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日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献

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日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献
日本の家族介護者研究における
well-being の関連要因に関する文献レビュー
佐
分
厚
子
(社会学研究科社会福祉学専攻博士課程後期)
要旨
介護保険制度が施行され介護サービスが普遍化されてきた現
在,家族介護者支援は過重な介護負担感の軽減という目標から,家族
介護者の良好な状態−ウェルビーイング(well-being)が目標とされ
るべきであろう。ウェルビーイング(well-being)を目標とする支援
体制を構築するためには,介護保険サービスの質,量の向上による介
護負担感の軽減とともに,介護の肯定的側面を高めることも必要であ
る。本論文は,既存の文献を基礎に,家族介護者のウェルビーイング
(well-being)を目指した支援体制の今後の在り方についての示唆を得
ることをねらいとして,介護の肯定的側面に関する概念やその関連要
因についてレビューすることを目的とした。文献検索は社会老年学デ
ータベースと関連図書に限定し,家族介護者の「QOL well-being satisfaction appraisal」というキーワードによって検索された介護の肯定的
側面に関する研究論文 69 編を抽出した。第一に研究動向を整理し
た。次いで,介護の肯定的側面に関連する要因を家族介護者の「内的
資源」と「外的資源」の関連から整理した。その結果,「内的資源」
は,漓家族介護者の介護に対する認識や心理に関する要因,滷家族介
護者の健康等に関する身体的要因,澆家族介護者の介護行動に関する
要因,潺家族介護者の日常生活に関する要因であった。「外的資源」
は,漓要介護者に関する要因,滷家族に関する要因,澆社会資源に関
する要因であった。内的資源と外的資源の関連や,内的資源と外的資
源の双方を家族介護者の肯定的側面の要因として検討していたものも
あった。以上の結果から,ウェルビーイング(well-being)発展のた
めに多様な資源が検討されていることが明らかになった。今後の課題
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日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
として,まだ検証されていない外的資源が内的資源に与える影響を調
べることや,新たな資源の発見開発が,家族介護者の肯定的側面に関
する研究として残された課題となることが推察され,そのひとつとし
て,セルフヘルプグループに関しては詳細な検討はされておらず,家
族介護者支援の資源として検討が望まれるものと示唆された。
蠢
緒
言
近年,急速な高齢者人口の増加に伴い,要介護高齢者の数も増加の一途をた
どり,厚生労働省によると 2025 年には要介護高齢者が 520 万人を超えると推
計されている(http : //www.mhlw.go.jp/)。高齢社会の到来に備えて 2000 年に
施行された介護保険制度では,ショートステイやデイサービスなどの要介護高
齢者への居宅サービスは普及したものの,サービスの利用量(給付額)には上
限があり,家族介護者の負担感や抑うつ感が解消されているとはいえないこと
が指摘されている(黄・関田 2004;鷲尾・ほか 2005)。家族介護者の負担感や
抑うつ感が解消され良好な状態が維持されるために介護保険制度によるサービ
(1)
を
スの質や量の向上とともに,家族介護者のウェルビーイング(well-being)
目指した多面的な支援体制が構築される必要がある。
さて,介護問題に対する研究の蓄積は,介護経験が介護者に与える否定的側
面の研究と肯定的側面の研究に分ける こ と が できる( Walker 1996 ; Picot
1997;石井 2003;広瀬 2004)。否定的側面の研究にはストレスという概念を尺
度し用いた Zarit(1980)以下多くあり(中谷・東條光雄 1989;新名・ほか
1989;中谷 1992;松岡 1993),ストレスフルな介護は介護者に情緒的,身体的
健康や経済的あるいは社会的状態にまで影響を及ぼすとしている(杉澤・ほか
1992;上田・ほか 1994;杉原・ほか 1998)。
しかし,一方では,介護経験を肯定的側面から捉える研究もある。介護者と
被介護者の続柄が介護満足度に影響し介護を肯定的に捉えること(Lawton et
al. 1989 ) や , 介 護 肯 定 感 が 介 護 の 主 観 的 負 担 感 を 軽 減 す る こ と ( 櫻 井
1999),介護に生きがいや満足感を感じることが明らかになっている(山本
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日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
1995)。
一般的に負担要因(ストレッサー)が強くなるほどストレス反応も強くなる
が,高齢者介護においては対処資源としての家族の対応と社会的援助の利用に
よって そ れ が 緩 衝 さ れ る 効 果 が 示 さ れ て い る (松岡 1994 ; Lawton et al .
1991;岡林ら 1999)。また,対処方略によってストレス認知が緩和できるよう
に,介護者自身がもつ対処行動としての問題解決対処と社会的援助対処などに
よって,高齢者介護負担の軽減がはかられることも考えられる(和気 1998)。
ストレスを緩衝する要因の研究が進む一方,介護の肯定的側面に関連してい
る要因に関する研究も数多く見られるようになった(綿・山崎 1997;川西・
官澤 2000;兵藤・ほか 2003)。家族介護者のウェルビーイング(well-being)
を目指した支援体制のために,これらの介護の肯定的側面に関する研究を分類
整理し,その概念や関連要因を明確化することによって,well-being の関連要
因を提示することができると考えられる。
そこで,本論文は,既存の文献を基礎に,家族介護者のウェルビーイング
(well-being)を目指した支援体制の今後の在り方についての示唆を得ることを
ねらいとして,介護の肯定的側面に関する概念やその関連要因についてレビュ
ーすることを目的とした。
蠡
研究方法
家族介護者の肯定的状況に関連する要因を幅広く抽出することを目的とし
て,「caregiver burden 」「 caregiver well-being 」「 caregiver well-being burden 」
「caregiver QOL」「caregiver QOL burden」「caregiver satisfaction」「caregiver satisfaction burden」「caregiver appraisal」「caregiver appraisal burden」というキーワ
ードによって,社会老年学データベース,関連書籍を検索した。
次に収集された文献をキーワード別に分類し,調査方法,調査対象,介護状
況に関する測定指標別に整理した。これらの論文の調査結果から確認されてき
た家族介護者の肯定的状況に関連する要因を抽出し分類し整理した。
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日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
蠱
研究結果
1.介護に関する研究動向
社会老年学データベースと関連文献を整理した結果,「caregiver burden」の
キーワードでは 69 編を収集した。「caregiver well-being」では 11 編が収集さ
れ,これらの論文の中には,「caregiver well-being burden」のキーワードで検索
された 4 編が含まれていた。「caregiver QOL」では 19 編が収集され,これら
の論文の中には,「caregiver QOL burden」のキーワードで検索された 5 件が含
まれていた。「caregiver satisfaction」では 27 編が収集され,これらの論文の中
には「caregiver satisfaction burden」で収集された 8 編が含まれていた。「caregiver
appraisal」では 12 編が収集され,「caregiver appraisal burden」で検索された 6
編が含まれていた。重複して検索された論文や「要介護者のスタッフ」「寮
母」の「QOL well-being」に関する論文を除き 31 論文の内容を検討した。
文献の中で介護状況の否定的側面といわれている「caregiver burden」に関す
る論文は 69 編であり,発表年代をみると,1984 年(前田・冷水 1884)から 2007
年(上田・ほか 2007)まで継続して論文が発表されていた。一方,介護状況
の肯定的側面である「QOL well-being satisfaction appraisal」に関する論文は 31
編であり,1998 年から 2000 年以降多く発表されていた。
本論では肯定的側面に関する論文の内容を検討した結果,肯定的側面に関す
る論文は,「QOL well-being satisfaction appraisal」のそれぞれの測定指標,測定
尺度開発を目指している論文と,「QOL well-being satisfaction appraisal」のそれ
ぞれに対するサポート資源に関する論文に分類された。
(1)肯定的側面の測定指標・測定尺度開発に関する論文
「QOL well-being satisfaction appraisal」の測定尺度,測定指標開発を目指して
いる論文のうち,肯定的側面に関する因子分析的な検討は,櫻井成美(1999)
「介護肯定感がもつ負担軽減効果」,川西恭子・官澤文彦(2000)「主介護者の
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生活の満足を規定する要因」,安部幸志(2002)「介護マスタリーの構造」,陶
山啓子・河野理恵・河野保子(2004)「介護肯定感の形成に関する要因分析」,
山田裕子・武地一(2006)「認知症と介護の受け止め」といった研究において
