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心も育つ理科コンテンツの開発と活用(その2)

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心も育つ理科コンテンツの開発と活用(その2)
心も育つ理科コンテンツの開発と活用(その2)
∼「でじこんマスターへの道」,「岩石と鉱物の広場」の実践を通して∼
研究の概要
我が国では「教育の情報化」を図り,各教科で「分かる授業」の展開と情報活用能力育成を課題とし
ている。これを受けて,児童生徒の理解を助け,教師が手軽に使える教科教育用のディジタルコンテン
ツとその活用法の開発が手がけられてきた。昨年度の研究では,動植物研究家や写真家の精妙な映像に
加えて,見方・考え方を付加したコンテンツを活用して,豊かな見方・考え方や心情を育成するための
コンテンツ開発と活用の効果を小学校において明らかにした。本年度は,小学校での成果と課題をもと
に,中学校においても見方・考え方を付加したコンテンツが生徒の心を育てることができるか,また情
報活用の実践力を育成できるか研究を行った。
[キーワード]
1
見方・考え方
理科コンテンツ
ディジタルコンテンツ
中学校
情報活用の実践力
はじめに
心の教育が叫ばれている背景には,知識習得と
そこで,本研究では,短時間でディジタルコン
しての学習と全人格教育としての学習の乖離があ
テンツに慣れ親しむための学習プログラムの開発
る。学習とは本来,知識を通して人としての心と
と情報活用の実践力の育成,ならびに見方・考え
生き方を学ぶべきものだが,現代の児童生徒の学
方を付加したコンテンツが中学校においても心を
習は,知識の習得にのみ終始し,人格形成に結び
育てることができるかどうか実証実験を行った。
つきにくいという問題が起こっている。
から納められている写真や動画が一目で閲覧で
ディジタルコンテンツ活用学習プログ
ラムの開発
き,動植物の生態や精妙さを視覚に訴えて児童生
「心も育つ理科コンテンツ」を活用した授業を
徒のイメージを広げ理解を助けるコンテンツを作
実践するためには,生徒は事前にディジタルコン
成した。さらに,動植物研究家・写真家等の自然
テンツ活用の基本操作に慣れ親しんでおく必要が
の事物・現象に対する見方・考え方,児童生徒へ
ある。そこで,1∼2時間程度の短時間でディジ
のメッセージを付加して,心も育てる授業を創造
タルコンテンツ活用の基本操作を習得する学習プ
し自然に親しむ心を育成できることを小学校での
ログラムを開発した。
実証実験で明らかにした。一方,ディジタルコン
(1) ディジタルコンテンツの検索操作習得
昨年度の研究では,図1のようにトップページ
テンツに慣れ親しむための学習プログラム開発と
情報活用の実践力の育成が課題として残った。
2
コンピュータのスキルを意識したり,身構え
ることなく,クイズやスタンプラリーを通して,
多くのディジタルコンテンツを閲覧したり,検索
機能を使用できるようになる1時間の学習プログ
ラムを開発した。コンピュータリテラシーの乏し
い生徒には,小学校低学年から活用できる「でじ
こんスタンプラリー」を,テキスト入力,カット
&ペースト等の基本操作が身に付いている生徒に
は,図2に示すクイズ形式の「でじこんマスター
への道① 」,「でじこんスタンプラリー」を開発
した。これは,コンテンツを見て解答するだけで
なく,プレゼンテーションソフトやホームページ
作成ソフトに回答コンテンツのサムネイルをコピ
図1
心も育つ理科コンテンツのコンセプト
ー&ペーストし,テキスト入 力も行う。回答用
紙となるプレゼンテーションファイルは,あら
かじめ各クライアントに配付した(図3 )。検
