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vol.2 - 京都ノートルダム女子大学
第2号 2007年3月発行 ISSN 1880-165X 京 都ノートルダム女 子 大 学 司書・司書教諭課程 ニューズレター 巻頭言 目 次 「幻の資料」 との出会い / 野村武夫 司書課程から 図書館特論(京都資料論)/ 岡村敬二 司書教諭課程から 学校図書館メディアの構成 / 平井むつみ 授業の現場から 図書館vs個人情報保護 / 中島幸子 卒業論文から おはなし会における図書館ボランティアの役割 / A.K. 現場の先輩、先輩の現場 学校図書館の現在 / 石渡千夏 書架から 書庫から / 谷愛子 竹本美穂 国連広報センターでのインターンを経験して / 金川泰子 アジア情報研修を受けて/ 植田まり 情報検索基礎能力試験に合格して/ 一色里紗 日々往来 � � � � � � � � � � � かし肝心の京都YMCAには現存していなかった 「幻の資料」 との 出会い 野村 武夫 ので、それがどこに存在するのか、全く分からな かった。だから私にとっては「幻の資料」だった わけである。何せ100年以上も前に発行された資 料なので、もし消失していれば創立当時の京都 YMCAの様子を知る手立ては全くなくなるのであ る。 ところがその『青年之光』が北米YMCAの歴史 今から16年前の夏に、私が京都YMCAに勤務 資料館にあることが伝えられて、私は当時勤務し していた時であったが、アメリカのミネソタ州セ ていた京都YMCAの責任者に無理をいって許可を ントポール市にある北米YMCA歴史資料館で、私 とり、現地に飛んでいった。地下の資料保管庫か にとっては「幻の資料」と呼んでいた古い文書に ら係りの女性が持ってきたのは、まさに私が捜し 初めて対面したことがあった。その文書名は『青 求めていた『青年之光』であった。100年以上前の 年之光』と呼ばれるもので、1889年に京都YMCA 粗末な紙で印刷されていたので、紙はもうぼろぼろ が創立したときに刊行された。創立間もない京都 に近い状態で、現存していた7号までのすべてを痛 のYMCAはどんな組織で、どのような活動が行わ めないようにコピーするのは大変な作業だった。 れていたのかを知るには、私が『京都YMCA七十 『青年之光』の発見によって、当時の京都 年史』を執筆していたときは、「日本基督教青年 YMCAの様子がかなり明らかになったのは言う 会同盟成立五十周年資料」(1953年)に頼らざる までもない。そしてそのおかげで新しく刊行した を得なかった。そこには、京都YMCAが「会館を 『京都YMCA史』(2004年発行)では、『青年之 持って活動し、月刊誌『青年之光』第1号を9月24 光』に記されていた当時の活動や関わった人物な 日に発行するとともに、水害救助活動、会館内で ど具体的な記事を書くことが出来、かなり学術的 幻燈及び音楽会を催すなど活発な様子が伝えられ にも歴史的にも貴重な史料となって陽の目を見た ている」と書かれていた。 と思う。 ここに至って、京都YMCAが発行した『青年之 「求めなさい。そうすれば与えられる。探しなさ 光』の存在をはじめて知ったわけであるが、ぜひ い。そうすれば見つかる。」というキリストの言 ともこの『青年之光』を手にして、当時のYMCA 葉は真実であると実感している。 のことをもっと知りたいという願望を抱いた。し (本学 生活福祉文化学科長) 1 司書課程から 図書館特論(京都資料論) 司書教諭課程から 学校図書館メディアの構成 この「図書館特論」という科目は、図書館に関 この科目は、司書教諭の資格取得のための科目 連する分野の授業としてであればフリーハンドに内 で、前期開講の「学校経営と学校図書館」で学ん 容を取り上げることができるものである。本学では だ学校図書館の機能や役割をふまえ、学校図書館 この科目を、 「京都資料−みやこの評判をきく」と題し の資料や情報提供の環境をどのように整えるかを て、 「みやこの名所」 「みやこの情報」 「みやこの学び」 学ぶものである。 