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本発明は、インテグリン − MMP複合体の阻害剤となるペプチド化合物

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本発明は、インテグリン − MMP複合体の阻害剤となるペプチド化合物
JP 2006-527740 A 2006.12.7
(57)【 要 約 】
本発明は、インテグリン−MMP複合体の阻害剤となるペプチド化合物に関する。上記ペ
プチド化合物はペプチド配列 D/E−/D/E−G/L−W を含み、αM インテグリン
のIドメインに特異的に結合することによりαM インテグリンとproMMP−9との間
の複合体の形成を阻害し、こうして好中球遊走及び白血球遊走を阻止する。上記ペプチド
化合物は、炎症性病態及び白血病の治療において有用である。
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JP 2006-527740 A 2006.12.7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラペプチド配列 D/E−D/E−G/K−Wを有する化合物と薬学的に許容され
る担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
該テトラペプチド配列がDDGWであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成
物。
【請求項3】
白血球遊走に起因する病態の治療用医薬組成物の製造における、テトラペプチド配列
D/E−D/E−G/K−Wを有する化合物の用途。
10
【請求項4】
白血球遊走に起因する病態が白血病であることを特徴とする、請求項3に記載の用途。
【請求項5】
医薬組成物が、プロゼラチナーゼのβ2インテグリンへの接着の阻害剤であることを特
徴とする、請求項3に記載の用途。
【請求項6】
好中球遊走に起因する病態の予防用及び治療用医薬組成物の製造における、テトラペプ
チド配列 D/E−D/E−G/K−Wを有する化合物の用途。
【請求項7】
医薬組成物が、炎症性病態の予防剤及び治療剤であることを特徴とする、請求項6に記
20
載の用途。
【請求項8】
該テトラペプチド配列がDDGWであることを特徴とする、請求項3∼7のいずれかに
記載の用途。
【請求項9】
白血球遊走に起因する病態の治療処置または予防処置のための方法であって、テトラペ
プチド配列 D/E−D/E−G/K−Wを有する化合物を、処置を必要とする哺乳類に
対し、白血球遊走を阻害するのに有効な量を投与することを含む方法。
【請求項10】
好中球遊走に起因する病態の治療処置または予防処置のための方法であって、テトラペ
30
プチド配列 D/E−D/E−G/K−Wを有する化合物を、処置を必要とする哺乳類に
対し、好中球遊走を阻害するのに有効な量を投与することを含む方法。
【請求項11】
白血病の治療処置または予防処置のための方法であって、テトラペプチド配列 D/E
−D/E−G/K−Wを有する化合物を、処置を必要とする哺乳類に対し、白血病細胞の
遊走を阻害するのに有効な量を投与することを含む方法。
【請求項12】
炎症性病態の治療処置または予防処置のための方法であって、テトラペプチド配列 D
/E−D/E−G/K−Wを有する化合物を、処置を必要とする哺乳類に対し、好中球遊
走を阻害するのに有効な量を投与することを含む方法。
40
【請求項13】
該テトラペプチド配列がDDGWであることを特徴とする、請求項9∼12のいずれか
に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インテグリン−MMP複合体の阻害剤となるペプチド化合物に関する。具体
的には、上記ペプチド化合物は、αMインテグリンのIドメインに結合することによりαM
インテグリンとproMMP−9との間における複合体の形成を阻害し、こうして好中球
遊走及び白血球遊走を阻止する。上記ペプチド化合物は、炎症性病態及び白血病の治療に
50
(3)
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おいて有用である。
【背景技術】
【0002】
白血球インテグリンファミリーは、特徴的なα鎖(αL、αM、αX及びαD)と共通のβ
2
鎖(CD18)を有する4種のヘテロ二量体糖タンパク質からなり、免疫系における細
胞接着の仲介において非常に重要な役割を担う(参考文献1)。インテグリンの主要なリ
ガンド結合部位は、α鎖中の、200個のアミノ酸配列からなる「Iドメイン」又は「挿
入ドメイン」と呼ばれる部分に位置し、軟骨基質タンパク質やコラーゲンの繰返し配列で
あ る フ ォ ン ビ ル ブ ラ ン ト 因 子 ( von Willebrand factor) の A ド メ イ ン と 相 同 で あ る ( 参
考文献2)。
10
【0003】
β2インテグリン類のうち、αMβ2インテグリンは多種の無関連のリガンドと相互作用
することができる、最も幅広い結合対象を持つ結合タンパク質である。結合対象となるリ
ガンドの例としてはICAM−1∼5、補体断片iC3b、フィブリノゲン、uPAR、
E−セレクチンや様々な細胞外基質タンパク質などが挙げられる(参考文献3及びそこに
記載の引用文献を参照)。インテグリンには特定の酵素に対する結合能力があることもわ
かっているが、それが白血球接着と免疫反応のいずれにおいて重要なのかは明らかではな
い。そのようなインテグリン結合活性を示す酵素としては、カタラーゼ(参考文献4)、
ミエロペルオキシダーゼ(参考文献5)、及びエラスターゼ(参考文献6)やウロキナー
ゼ(参考文献7)などのプロテイナーゼが挙げられる。
20
【0004】
β2インテグリンのIドメインのリガンド結合部位の特定に関しては鋭意研究がなされ
たのに対し、相互作用相手となるリガンド側の結合領域についてはあまり知られていない
(参考文献8及び9)。近年、αLのIドメインとICAM−1からなる複合体の構造に
関する報告がなされている(参考文献10)。β2インテグリンに結合する低分子量ペプ
チドはインテグリン機能の研究にとって有用な試薬であり、ICAM−2(参考文献11
)、フィブリノゲン(参考文献12)及びCyr61(参考文献13)に由来する。本発
明者らはファージディスプレイライブラリーを用い、インテグリンのペプチド結合特異性
についての研究や、医薬としての可能性を有する先導化合物の開発を行った。本発明者ら
は過去の研究において、精製したαMβ2インテグリンに対する結合活性が最も高い結合ペ
30
プチドであるビス環状ペプチドCPCFLLGCC(LLG−C4)を単離した(本発明
者らによる未発表の考察)(参考文献14)。白血球は、固定化したLLG−C4ペプチ
ドに対しαMβ2インテグリンとαXβ2インテグリンを介して効率よく接着することができ
る。
【0005】
発明の概要 本発明者らは今回、精製したαMのIドメインにファージディスプレイスクリーニング
法を応用した。その結果、Iドメインに結合する新規なテトラペプチド配列であるD/E
−D/E−G/L−Wを同定するに至った。この配列は公知のいくつかのβ2インテグリ
ンリガンド中や、興味深いことにMMPの触媒ドメイン上にも見られるものである。本発
40
明者らは、D/E−D/E−G/L−W 配列がMMPとβ2インテグリンとの間の結合を
仲介すること、また、白血球の主要なMMPとして知られるproMMP−9ゼラチナー
ゼが、白血病細胞系の活性化に伴いαMβ2インテグリンやαLβ2インテグリンとの複合体
として現れることを本明細書中に示す。インテグリン−MMP複合体に対する上記ペプチ
ド阻害剤は白血病細胞の遊走を阻止するが、このことは細胞運動において上記複合体の果
た す 役 割 を 示 唆 し て い る 。 本 発 明 の ペ プ チ ド 化 合 物 は ま た 、 in vitro 及 び in vivo に お
いて多形核好中球(PMN)の遊走を弱めたが、このことはPMNの運動においてMMP
−インテグリン複合体の果たす役割を示唆している。
【0006】
発明の詳細な説明 50
(4)
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αMのIドメインに結合するペプチドについて分析を行ったところ、MMP群、特にM
MP−9プロゼラチナーゼとMMP−2プロゼラチナーゼが、β2インテグリンに対する
強力なリガンドであることを知見した。本発明者らの研究により、活性白血球の主要なM
MPであるproMMP−9はβ2インテグリンと共に細胞表面上に局在することが分か
っている。細胞表面への標識付けと共免疫沈降を行うと、白血病細胞系中に上記複合体が
産生されることがより確かに実証できる。こうして本発明者らは、このプロテイナーゼ−
インテグリン複合体が白血病細胞の遊走に関与する証拠を得たのである。
【0007】
全長インテグリンにファージディスプレイ法を応用した広範な分析がなされてきたが、
本発明者らの知る限り、単離したインテグリンIドメインに関してファージディスプレイ
10
法による選別が成功したケースは今回が初めてである。αMのIドメインは様々なリガン
ドを結合できるが、濃縮することができた結合配列はただ1つであった。本発明者らが単
離したペプチド配列はICAM−1、フィブリノゲン、LLG−C4などのリガンドと競
合するものではなかった。ファージディスプレイ法の成功は、用いるライブラリーの種類
や バ イ オ パ ニ ン グ ( biopanning) の 条 件 に 左 右 さ れ る も の で あ る 。 本 発 明 者 ら の 用 い た 方
法に関しては、D/E−D/E−G/L−W 配列を選別できる環状ペプチドとの「高親
和性」相互作用を用いるのが有利であった。興味深いことに、この配列はRGD配列を結
合するペプチドとしてファージディスプレイで単離されたCWDD(G/L)WLCペプ
チド(参考文献15)に酷似している。CWDDGWLCペプチドは、リガンドのRGD
配列を認識することによって、構造的かつ機能的に極小インテグリンのようなはたらきを
20
する。なお本明細書では、DDGWペプチドを逆の方向、即ちインテグリンに対するリガ
ンドとして同定している。しかし、RGD配列はαMのIドメインと競合するものではな
い。理由は、濃度1mMのGRGDSPペプチドではproMMP−9のIドメインへの
結合を阻害することができなかったためである(本発明者らによる未発表の考察)。
【0008】
DDGWの結合部位に関しては、iC3bとαMβ2インテグリンとの間の相互作用から
ヒ ン ト が 得 ら れ る 。 本 発 明 者 ら が 行 っ た pepspot分 析 の 結 果 、 i C 3 b ペ プ チ ド A R S N
LDEDIIAEENIはαMのIドメインに結合し、DDGWペプチドがその結合を阻
害したが、対照ペプチドARSNLDAAIIAEENIの方はαMのIドメインに結合
しなかった。iC3bペプチドがαMβ2インテグリンに効率よく結合するためには、複数
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の負電荷が隣り合う構造を有する配列DEDIIAEENIが必要となる。Iドメインの
中の補体タンパク質iC3b結合部位をマッピングしたところ、正に帯電したアミノ酸残
基K
2 4 5
がiC3bの結合に関与することが示された。この残基を変異させても、フィブ
リノゲンを認識するこのペプチドの結合作用には影響しない。このことは、DDGWペプ
チドがICAM−1やフィブリノゲンによって仲介される細胞接着を阻害できない理由と
なり得る。これらの知見から、残基K
2 4 5
がDDGWペプチド及びD/E−D/E−G/
L−W 配列に対する、正に帯電した接触部位であることが示唆される。
【0009】
本 発 明 者 ら が 行 っ た pepspot分 析 の 結 果 、 β 2 イ ン テ グ リ ン リ ガ ン ド の 中 に は 、 活 性 配 列
D/E−D/E−G/L−Wを含む種類があることがわかる。そのようなリガンドの例
40
としては、既に同定されているαMβ2リガンドであるiC3b、トロンボスポンジン−1
、及びミエロペルオキシダーゼやカタラーゼなどの酵素が挙げられる。本発明者らの実験
では、数種の分泌型MMP(膜結合型MT1−MMPではない)に由来するペプチドもま
た活性を有していた。D/E−D/E−G/L−W 配列が分泌型MMP中の比較的多く
に保存されていることは注目に価する。
【0010】
proMMP−9の触媒ドメイン内に主要なインテグリン結合部位が発見できたのは意
外だったが、それは過去の研究の結果、MMPの別のドメインであるヘモペキシンドメイ
ンがインテグリン結合において重要な役割を担うことが示唆されていたためである。ヘモ
ペキシンドメインはMMP−2のαVβ3インテグリンへの結合、及びMMP−1のα2β1