索機能を使い,求めるコンテンツを探し出すた
めに,キーワード入力も盛り込んだ。生徒は,
ディジタルコンテンツを検索し,クイズを解く
ことに集中しているため,楽しんで慣れ親しむ
中で,自然にディジタルコンテンツ活用の基本
操作を習得することができた。
図2
(2) プレゼンテーションソフトの操作習得
「でじこんマスターへの道②」は,ディジタ
ルコンテンツをダウンロードしてクイズの作成を
通して,わずか1時間でプレゼンテーションソフ
トの基礎操作を習得できる学習プログラムであ
る。テキストは,プレゼンテーションソフトのバ
ージョンが学校によって異なることを配慮し,複
数準備した。このクイズ作りでは,クイズとなる
コンテンツを選択し,友達や教師に分かりやすく
魅力あるクイズを作ることが要求される。そのた
め,プレゼンテーションソフトの操作を習得する
だけでなく,情報活用の実践力のうち情報機器の
活用意欲や相手意識を高めることにつながると考
えた。実際,生徒の作品を見ると問題文やヒント
の出し方にも工夫が見られた。指導は,御津町立
御津中学校小倉恭彦教諭が行った。
ディジタルコンテンツ活用の基本操作
習得のための学習プログラム用テキスト
図3
図4
クイズを作成しているようす
図5
生徒(中学校第1学年)の作品例
「でじこんマスターへの道①」クイズ挑戦
の流れ(テキストP.1)
(3) 活用評価
表1
表現力・コミュニケーションの能力・態度
1.授業中,自分から手をあげて発表する。
2.授業中,先生からあてられなければいいなあと
思う。(逆転項目)
3.授業中,先生から意見や感想を聞かれたとき,
どう答えていいかわからずだまってしまう。
(逆転項目)
4.授業中,自分の考えや感想を発表するとき大き
な声で伝える。
5.自分の考えや感想を発表するとき,先生やみん
なに聞こえたか気をつける。
6.自分の考えや感想を発表するとき,先生やみん
なの顔を見て話すようにしている。
7.自分が発表するときは,何を伝えるか箇条書き
にしておく。
8.自分が発表するときは,どのようなことに気を
つけたら先生や友達によく伝わるか考える。
9.発表会用の資料作りでは,みんなに見えるよう
に字の大きさや色使いに気をつける。
10.発表会用の資料を使って発表するときには,み
んなに効果的に伝わるように話や資料の順番を考
える。
11.先生や友達に伝えるために,画用紙や模造紙を
使って効果的に資料を作成することができる。
12. 先生や友達に伝えるために,ディジタルカメラ
を使って効果的に資料を作成することができる。
13. 先生や友達に伝えるために,ビデオカメラを使
って効果的に資料を作成することができる。
14. 先生や友達に伝えるために,コンピュータに写
真やビデオを取り込んで効果的に資料を作成する
ことができる。
15. 発表の時,先生や友達がイメージしやすいよう
に,具体的な例や体験などをまじえて話す。
16. 発表の時,先生や友達がイメージしやすいよう
① 被験者の実態とアンケートの内容
御津中学校第1学年は,素直で熱心に学習に
取り組むことができる反面,級友の前で自分の
考えを進んで発表することに躊躇する生徒が多
い。そこで, 表現の能力・態度の状況を 実証授
業の前後で調査して, 評価・分析することにし
た。質問の内容は右の表1に示す。質問番号14∼
18は,① 自分一人でできる ② 手伝ってもらっ
たらできる ③ できない,その他は,① いつも
そう ② ときどきそう ③ ほとんどないの3肢
選択とした。
② 調査結果
前調査は平成15年10月28日,後調査は12月22日
に19個のアンケートを,第1学年3クラス100名
に実施した。因子分析を行う上で標本の妥当性を
検討したが,KMOが0.738>0.5であり,質問番