なされている。肯定的側面に関する尺度開発に着目するなら,広瀬美千代,岡
田進一,白澤政和(2005)「認知的評価を測定する尺度」ならびに安部幸志
(2004)「主観的安寧感尺度」の論文が指摘できる。さらに,綿祐二・山崎秀夫
(1997)は「在宅要介護高齢者の介護者の QOL 指標」を提示している。これ
らの論文では,介護における肯定的側面の概念として,介護に対する価値観や
介護役割に対する充足感,自分に対する成長感,満足感が見出されている。
上記の論文のうち,櫻井成美(1999)は,「介護肯定感がもつ負担軽減効
果」にて,高齢者を介護する家族介護者の肯定的評価が介護負担を軽減する効
果に焦点を当てている。140 人の家族介護者を対象に,独自項目から成る介護
負担感尺度と肯定的評価尺度が調査され,因子分析の結果,介護負担感は「拘
束感」「限界感」「対人鐚藤」「経済的負担」という 4 つの下位因子を抽出して
いる。さらに介護肯定感として,「満足感」「自己成長感」「介護継続感」とい
う 3 つの下位因子を抽出している。2306 人の家族介護者を対象に,アンケー
ト調査を実施し,その結果,次の 3 点が示唆された。(1)肯定的評価は「限界
感」を軽減する,(2)「満足感」は「自己成長感」よりもより効果がある,
(3)軽減のパターンはストレッサー,負担感,肯定的評価の組み合わせによっ
て変化する,という知見を得ている。
加えて川西恭子・官澤文彦(2000)らは,「在宅要介護高齢者の主介護者に
対する社会的支援」にて,在宅要介護高齢者の主介護者の介護状況から生活の
満足を規定する要因を見出すことを目的に,主介護者 47 名に対し戸別訪問に
よる聞き取り調査を実施している。データの因子分析結果から,介護状況の規
定要因として,内面的生活満足度(F 1),介護度(F 2),自律性(F 3),情動
の統制(F 4),余暇活動(F 5),介護頻度(F 6),周囲のサポート(F 7),他
者との温かいやりとり(F 8),サービスの活用(F 9)の 9 因子を抽出した。
以上の 9 因子について主要概念との関係から検討し,F 1 は生活満足度,F 2
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および F 6 は介護量,F 3 および F 4,F 9 は対処行動,F 5 および F 7,F 8 はコン
ピテンスを刺激する要因であること,また,各々が相互関与しながら介護者の
生活満足度を規定する「生活の満足に向けたエンパワーメント」モデルを構築
した。このモデルにより,社会的支援は,物的サービスとともに,周囲のサポ
ートや他者との温かいやりとりなど情緒的支援の重要性が示唆されたことを報
告している。
次いで安部幸志(2002)は,「介護マスタリーの構造と精神的健康に与える
影響」にて,介護者の肯定的自己評価と定義した「caregiving mastery」の構造
を明らかにし,精神的健康との関連を検討している。認知症かあるいは寝たき
りの 65 歳以上の高齢者を介護している介護者を対象に調査し,166 人のデー
タの確認的因子分析の結果,「caregiving role mastery」と「coping efficacy with
caregiving」の 2 因子を析出した。加えて,構造法的式モデリングでは,
「caregiving mastery」は「caregiving stressors」と強い関連があり,精神的健康とは負の
関連があることが示された。このことから介護者の精神的健康は介護の肯定的
評価が必要であることが示唆されたと報告している。
また陶山啓子,河野理恵,河野保子(2004)は,「家族介護者の介護肯定感
の形成に関する要因分析」にて,高齢者を介護する家族の介護ストレス対処行
動と介護肯定感の構造を明らかにし,介護肯定感がいかなる要因に関連して形
成されるかを検討している。主介護者 184 名を対象に,質問紙を用いた聞き取
り調査を実施したところ。介護に対するストレス対処行動としては,「回避
型」「問題解決型」「接近型」の 3 因子が,介護肯定感としては,「介護状況に
対する充実感」「自己成長感」「高齢者との一体感」の 3 因子を抽出している。
介護肯定感 3 因子は「接近型」の対処行動と関連が認められ,介護肯定感形成
には介護者と高齢者の関係が重要であることを指摘している。なお「自己成長
感」には,介護負担を軽減する「問題解決型」や介護というストレッサーを一
時遠ざける「回避型」の対処行動が有効であること,また,「介護状況に対す
る充実感」は,介護者が配偶者であることや健康状態がよいという介護者の特
性との関連が認められたとしている。
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さらに,片山陽子,陶山啓子(2005)は,「在宅で医療的ケアに携わる家族
介護者の介護肯定感に関連する要因の分析」にて,在宅で医療的ケアを実施し
ている介護者の介護肯定感に関連する要因を明らかにしている。主介護者 190
名(医療的ケア有り群 117 名,無し群 73 名)を対象に,質問紙を用いた訪問
面接調査を実施した。医療的ケア有り群は介護時間が長く,在宅介護に対する
動機が高いという特性が認められた。そして,介護肯定感の「介護を通しての
自己成長感」と「介護役割の積極的受容」が医療的ケア有り群は無し群に比べ
て有意に高い結果であったとしている。なお,有り群の介護肯定感に関連する
要因としては,在宅介護への動機の高さと「情緒的な接近型」の対処行動であ
ったとしている。このことから,介護者が介護を自分の役割であると認識でき
ることと,療養者と介護者の関係性の良さが重要であると述べている。
最近では,山田裕子,武地一(2006)が「もの忘れ外来通院患者の家族介護
者の認知症と介護の受け止めに関する研究」にて,もの忘れ外来患者の家族介
護者の介護感の認知的成長を仮説とし,A 大病院もの忘れ外来の患者 49 人の
家族介護者を対象として,認知症と介護の受け止めについて因子分析を行って
いる。その結果,肯定的,否定的な評価である 2 因子「介護価値」と「衝撃」
を抽出している。
一方,安部(2004)と広瀬ら(2005)は,肯定的側面に関する尺度開発を試
みている。安部幸志(2004)は「家族介護者における主観的安寧感尺度の信頼
性と妥当性の検討」にて,家族介護者の主観的安寧感を測定する尺度を開発し
ている。この尺度の項目は,肯定的評価,生活満足度,モラールスケールから
選択され,障害をもつ高齢者を介護している家族介護者 171 名を調査対象とし
ている。その結果,「主観的安寧感尺度」の内的妥当性は十分であり,高齢者
の障害,介護者の抑うつと主観的安寧感の関連があると述べている。
広瀬美千代,岡田進一,白澤政和(2005)は「家族介護者の介護に対する認
知的評価を測定する尺度の構造:肯定・否定の両側面に焦点をあてて」にて,
介護に対する肯定・否定の両側面で構成された家族介護者の認知的評価を測定
する尺度「認知的介護評価」を開発している。家族会会員を対象とした郵送調
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査の解析から,否定的側面として,「社会生活制限感」「介護継続不安感」「関
係性における精神的負担感」の 3 因子を抽出し,肯定的側面として,「介護役
割充足感」「高齢者への親近感」「自己成長感」の 3 因子を抽出している。尺度
としての信頼性は十分にあり,解釈可能な因子が抽出されたことより内容妥当
性が確認されたと報告している。
さらに,綿祐二,山崎秀夫(1997)は「在宅要介護高齢者の介護者の QOL
指標に関する研究」にて,QOL 概念を採用し,介護者自身の介護生活におけ
る QOL の指標を検討している。首都圏近郊の在宅要介護高齢者の主介護者 26
名を対象として,質問紙による直接インタビュー法による調査を行っている。
その結果,QOL 指標として,漓介護者が介護生活を受容して,QOL を向上し
ていくための「健康面」の指標として実質的な身体変化よりも精神的な健康感
の測定滷「経済面」は介護者個人で自由裁量できる金銭面を測定,澆「家庭内
面」では家族による日々の声かけ度合いなどの測定,潺「親戚・近隣」では,
重要な他者として愚痴を言える友人を持っているかの測定,潸「余暇面」では
継続的・定期的な外出活動ができているかの測定,澁「学習面」では動的学習
活動がどの程度できているかの測定を行うことが重要であるとしている。
(2)サポート資源に関する論文
「QOL well-being satisfaction appraisal」に対するサポート資源に関する論文に
おいて,これらの規定要因とされるサポート資源は,「健康」「介護肯定感」
「自己成長感」「生きがい感」などの家族介護者の身体的要因,心理的要因や,
要介護者に関する要因,家族に関する要因,社会資源に関する要因などが重複
し検討されていた。なお,これら介護の肯定的側面の測定尺度は,精神的健
康,抑うつ度,主観的健康観,生活満足度,さらにそれらに関連する独自に構
成された尺度など多様であった。
上記論文のうち,初期の研究として,杉澤秀博,中村律子,中野いずみ,杉
澤あつ子(1992)は,「要介護老人の介護者における主観的健康感および生活
満足度の変化とその関連要因に関する研究:老人福祉手当受給者の 4 年間の追
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跡調査から」と山田祐子(1992)「職業生活と老親介護:介護休業制度の現状
と問題点」,山田晧子(1997)「脳卒中発症者の主介護者における生活全体の満
足度とその関連要因」等が挙げられる。
2000 年以降の論文として,まず一瀬貴子(2001)は,「高齢配偶介護者の,
介護に対して抱く『生き甲斐感』の規定要因分析:介護開始以前の夫婦関係・
人間関係形成状況との関連」にて,介護に対する価値は,介護する前の社会的
ネットワークと夫婦関係によって影響を受けるという仮説を立て,346 人の家
族介護者のデータを対象に,統計的分析を行っている。従属変数は介護に対す
る価値であり,独立変数は性別,夫婦関係,ソーシャルネットワークである。
その結果,男性介護者のもつソーシャルネットワークは,配偶者に対しては限
界があり,女性介護者のソーシャルネットワークは男性よりも有効であること
が示されたと述べている。また,介護前の夫婦関係に満足感を持っている介護
者は,介護に対するより高い価値をもち,さらに,妻の介護に対する価値は,
介護前の夫婦関係の満足感に,夫よりも影響を受けていることを報告してい
る。