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インテグリンへの結合を仲介する。また、MMP−2から切り離されたヘモペキシンドメ
イ ン も 、 in vivoに お い て 脈 管 形 成 を 阻 害 す る こ と が 示 さ れ て い た た め で あ る 。 も ち ろ ん
、 フ ァ ー ジ ペ プ チ ド デ ィ ス プ レ イ や pepspot技 術 で 出 来 る こ と に も 限 界 が あ り 、 ペ プ チ ド
一次配列の分析は可能でもタンパク質の立体構造までは分析できない。従って、今回の研
究では個々のMMP−9ドメインがインテグリン結合において果たす機能について結論付
け る こ と は で き ず 、 M M P − 9 の 切 断 産 物 で あ る 断 片 が in vivoに 存 在 す る と し て 、 β 2 イ
ンテグリンのリガンドとしてはたらくことが可能か否かについてはまだ分からない。本発
明者らの研究の結果、合成DDGWペプチドがインテグリン結合を完全に阻害することが
できたため、全長proMMP−9がβ2インテグリンに結合するには触媒ドメイン中の
ペプチド配列が必須不可欠であることがわかる。αMβ2は変性タンパク質に結合すること
10
が知られているが、細菌を用いて発現されたタンパク質の場合しばしば変性が起こり得る
ため、今回天然のproMMP−9を用いることは重要であった。また、DELW(T/
S)LG配列は活性酵素中では変化しないはずだが、活性化したMMP−2やMMP−9
とインテグリンとの間の結合は見られなかった。むしろ、proMMP−9の活性化剤で
あるAMPAとトリプシンがTHP−1細胞からMMP−9を脱離させ、インテグリン複
合体に影響を及ぼすらしいことを知見した(本発明者らによる未発表の考察)。これらの
結果は、活性酵素に比べ酵素前駆体の方がより効率良くインテグリン結合部位を提示でき
ること、また、β2インテグリンは酵素前駆体の活性化を制御する可能性さえ秘めている
ことを示唆している。
【0011】
20
proMMP−2とproMMP−9の3次元構造においては、Iドメイン結合部位は
触 媒 ド メ イ ン と II型 フ ィ ブ ロ ネ ク チ ン 繰 返 し 配 列 の 間 の 、 亜 鉛 結 合 触 媒 配 列 で あ る H E F
GHALGLDHの近傍に位置する。Iドメイン結合部位がこの位置にあることで、MM
P の 組 織 性 阻 害 剤 ( tissue inhibitors of MMPs) ( T I M P s ) や α 2 − マ ク ロ グ ロ ブ リ
ンによるproMMP−9の阻害を回避するメカニズムが説明できる。阻害剤が存在しな
いとき、細胞表面に局在するproMMP−9は容易に活性化されて基質を加水分解する
が 、 こ れ は 全 長 ( intact) の プ ロ ペ プ チ ド の 存 在 下 で も 起 き 得 る 現 象 で あ る 。 ま た 、 I ド
メ イ ン の 結 合 部 位 は 触 媒 溝 ( catalytic groove) の 近 傍 に 位 置 す る た め 、 C T T や I n h
1など小さな分子からなるMMP阻害剤がMMP−9とβ2インテグリンとの間の相互作
用を阻害するメカニズムも説明できる。
30
【0012】
THP−1細胞遊走アッセイにおけるDDGWペプチドの活性は、白血球遊走における
インテグリン−プロゼラチナーゼ複合体の果たす重要な役割を示唆している。ただし、D
DGWペプチドがゼラチナーゼ以外のリガンドの結合を阻害することによって白血球遊走
を阻害する、という可能性は明らかに除外できない。しかし、ゼラチナーゼ特異的阻害剤
であるCTTもTHP−1細胞遊走を阻害するため、上記の結果はproMMP−9とβ
2
インテグリンとの複合体がDDGWの主な標的であることを強く示唆するものである。
興味深いことに、DDGWペプチドは培地中のproMMP−9のレベルを高めたにも関
わらずTHP−1細胞遊走を阻害した。これは即ち、MMP−9の総合レベルよりも細胞
表面接着の方が細胞遊走における決定要素となることを示唆している。
40
【0013】
D D G W と H F D D D E ( 略 語 に つ い て は 下 記 参 照 ) は マ ウ ス の in vivoに お け る 腹 膜
炎モデルにおいて高い活性を示したが、いずれのペプチドも別な種類のβ2インテグリン
リガンドを阻害する潜在能力も有するため、上記の活性がどの程度までproMMP−9
の阻害に起因するのかは不明である。β2インテグリンリガンドの中にはDDGW様配列
を有するものがあり、そのようなリガンドにはMMPの他に少なくとも補体iC3bとト
ロ ン ボ ス ポ ン ジ ン − 1 が 含 ま れ る 。 D D G W ペ プ チ ド の 優 れ た in vivo活 性 は 、 白 血 球 遊
走に関与する成分の研究手段として有用であるが、このペプチドは抗炎症剤化合物の開発
のための先導化合物と見なすこともできる。本発明者らの得た結果から、特定のβ2イン
テグリンが指揮する好中球の運動機構の一部を、proMMP−9とαMβ2との複合体が
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構成している可能性が示唆される。
【0014】
従って本発明は、新規なペプチド化合物に関し、さらに詳しくは、テトラペプチド配列
D/E−D/E−G/L−Wを有するペプチド化合物に関する。上記ペプチド化合物は
、白血球遊走及び好中球遊走を阻害するための医薬として用いることができる。そのよう
な 阻 害 活 性 は in vitro と in vivo の 実 験 の 両 方 で 示 さ れ た 。 従 っ て 、 上 記 ペ プ チ ド 化 合
物は白血病の治療及び炎症性病態の予防と治療において有用である。
【0015】
本発明の1つの態様においては、好中球遊走に起因する病態の予防用及び治療用医薬組
成物の製造における、本発明の化合物の用途が開示される。
10
【0016】
本発明の他の1つの態様においては、白血球遊走に起因する病態の治療用医薬組成物の
製造における、本発明の化合物の用途が開示される。
【0017】
本発明のさらなる1つの態様においては、有効成分としての本発明の化合物と、薬学的
に許容される担体とを含んでなる医薬組成物が開示される。
【0018】
本発明のさらなる1つの態様においては、白血球遊走または好中球遊走に起因する病態
の治療処置または予防処置のための方法であって、白血球遊走または好中球遊走の阻害剤
である本発明の化合物を、処置を必要とする哺乳類に対し、白血球遊走または好中球遊走
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を阻害するのに有効な量を投与することを含む方法、が開示される。本発明の具体的態様
には、白血病及び炎症性病態の治療方法が含まれる。
【0019】
本願で使用する略語 APMA 酢酸アミノフェニル第二水銀
αMβ2 CD11b/CD18またはMac−1インテグリン
CTT CTTHWGFTLCペプチド
DDGW ADGACILWMDDGWCGAAGペプチド
GPA グリコールホリンA
GST グルタチオン−S−トランスフェラーゼ
30
HMEC ヒト微小血管内皮細胞
ICAM 細胞間接着分子
Inh1 マトリックスメタロプロティナーゼ阻害剤1
KKGW ADGACILWMKKGWCGAAGペプチド
LLG−C4 CPCFLLGCCペプチド
MMP マトリックスメタロプロティナーゼ
NGAL 好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン
PMN 多形核好中球
RGD−C4 ACDCRGDCFCGペプチド
STT STTHWGFTLCペプチド
40
TAT−2 腫瘍関連トリプシノゲン−2
W→A CTT CTTHAGFTLCペプチド
【0020】
なお本明細書中、発明の背景技術を説明するため、また、特に本発明の実施態様に関す
る詳細を補うために言及又は使用する各種刊行物及びその他の文献は、言及したことによ
り本明細書中に組み込まれたものとする。以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説
明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
抗体と試薬 50
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抗体MEM170とLM2/1は、αMインテグリンサブユニットに対する抗体であり
、抗体MEM−83とTS2/4は、αLインテグリンサブユニットに対する抗体である
(参考文献19、20)。モノクローナル抗体7E4(参考文献21)は白血球インテグ
リンの共通β2鎖と反応した。αM抗体OKM10はアメリカン・タイプ・カルチャー・コ
レクション(メリーランド州、ロックビル、ATCC)より入手した(参考文献22)。
ICAM−5に対するモノクローナル抗体(TL3)(参考文献23)は対照抗体として
用 い た 。 抗 M M P − 9 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( G E − 2 1 3 ) は Lab Vision Corporation(
カルフォルニア州、フリーモン)から入手し、抗MMP−2モノクローナル抗体(Ab−
3 ) は Oncogene
T M
research productsか ら 入 手 し た 。 ア フ ィ ニ テ ィ 精 製 さ れ た ウ サ ギ 抗 M
M P − 9 ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗 体 は Borregaard laboratory( 参 考 文 献 2 4 ) か ら 入 手 し た 。
10
対 照 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 と し て 、 マ ウ ス I g G ( オ ー ス ト ラ リ ア 国 、 ホ ー ソ ン 、 Silenius
製)および抗グリコホリンA(GPA)(ATCC)を用いた。抗トリプシノゲン−2(
TAT−2)抗体をウサギポリクローナル抗体の対照とした(参考文献32)。ペルオキ
シ ダ ー ゼ 結 合 抗 G S T モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 は Santa Cruz Biotechnologyか ら 入 手 し た 。 ウ
サ ギ 抗 マ ウ ス 西 洋 ワ サ ビ ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 結 合 二 次 抗 体 は Dakopatts a/s ( デ ン マ ー ク 国
、コペンハーゲン)から入手した。Inh1(2R−2−(4−ビフェニルイルスルフォ
ニル)アミノ−N−ヒドロキシ−プロピオンアミド)はカリフォルニア州、ラ・ホーヤ、
Calbiochemよ り 購 入 し た 。 ヒ ト 組 換 え I C A M − 1 は R&D systems( ミ ネ ソ タ 州 、 ミ ネ ア
ポリス)から購入した。ICAM−1−Fc融合タンパク質は、チャイニーズハムスター
の卵巣細胞に発現させ、公知の方法(参考文献14)で精製した。合成ペプチドCTT、
20
STT、LLG−C4およびRGD−4Cは公知の方法(参考文献14、25)で得た。
W → A C T T は フ ラ ン ス 国 、 ス ト ラ ス ブ ー ル 、 Neosystemか ら 入 手 し た 。 P r o M M P −
2 お よ び p r o M M P − 9 は 購 入 し た ( Roche製 ) 。 ザ イ モ グ ラ フ ィ ー で は 、 市 販 の p r
oMMP−9が92kDaのモノマーのバンド、200kDaのホモダイマーのバンドお
よび120kDaのNGAL複合体のバンドを示した。インテグリンα1β1およびα3β1
は Chemicon International( カ ル フ ォ ル ニ ア 州 、 テ メ キ ュ ラ ) か ら 購 入 し た 。 ヒ ト プ ラ ズ
マ フ ィ ブ リ ノ ゲ ン お よ び ロ バ ス タ チ ン は Calbiochemか ら 入 手 し た 。
【0022】
ファージディスプレイ法 ファージディスプレイ法による選択をランダムペプチドCX7-10CおよびX9-10(但し
30
、Cはシステインを表し、Xは任意のアミノ酸を表す(参考文献14、25))のプール
を用いて行った。端的に言うと、αM Iドメイン−GST融合タンパク質またはGST融
合タンパク質を、20μg/mlの濃度でマイクロタイターウェルに固定化し、ウェルを
BSAでブロッキングした。ファージライブラリーのプールをまずGSTで被覆したウェ
ルでサブトラクションに付し、その後結合していないファージを、50mM Hepes
/5mM CaCl2/1μM ZnCl2/150mM NaCl/2% BSA(pH7.