「みやこの流行ごと」など、京都の歴史や文化事情 学校図書館で整備すべき資料・メディアをその を理解しながら、地域資料としての京都資料を身 形態、内容の両面から考え、資料収集のための情 近に感じていくことをめざして展開している。 報源に関する知識を身につけ、さらに、収集した 「みやこの名所」では、 『都名所図会』などを例 資料をどのように整理するのか、具体的には分類、 にして、江戸時代の京の都をうかがいながら、原 目録、件名などの知識と技術を身につける、とい 本である古典籍、その複製版、活字翻刻版、CD- う内容的に盛りだくさんな科目である。講義科目 ROM 版、さらに国際日本文化研究センターなどで として設定されているが、一方的に講義するだけ 掲出しているオンライン版など、さまざまな媒体を では理解を得ることが難しい科目でもある。 紹介する。また京都寺町や京極など、学生諸君に 本学の授業では、 『日本十進分類法』『日本目録 おなじみの地域の名所旧跡について、実際に『都 規則』など整理のためのツールが一人一部使用で 名所図会』で読んでみたりもしている。それらの きるよう準備されており、しかも少人数のクラス 名所は、現在変貌を遂げながらもなお残っている であるため、演習も取り入れることができる。時 箇所も多いので、それらを山川出版『京都府の歴 間的に十分ではないが、より深い理解が得られる 史散歩』や竹村俊則『昭和京都名所図会』などを 授業が可能となっている。 利用しながら、ガイドマップを作成したりもするが、 この科目で、受講者は、今まで利用者として見 授業ではついつい熱心にツアーガイドをしてしまう てきた学校図書館を、利用してもらう側から知る こともある。まあ、実際に学生諸君が、これらの ことになる。受講中に、専門職としての十分な知 資料を手にして、街に出向いてくれればそれで最高 識や技術を身につけることは無理かもしれない。 であるのだが…。 しかし、少なくとも、小・中・高等学校で、例え そして「みやこの情報」では、京のかわら版を読 ば図書館の排架方法、図書ラベルの数字の意味、 んだり京都新聞の略史を述べたりする。ここでもさ 目録の使い方など、図書館の仕組みについて学ん まざまな媒体を取り上げて、司書課程科目を越えて できていない受講者でも、これらを知ることで、 学生諸君の卒論などの面でも側面から支援できる 図書館を有効に利用できることを実感してもらい ものとなれば、と考えながら進めている。「みやこ たいと思っている。それによって、司書教諭とし の学び」では、京都の学校や、また「書物蔵」と て、子どもたちが生涯に渉って図書館を利用でき 題して各種の文庫を紹介し、その成り立ちやコレク るようになるには何を伝えていかなければならな ションの意義を述べる。先に名所案内のガイドと化 いかを理解し、現場で実践できる力をつけてもら してしまった事態の挽回として、この 「書物蔵」では、 いたいと願っている。 いささか「図書館的」な顔となって授業をおこなっ (平井むつみ 本学非常勤講師) ている。あとは「流行ごと」として、博覧会なども とりあげたりするが、歴史のある京都であるゆえに、 古今のカフェ事情なども、資料を紹介しながらやっ ていきたいと思う。ただ力量もついていかず、今後 いっそう研鑽をつんでいかねばと心を新たにしてい るところである。 (岡村敬二 本学教員) 2 * * * 授業の現場から 図書館資料vs.個人情報保護 卒業論文から おはなし会における図書館ボランティアの役割 ∼専門性と連携の意味∼ 第1.図書館は資料収集の自由を有する。 図書館ボランティアは、図書館の多くのサービス 第2.図書館は資料提供の自由を有する。 に参加している。本論文では、その中で障害者サー 公共図書館の入り口には、ほとんどと言っていいくら い、 「図書館の自由に関する宣言」が壁に貼ってあるは ずだ。上記の条文はこの「宣言」の第1、第2である。 