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気候と植生分布の関係 - Researchmap

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気候と植生分布の関係 - Researchmap
気候と植生分布の関係
-気候に対する植物の生理学的要求と耐性釜江 陽一
http://researchmap.jp/ykamae/%E8%B3%87%E6%96%99%E5%85%AC%E9%96%8B/
2012年11月
8 北方樹林
9 ツンドラ
http://oh-syaken.com/x/uploads/photos/1577.jpg
http://www.agr.hokudai.ac.jp/env/ctc_siberia/images/yaku1.jpg
http://pds.exblog.jp/pds/1/200812/
11/41/e0098241_1645679.jpg
4 硬葉樹林
7 温帯ステップ
常緑の小低木やコケ
主に常緑針葉樹
永久凍土上:落葉性カラマツが優勢
大陸内部 雨量少
http://img.f.hatena.ne.jp/images/fotolife/y/y
ukatti/20081007/20081007141127.jpg
9
8
6
4
7a
大陸西岸暖温帯 夏に乾燥
1 熱帯多雨林
5
3
http://asarum-sakawana.cocolog-nifty.com/
photos/uncategorized/2008/11/15/img_8558.jpg
5 照葉樹林
7
2
1
2a
Walterの植生図
2 雨緑樹林
Walter (1973)
6 夏緑樹林
大陸東岸
夏雨型多雨気候
2a 乾生樹林
インド・マライ、熱帯アフリカ、
アマゾン
http://bbs.jinruisi.net/blog/
3 炎熱さばく
7a 寒冷さばく
10 高山植生
インド、タイ、ビルマ
http://topic.earthflooring.com/2006/07/blog-post.html
4~6カ月の乾燥期
散生する樹木と草原
低温期に落葉し休眠
http://www.iloveworlds.com/sirakami.jpg
http://bbs.jinruisi.net/blog/
気候変化による植生分布の変化の推定(モデル)
現在の気候と植生型の対応関係
Clementsian approach
Köppenの気候区分
HoldridgeのLife zone ほか
個々の植生種の生理学的特性(要求、耐性など)
→気候変化時の植生の変化を推定
Gleasonian approach
Boxのモデル
PrenticeのBIOME
Thornthwaiteの可能蒸発散量(PET)と気候
Köppenの気候区分
Walterの植生図
Thornthwaite and Hare (1957)
Köppen (1923)
Walter (1973)
Holdridgeのlife zone
放射乾燥度指数と気候
Budyko (1956)
Holdridge (1967)
Whittakerの植生型
Whittaker (1975)
植生の分布を制限する「気候的限界」
生長の限界
季節的に生長できない期間、太陽光の制約で成長できない期間(高緯度)
・ わずかな生長や活動しか行わない:耐性
・ 落葉、根の枯死etc:回避
極端な気候条件(気温と水)が出現する前に生長を減少させ、耐久強化を行う
絶対生存限界
低温耐性
下限温度:10℃(寒冷傷害)、0℃(凍結)、-40℃(過冷却水の自然凝固点)
常緑広葉樹: -15℃< 落葉広葉樹: -40℃< 北方針葉樹:全範囲
高温耐性
平均上限気温 一部多肉植物:<64℃ それ以外:49℃
D. ベアリング 2003
耐寒性
冬の乾燥に対する抵抗性
細胞外凍結
凍結耐性(耐凍性)
器官外凍結
氷点下の温度に対する抵抗性
凍結回避
・・・過冷却
純度の高い水溶液、小さな水滴ほど
氷点下数度で凍結しにくい
細胞外凍結
器官外凍結
細胞の外で凍結し氷晶が形成
→低い蒸気圧により細胞内部の水分が脱水され、
細胞内が凍結しにくくなる
器官ぐるみで内部の水を器官外へ脱水し、
さらなる低温に耐える
細胞外
細胞内
過冷却
凍結
針葉樹の冬芽、ツツジ科、多くの被子植
物の花芽の小花や種子
蒸気圧
脱水
酒井昭 1982
サバンナ・・・
水分条件・野火・グレイジング
乾燥地域
草本
湿潤地域
一年生
野火のリスク
多年生
木本 より湿潤、深度の深い位置の水を利用しやすい地域
小さい葉、落葉性
大きく硬い常緑葉
多年生イネ科草本:密度の高い細根、乾季は新
芽を枯れた組織で保護
休眠芽が地面の下にある草本:火による
損傷を受けない
休眠芽が地上より高いところにある高木・
低木:火や高温の損傷受けやすい
厚い樹皮の発達により幹の形成層を保
護しているバオバブ
木本は比較的低い樹高、地下器官の発達
草本は高温・十分な光条件下で活発に生長
↑サバンナのイネ:熱帯型のC4植物