5)を入れたαMIドメイン−GST−被覆ウェルに移しかえた。サブトラクションと選
択を3回行った後、個々のファージクローンを結合特異性について試験し、Iドメインに
特異的に結合するファージの配列を決定した(参考文献14)。
【0023】
40
ペプチドの生合成および化学合成 まず、ファージペプチドをインテイン融合体として生合成的に調製する。上記ペプチド
をコードするDNA配列を、ファージを含有する細菌コロニー(−20℃で保存)の1μ
lからPCRでクローニングした。フォワードプライマーは5’−CCTTTCTGCT
CTTCCAACGCCGACGGGGCT−3’、リバースプライマーは5’−ACT
TTCAACCTGCAGTTACCCAGCGGCCCC−3’であった。PCR条件
は、初期変性を94℃で2分間行い、その後94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で
3 0 秒 を 3 0 サ イ ク ル 行 う こ と を 包 含 し た 。 P C R 産 物 を QIAGEN製 ヌ ク レ オ チ ド 除 去 ユ ニ
ッ ト ( Nucleotide removal kit) を 用 い て 精 製 し た 。 そ の 後 、 P C R 産 物 を SapI制 限 酵 素
お よ び PstI制 限 酵 素 で 消 化 し 、 同 様 に 消 化 し て フ ォ ス フ ァ タ ー ゼ で 処 理 し た p T W I N ベ
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ク タ ー ( New England Biolabs製 ) に ラ イ ゲ ー ト し た 。 D N A 配 列 決 定 に よ っ て 、 正 し く
挿 入 さ れ て い る こ と を 確 認 し た 。 イ ン テ イ ン 融 合 タ ン パ ク 質 を E. coli E R 2 5 6 6 株 に
おいて製造し、実質的に公知の方法(参考文献26)によりキチンカラムでアフィニティ
精製した。ペプチドを上記カラムで開裂、溶出させ、最後にHPLCで精製した。化学的
ペ プ チ ド 合 成 は 公 知 の F m o c 化 学 手 法 ( Fmoc-chemistry) を 用 い て 行 い 、 配 列 は 質 量 分
析(参考文献26)によって確認した。
【0024】
ファージ結合アッセイ 5 0 m M H e p e s / 5 m M C a C l 2 / 1 μ M Z n C l 2 / 0 .5 % B S A ( p H
8
7 .5 ) に 入 れ た フ ァ ー ジ ( 1 0 個 の 感 染 粒 子 / ウ ェ ル ) を I ド メ イ ン − G S T 融 合 体 ま
10
たはGST(20ng/ウェル)で被覆したマイクロタイターウェルに注入した。ファー
ジを競合ペプチド(15μM)の存在下または非存在下で1時間結合させ、0.05%
Tween 20含有PBSで洗浄した。結合したファージは、1:3000に希釈した
ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 標 識 抗 フ ァ ー ジ モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 ( Amersham Biosciences製 ) お よ び
基質としてo−フェニレンジアミンジヒドロクロライドを用いて検出した。反応を10%
H2SO4を添加することによって停止し、492nmでの吸光度をマイクロプレートリ
ーダーを用いて測定した。
【0025】
Pepspot ペプチドを公知の方法(参考文献27)でセルロース膜上に合成した。この膜を3%
20
BSAの0.05%Tween 20含有TBS溶液でブロッキングし、0.5∼5μg
/mlのαMIドメインと共に、室温で2時間インキュベートした。DDGWペプチドを
競合ペプチドとして50μMの濃度で用いた。結合したαM Iドメインをモノクローナル
抗体であるLM2/1(1μg/ml)またはMEM−170(5μg/ml)およびペ
ルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウス抗体(1:5000希釈)を用いて検出し、続いて化
学 発 光 検 出 ( chemiluminescence detection) を 行 っ た 。
【0026】
細胞培養物 ヒトHT1080繊維肉腫細胞系およびTHP−1白血病細胞系およびジャーカット白
血病細胞系はATCCから入手し、公知の方法で維持した(参考文献20、25、28)
30
。 A M L 患 者 の 初 期 芽 球 ( primary blasts) 由 来 の O C I / A M L − 3 ( 参 考 文 献 2 9 )
をL−グルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシン添加10% FBS/RPMI
中 で 維 持 し た 。 細 胞 生 存 率 を 、 製 造 者 ( Roche) の 説 明 書 に 従 っ て M T T ( 3 − [ 4 ,5 −
ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニル テトラゾリウム ブロマイド)ア
ッセイで評価した。
【0027】
インテグリンの精製 αLβ2インテグリン(CD11a/CD18、LFA−1)、αMβ2インテグリン(C
D11b/CD18、Mac−1)およびαXβ2インテグリン(CD11c/CD18)
をヒト血液バフィーコート細胞溶解物から、プロテインA−セファロース CL 4Bに連
40
結した抗CD11a抗体(TS2/4)、抗CD11b抗体(MEM170)、または抗
C D 1 1 c 抗 体 ( 3 .9 ) へ の 吸 着 に よ っ て 精 製 し た 。 イ ン テ グ リ ン を 、 2 m M の M g C
l2、および1%のn−オクチルグルコシドの存在下に、pH11.5で、公知の方法(
参考文献28)で溶出した。
【0028】
GST融合タンパク質の発現と精製 α L 、 α M 、 お よ び α X の I ド メ イ ン を G S T 融 合 タ ン パ ク 質 と し て E. coli株 B L 2 1
ま た は J M 1 0 9 を 用 い て 製 造 し 、 グ ル タ チ オ ン 結 合 ビ ー ズ ( glutathione-coupled bead
s) を 用 い た ア フ ィ ニ テ ィ ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ っ て 精 製 し た ( 参 考 文 献 3 0 、 3 1 )
。C末端にCTTを含むGSTを、LLG−C4−GSTに関する公知のプロトコール(
50
(9)
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参考文献14)を用いて構築し、精製にはグルタチオン結合ビーズを用いた。GST−融
合タンパク質の純度を、SDS−PAGEとクマシーブルー染色、およびウェスタンブロ
ッ ト 分 析 に よ り 確 認 し た 。 Pepspot分 析 の た め に 、 ト ロ ン ビ ン を 用 い て G S T を α M I ド メ
インから切り離した。
【0029】
精製したインテグリンへのMMPの結合 精製したIドメイン(GST−αM、GST−αL、GST−αX)またはインテグリン
(αMβ2、αLβ2、αXβ2、α1β1)(1μg/ウェル)を20mM Tris/150
m M N a C l / 1 m M C a C l 2 / 1 m M M g C l 2 / 1 m M M n C l 2 (p H 7 .4 )中
で固定化した。ウェルをPBST(0.05% Tween 20を含有する10mM リ
10
ン 酸 塩 / 1 4 0 m M N a C l (p H 7 .4 )) で 洗 浄 し 、 3 % B S A の P B S T 溶 液 で ブ
ロッキングした。proMMP−2、proMMP−9、またはp−酢酸アミノフェニル
第二水銀(APMA)或いはトリプシン活性型(参考文献32)を室温で2時間インキュ
ベートした。阻害実験においては、CTTおよびInh1をまずproMMPと共に室温
で30分間プレインキュベートした。ウェルを3回洗浄し、2μg/mlの濃度の抗MM
P−9抗体(GE−213)または抗MMP−2抗体(Ab−3)と共に、PBST中で
1時間インキュベートした。結合した抗体をペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウスIgG
(デンマーク国、グロストルップ、DAKO)と、基質としてo−フェニレンジアミン
ジヒドロクロライドを用いて検出した。
【0030】
20
β2インテグリンおよびプロゼラチナーゼの共沈 proMMP−2およびproMMP−9を含有する無血清ならし培地を、100nM
ホルボールエステルである4β−ホルボール 12,13−ジブチレート(PDBu)(
ミ ズ ー リ 州 、 セ ン ト ル イ ス 、 Sigma-Aldrich製 ) の 存 在 下 に + 3 7 ℃ で 一 晩 生 育 し た ヒ ト
HT−1080繊維肉腫細胞から採取した。500μl量の上清を100ngのGST−
αMIドメイン、GST−αLIドメインまたはGST−αXIドメイン、或いはαMβ2イ
ンテグリンと共に25℃で3時間インキュベートした。GSTおよびGST−LLG−C
4を非特異的結合を測定するために用いた。CTT、STT、LLG−C4およびICA
M−1を200μg/mlの濃度で競合ペプチドとして用い、そして抗体LM2/1およ
びTL3を40μg/mlの濃度で用いた。+4℃で1時間インキュベートした後、Iド
30
メインとゼラチナーゼの複合体をグルタチオンセファロースと共にペレット化した。イン
テグリン複合体を、まずOKM10抗体と共に+4℃で3時間、次にプロテインG セフ
ァロースと共に1時間インキュベートすることによって捕捉した。遠心分離および洗浄の
後、試料を、0.2% ゼラチン含有8% SDS−ポリアクリルアミドゲルを用いたゼラ
チンザイモグラフィーで分析した(参考文献32)。
【0031】
proMMP−9の細胞からの脱離に対するペプチドの効果 T H P − 1 細 胞 ( 4 0 ,0 0 0 個 / 1 0 0 μ l ) を 無 血 清 R P M I 培 地 で 、 2 0 0 μ M
の本発明のペプチドの存在下または非存在下で48時間、公知の方法でインキュベートし
た。ならし培地の一部をゼラチンザイモグラフィーで分析した。
40
【0032】
CTTとproMMP−9との相互作用 CTT−GSTおよび対照GST(5μg/ウェル)を一晩かけて50μlのTBS中
で96−ウェルマイクロタイタープレートに被覆し、BSAでウェルをブロッキングした
。proMMP−9またはAPMA活性型(80ng/ウェル)を1% BSA/5mM
CaCl2/1μM ZnCl2を含有する50μM Hepes緩衝液(pH7.5)中で
、競合ペプチドの存在下または非存在下で2時間インキュベートした。洗浄の後、抗MM
P−9およびHRP結合抗マウスIgGを用いて、結合したMMP−9を上記のように測
定した。細胞培養におけるCTTのproMMP−9との複合体形成を試験するために、
THP−1細胞をPDBuで30分間活性化させ、その後CTT、 W→A CTTまたは
50
(10)
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Inh1(それぞれ200μM)と共に+37℃で無血清培地でインキュベートした。0
、1、2、3、4、および5時間の時点で培地から試料を取り、ザイモグラフィーと抗M
MP−9ポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロット法で分析した。HT−1080
細胞を用いた実験を、培地試料を6時間後に採取した以外は同様に行った。
【0033】
細 胞 表 面 標 識 化 ( Cell surface labelling) 、 免 疫 沈 降 お よ び 免 疫 ブ ロ ッ ト 法 7
非活性化またはPDBuにより活性化したTHP−1細胞(1x10 個)を、トリチ
ウ ム 化 ホ ウ 水 素 化 ナ ト リ ウ ム の 過 ヨ ウ 素 酸 塩 ( periodate tritiated sodium borohydride
3
)を用いて表面標識化した(参考文献33)。[ H]標識細胞を1%(v/v)Tri
ton X−100のPBS溶液で溶解し、遠心分離で澄ませて、プロテインG−セファ
10
ロ ー ス で 予 備 清 掃 ( preclear) し た 。 上 記 で 得 た 溶 解 物 を 抗 M M P − 9 ポ リ ク ロ ー ナ ル 抗
体、αM抗体(OKM−10)またはβ2抗体(7E4)で免疫沈降した。プロテインG−
セファロースと共に1時間+4℃でインキュベートした後、免疫複合体をペレット化し、
洗 浄 し 、 8 ∼ 1 6 % S D S − P A G E ゲ ル ( カ リ フ ォ ル ニ ア 州 、 ハ ー キ ュ リ ー ズ 、 Bio-R
ad製 ) 上 で ほ ぐ し た 。 ゲ ル を エ ン ハ ン サ ー ( Amplify、 Amersham Biosciences製 ) で 処 理
7
し、乾燥して曝露した。非標識THP−1細胞(1×10 個)を上記と同様に溶解し、
免疫沈降した。得られた試料を4∼15% SDS−PAGEゲル上でほぐし、ニトロセ
ルロース膜に転写した。免疫検出をαM抗体(MEM170)(10μg/ml)を用い
て お こ な っ た 後 、 ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ 結 合 抗 マ ウ ス I g G と 化 学 発 光 に よ る 検 出 ( Amersham
