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決定書(写し)

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決定書(写し)
写
○
決
定
書
異議申出人
大阪市東淀川区東淡路1-5-3-425
福田 敏明
上記異議申出人(以下「申出人という。」)から平成27年4月23日付けで
提起された同年4月12日執行の大阪市議会議員東淀川区選挙区一般選挙(以
下「本件選挙」という。)に係る選挙及び当選の効力に関する異議の申出(以下
「本件異議申出」という。)について、当委員会は次のとおり決定する。
主
文
本件異議申出を棄却する。
第1 申出の要旨
申出人は、当委員会に対し、本件選挙は無効である旨の決定を求めると
ともに、当選人宮脇希の当選の無効を求め、本件異議申出を行ったもので
ある。
その理由とするところは、概ね次のとおりである。
1 選挙無効について
(1)本件選挙において、宮脇候補を支援している者が、アクセス数が非常に
多いアメーバブログを使用し、異議申出人に対する選挙妨害を拡散させてい
る。これは、公職選挙法第235条の2に抵触している。なお、新聞社に問
い合わせると、当該支援者は、他の候補者にも選挙妨害を行っているとのこ
とであった。
また、当該支援者は、ブログを使って選挙期間中であるにもかかわらず、
立候補者を当選させんがために公職選挙法違反を行い、メールを送り続けて
いる。
(2)本件選挙において、駅前で街頭演説を行う時間帯を他の複数の候補者
が異議申出人を外して決め、その時間帯に異議申出人が当該駅前に駐車し
ていた選挙運動用自動車を排除しようとした。このような行為は、公正な
選挙運動を妨害し、選挙の公平さを著しく損なうものである。
(3)以上により、本件選挙は無効である。
2 当選無効について
当選人宮脇希は、本件選挙の期日の告示日前の3月24日に区内の商店街に
て「たすき」をかけ事前運動を行っている。選挙期間前の「たすき」使用は、
「公職選挙法第143条1」に該当し、違法である。
(2)よって、当選人宮脇希の当選無効の申立てを行う。
第2 決定の理由
1 本件異議申出の要件
当委員会は、本件異議申出の要件を確認したところ、適法なものと認めら
れたので、これを受理するものとした。
2 当委員会の判断
(1)選挙無効について
ア およそ選挙の効力に関する争訟においてその選挙が無効とされるの
は、公職選挙法(昭和25年法律第100号。以下「法」という。)第
205条第1項の規定により、
「選挙の規定に違反して」選挙が行われ、
かつ、その規定違反によって「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」
に限られるものである。
この「選挙の規定に違反して」とは、主として選挙管理の任にある機
関が選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反すること又は明
文の規定に違反しなくても選挙法の基本理念たる選挙の自由公正の原
則を著しく阻害するような管理執行をしたことであると解されている
(昭和24年7月13日最高裁判所大法廷判決、昭和27年12月4日
最高裁判所第一小法廷判決)。
なお、
「選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合」とは、当該選挙の管
理執行の手続に関する規定違反がなかったならば、選挙の結果、すなわ
ち候補者の当落に、現実に生じたところと異なった結果の生ずる可能性
のある場合をいうと解されている(昭和29年9月24日最高裁判所第
二小法廷判決)。
そこで、この規定に基づき、以下申出人の主張を検討する。
イ 申出人は、他の候補者又は支援者による申出人に対する選挙妨害に該
当する行為があり、本件選挙が無効である旨を主張している。
選挙の効力における争訟において選挙が無効とされるのは、上記のと
おり法第205条第1項の規定によるところ、選挙管理の任にある機関
とは、選挙管理委員会、選挙長、投票管理者等を意味し、そもそも特定
の候補者側は選挙管理の任にある機関にはあたらない。
申出人の主張する選挙妨害がどの規定に基づくものであるか判然とし
ないが、仮に特定の候補者側の行為が、法第225条の選挙の自由妨害
罪に該当する行為であったとしても、このような選挙罰則に関する規定
違反があったことは、選挙の無効原因としての選挙の規定違反に該当し
ないことは、過去の最高裁判決において確立された考え方である(昭和
30年8月9日最高裁判所第三小法廷判決、昭和61年2月18日最高
裁判所第三小法廷判決)。
もっとも、かような違法行為によって、選挙の自由公正が失われ、選
挙人全般がその自由な判断による投票を妨げられたような特段の事態を
生じた場合には、選挙の自由公正は失われたものとして、選挙を無効と
しなければならないことも考えられないではないが、申出人の主張にか
かる事実が仮に認められるとしても、これによって選挙区内の選挙人全
般の自由な判断による投票が阻害されたとは考えられず、申出人の主張
には、理由がない。
ウ なお、申出人は、他の候補者の支援者がブログを使用し申出人に対す
る選挙妨害を拡散させている行為をもって、法第235条の2に抵触し
ているものであると主張しているが、同法は、新聞紙又は雑誌の表現の
自由濫用罪(第1号)、法定新聞紙等以外の新聞紙又は雑誌の報道評論の
掲載禁止違反罪(第2号)及び新聞紙又は雑誌の不法利用等の制限違反
罪(第3号)についての規定であるところ、本件ブログについては「新
聞紙又は雑誌」ではなく同法の適用がないものと解せられることから、
そもそも違法行為がないものと認められる。
エ
また、申出人は、選挙期間中にブログ等により選挙運動を行うことが
公職選挙法違反であると主張しているとも考えられるが、平成25年4
月の法改正により、ウェブサイト等を利用する方法による選挙運動のた
めに利用する文書図画の頒布は、一定の条件下ではあるが、認められる
こととなった。甲第5号証及び第6号証に記載された内容は、ブログで
選挙運動としての街頭演説日程を告知することについて法違反のおそれ
があるというものであるが、仮に記載されていることが事実であったと
しても、上述の法改正前の内容であり、現行法では許されている行為で
あると認められるので、当該各書証を根拠とした申出人の主張は、失当
である。
オ 以上のとおり、申出人の主張はいずれも失当であって、本件選挙につ
き法第205条第1項の無効事由は認められない。
(2)当選人宮脇希の当選無効について
ア 申出人は、当選人宮脇希が法違反の選挙運動を行ったことを理由に当
該当選人の当選無効を申し立てている。
イ 当選無効原因となり得べき違法事由には、当該当選人決定についての
違法即ち、当選人を決定した機関の公正や決定手続きの違法、各候補者
の有効得票数の算定の違法、当選人となり得る資格の有無の認定に関す
る違法等のみがこれに当たるものと解するのが相当である(平成4年1
2月17日名古屋高等裁判所判決、昭和26年10月16日大阪高等裁
判所判決)。
当選人については、その罰則該当行為につき有罪判決が確定すること
により当然にその当選を無効とする旨が定められている(法第251条)
ことに徴すると、当選人の行為の罰則該当の有無についての認定・判断
は、専ら刑事上の訴追とその結果に委ねられているものと解すべきであ
る(前掲平成4年12月17日名古屋高等裁判所判決)。したがって、仮
に申出人が主張するように事前選挙運動の行われた事実があったとして
も、当選人が法第251条により刑に処せられる等のことのない以上、
それがため当然に、当選人の当選が無効となるものではない(昭和30
年5月20日最高裁判所第二小法廷判決)。
ウ 以上のとおり、本件選挙に係る当選人宮脇希の当選の効力に関する申
出人の主張は失当であり、これを認めることはできない。
よって、当委員会は、主文のとおり決定する。
平成27年5月21日
大阪市選挙管理委員会
委員長 平野 豐三郎
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