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温暖化を防ぐ社会のあり方 -脱温暖化社会に向けた

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温暖化を防ぐ社会のあり方 -脱温暖化社会に向けた
国立環境研究所公開シンポジウム2005
地球とくらしの環境学
−あなたが知りたいこと、私たちがお伝えしたいこと−
脱温暖化
2050
温暖化を防ぐ社会のあり方
−脱温暖化社会に向けた
3つの取り組み−
行動 技術
制度
藤野純一
社会環境システム研究領域
あなたが知りたいこと、
私たちがお伝えしたいこと
脱温暖化社会(=低炭素社会)とはどんな社会か?
1.なぜ、脱温暖化社会を実現させる必要があるのか?
2.どうすれば脱温暖化社会を実現できるのか?
=脱温暖化社会に向けた3つの取り組み
3.そのために、私たちは今、何をすればいいのか?
行動 技術
制度
脱温暖化社会(=低炭素社会)とは
どんな社会か?
• 温室効果ガスをほとんど出さない社会
• 人々が住みたい/働きたいと思う社会
• 先進国の問題(高福祉高負担など)を抱え
ながら、その問題とともに生きてゆく社会。*1
これらの社会像を決め、実現するのは
国民一人一人の選択
*1:槌屋治紀;脱温暖化2050研究プロジェクト「2050年ビジョン検討会」、2005年4月19日
2050年脱温暖化社会を想定
温暖化は100年の計:
定常的な温暖化影響が具体的に
出るのは50年から100年後。
なぜ2050年?
脱温暖化
2050
• 大部分のインフラが変更される・社会構造を
変えられる
– 10年から20年:生活機器、車両など
– 30年から50年:エネルギー供給部門、住宅、社会基盤
インフラ(道路、上下水道、電線など)
• 自分が、子供が、孫が生きている時代
深刻な温暖化影響を回避するには、
温度上昇を2度以内に抑える必要
1.なぜ、脱温暖化社会を
実現させる必要があるのか?
極めて危険
国際的な共通認識へ
気候の様相の変化、海洋大循環の
停止、南極・グリーンランド氷床の
崩壊等の、大規模かつ不可逆な影響
危険
︵
海洋大循環の崩壊等︶
IPCC第3次評価報告書
破局的事象
世界経済
悪影響の分布
極端な気象
植生変化、サンゴ礁の白化などの
脆弱な生態系への影響
脆弱システム
水文・水資源、農林水産業、人の健康
などへの影響が多地域で発現
5.0
5
約50%削減
AIM/Impact[policy]
モデルによる結果
肱岡(NIES)他
2100
2090
2080
2070
年
GHG-475ppm
Greenhouse gasesとは
温室効果をひき起こす
ガス:CO2以外にメタン、
亜酸化窒素、フロンなど
2060
0
年
BaU
650
550
500
2050
1990
2000
2010
2020
2030
2040
2050
2060
2070
2080
2090
2100
2110
2120
2130
2140
2150
0.0
GHG: 温室効果ガス
(Greenhouse gases)
GHG
475ppm
2040
1.0
10
2030
GHG475ppm
15
2020
475
BaU
なりゆき
2010
2.0
20
2000
650
550
500
3.0
全ガス排出量推移(世界)
1990
BaU
温度上昇(世界平均) なりゆき
温室効果ガス排出量 (二酸化炭素換算:GtC/年)
気温上昇 (1990年=0.6℃)
4.0
25
GHG-500ppm
GHG-550ppm
GHG-650ppm
気温上昇を2℃以下に抑えるには、大気中
GHG濃度を475ppm以下にする必要がある
•2050年のGHG排出量を世界全体で、1990年
レベルの50%以下に削減する必要がある
•日本はそれ以上(60-80%)の削減が求められ
る可能性。欧州諸国(英国60%削減、ドイツ
80%削減、フランス75%削減)でも検討。
2.どうすれば脱温暖化社会を実現できるのか
=脱温暖化社会に向けた3つの取り組み
2.1 排出量はどうやって決まるのか?
2.2 脱温暖化への道筋をどのように
描けばいいのか?
2.3 どんな取り組みをすればいいのか?
2.1 排出量はどうやって決まるのか?
CO2
活動量
エネルギー
CO2排出量= 人口 ×
×
×
人口
活動量
エネルギー
一人当たり活動量
豊かさの指標
エネルギー集約度
生産性効率改善
炭素集約度
エネルギー構成改善
(一人一人の
生産活動によって
生み出される価値)
(例えば鉄を1トン作る
ために投入した
エネルギーの割合)
(エネルギーを作る
ときに排出される
CO2の量)
新しい豊かな
社会とは?