Biosciences製 ) を 行 っ た 。 結 合 し た 抗 体 を 膜 か ら 除 去 し 、 α L 鎖 モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 (
20
TS2/4)または抗MMP−9ポリクローナル抗体でリプローブした。
【0034】
免疫蛍光法 免疫蛍光法を休止細胞またはPDBuで30分間活性化した細胞に対して行った。これ
らの細胞の一部を、ICAM−1で処理してβ2インテグリンを、またはCTTで処理し
てゼラチナーゼをブロッキングした。細胞をポリ−L−リシンで被覆したカバーガラスに
結合させ、メタノールを用いて−20℃で10分間、或いは4%パラホルムアルデヒドを
用いて+4℃で15分間固定化し、0.1% Triton X−100のPBS溶液を用
いて、室温で10分間透過処理し、数回洗浄した。上記カバーガラスを、1:500に希
釈したウサギ抗MMP−9ポリクローナル抗体およびマウス抗αM抗体(OKM−10)
30
と共にインキュベートした。PBSで洗浄した後、二次抗体であるローダミン(TRIT
C)結合ブタ抗ウサギ抗体、またはFITC結合ヤギ抗マウス抗体(Fab’)2(デン
マ ー ク 国 、 コ ペ ン ハ ー ゲ ン 、 Dakopatts a/s製 ) を 1 : 1 0 0 0 に 希 釈 し た も の と 室 温 で
3 0 分 間 イ ン キ ュ ベ ー ト し た 。 試 料 を モ ヴ ィ オ ー ル ( moviol) で 封 入 し 、 暗 所 で 2 日 間 イ
ンキュベートし、共焦点顕微鏡(ライカ マルチバンド共焦点イメージングスペクトロフ
ォ ト メ ー タ ー ( Leica multi band confocal imagine spectrophotometer) ) で 4 0 0 倍
の 倍 率 で 、 或 い は 蛍 光 顕 微 鏡 ( Olympus Provis 70) で 6 0 倍 の 倍 率 で 調 べ た 。
【0035】
好中球調製物および細胞系 多形核好中球(PMN)を、クエン酸デキストロース中で抗凝固処理された末梢血から
40
単離した。赤血球を2%デキストランT−500を用いて遠心分離で沈殿させ、得られた
白 血 球 を 多 く 含 有 す る 上 清 を ペ レ ッ ト 化 し 、 生 理 食 塩 水 に 再 懸 濁 し 、 リ ン ホ プ レ ッ プ ( Ly
mphoprep) ( ノ ル ウ ェ ー 国 、 オ ス ロ 、 Nyegaard製 ) を 用 い て 、 4 0 0 g で 3 0 分 間 遠 心 分
離し、多形核細胞を血小板および単核球から分離した(参考文献16)。PMNの純度は
95%より高く、典型的に好酸球の比率は2%より低い。細胞生存率を、MTT(3−[
4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニル テトラゾリウムブロマ
イ ド ) ア ッ セ イ を 製 造 者 ( Roche) の 説 明 書 に 従 っ て 用 い て 測 定 し た 。
【0036】
S. Mustjoki( ヘ ル シ ン キ 大 学 、 ハ ー ト マ ン イ ン ス テ ィ テ ュ ー ト ) よ り 寄 贈 さ れ た ヒ
ト微小血管内皮細胞(HMEC−1)(参考文献17)を、RPMI 1640中で、2
50
(11)
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mM グルタミン/100IU/ml ペニシリン/100 μg/ml ストレプトマイシ
ンを含有する10% FBSの存在下で生育した。ヒト単球性THP−1細胞を公知の方
法(参考文献14、25)で維持した。1型白血球接着不全症(LAD−1)細胞、野生
型 お よ び α M β 2 − ト ラ ン ス フ ェ ク ト 型 L 9 2 9 マ ウ ス 線 維 芽 細 胞 は Dr. Jean-Pierre Cart
ron( フ ラ ン ス 国 、 パ リ 、 INSERM) か ら の 寄 贈 で あ る 。 こ れ ら の 細 胞 を 、 公 知 の 方 法 ( 参
考文献18)で維持し、αMβ2の発現を蛍光活性化細胞分類法(FACS、カルフォルニ
ア 州 、 サ ン ホ セ 、 Becton Dickinson) に よ っ て 試 験 し た 。
【0037】
細胞接着および細胞遊走 フィブリノゲンおよびICAM−1−Fcを40μg/mlで、+4℃のTBS中で被
10
覆した。ペプチド(2μg/ウェル)を、+37℃で、0.25% グルタルアルデヒド
含有TBS中で被覆した。ウェルを1% BSAのPBS溶液でブロッキングした。PD
Buにより活性化した、またはしていないTHP−1細胞(50,000個/ウェル)を
、50 μg/mlの200μM ペプチドまたはモノクローナル抗体の存在下または非存
在下に、0.1% BSA−RPMI培地に添加する。30∼35分後に、ウェルをPB
Sで洗浄して非接着細胞を除去し、接着細胞をフォスファターゼアッセイで定量した。細
胞遊走アッセイを、公知の血清含有培地(参考文献14)でトランスウェル遊走チェンバ
ー ( transwell migration chambers) ( 孔 サ イ ズ : 8 μ m 、 Costar製 ) を 用 い て 行 っ た 。
端的に言うと、膜の上部表面と下部表面を40μg/mlのGSTまたはLLG−C4−
GSTで被覆するか、或いは被覆しなかった。ウェルを10% 血清含有培地で2時間ブ
20
ロッキングした。THP−1細胞(50,000個/100μl)またはHT1080(
20,000/100μl)をペプチドと共に1時間プレインキュベートし、上室に移し
た。下室はペプチドを有さない500μlの培地を含有する。細胞を膜の下部表面へ16
時間遊走させ、クリスタルバイオレットで染色して数えた。
【0038】
MMP−9タンパク質(200nM PBS溶液)を+4℃で16時間被覆し、マイク
ロタイターウェルを3% BSAのPBS溶液で、室温で1時間ブロッキングした。αMβ
2
インテグリン L−細胞トランスフェクタントおよびPMN(1×10
5
細胞/ウェル)
を2mM MgCl2と0.1%BSAを添加したRPMI培地に懸濁し、PMA(20n
M)で20分間活性化、或いはC5a(50nM)またはTNF−α (10nM)で+
30
37℃で4時間活性化する。L926野生型およびLAD−1細胞を対照として用いた。
細胞を、上記の抗体(20μg/ml)またはペプチド(50μM)で、+37℃で30
分間処理し、無血清倍地で2回洗浄し、マイクロタイターウェル中で、+37℃で30分
間インキュベートした。ウェルをPBSで洗浄し、接着細胞の数をフォスファターゼアッ
セイで定量した(参考文献14)。
【0039】
P M N に は 孔 サ イ ズ が 3 μ m の 、 T H P − 1 細 胞 に は 8 μ m の Costar製 2 4 − ト ラ ン ス
ウ ェ ル 遊 走 チ ェ ン バ ー ( 24-transwell migration chambers) を 用 い て 細 胞 遊 走 を 行 っ た
。β2インテグリンに指揮される遊走を研究するため、チェンバーの膜の両面をLLG−
C4−GSTインテグリンリガンド(40μg/ml)または対照としてGSTで被覆し
40
、上記の10%血清含有培地でブロッキングした。内皮貫通遊走を研究するために、コン
フルエントなHMEC(4×10
5
細胞/ウェル)をゼラチンで被覆した膜の上側で5日
間生育した。3日後に培地を交換した。PBSでHMEC層を2回洗浄した後、C5a(
50nM)、TNF−α(10ng/ml)、または培地のみを下室に添加して化学走性
活性化を+37℃で4時間行った。その後、培養物を再度2回洗浄して全ての試薬を除去
した。PMNまたはTHP−1細胞を、研究したペプチド阻害剤または抗体と1時間プレ
インキュベートし、上室へ移動した(100μl RPMI/0.1%BSAまたは10
5
%FCS含有完全培地中に1×10 個)。PMNをLLG−C4−GST被覆膜を通し
て2時間、HMEC単分子層を通して30分間遊走させた。THP−1細胞を16時間遊
走させた。遊走しなかった細胞を上部表面から綿棒で除去し、フィルターを通過した細胞
50
(12)
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をクリスタルバイオレットで染色して数えた。
【0040】
マウス炎症モデル 31∼32週齢のBalb/cマウスの腹腔内に、3%(w/v)チオグリコレートの
無菌生理食塩水を注射した(参考文献36)。ペプチド(100μl中に5∼500μg
)を尾静脈に注射した。3時間後に動物を安楽死させ、腹膜細胞を、10mlの無菌PB
Sを腹膜壁より注射することによって採取した。洗浄液中に存在する赤血球細胞を低張溶
解 法 ( hypotonic lysis) に よ り 除 去 し た 。 細 胞 を 遠 心 分 離 機 に か け 、 1 m l の 無 菌 0 .
25% BSA/クレブズ−リンガー溶液に再懸濁した。上清も採取しゼラチンザイモグ
ラフィーで分析した。0.1%クリスタルバイオレットで染色し、100倍の対物レンズ
10
を備えた光学顕微鏡を用いて好中球の数を定めた。免疫蛍光染色をするために、細胞をポ
リ−L−リシン被覆カバーガラスに結合させ、2.5% パラホルムアルデヒドのPBS
溶液を用いて+4℃で30分間固定化し、数回洗浄した。Fcレセプターを20%のウサ
ギ血清および3% BSAのPBS溶液の存在下でブロッキングした。その後細胞を抗M
MP−9ポリクローナル抗体およびαMモノクローナル(MCA74)抗体と30分間イ
ンキュベートした。PBSで洗浄した後、二次抗体であるローダミン(TRITC)結合
抗ウサギ抗体またはFITC結合抗ラット抗体(Fab’)2とさらに30分間インキュ
ベートした。試料を共焦点顕微鏡で調べた。動物実験はヘルシンキ大学倫理委員会の承認
を得た。
【0041】
20
結果
αMIドメイン結合ペプチド配列D/E−/D/E−G/L−Wの同定 本発明者らは、ファージペプチドディスプレイライブラリーを用いて、αMIドメイン
と相互作用するペプチドを選択した。まず、GST結合ファージをGSTで被覆したウェ
ル上で除去し、結合していないファージ調製物をαMIドメイン−GST融合タンパク質
で被覆したウェルでインキュベートした。αMIドメイン結合ファージをバイオパニング
を3回行って濃縮し、ペプチド配列を決定した。1つの線状ペプチドを除けば、ペプチド
は環状のCX7CライブラリーおよびCX8Cライブラリーに由来するものであった。Iド
メイン結合配列は、保存された配列を1つだけ示したが、これはIドメインが幅広いリガ
ンドに結合することが知られているという点から見るといくぶん意外な発見であった。結
30
合したペプチドは2個の連続した負に帯電したアミノ酸、即ち、グルタミン酸残基および
/またはアスパラギン酸残基、続いてグリシン残基およびトリプトファン残基(図1−1
のA)を含んでいた。この方法で決定したコンセンサス配列 D/E−/D/E−G/L
−Wは、LLG−C4およびこれまで報告されている他のβ2インテグリン結合ペプチド
とは、明確に異なっていた。
【0042】
本発明者らは、まずファージディスプレイペプチドをインテイン融合タンパク質として
調製し、そこからペプチドを開裂させた。これによって、大規模な化学的ペプチド合成を
行う前に、ペプチドの可溶性および結合特異性について速やかに試験することができた。
ファージベクターからペプチドライブラリー挿入物を増幅するオリゴヌクレオチドプライ
40
マーを用いてペプチドをクローニングした。その結果、調製した全てのペプチドがベクタ
ーに由来する配列ADGAをNH2末端に、GAAGをCOOH末端にそれぞれ含む。可
溶性ペプチドを競合ペプチドとして用いたファージ結合実験では、2つの隣り合った負電
荷を有するペプチドが共通の部位に結合することが示された(図示しない)。本発明者ら
は、ADGA−CILWMDDGWC−GAAG(DDGW)をさらなる実験に用いるた
めに選択した。このペプチドは、強い結合を示し、水性緩衝液中で非常によく溶解した(
10 mMより高い濃度の50mM NaOH中で溶解)ためである。上記ペプチドを化学
的合成でも調製した。DDGW配列を担持するファージはαMIドメインに非常によく結
合した。これは低濃度のDDGWペプチドによって簡単に阻害されたが、LLG−C4ペ
プチドにはわずかに影響されるだけであった。この結果により、DDGWとLLG−C4
50
(13)
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の結合部位が異なることが示された(図1−1のB)。他のペプチド配列を有する対照フ
ァージは結合しなかった。DDGWを担持するファージもαLIドメインに対する特異的
な結合を示し、この結合はDDGWによって阻害できたが、相互作用はαMIドメインに
対するものよりも低かった(図1−2のC、データは示さない)。αXIドメインまたは
対照として用いたGSTとの結合は見られなかった(図1−2のC)。
【0043】
β2インテグリンIドメインとの相互作用を仲介するゼラチナーゼの触媒ドメイン上での
DELW配列の特徴
本発明者らは、新規なD/E−/D/E−G/L−W配列に適合する配列をタンパク質
データベースから探した。ファージライブラリー由来のペプチドの1つ、CPEELWW
10
LCが、MMP−2ゼラチナーゼおよびMMP−9ゼラチナーゼの触媒ドメインに存在す
るDELW(S/T)LG配列に非常に類似していた(図1−1のA)。2つの負電荷を
有するDELW−様配列は他の分泌型MMPにも存在するが、MMP−14などの膜型M
MPには存在しない。
【0044】
白血球β2インテグリンに結合するMMPはこれまで報告されていなかった。そこで本
発明者らは、特にMMP−9がβ2インテグリンのリガンドとなりうるかどうかを調べる
研究に着手した。なぜならMMP−9ゼラチナーゼは主要な白血球MMPであり、β2イ