次に,渡辺百合子,荒木志保,栗原正紀(2003)は,「脳卒中患者家族への
情報提供:家族の心理・精神・健康面の変化について」にて,脳卒中患者や家
族に必要と思われる情報のパンフレットが家族の精神・健康面に与える影響,
効果を調査している。パンフレット提供前(脳卒中発症約 2 週後),提供後
(発症約 1 カ月後,約 3 カ月後)と家族のストレス,不安,うつ,健康関連 QOL
の変化について介入調査を行い,その結果,患者の ADL は時間の経過ととも
に改善したにもかかわらず,家族はストレス,不安,うつの危険状態のままで
あったことを報告している。家族の精神・健康面には反映されなかったが,パ
ンフレットに関する家族の満足度は高かったと述べている。
また,山本則子,石垣和子,国吉緑,河原(前川)宣子,長谷川喜代美,林
邦彦,杉下知子(2002)は,「高齢者の家族における介護の肯定的認識と生活
の質(QOL),生きがい感および介護継続意思との関連:続柄別の検討」に
て,「介護に関する肯定的認識」が,介護者の心身の生活の質(QOL)や生き
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がい感および介護継続意思に与える影響を,続柄毎に検討している。東京・神
奈川・静岡・三重・沖縄の全 21 機関において訪問看護を利用している 322 人
の高齢者の家族介護者を対象に,質問紙調査を実施し,分析には QOL,生き
がい感,介護継続意思を従属変数に,属性および介護に関する肯定的認識・否
定的認識を独立変数とした重回帰分析およびロジスティック回帰分析を用いて
いる。その結果,いずれの続柄でも生きがい感には「肯定的認識」が強く関連
していることを報告している。結論として,介護者の心理的 QOL や生きがい
感を高める支援を考えるため,介護の継続を予測するためには,介護の肯定的
認識を把握することが重要としている。
さらに複数の要因との関連から,斉藤基(2003)は,「家族介護における介
護行動及び介護者の QOL に関する研究:介護行動スケールの開発とその信頼
性・妥当性の検討」にて,介護の実態及び介護行動,介護者の QOL に影響す
る要因を明らかにし,介護行動スケールの信頼性・妥当性の検討を行ってい
る。訪問看護ステーションによるサービスを利用している介護者 105 人を対象
に,介護者のインフォーマル・ソーシャルサポート,介護者の自己効力感,介
護者と要介護者の関係性,介護行動,介護者の QOL 等に関して訪問面接調査
を実施し,分析を行っている。その結果,介護行動は,介護者と要介護者の関
係性,要介護度と有意な関連がみられたことや,介護者の QOL は介護者の健
康状態と有意な関連がみられたことを報告している。
社会資源に着目している研究としては,田所ら(2005)をはじめ以下の 4 研
究が指摘できる。まず,田所正典,山口登,小野寺敦志,新妻加奈子,伊藤幸
恵,森嶋友紀子,松尾素子,高澤みゆき,川合嘉子,荻野あずみ,関野敬子,
渡部廣行,青葉安里(2005)は,「アルツハイマー型痴呆患者ならびに主介護
者の生活支援を目的とした非薬物療法的介入の試み:「もの忘れケア教室」の
6 か月後の有用性」にて,アルツハイマー型痴呆患者と主介護者をはじめとし
た家族の生活支援を目的に「もの忘れケア教室」を実施し,その有効性を検討
している。家族評価として痴呆介護の理解度を測る小テスト,介護肯定感尺
度,介護負担感尺度を用い,各群とも基準時と 6 か月後得点の群内比較と変化
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量の 2 群間比較を行っている。その結果,患者への介入効果として,上記の評
価尺度における有意な変化はみられず,有効性は認められなかったが,主介護
者への介入効果として,小テストで介入群内比較と 2 群間比較で有意差を認
め,講義形式による家族心理教育の効果が期待できたとしている。介護肯定感
では介入群内比較で有意差を認め,介護の動機づけが高まり介入効果が認めら
れたと述べている。
次にソーシャルサポートに関する研究として,田中共子・兵頭好美・田中宏
二(2002)「在宅介護者のソーシャルサポートネットワークの機能:家族・友
人・近所・専門職に関する検討」,兵藤好美,田中宏二,田中共子(2003)
は,「介護ストレス・サポートモデルの検討:寝たきり・痴呆性高齢者の場
合」がある。前者ではソーシャルサポートネットワークの機能を検討し,後者
では,介護者のストレスとストレス軽減要因との関連を調べている。特に後者
では,認知症かあるいは寝たきりの高齢者を介護している介護者のグループの
551 名の中から 239 名の介護者を対象に,ケアのサポートなどのストレッサ
ー,ストレスの第 1 次評価,精神的健康や介護負担感や満足感などのストレス
の第 2 次評価,そして,ソーシャルサポートや対処行動などの緩衝効果の関連
を分析している。その結果,第 1 次評価としての負担感は認知症の程度や要介
護者の年齢と正の有意な関連があり,「介護者の会」の入会年数,副介護者の
有無と負の有意な関連があったとしている。第 2 次評価としてのバーンアウト
(消耗感)は,負担感と情動回避型の対処と関連しており,疲労は副介護者の
存在によって軽減され,満足感は問題解決型の対処によって高まっていること
を報告している。ソーシャルサポートのストレス軽減効果は,消耗感を一部軽
減しているが,精神的健康促進における効果はわずかであったと述べている。
また,インフォーマルサポートに関する研究として,高橋和子,小林淳子
(2003)は,「高齢者夫婦世帯における介護者のインフォーマルサポートの実態
と精神的健康の関連」にて,訪問看護を利用している高齢者夫婦世帯の介護者
のインフォーマルサポートの実態を把握し,精神的健康との関連を調べてい
る。質問紙を用いた聞き取り面接調査を行い,各変数間の相関係数を確認後,
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重回帰分析を行い,その結果,次の 3 点を指摘している。漓インフォーマルサ
ポートの量と満足度は,家族からのサポートのほうが親戚,友人・知人のサポ
ートよりも得点が高かった。滷インフォーマルサポートの量は,精神的健康と
相関が認められなかった。澆家族からのインフォーマルサポートに対する満足
度は精神的健康と有意な関連が認められた。以上から,高齢者夫婦世帯の介護
者の精神的健康度の視点から,家族からのインフォーマルサポートが有効に得
られるような環境の調整が重要であることが示唆されたと述べている。
同じくインフォーマルサポートに関する研究として,高橋和子,佐々木明子
(2003)は,「在宅要介護高齢者の介護者の介護自己評価と社会サービス利用状
況」にて,介護者の介護に関する自己評価の実態を把握し,自己評価の関連要
因と評価の相違による社会サービス利用状況の特徴を調べている。山形県 A
市訪問看護ステーションの 65 歳以上の利用者の介護者 85 人を対象に,介護状
況,社会的支援の状況について自記式調査票の記載を依頼し,郵送法で回収し
ている。分析方法については,介護者の介護自己評価の日常生活介護 7 項目の
回答を「できる」群,「できない」群に 2 分し,他要因との関連の検討は,合
計点の平均値をもとに「できる」群,「できない」群に 2 分し検討している。
その結果,インフォーマルサポートとの関連では,「家族の介護への協力のし
かた」,「友人・親戚の介護への協力のしかた」,「家族の精神的な支え」の満足
度が「できる」群より「できない」群で有意に低かったことを報告している。
以上,肯定的側面の測定指標・測定尺度に関する論文とサポート資源に関す
る論文を検討した結果,介護に対する否定的側面といわれる「介護負担感」に
対し,「QOL well-being satisfaction appraisal」などの肯定的側面に関する概念が
多様であることがわかった。抽出されている概念は,「満足感」「自己成長感」
「介護継続意思」という下位因子から成る「介護肯定感」(櫻井),「内面的生活
満足度」(川西・官澤 2000),「caregiving role mastery」と「coping efficacy with
caregiving」の下位因子から成る介護者の肯定的自己評価(安部 2002),「介護
状況に対する充実感」「高齢者への親近感」
「自己成長感」の下位因子から成る
「介護肯定感」(胸山・河野・ほか 2004),「介護を通しての自己成長感」「介護
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役割の積極的受容」と定義した介護肯定感(片山・胸山 2005),介護の肯定的
側面としての「介護価値」(山田・武池 2006)であった。また,測定尺度とし
ては,「肯定的評価」「生活満足度」「モラールスケール」から独自に構成され
ている「主観的安寧感」(安部 2004),「認知的評価」(広瀬岡田・ほか 2005)
が見られた。一方,既存の尺度である精神的健康や抑うつ,生活満足度など数
種類の尺度を従属変数として,多様な視点からサポート資源が検討されてい
た。しかし,重複して調査されているものがあった。また,肯定的側面に関す
る概念である介護への「肯定的認識」が家族介護者の生きがい感に関連がある
(山本・石垣・ほか 2002)という指摘があった。これらの結果から,肯定的側
面の関連要因は,サポート資源だけでなく,家族介護者の認識である「介護肯
定感」等も含めて整理する必要があることが示された。
2.介護に対する肯定的側面の関連要因
上述の検討結果から,「QOL well-being satisfaction appraisal」の測定指標,測
定尺度開発を目指している論文と,「QOL well-being satisfaction appraisal」のそ
れぞれに対するサポート資源に関する論文の中から,肯定的側面の関連要因を
取り出し,家族介護者の「内的資源」
「外的資源」「内的資源・外的資源」の分
類枠組みを用いて表 1 に整理した。先行研究の分類枠組みは,「身体的要因」
「心理的要因」「精神的要因」「社会的要因」「インフォーマルサポート」「ソー
表1
要因
著
者
論
文
名
資源一覧表
掲載雑誌
論文内容
1
生活満足感は,介護の継続群では二次調査
山田紀代美,小栗千「在宅要介護高齢者の介
『日本看護学会 の時点で満足感がある介護者が減少する傾
内的 佳,杉山智子,竹内 護者におけるライフスタ
誌』7( 1),17− 向が見られた.生活満足感に関連する要因
資源 志 保 美 , 宮 崎 徳 子 イルと生活満足感に関す
24.