号1∼19の変量を用いて因子分析することに意味
があることが分かった。Bartlettの球面性検定は
有意確率が0となり有意水準0.05より小さいので
質問番号1∼19の変量の間に関係があることを意
味している。固有値が1より大きく意味のある因
子は,因子1∼5の5つであった。
バリマックス法7回の反復回転で収束して得ら
れた因子負荷量とアンケート内容から,因子1は
質問番号12,13,14で「情報機器活用態度 」,因子
2は質問番号1,2,3で「積極的発表態度 」,因
子3は質問番号9,10,15で「発表資料作成態度」,
因子4は質問番号5,6,16で「受け手の立場に留
意する態度 」,因子5は質問番号8,19で「分か
りやすく伝える態度」を表していると考えられる。
因子1∼5について,前調査と後調査の集計を
χ 2 検定した結果を下の表2に示す。因子1「情
報機器活用態度」は,前調査より後調査の方が上
昇傾向が確認された 。(危険率10%有意差有り)
に,写真や映像を紹介しながら話す。
17. 発表の時,先生や友達が気持ちよく聞けるよう
に,笑顔で話すように気をつけている。
18. 友達の発表を聞いて質問ができる。
19.友達の発表を聞いてもっとわかりやすく伝える
ためにはどうしたらいいか気にかける。
表2
Peasonのχ2 値と有意差の有無
質問番号
χ2
値 有意差(危険率)
因子1 12,13,14
5.363
有(10%)
因子2 1,2,3
1.074
無
因子3 9,10,15
3.987
無
因子4 5,6,16
3.009
無
因子5 8,19
0.243
無
「でじこんマスターへの道②」は17,000件の教
育用素材集からヒントのキーワードをもとに検索
して目的のディジタルコンテンツを探し出すとい
うクイズ作りである。生徒はこのクイズ作りを通
して,コンピュータやディジタルコンテンツに慣
れ親しみ因子1「情報機器活用態度」が上昇した
と考えられる。
3
「岩 石 ・ 鉱 物 の 広 場 」 の 開 発 と 評 価
(1) コンテンツ開発
平成14年度の実証授業では,小学校で生物領
域が中心であった。本年度は,中学校地学分野
でのコンテンツ開発と実証授業を目指した。岡
山大学教授
草地
功氏は,世界で最も多くの
新鉱物を発見している科学者の一人であり,草
図6
「岩石・鉱物の広場」のページ
図7
動画再生コントロールソフト「DRAGRI」
地氏の御協力を得て,中学校第1学年理科「大
地の変化」の単元で活用を想定して「岩石・鉱
物の広場」のコンテンツを開発した。草地氏が
所有する鉱物の一部を「鉱物・宝石コレクショ
ン」として,興味関心を高めることを目的にと
りあげた。学習内容の中心となる岩石の組織・
鉱物の学習では,偏光顕微鏡が高価なため生徒
一人に1台というわけにいかない。そこで,岩
石薄片の偏向顕微鏡画像をディジタルコンテン
ツにした。この画像の特徴は,動画再生コント
ロールソフト「DRAGRI 」(NTTアドバンステ
ク ノ ロ ジ ー 社 製 http://www.dragri-fan.com/) を 活
用して,生徒が自由に画像を回転させることが
できる点である 。見 方 ・ 考 え 方 コ ン テ ン ツ は ,
「草地先生って?」の中で科学者として探
で偏光顕微鏡画像をインタラクティブに回転
究する姿勢や自然の見方・考え方をコンテ
ンツ化した。
(2) 単元構成
第2次
火成岩の特徴
第1時
岩石を造る造岩鉱物の特徴--------1時間
第2時
火成岩の組織---------------------1時間
第3時
火成岩の分類,鉱物学者-----------1時間
(指導者
第1時
目標
○
倉敷市立福田中学校
野稲
幸男教諭)
本時案
