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超伝導磁気浮上を適用した半導体製造用 非接触スピン処理
超伝導磁気浮上を適用した半導体製造用 非接触スピン処理装置の要素開発研究 ― 非接触スピナの実用化検討 斎藤 ― 公世 新潟大学大学院自然科学研究科博士後期課程 電気情報工学専攻 1 目次 はじ め に 第1章 序論 1.1 背 景 1.1.1 ス ピ ン 処理 装 置の 構 造 1.1.2 現 状 の スピ ン 処理 装 置 の問 題 点 1.1.3 問 題 点解 決 の ため の 方策 1.2 本 論文 の 構 成 第2章 超伝 導 浮上 方 式 2.1 浮 上要 素 2.1.1 HTS バル ク と 浮上 マ グネ ッ ト 2.1.2 ス ラ ス ト浮 上 方式 2.1.3 ラ ジ ア ル浮 上 方式 2.2 駆 動要 素 2.2.1 第3章 磁 気 カ ップ リ ング スラ ス ト浮 上 方 式 3.1 浮 上要 素 3.1.1 タ ー ン テー ブ ルの 磁 気 回路 3.1.2 HTS バル ク の 構成 3.1.3 実 験 機 の構 成 3.2 ス ラス ト 浮 上方 式 の静 特 性 3.2.1 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 剛 性 3.2.2 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 剛性 3.3 駆 動要 素 3.3.1 ア キ シ ャル 磁 気カ ッ プ リン グ 3.3.2 必 要 ト ルク の 計算 3.3.3 磁 気 カ ップ リ ング の 磁 気回 路 3.3.4 磁 気 カ ップ リ ング の 特 性 3.4 ス ラス ト 浮 上方 式 の動 特 性 3.4.1 ス ラ ス ト浮 上 実験 機 3.4.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 3.4.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 2 3.4.3 タ ー ンテ ー ブ ルの フ レ改 善 3.5 HTS バル ク の改 善 3.5.1 HTS バル ク の 形状 3.5.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 剛 性 3.5.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 剛性 3.6 磁 気カ ッ プ リン グ の改 善 3.6.1 磁 気 回 路の 改 善 3.6.2 カ ッ プ リン グ の特 性 3.7 ス ラス ト 浮 上方 式 の改 善 3.7.1 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 3.7.2 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 3.8 パ ッシ ブ 制 御 3.8.1 パ ッ シ ブ制 御 の原 理 3.8.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 3.8.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 3. 9 ス ラ スト 浮 上 方式 の まと め 3.9.1 第4章 ス ピ ナ とし て の性 能 ラジ ア ル浮 上 方 式 4.1 浮 上要 素 4.1.1 浮 上 体 の磁 気 回路 4.1.2 HTS バル ク の 構成 4.1.3 実 験 機 の構 成 4.2 ラ ジア ル 浮 上方 式 の静 特 性 4.2.1 浮 上 体 の x 軸剛 性 4.2.2 浮上体の z 軸剛性 4.3 駆 動要 素 4.3.1 ア キ シ ャル 磁 気カ ッ プ リン グ 4.4 ラ ジア ル 浮 上方 式 の動 特 性 4.4.1 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 4.4.2 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 4.5 パ ッシ ブ 制 御 4.5.1 パ ッ シ ブ制 御 の原 理 4.5.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 4.5.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 3 4.6 そ の他 の フ レ改 善 4.6.1 タ ー ン テー ブ ルの 低 慣 性化 4.6.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 4.6.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 4.7 ラ ジア ル 浮 上方 式 のま と め 4.7.1 第5章 ス ピ ナ とし て の性 能 低慣 性 スラ ス ト 浮上 方 式 5.1 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の 検討 5.1.1 低 慣 性 スラ ス ト浮 上 方 式検 討 の 目的 5.2 浮 上要 素 5.2.1 タ ー ン テー ブ ルの 磁 気 回路 5.2.2 バ ル ク の構 成 5.3 駆 動要 素 5.3.1 電 磁 誘 導カ ッ プリ ン グ 5.4 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の 静特 性 5.4.1 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 剛 性 5.4.2 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 剛性 5.5 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の 動特 性 5.5.1 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 5.5.2 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 5.6 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の まと め 5.6.1 第6章 ス ピ ナ とし て の性 能 超伝 導 浮上 体 の 回転 時 フレ の 解 析と 対 策 6.1 浮 上体 に 作 用す る 力 6.1.1 超 伝 導 浮上 に 於け る マ イス ナ ー 効果 6.1.2 超 伝 導 浮上 に 於け る ピ ン止 め 効 果 6.1.3 駆 動 カ ップ リ ング に よ る調 心 効 果 6.1.4 遠心力 6.1.5 ジ ャ イ ロ効 果 6.2 浮 上回 転 体 に存 在 する セ ン タ 6.2.1 幾 何 セ ンタ 6.2.2 磁 気 セ ンタ 6.2.3 重心 6.2.4 回転軸 4 6.3 フ レ発 生 の メカ ニ ズム 6.3.1 低 速 回 転領 域 6.3.2 高 速 回 転領 域 6.3.3 中 速 回 転領 域 6.4 フ レ低 減 対 策 6.4.1 セ ン タ 統合 化 6.4.2 調整 1 6.4.3 調整 2 6.5 調 整 1 と そ の効 果 6.5.1 幾 何 セ ンタ 調 整 6.5.2 x 軸の フ レ波 形 6.5.3 調 整 1 後の 動 特性 6.6 調 整 2 と そ の効 果 6.6.1 重心調整 6.6.2 x 軸の フ レ波 形 6.6.3 z 軸 の フレ 波 形 6.6.4 回 転 軸の 移 動 6.6.5 調 整 2 後 の 動 特性 6.7 フ レ解 析 と 対策 の まと め 6.7.1 セ ン タ 統合 化 の効 果 6.7.2 セ ン タ 統合 化 の高 精 度 化 第7章 結論 7.1 浮 上方 式 の まと め 7.1.1 3 浮 上方 式 の 比較 7.1.2 低 慣 性 スラ ス ト浮 上 方 式の 開 発 のポ イ ン ト 7.2 今 後の 研 究 課題 7.2.1 課題 1 7.2.2 課題 2 7.2.3 課題 3 参考 文 献 謝辞 5 はじ め に 本 稿 は, 高 温超 伝 導 体を 利 用し た 磁 気浮 上 現象 を , 半導 体 の製 造 時 に使 用 する ス ピ ン 処 理 装 置( ス ピナ ) に 応用 し ,処 理 物 を搭 載 する タ ー ンテ ー ブル を チ ャン バ 内に 空 中 浮 上さ せ た まま , 高速 回 転 させ る 装置 を 設計 し , 実用 化 す るた め に, 重 要 要素 に つい て 検 討を 行 っ たも の であ る 。 超 伝 導 現象 は 1911 年 に発 見 され た 現 象で あ るが ,絶対 温 度 4K 近 傍 の 極低 温 まで 冷 却 し なけ れ ば 生じ な い現 象 で ある た め, 応 用 商品 の 実用 化 に は大 き な壁 が あ った 。 超 伝 導 の研 究 が大 き く 動き 出 すの は 1986 年 に従 来 の 超伝 導 の常 識 を 破る ,高 い 温度 で も 超伝 導 現 象を 示 す高 温 超 伝導 体 (HTS) が 発 見 され て か らで あ る。 こ の HTS は そ の後 , 数年 の 間 に素 材 研究 が 進み , 臨 界温 度 ( T c )が 100K 超 える も のが 発見 さ れ,液 体窒 素 の 温度 77K の 冷 却で も 使 用で き る こと か ら,今 後,様々 な 応 用製 品 が開 発 さ れて い くも の と 予想 さ れる 。 しか し , 現時 点 で は, 大 量生 産 さ れる ま でに 至 っ てい な い ので , 未だ 素 材 のコ ス トが 高 く 応用 範 囲は 限 ら れて く るが , B to B の 大規 模 な 装置 に は 十分 応 用が 可 能 であ る。(5) 一 方,半 導 体製 造 時に 使 用 する ス ピナ は ,半 導 体の 高 密 度化 と 高信 頼 性 化の 要 求に よ り , 装置 か ら 発生 す るパ ー テ ィク ル (微 細 な ゴミ ) の問 題 が クロ ー ズア ッ プ され て いる 。 そこで,第二種超伝導体のピン止め効果を利用し,最大の特徴である磁気浮上により, 独立 空 間 内に お いて 非 接 触状 態 で様 々 な 処理 を 行う こ と で, 半 導体 , 半 導体 製 造用 マ ス ク等 の 製 造工 程 を完 全 無 塵化 し た, 半 導体 製 造 用ス ピ ナ の要 素 開発 を 開 始す る こと と し た。 HTS を利 用 し たス ピ ナの 開 発 要素 と して は ,処理 物 を 搭載 す るタ ー ン テー ブ ルを 浮 上 さ せる た め の浮 上 要素 と , 浮上 し たタ ー ンテ ー ブ ルを 浮 上 状態 で 非接 触 回 転さ せ るた め の 駆動 要 素 の 2 つ が挙 げ ら れる 。浮 上 要 素は ,HTS の 形状・ 配置 及 び,タ ーン テ ーブ ル に 埋め 込 ま れた 浮 上マ グ ネ ット の 形状 ・ 配置 及 び ,両 者 の 対向 状 態に つ い て検 討 を行 っ て いる 。 駆 動要 素 は, タ ー ンテ ー ブル を 浮上 状 態 で回 転 さ せる こ とか ら , 磁気 カ ップ リ ン グ, 電 磁 誘導 カ ップ リ ン グの 要 素に つ い て検 討 を行 っ て いる 。 本 研 究 では 浮 上要 素 , 駆動 要 素の 組 合 せに よ り 3 種 類 の実 験 機を 製 作 した の で, 性 能 確 認を 行 っ た結 果 につ い て 述べ る 。 実 験 機 では タ ーン テ ー ブル の フレ が 目 標の 性 能に 達 し なか っ たた め , 浮上 回 転体 の フ レ が発 生 す るメ カ ニズ ム を 解明 し 、根 本 的な フ レ 低減 の 対 策を 考 案し て い る。 最 終的 に は その 対 策 案に つ いて 簡 易 実験 を 行い , 有効 性 の 検証 を 行 った の で, そ の 結果 に つい て 述 べる 。 6 第1章 序論 1.1 背 景 1.1.1 ス ピ ン 処理 装 置の 構 造 半 導 体製 造 に 於け る スピ ン 処 理装 置 は主 に , フォ ト マス ク , シリ コ ンウ エ ハ ー 上の コ ー ティ ン グ, 洗 浄 工程 に 用い ら れ てい る 。 コー テ ィ ング 工 程は , 回 転タ ー ンテ ー ブ ルの 上 にフ ォ ト マス ク ,シ リ コ ンウ エ ハー 等 の 基板 を 搭載 し , 基板 上 にフ ォ ト レジ ス ト( 単 に レジ ス トと も 言 う) 等 の処 理 液 を滴 下 した 後 , ター ン テー ブ ル を高 速 回転 さ せ るこ と で, 遠 心 力に よ り, 数 千 オン グ スト ロ ー ム台 の 非常 に 薄 いレ ジ スト 膜 を 基板 上 に均 一 か つ平 滑 に塗 布 す るも の であ る 。 概念 図 を 図 1-1-1 に示 す。 処理 液 ,洗 浄 液 基板 ター ン テ ーブ ル 駆動 機 構 モー タ 図 1-1-1 ス ピ ン 処理 装 置概 念 図 レジ ス ト は光 に よっ て 反 応す る 化学 物 質 を溶 媒 に溶 か し たも の で, 基 板 上に 半 導体 の 回 路パ タ ーン を 照 射, 感 光さ せ た 後で , 回路 網 を 生成 し てい る 。 スピ ン コ ーテ ィ ング 装 置 の例 を 図 1-1-2 に 示す 。 洗浄 工 程 は基 板 上に 残 さ れた 不 純物 を 除 去す る ため の 工 程で ,基 板 上に 薬 液( 硫 酸, オ ゾ ン水 , 過酸 化 水 素水 等 )や 純 水 を滴 下 し, タ ー ンテ ー ブル を 回 転さ せ るこ と で ,不 純 物を 除 去 し, 薬 液, 純 水 を吹 飛 ばし , 洗 浄す る もの で あ る。 更 に高 速 回 転さ せ るこ と で ,基 板 の乾 燥 ま でを 行 うも の も ある 。 スピ ン 洗 浄装 置 の例 を 図 1-1-3 に 示す 7 (6)( 7) 図 1-1-2 1.1.2 ス ピ ン コー テ ィン グ 装 置 図 1-1-3 ス ピ ン 洗浄 装 置 現 状 の スピ ン 処理 装 置 の問 題 点 半 導 体デ バ イ スは , 実装 す る 商品 の 高性 能 化 ,小 型 化の た め に, 年 々, 高 密 度 化が 要 求 され , パタ ー ン の微 細 化が ど ん どん 進 むと 同 時 に, 高 信頼 性 も 要求 さ れて い る 。 現状 の ス ピナ で はタ ー ン テー ブ ルを 回 転 させ る 駆動 部 の ベア リ ング や 摺 動部 か らは 大 量 のパ ー ティ ク ル (微 細 なゴ ミ ) が発 生 して い る 。