ン テ グ リ ン 活 性 化 の 間 に 誘 発 さ れ る か ら で あ る 。 初 め の ス テ ッ プ と し て 、 pepspot膜 上 に
、20量体のオーバーラップするペプチドとして全proMMP−9配列を合成した。α
M
20
Iドメインとの結合アッセイによって、MMP−9触媒ドメインに位置する単一の活性
ペプチドを明らかにした(図1−2のD)。Iドメインが省かれていて、膜を抗体のみで
プローブした場合、結合は見られなかった。Iドメイン結合ペプチドの配列はQGDAH
FDDDELWSLGKGVVVであり、この配列はファージディスプレイによって同定
された結合配列を含んでいた(図1−2のD)。
【0045】
活性型MMP−9ペプチドは、負電荷を有する4つの連続したアミノ酸、DDDEを含
んでいた。この残基の重要性を調べるために、トリプトファンに最も近いアスパラギン酸
残基およびグルタミン酸残基をアラニンと置換した。同時に、ペプチドの長さを15量体
に 短 縮 し た 。 ア ラ ニ ン 変 異 生 成 は 、 pepspotフ ィ ル タ ー 上 の I ド メ イ ン 結 合 を 大 幅 に 無 効
30
にした。OD値は2,010から476に低下した(表1−1および1−2)。他のMM
P由来の負に帯電したペプチドも活性であるかどうかを調べるため、対応する15量体を
合成し、二重アラニン変異生成を行った。MMP−1、2、3、7、8、9および13由
来の配列はαMIドメインに結合したが、膜に固定されたMMP−14(MT1−MMP
)は結合しなかった。アラニン変異は常に結合を減少させた。
【0046】
本 発 明 者 ら は 同 様 の pepspot分 析 を 、 D / E − / D / E − G / L − W 様 配 列 を 含 む 公 知
のIドメインリガンドのいくつかに対しても行った。ミエロペルオキシダーゼ、カタラー
ゼ、トロンボスポンジン−1および補体タンパク質iC3bに由来するペプチドは、この
アッセイにおいて強くIドメインに結合し、二重アラニン変異は結合を減少させた(表1
40
− 1 お よ び 1 − 2 参 照 ) 。 試 験 し た 3 つ の i C 3 b ペ プ チ ド 配 列 ( peptide permutations
)のうち、ARSNLDEDIIAEENIが活性であった。このペプチドにおいては、
酸性残基の後に疎水性のイソロイシンクラスターが続いていた。可溶性のDDGWペプチ
ドはこのペプチドがIドメインに結合するのを効率的に阻害した。補体H因子に由来する
ペプチドの1つおよびフィブロネクチンに由来するペプチドの1つがIドメインに対する
弱い結合を示した。ICAM−1、ICAM−2およびICAM−3、好中球阻害因子、
Cyr61、フィブリノゲン、GP1b、第X因子またはE−セレクチンに由来するペプ
チドは活性がなかった。
【0047】
Pepspotシ ス テ ム を 用 い た D D G W ペ プ チ ド の ア ラ ニ ン ス キ ャ ニ ン グ 変 異 誘 導 法 ( alani
50
(14)
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ne-scanning mutagenesis) に よ っ て 、 同 様 に グ ル タ ミ ン 酸 残 基 が I ド メ イ ン に 対 す る 結
合に重要であることが示された(図1−3のE)。グリシンのアラニン変異またはトリプ
トファン残基のうちのひとつのアラニン変異もペプチドを不活化した。イソロイシン残基
、ロイシン残基またはメチオニン残基の変異は許容された。N末端からADGA配列を削
除してもIドメインに対する結合には影響はなかったが、C末端のGAAG配列の除去は
結合を完全に阻止した。ペプチドはC末端でフィルターに固定化されるため、GAAGの
ような充分なリンカー配列が重要と考えられた。本発明者らは、最短の活性配列を同定す
るために一連の短縮された環状ペプチドを試験した。この分析により、ADGA−CDD
GWC−GAAGではなく、ADGA−CEDGWC−GAAGがαMIドメインに対す
る結合を支持する最小のペプチドであることが明らかになった。負に帯電したカルボキシ
10
ル基を、Iドメインに結合するのに正しい位置に配置するためには、アスパラギン酸塩と
比べ、グルタミン酸塩のより長い側鎖がおそらく必要である。
【0048】
プロゼラチナーゼは精製したαMβ2インテグリンおよびαLβ2インテグリン、ならびにそ
れらのIドメインに結合する 次に、マイクロタイターウェルをベースにしたサンドイッチアッセイを用いて、精製し
たインテグリンに対するゼラチナーゼの結合を調べた。プロゼラチナーゼは塗布したαM
β2インテグリンに、濃度依存的に結合した(図2のA)。興味深いことに、トリプシン
またはAPMAで活性化すると、MMP−2およびMMP−9はインテグリンに対する結
合能を失った。proMMP−2とproMMP−9はαMβ2インテグリンおよびαLβ2
20
インテグリンの両方、ならびにそれらに対応するIドメイン(図2のBおよびC)に結合
した。αXIドメインまたはα1β1インテグリンおよびα3β1インテグリンに対する結合
は検出されなかった。
【0049】
DDGWペプチドは効率的な阻害剤であり、proMMP−9のαMIドメインに対す
る結合を阻害し、IC50は20μMであった(図3−1のAおよびB)。アスパラギン酸
の負電荷がペプチドの活性に不可欠であることを実証するために、アスパラギン酸の位置
にリシンを有するペプチド、ADGACILWMKKGWCGAAG(KKGW)を調製
した。予想した通り、KKGWペプチドは不活性であり、proMMP−9結合と競合し
なかった。本発明者らはまた、αLIドメインにおけるロバスタチンの結合部位が知られ
30
ていたため(参考文献34、35)、ロバスタチンを試験することにも興味を持ったが、
ロバスタチンは高濃度でもproMMP−9と競合できなかった。
【0050】
proMMP−9は、真のインテグリンのリガンドのように結合したが、カチオンキレ
ート剤EDTA(5mM)はほとんど完全に結合を阻止した(図3−2のCおよびD)。
サンドイッチアッセイにおけるバックグラウンドの測定には抗体のみ(対照)、或いはI
CAM−1または野生型GSTのコーティングを用いた。ゼラチナーゼ結合ペプチドCT
T(200μM)はproMMP−9とインテグリンの相互作用を、EDTAと同様の効
率で阻害した。ゼラチナーゼ阻害活性を欠いた対照ペプチドSTTHWGFTLS(ST
T)およびCTTHAGFTLC(W→A CTT)(参考文献26)は効果がなかった
40
。非ペプチド化学的MMP阻害剤(Inh1)もproMMP−9の結合を阻害した。E
DTAがゼラチナーゼとインテグリンの両方を阻害したため、インテグリンを阻害する抗
体とリガンドペプチドを用いてβ2 インテグリンの特異的結合活性を実証した。公知のリ
ガンド結合阻害抗体MEM170、MEM83およびLM2/1はproMMP−9の結
合を阻害した。対照抗体TL3は効果がなかった。Iドメイン結合ペプチドであるLLG
−C4は不完全な阻害効果を示した。対照ペプチドとして用いたαVインテグリンリガン
ドであるRGD−4Cは、proMMP−9の結合には影響を与えなかった。インテグリ
ンの純度は典型的に90%を超え、Iドメインの純度は95%であり、プロゼラチナーゼ
が調製物中の不純物に結合したとは考えられない。
【0051】
50
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プロゼラチナーゼ−インテグリン複合体も、proMMP−9およびproMMP−2
のソースとしてHT1080ならし培地を用いた共沈実験によって得、ザイモグラフィー
によって分析した。プロゼラチナーゼは、αMβ2 インテグリンまたはαMIドメイン−G
S T 融 合 タ ン パ ク 質 を ベ イ ト ( bait) と し て 用 い た 時 、 こ れ ら と 共 沈 し た 。 培 地 に 添 加 さ
れたインテグリンはαM抗体OKM10と免疫沈降した(図4のA)。αMIドメイン−G
S T タ ン パ ク 質 は グ ル タ チ オ ン ビ ー ズ で 沈 降 ( pull down) し た ( 図 4 の B ) 。 C T T は
阻害効果を有したが、STTは有さなかった。LM2/1、ICAM−1またはLLG−
C 4 に よ る I ド メ イ ン の 阻 害 も プ ロ ゼ ラ チ ナ ー ゼ の 沈 降 ( pull-down) に 影 響 し た 。 対 照
GSTはゼラチナーゼと共沈しなかった。APMAで処理したHT−1080培地または
APMA活性化MMP−9を用いた時、αMβ2またはIドメインと共沈するゼラチナーゼ
10
の活性型は検出されなかった(図示しない)。
【0052】
ゼラチナーゼ阻害剤CTTおよびInh1はproMMP−9のインテグリンに対する
結合を阻止したため、CTTおよびInh1がproMMP−9に強く結合することが予
想された。これについてさらに理解するために、固定化したCTTペプチドに対するpr
oMMP−9の結合を調べた。proMMP−9はCTT−GST融合タンパク質に特異
的に結合した(図5のA)が、LLG−C4−GSTには結合しなかった。CTTおよび
Inh1は100μMの濃度で結合において効率的に競合したが、W→A CTTは競合
しなかった。proMMP−9調製物はザイモグラフィー分析で検出可能な量の活性型M
MP−9を含有しておらず、proMMP−9をAPMAで活性化した後CTT−GST
20
結合が増加した。CTTおよびInh1もまたPDBuにより活性化したTHP−1白血
病細胞(図5のB)またはHT1080線維肉腫細胞(図示しない)の培地に分泌された
proMMP−9に結合した。proMMP−9のゼラチン分解活性の時間依存性の減少
がCTT (パネル1)およびInh1(パネル3)で見られたが、W→A CTTペプチ
ド(パネル4)では見られなかった。ウェスタンブロット分析によってCTTは、細胞に
よるproMMP−9の分泌を減少させないことが示された(パネル2)。さらに、CT
T複合体は可逆的であり、試料の凍結・解凍を繰返すと消滅した。
【0053】
プロゼラチナーゼとβ2 インテグリンの細胞表面複合体の実証 白血球表面上でプロゼラチナーゼがβ2インテグリンとの複合体として存在するかどう
30
かを調べるために、免疫沈降および共局在化を行った。まず、休止状態のTHP−1単球
性 白 血 病 細 胞 を 、 in vivoで の 白 血 球 活 性 化 を 模 し た P D B u に よ る 誘 導 を 経 て 試 験 し た
。PDBuによるTHP−1細胞刺激により、MMP−9が上向きに調節された(データ
3
は示さない)。THP−1細胞の細胞表面糖タンパク質をトリチウム[ H]で標識し、
β2インテグリン抗体およびMMP−9抗体で免疫沈降した。PDBuで活性化した細胞
の中から、αM鎖抗体OKM10およびβ2鎖抗体7E4は、インテグリンのαM鎖(16
3
5kDa)およびβ2鎖(95 kDa)に対応する2つの[ H]標識タンパク質を免疫
沈降した(図6のA、レーン9∼10)。重要なことに、ポリクローナルMMP−9抗体
は同じ2つのインテグリン鎖を免疫沈降した(レーン7)。非活性化細胞においては、α
M
鎖およびβ2鎖は存在したが、αMおよびβ2のMMP−9抗体との共沈は実質的に見られ
40
なかった。MMP−9抗体によるインテグリン鎖の共沈は、CTTペプチドによって阻止
された(レーン8)。対照抗体(TL3)はタンパク質を沈降しなかった。
【0054】
3
[ H]標識細胞では、proMMP−9に対応するバンドは見られなかった。これは
おそらく、proMMP−9の炭水化物が十分に標識されていないためであろう。そこで
、PDBuにより活性化したTHP−1細胞をウェスタンブロット法で分析した(図6の
B)。proMMP−9は、MMP−9、αMまたはαLに対する抗体とたやすく免疫沈降
したが、対照抗体とは免疫沈降しなかった。MMP−9抗体も同様にαMを免疫沈降した
が、αL鎖を免疫沈降しなかった。MMP−2抗体も同様に、αMを共沈したが、αLを共
沈しなかった。細胞溶解産物をαM抗体OKM−10で予備清掃すると、免疫沈降するαM
50
(16)
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およびproMMP−9の量は明らかに減少した(レーン6)。αL抗体TS2/4を用
いた予備清掃ではαMまたはproMMP−9をそれほど除去しなかったが、αLの沈降を
完全に阻止した(レーン7)。
【0055】
THP−1細胞はαL鎖を多量に発現しない(参考文献20)ため、αMよりもαLを多
く発現するジャーカットT細胞系を試験した(参考文献28)。PDBuで活性化した後
、MMP−9抗体およびMMP−2抗体によるαLの著しい免疫沈降が見られた(図6の
C)。さらに、αL抗体は、αM抗体と比べ、proMMP−9をより共沈させた。ジャー
カット細胞またはTHP−1細胞において、proMMP−9は、MMP−2抗体と共沈
しなかった。
10
【0056】
蛍光と共焦点顕微鏡で調べたところ、THP−1細胞をPDBuで活性化するとpro
MMP−9とαMβ2が細胞表面に共局在化することが明らかになった(それぞれ、図7の
AとB)。より高い倍率を用いると、上記の共局在化は主として細胞表面クラスターに見
られ(図7のB)、それほどではないが細胞どうしが接触する領域にみられた(図示しな
い)。活性型MMP−9がαMβ2と結合しなかったため、αMβ2と共局在化するMMP−
9はproMMP−9であると考える。PDBuで活性化しなければ、proMMP−9
とαMβ2はほとんど共局在化しなかった。一次抗体を省いたときには、二次抗体は細胞を
染色しなかった(データは示さない)。proMMP−9またはαMβ2をブロッキングす
るために、細胞をCTTペプチドまたは組換え可溶性ICAM−1とプレインキュベート
20
した場合、細胞表面クラスターは形成されず、proMMP−9とαMβ2の共局在化は見
られなかった(図示しない)。proMMP−9とαMβ2の共局在化はホルボールエステ