35℃のとき最大光合成速度
C4植物
CO2濃縮装置
温帯のイネは24℃を
超えると効率低下
C3植物
ジカルボン酸回路
(CO2濃度が低い、
温度が高いときでも
充分に機能)
小泉ほか 2000
静的地理植生モデルBIOME4 (Kaplan et al. 2003)
与えられた気候条件化における
個々の植生種の振る舞いを推定
入力
月平均気温
年間最低気温
月平均降水量
BIOME4
月平均日射率(1-雲量)
土壌特性
(大気中二酸化炭素濃度)
(緯度)
降水量
潜在植生
出力
潜在植生
NPP
LAI ほか
BIOME4
(Kaplan et al. 2003)
耐寒性
凍結に対する耐性
年間最低気温Tmin
熱帯広葉樹
0℃<
温帯常緑広葉樹 -10℃<
熱帯草原
-3℃<
乾生低木
-45℃<
最寒月平均気温Tc
温帯落葉広葉樹
5℃<
冷帯常緑針葉樹 -2℃<
北方常緑樹
-32.5℃<
Woodward (1987)
Sakai and Weiser (1973)
など
利用可能土壌水分量と日射量
環境制約
低温要求
低温期がないと春に
発芽しない(休眠打破)
年間最低気温Tmin
温帯常緑広葉樹
温帯落葉広葉樹
冷帯常緑針葉樹
北方落葉樹
温帯草原
<5℃
<-10℃
<10℃
< -10℃
<0℃
最寒月平均気温Tc
北方落葉樹
<5℃
北方常緑針葉樹 <-2℃
生存可能植物機能タイプ
高温要求
生長のための高温
5℃日積算気温GDD5
温帯常緑広葉樹 >1200℃・日
温帯落葉広葉樹 >1200℃・日
冷帯針葉樹
>900℃・日
温帯草原
>550℃・日
乾生低木
>500℃・日
0℃日積算気温GDD0
ツンドラ低木
>50℃・日
寒帯草原
>50℃・日
最暖月気温Tw
熱帯広葉樹・温帯広葉常緑樹・
冷帯針葉常緑樹・熱帯草原・乾
生低木 10℃<
+高いTw、最低冬季
積雪量による制約
純一次生産NPPを最大化させる葉面積指数LAIを算出
NPPを最大化させる植物機能タイプ①とNPP②、LAI③、二番手以降の植物機能タイプ④を判定
①、②、③、④およびTc、Tmin、GDD5、GDD0、土壌水分利用可能量、野火リスクから潜在植生を判定
土地利用
都市
人の手による植生改変は(原則的
に)議論の範囲外
一次植生
潜在自然植生の動態を扱う
二次植生
古生代
3億5千年~4億年前
シルル紀~デボン紀
維管束植物
胞子
水辺のみ
耕作地
牧草地
中生代
2億5千年前
二畳紀
裸子植物(針葉樹など)
新生代
1億5千年前
ジュラ紀
300万年前
被子植物
花粉
「休眠」特性の獲得
→内陸部、高緯度地方へ
花粉を昆虫や動物に運ばせる
ことによって、受粉効率が向上
現在
光合成量
(NPP)
遮蔽
葉っぱの数(∝LAI)(∝消費する水分量)
葉面が重なると一枚当たりの光合成量は低下
光合成量
(NPP)
熱帯雨林(湿潤域に強い)
サバンナ
草原(乾燥域に強い)
利用可能な土壌水分量
現在植生
タイガ
タクラマカン砂漠 ステップ
トルキスタン砂漠 ゴビ砂漠
プレーリー
硬葉樹林
温帯常緑広葉樹
北米砂漠
リャノ
アマゾン
アタカマ砂漠
パンパ
Harrison and
Prentice (2003)
27種の分類
熱帯林
熱帯常緑樹林
熱帯常緑・落葉樹林
熱帯落葉樹林
暖温帯林
アラビア
砂漠
ナミブ砂漠
カラハリ砂漠
ムルガ・
ブリガロー
オーストラリア砂漠
温帯林
サバンナ
温帯落葉樹林
温帯針葉樹林
冷帯混合林
冷帯針葉樹林
寒帯混合林
暖温帯混合林
草原・乾生低木
熱帯乾生低木
温帯乾生低木
熱帯草原
温帯草原
熱帯サバンナ
温帯広葉サバンナ
針葉疎林
温帯硬葉樹林
寒帯緑地
ツンドラ・乾燥ツンドラ
砂漠
砂漠
熱帯雨林
サバンナ
セラード
パタゴニア砂漠
9種の大分類
サハラ砂漠
落葉広葉樹林
照葉樹林
氷床
北方林
常緑タイガ・高山林
落葉タイガ・高山林
ステップツンドラ
低木ツンドラ
小型低木ツンドラ
ほふく低木ツンドラ
地衣苔類ツンドラ
分類されたbiome
優占植物機能
タイプ
LAI<2.0 or firedays>190
2.0<tree LAI<3.0
木本
熱帯広葉樹
温帯常緑広葉樹
温帯落葉広葉樹
冷帯常緑針葉樹
北方常緑樹
北方落葉樹
LAI<1.0 or
firedays>90
NPP<140g m-2 yr-1
LAI<1.2 LAI<1.0 or
firedays>60
草本
温帯草原
熱帯草原
乾生低木
ツンドラ低木
寒帯草原
苔類ツンドラ
寒冷地の分類
Kaplan et al. (2003)
Prentice et al. (1992)
BIOME1の場合
環境制約
耐寒性
低温要求
高温要求
水分要求
生長のための高温
凍結に対する耐性 低温期がないと春に
土壌から吸い上げら
発芽しない(休眠打破) (緯度・高度の森林限界) れる水分量(降水量と
可能蒸発散量、土壌
年間最低気温Tmin
5℃以下の日数と植生タイプ 5℃(ツンドラは0℃)以上となる日
の保水性)
の積算気温(GDD 、GDD )
→最寒月気温の低さで代用
熱帯 0℃<
温帯常緑広葉樹 -10℃<