そ の ため 基 板 上に 成 形さ れ る 回路 パ ター ン の 幅が 大 きい う ち は問 題 にな ら な いが , 幅が 数 十 nm レ ベル に な ると , パー テ ィ クル が パタ ー ン 上に 付 着す る こ とで , その 基 板 の信 頼 性が 低 下 した り ,あ る い は導 通 不良 を 起 こし , 不良 に な って し まっ た り する 。 スピ ン 処 理工 程 に於 い て ,パ ー ティ ク ル が付 着 する こ と で基 板 が不 良 と なる 割 合は ,約 60% 程 度あ り ,その パ ーテ ィ クル の 発 生源 の 割 合は ,約 65% が 装置 自 体と 言 わ れて い る。 平均 的 に は,半 導体 製 造時 の 良 品率 は 96~97%程 度 と なり ,全世 界 の半 導 体 生 産額 $3000 億に 対 して 大 雑把 に $90 億の 不 良 を発 生 さ せて い て, そ の 40% は 装置 自 身 のパ ー ティ ク ル によ る こと に な る。 スピ ナ の パー テ ィク ル の 発生 源 は, 回 転 部分 や 摺動 部 で ある こ とか ら , ベア リ ング 部 を 負圧 に する こ と や, ラ ビリ ン ス を設 け てパ ー テ ィク ル が移 動 し 難く す るこ と な どが 講 じら れ て いる が ,根 本 的 な解 決 には 至 っ てい な い。 1.1.3 問 題 点 解決 の ため の 方 策 そ こ で, 本 稿 では 第 二種 超 伝 導体 の ピン 止 め 効果 を 利用 し た ,非 接 触型 の 磁 気 浮上 回 転 装置 を スピ ナ と して 活 用す る こ とを 提 案し て い る。HTS バ ル ク と浮 上 マグ ネ ッ トに よ る磁 気 浮 上で , 基板 を 搭 載し た ター ン テ ーブ ル をチ ャ ン バ内 に 8 空中 浮 上 させ , 機械 的 な 摺動 部 分と 完 全 分離 す るこ と で ,駆 動 部分 か ら パー テ ィク ル が 発生 し ても , 基 板に 到 達し な い よう な 構造 と す る。 駆 動装 置 の 駆動 力 は磁 気 カ ップ リ ング 等 で ター ン テー ブ ル に伝 達 し, タ ー ンテ ー ブル を 非 接触 で 高速 回 転 させ る 。 HTS バ ルク を 利用 す る こと で,比 較 的 小型 の GM 冷凍 機 でバ ル ク の冷 却 が可 能 であ り , バル ク の周 囲 を 真空 に する た め の真 空 ポン プ も 小型 の もの で 済 むと 予 想さ れ る こと か ら, ス ピ ナの 製 造コ ス ト が多 少 上が っ て も, 基 板不 良 を 激減 さ せる こ と がで き れば , 商 品価 値 は十 分 あ るも の と考 え ら れる 。 また ,スピ ナ の 装置 サ イズ と し ても ,小 型 の GM 冷 凍 機や 真 空 ポン プ の分 だ け 大き く は なる が ,従 来 型 のス ピ ナに 比 較 して 極 端に 大 き くな る 訳で は な く, 高 価な ク リ ーン ル ーム の 容 積を 効 率よ く 使 用す る こと に 対 して も 障害 と は なら な い。 半導 体 製 造用 の スピ ナ と して の 評価 は , 実負 荷 によ る テ スト が 重要 で あ るが , 本稿 で は スピ ナ のハ ー ド 特性 に より 評 価 を行 っ た。 評価 の 対 象と し たハ ー ド 特性 は , 1. 定常 速 度 (回 転 数) 209rad./s 2. 立上 り 時 加速 度 105rad/s 2 以 上( 2000rpm/2s 以上 ) 3. ター ン テ ーブ ル の浮 上 高 さ 以 上 (2000rpm 以 上 ) 5mm 以上 (タ ー ン テー ブ ルの 浮 上 空間 に チャ ン バ の壁( 2mm)が 構 成 で きれ ば 可と す る) 0.2mm 以 下(x 軸 , z 軸 ) 4. ター ン テ ーブ ル のフ レ の, 4 項目 と し ,こ れ らを 満 たす よ う な要 素 開 発検 討 を 行っ た 。 1. 2 本 論 文の 構 成 本 論 文は 6 章か ら 構 成さ れ て お り , 各 章 の 概 要 と 全 体 の 流 れ , 構 成 を 以 下 に 示 す 。 第1 章 序論 本論 文 の 背景 , 構成 に つ いて 述 べる 第2 章 超伝 導 浮 上方 式 超伝 導 浮 上さ せ るた め に 用い る HTS バ ルク , 浮上 マ グ ネッ ト の基 本 的 な考 え方 を 述 べる と とも に ,HTS バ ルク と 浮 上マ グ ネッ ト の 対向 の させ 方 に よる , スラスト浮上方式とラジアル浮上方式の 2 種類の方式についての概略構造 につ い て 述べ る 。 9 第3 章 スラ ス ト 浮上 方 式 スラスト浮上方式の実験機で用いた浮上要素(ターンテーブルの磁気回路, 及 び HTS バル ク の構 成),駆動 要 素( ア キシ ャ ル磁 気 カ ップ リ ング )の設 計 事例 に つ いて 述 べる 。 次に , 本 方式 の 実験 で 得 られ た ,静 特 性 ,動 特 性に つ い て述 べ る。 更に そ の 実験 機 の問 題 に 対す る 改善 策 と その 効 果に つ い て述 べ る。 スラ ス ト 浮上 方 式に つ い ての ま とめ を 行 う。 第4 章 ラジ ア ル 浮上 方 式 ラジアル浮上方式の実験機で用いた浮上要素(ターンテーブルの磁気回路, 及 び HTS バル ク の構 成),駆動 要 素( ア キシ ャ ル磁 気 カ ップ リ ング )の設 計 事例 に つ いて 述 べる 。 次に , 本 方式 の 実験 で 得 られ た ,静 特 性 ,動 特 性に つ い て述 べ る。 ラジ ア ル 浮上 方 式に つ い ての ま とめ を 行 う 第5 章 低慣 性 ス ラス ト 浮上 方 式 低慣 性 ス ラス ト 浮上 方 式 の実 験 機で 用 い た浮 上 要素( タ ーン テ ーブ ル の 磁気 回路 ,及 び HTS バ ルク の 構 成),駆動 要 素( 電 磁誘 導 カ ップ リ ング )の 設 計 事例 に つ いて 述 べる 。 次に , 本 方式 の 実験 で 得 られ た ,静 特 性 ,動 特 性に つ い て述 べ る。 低慣 性 ス ラス ト 浮上 方 式 につ い ての ま と めを 行 う。 第6 章 超伝 導 浮 上体 回 転時 フ レ の解 析 と対 策 実験機に於いて発生したフレに対して対策を行っても本質的な改善にはな らな い の で,浮 上回 転 体 のフ レ が発 生 す るメ カ ニズ ム を 解析 し 、根 本 的 な対 策を 試 み てい る 。浮 上 回 転体 に は超 伝 導 によ る 浮上 力 ,調心 力 が作 用 し てい る。 駆 動 カッ プ リン グ で は x 軸 ,z 軸 方 向に 調 心力 が 作 用し , 浮上 体 の フレ の原 因 と なる 。更 に ,浮上 回 転体 に は 複数 の セ ンタ が 存 在し ,回 転軸 が 移 動 する こ と でフ レ が発 生 し てい る 。そ の 力 とセ ン タの 関 わ るメ カ ニズ ム を 解析 する と と もに 、 根本 的 な 対策 と その 検 証 結果 に つい て 述 べる 。 第7 章 まと め 本研 究 で 得ら れ た成 果 を 総括 し ,半 導 体 製造 用 スピ ン 処 理装 置 とし て の 可能 性を 論 じ ,今 後 の実 用 化 に向 け た課 題 に つい て 述べ る 。 10 第2章 超伝 導 浮上 方 式 2.1 浮 上要 素 2.1.1 HTS バル ク と 浮上 マ グネ ッ ト 半 導 体製 造 用 スピ ン 処理 装 置 では , 回転 動 作 時の 安 定性 が 求 めら れ る。 超 伝 導 浮上 で は ,HTS バル ク が 反磁 性 を示 す こ とで 磁 束を 侵 入 させ な いマ イ ス ナー 効 果に よ り 浮上 力 を得 て い るが ,さら に HTS バ ル ク内 に 不 純物 や 結晶 ひ ず み等 の 常磁 性 の 欠陥 を 作り , 磁 束が 欠 陥に よ り 拘束 を 受け る こ とで 浮 上力 と 安 定性 が 発揮 さ れ るピ ン 止め 効 果 を利 用 する こ と が得 策 であ る と 考え ら れる 。 し たが っ て,HTS バ ル ク とし て は Nb- Ti の 合 金で あ る 第二 種 超 伝導 体 を用 い て いる 。 HTS バル ク を利 用 し た磁 気 浮上 で は ,タ ー ンテ ー ブ ル上 に 基板 を 搭 載し て 回転 させ る こ とか ら ,あ る 程 度荷 重 に耐 え ら れる こ とが 必 要 であ る 。そ こ で 浮上 用 マグ ネ ッ ト自 身 の軽 量 化 を目 指 し, か つ 十分 な 磁束 密 度 を持 つ こと が 重 要で あ る。 マ グ ネッ ト の素 材 と して は 磁束 密 度 を最 も 大き く 取 れる , ネオ ジ ム 系の マ グネ ッ ト を使 用 して い る 。 ま た ,タ ー ン テー ブ ルは 磁 気 カッ プ リン グ に より , 回転 駆 動 され る こと か ら , 回転 方 向 に対 し て磁 束 の 変化 し ない マ グ ネッ ト (極 性 ) の配 置 が必 要 で ある 。 2.1.2 ス ラ ス ト浮 上 方式 HTS バル ク とマ グ ネ ット を 対向 さ せて 磁 気 浮上 さ せる 時 に ,そ の 対 向の 状 態と し て 2 種 類の 方 法が 考 え られ る 。一 つ 目 は, 軸 方向 に 対 抗さ せ るス ラ ス ト浮 上 方式 で あ る。 概 念 図を 図 2-1-1 に 示 す。 チャンバ ターンテーブル 図 2-1-1 ス ラ スト 浮 上 方式 概 念図 こ の 方式 で は ,基 板 に対 す る 処理 を 行う チ ャ ンバ の 形状 が シ ンプ ル で, ス ピ ン 11 処理 装 置 とし て の実 用 化 が最 も やり 易 い 方式 で ある 。 し か し, タ ー ンテ ー ブル の 直 径が 大 きく な る こと と ,外 周 近 くに 質 量の あ る マ グネ ッ ト を配 置 する こ と から , 慣性 モ ー メン ト が大 き く なり , 駆動 時 に 大き な トル ク が 必要 と なる こ と が予 想 され る 。 2.1.3 ラ ジ ア ル浮 上 方式 HTS バル ク とマ グ ネ ット を 対向 さ せる 方 法 の 2 つ 目は ,軸 垂直 方 向 に対 抗 させ る, ラ ジ アル 浮 上方 式 で ある 。 こ の 概念 図 を ,図 2-1-2 に 示 す 。 ターンテーブル 図 2-1-2 ラ ジア ル 浮上 方 式 概念 図 こ の 方式 で は ,最 も 重い 浮 上 マグ ネ ット の 直 径を 小 さく で き るの で ,タ ー ン テ ーブ ル の 慣性 モ ーメ ン ト が小 さ く, 駆 動 時の ト ルク が 小 さく で きる 反 面 ,基 板 に対 す る 処理 を 行う チ ャ ンバ の 形状 が 多 少複 雑 にな っ て しま う 欠点 が 予 想さ れ る。 2.2 駆 動要 素 2.2.1 磁 気 カ ップ リ ング 磁 気 カッ プ リ ング は 磁気 浮 上 して い るタ ー ン テー ブ ルを 浮 上 状態 で 回転 さ せ る こと か ら ,タ ー ンテ ー ブ ルの 駆 動に 必 要 なト ル クを 発 生 する こ とが で き るこ と と, タ ー ンテ ー ブル の 浮 上高 さ を減 少 さ せな い よう に 軽 量化 を 図る こ と が重 要 であ る 。 浮 上 用マ グ ネ ット と 同様 , ネ オジ ム 系マ グ ネ ット を 使用 す る 。 12 第3章 スラ ス ト浮 上 方 式 3.1 浮 上要 素 3.1.1 タ ーン テ ー ブル の 磁気 回 路 タ ー ンテ ー ブ ルは 浮 上空 間 に パー テ ィク ル の 侵入 を 防止 す る チャ ン バ壁 を 設 け るこ と か ら, チ ャン バ 壁 を超 え ても 尚 十 分な 浮 上高 さ が 必要 で ある と 同 時に , ター ン テ ーブ ル の立 上 時 間を 早 くし な け れば な らな い こ とか ら ,軽 量 化 が必 要 であ る 。 基 本 とな る 考 え方 は ,以 下 の 2 つ で ある 。 ① 磁束 密 度 の最 も 大き く 取 れる ネ オジ ム 系 マグ ネ ット を 選 択す る ② 磁性 体 に よる 凸 極を 設 け ,同 極 のマ グ ネ ット で 挟む 構 成 とす る (で き る だけ 磁 束密 度 を 上げ , 磁束 の 傾 きを 大 きく す る ため ) 浮 上 用マ グ ネ ット の 配置 , 凸 極の 磁 性体 を マ グネ ッ トで 挟 む 磁気 回 路モ デ ル を 図 3-1-1 に 示す 。 図 3-1-1 タ ー ンテ ー ブル 凸 極部 の 磁 気回 路 モデ ル 本 研 究で は , 上記 の 考え 方 に 基づ き ,以 下 に 示す よ う な 4 つ のモ デ ルに つ い て 設計 を 行 った 。 ( 1)(2) 4 つ のモ デ ルの 磁 気回 路 断 面図 を 図 3-1-2 に 示す 。 13 一 つ の凸 極 を二 つ の マグ ネ ット で 挟 み, 更 に 両 側 に反 対 極性 の 凸 極を 設 けた 構 成 一 つ の凸 極 を二 つ の マグ ネ ット で 挟 んだ 構 成 一 つ の凸 極 を二 つ の マグ ネ ット で 挟 み, 更 に 両 側 に反 対 極性 の 凸 極を 設 けた # 1 の 構 成で , 磁 性 体の 一 部を マ グ ネッ ト で置 き 換 えた 構 成 # 3 の 構 成 で, 凸 極 の数 を 4 個 に し た構 成 図 3-1-2 磁気 回 路 断面 図 図 3-1-3 に 磁気 解 析 を行 な った モ デ ル図 の例 ( #1) を示 す 。 (ga p) 図 3-1-3 モ デル 図 (# 1) 図 3-1-3 の モデ ル で ,磁気 解 析ソ フ ト に よ る FEM 解 析を 行 なっ た 結 果の 磁 束密 度 分 布図 を 図 3-1-4 に 示す 。 14 図 3-1-4 凸 極部 の FEM 解 析( #1) FEM 解 析 に よ る 磁 束 密 度 の グ ラ フ で , モ デ ル の 比 較 を 行 っ た 結 果 を 図 ~に 示 す gap 10mm Magnetic field [T] □ #1 ○ #2 x 図 3-1-5 [mm] x 軸方 向 磁束 密 度 15 3-1-5 Magnetic field [T] gap 10mm □ #1 ○ #2 y 図 3-1-6 [mm] y 軸 方向 磁 束 密度 超 伝 導浮 上 に 於い て は, 侵 入 磁界 が 大き い 程 ,補 足 磁束 が 多 くな り ,浮 上 時 の ター ン テ ーブ ル の剛 性 が 強く な る。