水晶の結晶面角度の観察を行い,鉱物の結晶がその種類によって決まっていることを例を
あげて説明できる。
学習活動
指導上の留意点
1.本時のねらい 1.本時は鉱物について実物や映像を観察しながら学習することを告げる。
を知る。
○
鉱物の標本や映像は,主に鉱物研究の第一人者である岡山大学の草地教授からお借りした
ものであることを強調し,「岩石・鉱物の広場」コンテンツで草地教授を紹介する。
○
鉱物への興味を喚起し,鉱物を身近に感じることができるように,結晶の美しいものや金
属の原料となる鉱石など生活に関係している
ものを中心に,実物と映像で提示して動機付
けを行う。
2.水晶の観察を 2.一見いろいろな形があるように見える水晶の
する。
共通性を探るという目的をはっきりさせた後,
結晶面角度の測定を実施させる。
3.鉱物観察の観 3.水晶の特徴を発表させた後,以下に示す鉱物
点をまとめる。
観察の観点で観察させる。
(色,結晶形,光沢,劈開,透明度,硬度,磁性)
4.その他の造岩 4.鉱物観察のポイントを意識させながら,代表
鉱物を観察し特
的な造岩鉱物を6種類観察させ,その特徴を簡
徴をまとめる。
単にメモさせる。
( ・クロウンモ
・セキエイ
・チョウセキ
第2時
目標
○
・カクセンセキ
図8
美しい鉱物に見入る生徒
・カンランセキ )
・キセキ
本時案
花崗岩と安山岩とそれらの岩石薄片の観察を行い,火成岩の組織と色の違いが,造岩鉱物
の結晶の大きさや種類の違いであることを指摘できる。
学習活動
指導上の留意点
1.本時のねらい 1.6種類の火成岩を仲間分けさせて,火成岩の分
を知る。
類を学習することを告げる。
○
花崗岩,閃緑岩,斑糲岩,流紋岩,安山岩,
玄武岩を色やつくりの違いで自由に仲間分けす
る活動を取り入れて動機付けを行う。
2.花崗岩,安山 2.あらかじめ撮影しておいた火成岩の岩石薄片の
岩とそれらの岩
顕微鏡画像を2人1台のノートパソコンで観察させる。
石薄片の観察を
○
行う。
厚さのちがう白雲母の標本を2枚の偏光板で
観察する実習を通して,偏光顕微鏡に使われて
いる偏光板の原理を簡単に説明する。
図9
3.花崗岩と安山 3.等粒状組織,斑状組織の違いがマグマの冷え方
岩の組織の違い
に関係することを視聴覚教材と再結晶のモデル実
をまとめる。
験で説明する。
図10
偏光板の不思議に驚く
図11
偏光顕微鏡画像を観察
電子情報ボードで偏光顕微鏡
画像を回転できることを演示
図12
鉱物の種類を識別
第3時
目標
○
本時案
ディジタルコンテンツを通して鉱物の研究者の見方・考え方にふれて,岩石や・鉱物の学
習の意義や自然を探究する見方・考え方を例を挙げて説明できる。
学習活動
指導上の留意点
1.前時の復習をする。 1.閃緑岩,斑糲岩,流紋岩,玄武岩を花崗
岩と安山岩の組織の違いで仲間分けさせ前
時の復習をする。
2.草地先生からのメッ 2.鉱物研究の第一人者である草地教授から,
セージを聞く。
研究の様子の紹介や,研究の楽しさや難し
さを語っている見方・考え方コンテンツの
一部を一斉に視聴させ,科学者の仕事や自
然を見つめる姿勢を紹介する。
3.ディジタルコンテン 3.班に2台のノートパソコンで「岩石・鉱
ツ「岩石・鉱物の広場」
物の広場」を自由に視聴させる。
を自由に視聴する
○
図13
見方・考え方コンテンツの場
所を電子情報ボードで示す
草地先生が長年研究を続けてこられた
理由や,研究への姿勢,自然の事物・現象に対する見方や考え方を中心に視聴するよ
うに助言する。
図14
2人に1台のパソコンで
見方・考え方にふれる
図15
草地先生のメッセージ
にしっかりと耳を傾ける
図16
気に入ったメッセージを
紹介し合う
4.草地先生にメッセー 4.今回の鉱物の授業に標本やメッセージを提供していただいた草地教授に対して,感想や