はライフスタイル得点の低下と項目では睡
(1998)
る研究」
眠時間の減少であることが示された.
2
2306 人の家族介護者を対象に,アンケー
ト調査を実施し、肯定的評価は「限界感」
内的
「介護肯定感がもつ負担『心理学研究』70
櫻井成美(1999)
を軽減することや,「満足感」は「自己成
資源
軽減効果」
(3),203−210.
感」よりもより効果があることが示され
た.
3
「わが国における高齢障
害者を介護する家族の介
『リハビリテー
内的 安田肇,近藤和泉, 護負担に関する研究:介
ション医学』38
資源 佐藤能啓(2001) 護者の介護負担感,主観
(6),481−489.
的幸福感とコーピングの
関連を中心に」
5―
―9
家族介護者 166 名を対象に,コーピング
と,介護負担感,主観的幸福感の関係を検
討し、主観的幸福感の独立した関連要因
は,介護者の年齢,介護負担感,ペース配
分型コーピングであることが示された.
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
4
認知症かあるいは寝たきりの 65 歳以上の
高齢者を介護している介護者を対象に調査
「介護マスタリーの構造『健康心理学研 し,166 人のデータの確認的因子分析の結
内的
安部幸志(2002) と精神的健康に与える影 究』15( 2),12 果,「caregiving role mastery」と「coping ef資源
響」
−20.
ficacy with caregiving 」 の 2 因 子 を 析 出
し,介護者の精神的健康は介護の肯定的評
価が必要であることが示された.
5
山 本 則 子 , 石 垣 和「高齢者の家族における
子 , 国 吉 緑 , 河 原 介護の肯定的認識と生活『日本公衆衛生
内的
(前川)宣子,長谷 の質(QOL),生きがい 雑誌』49(7),660
資源
川喜代美,林邦彦, 感および介護継続意思と −671.
杉下知子(2002) の関連:続柄別の検討」
訪問看護を利用している 322 人の高齢者の
家族介護者を対象に,質問紙調査を実施
し,いずれの続柄でも生きがい感には「肯
定的認識」が強く関連することが示され
た.
6
内的
斉藤基(2003)
資源
「家族介護における介護
行動及び介護者の QOL『日本看護科学
に関する研究:介護行動 会誌』23(3),57
スケールの開発とその信 −68.
頼性・妥当性の検討」
訪問看護ステーションによるサービスを利
用している介護者 105 人を対象として介護
者のインフォーマル・ソーシャルサポー
ト,介護者の自己効力感,介護者と要介護
者の関係性,介護行動,介護者の QOL 等
に関して訪問面接調査を実施し,介護者の
QOL を規定する要因としては,介護者の
健康状態と有意な関連がみられた.
7
主介護者 184 名を対象に,質問紙を用いた
聞き取り調査を実施し、介護肯定感には,
「介護状況に対する充実感」「自己成長感」
「高齢者との一体感」の 3 因子が抽出され
陶 山 啓 子 , 河 野 理「家族介護者の介護肯定『 老 年 社 会 科
ている.介護肯定感形成には介護者と高齢
内的
恵,河野保子
感の形成に関する要因分 学』25(4),461
者の関係が重要であり,「自己成長感」に
資源
(2004)
析」
−470.
は,「問題解決型」や「回避型」の対処行
動が有効であり,「介護状況に対する充実
感」は,健康状態がよいこととの関連が認
められた.
8
内的
安部幸志(2004)
資源
9
主介護者 190 名(医療的ケア有り群 117
「在宅で医療的ケアに携
名,無し群 73 名)を対象に,質問紙を用
『日本看護研究
いた訪問面接調査を実施し、介護肯定感の
内的 片山陽子,陶山啓子 わる家族介護者の介護肯
学 会 雑 誌 』 28
「介護を通しての自己成長感」と「介護役
資源 (2005)
定感に関連する要因の分
(4),43−52.
割の積極的受容」が医療的ケア有り群は無
析」
し群に比べて有意に高い結果であった.
「家族介護者における主『健康心理学研 肯定的評価,生活満足度,モラールスケー
観的安寧感尺度の信頼性 究』17( 1),47 ルに基づく主観的安寧感尺度の信頼性と妥
と妥当性の検討」
−55.
当性が示された.
家族会会員を対象とし,主成分分析および
「家族介護者の介護に対
下位尺度間の相関分析を行い,その結果,
広瀬美千代,岡田進 する認知的評価を測定す『日本在宅ケア
肯定的側面の因子は「介護役割充足感」
内的
10
一,白澤政和
る尺度の構造:肯定・否 学会誌』9(1),
「高齢者への親近感」「自己成長感」に命名
資源
(2005)
定の両側面に焦点をあて 52−60.
された.「自己成長感」はどの否定的側面
て」
の因子とも有意な相関がみられなかった.
有効回答が得られた 145 人を分析対象と
し,確認的因子分析の結果,介護準備状況
として「介護スキル」と「介護役遂行可能
「在宅移行期の女性介護
片山陽子,矢嶋裕
『 老 年 社 会 科 感」の 2 因子 9 項目の斜交モデルは良好な
内的
者における主観的な介護
11
樹,小野ツルコ
学』28(3),359 適合度を示していた.「介護スキル」が高
資源
準備状況と心理的ウェル
(2006)
−367.
い介護者ほど,否定的感情は低く,また,
ビーイングとの関係」
「介護役割遂行可能感」が高い介護者ほど
否定的感情は低く,肯定的感情が高かっ
た.
12
「もの忘れ外来通院患者
『日本痴呆ケア
内的 山 田 裕 子 , 武 地 一 の家族介護者の認知症と
学会誌』5(3),
資源 (2006)
介護の受け止めに関する
436−448.
研究」
13
外的
山田祐子(1992)
資源
A 大病院もの忘れ外来の患者 49 人の家族
介護者を対象に調査し、因子分析により肯
定的な評価である因子「介護価値」を析出
した.
「職業生活と老親介護:『社会老年学』 介護休業制度は,短期の終末介護について
介護休業制度の現状と問( 36 ), 58 − 71, は大変有効に機能し,制度の存在自体が介
題点」
96.
護者に安心感を与えていた.
6―
―9
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
岩本俊彦,藤井広
子,馬原孝彦,高崎
『日本老年医学 痴呆患者の早期発見に関する啓蒙がさらに
外的
「痴呆相談室からみた痴
14
優,今村敏治,近喰
会雑誌』38
必要であり,社会資源の活用に関する情報
資源
呆医療の現状と問題点」
櫻,野口寿美子
(4),528−533. 提供が不足していることを指摘した.
(2001)
「要介護高齢者の主介護
『日本在宅ケア
外的 竹 内 真 澄 , 吉 田 亨 者が抱える問題:訪問リ
15
学会誌』6(1),
資源 (2002)
ハビリテーションの視点
79−84.
から」
健康管理に必要な時間を確保できる人ほど
介護上の相談相手を確保しているという有
意な相関関係が認められ,さらには,相談
相手の確保と,介護の交代人員や家族・親
族等の周囲からの労いとの間にも有意な相
関が認められた.
人見裕江,畝博,中 連続携行式自己腹膜灌流
外的 村陽子,小河孝則,(CAPD)療養 者 家 族 の『厚生の指標』49
資源 宮脇敏代,大澤源吾 生活:療養者の ADL と(6),14−21.
(2002)
家族の QOL・生活力量
療養者家族の体調と心理的状態は,療養者
の ADL が低下するほど悪化し,療養者の
ADL 自立度が高ければ,家族関係を調整
したり,統合したりする力が高かった.
16
「在宅介護者のソーシャ
『社会心理学研
田中共子,兵藤好
外的
ルサポートネットワーク
究』18( 1),39
美,田中宏二
資源
の機能:家族・友人・近
−50.
(2002)
所・専 門 職 に 関 す る 検
討」
「脳卒中患者家族への情
渡辺百合子,荒木志
『リハビリテー
外的
報提供:家族の心理・精
ション医学』40
18
保,栗原正紀
神・健康面の変化につい
資源
(12),848−857.