# 1 と #2 の比 較 で は# 1 の方 が 剛性 が 強い こと が 予 想さ れ る 。 同 様 に #1 と #3,#4 を 比較 し て みる と ,図 3-1-7, 図 3-1-8 の よう に なり ,# 3 の 磁 気回 路 構 成が タ ーン テ ー ブル と して 最 も 剛性 が 強く な る こと が 予想 さ れ る。 gap 10mm ◇ #1 × #3 Magnetic field [T] ▲ #4 x [mm] x 方向 磁 束 密度 図 3-1-7 16 gap 10mm ◇ #1 × #3 Magnetic field [T] ▲ #4 y 図 3-1-8 [mm] y 軸 方向 磁 束 密 度 磁 気 解析 の 結 果で は,マ グネ ッ ト の 総量 を 最 も大 き くし た #4 よ りも # 3 の タ ー ンテ ー ブ ルの 方 が, 磁 束 密度 が 大き く な り, 剛 性が 強 い と予 測 され る 結 果と な った 。 3.1.2 HTS バ ル クの 構 成 HTS バ ル クは 大 量生 産 さ れて い ない の で, コ ス ト的 に は非 常 に 高価 で ある 。 そ こ で,HTS バ ル ク の配 置 構成 と して , 経 済性 を 考慮 し た 構成 と した 。 そ の 構 成は , 比較 的 生 産数 量 の多 く , 安価 で ある 円 盤 型バ ル クを 用 い ,離 散 的 に配 置 し たも の で 図 3-1-9 にそ の 構成 を 示 す。 図 3-1-9 離散 配 置バ ル ク 17 3.1.3 実 験機 の 構 成 HTS バ ル クを 臨 界温 度 ( T c ) ま で冷 却 する 構 造 とし て ,HTS バル ク を 銅製 の 冷却 プ レー ト 上 に載 せ ,そ れ を ステ ン レス 製 の チャ ン バ内 に 配 置し , 外気 と 断熱 で き るレ ベ ルに チ ャ ンバ 内 を真 空 に する ク ライ オ ス タッ ト を構 成 し ,GM 冷凍 機 で 冷却 プ レー ト を 冷却 し てい る 。HTS バル ク の 温度 は 約 30~ 40K に冷 却 し てい る 。 ス ラ スト 浮 上方 式 に 於い て ,HTS バル ク を離 散 配 置し た 場合 の 実 験機 の 構成 を 図 3-1-10 に 示す 。 実験 手 順と し て は, ク ライ オ スタ ッ ト 上面 に タ ーン テ ーブ ル と の隙 間 (浮 上 高 さ) を 確 保す る ため の ス ペー サ を置 き , その 上 にタ ー ン テー ブ ルを 載 せ る。 次 に ,ク ラ イ オ ス タ ッ ト内 を 真 空 に し て から GM 冷 凍 機を 動 作 さ せ ,HTS バ ルク の 冷 却を 行 う。HTS バ ルク が 所 定の 温 度 に達 し た 時に ,ス ペ ーサ を 取 り除 くと , タ ーン テ ーブ ル は クラ イ オス タ ッ ト上 に 浮上 し て いる 。 Cold plate 図 3-1-10 スラ ス ト浮 上 方式 の構 成 18 3.2 ス ラス ト 浮 上方 式 の静 特 性 3.2.1 タ ー ンテ ー ブ ルの x 軸 剛 性 HTS バル ク を離 散 配 置し た 場合 で ,タ ー ン テー ブ ル# 1, # 2, #3, #4 の そ れぞ れ の 浮上 状 態で の 剛 性に つ いて 測 定 を行 っ た 。図 3-1-10 に 示す タ ー ン テー ブ ル の水 平 方向 (x 軸 )の 剛 性を 測 定 した 。そ の 結 果を 図 3-1-11 に 示す 。 図 3-1-11 ス ラス ト 浮上 方 式 の x 軸剛 性 タ ー ンテ ー ブ ルに 対 する 横 か らの 荷 重に 対 し て, # 3 の タ ー ンテ ー ブル が 最 も 安定 性 が ある こ とが 判 明 した 。 3.2.2 タ ーン テ ー ブル の z 軸剛 性 同 様に タ ーン テ ー ブル に 対す る 垂 直方 向 (z 軸 ) の剛 性 につ い て 測定 を 行 っ た 。 そ の結 果 を 図 3-1-12 に 示す 。 図 3-1-12 ス ラス ト 浮上 方式 の z 軸剛 性 19 x 軸 の 剛性 ,即 ちタ ー ン テー ブ ルの 振れ 回 り の安 定 性に つ い ては ,#3 の ター ン テ ー ブル が 水 平 荷 重 に対 し て 最 も 強 かっ た の に 対 して , z 軸 の 剛 性 ,即 ち タ ー ンテ ー ブ ルの 浮 上力 は , マグ ネ ット の 総 量が 最 も多 い , #4 の ター ン テ ーブ ル が強 い 結 果と な った 。 タ ー ンテ ー ブ ルの 磁 気回 路 と して は ,# 3 と , #4 の ター ン テ ーブ ル で x 軸 , z 軸の 剛 性 が相 反 する 結 果 とな っ たが , 半 導体 製 造用 ス ピ ナに 要 求さ れ る 性能 と して , フ レ回 り の安 定 性 が重 要 であ る こ とと , 起動 時 の 加速 度 を重 視 す るこ と から ,よ り軽 量 であ る #3 の タ ーン テ ーブ ル ( #3:2.4kg #4:3.1kg)を 実 験用 の タ ーン テ ーブ ル と して 使 用す る こ とと す る。 3.3 駆 動要 素 3.3.1 ア キ シ ャル 磁 気カ ッ プ リン グ ア キ シャ ル 磁 気カ ッ プリ ン グ は, 円 周方 向 に 極が 交 互に 現 れ るマ グ ネッ ト を 配 置し た も のを ,軸 方 向に 隔 離 状態 で 対向 さ せ,駆 動側 を 回 転さ せ るこ と に より , 被駆 動 側 (浮 上 側) を 追 従回 転 させ る も ので あ る。 駆 動 側が 定 速 度で 回 転し て い る時 に は, 被 駆 動側 は 順調 に 追 従で き るが , 急 激 に回 転 速 度が 変 化し た 場 合に は ,被 駆 動 側は 追 従で き な くな り ,脱 調 現 象が 発 生し , カ ップ リ ング の 安 定性 が 失わ れ て しま う 。タ ー ン テー ブ ルの 急 停 止や マ グネ ッ ト の反 発 力に よ り ター ン テー ブ ル の飛 散 が発 生 す る恐 れ があ る 。 半導 体 製造 用 ス ピナ で は,タ ーン テ ーブ ル の 上に 高 価 なフ ォ ト マス ク を搭 載 す るの で, 安定 性 は 非常 に 重要 で あ る。 そ こ で, タ ー ンテ ー ブル の 慣 性モ ー メン ト か ら, 磁 気カ ッ プ リン グ に必 要 な ト ルク を 計 算し , 脱調 現 象 が発 生 しな い 磁 気カ ッ プリ ン グ を製 作 する 。 3.3.2 必 要 ト ルク の 計算 先 ず ,タ ー ン テー ブ ルの 慣 性 モー メ ント を 算 出す る 。 円 盤 の z 軸 周 りの 慣 性 モー メ ント は 次式 で 与 えら れ る。 ①I = MR 2 / 2 M 円盤 の 質 量 R 円 盤 の 半径 中 空 円盤 の 慣 性モ ー メン ト は 次式 で 与え ら れ る。 ②I = M ( R 2 + r 2 )/ 2 r 中 空部 の 半 径 タ ー ンテ ー ブ ルは ア ルミ 製 の 円盤 型 フレ ー ム に磁 気 回路 と な るマ グ ネッ ト と 磁 性体 を 円 周方 向 に対 し て 対称 に 配置 し て いる の で, 慣 性 モー メ ント は 上 式の ① ②の 組 み 合わ せ で算 出 す るこ と がで き る 。 20 製 作 した タ ー ンテ ー ブル の 中 で最 も x 軸 方 向 の安 定 性に 優 れ てい る #3 に つい て計 算 す ると ,I=0.002kgm2 と な る。 こ の ター ン テ ーブ ル を 105rad./s 2( 2000rpm/2s)の回 転 加速 度 で 回転 さ せる た め に必 要 な トル ク は, T = α I 角 加 速 度(rad/s 2 ) α 参 考 とし て , 回転 数 で算 出 す る場 合 を付 記 す る。 α = 2 π( n 2 - n 1 )/ 60t n1 初 めの 回 転 数(rpm) n2 t 終わ り の回 転 数 (rpm) 加 減 速 時間 ( s) で あ るか ら , T= 2.1Nm, 余 裕 を見 て , T= 2.5Nm 3.3.3 の ト ル ク を確 保 す る。 磁 気 カ ップ リ ング の 磁 気回 路 磁 気 カッ プ リ ング の 磁気 回 路 は, タ ーン テ ー ブル の 磁気 回 路 と同 様 ,タ ー ン テ ーブ ル を 規定 時 間内 に 立 ち上 げ るの に 十 分な ト ルク が 出 せる の と同 時 に ,軽 量 化が 必 要 であ る 。特 に 浮 上す る 被駆 動 側 (浮 上 側) の 軽 量化 は 必須 で あ る。 従 っ て, 基 本 とな る 考え 方 は ,以 下 の 2 つ で ある 。 ① 磁束 密 度 の最 も 大き く 取 れる ネ オジ ム 系 マグ ネ ット を 選 択す る ② 磁性 体 に よる 凸 極を 設 け ,同 極 のマ グ ネ ット で 挟む 構 成 とす る 磁 気 カッ プ リ ング の マグ ネ ッ トの 配 置, 凸 極 の磁 性 体を 挟 む 磁気 回 路構 成 を 図 3-3-1 に 示す 。 磁化 方 向 h1 h2 マグ ネ ッ ト 磁性 体 マグ ネ ッ ト r2 磁性 体 θ2 θ1 θ2 rr1 θ1/2 図 3-3-1 磁 気 カ ップ リ ング 凸 極部 の 磁 気回 路 21 最 適 な磁 気 カ ップ リ ング を 探 す目 的 で, 異 な る寸 法 を持 つ 3 種類 の パタ ー ン の モデ ル で 比較 解 析を 行 っ た。 図 3-3-2~ 図 3-3-4 で そ の構 成 を 示す 。 20mm 20deg マグネット 10deg 磁性体 浮上側 10mm 30mm 駆動側 図 3-3-2 Type1 20mm 15deg 磁性体 15deg マグネット 浮上側 10mm 30mm 駆動側 図 3-3-3 Type2 22 12mm 20deg マグネット 10deg 磁性体 浮上側 10mm 駆動側 30mm 図 3-3-4 Type3 3 種 類の パ タ ーン で ,発 生 す るト ル クと カ ッ プリ ン グ間 に 作 用す る 電磁 力 ( 吸 引力 ) に つい て 解析 を 行 った 。 図 3-3-5~ 図 3-3-7 に解 析 結果 を 示 す。 グ ラ フの 横 軸 は, 磁 気カ ッ プ リン グ の 1 極 分 (マ グ ネッ ト + 磁性 体 )の 位 相 を 1 と 表 現し て い る。 Torque[ Nm ] Electro -magnetic force[ N ] gap 10mm トルク 吸引力 Normalized angle 図 3-3-5 Type1 の 特 性 23 Torque[ Nm ] Electro -magnetic force[ N ] gap 10mm トルク 吸引力 Normalized angle 図 3-3-6 Type2 の 特性 Torque[ Nm ] Electro -magnetic force[ N ] gap 10mm トルク 吸引力 Normalized angle 図 3-3-7 Type3 の 特性 解 析 結果 か ら はマ グ ネッ ト の 総量 が 最も 多い Type1 が大 き い トル ク を引 き 出 せ るこ と が 分か る が, 最大 250N 近く の 吸 引力 が ター ン テ ーブ ル にか か る こと に なり , 折 角の 超 伝導 磁 気 浮上 を 相殺 し て しま う 可能 性 が ある 。 24 必要 ト ル クが 2.5Nm で あ るこ と を 考慮 す れば , Type3 で も 十 分で あ るこ と が分 かる 。 そ こで , 磁気 カ ッ プリ ン グの 製 作 は, Type3 の 仕様 で 行う こ と とす る 。 3.3.4 磁 気 カ ップ リ ング の 特 性 Type3 の仕 様 で製 作 し た磁 気 カッ プ リン グ の 外観 を 図 3-3-8 に 示す 。 図 3-3-8 磁 気カ ッ プリ ン グ 被 駆 動側 ( 左) と 駆 動側 ( 右) Type3 の 仕様 で 製 作し た 磁気 カ ッ プ リン グ の 吸引 力 特 性, ト ルク 特 性 を測 定 し た結 果 を ,図 3-3-9, 図 3-3-10 に 示 す。 グ ラ フ 中 の gap は 磁気 カ ップ リ ン グの 被駆 動 側 と駆 動 側間 の 距 離を 指 して い る 。 最大 ト ル クは 4Nm 弱 ,最 大 吸引 力 は 約 140N とな り ,磁 気解 析 し た結 果 と概 略 一致 し て いる こ とが 分 か る。 図 3-3-9 Type3 吸 引 力特 性 25 図 3-3-10 Type3 ト ル ク特 性 3.4 ス ラス ト 浮 上方 式 の動 特 性 3.4.1 ス ラ ス ト浮 上 実験 機 以 上 の浮 上 要 素, 駆 動要 素 を 組合 せ て製 作 し た実 験 機を , ス ラス ト 浮 上 1 号 機 と称 し , その 外 観を 図 3-4-1 に 示 す。 図 3-4-1 ス ラ ス ト浮 上 1 号 機 26 3.4.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ タ ー ンテ ー ブ ルの 中 で最 も 安 定性 の 期待 で き る# 3 のタ ー ン テー ブ ルを ス ラ ス ト浮 上 1 号 機で , 浮上 回 転 させ た 時の x 軸方 向 のフ レ の 大き さ を, タ ー ンテ ー ブ ルが 209rad./s( 2000rpm) ま で 立 上 る 時 間 ( 立 上 り 時 の 加 速度 ) を 変 え て 測 定し た 結 果を 図 3-4-2 に 示 す。 図 3-4-2 x 軸 フレ 図 3-4-3 目 標 値は 105rad/s 2 ( 2000rpm/2s) であ る が ,63rad/s 2 x軸 フ レ 波形 ( 2000rpm/3.4s)が 限 度 であ り ,そ れ 以上 に 加速 を 上 げる と,磁 気 カッ プ リン グ の 脱調 現 象が 発 生 した 。 また フ レ の波 形 を図 3-4-3 に 示 すが , 立 上り 直 後の 低 回 転側 で は一 定 振 幅の 機 械的 な 偏 心と 考 えら れ る フレ が 見ら れ , その 後 は共 振 現 象が 見 られ る 。 x 軸 の フレ と し ては , 波形 の Peak to peak の Max 値を 読 み取 る こと と す る。 x 軸 は 加速 度 が 大き く なる ほ ど ,フ レは 小 さ くな る 傾向 で あ った 。 3.4.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 同 様 に,z 軸 方 向 のフ レ の大 き さ を ,タ ーン テ ー ブル が 209rad./s(2000rpm)ま で立 上 る 時間 ( 立上 り 時 の加 速 度) を 変 えて 測 定し た 結 果を 図 3-4-4 に 示 す。 