この「宣言」は、憲法第21条の「表現の自由」に依拠 している。 「表現の自由」は「言論・出版の自由」のみ ならず、 「だれからも妨げられず自由に表現を受け取る自 由」を包含していると解釈されることから、 「知る自由」 とも一般に認識されている。つまり、図書館は利用者の 「知る自由」 、 「知る権利」を保障するものでなければな らない。 ところが、最近「個人情報保護法」が施行されてか ら、図書館資料にも影響が出てきている。その中の一 つに、 「名簿類の閲覧をどうするか」という問題が持ち 上がっている。国立国会図書館南亮一氏によれば、名 簿類は図書館が扱う様々な個人に関する情報の中で、 ビスと並んで参加割合が高い児童サービスを取り上 げ、特におはなし会に焦点を置いた。おはなし会は、 その楽しみを子ども達に伝えると共に、本と子ども 達を結びつける役割がある。専門性の高い図書館 業務の 1 つとして挙げられているので、専門職であ る司書が行うべきであるが、実際にはそのほとんど をボランティアが行っていることがわかった。事例と して京都市左京図書館と左京図書館友の会けやき の協力を得て、現在の図書館ではなぜおはなし会を ボランティアが行っているかを検証した。 図書館司書よりもボランティアの方が、専門性が 高いので、おはなし会を主にボランティアが行って いるのではないか、図書館サービスの一部として、 司書とボランティアの連携が不可欠なのではないか という 2 つの仮説を検証した。文献を中心に検証す 「個人情報関係資料」 (個人情報を一定の規則に従って ると共に、事例を知るために京都市左京図書館と 整理することにより特定の個人情報を検索することがで 左京図書館友の会けやきを対象にインタビュー調査 きるように体系的に構成されている図書館資料)に分類 を行った。その結果、ボランティアのほうが司書よ される。 『職員録』や『紳士録』 、各種団体の名簿類は、 りも専門性が高いかどうかはわからなかったが、左 人物情報を得る場合に強力な資料である。名前、住 京図書館ではそのボランティアの育成に積極的に関 所、所属など特定の個人に関する事柄が個人情報保護 の対象となると、図書館資料といえども、閲覧に供する ことが法的に認められるかどうか、が問題となってきて いる。 「閲覧できない資料ならば、所蔵する必要もない」 ということで、名簿類を収集しないことを決めた図書館 もあるらしい。 しかし、この「個人情報関係資料」は各自治体の個 人情報保護条例の適用外になっている場合が多い、と いわれている。各図書館で資料の提供について、プライ バシーに配慮しながら、もう一度再検討する必要がある ことはいうまでもないが、 「知る自由」の保障を十分認識 した上で、図書館の方針を決めなければならない。 図書館資料は、 「知る自由」=「知る権利」の保障 の上に存在しているのである。また、公共図書館は「地 域の人たちの情報センター」をめざしながら、その時代 の情報・資料を収集することにより、文化を継承してい く任務を担っているという観点に立って、資料の収集・ 本 の 扉 わっておらず、ボランティアは独自に研修に参加して いることがわかった。文献では、図書館のよきパー トナーとなるために司書とボランティアの連携が重要 であるという理念が示されていたが、インタビュー 調査の結果、連携が重要だという考えを持ちながら も、実際にはまだ連携が十分に行われていないこと が明らかとなった。 文献やインタビュー調査では図書館ボランティア の重要性は増しているだが、実践の場では連携が 行われていないことが明らかとなった。その理由と して、図書館側の人員不足などの問題によって、理 想的な連携を困難にしていることが考えられる。 それを如何にして解決できるかを今後の課題とし たい。 ※「卒業論文要約集 2005 年度」より (A.K. 人間文化学科卒業生) 保存を考えることが常に求められているのである。 (中島幸子 本学非常勤講師) 3 学校図書館の現在 石渡千夏 “いつも何か新しいことがあるところ、調べたい 貸出冊数も大きく変わってくるので、まずは、最新 ことを解決するところ、そして、ここにくるとなぜか の本、人気の本をリアルタイムで貸し出せるよう受入 ほっとする”図書館。 このような空間である、学 業務を優先しています。 校図書館で現在働いています。 それと同時に、館内にはいつも、季節や話題に 本校では、図書館だけでなく、 「メディアライブラ リー」と呼ばれる、 あわせた展示やイベントなどがあり、あらゆる機会 をとらえた資料提供によって、生徒の読書活動を支 <図書館> えています。 図書 43,811 冊(うち書庫 9,209 冊) 雑誌 12 種、新聞 3 紙、CD・CD-ROM148 枚 <メディアルーム> 人気のあった展示では、 ○先生からのオススメ本・生徒からのオススメ本 (先生から生徒へ、生徒から先生へ本をオススメ ノートパソコン 80 台、 DVD ソフト144 枚、 DVD プレーヤー 5 台 してもらい、展示) ○働くってどういうこと? <進路コーナー> ∼看護・医療の仕事編∼ ∼教える仕事編∼ デスクトップパソコン 5 台、赤本、入試関連資 料 ∼美術に関わる仕事編∼ (生徒から要望のあった仕事について、その仕事 の三つを併せ持つ、100%生徒のためのスペース に関する本や、その仕事に就くためにはどうする を提 供していま かといったことが書いてある本、その仕事をして す。 いる人が主人公となった本などを展示) このメディア ライブラリーを、 司書2人で運営 しており、 図 書 館資 料 の貸出・ 返却業務はもち 左側が著者 ろんのこと、図 ○スキホンランキング・貸出ランキング (1年間に読んだ本の中で好きな本のアンケート集 計したものや、貸出数を集計したものを展示) ○映画・ドラマの原作本・ノベライズ 他にも、トリノオリンピックやワールドカップなど、 生徒達の人気に合わせた展示を行っています。 また、イベントとしてはハロウィンパーティーや、 書の受入業務 クリス マス パ ー に、レファレンス、ノートパソコン、DVD(館内利用 ティーを行い、本 のみ)の貸出、 (人生の悩み相談 ?!)、まで何でもこ にふれてもらう機 なします。 会 を 作 って いま そして、なにより中学高校生は流行に敏感です!! 「○○(作家さん)の新しい本まだ∼?」 す。 前 回 の「 本 の 「○○シリーズの最新刊でたけどまだ∼?」 扉 」 でも、 書 か 「本屋で、○○って本見つけたんやけど入る∼?」 せていただきまし 「リクエストした本ってまだ∼?」 などなど… たが、私自身が学校図書館という空間で多くの時間 出版されたと同時に、すぐに図書館に入ると思っ て、楽しみに待っている生徒たち。 その期待を裏 を過ごし、 “図書館司書”という人を通じてたくさ んの本との出会いを経験してきました。 切らないように、最新の本を、常に本屋さんと同じ 私も夢が叶い、学校図書館司書として働けること ような早さで図書館に入れなくては、生徒達の興味 になったので、多くの生徒たちが素敵な本と出会っ はそがれてしまいます。 ていけるよう、お手伝いをしていきたいと思います。 この新刊がたくさん早く入るか、入らないかで、 4 京都精華女子中学高等学校 図書館司書 (人間文化学科 卒業生) 森茉莉全集 1−8 森 茉 莉 筑摩書房 1993−1994年 うっとり。ボール紙の箱から出すと、1 巻ごとに違 うインコやバラや野球ボールや子供の絵柄の千代紙 がデザインされたカバーが森茉莉の文章のイメージそ のままにそれはそれは華やかで買ってよかった、とし みじみ思う私の宝物である。 森茉莉は 1903 年森鷗外の長女として生まれた。 父に溺愛され、結婚後まもなく 19 歳で約 1 年のフラ ンス滞在を経験した。父とフランスは茉莉の文学と人 生を形作る不可欠の要素となる。鷗外の死後、2 度 の離婚へて 50 歳を超えてから父について書いたエッ セイ「父の帽子」で世に出、その後小説やエッセイな どを書き 1987 年に 84 歳で亡くなった。 