エネルギー依存の
少ない経済活動とは?
CO2を出さないエネ
供給システムとは?
変化率に書き直すと…
の合計
各年変化
変化率=スピード
微分
変化
スピード
になる!
足し算
掛け算 が
炭素
一人当たり エネルギー
集約度
集約度
活動量
合計量
CO2
活動量
エネルギー
CO2排出量= 人口 ×
×
×
人口
活動量
エネルギー
積分
CO2
エネルギー
活動量
CO2排出量
人口
=
+ 人口 + 活動量 + エネルギー
の変化率
の変化率
の変化率
の変化率
の変化率
大幅削減を実現するにはどれぐらいの削減スピードが必要なのか?
日本(1990年
エネルギー集約度
悪化:主に業務・運輸
50
0
%
日本(1960年
から2000年)
60
%
仏(1990年
から2000年)
70
市民エネ調
きりカエル
環境省
日本B2
炭素集約度改善:
天然ガス・原子力の
増加
%
–1
英(1990年
から2000年)
80
%
市民エネ調
いきカエル
経産省
省エネ進展
経産省
対策組合せ
独(1990年
–2
から2000年)
2030年を
対象とした
日本の
シナリオ
90
%
エネルギー集約度変化率 (%/年)
から2000年)
–3
–3
–2
–1
炭素集約度変化率 (%/年)
0
河瀬・松岡(京都大学)
藤野(NIES)
大幅削減を実現するにはどれぐらいの削減スピードが必要なのか?
40
40 3
% 0% 2 0%
re
du
ct
io
n
%
エネルギー集約度
悪化:主に業務・運輸
から2000年)
削
減
50
0
%
日本(1960年
から2000年)
60
%
仏(1990年
経済成長率年間1%で から2000年)
2050年までに
–1 実現できる削減率
70
市民エネ調
きりカエル
環境省
日本B2
炭素集約度改善:
天然ガス・原子力の
増加
%
英(1990年
から2000年)
80
%
市民エネ調
いきカエル
経産省
省エネ進展
経産省
対策組合せ
独(1990年
–2
から2000年)
2030年を
対象とした
日本の
シナリオ
90
%
エネルギー集約度変化率 (%/年)
日本(1990年
–3
–3
–2
–1
炭素集約度変化率 (%/年)
0
河瀬・松岡(京都大学)
藤野(NIES)
大幅削減を実現するにはどれぐらいの削減スピードが必要なのか?
40
40 3
% 0% 2 0%
re
du
ct
io
n
%
エネルギー集約度
悪化:主に業務・運輸
から2000年)
削
減
50
0
%
日本(1960年
60
から2000年)
%
仏(1990年
経済成長率年間1%で から2000年)
70
2050年までに
–1 実現できる削減率
市民エネ調
きりカエル
環境省
日本B2
炭素集約度改善:
天然ガス・原子力の
増加
%
–2
た
し
と オ
象 リ
対 シナ
を
の
%
% 減 年
90
80 削 5 0 ・ 仏
%
0
2
・独
80
英(1990年
英
エネルギー集約度変化率 (%/年)
日本(1990年
–3
–3
–2
から2000年)
市民エネ調
いきカエル
経産省
省エネ進展
経産省
対策組合せ
独(1990年
から2000年)
–1
炭素集約度変化率 (%/年)
0
2030年を
対象とした
日本の
シナリオ
河瀬・松岡(京都大学)
藤野(NIES)
大幅削減を実現するにはどれぐらいの削減スピードが必要なのか?
40
40 3
% 0% 2 0%
re
du
ct
io
n
%
エネルギー集約度
悪化:主に業務・運輸
から2000年)
削
減
50
0
%
日本(1960年
60
から2000年)
%
仏(1990年
経済成長率年間1%で から2000年)
70
2050年までに
–1 実現できる削減率
市民エネ調
きりカエル
環境省
日本B2
炭素集約度改善:
天然ガス・原子力の
増加
%
–2
た
し
と オ
象 リ
対 シナ
を
の
%
% 減 年
90
80 削 5 0 ・ 仏
%
0
2
・独
80
英(1990年
英
エネルギー集約度変化率 (%/年)
日本(1990年
–3
–3
–2
から2000年)
脱
化
暖
温
市民エネ調
いきカエル
経産省
省エネ進展
経産省
対策組合せ
独(1990年
から2000年)
–1
炭素集約度変化率 (%/年)
0
2030年を
対象とした
日本の
シナリオ
河瀬・松岡(京都大学)
藤野(NIES)
400
フォアキャスティング
現状から考えられる方法
の延長で将来を考える
350
なりゆき
ケース
300
250
200
150
100
通常の
対策ケース
↓40% 削減
↓60%削減
↓80%削減
50
0
2000 2005 2010
バックキャスティング
目標とすべき社会を
想定し、将来から現在
2015 2020 2025 2030 2035 2040
の対策を考える
年年
省エネ技術開発
エネ供給システム変更
脱温暖化
対策ケース
人々が住みたい
と思う社会
CO2 排出量(炭素100万トン-C)
2.2 脱温暖化への道筋を
どのように描けばいいのか?