(2003)
て」
17
ソーシャルサポートネットワークの機能を
検討した.
必要と思われる情報をパンフレットとして
まとめ,家族の精神・健康面にどのような
影響,効果を調べた.パンフレットに関す
る家族の満足度は高かったが,家族の精神
・健康面には反映されなかった.
「在宅脳卒中患者の介護『日本老年医学 介護者の QOL 向上のためには,患者の精
外的 黒田晶子,神田直,
者 の 健 康 関 連 QOL : 会雑誌』40
神状態の改善と介護者に対する家族の協力
資源 浅井憲義(2003)
EuroQol による検討」 (2),381−389. が重要であることが示唆されたとしてい
る.
田所正典,山口登,
患者への介入効果は有効性は認められなか
小野寺敦志,新妻加「アルツハイマー型痴呆
ったが,主介護者への介入効果として,小
奈子,伊藤幸恵,森 患者ならびに主介護者の
『老年精神医学
テストで介入群内比較と 2 群間比較で有意
外的 嶋 友 紀 子 , 松 尾 素 生活支援を目的とした非
20
雑誌』16(4),479
差が認められた.また,介護肯定感では介
資源 子,高澤みゆき,川 薬物療法的介入の試み:
−487.
入群内比較で有意差を認め,介護の動機づ
合 嘉 子 , 荻 野 あ ず「もの忘れケア教室」の
けが高まり介入効果が認められた.
み,関野敬子,渡部廣 6 か月後の有用性」
行,青葉安里(2005)
19
「要介護老人の介護者に
おける主観的健康感およ
内的
杉 澤 秀 博 , 中 村 律 び生活満足度の変化とそ『日本公衆衛生
資源・
21
子,中野いずみ,杉 の関連 要 因 に 関 す る 研 雑誌』39(1),23
外的
澤あつ子(1992) 究:老人福祉手当受給者 −32.
資源
の 4 年間 の 追 跡 調 査 か
ら」
東京都 T 市と A 区の老人福祉手当受給者
のうち,在宅療養者の主介護者 152 人を対
象としている.生活満足度については 7 人
に悪化が認められたが,生活満足度が悪化
するか否かは,要介護老人のコミュニケー
ション能力の悪化に加えて,ソーシャルサ
ポートの有無,介護経験を肯定的に評価し
ているか否かと関連が強かった.
主介護者が収入になる仕事をする群で満足
度が有意に高かった.ソーシャルサポート
では,同居家族からの手段的サポートの多
い群で少ない群よりも満足度が有意に高
内的
「脳卒中発症者の主介護『 老 年 社 会 科
く,さらに,重回帰分析を行った結果で
資源・
22
山田晧子(1997) 者における生活全体の満 学』18(2),134
は,暮らし向きが普通または恵まれてい
外的
足度とその関連要因」 −146.
る,発症前に主介護者の満足度が高い,発
資源
症者の屋内移動が可能である,デイサービ
スを利用していない群で,満足度が有意に
高い結果であった.
漓「健康面」の指標として実質的な身体変
化よりも精神的な健康感の測定,滷「経済
面」は介護者個人で自由裁量できる金銭面
の測定,澆「家庭内面」では家族による
内的
「在宅要介護高齢者の介
日々の声かけ度合いなどの測定,潺「親戚
資源・ 綿 祐 二 , 山 崎 秀 夫
『総合都市研
23
護者の QOL 指標に関す
・近隣」では,重要な他者として愚痴を言
外的 (1997)
究』63,15−25.
る研究」
える友人を持っているかの測定,潸「余暇
資源
面」では継続的・定期的な外出活動ができ
ているかの測定,澁「学習面」では動的学
習活動がどの程度できているかの測定を指
摘した.
7―
―9
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
生活満足度は女性の介護者が有意(p
内的
「地域における高齢の介
<0.05)に低かった.ソーシャルサポート
資源・ 山田紀代美,鈴木み 護者の 健 康 度 と 生 活 習『老年看護学』3
24
得点は男性が有意(p<0.01)に,生活習
外的 ずえ(1998)
慣:非介護者との比較か(1),43−51.
慣得点は女性が有意(p<0.001)に高かっ
資源
ら」
た.
内的
「在宅要介護高齢者の主『日本在宅ケア
資源・ 川西恭子,官澤文彦
25
介護者に対する社会的支 学会誌』4(1),
外的 (2000)
援」
31−38.
資源
介護状況の規定要因として,内面的生活満
足度(F 1),介護度(F 2),自 律 性 ( F
3),情動の統制(F 4),余暇活動(F 5),
介護頻度(F 6),周囲のサポート(F 7),
他者との温かいやりとり(F 8),サービス
の活用(F 9)の 9 因子を抽出した.
「高齢配偶介護者の,介
内的
護に対して抱く「生き甲
資源・
斐感」の規定要因分析:『家族関係学』
26
一瀬貴子(2001)
外的
介護開始以前の夫婦関係 20,119−131.
・人間関係形成状況との
資源
関連」
男性介護者のもつソーシャルネットワーク
は,配偶者に対しては限界があり,女性介
護者のソーシャルネットワークは男性より
も有効であった.介護前の夫婦関係に満足
感を持っている介護者は,介護に対するよ
り高い価値をもち,さらに,妻の介護に対
する価値は,介護前の夫婦関係の満足感
に,夫よりも影響を受けていた.
27
内的
斉藤恵美子,國崎ち「家族介護者の介護に対『日本公衆衛生 介護継続意向の高い家族介護者は社会サー
資源・
は る , 金 川 克 子 する肯定的側面と継続意 雑誌』48(3),180 ビスの利用意向が高く,介護満足感が高か
外的
(2001)
向に関する検討」
−189.
った.
資源
「介護者の会」の入会年数,副介護者の存
在,ソーシャルサポートや対処行動などを
「介護ストレス・サポー
ストレスの緩衝効果として分析した.その
内的
兵藤好美,田中宏
『健康心理学研
トモデルの検討:寝たき
結果,満足感は問題解決型の対処によって
資源・
28
二,田中共子
究』16( 2),30
外的
り・痴 呆 性 高 齢 者 の 場
高まっていた.ソーシャルサポートのスト
(2003)
−43.
資源
合」
レス軽減効果は,一部消耗感を軽減した
が,精神的健康促進における効果はわずか
であった.
インフォーマルサポートの量と満足度は,
家族からのサポートのほうが親戚,友人・
内的
「高齢者夫婦世帯におけ
知人のサポートよりも得点が高かった.イ
資源・ 高橋和子,小林淳子 る介護者のインフォーマ『老年看護学』8
ンフォーマルサポートの量は,精神的健康
29
外的 (2003)
ルサポートの実態と精神(1),5−13.
と相関が認められなかった.家族からのイ
資源
的健康の関連」
ンフォーマルサポートに対する満足度は精
神的健康と有意な関連が認められた.
日常生活介助では「歩行・車椅子移動介
助」,「コミュニケーションの工夫」,イン
フォーマルサポートとの関連では,「家族
の介護への協力のしかた」,「友人・親戚の
介護への協力のしかた」,「家族の精神的な
支え」の満足度が自己評価が「できる」群
より「できない」群で有意に低かった.社
会サービス利用希望については,自己評価
内的
「在宅要介護高齢者の介『日本地域看護
が「できない」群は,「訪問入浴サービ
資源・ 高橋和子,佐々木明
30
護者の介護自己評価と社 学会誌』6(1),
ス」,「ホームヘルプサービス」,「ショート
外的 子(2003)
会サービス利用状況」 19−24.
ステイ」の継続利用を希望しない割合が比
資源
較的高く,「日常生活用具貸与・支給」,
「介護手当支給」の利用希望割合が高かっ
た.介護自己評価の「できない」群は,物
質・経済的支援の社会サービス利用希望は
高いが,人的な介護支援サービスの利用希
望は低く,インフォーマルサポートの満足
度も低かった.
「要介護者にみられる軽
内的
度 の BPSD と 家 族 介 護
北村世都,時田学,
『老年社会科
資源・
者 の 主 観 的 QOL の 関
31
菊池真弓,長嶋紀一
学』27(4),416
外的
連:BPSD の特徴は家族
(2006)
−426.
資源
介護者の QOL を予測で
きるか」
8―
―9
配偶者・子ども・子どもの配偶者のいずれ
かの続柄に当たる 3,888 人に対し QOL の
上位群・下位群を設定し,3 つの次元得点
を説明変数,QOL の上位群・下位群を目
的変数としてステップワイズ法による判別
分析を行った結果,認知機能障害,易怒性
・猜疑心の次元がよく上位群と下位群を判
別した.QOL に対して BPSD のとらえ方
が関連している可能性を指摘した.