文豪の娘で作家といえば、幸田露伴の娘の幸田文 が有名だが、森茉莉と幸田文は比較するのが気が引 けるくらいに好対照である。しゃきっとぱしっと働く 幸田文に対してぼーっとしてふわふわ歩きしょっちゅ うつまづく森茉莉である。戦後は経済的に困窮し、 編集者も驚くようなボロアパートに暮らしていたことも ある。 自分でも小説を書いているときだけ自分はまともで あり、小説を書いているときだけは大人、それ以外 のときは子供であると認めていて料理以外の家事は 公僕 The Japanese Civil Servant 三 島 正 メディアファクトリー 2001年 「公僕」という言葉を聞いて、その意味するところ を理解できる人がどのくらいいるだろうか。簡単に解 釈すればおおやけのしもべ。 『広辞苑』をひいてみる と、公衆に奉仕するものの意、公務員などの称、と ある。つまりこの写真集は公務員を撮ったものなのだ。 しかしこの写真集に出てくる公務員は、普段私たち がよく接しているような府庁や市役所の人たちではな い。例えば宮内庁の鵜匠とか文部科学省の登山研修 所とか京都府警察本部の平安騎馬隊とか、所属して いる省庁の名前は聞いたことがあってもそこで「こん な仕事もしているのか!」と思うような仕事をしている 公務員ばかりである。そんな彼らが、現場で、きちん と全員制服を着て、ちゃんと正面を向いて写っている。 いわば、 「公式ポートレート」であり、そこからは彼ら の自分の仕事に対する誇りを読み取ることができる。 私たちが普段、ニュースや新聞で省庁の名前を目 にするのは天下りや談合、機密の漏洩など大抵悪い ことであることが多いため、公務員に対して悪いイメ ージを抱くことも多い。しかしこの本を読んでいると、 例えば海外から輸入される植物に害虫やウイルスがつ いてきていないかを調べる防疫官や、豪雪地帯の国 できず、掃除は特にダメで部屋はきの こが生えていただの、昼間に部屋を訪 れた室生犀星があまりの部屋の惨状 に心配で夜眠れなくなっただののエピ ソードには事欠かない。 全集には代表作「甘い蜜の部屋」や「贅沢貧乏」 、 美少年物の「恋人たちの森」などの小説、長短さま ざまのエッセイ類、途方もないテレビ評「ドッキリチャ ンネル」や翻訳などがおさめられている。 とくに、 「贅沢貧乏」 「気違いマリア」など作者本 人が主人公として登場し、日常と心象風景をこまご まと描いた小説は読み返すたび新鮮であり、独特の ユーモアも楽しく読むのがやめられなくなる。貧乏な アパート暮らしの日常が、森茉莉の強靭な空想力を 駆使してつづられると、いつの間にか現実にしばられ た醜くせこい世間への痛烈な批判となる。 〈夢こそこ の世の真性の現実。そうして宝石〉夢見がちな子供 の顔に、それとは対照的な、自分自身や敬愛してや まない父鷗外をも客観的に突き放す作家の目が奇跡 的に同居している。 明治の令嬢森茉莉にとってもそうだったように、誰 にとっても現実はたいていしんどいものである。図書 館だって現実はいつも厳しい。空想は子どもだけのも のではない。ままならない現実をねじ伏せるには空想 しなさい、想像力だけが人生を豊かにするのだという 一番大切なことをいつも森茉莉は教えてくれる。 (谷愛子 本学 学術情報センター図書館司書) 本 の 扉 道の維持管理をしている部署や、自動 車の安全審査を行っている部署など、 直接的であれ間接的であれ、私たち が毎日普通に生活していくために彼ら が縁の下で支えてくれていることに気付かされ、素直 に頭の下がる気持ちになる。また、各写真につけられ ている説明文には、現場の人間にしか語ることのでき ない言葉や様々なエピソードや、そこで行われている 伝統やこだわりなどの話も盛り込まれており、これも とても面白い。 大きな集団ほど、それを構成する小さな要素は見 えにくい。それは省庁にも言えることであって、省庁 という大きな枠のなかで、その省庁が取り扱っている すべての内容を知ることは不可能に近い。