図 3-4-4 z 軸フ レ 図 3-4-5 27 z軸 フ レ 波形 z 軸 のフ レ と して は ,波 形 の Peak to peak の Max 値を 読 み取 る こと と す る。 z 軸 の場 合 は 加速 度 が大 き くな る ほ ど, フ レ は大 き くな る 傾 向で あ った 。 注 目 すべ き は ,図 3-4-5 に 示 す z 軸 のフ レ 波 形で , 立上 り 時 に大 き くな り , 安 定時 は 静 止時 の 位置 に 戻 って い る現 象 で ,立 上 り時 に タ ーン テ ーブ ル の 浮上 り 現象 が 生 じて い る。 3.4.4 タ ー ン テー ブ ルの フ レ 改善 策 以 上 の実 験 結 果か ら ,当 初 掲 げた 4 つの 評 価 項目 の うち , タ ーン テ ーブ ル の フ レと 立 上 時間 の 2 項 目 が 未達 成 とな っ た 。 タ ー ンテ ー ブ ルの フ レに つ い ては ,HTS バ ルク と 浮 上マ グ ネッ ト の 結合 力 が不 足し て い るこ と が挙 げ ら れる こ とか ら , 両者 の 対抗 す る 面積 を 増大 さ せ る対 策 を行 う 。更 に ,HTS バル ク の 臨界 温 度が 約 90K であ る の に対 し て 40~ 50K ま で 冷却 を 行 って い るが , こ れを 35~40K まで 低 下 さ せ る 対 策 を 行 う こ と と す る 。 立 上 時間 が 未 達成 と なっ た 原 因は , 磁気 カ ッ プリ ン グの 立 上 時に 発 生さ せ た ト ルク の 分 だけ , カッ プ リ ング 間 の吸 引 力 が減 少 し, タ ー ンテ ー ブル の 浮 上り が 生ず る た め,磁 気 カッ プ リン グ 間 のギ ャ ッ プ 10mm で ト ル ク 2.5Nm を 発 生 さ せ る能 力 が あっ て も, タ ー ンテ ー ブル の 浮 上り に より 初 期 のギ ャ ップ が 変 化す る ため , 目 標の 立 上時 間 を 確保 で きな く な って い る。 そ こ で, 磁 気カ ッ プ リン グ の結 合 度 の増 強 につ い て も対 策 を行 う 。 3.5HTS バ ル クの 改 善 3.5.1 HTS バル ク の 形状 上 記 の実 験 で はバ ル クの 経 済 性を 考 慮し , 離 散的 な バル ク 配 置を 採 用し た が , 今回 は 性 能本 位 で,浮 上 マグ ネ ット に 対 抗す る 部分 は す べて HTS バ ル ク を 配 置す る こ とと し た 。HTS バル ク は ,製造 上 大 きな も の は製 作 でき な い ので ,円 盤型 の バ ルク を 扇型 に 加 工し , その バ ル クを 6 個並 べ て ,一 体 型と し て いる 。 ター ン テ ーブ ル #3 と の対 向 面積 は 2.1 倍 に 増 加し て い る。 図 3-5-1 に その 構 成を 示 す 。 (3) 28 図 3-5-1 一 体 型バ ル ク 更 に ,ク ラ イ オス タ ット 内 の 断熱 効 果を 高 め るた め に, 真 空 断熱 に 加え て , ク ライ オ ス タッ ト の内 面 に 反射 フ ィル ム ( アル ミ 蒸着 フ ィ ルム ) を張 付 け て, 輻 射に よ る 吸熱 を 防止 す る こと を 試み て い る。 そ の状 況 を 図 3-5-2 に示 す 。 図 3-5-2 クラ イ オス タ ット 内 面 に貼 付 けた 反 射 フィ ル ム そ れ らを 組 込 むと 同 時に ,ス ピ ナ と して の 評 価が で きる よ う に,処理 チ ャン バ , 薬液 用 ノ ズル , フォ ト マ スク 保 持用 の チ ャッ ク 等も 具 備 した 実 験機 ( ス ピナ ) を製 作 し てい る 。こ れ を スラ ス ト浮 上 2 号 機 と称 し , その 外 観を 図 3-5-3 に示 す。 29 図 3-5-3 ス ピ ナと し て製 作 した ス ラ スト 浮 上 2 号 機 最 初 に製 作 し たス ラ スト 浮 上 1 号 機 ,改 善 を 盛込 ん だス ラ ス ト浮 上 2 号 機 と , 最も 特 性 の優 れ てい る タ ーン テ ーブ ル # 3 と の 組合 せ に よる 浮 上実 験 の 比較 結 果を 以 下 に述 べ る。 3.5.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 剛 性 2 種 類の ス ラ スト 浮 上実 験 機 にタ ー ンテ ー ブ ル# 3 を搭 載 し た時 の ター ン テ ー ブル の x 軸 方 向の 剛 性に つ いて 測 定 を行 っ た結 果を 図 3-5-4 に 示 す。 図 3-5-4 ス ラス ト 浮上 方 式 の x 軸 剛 性 30 1 号 機 に 対し て ,HTS バ ル クと 浮 上マ グ ネ ット の 対向 面 積 を約 2.1 倍に 増 やし た 2 号 機 は ,x 軸 方向 の 剛性 が 同 一荷 重 に対 し て約 50%の フ レ低 減 効 果が 見 ら れる 。 3.5.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 剛性 同 様 にタ ー ン テー ブ ルの z 軸 方向 の剛 性 に つい て 測定 を 行 った 結 果を 図 3-5-5 に示 す 。 図 3-5-5 ス ラ スト 浮 上方 式 の z 軸 剛 性 z 軸 方 向 の剛 性は x 軸方 向 の 剛性 に 比べ , 対 策効 果 は低 く か った が ,同 一 荷 重 に対 し て 約 10% の 変位 低 減効 果 が ある 。 3.6 磁 気カ ッ プ リン グ の改 善 3.6.1 磁 気 回 路の 改 善 磁 気 カッ プ リ ング 間 距離 が 変 化し て も立 上 時 の加 速 度が 確 保 でき る よう に , 発 生ト ル ク を大 き くし た 磁 気カ ッ プリ ン グ を目 指 して ,6 極 の 異な る 寸法 を 持 つ 2 種類 の パ ター ン のモ デ ル で比 較 解析 を 行 なう 。図 3-6-1~ 図 3-6-2 でそ の 構 成を 示す 。 (3) 31 磁性体 マグネット 12mm 浮上側 10mm 駆動側 30mm 図 3-6-1 磁性体 30° Type4 マグネット 30° 12mm 浮上側 10mm 30mm 駆動側 図 3-6-2 Type5 2 種 類の パ タ ーン で ,発 生 す るト ル クと カ ッ プリ ン グ間 に 作 用す る 吸引 力 に つ いて 解 析 を行 な う。 図 3-6-3, 図 3-6-4 に 解 析 結果 を 示 す。 グ ラ フの 横 軸 は, 磁 気カ ッ プ リン グ の 1 極 分 (マ グ ネッ ト + 磁性 体 )の 位 相 を 1 と 表 現し て い る。 32 Torque [Nm] Electro -magnetic force [N] gap 10mm 0 0.5 1 Normalized angle 図 3-6-3 Type4 の 特 性 Torque [Nm] Electro -magnetic force [N] gap 10mm 0 0.5 1 Normalized angle 図 3-6-4 Type5 の 特 性 上 記 の解 析 結 果か ら , Type4 の磁 気 カッ プ リ ング で は, 発 生 トル ク は 約 60% 増加 す る こと が 期待 で き ,ト ル クア ッ プ が可 能 であ る の で, Type4 の 仕 様で 磁 気カ ッ プ リン グ の製 作 を 行う こ とと す る 。 33 3.6.2 カ ッ プ リン グ の特 性 新 し く製 作 した 6 極 磁 気カ ッ プ リ ング の 外 観を 図 3-6-5 に, そ の特 性 の実 測 値 を 図 3-6-6~ 図 3-6-7 に 示 す 。 図 3-6-5 6 極 磁 気カ ッ プ リン グ 図 3-6-6 図 3-6-7 被 駆 動 側( 左 )と 駆 動 側( 右 ) 6 極 磁 気 カッ プ リン グ の 吸引 力 特性 6 極 磁 気カ ッ プリ ン グ のト ル ク特 性 34 実 際 に製 作 し た磁 気 カッ プ リ ング の 特性 は 磁 気解 析 の結 果 よ りも 若 干低 い が , 発 生 トル ク が 大き い ので , 本 磁気 カ ップ リ ン グを 使 用す る 。 3. 7 ス ラ スト 浮 上 方式 の 改善 効 果 3.7.1 ター ン テ ーブ ル の x 軸フ レ 2 台 の スラ ス ト 浮上 実 験機 と ター ン テ ーブ ル # 3 の 組 合せ で , 結合 力 を改 善 し た磁 気 カ ップ リ ング で 駆 動を 行 い, 動 特 性を 比 較測 定 し た結 果 を図 3-7-1 に 示 す。 図 3-7-1 x 軸 フ レ の 比較 2 号 機 では 加 速度 は 63rad./s 2 か ら 81rad./s 2 (2000rpm/2.6s) 向 上し て いる が,目 標値 の 105rad/s 2 ( 2000rpm/2s) には ま だ 達成 し てい な い 。以 前 と同 様 , それ 以 上に 加 速 を上 げ ると , 磁 気カ ッ プリ ン グ の脱 調 現象 が 発 生し た 。タ ー ン テー ブ ルの フ レ につ い ても 約 1mm で , 目 標値 の 0.2mm 以 下 に は 達 し てい な い 。 3.7.2 ター ン テ ーブ ル の z 軸 フ レ 同様 に ,タ ー ン テー ブ ル# 3 の動 特 性 を比 較 測 定し た 結果 を 図 3-7-2 に 示す 。 図 3-7-2 z 軸フ レ の比 較 35 x 軸 フ レ で 述 べ た よ う に 加 速 度 は 81rad./s 2 ま で 向 上 し て い る が , 目 標 値 の 105rad/s 2 ( 2000rpm/2s) に は ま だ 達 成 し て い な い 。 タ ー ン テ ー ブ ル の フ レ に つ いて も 約 1.8mm で , 目 標 値 の 0.2mm 以 下 に は 達し て い ない 。 3. 8 パ ッ シブ 制 御 3.8.1 パ ッ シ ブ制 御 の原 理 タ ー ンテ ー ブ ルの フ レを 抑 え るた め に, 電 磁 誘導 の 原理 を 利 用し た 制御 が 有 効 であ る と 考え た 。そ の 概 念図 と 実施 例 を図 3-8-1 に示 す が, 銅 板 のよ う な常 磁 性体 の 金 属板 を 貫く 磁 束 が時 間 に対 し て 変化 す ると , 金 属板 表 面に そ の 磁束 の 変化 を 妨 げる 向 きに 渦 電 流が 流 れる 。 そ の渦 電 流が 作 る 磁界 は マグ ネ ッ トの 動 きを 妨 げ る方 向 に発 生 す るの で ,マ グ ネ ット の 不規 則 な 動き に 対す る ブ レー キ とし て 働 き, ス タビ ラ イ ザの 効 果が あ る 。 電磁誘導スタビライザ用銅板 図 3-8-1 電 磁 誘 導の 原 理と , 電磁 誘 導 スタ ビ ライ ザ の 実施 例 36 3.8.2 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 電 磁 誘導 ス タ ビラ イ ザ用 の 銅 板( 2t)を , ス ラス ト 浮上 2 号機 に 組込 み , ター ンテ ー ブ ル# 3 を使 用 した 時 の特 性 を 測定 す る 。結 果 を 図 3-8-2 に示 す 。 図 3-8-2 x 軸フ レ に 対 する 電 磁 誘導 ブ レー キ の 効果 x 軸 方 向の フ レ はタ ー ン テー ブ ル の 回 転に 同 期 して い る の で, 周 波 数が 高 い た め電 磁 誘 導ス タ ビラ イ ザ の効 果 は顕 著 で ,銅 板 の無 い 時 に比 べ ,フ レ は 半減 し てい る 。 3.8.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 同 様 に z 軸 方 向の フ レ の測 定 結果 を 図 3-8-3 に 示す 。 図 3-8-3 z 軸 フレ に 対す る 電磁 誘 導 スタ ビ ライ ザ の 効果 x 軸 の フレ が タ ーン テ ーブ ル の 回転 に同 期 し て ,高 速 で ある の に対 し て ,z 軸 の フレ は 加 速時 の 浮上 り な ので , 周波 数 が 低く , 電磁 誘 導 スタ ビ ライ ザ の 効果 は 大き く は ない 。 37 若 干 の効 果 と して ,加 速 度 を 81rad./s 2 ⇒ 84rad./s 2 (2000rpm/2.5s)に 上げ るこ と が でき て いる 。 3.9 ス ラス ト 浮 上方 式 のま と め 3.9.1 ス ピ ナ とし て の性 能 以 上 の結 果 か ら, 実 験機 と し ては ス ラス ト 浮 上 2 号 機 と, タ ー ンテ ー ブル # 3 の組 合 せ に於 い て, 電 磁 誘導 ス タビ ラ イ ザを 採 用し た 場 合が , 最も 良 い 特性 が 得ら れ た 。評価 の 対 象と し て決 め た 4 項 目 の特 性の う ち ,定常 回 転 数 209rad./s ( 2000rpm) 以 上 と , タ ー ン テ ー ブ ル の 浮 上 高 さ ( チ ャ ン バ の 壁 が 構 成 で き れ ば可 )に つ い ては そ れぞ れ, 209rad./s の 回 転速 度が 得 ら れて い るこ と と, タ ー ンテ ー ブ ルの 浮 上高 さ 3mm 以 上 を 確保 で き て いる こ と から ,チ ャ ンバ の 壁 2mm を構 成 で きる の で, 目 標 を達 成 した と 言 える 。 しか し ,ター ン テ ーブ ル の加 速 度 105rad./s 2 以 上と フ レ 0.2mm 以 下 に つ い ては , それ ぞ れ をま と める と, 加 速 度は 84rad./s 2 フ レ は x 軸 :0.4mm z 軸: 1.5mm とな り , 目標 は まだ 達 成 でき て いな い 。 本稿 の 趣 旨で あ る超 伝 導 体を 利 用し た 半 導体 製 造用 ス ピ ン処 理 装置 と し て評 価 を行 う と ,加 速 度, フ レ とも に 目標 値 を 達成 で きて い な いの で ,レ ジ ス ト膜 を 均一 に 塗 布す る 目的 の ス ピン コ ーテ ィ ン グ装 置 とし て は 適し て いな い が ,ス ピ ンコ ー テ ィン グ 装置 に 比 べ, 低 速で 済 む スピ ン 洗浄 装 置 とし て の利 用 は 可能 と 考え ら れ る。 また , 本 スラ ス ト浮 上 方 式は , 処理 チ ャ ンバ の 部分 の 設 計が 比 較的 簡 単 にで き るた め , 商品 化 のハ ー ド ルは そ れ程 高 く はな い もの と 考 えら れ る。 