ジを書く。
質問などを書かせ,科学者に親近感を抱かせるとともに,自分の気持ちを伝える努力を
させる。
○
班単位で,自分の気持ちを発表して伝えあう時間を取り,その後各班の代表に全体
で発表させる。
図17
ワークシートにメモ
図18
クラスで発表し合う
5 . 次 の 学 習 の 予 告 を 5.次の時間は,火成岩以外の岩石を学習することを告げる。
聞く。
(3) 活用評価
表3
① 被験者の実態とアンケートの内容
倉敷市立福田中学校の第1学年の生徒は,特
「岩石・鉱物の広場」のアンケート
「岩石・鉱物の広場」アンケート
1.理科の授業は好きだ。
別活動の時間に「身近な職業調べ」を行ってい
2.将来科学のしごとにつきたい。
る。生徒の身の回りの大人には,商店や飲食業
3.科学は生活の役に立っている。
の他,工業の従業員として働く方は多いが,
4.科学者は危険(きけん)な仕事をしている。
科 学 者 に 接 し た こ と は ま っ た く な い 。「岩石・
5.科学者は暗い。
鉱物の広場」では,鉱物の研究を行っている科学
6.科学者はこわい。
者の見方・考え方を付加情報としたコンテンツを
7.わからないことをわかるようにすることはすばら
活用して,科学者のイメージがどのように変容し
しい。
たか,また科学者の見方・考え方にどの程度共感
8.いろいろな面からものごとをみるようにしたい。
しているかを,右の表3に示すアンケートを作成
9.わからないことをわかるようにしたい。
して調査した。
10.きらいなことはやらない方がいい。
② 調査結果
11.好きなことだけをやるべきだ。
前調査は平成16年1月13∼14日,後調査は1月
12.興味(きょうみ)のないことはしない方がよい。
23日に,表3の「岩石・鉱物の広場」アンケート
13.石を好きになるには時間が必要だ。
を第1学年5クラス140名に実施した。因子分析
14.石を勉強するといろいろな面からものごとをみる
を行う上で標本の妥当性を検討したが,KMOが
ことができるようになる。
0.834>0.5であり,質問番号1∼27の変量を用い
15.科学者に会ってみたい。
て因子分析することに意味があることが分かっ
16.石をみると「この石はどのようにしてできたのか
た。また,Bartlettの球面性検定は有意確率が0
なあ?」と思う。
となり有意水準0.05より小さいので質問番号1∼
17.岩石や鉱物は地球の生い立ちを知る手がかりだ。
27の変量の間に関係があるといえる。
18.「どうして?」と思うのは楽しい。
分散の合計より,固有値が1より大きく意味の
19.理科の授業で「ふしぎだなあ」と思う。
ある因子は,因子1∼6の6つであった。バリマ
20.岩石に興味はない。
ックス法9回の反復回転で収束して得られた因子
21.科学者はきらい。
負荷量とアンケート内容から,因子1は質問番号
22.石や鉱物を採集(さいしゅう)に行ってみたい。
16,22,23,27で「石への興味関心 」,因子2は質
23.石の勉強はおもしろい。
問番号3,7,9,25で「分かることの大切さ 」,因子
24.先生にすすめられたら挑戦してみる。
3は質問番号10,11,12で「嫌忌避心 」,因子4は
25.人のアドバイスを聞くことは大切だ。
質問番号17,18で「探究心」,因子5は質問番号5,
26.石や鉱物はきれいだ。
6,21で「科学者のマイナスイメージ 」,因子6は
27.石や鉱物のできかたを知りたい。
質問番号13,20で「岩石のとっつきにくさ」を表
していると考えた。
右下の表4に,Peasonのχ 2 値と有意差の有無
を示す。因子1∼6について,前調査と後調査の
表4
Peasonのχ2 値と有意差の有無
質問番号
χ2
値 有意差(危険率)