熱帯草原 -3℃<
北方落葉樹 <5℃
乾生低木 -45℃<
北方常緑針葉樹 <-2℃
5
0
平衡蒸発散量に対する実蒸発散
量の比α(Priestley-Taylor係数)
温帯常緑広葉樹 GDD5>1200℃・日
温帯落葉広葉樹 >1200℃・日 熱帯常緑樹 0.80<α
冷帯針葉樹 >900℃・日
熱帯雨緑樹 0.45<α<0.95
温帯常緑広葉樹 <5℃
温帯草原 >550℃・日
暖温帯常緑樹 0.65<
温帯落葉広葉樹 <-10℃ 乾生低木 >500℃・日
温帯夏緑樹 0.65<
冷帯常緑針葉樹 <10℃
最寒月平均気温Tc
冷帯針葉樹 0.65<
北方落葉樹
<-10℃
ツンドラ低木
GDD
>50℃・日
0
温帯落葉広葉樹 5℃<
北方常緑針葉樹 0.75<
冷帯常緑針葉樹 -2℃<
北方夏緑樹 0.65<
温帯草原 Tw>22℃
北方常緑樹 -32.5℃<
硬葉・多肉植物 0.28<
炎熱砂漠 >22℃
温帯草原 0.18<
冷帯草原 0.33<
寒帯草原 0.33<
Tuhkanen (1980; 1984)
Kauppi and Posch (1985)
Box (1981)
Hustich (1966)
Stephenson (1990)
Solomon (1986)
Murray et al. (1989)
Neilson et al. (1989)
Woodward (1987)
Cannell and Smith (1983) Prentice and Helmisaari (1991) Woodward (1987)
Woodward (1987)
Sakai and Weiser (1973) Nienstaedt (1967)
Hare (1980)
Teeri and Stowe (1976)
Sakai (1979)
Box (1981)
Prentice et al. (1992)
最暖月気温Tw
BIOMEを用いたdata-model比較
現在
Prentice et al. (1992)
BIOME1 Global
Haxeltine et al. (1996)
BIOME2 Australia
Haxeltine and Prentice (1996) BIOME3 Global
Claussen (1997)
AGCM+BIOME1 Global
完新世中期(6ka)
Harrison et al. (1998)
Texier et al. (1998)
Kaplan et al. (2003)
Wohlfahrt et al. (2008)
PMIP1 10AGCM BIOME1 Global
AGCM+BIOME1 Global
PMIP1 4AGCM BIOME4 Arctic
PMIP2 6CGCM7実験 BIOME4 NHE
最終氷期極大期(21ka, LGM)
Kaplan et al. (2003)
PMIP1→2 4CGCM BIOME4 Arctic
Harrison and Prentice (2003) PMIP1 17AGCM BIOME4 Global
最終間氷期(130ka, 125ka, 115ka, LIG)
Harrison et al. (1995)
126ka, 115ka SGCM BIOME1 NH
鮮新世中期(3Ma, MPWP)
Salzmann et al. (2008)
Haywood et al. (2009)
Kamae and Ueda (2011)
Kamae and Ueda (2012)
AGCM+DVGM→BIOME4 Global
2AGCM BIOME4 Global
AGCM BIOME4 Global
AGCM, CGCM BIOME4 Global
気候モデルの出力を植生モデルに渡す方法
direct procedure
気候モデル
植生モデル
現在気候実験
現在植生実験
anomaly procedure
気候モデル
植生モデル
現在の気候データ
現在植生実験
観測ベース
出力をそのまま
入力に使用
過去気候実験
過去植生実験
差分を現在の観測気候
データに上乗せ
現在の気候データ
+
過去植生実験
過去実験-現在実験
Claussen (1996)
Harrison et al. (1995)
Texier et al. (1997)
Harrison et al. (1998)
Kaplan et al. (2003)
Harrison and Prentice (2003)
Wohlfahrt et al. (2008)
Saltzmann et al. (2008)
Haywood et al. (2009)
BIOME1
Prentice, I. C., W. Cramer, S. Harrison, R. Leemans, R. A. Monserud, and A. M. Solomon, 1992: A
global biome model based on plant physiology and dominance, soil properties and climate. J.