38 第4章 ラジ ア ル浮 上 方 式 4.1 浮 上要 素 4.1.1 浮 上 体 の磁 気 回路 ス ラ スト 浮 上 方式 に 於い て は ,タ ー ンテ ー ブ ル自 体 に基 板 等 を搭 載 する が , ラ ジア ル 浮 上方 式 では 磁 気 浮上 用 マグ ネ ッ トの 上 部に 基 板 搭載 用 のタ ー ン テー ブ ルを 設 け る構 成 であ る 。 そこ で ラジ ア ル 浮上 方 式で は 基 板を 搭 載す る タ ーン テ ーブ ル 部 をタ ー ンテ ー ブ ルと 称 し, 浮 上 用マ グ ネッ ト 部 を浮 上 体と 称 す るこ と とす る 。 ラ ジ アル 浮 上 方式 に 於け る 浮 上体 も ,ス ラ ス ト浮 上 方式 に 於 ける タ ーン テ ー ブ ル同 様 , 浮上 を 保持 す る 力の 確 保と , タ ーン テ ーブ ル 立 上時 間 短縮 の た めの 軽 量化 が 必 要で あ る。 そ こ で, 基 本 とな る 考え 方 は 以下 の 2 つ で ある 。 ① 磁束 密 度 の最 も 大き く 取 れる ネ オジ ム 系 マグ ネ ット を 選 択す る ② 凸極 は 設 けな い が, 磁 性 体を 同 極の マ グ ネッ ト で挟 む 構 成と す る 解 析 を行 な っ た, マ グネ ッ ト の配 置 ,磁 性 体 をマ グ ネッ ト で 挟む 磁 気回 路 モ デ ルと そ の 解析 条 件を 図 4-1-1 に 示 す。 図 4-1-1 浮 上 体の 磁 気回 路 モデ ル ( 左) 解析 条 件 (右 ) 磁 気 解析 を 行 なっ た 結果 を , 図 4-1-2, 図 4-1-3 に 示す 。 39 gap 10mm Magnetic field [T] Magnetic field [T] gap 10mm x [mm] y [mm] x 方 向 磁束 密 度 図 4-1-2 図 4-1-3 y 方向 磁 束 密度 ラ ジ アル 浮 上 方式 に 於け る 浮 上体 は 重量 物 で ある マ グネ ッ ト ,磁 性 体が 中 心 部 に配 置 さ れる た め, ス ラ スト 浮 上方 式 よ りも 慣 性モ ー メ ント を 小さ く す るこ と が可 能 と なる 。 慣 性 モー メ ン トが 小 さく な る 割に は ,磁 気 解 析結 果 では 磁 束 密度 が ター ン テ ー ブル と 同 程度 で ある の で,浮 上力 に 対 して は 十 分な レ ベ ルで あ ると 予 想 され る。 こ の 仕様 で 製 作し た 浮上 体 と ター ン テー ブ ル を図 4-1-4 に 示 す 基板を搭載するターンテーブル マグネット 図 4-1-4 4.1.2 磁性体 浮 上 体 (左 ) 浮上体(塗装後) タ ー ンテ ー ブ ルを 取 付け た 浮 上体 ( 右) HTS バル ク の 構成 ス ラ スト 浮 上 方式 に 於い て ,HTS バ ルク と 浮 上マ グ ネッ ト の 対向 面 積が 大 き い 程,浮上 能 力 が大 き いこ と が 分か っ てい る の で ,HTS バ ル クは マ グ ネッ ト の円 周全 体 を カバ ー する よ う に配 置 する 。 た だ し , HTS バ ル ク は 円 筒 形 の も の を 製 作 す る こ と が で き な い の で 長 方 形 の HTS バ ルク を 正 12 角形 に 配置 す る こと に より マグ ネ ッ トと 対 向さ せ る 。 40 そ の 様子 を 図 4-1-5 に 示す 。 HTS バ ル ク 図 4-1-5 4.1.3 正 12 角 形に 配置 し た HTS バ ルク 実 験 機 の構 成 HTS バ ルク を 臨 界温 度 ( Tc) ま で 冷却 す る 構造 と して 図 4-1-5 に 示 すよ う に 銅 製の 冷 却 プレ ー トに 取 付 け, そ れを ス テ ンレ ス 製の チ ャ ンバ 内 に配 置 し ,外 気 と断熱できるレベルにチャンバ内を真空にするクライオスタットを構成し, GM 冷 凍 機で 冷 却 プレ ー トを 冷 却 して い る 。HTS バル ク の 温度 は 30~40K に 冷 却し て い る。 実 験 機の 構 成 を図 4-1-6 に ,実験 機 であ る ラ ジア ル 浮 上 1 号 機の 外 観を 図 4-1-7 に示 す。( 4) 図 4-1-6 ラジ ア ル浮 上 方式 の 構 成 41 図 4-1-7 ラ ジ アル 浮 上 1 号 機 4.2 ラ ジア ル 浮 上方 式 の静 特 性 4.2.1 浮 上 体 の x 軸剛 性 ラ ジ アル 浮 上 1 号機 で の x 軸 剛 性に つい て 測 定を 行 った 結 果 を図 4-2-1 に 示す 。 スラ ス ト 浮上 方 式で は z 軸の 剛 性 が強 く ,x 軸 は弱 か っ たが , ラジ ア ル 浮上 方 式で は 逆 にな る こと が 予 想さ れ るが , 結 果は そ の通 り 同 一変 位 量に 対 し て, 約 10 倍の 荷 重を 要 し ,x 軸 は 非常 に 強 くな っ てい る。 図 4-2-1 ラジ ア ル浮 上 方式 の x 軸 剛 性 42 4.2.2 浮上体の z 軸剛性 ラ ジ アル 浮 上 1 号 機 で の z 軸 剛 性 に つい て 測 定を 行 った 結 果 を 図 4-2-2 に示 す 。 z 軸剛 性 は スラ ス ト浮 上 方 式に 比 べ弱 く な って いる が ,約 30%の 減 少 であ り , 予想 以 上 に強 い こと が 分 かっ た 。従 っ て ラジ ア ル浮 上 方 式で は 浮上 体 の 慣性 モ ーメ ン ト を小 さ くで き , かつ z 軸剛 性 が 強い こ とか ら , 立上 り 時の タ ー ンテ ー ブル の 浮 上り に 強い こ と が期 待 でき る 。 図 4-2-2 ラ ジ アル 浮 上方 式 の z 軸 剛 性 4.3 駆 動要 素 4.3.1 ア キ シ ャル 磁 気カ ッ プ リン グ ス ラ ス ト 浮 上 方 式 で 用 い た タ ー ン テ ー ブ ル の 慣 性 モ ー メ ン ト は 0.02kgm 2 で あ るの に 対 して ,ラ ジ アル 浮 上 方式 で 用い る 浮 上 体の 慣 性 モー メ ント は 0.005kgm2 で,1/ 4 で あ る。また ,ラ ジ ア ル浮 上 方式 の z 軸剛 性 は 予想 以 上に 強 い こと か ら, ス ラ スト 浮 上方 式 に 於い て 使用 し た ,ア キ シャ ル 磁 気カ ッ プリ ン グ を使 用 して も , 問題 な いこ と が 分か る 。但 し , 磁気 カ ップ リ ン グの 吸 引力 を 弱 める た めに , カ ップ リ ング 間 距 離を 10mm か ら 13mm に拡 大 し て使 用 する 。 4.4 ラ ジア ル 浮 上方 式 の動 特 性 4.4.1 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ ラ ジ アル 浮 上 1 号 機 の動 特 性 を測 定 した 。x 軸 方 向 のフ レ につ い て 図 4-4-1 に 示 す。 43 図 4-4-1 4.4.2 ラ ジ アル 浮 上 1 号 機 の x 軸フ レ タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 同 様 に z 軸 方 向の フ レ につ い て 図 4-4-2 に示 す 。 図 4-4-2 ラ ジア ル 浮 上 1 号 機の z 軸 フレ フ レ の値 そ の もの は まだ 大 き いが , スラ ス ト 浮上 方 式に 比 べ ,慣 性 モー メ ン ト が小 さ い 分, 立 上り 時 の 加速 ト ルク が 小 さく て 済み , 浮 上体 の 浮上 り を 抑え る こ と がで き , ス ラ スト 浮 上 方 式 で は達 成 で き な い ,105rad./s 2 ( 2000rpm/2s) を 達成 し て いる 。 4.5 パ ッシ ブ 制 御 4.5.1 パ ッ シ ブ制 御 の原 理 ス ラ スト 浮 上 方式 で は, フ レ を抑 え るた め に 電磁 誘 導の 原 理 を利 用 した 電 磁 誘 導ス タ ビ ライ ザ を採 用 し ,一 定 の効 果 が 得ら れ てい る の で, ラ ジア ル 浮 上方 式 に於 い て も同 様 の効 果 が 期待 で きる の で ,試 み る。 ラ ジ アル 浮 上 方式 に 於い て は ,HTS バル ク と 浮上 マ グネ ッ ト の対 向 が面 で は な く円 筒 形 とな っ てい る の で,銅 板 は円 筒 状に 加 工し て い る。製 作 した 銅 筒(2t) を 図 4-5-1 に示 す 。 44 図 4-5-1 4.5.2 電 磁 誘導 ス タビ ラ イザ 用 銅 筒 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ x 軸 方 向の フ レ の特 性 を 図 4-5-2 に 示す 。 図 4-5-2 x 軸 フ レに 対 す る 電磁 誘 導 ブレ ー キの 効 果 x 軸 の フレ は 浮 上体 の 回 転に 同 期 し て いる の で ,周 波 数 が 高い た め 電磁 誘 導 ス タビ ラ イ ザの 効 果は 顕 著 で,スラ ス ト浮 上 方 式 の時 同 様,同 筒の 無 い時 に 比 べ, フレ は 半 減し て いる 。 4.5.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 同 様 に z 軸 方 向の フ レ の特 性 を 図 4-5-3 に示 す 。 図 4-5-3 z 軸フ レ に対 す る電 磁 誘 導ブ レ ーキ の 効 果 45 x 軸 の フレ が 浮 上体 の 回転 に 同 期し てい る の に対 し て,z 軸の フ レ は加 速 時の 浮 上り な の で, 周 波数 が 低 く, x 軸 ほ どの 効 果 は ない が , 約 10% の フ レ低 減 効果 があ る 。 4.6 そ の他 の フ レ改 善 策 4.6.1 タ ー ン テー ブ ルの 低 慣 性化 ラ ジ アル 浮 上 方式 で は重 量 の ある 浮 上用 マ グ ネッ ト を中 心 部 に配 置 でき る の で 慣性 モ ー メン ト を低 く で きる の で, 立 上 り時 の トル ク が 低く て も良 く , ター ン テー ブ ル の浮 上 りが 少 な いの で ,そ の 分 安定 性 が増 し 更 に早 い 立上 り が 可能 と なる 。その 結 果,ス ラス ト 浮 上方 式 では 立 上り 時の 加 速 度が 84rad./s 2 が 限 界で あっ た の に対 し て, ラ ジ アル 浮 上方 式 で は目 標 の 105rad./s 2 を 達 成で き た。 し か し, 目 標 の加 速 度を 達 成 して い る分 , 浮 上り は 2.1mm と 大 き い 。 ス ラ スト 浮 上 方式 の ター ン テ ーブ ル は浮 上 用 のマ グ ネッ ト が 配置 さ れて い る の で, 今 以 上の 低 慣性 モ ー メン ト 化は 難 し いが , ラジ ア ル 浮上 方 式の タ ー ンテ ー ブル は , 基板 等 の処 理 物 を搭 載 する た め のも の であ り , 形状 的 に剛 性 を 確保 で きる 範 囲 内で 低 慣性 モ ー メン ト 化を 図 る こと が でき る 。 そこ で図 4-6-1 に示 す よう な 低 慣性 モ ーメ ン ト 化を 図 った 。計算 上 は ター ン テ ーブ ル 部の み の 比較 で, 0.0043kgm2 図 4-6-1 4.6.2 から 0.0026kgm2 に 低 減し て い る。 タ ー ン テー ブ ルの 低 慣性 モ ー メン ト 化前 ( 左 ) 後 (右 ) タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ ラ ジ アル 浮 上 方式 に 於け る タ ーン テ ーブ ル の 低慣 性 モー メ ン ト化 を 図る 前 と , 図っ た 後 の x 軸 方 向の フ レ特 性 を 図 4-6-2 に 示 す。 グ ラ フは 両 者と も 電 磁誘 導 スタ ビ ラ イザ を 使用 し た 時の も ので あ る 。 46 図 4-6-2 x 軸フ レ に対 す る 低 慣性 モ ー メン ト 化の 効 果 フ レ の低 減 効 果と し ては , タ ーン テ ーブ ル の 浮上 り 防止 策 で ある の で, 予 想 通 り x 軸の 低 減効 果 は 低く , 目標 の 立 上り の 加 速度 105rad./s 2 に 於 いて , 0.4mm か ら 0.3mm で , 低 減量 は 僅 かで あ る。 4.6.3 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 同 様 に, タ ー ンテ ー ブル の 低 慣性 モ ーメ ン ト 化を 図 る前 と , 図っ た 後の z 軸 方 向の フ レ 特性 を図 4-6-3 に示 す 。こ ち ら も電 磁 誘導 ス タ ビラ イ ザを 使 用 した 時 のも の で ある 。 図 4-6-3 z 軸 フ レに 対 する 低 慣性 モ ー メン ト 化の 効 果 タ ー ン テー ブ ル の 低 慣性 モ ー メ ン ト 化 によ る 浮 上 り 防止 策 な の で , z 軸 方 向 の フレ 低 減 効果 は ,x 軸よ り も 大き く ,2.1mm か ら 1.7mm に ,約 20%低 減 でき て いる 。 47 4.7 ラ ジア ル 浮 上方 式 のま と め 4.7.1 ス ピ ナ とし て の性 能 以 上 の結 果 か ら, 実 験機 と し ては ラ ジア ル 浮 上 1 号 機に 於 い て, タ ーン テ ー ブ ルの 慣 性 モー メ ント を 小 さく す るこ と で ,最 も 良い 特 性 が得 ら れた 。 評 価 と対 象 と して 決 め た 4 項 目の うち , 定 常回 転 数 209rad./s(2000rpm) は 達 成で き て いる 。 浮上 高 さ につ い ては , 浮 上体 の 直径 方 向 にク ラ イオ ス タ ット 内 周面 か ら 5mm の ギ ャ ッ プ を 保持 し てる 。 こ の ギャ ッ プ に 2mm 厚 さ の 銅 筒 を介 在さ せ て も 3mm の ギ ャ ッ プ が存 在 する の で,装 置の 実 用 化に 対 して 問 題 はな い。 ター ン テ ーブ ル の加 速 度 105rad./s 2 は ク リ ア して お り,ス ラス ト 浮 上方 式 に比 べ,1 項目 前 進し て い るが ,フレ に 対 して は 0.2mm 以 下 に 対 し て,x 軸:0.3mm z 軸 :1.7mm と な り , 目標 は まだ 達 成さ れ て いな い 。 