ル刺激の後にジャーカット細胞上にも見られた(図示しない)。
【0057】
DDGWを用いたプロゼラチナーゼ/β2インテグリン複合体の阻害は細胞に結合したp
roMMP−9を脱離させて細胞遊走を阻害するが、接着は阻害しない
DDGWペプチドはインテグリンリガンドであるが、それが、白血球の接着を支持する
かどうかが1つの疑問であった。そこでヒト骨髄単核細胞であるTHP−1細胞の接着を
、固定化したグルタルアルデヒドで分子架橋したペプチドで調べた。ホルボールエステル
により活性化した細胞はDDGWペプチドに効率的に結合したが、細胞の活性化なしには
30
結合は見られなかった(図8のA)。正の対照である、組換えインテインにより製造した
ADGA−CPCFLLGCC−GAAGペプチドは接着を支持したが、DDGWペプチ
ドとは違って、インテグリンの活性化がなくとも接着を支持した。急性骨髄性白血病細胞
系OCI/AML−3もDDGWに非常によく結合したが、β2インテグリンを欠くヒト
線維肉腫 HT1080細胞は結合しなかった(図示しない)。THP−1細胞は、DD
GWに接着したので、次にフィブリノゲンおよびICAM−1に対するβ2インテグリン
依存性接着へのペプチドの影響を調査した。興味深いことに、DDGWはフィブリノゲン
に対する細胞接着を阻害しないが、LLG−C4ペプチドはこれまでに報告されているよ
うに接着を阻害した(図8のB)。同様に、DDGWは、組換えαMIドメインの固定化
したフィブリノゲンに対する結合を阻害しなかった(図示しない)。DDGWはまた、I
40
CAM−1−Fc融合タンパク質に対する接着も阻害しなかった。対照として用いた、β
2
インテグリンに対する阻害抗体7E4はICAM−1の結合を阻止し、これはTHP−
1細胞がβ2インテグリン依存的に結合していたことを示す(図8のC)。また、DDG
WがTHP−1のLLG−C4−GST融合タンパク質に対する接着を阻害する効果がな
いことも明らかになった(図示しない)。
【0058】
上記の研究によって生じた2つ目の疑問は、DDGWペプチドが細胞に結合したpro
MMP−9を脱離することができるかどうかであった。THP−1細胞をDDGWの存在
下に48時間培養した場合、ゼラチンザイモグラフィーで調べた結果、ならし培地におい
てproMMP−9レベルの増加が見られた(図8のD)。ペプチドは、培地中で、単量
50
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体のproMMP−9および二量体のproMMP−9の両方を増加させた。これに対し
て、CTTは活性型proMMP−9をわずかに減少させるか、阻害した。KKGWおよ
びW→A CTTは影響を及ぼさなかった。
【0059】
本発明者らはまた、白血球遊走におけるプロゼラチナーゼ/β2インテグリン複合体の
役割を、トランスウェルアッセイを用いて調べた。トランスウェルアッセイにおいては、
塗布された基質タンパク質またはリガンドタンパク質の選択によって白血球遊走を調節す
ることができる。CTTペプチド、LLGペプチドおよびDDGWペプチドが、200μ
Mを超える濃度で、48時間の時間枠において毒性がないことをMTTアッセイを用いて
試験した。細胞培地中の10%血清で被覆したトランスウェルを用いて、まず、ホルボー
10
ルエステル刺激または接着性基質タンパク質の非存在下でのTHP−1細胞の基礎遊走(
basal migration) に 対 す る ペ プ チ ド の 影 響 を 調 べ た 。 上 記 の 条 件 下 で 、 C T T 、 L L G
−C4またはゼラチナーゼ阻害剤Inh1は、200μMの濃度でTHP−1の遊走に影
響せず、これは、ゼラチナーゼまたはβ2インテグリンの積極的な関与がなかったことを
示している(図9のA)。本発明者らは以前、トランスウェルがLLG−C4−GST融
合タンパク質で被覆されている場合、THP−1細胞はβ2インテグリン依存的に接着お
よび遊走することを示した(参考文献14)。したがって、トランスウェルをLLG−C
4−GST融合タンパク質またはGSTのみで被覆した。DDGWおよびCTTペプチド
の両方は、LLG−C4−GST層上でTHP−1細胞の遊走を阻害したが、KKGWは
阻害しなかった(図9のB)。可溶性のLLG−C4ペプチドも遊走を阻害した。GST
20
被覆の存在下では、細胞遊走はごくわずかであった。DDGWペプチドの効果がβ2イン
テグリンに依存していることを検証するために、これらのインテグリンを欠くHT108
0線維肉腫細胞をCTT、DDGW、KKGWまたはLLG−C4の存在下で遊走させた
。これらのペプチドのうち、CTTのみが細胞遊走を阻害する能力があった(図9のC)
。
【0060】
proMMP−9/αMβ2インテグリン複合体のペプチド阻害剤は好中球遊走を阻害する
上 記 の よ う に pepspot分 析 に よ り 、 p r o M M P − 9 が イ ン テ グ リ ン と 相 互 作 用 す る 部
位はproMMP−9の触媒ドメインに存在する20個のアミノ酸配列(QGDAHFD
30
D D E L W S L G K G V V V ) で あ る こ と が 示 さ れ た 。 pepspotシ ス テ ム に よ る 更 な る ス
クリーニングにより、この配列をヘキサペプチドHFDDDEにまで短縮しても充分なイ
ンテグリン結合活性が達成されることが分かった(データは示さない)。そのような短い
配列がproMMP−9の生物活性部位であることを確認するために、まず、細菌で発現
させたMMP−9の組換えドメインを作成した(図10のA)。ΔMMP−9はproド
メイン(Pro)と触媒ドメインからなるが、ヘモペキシンドメインを欠いている。II
型フィブロネクチン繰返し配列(FnII)は重要な基質結合領域なので、これも別の組
換えタンパク質として作成した。pro触媒ドメイン構築体ΔMMP−9は、野生型pr
oMMP−9とほぼ同じ効率でαMのIドメインと結合した(図10のB)。FnIIタ
ン パ ク 質 は 活 性 を ほ と ん ど 欠 い て い た 。 固 相 pepspot分 析 で 同 定 さ れ た H F D D D E ペ プ
40
チドをペプチド合成で製造すると高い活性を示し、proMMP−9のαMIドメインへ
の結合を阻害し、その際、20μMでIC50を達成した(図10のC)。結合されたpr
oMMP−9の決定は、FnIIドメインにあるエピトープを認識するGE−213抗体
を用いて行なった(データは示さない)。配列を乱したスクランブルペプチドDFEDH
D(同じ負に帯電したアミノ酸を有する)は活性を示さなかった。HFDDDEは、ファ
ージディスプレイで発見した上述のαMIドメイン結合性ペプチドであるDDGWと同様
に活性であった。DDGWの対照用ペプチドであるKKGWは効果を示さなかった。MM
PファミリーのペプチドにはHFDDDE配列が高度に保存されているので、本発明者ら
は、αMIドメインの好中球コラゲナーゼMMP−8への結合についても調べた。Iドメ
インは、proMMP−9に対するのと同様に、proMMP−8に対して、DDGWで
50
(18)
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阻害可能な結合を示した(図10のD)。ICAM−1とフィブリノゲンはいずれのpr
oMMPとも競合せず、このことは、Iドメインにおいては、基質タンパク質とproM
MPに対する結合部位は異なることを示唆する。
【0061】
インテグリンが活性化された後、PMNはproMMP−9への接着能力を示した。P
MAで刺激したPMNは、proMMP−9に対するのとほとんど同じ強度で、マイクロ
タイターウェルに塗布したΔMMP−9に結合した(図11のA)。PMNをC5aまた
はTNF−αで刺激すると同様の結果が得られ、PMNの接着が3倍となった(図11の
B)。FnIIドメインはPMNの接着を支持しなかった。PMNの接着はHFDDDE
(50μM)、DDGW(50μM)、可溶性αMIドメイン、MEM170抗体により
10
阻害され(図11のC)、β2インテグリンの関与する結合であることを示した。対照ペ
プチド(DFEDHD、KKGW)および無関係なモノクロナール抗体(抗GPA)は効
果を示さなかった。CTTペプチドはMMP−9の触媒ドメインに結合したが、MMP阻
害活性を欠くW→A CTT対照ペプチドは結合せず(未公開の結果)、また、CTTペ
プチドはPMNの接着を阻害した。MMP−9抗体は部分的に阻害した。
【0062】
本発明者らはまた、トランスフェクトによりαMβ2を発現したL細胞についても調べて
みた。αMβ2発現L細胞トランスフェクタントは、PMNと同様に、proMMP−9と
ΔMMP−9に結合し、そして、IドメインリガンドとMMP−9阻害剤は結合を弱めた
(図11のD)。トランスフェクトした細胞はまた、FnIIドメインに弱い接着を示し
20
たが、調べたペプチドと抗体はこの結合を阻害しなかった。野生型のL細胞とLAD−1
のいずれもproMMP−9やそのドメインには結合しなかった。
【0063】
P M N の in vitroで の 遊 走 を ト ラ ン ス ウ ェ ル フ ィ ル タ ー ア ッ セ イ で 研 究 し た 。 人 工 的 な
β2インテグリンリガンドLLG−C4−GSTで被覆することにより、細胞遊走がβ2イ
ンテグリンに依存するようになる(参考文献14)。PMAで活性化したPMNのLLG
−C4−GST層中での遊走は、GST層中における遊走の5倍であった(図12のA)
。HFDDDE(200μM)は、PMAで刺激された細胞の遊走を阻害したが、不活性
化細胞の基礎的遊走は阻害しなかった。DDGW、CTT、MEM170(20μg/m
l)および抗MMP−9ポリクロナール抗体(20μg/ml)は類似の活性を示し、P
30
MAで活性化した細胞の遊走のみに影響を与えた。対照ペプチドと対照抗体(抗TAT−
2 ) は 効 果 を 示 さ な か っ た 。 内 皮 貫 通 遊 走 ア ッ セ イ ( transendothelial migration assay
)からも同様の結果が得られた(図12のB)。C5aまたはTNF−αによる化学走性
に よ り P M N の ト ラ ン ス マ イ グ レ ー シ ョ ン ( transmigration) が 5 ∼ 1 0 倍 に 増 加 し 、 ま
た、それをDDGW、HFDDDEおよびCTTが阻害したが、対照ペプチドは阻害しな
かった。同様に、αM抗体とMMP−9抗体は阻害したが、対照抗体(抗GPA)は阻害
しなかった。本発明者らはまた、LLG−C4−GSTで被覆したトランスウェルフィル
ターを通過するTHP−1白血病細胞の遊走に対して各種ペプチドが与える影響を調べた
。結果はPMNの場合におけるのと同じであった。HFDDDE、DDGWおよびCTT
はTHP−1の遊走を阻害したが、対照ペプチドは阻害しなかった(図12のC)。
40
【0064】
上記のように本発明者らは、DDGWペプチドは、THP−1細胞からproMMP−
9を脱離させることができることを示した。本発明者らはまた、HFDDDEペプチドも
proMMP−9を脱離させることができるが、DDGWペプチドを用いた場合ほど有効
性が高くないことを見出した(図12のD)。配列を乱したスクランブルペプチドはpr
oMMP−9の脱離を誘導しなかった。16時間のインキュベーションの間、各種ペプチ
ドはproMMP−2の分泌に影響しなかった。
【0065】
P M N の in vivoで の 遊 走 を 調 べ る た め に 、 本 発 明 者 ら は チ オ グ リ コ レ ー ト で 誘 発 し た
マウス腹膜炎モデルを用いた。チオグリコレートで刺激してから3時間以内に腹腔に浸潤
50
(19)
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した細胞の大部分は、クリスタルバイオレット染色によりPMNであると判定された。こ
の 炎 症 モ デ ル に お い て は 、 D D G W ペ プ チ ド と H F D D D E ペ プ チ ド は 強 い in vivo活 性
を示した(図13のA)。DDGWペプチドまたはHFDDDEペプチドを尻尾へ静脈注
射することでPMNの腹腔内蓄積を阻害した。対照として用いたKKGWペプチドとDF
EDHDペプチドは効果を示さなかった。DDGWペプチドとHFDDDEペプチドの効
果は濃度依存性であり、DDGWペプチドの投与量50μg/マウスとHFDDDEペプ
チドの投与量500μg/マウスで、90%までの阻害を達成できた。DDGWペプチド
は、5μg/マウスの投与量(0.1mg/マウス組織1kgの有効量に相当する)でさ
えも活性を示した。チオグリコレートで刺激した後、PBSを用いた対照と比較して約2
0倍のPMNが腹腔内に存在していた。採取した炎症性PMNは、proMMP−9/α
M
β2複合体の存在により二重免疫蛍光法で染色された(図13のB)。PBS注射の後に
採取した細胞は上記複合体を欠いており、インテグリンを発現していたが、細胞表面MM
P−9を有さなかった(図13のC)。採取した腹腔液の上清をザイモグラフィーで分析
したところ、PBSの場合と比較して、チオグリコレートがゼラチナーゼレベルの上昇を
誘導したことが示された(図13のD)。DDGWペプチドとHFDDDEペプチドは、
細胞遊走の阻害にともない、ゼラチナーゼレベルの上昇を防止したが、スクランブルペプ
チドはそのような活性を示さなかった。
【0066】
10
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【表1−1】
10
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30
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【0067】
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【表1−2】
10