Biogeography, 19, 117-134.
BIOME2
Haxeltine, A., I. C. Prentice, and D. I. Creswell, 1996: A coupled carbon and water flux model to
predict vegetation structure. J. Vegetation Science, 7, 651-666.
BIOME3
Haxeltine, A., and I. C. Prentice, 1996: BIOME3: An equilibrium terrestrial biosphere model based
on ecophysiological constraints, resource availability, and competition among plant functional
types.Global Biogeochem. Cycles, 10, 693-709.
BIOME4
Kaplan, J. O., N. H. Bigelow, I. C. Prentice, S. P. Harrison, P. J. Bartlein, T. R. Christensen, W.
Cramer, N. V. Matveyeva, A. D. McGuire, D. F. Murray, V. Y. Razzhivin, B. Smith, D. A. Walker, P.
M. Anderson, A. A. Andreev, L. B. Brubaker, M. E. Edwards, and A. V. Lozhkin, 2003: Climate
change and Arctic ecosystems: 2. Modeling, paleodata-model comparisons, and future projections.
J. Geophys. Res., 108(D19), 8171
参考になる文献
デイビット・ベアリング, イアン・ウッドワード, 植生と大気の4億年 –陸域炭素循環のモデリング. 及川武久
監訳, 454pp, 京都大学学術出版会, 2003. 原著Vegetation and terrestrial carbon cycle. Cambridge
University Press, 2001.
Kaplan, J. O., et al., 2003: Climate change and Arctic ecosystems: 2. Modeling, paleodata-model
comparisons, and future projections. J. Geophys. Res., 108, D19, 8171,
doi:10.1029/2002JD002559.
Harrison, S. P., and C. I. Prentice, 2003: Climate and CO2 controls on global vegetation distribution
at the last glacial maximum: analysis based on palaeovegetation data, biome modelling and
paleoclimate simulations. Glob. Change Biol., 9, 983-1004.
Haxeltine, A., and I. C. Prentice, 1993: BIOME3: An equilibrium terrestrial biosphere model based
on ecophysiological constraints, resource availability, and competition among plant functional
types. Global Biogeochem. Cycles, 10(4), 693-709.
岩坪五郎 1996: 森林生態学. 文英堂出版, 306pp.
小泉博, 大黒俊哉, 鞠子茂 2000: 草原・砂漠の生態. 共立出版, 250pp.
野上道夫 1994: 森林植生帯分布の温度条件と潜在分布の推定. 地学雑誌, 103, 886-897.
Prentice, C., W. Cramer, S. P. Harrison, R. Leemans, R. A. Monserud, and A. M. Solomon, 1992: A
global biome model based on plant physiology and dominance, soil properties and climate. J.
Biogeography, 19, 117-134.
酒井昭 1982: 植物の耐凍性と寒冷適応 –冬の生理・生態学-. 学会出版センター, 469pp.
佐藤浩, 建石隆太郎 2001:グローバルな土地利用・土地被覆・植生分類システムのレビュー. 国土地理院
時報, 96, 69-99.
星加康智, 羽鳥知洋, 清水庸, 大政謙次 2007: 日本における現状の森林植生と潜在自然植生のNPPの
比較. 農業気象, 63, 33-39.
高原光 2007: 花粉分析による植生復元と気候復元. 低温科学, 65, 97-102.
Woodward, F. I., 植生分布と環境変化, 内嶋善兵衛訳, 205pp, 古今書院, 1993. 原著 Climate and
plant distribution, CPU, 1987.
安成哲三 2007: 地域・大陸スケールでの植生・気候相互作用. 天気, 54, 929-932.
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