本 稿 の趣 旨 で ある 超 伝導 体 を 利用 し た半 導 体 製造 用 スピ ン 処 理装 置 とし て 評 価 を行 う と ,定 常 回転 数 , 加速 度 を達 成 で きた の で, レ ジ スト 膜 を均 一 に 塗布 す る目 的 の スピ ン コー テ ィ ング 装 置に 一 歩 近づ い ては い る が,フレ の 値 が大 き く, 安定 し た 成膜 は 期待 で き ず, コ ーテ ィ ン グ装 置 への 応 用 は難 し い。 ス ラ スト 浮 上 方式 の 実験 機 と 同様 , スピ ン 洗 浄装 置 とし て の 利用 は 可能 と 考 え られ る 。 ラ ジ アル 浮 上 方式 で は, 磁 気 浮上 に より 浮 上 体を 保 持す る 部 分が タ ーン テ ー ブ ルの 下 部 に位 置 して い る ため ,処 理 チャ ン バ の 構造 が 多 少複 雑 にな る。従 っ て, 商品 化 時 には 多 少設 計 的 な工 夫 が必 要 と なる 。 第5章 低慣 性 スラ ス ト 浮上 方 式 5.1 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 検 討 5.1.1 低 慣 性 スラ ス ト浮 上 方 式検 討 の 目的 第 3 章で 述 べ たス ラ スト 浮 上 方式 , 第 4 章 で 述べ た ラジ ア ル 浮上 方 式の い ず れ の方 式 に 於い て も, 浮 上 体の 慣 性モ ー メ ント が 大き い と 回転 の 立上 り 時 に浮 上 体の 浮 上 りが 発 生し , 安 定性 が 損な わ れ る傾 向 があ る 。 そこ で 本章 で は 浮上 要 素, 駆 動 要素 を 共に 見 直 し, 第 3 の 浮 上 方式 の 検討 を 行 う。 浮 上体 の 浮 上要 素 とし て は ,慣 性 モー メ ン トを 更 に小 さ く した タ ーン テ ー ブル の 試作 を 行 う。 ま た ,浮 上 体 の浮 上 りは 磁 気 カッ プ リン グ の 浮上 側 ,駆 動 側 の安 定 時の 状 態 か ら回 転 位 相に ズ レが 生 じ るこ と によ り ,吸 引 力 が変 化 す るた め に発 生 し てい る。 そこ で , 駆動 要 素と し て 吸引 力 の変 化 が 少な い 電磁 誘 導 カッ プ リン グ を 検討 す るこ と と する 。 第 3 の浮 上 方 式の 概 念図 を 図 5-1-1 に示 す 。 48 図 5-1-1 低 慣性 ス ラス ト 浮上 方 式 概念 図 5.2 浮 上要 素 5.2.1 タ ー ン テー ブ ルの 磁 気 回路 本 方 式も ス ラ スト 浮 上方 式 , ラジ ア ル浮 上 方 式と 同 様に , 基 本と な る考 え 方 と して , 下 記の 2 点を 採 る 。 ① 磁束 密 度 の最 も 大き く 取 れる ネ オジ ム 系 マグ ネ ット を 選 択す る ② 磁性 体 に よる 凸 極を 設 け ,マ グ ネッ ト で 挟む 構 成と す る 解 析 を行 な っ た磁 気 回路 モ デ ルを 図 5-2-1 に ,磁気 解 析 ソフ ト によ り FEM 解析 を行 な っ た結 果 を 図 5-2-2 に示 す 。 図 5-2-1 タ ーン テ ーブ ル の 磁気 回 路 49 図 5-2-2 5.2.2 FEN 解 析 バ ル ク の構 成 浮 上 体の 磁 気 回路 が φ100mm で あ るこ と か ら,HTS バ ル クは 多 少 余裕 を もっ て 対向 で き るよ う に, φ 110mm の 単 体 の も の を 用い て い る。 図 5-2-3 に そ の 様子 を 示す 。 図 5-2-3 HTS バル ク 5.3 駆 動要 素 5.3.1 電 磁 誘 導カ ッ プリ ン グ 電 磁 誘導 カ ッ プリ ン グと 言 え ども , 単純 に マ グネ ッ トと 銅 板 を対 向 させ た だ け のカ ッ プ リン グ では 吸 引 力の 変 化が 現 れ るの で ,図 5-3-1 に 示 すよ う に ,浮 上 側銅 リ ン グの 内 外面 を 駆 動側 内 外輪 に 設 けた 4 個の 駆 動 マグ ネ ット で 挟 む配 置 とす る こ とで , 銅リ ン グ の内 外 両面 に 作 用す る 吸引 力 を 相殺 す る構 造 と して い る。 実 機 では 駆 動マ グ ネ ット を 8 組 配 置 して い る。 製 作 した カ ップ リ ン グを 図 5-3-2 に 示す 。 50 磁気 回路 図 5-3-1 図 5-3-2 電 磁 誘導 カ ップ リ ング の 磁 気回 路 駆 動 側 マグ ネ ット 内 外輪 ( 左 ) 浮 上側 銅 リ ング ( 右) 低 慣 性ス ラ ス ト浮 上 方式 で は ,浮 上 体の 浮 上 マグ ネ ット を 中 心部 に ,駆 動 用 の 銅リ ン グ を外 周 に配 置 し てい る ため , 銅 リン グ を駆 動 さ せる た めの 駆 動 内外 輪 はベ ル ト ドラ イ ブ方 式 を 採用 し てい る 。 駆動 部 の外 観 を 図 5-3-3 に示 す 。 スラ ス ト 浮上 方 式, ラ ジ アル 浮 上方 式 , いず れ にお い て も電 磁 誘導 ス タ ビラ イ ザは 有 効 であ っ たの で , 本方 式 でも 最 初 から 採 用し て い る。 51 駆動ベルト 電磁誘導スタビライザ用銅板 図 5-3-3 低 慣 性 スラ ス ト浮 上 実験 機 駆動 部 の外 観 磁 気 カッ プ リ ング は ,駆動 側 ,被駆 動側( 浮 上 側)で 位 相差( 極 数 の 1/2 以 下) を生 ず る が, 全 体の 動 き は同 期 して い る のに 対 して , 電 磁誘 導 カッ プ リ ング は 滑り を 伴 って 追 従し て い く。 立 上り 時 に 於い て も駆 動 側 のス ピ ード に 遅 れな が ら追 従 す る。 更 に定 常 の スピ ー ドに 達 し た時 に も, 駆 動 側, 被 駆動 側 で スピ ー ド の 差 を 持 っ た ま ま 安 定 し て い る 。 駆 動 側 の 回 転 数 を N0 N1 被駆動側回転数を と し た時 , スベ リ 率 s は , 下 記の 式 で定 義 され る 。 s= ( N 0- N 1 ) / N 0 本機 で は s=0.34 と なっ て い る。 そ の関 係 を 図 5-3-4 に示 す 。 Driving characteristic Operated rotation speed [rad./s] 300 250 200 150 100 50 0 0 100 200 300 Driving rotation speed [rad./s] 図 5-3-4 電磁 誘 導カ ッ プ リン グ の駆 動 特 性 52 400 5. 4 低 慣 性ス ラ ス ト浮 上 方式 の 静 特性 5.4.1 ター ン テ ーブ ル の x 軸剛 性 低 慣性 ス ラ ス ト浮 上 方 式の 実 験 機 に 於 いて ,x 軸 方 向 の剛 性 を 測定 し た 結果 を 図 5-4-1 に 示す 。 図 5-4-1 低 慣 性 スラ ス ト浮 上 方式 の x 軸 方 向剛 性 スラ ス ト浮 上 方 式の 実 験機 と 比 較す る と, 30N 以上 の 荷重 を 掛 けて も まだ タ ー ンテ ー ブ ルが 保 持さ れ て いる こ とか ら , 本方 式 の方 が 強 い結 果 とな っ て いる 。 5.4.2 ター ン テ ーブ ル の z 軸 剛 性 同様 に ,z 軸 方 向の 剛 性を 測 定し た 結 果を 図 5-4-2 に 示 す。 図 5-4-2 低 慣性 ス ラス ト 浮上 方 式 の z 軸 方 向剛 性 スラ ス ト浮 上 方 式の 実 験機 と 比 較す る と, 約 200N の 荷重 で タ ーン テ ーブ ル が 保持 さ れ なく な って お り ,ほ ぼ 同等 の 結 果と な って い る 。 53 5.5 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の 動特 性 5.5.1 タ ー ン テー ブ ル の x 軸 フ レ 低 慣 性ス ラ ス ト浮 上 方式 で 用 いた 電 磁誘 導 カ ップ リ ング は ス ベリ が あり , 立 上 り時 の 加 速度 を 自由 に コ ント ロ ール で き ない の で, 定 常 時の 速 度を パ ラ メー タ とし て , 動特 性 を測 定 す る。 そ の結 果 を 図 5-5-1 に 示 す。 図 5-5-1 低慣 性 スラ ス ト浮 上 方 式の x 軸 方 向フ レ x 軸 方 向の フ レ は,10rad./s 程 度 の 低回 転 領 域か ら 既 に 0.8mm と 大 き く,目 標 の 209rad./s で は 1.1mm と , 更 に大 き く なっ て いる 。 5.5.2 タ ー ン テー ブ ル の z 軸 フレ 同 様 に動 特 性 ,z 軸 方向 フ レに つ い て測 定 し た結 果 を 図 5-1-2 に示 す 。 図 5-5-2 低 慣 性ス ラ スト 浮 上方 式 の z 軸 方 向 フレ z 軸方 向 の フレ は ,低 回 転 領域 で は 0.2mm と 小 さ い が , 目標 の 209rad./s では 0.7mm と , 評 価 目 標 値 に は 達 し て い な い が , 他 方 式 に 比 べ フ レ の 値 は 小 さ く , 電磁 誘 導 カッ プ リン グ の 効果 が 出て い る 。 54 5.6 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の まと め 5.6.1 ス ピ ナ とし て の性 能 本 研 究の 評 価 の対 象 とし て 決 めた 4 項目 の う ち,定常 回 転速 度 209rad./s は 達 成 した が , 立上 り 加速 度 は 84rad./s 2 で 未達 成 と なっ た 。 タ ー ンテ ー ブ ルの 浮 上高 さ は 約 5mm 浮 上 し て お り ,そ の 浮 上空 間 に 2mm 厚 の チャ ン バ 壁を 構 成で き る ので 達 成し て い る。 ター ン テ ーブ ル のフ レ に つい て は回 転 速 度 209rad/s(2000rpm)ま で立 上 る時 の 特性 で 読 取る と ,x 軸方 向:1.1mm z 軸 方 向:0.7mm と な り ,目 標は 未 達 成で ある 。 回 転 速 度 209rad./s に 達す る まで のタ ー ン テー ブ ル の Max の フ レに つ いて ,ス ラス ト 浮 上方 式 ,ラ ジ ア ル浮 上 方式 , 低 慣性 ス ラス ト 浮 上方 式 の 3 方 式 で比 較 を行 う と ,表 5-6-1 の よ う にな る 。 表 5-6-1 項目 浮 上 方式 に よる タ ーン テ ー ブル フ レ量 の 比 較 スラスト浮上方式 ラジアル浮上方式 低慣性スラスト浮上方式 x 軸方向フレ 0.4mm 0.3mm 1.1mm z 軸方向フレ 1.5mm 1.7mm 0.7mm z 軸 方 向 のフ レ に 関 し ては , カ ッ プ リ ン グ間 吸 引 力 の 変化 し な い 低 慣性 ス ラ ス ト 浮 上方 式 で 用 い た 電磁 誘 導 カ ッ プ リン グ が 有 効 であ り , こ の 方 式の み , z 軸 方向 の フ レが 1mm を 割 る 結 果と な って い る 。 一方 , x 軸 方 向 のフ レ に 関 して は 低 慣 性ス ラ ス ト浮 上 方 式 が最 も 大 きく , 1mm を超 え て いる 。図 5-5-1 を見 て 分か る 通 り, 低 速度 時 か ら大 き なフ レ が 発生 し てお り , 初期 的 にバ ラ ン スが 崩 れて い る こと を 示し て い る。 低 回転 域 に 於い て 既に バ ラ ンス が 崩れ て い るこ と から , ダ イナ ミ ック バ ラ ンス で はな く , スタ テ ィッ ク バ ラン ス が崩 れ て いる こ とが 分 か る。 第 6 章 で は浮 上 回転 体 が どの よ うに 回 転 し, ど のよ う な メカ ニ ズム で フ レを 発 生す る の かを 理 論的 に 解 析し , フレ 低 減 の根 本 的な 対 策 につ い て提 案 を 行う 。 55 第6章 超伝 導 浮上 体 の 回転 時 フレ の 解 析と 対 策 6.1 浮 上体 に 作 用す る 力 6.1.1 超 伝 導 浮上 に 於け る マ イス ナ ー 効果 超 伝 導 体は 臨 界温 度 ( Tc)以 下 に な ると 浮 上 マグ ネ ッ トの 磁 場に よ り 表面 上 に 高密 度 の 電流 が 流れ , 超 伝導 体 内部 へ の 磁場 の 侵入 を 排 除し , 反磁 性 の 状態 に なる 。 こ れを マ イス ナ ー 効果 と 呼ぶ が , この 現 象に よ り 浮上 マ グネ ッ トは z 軸 方向 の 浮 上力 を 得る こ と がで き る。 6.1.2 超 伝 導 浮上 に 於け る ピ ン止 め 効 果 本 研 究 に よ る 磁 気 浮 上は , 第 Ⅱ 種 超 伝 導 体 によ る ピ ン 止 め 効 果 を 利用 し ,HTS バル ク が 臨界 温 度 ( Tc) に 達 した 時 の バル ク と 浮上 マ グ ネッ ト の 位置 関 係 を, バル ク 内 の不 純 物,欠陥 ,結晶 の 接合 部 な どに 量 子化 磁 束 を保 持 させ る こ とで , 安定 的 に 浮上 状 態を 保 つ こと を 期待 し て いる 。 こ の ピン 止 め 効果 は x 軸 方 向 の安 定 性だ け で なく , バル ク を 貫通 し た量 子 化 磁 束を 保 持 して い るこ と か ら, z 軸方 向 の浮 上 力 にも 寄 与 して い る。 図 6-1-1 に そ の 様子 を 図示 す る 。 し か しこ の ピ ン止 め 力 の x 軸 方向 の 剛性 に 関 して は ,ピ ン 止 めさ れ た中 立 点 付 近 で は 弱 く , 中 立 点 か ら 離 れ る ほ ど 強 く な る 性 質 を 持 っ て い る 。 図 3-5-4, 図 5-4-1 の x 軸剛 性 か ら, 中 心点 が 1mm 離 れ た 時の 荷 重 を計 算 する と ,3~7N 程 度で , 非 常に 小 さい こ と が分 か る。 図 6-1-1 6.1.3 浮 上 体に 作 用す る 力 磁 気 カ ップ リ ング に よ る調 心 効 果 磁 気 カッ プ リ ング の 駆動 側 マ グネ ッ トと 浮 上 側マ グ ネッ ト を 対向 さ せて , 上 下 のマ グ ネ ット の 位相 が 合 った 時 には z 軸 方向 の 吸引 力 が 働く の みで あ る が, 上 下の 芯 ズ レが 発 生す る と ,元 の 位置 に 戻 すよ う に x 軸方 向 の 調心 力 が働 く 。 図 6-1-2 に その 関 係を 示 す 。 