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ピル(経口避妊薬)について

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ピル(経口避妊薬)について
平成 27 年 11 月 17 日放送
「ピル(経口避妊薬)について」
茨城西南医療センター病院
産婦人科
野口里枝
司会者:ピルは避妊の薬だと思いますが詳しく説明をお願いします。
野
口:ご存知の方もいると思いますが、ピルとは女性ホルモンを含む薬で、排卵
を抑制することで避妊効果を発揮します。正しく内服すれば 99%以上の避
妊効果が得られる避妊方法です。
司会者:他の避妊方法と比べるとどうですか?
野
口:日本ではコンドームを使用するひとが多いですが、コンドームを使用して
いても妊娠する人が約 14%います。これを考えるとピルは女性が主体的に
できる確実な避妊方法です。ただ、ピルでは性感染症の予防はできないの
でコンドームを併用することをお勧めします。
司会者:ピルはどういうふうに内服するのですか?
野
口:毎日1錠ずつほぼ決まった時間に内服します。飲み忘れると避妊効果が下
がりますので飲み忘れがないように注意が必要です。
司会者:もし将来、妊娠したくなったらどうすればいいですか?
野
口:ピルを中止すると排卵が再開して妊娠可能となります。
司会者:ピルには他に効果はありますか?
野
口:いろいろあります。今日はこれについて皆さんにお伝えしたいと思います。
ピルには避妊効果以外に、月経痛の軽減や月経量の減少、月経不順の改善、
子宮内膜症の予防や治療にも有効です。他には PMS(月経前症候群)の症状
の改善もみられます。
1
司会者:それぞれ詳しく説明していただけますか?
野
口:まず、月経痛についてですが、月経が始まった日∼2,3 日目にピークを迎え
る下腹部の重い感じや腰痛で、ひどいひとは陣痛の様な強い痛みを感じる
方もいます。程度はひとそれぞれで症状の強い方は鎮痛剤が必ず必要、鎮
痛剤も効かないという方もいます。子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原
因のこともありますが、原因となる病気がなくても月経痛がひどいという
方もいます。月経痛がひどい場合には鎮痛剤を内服される方が多いと思い
ますが、ピルも有効です。
司会者:月経量の減少についてはどうですか?
野
口:ピルを2周期内服すると月経血量が 43%減少したという報告もあります。
毎月の月経量が多いと慢性的な貧血になってしまうという女性もいます。
貧血になれば鉄剤を内服するという方法もありますが、月経量があまりに
多いと生活に支障が出ることもあるかと思います。ピルの内服で月経量が
減少すれば、貧血の改善につながります。
司会者:女性は毎月月経がありますので、痛みや量が多いと生活に支障が出ますよ
ね。ピルを内服してそれが改善するととてもいいですね。
野
口:そうですよね。またピルを内服すると月経が 28 日周期で整いますので、予
測した日に月経が始まります。内服する期間を調整すれば月経の時期をコ
ントロールすることもできます。旅行や受験などの大事な行事のときや月
経中はいつもに比べて体調が悪いという人にとっては予測ができる、調整
ができるというのは大きなメリットになると思います。
司会者:子宮内膜症の予防や治療についてはどうですか?
野
口:まず、子宮内膜症について簡単に説明します。子宮内膜とは本来子宮の内
側を覆う組織でホルモンの影響で厚くなり変化します。これが剥がれ落ち
るのが月経です。この子宮の内側にあるべき子宮内膜が卵巣や骨盤の臓器
を裏打ちする腹膜などに存在すると毎月そこで出血を繰り返し、子宮、卵
巣、卵管、腸、腹膜などが癒着してしまいます。そうすると月経痛や慢性
的な腰痛、排便痛、性交痛などの症状を引き起こし、また不妊の原因とな
ることもあります。
2
司会者:ピルを内服することでどういうことが期待できますか?
野
口:ピルには子宮内膜症の症状の疼痛を改善することが期待できます。また子
宮内膜症の進行を予防する効果もあります。子宮内膜症の治療には他に手
術療法もありますがどちらの治療方法を選択するかは年齢や妊娠の希望が
あるかどうかによって決定します。子宮内膜症は女性ホルモンが影響して
いるため、月経のある間つまり閉経まで長期的な管理が必要となります。
基本的に自然に良くなることはありませんので放置しておくと月経痛の悪
化や、いざ妊娠を希望するときにひどい子宮内膜症で不妊症ということも
あります。よって早期からピルの内服をして子宮内膜症の進行を予防する
ことも大切です。
司会者:最近 PMS という言葉を CM や薬局でもよく目にしますね。ピルはこれに
も有効なんでしょうか?
野
口:PMS とは月経前 3∼10 日間続く精神的、身体的症状で月経の開始とともに
よくなります。具体的な症状はイライラ、下腹部膨満感、下腹痛、頭痛、
乳房痛、憂鬱など様々です。症状の度合いは人様々ですが多くの女性が経
験していると言われています。この原因ははっきりしていませんが排卵を
止めると症状が出ないことがわかっており、ピルの内服で症状が緩和され
ます。ただ精神症状が強い場合はピルではコントロールが難しく精神安定
剤が必要なこともあります。
司会者:ピルの効果についてはよくわかりました。避妊以外にもいろいろ効果があ
って女性にとってはメリットの多い薬だと思いますが、デメリットはあり
ますか?
野
口:一般的な副作用として吐き気、頭痛、不正出血などがあります。ただ、初
めだけで 3 周期程度内服を続けると軽減することが多いです。重篤な副作
用は静脈血栓塞栓症です。ピル内服で血栓症のリスクは内服していない人
に比べて上昇しますが 10 万人あたり 15∼25 例と非常にまれではあります。
ちなみに妊婦さんの血栓症のリスクは 10 万人あたり 60 例ですのでそれよ
りも低いです。静脈血栓塞栓症の症状はふくらはぎのむくみや痛み、胸痛、
腹痛、頭痛などがあります。もしピル内服中にこのような症状を認めた場
合には必ず病院を受診しピルを内服していることを伝えてください。
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司会者:ピルを内服してはいけない人はいますか?
野
口:高血圧、1 日 15 本以上の喫煙、BMI30 以上の肥満、40 歳以上は血栓症の
リスクを上昇させることがわかっているので、投与してはいけない、もし
くは投与しても慎重にとされています。
司会者:デメリットはありますがピルを内服することで得られるメリットの方が多
そうですね。
野
口:そうですね。女性は 10 歳頃に初潮を迎え 50 歳で閉経すると考えると約 40
年間月経とお付き合いしなければなりませんね。そして最近は少子化で一
人の女性が出産する子供の数が昔に比べて減っていますので昔に比べて月
経の回数も多いんですね。28 日周期で7日間月経があると考えると約4分
の 1 は月経となりますのでいかに月経による辛い症状を取り除くかで生活
の質は大きく変わってくると思います。月経によって仕事や家事ができな
い、学校生活に支障を来たしている女性はたくさんいると思います。もし
それがピルで解決できるのであればデメリットよりもメリットの方が大き
く上回るのではないでしょうか。月経によって人生が左右されないように、
そして快適に毎日を過ごすために、妊娠を今すぐ考えていない女性にはピ
ルをお勧めします。ピルを飲んでみようかなと思う方は是非産婦人科を受
診して相談してみてください。
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