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
シャルポート」「社会資源」等が用いられてきた。しかし,先行研究の枠組み
は,家族介護者に焦点を合わせた枠組みや,社会資源に焦点を合わせた枠組み
であり,家族介護者を中心とした包括的視点の分類枠組みではなかった。よっ
(2)
という分類を
て,包含する概念として家族介護者の「内的資源」「外的資源」
採用した。検討の結果,以下のことが示された。尚,測定尺度と測定指標の構
成要素も,肯定的側面の関連要因とされているものは取り上げた。
(1)内的資源
内的資源に関する論文は以下の 12 編であり,分類された要因は,漓家族介
護者の認識や心理に関する要因,滷家族介護者の健康等に関する身体的要因,
澆家族介護者の介護行動に関する要因,潺家族介護者の日常生活に関する要因
であった。これまで検討された要因は,漓介護に対する認識や心理的要因であ
る「肯定的評価」「肯定的認識」「介護役割の積極的受容」「高齢者への親近
感」「介護価値」「高齢者との一体感」「満足感」「自己成長感」「介護役割充足
感」「介護役割遂行感」「主観的安寧感」,滷家族介護者の健康等に関する身体
的要因として「健康」,澆家族介護者の介護行動に関する要因である「コーピ
ング」「介護スキル」「問題解決型」や「回避型」の対処行動,潺家族介護者の
日常生活に関する要因である「ライフスタイル」であった。
1)初期には,家族介護者の生活満足感とライフスタイルの関連を注目した
山田紀代美・小栗千佳・杉山智子・竹内志保美・宮崎徳子(1998)「在宅要介
護高齢者の介護者におけるライフスタイルと生活満足感に関する研究」があ
る。
2)櫻井成美(1999)は,「介護肯定感がもつ負担軽減効果」にて,2306 人
の家族介護者を対象に,アンケート調査を実施し,肯定的評価は「限界感」を
軽減することや,
「満足感」は「自己成感」よりもより効果があることを示し
ている。
3)安田肇,近藤和泉,佐藤能啓(2001)は,「わが国における高齢障害者を
介護する家族の介護負担に関する研究:介護者の介護負担感,主観的幸福感と
9―
―9
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
コーピングの関連を中心に」にて,家族介護者 166 名を対象に,コーピング
と,介護負担感,主観的幸福感の関係を検討した。主観的幸福感の独立した関
連要因は,介護者の年齢,介護負担感,ペース配分型コーピングであることが
明らかになったと報告している。
4)安部幸志(2002)は,「介護マスタリーの構造と精神的健康に与える影
響」にて,認知症かあるいは寝たきりの 65 歳以上の高齢者を介護している介
護者を対象に調査し,166 人のデータの確認的因子分析の結果,
「caregiving role
mastery」と「coping efficacy with caregiving」の 2 因子を析出し,介護者の精
神的健康は介護の肯定的評価が必要であることを示唆している。
5)同じく,安部幸志(2004)は「家族介護者における主観的安寧感尺度の
信頼性と妥当性の検討」にて,肯定的評価,生活満足度,モラールスケールに
基づく主観的安寧感の重要性を示している。
6)山本則子,石垣和子,国吉緑,河原(前川)宣子,長谷川喜代美,林邦
彦,杉下知子(2002)は,「高齢者の家族における介護の肯定的認識と生活の
質(QOL),生きがい感および介護継続意思との関連:続柄別の検討」にて,
訪問看護を利用している 322 人の高齢者の家族介護者を対象に,質問紙調査を
実施し,その結果,いずれの続柄でも生きがい感には「肯定的認識」が強く関
連することを示している。
7)斉藤基(2003)は,「家族介護における介護行動及び介護者の QOL に関
する研究:介護行動スケールの開発とその信頼性・妥当性の検討」にて,訪問
看護ステーションによるサービスを利用している介護者 105 人を対象として介
護者のインフォーマル・ソーシャルサポート,介護者の自己効力感,介護者と
要介護者の関係性,介護行動,介護者の QOL 等に関して訪問面接調査を実施
し,介護者の QOL を規定する要因としては,介護者の健康状態と有意な関連
がみられたことを報告している。
8)陶山啓子,河野理恵,河野保子(2004)は,「家族介護者の介護肯定感の
形成に関する要因分析」にて,主介護者 184 名を対象に,質問紙を用いた聞き
取り調査を実施している。介護肯定感には,「介護状況に対する充実感」「自己
00 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
成長感」「高齢者との一体感」の 3 因子が抽出されている。介護肯定感形成に
は介護者と高齢者の関係が重要であり,「自己成長感」には,「問題解決型」や
「回避型」の対処行動が有効であり,「介護状況に対する充実感」は,健康状態
がよいこととの関連が認められたとしている。
9)片山陽子,陶山啓子(2005)は,「在宅で医療的ケアに携わる家族介護者
の介護肯定感に関連する要因の分析」にて,主介護者 190 名(医療的ケア有り
群 117 名,無し群 73 名)を対象に,質問紙を用いた訪問面接調査を実施して
いる。介護肯定感の「介護を通しての自己成長感」と「介護役割の積極的受
容」が医療的ケア有り群は無し群に比べて有意に高い結果であったとしてい
る。
10)広瀬美千代,岡田進一,白澤政和(2005)は,「家族介護者の介護に対
する認知的評価を測定する尺度の構造:肯定・否定の両側面に焦点をあてて」
にて,家族会会員を対象とし,主成分分析および下位尺度間の相関分析を行
い,その結果,肯定的側面の因子は「介護役割充足感」「高齢者への親近感」
「自己成長感」に命名されている。また,「自己成長感」はどの否定的側面の因
子とも有意な相関がみられなかったことを報告している。
11)片山陽子,矢嶋裕樹,小野ツルコ(2006)は,「在宅移行期の女性介護
者における主観的な介護準備状況と心理的ウェルビーイングとの関係」にて,
A 病院から自宅退院する医療依存度の高い療養者の介護者 208 人を対象に質
問紙調査を実施している。有効回答が得られた 145 人を分析対象とし,確認的
因子分析の結果,介護準備状況として「介護スキル」と「介護役遂行可能感」
の 2 因子 9 項目の斜交モデルは良好な適合度を示していた。「介護スキル」が
高い介護者ほど,否定的感情は低く,また,「介護役割遂行可能感」が高い介
護者ほど否定的感情は低く,肯定的感情が高かったとしている。
12)山田裕子,武地一(2006)は,「もの忘れ外来通院患者の家族介護者の
認知症と介護の受け止めに関する研究」にて,A 大病院もの忘れ外来の患者 49
人の家族介護者を対象に調べている。因子分析により肯定的な評価である因子
「介護価値」を析出している。
01 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
(2)外的資源
一方,外的資源に関する論文は以下の 8 編であり,分類された要因は,漓要
介護者に関する要因,滷家族に関する要因,澆社会資源に関する要因であっ
た。これまで検討されてきた要因は,漓要介護者に関する要因として「療養者
の ADL」「要介護者の軽度の BPSD」「患者の精神状態」,滷家族に関する要因
として「家族関係」「介護の交代人員や家族・親族等の周囲からの労い」,澆社
会資源に関する要因として「介護休業制度」「痴呆相談室」「介護上の相談相
手」「情報パンフレット」「もの忘れケア教室」であった。
1)山田祐子(1992)は,「職業生活と老親介護:介護休業制度の現状と問題
点」にて,介護休業制度は,短期の終末介護については大変有効に機能し,制
度の存在自体が介護者に安心感を与えていたことを報告している。
2)岩本俊彦,藤井広子,馬原孝彦,高崎優,今村敏治,近喰櫻,野口寿美
子(2001)は,「痴呆相談室からみた痴呆医療の現状と問題点」にて,Clinical
Dementia Rating(CDR)が 1 以上で痴呆ありと判断した 75 例を取り上げ,項
目 1(痴呆や周辺症状の評価に関する相談),項目 2(症状に対する対応の仕方
に関する相談),項目 3(医療機関への受診方法に関する相談),項目 4(治療
方法・服薬に関する相談),項目 5(福祉資源の情報に関する相談)に分類し
て各項目の相談頻度を検討している。その結果,痴呆患者の早期発見に関する
啓蒙がさらに必要であり,社会資源の活用に関する情報提供が不足しているこ
とを指摘している。
3)竹内真澄,吉田亨(2002)は,「要介護高齢者の主介護者が抱える問題:
訪問リハビリテーションの視点から」にて,健康管理に必要な時間を確保でき
る人ほど介護上の相談相手を確保しているという有意な相関関係が認められ,
さらには,相談相手の確保と,介護の交代人員や家族・親族等の周囲からの労
いとの間にも有意な相関が認められたことを報告している。
4)人見裕江,畝博,中村陽子,小河孝則,宮脇敏代,大澤源吾(2002)
は,「連続携行式自己腹膜灌流(CAPD)療養者家族の生活:療養者の ADL と
家族の QOL・生活力量」にて,家族の QOL の平均値が最も低かったのは,
02 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
寝たきり群の〈余暇活動の参加と機会〉であり,家族の生活力量の〈関係調整
・統合力〉は自立群で最も強く,次いで寝たきり群,家庭内自立群の順で強
く,有意差(p<0.01)が認められたことを報告している。療養者家族の体調
と心理的状態は,療養者の ADL が低下するほど悪化し,療養者の ADL 自立
度が高ければ,家族関係を調整したり,統合したりする力が高いことを報告し
ている。
5)田中共子・兵頭好美・田中宏二(2002)は,「在宅介護者のソーシャルサ
ポートネットワークの機能:家族・友人・近所・専門職に関する検討」にて,
ソーシャルサポートネットワークの機能を検討している。
6)渡辺百合子,荒木志保,栗原正紀(2003)は,「脳卒中患者家族への情報
提供:家族の心理・精神・健康面の変化について」にて,必要と思われる情報
をパンフレットとしてまとめ,家族の精神・健康面にどのような影響,効果を
調べ,パンフレットに関する家族の満足度は高かったが,家族の精神・健康面
には反映されなかったとしている。
7)黒田晶子,神田直,浅井憲義(2003)の「在宅脳卒中患者の介護者の健
康関連 QOL : EuroQol による検討」があげられる。介護者側の要因として年
