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I Shadow

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I Shadow
TEAM:影ケバブ
I Shadow
IVRC2011 参加作品
1.企画目的
人は、コミュニケーションを求める。人と人のコミュニケーションは時にアイデアを産み、感情を
生み出す大きな力を持っている。だが実際にコミュニケーションのきっかけを作ることは難しく、特
に初対面の相手とコミュニケーションのきっかけを作ることは容易ではない。
そこでコミュニケーションを支援する方法として、切っても切り離すことのできない私たち自身の
影に注目した。影は私たちにとってより近しい分身である。その分身である影同士がコミュニケーシ
ョンをおこなったとしたら、自然に体験者同士もコミュニケーションをおこなうきっかけを作ること
ができるのではないだろうか?
コミュニケーションを助長するようなコンテンツは過去に数多く存在している。その中で今回提案
する「I Shadow」では、
「互いの影を用いた感覚運動遊びをおこなう」という形のコミュニケーション
方法を実現する。
2.背景
これまでに「影」を使った VR 研究や VR コンテンツは数多く存在する。佐藤らによる 影の表現を利
用したインタラクティブコンテンツ[1]があるが、この作品は影という「自然現象」に着目し、テー
ブルに置かれた物体の影を下からプロジェクタで投影し、物体に触れることで影に変化が起きるとい
う作品である。
「かげかみさま」(図 1) [2]や「かげくり」(図 2) [3]、「電影遊戯」(図 3)[4]、「KAGE」
(図 4)[5]が影を使った作品があげられる。
図 1 「かげかみさま」
(IVRC2007)
図3
「電影遊戯」
(IVRC2003)
図2
「かげくり」
(IVRC2007)
図 4 「KAGE」
(1997)
1
これらは画面に映し出されたシルエット映像を、自分の影で、もしくは自分の体で干渉し、操作す
るというコンテンツであるが、これらの作品は「1 人で」、
「コンピュータ相手に」という領域から脱し
ていない。
「I Shadow」では影を表現方法として利用すると共に、影を自分の分身とし、コミュニケーショ
ンツールとして発展させていく。さらに単独のみで動作することはなく、2 人でのプレイに強制する
事ができる。また、限られた空間で全身を使った感覚遊びができ、例え小さい子供や言葉の通じない
人同士でも、コミュニケーションをおこなうことができる。赤外線検出を使うことにより暗い中でも
人間を認識でき、それを基に影を描画することができる。
システムに「誰とでも」を可能としたコミュニケーション支援ツールがこの「I Shadow」である。
3.コンセプト/課題設定
「かげかみさま」や「かげくり」、
「電影遊戯」は 2 人以上ではできず、
「KAGE」は広い空間が必要
である。それに対して「I Shadow」は狭い空間で「全身を使った感覚運動遊び」が 2 人でできる。影
を使っているが IVRC の会場のような、明るさに制限のある場所でも遊ぶことができる。
私たちは身の回りに共感者がいることによって安心感を得る。また、子どもが社会性を身に着ける
ために必要とされる要素として共感者の存在も重要になっている。
「共感」とは、人の心理的欲求理論
に挙げられる「双子自己対象」である。心理的欲求である「双子自己対象」を得ることができないと、
人間は精神病理に陥るとされている[6]。
「I Shadow」は、体験者が互いの共感者となって、共感者とのかかわりの中でコミュニケーション
を育むことで心理的欲求を満たすことができる[6]。
本企画の「互いの影を用いた感覚運動遊びでコミュニケーションをおこなう」ことで基本的欲求で
ある「双子自己対象」を満たすことができる。また、新たな共感者との関わり合いのきっかけにもな
るだろう(図5)。
図5 本企画で生まれる心温まる 1 シーン
2
4.体験の流れ
体験者は 2 人で体験エリアに入り、Xbox 360 Kinect センサを用いて体験者を検出し、正面に設置
されたスクリーンに作り出された影として投影する。
スクリーンに投影された 2 人の影が動きだし、2 人が協力しないと作れないシルエットを影のシル
エットが提示する。例えば、抱きついたりキスしたり等というシルエットが提示される。
体験者は実際にそのシルエット通りに抱きついたりキスしたりする必要はなく、2 人の影の形が提示
したシルエットになれば正解となる。
その時の 2 人の距離を Xbox 360 Kinect センサの奥行センサを用いて計測する。計測した 2 人の距
離を数値化し、その体験者同士が仲良くなった度合いは提示したシルエットと 2 人の同じ動きになっ