2045 2050
技術・制度・行動における
Innovation(=革新、創新)
すべての対策の組合せ
増井(NIES)
2050年脱温暖化社会の描写例
2050年の日本人が必要とする
需要・サービスは何か?
居住・情報・移動・産業
人の住む/働く場所を描く
シナリオA: 活力、ドラえもんの社会
シナリオ B: ゆとり、さつきとメイの家
都市型/個人を大事に
分散型/コミュニティ重視
集中効率サービス・ハイテク化
(高度マニュアル化→ドラえもん)
個別対応サービス・お客様本位
(オーダーメイド化→ハンドメイド)
集中生産・リサイクル
技術によるブレイクスルー
地産地消、必要な分の生産・消費
もったいない
見たいところがコンパクトに楽しめる、
便利なレジャー
自己探索的時間をかけた、
ゆったりとしたレジャー
より便利で快適な社会を目指す
新しいGDP(Green GDPなど),
社会・文化的価値を尊ぶ
世界との関係、エネルギー資源制約、他の環境問題も考慮
榎原(みずほ情報総研)
藤野(NIES)
2.3 脱温暖化社会に向けた3つの取り組み
• 一人一人の行動による温室効果ガス削減
• 技術の導入を促進したり、人々の行動を
促すような制度(しくみ)の設計・実施
• 温室効果ガス削減に役立つ技術の開発
交通システムを例に
行動 技術
制度
10・15モード走行試験での燃費
(km/リットル)
技術は良くなっているが、行動は?
技術による
燃費の改善
25
20
15
2010年目標値
2002年モデル
2000年モデル
1997年モデル
1993年モデル
1000
10
5
0
0
500
1000 1500 2000
車の重量 (kg)
大型車へ
のシフト
2500
3000
データ:国土交通省
税制変更により大型車の割合が急増した
乗用車の保有台数の推移(台)
7千万
普通乗用車
(3ナンバー
4WDなど)
6千万
3%
5千万
4千万
21%
小型乗用車
(5ナンバーなど)
3千万
2千万
軽乗用車
1千万
0
1970
データ:財団法人自動車
検査登録協力会HP
1975
1980
1985
1990
1995
消費税導入による税制変更
(普通乗用車の税金削減)
2000
300
250
小型貨物
(ハイブリッド)
2018
2014
1990年
+28%
2010
CO2 排出量(百万t-CO2)
2006
2020年時点で大量普及させるには、今後
数年間で生産能力を倍々に増やす必要
Hybrid車の
生産台数
(万台)
2002
日本の交通対策分析:
Hybrid大幅導入
1998
500
400
300
200
100
0
1990年
+7%
200
150
100
現行ケース
(BaU)
50
Hybrid大幅導入
(HV)
乗用車(従来型)
乗用車
(ハイブリッド)
その他旅客
乗用車(ハイブリッド)
その他貨物
乗用車(従来型)
小型貨物(従来型)
小型貨物(ハイブリッド)
2020
2010
2000
2020
1990
2010
2000
1990
0
しかし供給側対策だけ
では十分減らせない
森口・松橋(NIES)
300
250
200
150
2020
2010
徒歩・自転車・公共交通機関の利用
テレワーク・テレコミュニケーション
2020
2010
需要シナリオ
1,000
800
600
400
DMケース
200
BAUケース
0
2000
策
対
要
需
2020
2000
2010
0
乗用車
(ハイブリッド)
2000
50
1990年
乗用車(従来型) +7%
1990
100
1990
交通需要(10億台km)
+需要構造変化(DM) 1990年
‐9%
Hybrid大幅導入(HV)
1990
CO2 排出量(百万t-CO2)
日本の交通対策分析: +需要構造変化
供給および需要両面に
おける対策が必要。
それぞれができることをやる。
森口・松橋(NIES)
どうすれば交通起源の排出量を減らせるか?