齢,介護時間,続柄,家族の支えの 4 項目,患者側では,記憶,身の回りの管
理,普段の活動,痛み/不快感,不安/ふさぎ込みの 5 項目の 9 項目を説明変
数,介護者の QOL 効用値を目的変数とする重回帰分析では,介護者の年齢
(P<0.01)と家族の支え(P<0.05),患者の不安/ふさぎ込み(P<0.05),痛
み/不快感(P<0.05),記憶(P<0.05)の 5 項目が介護者の QOL 効用値に影
響を及ぼす要因として抽出されている(R 2=0.20)。これらの結果から介護者
の QOL 向上のためには,患者の精神状態の改善と介護者に対する家族の協力
が重要であることが示唆されたとしている。
8)田所正典,山口登,小野寺敦志,新妻加奈子,伊藤幸恵,森嶋友紀子,
松尾素子,高澤みゆき,川合嘉子,荻野あずみ,関野敬子,渡部廣行,青葉安
里(2005)は,「アルツハイマー型痴呆患者ならびに主介護者の生活支援を目
的とした非薬物療法的介入の試み:「もの忘れケア教室」の 6 か月後の有用
03 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
性」がある。患者と主介護者 24 組を対象にし,介入群は 17 組,非介入群は 7
組であった。患者評価として改訂長谷川式簡易知能評価スケール,聖マリアン
ナ医科大学式コンピュータ化記憶テスト,日常生活動作能力評価尺度を用い,
家族評価として痴呆介護の理解度を測る小テスト,介護肯定感尺度,介護負担
感尺度を用いている。各群とも基準時と 6 か月後得点の群内比較と変化量の 2
群間比較を行い,その結果,患者への介入効果は有効性は認められなかった
が,主介護者への介入効果として,小テストで介入群内比較と 2 群間比較で有
意差が認められたことを報告している。また,介護肯定感では介入群内比較で
有意差を認め,介護の動機づけが高まり介入効果が認められている。
(3)外的資源・内的資源
「内的資源・外的資源」に関する論文は 11 編であり,分類された論文は,内
的資源と外的資源の関連や,内的資源と外的資源の双方を家族介護者の肯定的
側面の要因として検討しているものである。これらにおける内的資源は,漓家
族介護者の認識や心理的要因である「精神的な健康」「内的生活満足度」「発症
前に主介護者の満足度」,滷家族介護者の介護行動に関する要因である「介護
度」「介護頻度」「対処行動」であり,澆家族介護者の日常生活に関する要因で
ある「継続的・定期的な外出活動」「動的学習活動」「余暇活動」「仕事」であ
った。外的資源は,漓要介護者に関する要因である「要介護老人のコミュニケ
ーション能力」「介護度」「介護頻度」「発症者の屋内移動」,滷家族に関する要
因である「副介護者の存在」「介護前の夫婦関係」「自由裁量できる金銭面」
「家族による日々の声かけ度合い」「同居家族からの手段的サポート」「暮らし
向き」,澆社会資源に関する要因である「ソーシャルサポートの有無」「デイサ
ービス」「愚痴を言える友人」「周囲のサポート」「他者との温かいやりとり」
「サービスの活用」「ソーシャルネットワーク」「介護者の会」であった。
1)杉澤秀博,中村律子,中野いずみ,杉澤あつ子(1992)は,「要介護老人
の介護者における主観的健康感および生活満足度の変化とその関連要因に関す
る研究:老人福祉手当受給者の 4 年間の追跡調査から」にて,4 年間の追跡調
04 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
査にもとづいて,要介護老人を介護する人の主観的健康感と生活満足度の変化
とその関連要因の分析している。東京都 T 市と A 区の老人福祉手当受給者の
うち,在宅療養者の主介護者 152 人を対象としている。生活満足度については
7 人に悪化が認められたが,生活満足度が悪化するか否かは,要介護老人のコ
ミュニケーション能力の悪化に加えて,ソーシャルサポートの有無,介護経験
を肯定的に評価しているか否かと関連が強かったと述べている。
2)山田晧子(1997)は,「脳卒中発症者の主介護者における生活全体の満足
度とその関連要因」にて,主介護者が収入になる仕事をする群で満足度が有意
に高かったとしている。ソーシャルサポートでは,同居家族からの手段的サポ
ートの多い群で少ない群よりも満足度が有意に高く,さらに,重回帰分析を行
った結果では,暮らし向きが普通または恵まれている,発症前に主介護者の満
足度が高い,発症者の屋内移動が可能である,デイサービスを利用していない
群で,満足度が有意に高い結果であったことを報告している。
3)綿祐二,山崎秀夫(1997)は,「在宅要介護高齢者の介護者の QOL 指標
に関する研究」にて,漓「健康面」の指標として実質的な身体変化よりも精神
的な健康感の測定,滷「経済面」は介護者個人で自由裁量できる金銭面の測
定,澆「家庭内面」では家族による日々の声かけ度合いなどの測定,潺「親戚
・近隣」では,重要な他者として愚痴を言える友人を持っているかの測定,潸
「余暇面」では継続的・定期的な外出活動ができているかの測定,澁「学習
面」では動的学習活動がどの程度できているかの測定を指摘している。
4)山田紀代美,鈴木みずえ(1998)は,「地域における高齢の介護者の健康
度と生活習慣:非介護者との比較から」にて,生活満足度は女性が有意(p
<0.05)に低かった。ソーシャルサポート得点は男性が有意(p<0.01)に,生
活習慣得点は女性が有意(p<0.001)に高かったことを報告している。
5)続いてソーシャルサポートに着目している研究として,川西恭子,官澤
文彦(2000)は,「在宅要介護高齢者の主介護者に対する社会的支援」にて,
介護状況の規定要因として,内面的生活満足度(F 1),介護度(F 2),自律性
(F 3),情動の統制(F 4),余暇活動(F 5),介護頻度(F 6),周囲のサポート
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日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
(F 7),他者との温かいやりとり(F 8),サービスの活用(F 9)の 9 因子を抽
出している。
6)一瀬貴子(2001)は,「高齢配偶介護者の,介護に対して抱く「生き甲斐
感」の規定要因分析:介護開始以前の夫婦関係・人間関係形成状況との関連」
にて,男性介護者のもつソーシャルネットワークは,配偶者に対しては限界が
あり,女性介護者のソーシャルネットワークは男性よりも有効であったとして
いる。介護前の夫婦関係に満足感を持っている介護者は,介護に対するより高
い価値をもち,さらに,妻の介護に対する価値は,介護前の夫婦関係の満足感
に,夫よりも影響を受けていたとしている。
7)斉藤恵美子・國崎ちはる・金川克子(2001)は,「家族介護者の介護に対
する肯定的側面と継続意向に関する検討」にて,介護継続意向の高い家族介護
者は社会サービスの利用意向が高く,介護満足感が高いことを報告している。
8)兵藤好美,田中宏二,田中共子(2003)は,「介護ストレス・サポートモ
デルの検討:寝たきり・痴呆性高齢者の場合」にて,「介護者の会」の入会年
数,副介護者の存在,ソーシャルサポートや対処行動などをストレスの緩衝効
果として分析している。満足感は問題解決型の対処によって高まっていた。ソ
ーシャルサポートのストレス軽減効果は,一部消耗感を軽減したが,精神的健
康促進における効果はわずかであったとしている。
9)高橋和子,小林淳子(2003)は,「高齢者夫婦世帯における介護者のイン
フォーマルサポートの実態と精神的健康の関連」にて,インフォーマルサポー
トの量と満足度は,家族からのサポートのほうが親戚,友人・知人のサポート
よりも得点が高かったことを報告している。インフォーマルサポートの量は,
精神的健康と相関が認められなかった。家族からのインフォーマルサポートに
対する満足度は精神的健康と有意な関連が認められたとしている。
10)高橋和子,佐々木明子(2003)「在宅要介護高齢者の介護者の介護自己
評価と社会サービス利用状況」である。介護者の自己評価に関連する要因とし
て,日常生活介助では「歩行・車椅子移動介助」,「コミュニケーションの工
夫」,インフォーマルサポートとの関連では,「家族の介護への協力のしか
06 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
た」,「友人・親戚の介護への協力のしかた」,「家族の精神的な支え」の満足度
が自己評価が「できる」群より「できない」群で有意に低かった。社会サービ
ス利用希望については,自己評価が「できない」群は,「訪問入浴サービス」,
「ホームヘルプサービス」,「ショートステイ」の継続利用を希望しない割合が
比較的高く,「日常生活用具貸与・支給」,「介護手当支給」の利用希望割合が
高かった。介護自己評価の「できない」群は,物質・経済的支援の社会サービ
ス利用希望は高いが,人的な介護支援サービスの利用希望は低く,インフォー
マルサポートの満足度も低かったとしている。
11)北村世都,時田学,菊池真弓,長嶋紀一(2006)は,「要介護者にみら
れる軽度の BPSD 家族介護者の主観的 QOL の関連:BPSD の特徴は家族介護
者の QOL を予測できるか」にて,配偶者・子ども・子どもの配偶者のいずれ
かの続柄に当たる 3,888 人に対し QOL の上位群・下位群を設定し,3 つの次
元得点を説明変数,QOL の上位群・下位群を目的変数としてステップワイズ
法による判別分析を行った結果,認知機能障害,易怒性・猜疑心の次元がよく
上位群と下位群を判別した。QOL に対して BPSD のとらえ方が関連している
可能性を指摘している。
蠹
考
察
1.家族介護者の肯定的側面に関する研究レビュー
本論文は,既存の文献を基礎に,家族介護者のウェルビーイング(wellbeing)を目指した支援体制の今後の在り方についての示唆を得ることをねら
いとして,介護の肯定的側面に関する概念やその関連要因についてレビューす
ることを目的に行なった。検索の対象とするデータベースは社会老年学データ
ベースと関連図書とし,家族介護者の「QOL well-being satisfaction appraisal」
というキーワードによって検索された介護の肯定的側面に関する研究を検討し
た。69 件の論文を抽出し重複しているものや研究対象の異なるものを除き 31
編を検討し研究動向を示した。次にその中から肯定的側面の関連要因を抽出
07 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
