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国家存続の糧となる生態系の維持 - Maldives Embassy

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国家存続の糧となる生態系の維持 - Maldives Embassy
スペシャルインタビュー
国家存続の糧となる生態系の維持
持続可能な島をめざして
モルディブ共和国 環境エネルギー大臣
マリヤム・シャキーラ氏
地域的な事象についての地球規模での影響や、平均気温変動が生態系へもたらす変化などは容易に
解明できるものではない。しかし、これらが要因と考えられる、常識を超える“地球”を目の当たりに
しているのが、独特の島嶼生態系を有する地域・国々である。インド洋に浮かぶ群島国家・モルディブ
共和国のマリヤム・シャキーラ環境エネルギー大臣に、生態系の維持、島嶼特有の課題と今後の対応
策を尋ねた。
サンゴ礁の完全回復には
100 年以上が必要
や水、大気などの無機的環境
の悪影響に対する防衛効果の
を合わせたものを呼んでいま
役目を果たすサンゴ礁の生態
す。モルディブの大小1190も
系は、観光業と漁業というモ
―気候変動と生態系の維持
の島々は、26の環礁といわれ
ルディブの2大産業を支えて
をどう解釈されていますか。
る円環状に広がる珊瑚礁から
います。これ らは 我 が 国 の
シャキーラ 生態系とは、あ
なります。サンゴ礁は、地球
GDPの89%に相当し、輸出の
るまとまった地域において、
上で最も多様性に満ちた生態
98%、外貨獲得の62%を占め
そこに生活するすべての生物
系のひとつです。特にモルデ
ています。国内雇用の70%以
と、その生活空間を満たす土
ィブのサンゴ礁の生態系は世
上は海洋および沿岸の生物多
界でも有数の生物多様性を持
様性、そしてサンゴ礁に依存
つだけでなく、地球全体のサ
しているのです。それ故にサ
ンゴ礁の5%を占め、世界で7
ンゴ礁や海洋生態系の崩壊・
番目の規模を誇る非常に貴重
損傷は、国家の生産性や開発
なものです。
目標、さらに食糧確保に対す
しかし近年は、海面温度の
る危機を意味します。
上昇の被害を受けていると考
えられ、必 要とされ る10~
15年の回復期間もないまま白
化現象が継続的に起きていま
プロフィール
Mariyam Shakeela
1996年ニューヨーク州立大学ビジネス学科卒業
後、カーティン工科大学で商業博士号、経営学博
士号を取得。2001年からモルディブのリゾート
ホテル運営管理会社であるSIMDI Company Pvt
Ltd.の最高経営責任者に就任。現在もその手腕を
発揮するほか、不動産や物流関連の他2社でも取
締役兼株主を務める。2012年4月より現職。
4
地球温暖化 2013/11
世界への警告メッセージ
を発した国際会議
す。その結果、サンゴ礁は今
―今年6月、沖縄で開催さ
世紀中には回復不可能と言わ
れた「地球温暖化防止とサン
れるほどの状況にまで陥って
ゴ礁保全に関する国際会議」
いるのが現状です。
へ出席されましたね。
―生態系の象徴ともいえる
シャキーラ 地球温暖化や生
サンゴ礁は、モルディブの経
物多様性・生態系サービスの
済にも大きな役割があるとお
喪失といった問題は、島嶼地
聞きしています。
域における最重要課題の一つ
シャキーラ 生物学的多様性
です。島嶼地域は環境収容力
を支え、自然災害や気候変動
が小さく、これら影響による
被害も顕著となるため、特有
で開催される気候変動枠組条
の取り組みが必要とされてい
約(UNFCCC)やCOP19、そ
ます。
の他の環境問題フォーラムな
地球温暖化防止とサンゴ礁
どへつながる世界への警告メ
保全に関する国際会議は、6
ッセージが発せられたことは
月29と30日、14カ国・ 地 域
非常に大きな意味を持ってい
からのべ700名を超える参加
ると思います。
者を得て、沖縄県の沖縄科学
―モルディブからはどのよう
技術大学院大学にて開催され
なことを発信されたのですか。
ました。石原環境大臣のほか、
シャキーラ 第一に、コミッ
パラオ財務大臣、パチャウリ
トメント(必達目標)を科学者
マーレではじまった「モルディブプロジェクト」は太陽
光発電システムを利用し、送電網で国内29の島々を
つなぐ計画
る戦い」だと思っています。
IPCC議長など、島嶼国にお
が推奨する水準にまで引き上
チャンス(好機)とは、現在
ける地球温暖化対策やサンゴ
げたい。
なぜならばそれが我々
供給している電力エネルギー
礁保全などの幅広い専門家が
にとって悲惨な結果につなが
のコストを引き下げること。化
出席し、知見の共有が行われ
らない唯一の方法だからです。
石燃料にほぼ依存する現在で
ました。日本政府が科学者や
米国海洋気象 局(NOAA)の
は、関 連 費 用にGDPの36 %
この道の専門家との橋渡し役
発表によると、大気中のCO2
を費やしているからです。こ
を務めていただき、この様な
濃度は1日平均400ppmを超
れは持続可能ではありません。
重要な国際会議を開催してく
えたといわれています。これ
そこで温暖化の影響を軽減す
ださったことに対して御礼を
は島嶼国にとっては非常に脅
る再生可能エネルギー導入の
申し上げます。
威です。他の地域でも洪水や
プログラムを実施しています。
― サンゴ 礁 の 保 全に つい
異常気象に直面すれば同じ様
中心となるのが、身近にある
て、どのような確認がなされ
な脅威になり得る。第二に、
太陽光エネルギー。これを基
たのですか。
我々はこれまで以上に先進国
本に、廃熱エネルギーや風力
シャキーラ 地域固有の観光
に対し、必要な資金を明快に
な ど も 利 用 し て い き た い。
資源でもあるサンゴ礁につい
粘り強く求めていくつもりで
MWOCマーレ上水道公社と日
ては、自然の防波堤として重
す。
要な防災・減災機能を提供し
ているにも関わらず、海水温
上昇による白化など、温暖化
の影響を大きく受け、その他
立プラント社は深層海水を使
った冷却システムなどのエネ
カーボンニュートラルへの
戦いは絶好のチャンス
ルギープログラムを着手させ
ています。世界銀行やアジア
開発銀行などの基金によって
の人為的要因とも相まって衰
―2020年までにカーボン
支援されるものですが、全て
退の危機にさらされているこ
ニュートラルをめざす国内の
の計画はこのような組み合せ
取り組みも進められています
になっていきそうです。
とが改めて確認されました。
また、こうした温暖化の直
ね。
モルディブ単独では難しい
接・間接の影響により、モル
シャキーラ カーボンニュー
ものもありますが、いずれに
ディブのように国土の存続の
トラルへの取り組みは前政権
せよカーボンニュートラル計
画を実現していきたい。合わ
危機にさらされるような島嶼
時代に立ち上がり、現在もこ
国もあります。今回の会議で
のゴールへ向けていくつかの
は、科学者や専門家の分析調
プログラムに取り組んでいま
め一緒にサンゴ礁の保全を考
査で地球温暖化が引き起こす
す。カーンボーニュートラル
えながら世界からの長期的な
サンゴ礁への脅威の事実が明
へのメッセージは我々人類の
支援もお願いしたいと願って
らかにされました。地球規模
「絶好のチャンスとそれに対す
せてCO2 排出量を削減するた
います。
2013/11 地球温暖化
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