56 図 6-1-2 磁気 カ ップ リ ン グに よ り浮 上 体に 作 用 する 力 一 方 ,電 磁 誘 導カ ッ プリ ン グ は, 静 止状 態 で は何 の 力も 生 じ てい な いが , 回 転 速 度が 上 昇 する に つ れ ,x 軸 方向 の 調 心力 が 働 く 。本 研 究 で採 用 し て いる 電 磁 誘導 カ ッ プリ ン グは , 銅 リン グ を内 輪 , 外輪 で 挟む 構 造 を採 っ てお り , 中立 点 に戻 そ う とす る 力は 基 本 的に キ ャン セ ル され る ので , 磁 気カ ッ プリ ン グ の調 心 力に 比 べ れば , 小さ い レ ベル で ある 。 z 軸 方 向 にも 駆 動 マ グ ネッ ト と , 銅 リ ン グの バ ラ ン ス する 点 が 存 在 し, 高 速 回 転領 域 に 於い て 安定 す る 力が 働 く。 そ の 関係 を 図 6-1-3 に 示す 。 図 6-1-3 6.1.4 電 磁 誘導 カ ップ リ ング に よ り浮 上 体に 作 用 する 力 遠心力 浮 上 体が 回 転 して い る時 に は 重心 に 対し て 遠 心力 が 作用 し 、 回転 中 心か ら の ブ レを 生 ず る。 遠 心力 は 角 速度 の 2 乗 に 比 例す る こと か ら 、低 速 領域 で は 影響 が 小さ く 、 中速 領 域か ら 急 激に 影 響が 大 き くな る 。 6.1.5 ジ ャ イ ロ効 果 浮 上 体が 高 速 定常 回 転を し て いる 時 ,そ の 回 転軸 は 重心 を 通 る慣 性 セン タ と な り, 角 運 動量 が 変化 し な い限 り ,安 定 姿 勢で 回 転を 保 持 しよ う とす る 。 これ を ジャ イ ロ 効果 と いう 。 本 研究 に 於け る 実 験で も ジャ イ ロ 効果 は 見ら れ , 高速 回 転領 域 で のタ ー ンテ ー ブ ルの 回 転は 非 常 に安 定 して い る 。 57 6.2 浮 上回 転 体 に存 在 する セ ン タ 幾 何 セ ンタ 6.2.1 浮 上 回転 体 に は 3 つ のセ ン タ が存 在 して い る 。 1 つ 目は , 幾 何セ ン タで あ る 。幾 何 セン タ は 浮上 体 の製 作 , 加工 に 於け る 基 準 とな る , 回転 体 の幾 何 学 的な セ ンタ で あ る。 磁 気 セ ンタ 6.2.2 2 つ 目は 磁 気 セン タ であ る 。 磁気 セ ンタ は マ グネ ッ トの 磁 束 分布 に 於け る 分 布 の中 心 と なる 点 であ る 。 磁 気 セン タ は マグ ネ ット の 製 造過 程 に於 け る 素材 の 配向 度 , 相対 密 度, 加 工 精 度, 着 磁 精度 等 の要 因 に より , 必ず し も 幾何 セ ンタ に 一 致す る とは 限 ら ない 。 む し ろ, 最 初 から 一 致し て い ない と 考え る べ きで あ る。 重心 6.2.3 3 つ 目は 重 心 であ る 。重 心 は 浮上 体 の各 部 分 に働 く 重力 の 合 力が 作 用す る と 考 えら れ る 点で , 浮上 体 の 質量 の 中心 で あ る。 以 上 の 3 つ の セン タ の関 係 を 図 6-2-1 に 示 す。 図 6-2-1 6.2.4 浮 上 回転 体 に於 け る 3 つ の セン タ 回転軸 浮 上 体の 回 転 軸は , モー タ に 於け る シャ フ ト のよ う な固 定 的 に回 転 中心 と な る 軸を 持 っ てい な い。 浮 上 体は 自 身の 駆 動 され る 回転 速 度 によ り 作用 す る 力の 種 類と 大 き さが 変 わっ て い くた め ,回 転 軸 も変 化 し, 移 動 して い くこ と に なる 。 その た め 回転 速 度に 応 じ てフ レ の発 生 メ カニ ズ ムも 変 化 して い く。 58 6.3 フ レの 発 生 原因 6.3.1 低 速 回 転領 域 浮 上 マグ ネ ッ トを HTS バ ル ク 上で 超伝 導 浮 上さ せ ると ,ピ ン止 め 効果 に より 安 定浮 上 す るが , この ピ ン 止め 位 置は 磁 束 分布 の 中心 と な る磁 気 セン タ で ある 。 図 6-3-1 に その 関 係を 図 示 する 。 図 6-3-1 磁 気セ ン タ と幾 何 セン タ の位 置 関 係 低速 回 転 領域 で はタ ー ン テー ブ ルを 回 転 させ る と回 転 軸 は磁 気 セン タ と なる の で, 磁 気 セン タ と幾 何 セ ンタ の ズレ 分 が ター ン テー ブ ル の x 軸 のフ レ と なっ て 現れ る 。 6.3.2 高 速 回 転領 域 浮 上 体が 高 速 で回 転 して い る 時は ジ ャイ ロ 効 果に よ り浮 上 体 の重 心 で回 転 し よ うと す る 。現 在 の技 術 で 浮上 体 の製 造 , 加工 を 行う と , 機械 精 度が 高 い ので 幾 何セ ン タ がほ ぼ 重心 と な って い る。 従 っ て, 高 速回 転 領 域で は 回転 軸 が ほぼ 重 心で あ る ため , 比較 的 バ ラン ス が取 れ て いる の でフ レ が 少な く ,安 定 的 に回 転 する こ と が期 待 でき る 。 6.3.3 中 速 回 転領 域 中 速 回転 領 域 では , 回転 軸 が 低速 回 転領 域 の 磁気 セ ンタ か ら 高速 回 転領 域 の 重 心へ 移 っ て行 く 途中 の 段 階で あ る。 こ の 領域 で は, ピ ン 止め 効 果, カ ッ プリ ン グ の調 心 効 果, 遠 心 力 が交 互 に 作 用し ,x 軸 の フ レは 安 定 せず , 特 定 の速 度 で は共 振 現 象も 発 生す る 。 ま た 回転 軸 が 移動 す ると と も に, 回 転軸 の 傾 きが 発 生す る こ とか ら ,す り こ ぎ 運動 が 起 こり z 軸 のフ レ も大 き く なる 。 59 6.4 フ レの 低 減 対策 6.4.1 セ ン タ 統合 化 浮 上 回転 体 の フレ は ,低 速 回 転領 域 では 磁 気 セン タ と幾 何 セ ンタ の ズレ に よ り 発生 し , 中速 回 転領 域 で は回 転 軸の 移 動 によ り 発生 す る こと か ら, 本 研 究の 着 眼点 と し て, 浮 上体 の セ ンタ 統 合化 の 検 討を 行 った 。 セ ン タ統 合 化は 2 段 階あ り ,1 番 目 の調 整 1 は 磁 気 セン タ と幾 何 セ ンタ を 統合 させ る こ とで , 低速 回 転 領域 で のフ レ を 低減 す るこ と で ある 。 2 番 目 の調 整 2 は 磁 気 セン タ と重 心 を 統合 さ せ るこ と で 回転 軸 の移 動 を 無く し, 中速 回 転 領域 の フレ を 低 減す る こと で あ る。 調 整 1 の 後に 調 整 2 を 行 えば , 幾何 セ ン タと 重 心も 統 合 され る こと か ら ,高 速 回転 領 域 の回 転 軸と な る 重心 と 幾何 セ ン タが 一 致し 、 フ レも 低 減さ れ る 。調 整 1, 2 の 関 係を 図 6-4-1 に 示 す 。 図 6-4-1 6.4.2 調整 1 調整 2 調整 1 調 整 1 は 磁 気 セン タ を幾 何 セ ンタ へ 統合 す る こと で ある 。 磁 気セ ン タは 外 観 上 まっ た く 見え な いの で ,超 伝 導浮 上 で 磁気 セ ン タに ピ ン 止め さ れた 状 態 を作 り, ター ン テ ーブ ル をゆ っ く り回 転 させ な が ら外 周 のフ レ を レー ザ 変位 計 で 計測 す るこ と で 可視 化 でき る 。 その 原 理図 を図 6-4-2 に示 す 。 その 結 果得 ら れ たデ ー タが 図 6-4-3 で ある 。 タ ーン テ ーブ ル が 幾何 セ ンタ で 回 転す れ ばレ ー ザ 変位 計 の値 は 0 のみ を 表示 す る が, 磁 気セ ン タ でピ ン 止め さ れ てい る ので , 計 測さ れ た変 位 分 が磁 気 セン タ と 幾何 セ ンタ の ズ レを 表 して い る 。 60 図 6-4-2 図 6-4-3 磁 気 セン タ の 可視 化 磁 気セ ン タと 幾 何セ ン タ のズ レ そ こ で両 セ ン タの ズ レを 調 整 する た め 図 6-4-4 に 示 すよ う に 浮上 マ グネ ッ ト と 外周 の 銅 リン グ (実 際 に は銅 リ ング の サ ポー ト 部品 ) の 間に ギ ャッ プ を 設け , この ギ ャ ップ を 調整 す る こと で 幾何 セ ン タを 調 整し , 磁 気セ ン タ= 幾 何 セン タ とす る 。 61 図 6-4-4 6.4.3 幾 何 セン タ の 調整 調整 2 調 整 2 は 重 心 を磁 気 セン タ へ 統合 す るこ と で ある 。 一 般 的に , 重 心を 幾 何セ ン タ へ統 合 する こ と をバ ラ ンス 調 整 と称 す るが , こ の 調整 は 回 転軸 を 基準 に 調 整す る 。し か し 本研 究 の浮 上 体 は中 心 部に 浮 上 マグ ネ ット が 位 置し て おり , バ ラン ス 調整 の た めの 軸 を設 け る こと が でき な い 。そ こ で, 外 径 を基 準 にバ ラ ン ス調 整 を行 う こ とが 考 えら れ る 。 そ の 重心 調 整 法を 図 6-4-5 に 示す 。 ボー ル ベ アリ ン グ上 で タ ーン テ ーブ ル が 安 定し た 時 の上 部 の点 ( 軽 点) に バラ ン ス ウエ イ トを 取 付 ける こ とで , 重 心を 調 整す る 。 実際 に はボ ー ル ベア リ ング の フ リク シ ョン が あ るの で ,タ ー ン テー ブ ル の 4 方 向で 確 認を 行 う 。調 整 1 後 に 調 整 2 を 行う こ と によ っ て, 重 心 =幾 何 セン タ = 磁気 セ ンタ と な り, 3 つ の セ ンタ の 統 合が 図 れ る。 図 6-4-5 重 心 の調 整 62 6.5 調 整 1 と そ の効 果 6.5.1 幾 何 セ ンタ 調 整 磁 気 セン タ と 幾何 セ ンタ の ズ レが 図 6-4-3 よ り 90°方 向 に 0.28mm あ る こ と が 判る の で ,両 セ ンタ を 合 せる べ く調 整 を 行っ た 。そ の 様 子を 図 6-5-1 に 示 す。 図 6-5-1 幾何 セ ンタ の 調 整 調 整 し た 結 果 を 図 6-5-2 に 示 す が , 調 整 後 は フ レ 幅 で δ = 0.18mm( 偏 心 ε = 0.09mm) で , 完 璧 とは 言 え ない が ほぼ 磁 気 セ ンタ ≒ 幾 何セ ン タと な っ た。 図 6-5-2 調 整後 の 磁気 セ ンタ と 幾 何セ ン タの ズ レ 63 6.5.2 x 軸の フ レ波 形 幾 何 セン タ 調 整前 後 の x 軸の フ レ波 形を 図 6-5-3 に 示 す。 低 速 回転 領 域 では 磁 気セ ン タ と幾 何 セン タ の ズレ が 少な く な った た め, 予 想 通 り, フ レ も小 さ くな っ て いる 。 高速 回 転 領域 で はほ ぼ 幾 何セ ン タに あ っ た重 心 が, 調 整 1 に よ り幾 何 セ ンタ か ら逆 に ず れた た め調 整 前 より フ レは 大 き くな っ てい る 。 中速 回 転領 域 で は調 整 前と 同 様 ,回 転 軸の 移 動 が生 じ てい る た めフ レ の大 き さ はほ と んど 変 わ って い ない 。 調整1 図 6-5-3 調 整 1 前 後 の x 軸 フレ 波 形 64 6.5.3 調 整 1 後の 動 特性 幾 何 セン タ 調 整前 後 の, タ ー ンテ ー ブル が ス ター ト から 設 定 速度 に 達す る ま で の間 の フ レの Max 値 (動 特 性 )を 図 6-5-4 に 示 す。 丸 で 囲ん だ x 軸 の低 速 回 転領 域 では 顕著 に フ レ低 減 の効 果 が 表れ て いる 。 そ の 他の 領 域 では 理 論上 変 化 が期 待 でき な い ので , 大き な 差 は出 て いな い 。 図 6-5-4 調 整 1 前 後の 動 特性 65 6.6 調 整 2 と そ の効 果 6.6.1 重心調整 重 心 の調 整 を 行っ て いる 様 子 を図 6-6-1 に 示 す 。ボ ー ルベ ア リ ング 取 付台 の x 軸,y 軸 の 水平 状 態を 確 認 し, タ ーン テ ー ブル のバ ラ ン スを 調 整し て い る。 Balancing weight 図 6-6-1 66 重 心 の 調整 6.6.2 x 軸の フ レ波 形 調 整 1, 調 整 2 に よる セ ンタ の 統 合 によ り x 軸 のフ レ 波 形が ど のよ う に変 化 し たか を 図 6-6-2 に 示す 。 調整1 調整2 図 6-6-2 調 整 1,2 前 後 の x 軸フ レ 波 形 67 調 整 1 に よ る 結果 は 前述 の 通 りで あ るが , 調 整 2 に より 更 に 中速 回 転領 域 で は 回転 軸 の 移動 が 少な く な った こ とか ら 大 きな フ レの 低 減 が見 ら れ, 高 速 回転 領 域で は 重 心と 幾 何セ ン タ がほ ぼ 一致 し た こと か ら更 な る フレ の 低減 効 果 が見 ら れる 。 6.6.3 z 軸 の フレ 波 形 同 様 に z 軸 の フレ 波 形 を図 6-6-3 に 示す 。 調整1 調整2 図 6-6-3 調整 1,2 前後 の z 軸 フ レ波 形 68 調 整 1 で は 幾 何セ ン タを 調 整 して 磁 気セ ン タ に統 合 する こ と で, 低 速回 転 領 域 の x 軸の フ レ を低 減 する こ と を目 的 とし て い るの で ,z 軸の フ レ 波形 に はそ の 影響 が ほ とん ど 出て い な い。 調 整 2 で は 重 心を 調 整し て 磁 気セ ン タに 統 合 して い るの で , 中速 回 転領 域 で の 回転 軸 の 移動 が 少な く な り, す りこ ぎ 運 動の 発 生も 抑 え られ , フレ 低 減 の効 果 が出 て い る。 高 速回 転 領 域で は 図 6-6-4 に 示 す よう な x 軸方 向 の 慣性 主 軸の ズ レが 発 生 し, フ レは 若 干 増加 し てい る 。 図 6-6-4 6.6.4 x 軸周 り の 慣 性主 軸 回 転 軸 の移 動 調 整 2 に よ る フレ 低 減効 果 を 見る た め回 転 軸 の移 動 の様 子 を ,タ ー ンテ ー ブ ル の x 軸 ,y 軸 に レー ザ 変 位計 を 設置 し そ のリ サ ージ ュ 図 形を 測 定し た 。 先ず , 調 整 2 前 で,磁 気 セン タ と重 心 に ズレ が ある 時 の回 転 軸 の移 動 の様 子 を 図 6-6-5 に示 す 。