日本のカウンセリングと英国のカウンセリングの違い - Japan

日本のカウンセリングと英国のカウンセリングの違い
日本では、カウンセラーになりたい人が多いと 聞きます。 メンタル
ヘルスケアに関心が高まっているのは、とてもよいことです。 しか
し、未だに、カウンセリングが、社会的には利用しにくいものであ
り、認識が低いことに変わりはないと思います。 カウンセリングが何
なのか適切に理解されていません。 私自身、日本に行ったとき、カウ
ンセリングの話を聞くと、何か曖昧でよくわからないと感じることさ
えあります。 専門家の私でさえそう感じるのですから、一般の人が、
カウンセリングが何なのかよくわからないというのは、当然のことだ
と思います。
日本では、カウンセリング、サイコセラピー（心理療法）、臨床心理
学、などを全部含め、臨床心理といっているようです。 カウンセラー
も臨床心理士といわれているようです。そして、精神科医や心療内科
などの治療も、催眠療法も、留学相談も、 相談するものは何でもカウ
ンセリングと言われている傾向があるようです。 それが混乱を招いて
いる原因の一つではないでしょうか。 また、臨床心理士は、精神科医
の指導のもとに患者を診ている場合もよくあるようです。 そして、日
本の臨床心理学、カウンセリングは、実践よりも理論が中心になって
いて、特に臨床士が定期的にスーパービジョンを受けたり、自分自身
のセラピー に行ったりということを規定としているところも少ないよ
うです。
英国では、カウンセリングは、一つの分野として独立しています。 カ
ウンセリング・サイコセラピー・カウンセリング心理学が一つのグ
ループになります。 臨床心理学や精神科の治療は、カウンセリングと
は別のものとして区別されます。 ですから、臨床心理士とカウンセ
ラー･カウンセリング心理士は、違うものです。 また、催眠療法や芸
術療法、音楽療法なども、心理療法と別のものとして区別されます。
心理療法の中のそれぞれのやり方として、それらが心理療法に含まれ
るのではなく、 一般的には独立した別の療法なので、心理療法の中に
は含まれません。 ですから、催眠療法士や芸術療法士は、心理療法士
とは違うものです。 日本では、様々な療法を総称して、各種心理療法
という言葉が聞かれることがありますが、これは日本特有の言い方で
す。 心理療法には、様々な技法がありますが、それを総称して心理療
法というのであり、色々な種類の心理療法が存在するのではありませ
ん。 前述のように、催眠療法や芸術療法などは、一般には独立した別
のものですので、 各種心理療法という言葉は矛盾しているといえるで
しょう。
日本では、メンタルヘルスの治療が医学を中心に行われ、カウンセリ
ング・サイコセラピーが、まだ社会的に評価されておらず、 カウンセ
リング・サイコセラピーが、医療を助ける形で補足的な治療法になっ
ています。 ですから、サイコセラピスト・カウンセラーの社会的な位
置が、医師に比べて曖昧になっているのが現状です。 しかし、英国で
は、カウンセリング・サイコセラピーのシステムが整っており、社会
的にも認められている職業です。 そして、医者の補助的な役割ではな
く、独立した分野として、心理学的な面からのメンタルヘルスの治療
法として広く利用されています。 例えば、うつに関しても、医学的な
アプローチの補足的なものではなく、同等の別な治療法として用いら
れているものです。 日本では、うつは薬で治すものになっています
が、英国では、他の欧米諸国と同じように、 薬がなくても心理療法だ
けで充分に改善する可能性があるものとされ、利用されている治療法
です。
英国でのカウンセリングは、理論はもちろんのこと、実践が重視され
ます。 訓練でも、スーパービジョンや自分のセラピーを受け、実際に
人間関係の中で学んでいく方法がとられます。 また、英国では、カウ
ンセリングが病気のためと言うよりは、自己開発の要素が多分に含ま
れていることです。 カウンセリングは、自分というものを見つめてい
くためのものです。西洋個人主義的な考え方に基づいているものなの
で、 それも、なかなか日本には根付きにくい理由の一つかもしれませ
ん。
英国では、カウンセリングが国家資格にはなっていませんが、カウン
セリングの分野で統括する団体があり、 それが公認資格を与えていま
す。 その制度に従って臨床している限り、社会的に認められている職
業です。 しかし、残念ながら、システム上、誰でもカウンセラー、サ
イコセラピストとして臨床する事ができるため、 適切な訓練を行わ
ず、資格も取らずに自称カウンセラーは確かに存在するので、そのよ
うな場合は注意が必要です。
そのシステム、資格については、「英国のカウンセリング・サイコセ
ラピーとその資格について」で、 詳しくご説明していますので、そち
らをご覧下さい。
© Y. Nippoda, 2005
当内容は、著作権法により保護されており、無断で複写複製、転載等をす
ることは、著作権 法の例外を除き、法律により禁止されています。
http://www.japanuktherapy.com/japanese/issuesj9.htm