
「暴落」のイメージが強い昨年の中国株ですが、年間で上海
総合指数は 9.4%上昇、深せん総合指数に至っては 63%上昇と実はリターンはプラスです。夏場の株価
急落にもかかわらず年末にかけて株式市場が持ち直したことから、投資家(特に個人)の間には「最後
は政府が何とかしてくれる」との期待感が根強く残りました。
市場参加者だけではありません。昨年末にはエコノミストの間で「景気を下支えするため、政府は
株価を押し上げる」との声が聞かれました。このようにエコノミストの中にも「政府は株式市場をコ
ントロールできる」との期待感がありました。
この期待感は今年に入っていきなり試されることになりました。昨年 7 月に導入された大株主(発行
済み株式の 5%以上を保有する株主)の売却禁止解除を 1 月上旬に控え、需給悪化を恐れる投資家の売り
から年初の中国株がいきなり急落したからです。この下落は政府に対策を促すものであり、いわゆる
「催促相場」に当たるといえます。
政府は早速「今後 3 ヵ月間は大株主の売却は発行済み株式の 1%以内に止める」との新たな規制を打
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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市場のここに注目!
2016 年 1 月 15 日
ち出しました。しかし売却禁止の解除自体が先送りされることはなかったため、市場にとって満足で
きる回答ではなかったようです。その後も中国株は下落を続けました。
株価は下落するものの、昨年のように政府が積極的に株安阻止に動く姿勢はほとんど見られません。
ここ数日は上海総合指数が 3000 ポイントを割り込むと反発する動きが見られるので、政府が買い支え
しているように見えますが、せいぜいその程度。投資家の政府に対する期待感は大きく低下したと思
われます。
中国株が反発するには、政府が本格的な株価対策を再開して市場の信頼を取り戻すか、あるいは株
価下落を容認して適正な水準まで調整するのを待つかのどちらかになりますが、前者は困難です。
上海総合指数は既に昨年 8 月の安値と同水準まで下落しており、昨年買い支えに参加した政府系金
融機関などは評価損を抱えていることになります。そのため新たに大規模な買い支えを開始すること
は困難と思われます。また大株主の売却禁止や新規上場延期などは企業の経営に支障をきたしかねず
長期に続けることはできません。習近平国家主席が進める構造改革の障害となる恐れもあります。
人民元に売り圧力がかかっているため、金融緩和による株価支援も封じられています。このように
考えて、政府が株価対策を意図しても打つ手がないと見ています。ポイントを定めて介入し、下落ペ
ースを緩和することがせいぜいで、株価の下落を容認せざるを得ないでしょう。
これは必ずしも悪いことではありません。昨年同様の大規模な株価対策に踏み切れば、一時的に反
発しても数ヵ月後にまた株価が急落する可能性大です。それよりも下落を容認した方が、目先一段安
するにしても本格上昇に転じる時期は早いと思われます。
目先の一段安もそれ程大きなものにならない可能性があります。昨年末時点の予想 PER(株価収益率)
は上海総合指数が 15.2 倍、深せん総合指数が 38.4 倍ですが、指数の下落率を勘案すると 1 月 14 日時
点では PER はそれぞれ 12.9 倍、30.9 倍です。深せんは割高ですが、上海については既に割安、下げ止
まっておかしくない水準です。
以上を踏まえて、中国株は目先一段安の可能性はあるものの、底入れは近いと考えています。その
場合、世界の株式市場も底入れすることになるでしょう。ただし、政府が中途半端に介入して株価を
持ち上げることにより、かえって底入れのタイミングが遅れる可能性はあります。このリスクには注
意すべきでしょう。
以上
本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので
す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成
者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す
る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。
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