こ れ は 0.4s 間 の 動 きを 観 測し た も の であ る が,回 転軸 は 内 外に 大 きく 移動 し な がら す りこ ぎ 運 動を し てい る こ とが 分 かる 。 mm 図 6-6-5 調 整 2 前 の 回転 軸 の 移動 69 中 速 回転 領 域 およ び 高速 回 転 領域 で の調 整 2 前後 の 回転 軸 移 動の 比 較に つ い て, 図 6-6-6,図 6-6-7 に 示す 。い ず れの 速 度 に於 い ても 調 整 前よ り ,調整 後 の 方が , 回 転 軸 の 移 動 は 小 さ く な っ て い る 。 調 整 前 の 102rad./s で は 回 転 軸 移 動 の 軌 跡 が, 幅 の ある 形 とな っ て いる 。 これ は 軸 の移 動 が重 心 に よっ て 単純 に 振 り回 さ れて い る ので は なく , ピ ン止 め 効果 , 電 磁誘 導 カッ プ リ ング の 調心 効 果 等に よ り, 回 転 軸が 内 外に 大 き くフ レ なが ら 移 動し て いる こ と を示 し てい る 。 mm 調整2 mm 図 6-6-6 調整 2 前後 の 回転 軸 の 移動 (102rad./s) 70 mm 調整2 mm 図 6-6-7 6.6.5 調整 2 前後 の 回転 軸 の 移動 (206rad./s) 調 整 2 後の 動 特性 重 心 調整 前 後 の, タ ーン テ ー ブル が スタ ー ト から 設 定速 度 に 達す る まで の 間 の フレ の Max 値( 動特 性 )のう ち ,x 軸 のフ レ を 図 6-6-8 に ,z 軸 の フレ を 図 6-6-9 に示 す 。 調整 1 によ り 磁 気セ ン タ≒ 幾 何 セン タ とし , 調 整 2 に より 幾 何 セン タ ≒重 心 と した こ とで , 磁 気セ ン タ≒ 重 心 が達 成 でき て い るの で ,調 整 2 後は 最 もフ レ が 小さ く なっ て い る。 x 軸の フ レ は目 標 の設 定 速度 209rad./s で 使 用し て もフ レは Max0.5mm と な り フ レの 目 標 に近 づ いて い る 。し か し中 速 回 転領 域 での 回 転 軸の 移 動が 完 全 に無 く 71 なっ た 訳 では な く,設定 速 度 105rad./s に 設定 し て使 用 す ると フ レ Max は 0.8mm とま だ 大 きい 値 とな っ て いる 。 図 6-6-7 調 整 1, 2 前 後の 動 特 性(x 軸 ) z 軸 の フ レは 回 転 軸 の 移動 が か な り 低 減 され た た め , すり こ ぎ 運 動 の影 響 も 少 なく,すべての速度領域に於いて,フレの低減が図れて,目標の設定速度 209rad./s で 使用 し て もフ レ は Max0.4mm と な りフ レ の 目標 に 近づ い て いる 。 図 6-6-8 調 整 1, 2 前 後の 動 特 性( z 軸) 6.7 セ ンタ 統 合 化 6.7.1 セ ン タ 統合 化 の効 果 本 研 究で 試 み た, 磁 気セ ン タ ,幾 何 セン タ , 重心 の 3 つ の セ ンタ の 統合 化 は 非 常に 簡 便 的な 方 法で あ る が, そ れな り の 効果 が 得ら れ , ター ン テー ブ ル のフ レ 対策 と し ては , 非常 に 有 効で あ るこ と が 実験 的 に示 さ れ た。 72 マ グ ネッ ト の 製造 工 程で 磁 気 セン タ を幾 何 セ ンタ に 合わ せ て 作り 込 むこ と は 非 常に 難 し い。 そ の理 由 は ,磁 気 セン タ の 位置 決 めに 一 番 大き く 関与 し て いる 配 向度 が マ グネ ッ トの 着 磁 前に 決 まっ て い るに も かか わ ら ず, 磁 気セ ン タ の確 認 は着 磁 後 ,磁 気 浮上 さ せ て初 め て可 視 化 でき る から で あ る。 従 っ て, 調 整 1 で 行 う磁 気 浮 上体 の 磁気 セ ン タに 幾 何セ ン タ を統 合 する 方 法 は 浮上 回 転 体の フ レ低 減 の ため の 必須 の 手 法で あ ると 考 え る。 ま た ,調 整 2 で行 う 重心 の 統 合に 関 して は , シス テ マテ ィ ッ クに 機 械計 測 を 行 う方 法 と して , フィ ー ル ドバ ラ ンス 法 が 考え ら れる 。 こ の方 法 は, 浮 上 回転 し て振 動 し てい る 浮上 体 の 基準 位 置か ら の ズレ ( 位相 ) と ,振 動 の大 き さ ,即 ち 偏心 ベ ク トル を 測定 す る こと に より , ど の位 置 にバ ラ ン スウ エ イト を 装 着す れ ば良 い か を計 測 する も の であ る 。し か し ,図 6-6-6 に み られ る よう に 回 転軸 の 移動 は 大 きな 円 を描 い た り, 小 さな 円 を 描い た りし て い る。 即 ちフ ィ ー ルド バ ラン ス 法 で測 定 した 変 位 ベク ト ルは , 大 きさ , 位相 が 常 に変 化 して お り ,ベ ク トル の 平 均を 取 ると あ た かも バ ラン ス が 取れ て いる よ う に見 え てし ま う 。従 っ て浮 上 体 の外 径 基準 で 重 心の 調 整を 行 う 方法 も 浮上 回 転 体の フ レ低 減 の ため の 必須 の 手 法で あ ると 考 え る。 6.7.2 セ ン タ 統合 の 高精 度 化 現 時 点で は 実 用化 の ため の 目 標値 に 達し て い ない こ とか ら , 高精 度 のセ ン タ 統 合化 の 手 法の 開 発が 必 要 とな る 。実 現 可 能と 考 えら れ る 手法 を いく つ か 示す 。 図 6-6-9 は 調整 1 の 幾何 セ ン タ調 整 の高 精 度 化の 例 であ る が ,浮 上 マグ ネ ッ ト の磁 気 セ ンタ の ズレ 量 を x-y 2 軸の レ ー ザ変 位 計の 出 力 によ り 自動 調 整 する も ので あ る 。 図 6-6-10 は調 整 2 の 重心 調 整の 高 精 度化 の 例 で, エ ア ーベ ア リン グ を 使用 し, 通常 の ボ ール ベ アリ ン グ にみ ら れる フ リ クシ ョ ンを 低 減 し, 浮 上体 の 正 確な 軽 点を 見 つ ける た めの 装 置 であ る 。 図 6-6-11 は同 様 に 調整 2 の重 心 調整 の 高 精度 化の 例 で,超 伝 導浮 上 を利 用 し て ター ン テ ーブ ル を垂 直 状 態で 浮 上さ せ , フリ ク ショ ン な しで 浮 上体 の 正 確な 軽 点を 見 つ ける た めの 装 置 であ る 。 73 図 6-6-9 調整 1 図 6-6-10 図 6-6-11 x-y 2 軸自 動 調 整装 置 調整 2 調整 2 外形 基準 の 重 心調 整 装置 超 伝導 浮 上 重心 調 整装 置 74 第7章 まと め 7.1 浮 上方 式 の まと め 7.1.1 3 浮 上方 式 の 比較 本 研 究で 行 っ た, ス ラス ト 浮 上方 式 ,ラ ジ ア ル浮 上 方式 , 低 慣性 ス ラス ト 浮 上 方式 の 3 方 式に 於 い て, 209rad./s(2000rpm) に達 す る まで の x 軸 , z 軸 の最 大 のフ レ 量 の比 較 を行 っ た 結果 を 表 7-1-1 に 示す 。 3 方式 の x 軸, z 軸 フレ 比 較 表 7-1-1 セ ン タ統 合 化 を行 う こと に よ って 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の みが ,x 軸 ,z 軸 共 にフ レ 量 0.5mm 程 度 で , 両 者と も 1mm を 割 る こと が で きた 。 低 慣 性ス ラ ス ト浮 上 方式 の 当 初目 標 に対 す る 達成 状 況を 列 記 して み る。 定 常 速度 209rad./s 達成 加速度 105rad./s2 未達成 電 磁 誘 導 カッ プ リ ング の パワ ー 不 足で あ るの で,磁 気 回路 見 直 しで 達 成す る こ とが 可 能 浮 上 高さ ほ ぼ 5mm 確 保 フレ 0.2mm 以 下 チ ャ ン バの 構 成 可能 未達成 セ ン タ 統 合化 の 高 精度 化 が必 要 7.1.2 低 慣 性 スラ ス ト浮 上 方 式の 開 発 のポ イ ン ト 今 後 ,非 接 触 スピ ナ の実 用 化 を行 う 場合 に は ,特 性 の最 も 良 かっ た 低慣 性 ス ラ スト 浮 上 方式 を 採用 す る こと が 最善 の 方 法で あ る。 そ こ で, 低 慣性 ス ラ スト 浮 上方 式 の 開発 ポ イン ト に つい て まと め て おく 。 設 計 上の ポ イ ント ① ター ン テ ーブ ル の慣 性 モ ーメ ン トを で き るだ け 小さ く す る フ レ 低 減の 効 果が あ る 75 ② 電磁 誘 導 ブレ ー キを 使 用 する フ レ 低 減の 効 果が あ る ③ 電磁 誘 導 カッ プ リン グ を 使用 す る 吸 引 力 の変 化 がな く な るの で ,フ レ 低 減の 効 果が あ る 製 造 上の ポ イ ント ① セン タ の 統合 化 を行 う 以 上 の開 発 ポ イン ト の中 で , 特に セ ンタ の 統 合化 が 重要 で あ り, こ の統 合 化 の 出来 如 何 でス ピ ナの 性 能 が決 ま ると い っ ても 過 言で は な い。 7.2 今 後の 研 究 課題 7-2-1 課題 1 セ ン タ 統合 化 の高 精 度化 第 6 章で 述 べ た通 り ,セ ン タ 統合 化 の高 精 度 化は 必 須で あ る 。高 精 度化 の 例 を いく つ か 示し て いる が , 今後 実 装置 で の 確認 が 必要 と な る。 7-2-2 課題 2 重 心 調 整の 定 量化 セ ン タの 統 合 化の 調 整 2 で 重 心の 調 整を 行 っ てい る が, 重 心 調整 の 定量 化 が で きて い な い。今後 は 重 心位 置 と磁 気 セ ンタ の ズ レの 数 値 化の 研 究が 必 要 とな る。 7-2-3 課題 3 電 磁 誘 導カ ッ プリ ン グ調 心効 果 の 考慮 浮 上 体の 駆 動 方法 と して 電 磁 誘導 カ ップ リ ン グを 使 用す る と ,磁 気 カッ プ リ ン グほ ど 強 い吸 引 力は な く ,調 心 力も 内 外 輪で 駆 動す る こ とで キ ャン セ ル する 効 果が あ り ,本 研 究で は 無 視し て いる 。 し かし , 駆動 速 度 を上 げ れば 調 心 力は 必 ず しも ゼ ロ では な く ,x 軸 の フレ 波 形 に現 れ て い るよ う に ,ス タ ー 位 置と 定 常 速度 で 安 定し て いる 時 の 位置 が 若干 異 な るこ と から , 電 磁誘 導 カッ プ リ ンで も 調心 力 は 働い て いる 。 今後 , セ ンタ 統 合化 の 精 度が 向 上し た 時 に, 電 磁誘 導 カ ップ リ ング の セ ンタ も 無視 で き なく な り、 第 4 のセ ン タと し て 解析 を 進め な け れば な らな い 可 能性 も あり , 見 極め が 必要 で あ る。 76 参考 文 献 ( 1) 福 井 聡, 風 間亨 介 , 小川 純 ,岡 徹 雄 , 佐藤 孝 雄 ,反 町 聡, 斎 藤 公世 , 宮崎 紳 介 超伝 導 磁 気浮 上 を適 用 し たフ ォ トマ ス ク 洗浄 プ ロセ ス 用 非接 触 スピ ン 装 置の 研 究 開発 低温 工 学 ・超 伝 導学 会 講 演概 要 集, p.168,2010 ( 2) S. Fukui, K. Kazama, S. Sekiya, J. Ogawa, T. Oka, T. Sato, S. Sorimachi, K. Saito, S. Miyazaki Research and Development of non-contact spin processor for clean process in semiconductor-related-production system by applying HTS magnetic levitation IEEE Trans. Appl. Supercond., vol.20, no.3, pp.977-980, 2010 ( 3) K. Saito, S. Fukui, J. Ogawa, T. Oka, T. Sato Development and test of model apparatus utilizing HTS magnetic levitation for non-contact spinning clean-up processors of photo mask production IEEE Trans. Appl. Supercond., vol.21, no.3, pp.2241-2244, 2011 ( 4) K. Saito, S. Fukui, J. Ogawa, T. Oka, T. Sato Development and test of model apparatus of non-contact spin processor for photo mask production applying radial-type superconducting magnetic bearing Physica C, vol.484, pp.321-324 ( 5) 下 山 淳一 : 超伝 導 の 本 日 刊工 業 新 聞 社 ( 6) 田 辺 功, 竹 花洋 一 , 法元 盛 久: フ ォ ト マス ク 技 術 (7)前 田 和 夫: は じめ て の 半導 体 製造 装 置 77 工業 調 査 会 工 業調 査 会 謝辞 本 研 究 を終 え るに 当 た り,超伝 導 技 術の 基 礎 ,応 用 は勿 論 の こと ,電 磁 気 学,制 御工 学 , 機械 工 学 ,物 理 学等 の 幅 広知 見 で, 丁 寧 にご 指 導い た だ きま し た新 潟 大 学大 学 院 学研 究 科 自然科 福 井 聡准 教 授 に心 か ら感 謝 を 申し 上 げま す 。 また , 本 研究 中 にア ド バ イス を いた だ きま し た 岡徹 雄 教 授, 実 験等 で 貴 重な ご 意見 , ご 配慮 を 頂 きま し た佐 藤 孝 雄技 官 に深 く お 礼申 し 上げ ま す 。 さ ら に ,本 研 究に 於 け る実 験 機や 計 測 器の ご 提供 を い ただ く と共 に , 半導 体 製造 装 置 に 関す る ア ドバ イ スを い た だき ま した 株 式 会社 エ ムテ ー シ ーの 玉 木竹 男 会 長, 並 びに 実 験 機 の製 作 , 実験 等 に協 力 し てい た だい た 元 同僚 の 皆様 に 厚 くお 礼 申し 上 げ ます 。 平 成 25 年 7 月 斎藤 78 公世