CO2
活動量
エネルギー
CO2排出量= 人口 ×
×
×
人口
活動量
エネルギー
一人当たり活動量
ITを活用し交通
需要を代替する
旅行記を読む
エネルギー集約度
徒歩・自転車
公共交通機関
燃費の高い車を使う
炭素集約度
CO2負荷の少ない
水素・電気利用
バイオ液体燃料利用
エネルギー消費
を伴わない交通
で楽しむ
インフラ・制度を整備
高効率車を作る
CO2排出の少ない
燃料を提供する・使う
どのような対策で大幅削減できるのか?
CO2
活動量
エネルギー
CO2排出量= 人口 ×
×
×
人口
活動量
エネルギー
材
育
成
藤野(NIES)
人
CO2を出さないエネ
供給システムとは?
換
エネルギー構成改善
太陽光・風力などの新エネ導入
バイオマス燃料の生産・輸入
エネルギー転換技術効率改善
CO2フリーの水素・電気普及
原子力の想定、炭素隔離貯留の想定
転
炭素集約度
造
エネルギー依存の
少ない経済活動とは?
構
生産性効率改善
新
エネルギー集約度
行動の変更(徒歩・自転車、カープール)
脱物質化(モノの投入の少ない生産・消費)
制度設計(公共交通の利便性向上)
機器効率向上(燃料電池自動車導入)
都市構造・交通システムの転換
産業構造転換(二次から三次・一次産業)
革
新しい豊かな
社会とは?
政策ツール
術
豊かさの指標
モノ消費による豊かさから新たな豊かさへ:
Cool Biz、足るを知る、Mottainai
豊かさ・楽しさの尺度の変更:
→お金を節約してもより豊かで・楽しく
(→チーム−6%、図書館、公園で家族と)
技
一人当たり活動量
インフラ整備
石炭
バイオマス
太陽・風力
石油
原子力
天然ガス
水力
日比野(みずほ情報総研)
・増井・藤野
一次エネルギー供給量(石油換算百万トン)
0
100 200 300 400 500 600
2000年
天然ガス・原子力
炭素隔離中心シナリオ
水素・バイオマス
中心シナリオ
バイオマス・新エネ
中心シナリオ
供給サイドの
脱炭素
需要サイドの
エネルギー節約
あらゆる対策を
絶え間なく実行
することが必要
2050年約70%削減を達成する一次エネルギー供給量の例
3.そのために、私たちは今、何をすればいいのか?
CO2
活動量
エネルギー
CO2排出量= 人口 ×
×
×
人口
活動量
エネルギー
一人当たり活動量
物質的豊かさに
とらわれない生活
を楽しむ
行動 技術
制度
エネルギー集約度
エネルギーをできる
だけ使わずに製品・
サービスを提供する
炭素集約度
温室効果ガス排出の
少ないエネルギーを
利用する
それぞれの協力があってより多くが実現できる
社会を構成する
全員の協力が必要
脱温暖化社会は温室効果ガス削減だけを目指しているものではない。
日本の総合力を高め、安全で豊かな社会に向けた道筋を探すこと。
親が、先生が、周りの人たちが、子供たちと一緒に考えることが大事。
日本 脱温暖化2050研究プロジェクト
環境意識の向上
コミュニケーション促進に
よる社会・産業の効 率化
ITによる脱物質化
都市対策
2040
行動 技術
制度
絶え間のない
3つの取り組みに
よる社会システム
の転換=脱温暖化
2030
2008
2010
2012
2000
京都議定書
遵守対象年
交通対策
IT導入効果
2020
手順3.長期の
目標に基づいた
取り組みの決定
次世代交通
効率的な交通システム
先進的なロジスティクス
研究プロジェクトホームページ:http://2050.nies.go.jp
温暖化対策なしの排出量
(人口減少・経済成長などを考慮)
手順2.2050年脱温暖化
社会像の構築
2050
グリーンな建築
自立する都市構造
分散化サービス対応
削減目標値
日本における温室効果ガス(GHG)の排出量
1990
(約60人の研究者が協力して2050年までの対策を研究)
脱温暖化
2050
手順1.気候安定化に
向けた日本の削減
目標値設定
現在の社会インフラ
の大部分が転換
あなたはどのような2050年にしたいですか?
そのために何をしたいですか?
脱温暖化2050年社会とは、先進国の問題
(高福祉高負担など)を抱えながら、
一人ひとりが活き活きと生きる/働けるよう
みんなが協力して、脱温暖化を実現する社会
脱温暖化
2050
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