それに外 務省や文部科学省といったところなら名前からもある 程度取り扱っている内容の推察ができるが、総務省 や内閣府といったところでは名前も漠然としていてど のようなことをしているのか想像がつかない。それに 公務員というだけで堅苦しいイメージを人々は抱いて しまう。ときには小さな部分に光を当ててそこで働い ている人々を見せることで、公務員や各省庁の仕事を 広く知らせることにもなるだろう。私には、バイトも含 めて、果たしてここまで誇りを持って自分のやるべき ことができているかと問いかけられているように感じ られた。 (竹本美穂 人間文化専攻修士課程) 5 インターンの感想 国連広報センター (UNDS)でのインターンを経験して 2 0 0 6 年 7∼ 8月の 2ヶ月間、国 連 広 報 センター のドキュメントサ ービス( U N D S)でインターン を 経 験 しまし た 。ここで は 、国 連 文 書 を お 客 様 に 提 供 することが 主な 仕 事 で す。インターン 期 間中は、レファレンス業 務 や 情 報 探 索 ガイダ ンスと統 計 ナビの実 施、DP I(D epa r t me nt of P ubl ic I n for m at ion)資 料 の整理、子どもを対 象 にしたライブラリーツアーを 担 当しました 。 具体的に、レファレンス業務で実際に受け付けた質 子どもたちに検索方法を説明している金川さん 問を例に挙げると、 「『人権教育のための国連10年』 のツアーでは、国連の文書に触れてもらうことを目 の原文が見たい。」という問い合わせがありました。 的に、検索方法を簡単に説明したり、本や資料を このような場合、データベース(ODS,UNBISNET,UN- 実 際に手にとりながら内容を紹 介したりします。 I-QUEなど)を使ったり、UN本部のHPにアクセス その際、できるだけ国 連 の 存 在 が身 近に 感じら したりしてこの原文が 載っている文 書を検 索しま れ るように 、興 味を 引くような 内 容 を 選 び、歴 す。データベースはインターネットに接続さえできれ 史 的な背 景と合 わ せながら説 明をするよう工夫 ば、誰でもどこからでも見られるようになっていま して準備しました。また、興味を持ったことについて す。なかでも、ODSでは文書の全文を入手すること 家に帰ってからも学習できるように、お土産の資料を ができます。そのことを知った時、国連の文書や情 用意するというツアー参加後のケアも考えました。 報が一般公開されていることやそれがWeb上で手 しかし 、このように直 接お 客 様 に 接 する業 務 に入るということに大変驚きました。レファレンス ばかりではありません。これ以外 に、私は、DP I では、まずこれらのツールを使って検索します。そ 資 料 をデータベースと書 架で 管 理 する仕事をし の後、内容に応じて本や報 告 書、パンフレット、 ていました 。この 作 業は非 常に 根 気 が いります ポスター、CD - ROMなどを使って調べます。そし が、作 業を通して資 料が 整 備されているからこそ て、情報が正確であるかを十分に確認したうえで、お 迅 速な対応ができるということを実感しました。 客様にご案内します。この業務は、迅速な対応と正 このような経験を通して、司書課程を履修してい 確な情報提供が求められるため、最も緊張がともな る者として、情報提供の迅速性や正確性および情報 う仕事でした。また、お客様は個人の方だけではな の整理や管理の重要性を、身をもって知ることがで く、マスコミの方もいらっしゃいます。そのため、回答 きました。また、大学院で図書館や博物館が行う子 した内容が記事や放送の情報源となることもあり、 どものへの学習支援について研究している者として、 非常に責任のある仕事でした。しかし、回答ができた 子どもの年齢や関心に合わせてツアーの内容を計 時の達成感はとても大きく、やりがいを感じました。 