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【0068】
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【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1−1】プロゼラチナーゼのIドメイン結合部位の同定。(A)αMのIドメインに
特異的に結合したファージディスプレイペプチドの配列。コンセンサス配列は太字で示す
。最も結合力の強いペプチド(CILWMDDGWC)と最も類似性の高いペプチド(C
PEELWWLC)を、ヒトMMP(括弧内はアクセッション番号)に対してアラインメ
ントさせた。(B)CILWMDDGWCペプチドを担持するファージまたは対照ペプチ
30
ドを担持するファージを、固定化したαMのIドメイン−GST融合タンパク質(20n
g/ウェル)に対し、15μMのDDGWペプチドまたはLLG−C4ペプチドの存在下
または非存在下で結合させた結果である。結合したファージは抗M13ファージモノクロ
ーナル抗体を用いて検出した。結果を3つの試料の平均吸光度±標準偏差で示す。
【図1−2】プロゼラチナーゼのIドメイン結合部位の同定。(C)αL、αMまたはαX
のIドメインとGSTの融合体でマイクロタイターウェルを図1−1(B)と同様に被覆
し、CILWMDDGWCペプチド担持ファージまたは対照ペプチド担持ファージの結合
を 測 定 し た 。 ( D ) p r o M M P − 9 の 全 配 列 を カ バ ー す る ペ プ チ ド を pepspot膜 上 に オ
ーバーラップペプチドとして合成した。0.5μg/mlのαMIドメインをペプチドに
結合させ、抗αMIドメイン抗体LM2/1を用いて免疫検出を行った。αMIドメイン結
40
合ペプチド13(矢印で示したもの)を太字で示し、亜鉛結合酵素配列には下線を付した
。proMMP−9のドメイン構造をわかりやすくするため、プロドメイン(Pro)、
II型 フ ィ ブ ロ ネ ク チ ン 繰 返 し 配 列 を 有 す る 触 媒 ド メ イ ン ( C a t ) お よ び ヘ モ ペ キ シ ン ド
メイン(Pex)のそれぞれを書き込みで示した。
【図1−3】プロゼラチナーゼのIドメイン結合部位の同定。(E)短縮したアラニン変
異 ペ プ チ ド を pepspotフ ィ ル タ ー 上 に 合 成 し 、 5 μ g / m l の 組 換 え α M I ド メ イ ン で プ ロ
ーブした。結合したIドメインは5μg/mlのモノクローナル抗体 MEM−170を
用いて測定後、HRP結合抗マウス二次抗体とECLで検出した。結合は濃度計でスキャ
ニングして定量した。棒線は、単一のペプチドスポットへのαMIドメインの結合を、平
2
方 ミ リ メ ー ト ル 当 た り の 任 意 の 光 学 濃 度 単 位 ( optical density units/mm ) で 示 し た も
50
(24)
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の。別々に行った3回の実験から、同様の結果が得られた。
【図2】精製したインテグリンとIドメインに対するプロゼラチナーゼの結合。(A)p
roMMP−9、proMMP−2またはそれぞれのトリプシン活性型を、αMβ2インテ
グリンで被覆したウェルに対し、図に記載の濃度で結合させた。結合は適当なMMP抗体
を用いて測定した。測定結果を、3つのウェルの測定値の平均値±標準偏差で示す((B
)、(C)についても同様))。(B)インテグリン(αLβ2、αMβ2、α1β1、α3β1
)またはIドメイン(αL、αM、αX)で被覆したマイクロタイターウェルへの、80n
g/ウェルのproMMP−9の結合実験を行った。結合は抗MMP−9抗体を用いて測
定した。(C)80ng/ウェルのproMMP−2をインテグリンαLβ2、αMβ2、α
1
β1またはIドメインαL、αM、αXに結合させた。結合は抗MMP−2抗体を用いて測
10
定した。
【図3−1】proMMP−9/β2インテグリン複合体の阻害剤。(A)αMIドメイン
とGSTの融合体およびαLIドメインとGSTの融合体をマイクロタイターウェルに固
定した。200μMの異なる種類のペプチドまたは100μMのロバスタチンを含んだ0
.5%BSA含有緩衝液の存在下または非存在下、100ng/ウェルのproMMP−
9を注入した。proMMP−9の結合は抗MMP−9モノクローナル抗体を用いて検出
した。検出結果は、阻害剤の非存在下での結合を100%、proMMP−9を注入しな
かった場合を0%とした場合のパーセンテージで示す。(B)DDGWペプチドがαMへ
のproMMP−9の結合を投与量依存的に阻害することを示す。競合させるために濃度
の異なるペプチドを投与した以外は、(A)と同様にアッセイを行った。3つの試料を一
20
組として行うアッセイによって得られた結果を、代表的な実験によって得られた数値の平
均値±標準偏差で示した。
【図3−2】proMMP−9/β2インテグリン複合体の阻害剤。(C)5mMのED
TA、100μMのMMP阻害剤−1、200μMのCTT、200μMのSTT、40
μg/mlのMEM−170、および対照となる40μg/mlのTL3抗体の存在下ま
たは非存在下で、αMβ2インテグリンまたはαLβ2インテグリンへのproMMP−9の
結合を実験した。一次抗体と二次抗体のバックグラウンド値は、ウェルへのproMMP
−9注入を省略するか或いはウェルをICAM−1で被覆して測定した。(D)精製した
αMIドメインとGSTとの融合タンパク質およびαLIドメインとGSTとの融合タンパ
ク質、または野生型GSTへのproMMP−9の結合を、図に記載の競合ペプチドの存
30
在下または非存在下で調べた。proMMP−9を省略した場合のバックグラウンド値を
対照として示す。
【図4】プロゼラチナーゼとβ2インテグリンの共沈降。(A)3μgのαMβ2インテグ
リンを、200μMのCTTまたはSTTの存在下または非存在下、proMMP−9と
proMMP−2を含むHT1080培地試料500μl中で2時間インキュベートした
。上記インテグリンをOKM10抗体で免疫沈降し、得られた免疫沈降物をゼラチンザイ
モグラフィーで分析した。対照実験では、インテグリンの替わりにICAM−1を培地中
でインキュベートした。(B)proMMP−9とproMMP−2を含むHT1080
培地試料500μlを3μgのαMIドメイン−GST融合体、または対照であるLLG
−C4−GST融合体と共にインキュベートした。ICAM−1、LM2/1、CTT、
40
STTまたはLLG−C4を競合ペプチドとして用いた。GSTはグルタチオンビーズを
使 っ て 沈 降 ( pull down) さ せ 、 結 合 し た タ ン パ ク 質 を ザ イ モ グ ラ フ ィ ー で 分 析 し た 。 図
中の挿入箇所中のレーン1:未処理のHT1080培地中に存在する酵素原proMMP
−2とproMMP−9。レーン2:対照LLG−C4−GSTと共に沈降したゼラチナ
ーゼ無し。レーン3:αMIドメイン−GST融合タンパク質によって共沈降したpro
MMP−9とproMMP−2。
【図5】CTTペプチドは潜伏型MMP−9と活性型MMP−9の両方に結合することを
示す。(A)proMMP−9またはAPMA活性型MMP−9のCTT−GSTへの結
合を、競合ペプチドとして100μMのCTT、100μMのW→A変異CTTおよび1
00μMのInh1の存在下または非存在下で実験した。LLG−C4−GSTを対照G
50
(25)
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STとした。結合は図2および図3−1、3−2と同様の方法で測定した。proMMP
−9が存在しないときのバックグラウンド値を示す。(B)濃度200μMのCTT、I
nh1またはW→A CTTを含む無血清培地中でTHP−1細胞をインキュベートした
。図に記載の経過時間において採取した培地の試料をザイモグラフィー(パネル1、3お
よび4)またはウェスタンブロット法(パネル2)で分析した。
【図6】PDBuにより活性化したTHP−1細胞やジャーカット細胞中にαMβ2インテ
グリンやαLβ2インテグリンとの複合体として現れるプロゼラチナーゼ。(A)トリチウ
3
ム化ホウ水素化過ヨウ素酸塩を用いてTHP−1細胞表面タンパク質を[ H]標識し、
免疫沈降で分析した。競合ペプチドとして200μMのCTTを用いた。免疫沈降にかけ
た試料を8∼16%ポリアクリルアミドゲル上でほぐし、得られたフィルムを3日間曝露
10
した。レーン1∼4は不活性な細胞のもの、レーン6∼10はPDBuにより活性化した
細胞のものである。レーン5は分子量マーカーを示す。(B)PDBuにより活性化した
THP−1細胞の溶解産物をインテグリン抗体またはMMP抗体を用いて免疫沈降させ、
続いてαM抗体(OKM10)、αL抗体(TS2/4)またはMMP−9抗体を用いてウ
ェスタンブロット法で分析した。細胞溶解産物の予備清掃はαM抗体(レーン6)とαL抗
体(レーン7)を用いて行った。(C)PDBuにより活性化したジャーカット細胞の溶
解産物を免疫沈降させ、続いてαL抗体(MEM83)とMMP−9抗体を用いてブロッ
ティング法で分析した。
【図7】PDBuにより誘導した、αMβ2インテグリンとproMMP−9のTHP−1
細胞内局在化。50nMのPDBuを用い、+37℃で30分間細胞をプレインキュベー
20
トした。(A)細胞を抗αMOKM10抗体と抗MMP−9抗体で処理し、続いてFIT
C(グリーン蛍光物質)標識二次抗体とTRITC(レッド蛍光物質)標識二次抗体で処
理した。黄色はαMβ2インテグリンとproMMP−9が共局在化していることを示す。
各バーは8.5μm。(B)MMP−9(ポリクローナル抗体)とαMβ2インテグリン(
OKM−10)がPDBuにより活性化したTHP−1細胞表面に強く局在するのを免疫
蛍光染色し、共焦点顕微鏡で高倍率で可視化したもの。(バーは2.5μm)。
【図8】DDGWペプチドはTHP−1細胞の接着を支持し、proMMP−9の脱離を
誘導するが、主要なβ2インテグリンリガンドであるフィブリノゲンやICAM−1への
接着は阻害しないことを示す。(A)グルタルアルデヒドで分子架橋したペプチドを固定
化したものに、THP−1細胞を50nMのホルボールエステルで活性化して或いは未活
30
性のままで結合させ、接着した細胞をフォスファターゼアッセイで定量した。THP−1
細胞を、200μMの可溶性ペプチドの存在下または非存在下、固定化したフィブリノゲ
ン(B)または組換えICAM−1−Fc(C)に結合させた。3つの試料を一組として
行うアッセイによって得られた結果を、得られた数値の平均値±標準偏差で示した。さら
に2回別々に実験を行ったところ、結果はいずれも同じであった。(D)THP−1細胞
を濃度200μMのペプチドの存在下または非存在下で48時間インキュベートした。な
ら し 培 地 ( conditioned medium) を 分 取 し 、 ゼ ラ チ ン ザ イ モ グ ラ フ ィ ー で 分 析 し た 。 矢 印
は、92kDaのproMMP−9と220kDaのproMMP−9二量体を示す。
【図9】THP−1細胞遊走のペプチドによる阻害。THP−1細胞を、図に記載の濃度
200μMの各種ペプチドと共に1時間、室温でプレインキュベートし、LLG−C4−
40
GSTコーティングの非存在下(A)または存在下(B)でトランスウェルに塗布した。
細胞を+37℃で16時間遊走させた。フィルター下部表面に遊走した細胞を染色し、顕
微鏡を使って細胞数を数えた。(C)HT1080線維肉腫細胞の遊走アッセイをLLG
−C4コーティングの非存在下で同様に行った。エラーバーは3つのウェルの測定値の平
均値±標準偏差を示す。
【図10】組換えMMP−9ドメインへのαMIドメインの結合。(A)MMP−9、お
よ び E. coliを 用 い て 発 現 さ せ た M M P − 9 の 組 換 え 体 を 模 式 的 に 示 す 。 ( B ) p r o M
MP−9、その組換え体またはBSAでマイクロタイターウェルを80μg/ウェルとな
るように被覆し、可溶性GST−αMIドメインを図に記載の濃度で結合させた。結合は
抗GSTモノクローナル抗体で測定した。測定結果を、3つのウェルからの測定値の平均
50
(26)
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値±標準偏差で示す((C)、(D)についても同様)。(C)図に記載の濃度の各種ペ
プチドの存在下における、固定化したGST−αMIドメインへのproMMP−9の結
合の調査結果。結合は、抗MMP−9抗体GE−213を用いて測定した。(D)固定化
したproMMP−8、proMMP−9、ICAM−1およびフィブリノゲンへのGS
T−αMIドメインの結合を、50μMのICAM−1、DDGWまたはKKGWを競合
ペプチドとして用いて調べた。対照ウェルには、GST−αMIドメインの代わりにGS
Tを注入した。実験を3回繰返し、同様の結果が得られた。
【図11】αMβ2インテグリン発現型細胞による、組換えMMP−9ドメインの認識。こ
こで用いた細胞は以下の通りである:PMN(A、B、C)、αMβ2発現L細胞トランス
フェクタント(D)、非トランスフェクタント(D)およびLAD−1細胞(D)。pr
10
oMMP−9またはそのドメインに対する結合の実験前、PMNは休止状態か、或いはP
MA(A、C)またはC5aまたはTNFα(B)で刺激された状態にある。細胞は、図
に記載の各種ペプチド(50μM)、抗体(20μg/ml)またはαMIドメインを用
いて前処理した。結合しなかった細胞は洗浄除去し、接着した細胞の数をフォスファター
ゼアッセイによって定量した。実験を3回繰返し、同様の結果が得られた。
【 図 1 2 】 ゼ ラ チ ナ ー ゼ と β 2 イ ン テ グ リ ン に 対 す る 阻 害 剤 に よ る 、 in vitroに お け る P