集計結果を検定したところ有意差が認められたの
因子1 16,22,23,27 41.062
有(0.1%)
は,因子1「石への興味関心 」,因子2「分かる
因子2 3,7,9,25
10.862
有(5%)
ことの大切さ 」,因子4「探究心 」,因子5「科
因子3 10,11,12
2.526
無
学者のマイナスイメージ」であった。
因子4 17,18
16.406
有(0.1%)
因子5 5,6,21
40.315
有(0.1%)
因子6 13,20
4.421
無
次のぺージの図19∼22に,有意差が認められた
因子のグラフを示す。x軸は5段階の評価,y軸
は調査時期(前調査,後調査)そしてz軸は割合
を示す。
(%)
50
30
40
30
20
22
(%)
50
38
40
14
0
とても
図19
6
10
ふつう
17
2
0
後調査
前調査
ふつう
後調査
前調査
3
まったく
まったく
図20
2
5
とても
因子2「分かることの大切さ」(危険率5%)
(%)
50
(%)
50
37
40
22
27
30
20
40
45 31
20
7
16
とても
43
30
0
図21
14
10
6
因子1「石への興味関心」(危険率0.1%)
10
36
20
26
10
36
39
30
19
29
46
6
ふつう
10
2
5
0
後調査
前調査
5
まったく
因子4「探究心」(危険率0.1%)
③ 考察
【興味関心の高揚】
図22
19
8
とても
35
25
6
3
30
26
ふつう
後調査
前調査
まったく
因子5「科学者のマイナスイメージ」
(危険率0.1%)
4
おわりに
研究2年目の本年度は,昨年度の小学校での成
因子1「石への興味関心」が有意に上昇したの
果と課題を踏まえて,中学校における情報活用の
は,学習前には岩石・鉱物に親しんだ経験のない
実践力の育成のための学習プログラム開発と見方
生徒が多いが,美しい鉱物や偏光顕微鏡で岩石の
・考え方を付加したディジタルコンテンツにふれ
組織を観察することを通してその魅力を感じた生
て心も育てる授業を実証実験してきた。この結果,
徒が多かったと考えられる。
「でじこんマスターへの道①,②」を活用したわ
【見方・考え方のモデリング】
ずか2時間の学習プログラムで,ディジタルコン
因子2「分かることの大切さ 」,因子4「探究
テンツに慣れ親しみ,情報機器を積極的に活用し
心」はいずれも草地教授が見方・考え方コンテン
ようとする態度の伸張傾向がみられた。さらに,
ツの中で取り上げていた内容である。生徒は,草
見方・考え方を付加したコンテンツを活用する授
地教授の見方・考え方に共感しモデリングしてい
業により,昨年度明らかにした小学生同様中学生
るのである。これらの因子が有意に上昇した結果
にとっても,見方・考え方をモデリングして心も
から,見方・考え方を付加したコンテンツを活用
育成できることを実証することができた。
する授業は,中学生にも有効であるといえる。
【科学者への理解】
来年度は他教科での活用を拡げ,情報教育なら
びに心の教育の普及啓発を更に進めていきたい。
因子5「科学者のマイナスイメージ」は,有意
に払拭された。これは,生徒にとって遠い存在で
あり,暗い,あぶないといったマイナスのイメー
なお,岡山県情報教育センターの次の者が本研
究に当たった。
ジで捉えていた科学者を,この草地教授の見方・
平松
考え方コンテンツにふれることで身近に感じるこ
藤本義博(指導主事 研究主査), 太田淳一(指導主事)
とができたと考えられる。
小林朝男(指導主事),土肥直樹(指導主事)
茂(次長),岸
誠一(研修課長)
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