画することができ、よい勉強になりました。加えて、 その他に、毎月行われているガイダンスとナビを実 一緒にインターンをしていた仲間と、業務や研究につ 施するのもインターンの仕事です。日頃、レファレ いて互いに意見を交換しあったり、一緒に考えたり ンスの時に使っているデータベースの紹 介と具体 するなかでたくさん刺激を受けました。このような、 的な利用方法について、お客様にスクリーンを使 充実したインターンを振り返って、国連の情報に直 いながら実演します。そのなかでも、私はTreaty に触れたことや情報提供を体験できたこと、情報の入 Collectionの説明を担当することになり、使いこな 手方法を習得できたことは貴重な経験だったと思いま せるようになるまで様々なパターンを予測して何度 す。この経験を糧にし、今後の研究にも生かしたいと も練習しました。また、その傍ら子どもを対象にし 思っています。 たツアーの練習を約1ヵ月以上かけてしました。こ 6 (金川泰子 人間文化専攻修士課程) 外部研修報告 資格試験合格体験記 アジア情報研修を受けて 「情報検索基礎能力試験」 に合格して 2006 年 10 月 17 日・18 日 の 2 日 間、 私 は 国 私は、情報社会という中で図書館は、色々な情報 立国会図書館関西館のアジア情報課主催の「平 が集まっているので、どのようにして情報を入手する 成 18 年度アジア情報研修」に参加しました。こ のかを学びたいと思い図書館司書の資格を取ること の研修は各図書館におけるアジア情報に関する にしました。色々と授業を受けている中で、パソコ サービスの向上を目的に行われ、アラビア文字 ンを使って情報検索の仕方を学ぶ科目「情報機器 やその翻字を使っての文献検索、アラブ諸国の 論」がありました。その授業を活かしたいと思い自 書籍についてなど、内容は非常に幅広いもので ら進んで情報検索基礎能力試験を受けることに決 した。上記の研修内容に対して、私自身は素人 めました。 で聞く事・知る事の全てが物珍しく、受身一辺 その試験は、情報検索の基礎知識を学ぶことに 倒でメモを書き溜めていきました。 より、必要な情報源に効果的にアクセスし、それを そんな中、困り果てる一方で、これは必ず出 評価し、使いこなす活用能力を評価するとあり、こ 来るようになりたいと思ったのはアラビア文字 の資格試験に挑戦してみることにしました。試験は と翻字での文献検索でした。アラビア文字には 一年に一回しかないので、テストに向けて先生にメ 様々な書体があり、装飾性が強いため、文字と ールで質問をしたり、過去問をコピーして何回も解き は関係ない蛇のような形をした“飾り”が書籍 なおしたりして力を入れて勉強しました。しかも過去 の書名に描かれています。そのため、文字自体 問対策では、教科書に載っていないことまで問題が が蛇のように見えるアラビア文字故に、私は文 でている上に、答えがなかったので自ら調べて、答 字も“飾り”も混合して考える結果、一文字解 えを見つけながら学んで行きました。 読するのに数分かかる始末。何度も職員の方に 一番難しかったのは、データーベースの名前と概 教えてもらい、何とか自力で文献に辿りついた 要を覚えることでした。似ているものが多く、混乱 時は、「日本語での文献探索であればどんな文献 してしまうこともありましたが、時間をかけて毎日見 でも探索できる」という変な自信を持ちました。 ることで覚えることができました。そして本番のテス さて、講義で興味深かったのは中東圏の一部 トを受けたときは緊張し、合格できなかっただろう の図書館では目録が作成も分類もせず配架され と思っていたのですが合格していたので、びっくりし るために書架は乱雑な状態という現状がある事 ました。これからは、図書館司書の勉強も、コツコ でした。この原因は言語の多さにあります。例 ツと続けていきたいと思います。 (一色里紗 生涯発達心理学科) えば、インドでは憲法で制定された重要言語は 18 以上ありますが、実際はそれ以上存在します。 