たとき、2 人の距離で測定することができる。
図 6:ハートマーク(左:奥行画像
右:実画像)
図 7:ケンタウロス(左:奥行画像
右:実画像)
図 8:キス(左:奥行画像
右:実画像)
3
5.体験概要
1:体験者 2 人は体験エリアに入る。
2:2 人の影が動き、ポーズをとる。
3:2 人は影と同じポーズをとる。
4
4:これはちょっと無理!という難問が出てきた場合でも・・・
5:シルエットさえ一致すれば良い。
6:体験を通じて仲良くなれる。
5
6.技術説明
6-1 全体説明
本システムでは、Xbox 360 Kinect センサ 2 台、プロジェクタ 2 台、スクリーン 1 台、制御 PC1 台
を用いる(図 9)。
図9
システム構成図
6-2 プロジェクタ
体験者の影を 2 台のプロジェクタを用いて投影する。1 台はスクリーンにシルエットを投影し、も
う 1 台は体験者の足元からスクリーンに向かって伸びる影を投影する。この 2 つの影を合わせること
によって、スクリーンに投影された影は自分の影であるように体験者に提示できる。
6-3 Xbox 360 Kinect センサ
体験者を撮影する Xbox 360 Kinect センサは、図のようにスクリーン側上部と側面上部の 2 か所に
設置をする。
Xbox 360 Kinect センサは赤外線で奥行を計測しているため、2 つ同時に使用すると計測時にノイ
ズが発生する。しかし予備実験として、図のように垂直方向に設置した場合は大きなノイズ(計測が
不安定になるようなノイズ)は発生しなかった。
6-4 影の表現
本企画では映し出した影を、体験者が「本物の影」だと感じることが重要である。そのため、体験
者に作り物の影だと思わせない仕組みが必要となる。その手段として Xbox 360 Kinect センサを 2 台
用いることによって、体験者の位置を完全に追従し、常に体験者の足から影が伸びているように見せ
ることが可能なはずである。その他にも、体験者がスクリーンへ近づいた時、影はくっきり映り、離
れると影はぼやけて見える[7]。
そういった表現方法や本物の影と組み合わせる図より、体験者をコンテンツに引き込むような要素
を考案中である。
6
6-5 解答の判定の表現
解答の判定に、今現在の影(体験者の姿)をディスプレイに重ねてしまうと一気に「影らしさ」
(デ
ィスプレイに移る自分の影らしさ)が薄れてしまう。そこで判定には音や別の視覚効果で正解に近い
か遠いかを体験者にアナウンスする仕組みが必要となる。もしも提示したシルエットに体験者が無理
だと諦めてしまっても、制限時間を設けることで次のシルエットを提示する。制限時間は 10~20 秒ま
でをシルエットの難易度で調整する。
7.展望
幼稚園児や小学生を対象に「I Shadow」を通じて、仲良くなってもらう。そして、「双子自己対
象」を満たし、集団の中でコミュニケーションがおこなえる社会性を身に着けてもらうことを目指
す。
8.スケジュール
図 10 ガントチャート
9.使用機材
・PC
1台
・Xbox 360 Kinect センサ
2台
・プロジェクタ
2台
・70 型スクリーン
1台
・ビニール平マット
2枚
7
10.参考文献
[1] 佐藤美穂、若林尚樹 「影の表現を利用したインタラクティブコンテンツ 」デザイン学研究、
研究発表大会概要集(52),pp.78-79,(2005.5).
[2] 第 15 回 IVRC2007「かげかみさま」http://ivrc.net/2007/about/gifu.php.
[3] 第 15 回 IVRC2007「かげくり」http://ivrc.net/2007/about/gifu.php.
[4] 第 11 回 IVRC2003
「電影遊戯」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030820/ivrc.htm.
[5] 近森基、久納鏡子「KAGE」第 1 回文化庁メディア学術際 (1997).
[6] アーネスト・S・ウルフ著「自己心理学入門-コフート理論の実践-」
,金剛出版,2001 年.
[7] 影の重なりや見え方が、影による奥行き知覚に与える効果
http://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/2000/info/1010361.pdf
2001.02.05.
[8] 白井暁彦、小林希一、河北真宏、斉藤豪、中島正之「Axi-Vision カメラによるモデリングと
シャドウイング」映像情報メディア学会技術報告 28(32),pp9-12,(2004.6).
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