し,「内的資源」「外的資源」「内的資源・外的資源」に分類した。
先行研究では,「身体的要因」「心理的要因」「精神的要因」「社会的要因」
「インフォーマルサポート」「ソーシャルサポート」「社会資源」等として分類
されていたが,これらを包括する概念として「内的資源」「外的資源」という
分類枠組みを採用した。検討の結果,以下のことが示された。
第 1 に,介護の肯定的側面に関する研究動向として,
「QOL well-being satisfaction appraisal」の測定尺度や測定指標の開発を目指している論文と,「QOL
well-being satisfaction appraisal」に対するサポート資源に関する論文の流れが
観察できた。前者の研究では,介護における肯定的側面の概念として,介護に
対する「価値観」「介護役割に対する充足感」「自己成長感」「満足感」等が見
出された。また,後者の「QOL well-being satisfaction appraisal」に対するサポ
ート資源に関する論文では,これらの規定要因とされるサポート資源として,
「介護肯定感」「自己成長感」「生きがい感」などの家族介護者の認識や心理に
関する要因と,要介護者に関する要因,家族に関する要因,社会資源に関する
要因などの外的な資源が重複し検討されてきたことが明らかになった。
この結果から,肯定的側面の関連要因は,前者の論文における介護に対する
「価値観」や「介護役割に対する充足感」「自己成長感」「満足感」等の「内的
資源」をも含めて整理する必要があることが示された。また,従属変数は介護
の肯定的側面に関して開発された測定尺度以外にも,精神的健康や抑うつ度な
ど既存の測定尺度も使用されていた。介護の否定的側面といわれる「介護負担
感」の概念に比し,肯定的面の概念は多様であり,測定尺度も多様であること
が示された。
第 2 に,これら「QOL well-being satisfaction appraisal」の測定指標,測定尺
度開発を目指している論文と,「QOL well-being satisfaction appraisal」のそれぞ
れに対するサポート資源に関する論文の中から,肯定的側面の関連要因を取り
出し,家族介護者の「内的資源」
「外的資源」「内的資源・外的資源」の分類枠
組みを用いて整理した。
その結果,「内的資源」としてこれまで検討されてきた要因は,漓家族介護
08 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
者の介護に対する認識や心理に関する要因,滷家族介護者の健康等に関する身
体的要因,澆家族介護者の介護行動に関する要因,潺家族介護者の日常生活に
関する要因であった。「外的資源」としてこれまで検討されてきた要因は,漓
要介護者に関する要因,滷家族に関する要因,澆社会資源に関する要因であっ
た。「内的資源・外的資源」に分類された論文は,内的資源と外的資源の関連
を調べたものや,内的資源と外的資源の双方を家族介護者の肯定的側面の要因
として検討しているものであった。
2.介護保険制度施行後の家族介護者支援発展の方向性と残された研究
介護保険制度が施行され介護サービスが普遍化されてきた現在,家族介護者
支援は過重な介護負担感の軽減という目標から,家族介護者の良好な状態−ウ
ェルビーイング(well-being)が目標とされるべきであろう。ウェルビーイン
グ(well-being)を目標とする支援体制を構築するためには,介護保険サービ
スの質,量の向上による介護負担感の軽減とともに,介護の肯定的側面を高め
ることも必要であろう。本稿は,そのために介護の肯定的側面の関連要因を整
理し,ウェルビーイング(well-being)発展のための多様な資源が検討されて
いることが明らかになった。今後の課題として,まだ検証されていない外的資
源が内的資源に与える影響を調べることや,新たな資源の発見開発が,家族介
護者の肯定的側面に関する研究として残された課題と言えよう。そのひとつと
して,セルフヘルプグループに関しては詳細な検討はされておらず,家族介護
者支援のひとつの資源として検討が望まれることが示唆された。
注
盧
社会福祉における人々の良好な状態である「ウェルビーイング(well-being)」と
は,1946 年世界保健機構(WHO)憲法草案の中に登場した「Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absent of disease or infirmity. 健康とは身体的・精神的および社会的に良好な状態であって,単に病気で
ないとか,虚弱でないということではない」という定義が参照されよう(庄司洋
子・ほか 1999)
。
尚,海外文献では介護者の well-being を尺度している研究もあるが,構成要素が
09 ―
―1
日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
限られている。そのため,本稿では well-being だけでなく,関連したキーワード
も検索の対象とし,上述した抽象的な概念として使用している。
盪 「内的資源」
「外的資源」は,ヘルスプロモーションの基礎理論として高く評価さ
れている医療社会学者 Antonovsky(1979)の健康生成論の中で,汎抵抗資源の分
類項目として用いられている項目である(小田 1996)。本研究では,従来の社会
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の介護負担に影響を与える要因の検討:日本語版 Zarit 介護負担尺度(J-ZBI)を
用いて」
『日本老年医学会雑誌』42(2)
,221−228.
綿祐二,山崎秀夫(1997)「在宅要介護高齢者の介護者の QOL 指標に関する研究」
『総合都市研究』63, 15−25.
山本則子(1995)「痴呆老人の家族介護に関する研究;娘および嫁介護者の人生にお
ける介護経験の意味」
『看護研究』28(3)
,2−23.
山本則子,石垣和子,国吉緑,河原(前川)宣子,長谷川喜代美,林邦彦,杉下知子
(2002)「高齢者の家族における介護の肯定的認識と生活の質(QOL),生きがい
感および介護継続意思との関連:続柄別の検討」
『日本公衆衛生雑誌』49(7)
,660
−671.
山田裕子,武地一(2006)「もの忘れ外来通院患者の家族介護者の認知症と介護の受
け止めに関する研究」
『日本痴呆ケア学会誌』5(3)
,436−448.
山田祐子(1992)「職業生活と老親介護:介護休業制度の現状と問題点」『社会老年
学』
(36)
,58−71, 96.
山田晧子(1997)「脳卒中発症者の主介護者における生活全体の満足度とその関連要
因」
『老年社会科学』18(2)
,134−146.
山田紀代美・小栗千佳・杉山智子・竹内志保美・宮崎徳子(1998)「在宅要介護高齢
者の介護者におけるライフスタイルと生活満足感に関する研究」
『日本看護学
安田肇,近藤和泉,佐藤能啓(2001)「わが国における高齢障害者を介護する家族の
介護負担に関する研究:介護者の介護負担感,主観的幸福感とコーピングの関連
を中心に」
『リハビリテーション医学』38(6)
,481−489.
Zarit, S. H., Reever, K. E., & Bach-Peterson, J.(1980)Relatives of the impaired elderly :
correlates of feeling of burden, The Gerontologist, 20, 649−655.
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日本の家族介護者研究における well-being の関連要因に関する文献レビュー
A Review of studies on factor
of caregivers’ well-being in Japan
Atsuko Saburi
This article is a review of the studies focused on caregivers’ positive feeling aiming at promoting caregivers’ well-being. Investigation showed that there are numerous factors related to caregivers’ positive feeling. The factors were classified into
caregivers’ internal resources and external resources. Following factors were examined as caregivers’ internal resources : caregivers’ mental state and understanding
for caregiving , caregivers’ physical condition , caregivers’ action of caregiving ,
caregivers’ daily life. As external resources : condition of disabled family member,
situation of family except caregivers, social resource. There were a few studies examining relation of internal resources and external resources.
It became clear that while numerous surveys were conducted, there are few research about self-help group as a external resources. It is important that research will
be conducted on self-help group and new resources relating to caregivers’ positive
feeling, and that external resources promoting caregivers’ positive feeling are developed.
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