本 の 扉 「情報検索基礎能力試験」は、情報専門家をめ 当然、言語の数に文字の数も比例します。ここ ざす者を対象とした試験で、 「情報検索応用能力試 でネックになるのは数多くある文字の中から、 験」のための予備コース。目録・分類、シソーラス どの文字を使って目録を作るかです。どの文字 といった情報管理の知識やデータベースに関する を使っても周囲からは必ず反発が起きます。そ 知識が問われます。 のために、図書館は図書館としての機能が果た なお、合格者一覧は『情報の科学と技術』に掲 されていないのです。 載され、一色さんの名前は Vol.56 No.3 p.126 に 今回の研修に参加して、将来、図書館員を目 あります。 指す人は英語以外の第 2 外国語を使いこなす事、 常に様々な社会状況に関心を持つことが大切な のではないかと思いました。 (植田まり 人間文化学科) 7 て製作されているものも多く、凝った作品の出来 栄えに感心しきり。 8 月 26 日(木)京都ライトハウス見学 「資料特論」授業の最終日に、京都ライトハウス の施設見学をおこなった。点字図書館の役割や活 動について学んだ。 11 月 13 日(土)小学校にてブックトーク ノートルダム学院小学校で、1 年生を対 象に司 書課程の学生が、 「色」をテーマにブックトークを 行った。実 施した学 生は初めての実 践でもあり、 子どもたちの反応を心配していたが、当日は子ども たちが熱心に聞いてくれただけではなく、問いか けにどんどん手を挙げてくれ、むしろたくさんの反 応を捌くのに苦労していたようであった。小学校に はよい機会を提供していただき、感謝している。 1 月 17 日(土)司書課程オリエンテーション 来年度履修希望者対象のオリエンテーション。 編集後記 第 2 号がようやく印 刷 にまわった。桜 の開 花 予 想が 聞かれ はじめた 3 月にはいり、駆け込 みで 編集にかかった。生来が追い込み気質ではなく、 臆病なうえに追い込んで仕事をすると精神的にも 肉体的にもツケが回ってきて、休養を余儀なくさ れるという情けない体質なので、早めに仕掛けね ばと思うのだが、日々の仕事に追われてこうした 仕儀とあいなった。3 号は、なんとか夏に編集を すませて秋刊行とまいりたいものだと思う。いろ いろな仕事がつまってきていささか息切れ気味な のだが、持 続 することこそが大事と心に決めて、 次号も励みたいと思っている。 (0) 11 月 11 日(土)・18 日(土)製本技術講習会 講師に藤原孝先生をお招きして講習会を実施。 履修人数の関係もあり、半日で洋綴じ和綴じに挑 戦するという、例年とはちょっとメニューを変えて 実施した。例年の一日コースに比べて、集中力は この半日コースの方が切れずに持続していたような 気もした。 やっと第2号発行の運びとなった。本誌の編集を 念 頭に置きつつも、毎日の 仕事に追われて、年 度末になってしまった。早くから原稿を寄せてく ださった方々にはまことに申し訳なく、第3号は 原稿依頼・編集・発行の仕事がスムーズに進むよ う工夫をしたいので、ぜひあきれずに次号以降も ご協力・ご愛読いただきたいと願っている。 (零) 内心冷や汗ものだった第 2 号が発行となり、よう やく一つ荷を降ろせた感じがする。よかった。 (m) 京都ノートルダム女子大学 司書・司書教諭課程 ニューズレター 本の扉 第2号 2007年3月30日 11 月末∼ 1 月末 「図書館サービス論」展示実習 この期間、 「図書館サービス論」履修生による、 図書館展示がおこなわれる。今回のテーマは、 「お 菓子な図書館」。毎回のことだが、展示小物やポ スターその他もろもろの製作は授業時間外を使っ 8 編集・発行 京都ノートルダム女子大学 司書・司書教諭課程 〒606-0847 京都市左京区下鴨南野々神町1 tel 075-781-1173(代) mail [email protected] 印 刷 用 紙 題字デザイン 和光印刷株式会社 紀州色上質紙アイボリー厚口 松元めぐみ