MNやTHP−1の細胞遊走の阻害。図に示す200μMのペプチドまたは20μg/m
lの抗体の存在下または非存在下、LLG−C4−GSTまたはGSTで被覆した表面(
5
A)またはHMEC単分子層(B)上に、PMN(100 μl中に1×10 個)を塗布
した。PMNは20nMのPMA(A)、50μMのC5aまたは10ng/mlのTN
20
Fαを含むHMECで処理するか、或いは未処理のまま(B)で用いた。THP−1細胞
4
(100 μl中に5×10 個)に50nMのPMAで刺激を与え、図に記載の200μ
Mのペプチドと共に被覆表面上に塗布した(C)。トランスウェルフィルターを貫通して
遊走した細胞を染色し、顕微鏡を使って細胞数を数えた。実験は全て、最低2回繰り返し
行った。(D)ホルボールエステルで活性化したTHP−1細胞(100 μl中に5×
4
10 個)を、図に記載のペプチドの存在下または非存在下、+37℃で16時間インキ
ュベートした。ならし培地をゼラチンザイモグラフィーで分析した。
【図13】炎症を起こした組織に対する好中球の遊走の阻害。(A)マウスにチオグリコ
レートまたはPBSを腹膜注射によって投与し、図に記載の分量の各ペプチドを静脈注射
した。3時間経過後、腹膜内から白血球を採取し、細胞数を数えた。得られた結果を、平
30
均値±1グループ当たり2∼4匹の標準偏差で示す。アスタリスク(*)は統計的に有意
な差(p<0.001)を示す。実験は最低3回繰返し行った。チオグリコレート(B)
またはPBS(C)を投与したマウスの組織中で浸潤した好中球細胞を、抗MMP−9抗
体および抗αM抗体と共に3時間インキュベートすることで染色した。蛍光性は共焦点顕
微鏡を使って調べた。バーは(B)が9.1μm、(C)が4.8μmである。(D)マ
ウス腹腔から(A)に記載の方法で採取した上清液のゼラチン分解活性。レーン1∼4:
チオグリコレートを投与したマウスから採取した試料。レーン5:PBSを投与したマウ
スから採取した試料。DDGW、HFDDDEおよびDFEDHDをマウス1匹当たり各
々0.1mg、0.2mg、0.2mgの投与量で静脈注射した。矢印はproMMP−
9二量体、proMMP−9およびproMMP−2を示す。実験を3回繰返し、同様の
40
結果が得られた。
【配列表フリーテキスト】
【0070】
配列番号1 LLG−C4ペプチド
配列番号2 ファージディスプレイによって単離されたD/E−D/E−G/L−W
配列、1位または2位のXaaはAspまたはGlu、3位のXaaはGlyまたはLe
u
配列番号3 RGD結合ペプチド、5位のXaaはGlyまたはLeu
配列番号4 拡張したRGD
配列番号5 iC3bペプチド
50
(27)
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配列番号6 Ala−Ala置換した対照ペプチド
配列番号7 効率的な結合のための最小配列
配列番号8 MMP−2またはMMP−9に由来するペプチド、5位のXaaはTh
rまたはSer
配列番号9 亜鉛結合触媒配列
配列番号10 インテグリンIドメイン結合ヘキサペプチド
配列番号11 環状CTTペプチド
配列番号12 DDGW全長ペプチド
配列番号13 DDGWの対照ペプチド
配列番号14 KKGW全長ペプチド
10
配列番号15 RGD−C4ペプチド
配列番号16 鎖式STTペプチド
配列番号17 CTTペプチドのAla置換体
配列番号18 最も結合力の強いペプチド
配列番号19 最も類似性の高いペプチド
配列番号20 ファージに含まれるDDGW配列
配列番号21 HFDDDE配列に対する、スクランブル(配列並べ替え)による対照
ペプチド
配列番号22 PCRのための、フォワードヌクレオチドプライマー
配列番号23 PCRのための、リバースヌクレオチドプライマー
20
配列番号24∼25 ファージ由来ペプチド
配列番号26 触媒ドメインに存在する、Iドメイン結合ペプチド
配列番号27 負に帯電した活性MMP−9ペプチド
配列番号28 Iドメイン結合を支持する最小ペプチド
配列番号29 Iドメイン結合を支持する最小ペプチドのAsp置換体
配列番号30 組換えインテインによって製造された対照ペプチド
配列番号31 MMP−1由来ペプチド
配列番号32 MMP−1由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号33 MMP−2由来ペプチド
配列番号34 MMP−2由来ペプチドのAla−Ala置換体
30
配列番号35 MMP−3由来ペプチド
配列番号36 MMP−3由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号37 MMP−7由来ペプチド
配列番号38 MMP−7由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号39 MMP−8由来ペプチド
配列番号40 MMP−8由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号41 MMP−9由来ペプチド
配列番号42 MMP−9由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号43 MMP−13由来ペプチド
配列番号44 MMP−13由来ペプチドのAla−Ala置換体
40
配列番号45 MMP−14由来ペプチド
配列番号46 MMP−14由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号47 MMP−1由来ペプチド
配列番号48 MMP−1由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号49 MMP−3由来ペプチド
配列番号50 MMP−3由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号51 MMP−8由来ペプチド
配列番号52 MMP−8由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号53 MMP−13由来ペプチド
配列番号54 MMP−13由来ペプチドのAla−Ala置換体
50
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配列番号55 MMP−14由来ペプチド
配列番号56 MMP−14由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号57 フィブロネクチン由来ペプチド
配列番号58 フィブロネクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号59 ICAM−3由来ペプチド
配列番号60 ICAM−3由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号61 補体H因子由来ペプチド
配列番号62 補体H因子由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号63 TSP−1由来ペプチド
配列番号64 TSP−1由来ペプチドのAla−Ala置換体
10
配列番号65 NIF由来ペプチド
配列番号66 NIF由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号67 ICAM−2由来ペプチド
配列番号68 ICAM−2由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号69 フィブロネクチン由来ペプチド
配列番号70 フィブロネクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号71 フィブロネクチン由来ペプチド
配列番号72 フィブロネクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号73 Cyr61由来ペプチド
配列番号74 Cyr61由来ペプチドのAla−Ala置換体
20
配列番号75 ミエロペルオキシド由来ペプチド
配列番号76 ミエロペルオキシド由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号77 カタラーゼ由来ペプチド
配列番号78 カタラーゼ由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号79 フィブリノゲンアルファ由来ペプチド
配列番号80 フィブリノゲンアルファ由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号81 フィブリノゲンベータ由来ペプチド
配列番号82 フィブリノゲンベータ由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号83 フィブリノゲンアルファ由来ペプチド
配列番号84 フィブリノゲンアルファ由来ペプチドのAla−Ala置換体
30
配列番号85 GP1p由来ペプチド
配列番号86 GP1p由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号87 ICAM−1由来ペプチド
配列番号88 ICAM−1由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号89 第X因子由来ペプチド
配列番号90 第X因子由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号91 E−セレクチン由来ペプチド
配列番号92 E−セレクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号93 E−セレクチン由来ペプチド
配列番号94 E−セレクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
40
配列番号95 E−セレクチン由来ペプチド
配列番号96 E−セレクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号97 フィブロネクチン由来ペプチド
配列番号98 フィブロネクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号99 フィブロネクチン由来ペプチド
配列番号100 フィブロネクチン由来ペプチドのAla−Ala置換体
配列番号101 iC3bペプチド
配列番号102 iC3bペプチドのAla−Ala置換体
配列番号103 iC3bペプチド
配列番号104 iC3bペプチドのAla−Ala置換体
50
(29)
JP 2006-527740 A 2006.12.7
配列番号105∼116 αMIドメイン結合ペプチド
配列番号125∼136 proMMP−9の20量体ペプチド
配列番号137 インテグリンIドメイン結合ペプチド
配列番号138∼167 proMMP−9の20量体ペプチド
配列番号168 proMMP−9の13量体ペプチド
配列番号169 N末端のADGAを欠如したDDGWペプチド
配列番号170 C末端のGAAGを欠如したDDGWペプチド
配列番号171∼174 DDGWペプチドの短縮改変体
【図1−1】
【図1−2】
(30)
【図1−3】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
JP 2006-527740 A 2006.12.7
(31)
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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(32)
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
JP 2006-527740 A 2006.12.7
(33)
【図12】
【配列表】
2006527740000001.app
【図13】
JP 2006-527740 A 2006.12.7
(34)
【国際調査報告】
JP 2006-527740 A 2006.12.7
(35)
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(36)
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(37)
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(51)Int.Cl.
FI
C07K
テーマコード(参考)
5/113
ZNA (81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),
EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,
CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,
DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,M
A,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW
(72)発明者 ビョルクルンド,ミカエル
フィンランド国、エフアイ−00350 ヘルシンキ、ウルヴィランティエ 29/1 デー 3
6
(72)発明者 コイヴネン,エルッキ
フィンランド国、エフアイ−00980 ヘルシンキ、ロッキサーレンティエ 5 シー 319
Fターム(参考) 4C084 AA02 BA01 BA02 BA08 BA16 BA23 NA14 ZB112 ZB212 ZB272
ZC412
4H045 AA10 AA30 BA13 CA42 EA24 FA41 FA74
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