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次世代型下水汚泥焼却炉「過給式流動燃焼システム」が

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次世代型下水汚泥焼却炉「過給式流動燃焼システム」が
平成 23 年3月 10 日
独立行政法人 土木研究所
次世代型下水汚泥焼却炉「過給式流動燃焼システム」が実用化へ
~ 大幅な省エネ化と温暖化ガス排出削減を両立させる新しい焼却炉 ~
■ ポイント ■
・共同開発した次世代型下水汚泥焼却炉が、東京都葛西水再生センターで実用化へ
・過給機(ターボチャージャ-)と加圧流動炉の組み合わせによる省エネ型システム
・従来型の焼却炉と比べ、温室効果ガス排出量の大幅な削減が可能
独立行政法人 土木研究所(理事長 魚本 健人)、独立行政法人 産業技術総合研究所(理
事長 野間口 有)、月島機械株式会社(代表取締役 山田 和彦)、三機工業株式会社(代表
取締役 有馬 修一郎)が共同研究により開発した次世代型の下水汚泥焼却炉である「過給式
流動燃焼システム」が、東京都下水道局葛西水再生センターにおける下水汚泥焼却設備とし
て採用され、実用化されることとなった。
本システムは、従来型の下水汚泥流動焼却炉に汎用の過給機(ターボチャージャー)を組
み合わせて構成されている。下水汚泥を加圧条件下で燃焼することにより炉本体をコンパク
トにするとともに、燃焼時の排ガスにより過給機を駆動して、得られる圧縮空気を燃焼空気
として活用することにより、従来必要であった流動ブロワと誘引ファンを省略し、これによ
り約 40%の電力消費量の削減が可能となった。さらに加圧燃焼下で炉内に高温域が形成さ
れることで、温室効果ガスである亜酸化窒素(N2O)を従来型の高温焼却(850℃)と比較し
て約半分に削減することも可能で、地球温暖化問題解決への貢献が期待される燃焼システム
となっている。
本技術については、平成 23 年 2 月に東京都下水道局の発注工事を月島機械(株)が受注
し、平成 25 年度末には東京都の葛西水再生センターにおいて 300 トン/日規模の施設が完
成する予定である。
■ 問い合わせ先 ■
独立行政法人 土木研究所 材料地盤研究グループ リサイクルチーム
上席研究員 岡本誠一郎
〒305-8516 茨城県つくば市南原1番地6
TEL 029-879-6765
FAX 029-879-6797
E-mail: [email protected]
-1-
■ 開発の社会的背景 ■
国内の下水汚泥の発生量は年々増加しており、その多くが焼却処理されている。汚泥焼
却には多量の化石燃料(重油や都市ガス、電力)を必要とするため、焼却プロセスの省エ
ネルギーおよび温暖化ガス削減対策が必要である。また下水汚泥中の窒素含有量が極めて
高いため、焼却時には亜酸化窒素(N2O)が排出される。この対策として、国土交通省では
焼却温度を 800℃から 850℃への高温焼却を推奨することによりその削減を進めているが、
既存の焼却炉の老朽化も進んでおり、今後の建替え需要に対応しつつ、さらなる省エネル
ギーおよび温暖化ガス削減が可能な焼却システムの開発が求められている。
■ 研究の経緯 ■
本技術開発のための共同研究は、平成 17 年 2 月より実施している。汚泥焼却炉の電力使
用量および N2O 排出量の大幅な削減を目指し、4者共同で実証プラントを製作し、次世代
型焼却システムの開発に取り組んできた。
なお、本研究開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合機構(NEDO)の委
託事業「都市バイオマス収集システムを活用するためのエネルギー転換要素技術の開発(平
成 17~19 年度)」による支援を受けて行っている。
今回の技術は、省エネルギーおよび
温暖化ガス削減可能な方法を考案し
(図1)、次世代型汚泥焼却システムの
開発に至った。北海道長万部町内の終
末処理場に、5t/日規模の実証プラン
トを建設した(図2)。本プラントで
は、燃焼炉を加圧流動炉とし、その後
段に過給機(ターボチャージャー)を
設置し、排ガスにより駆動させること
で燃焼空気を生成させる。これより、
電力を消費する流動ブロワおよび誘
引ファンが不要となる。
過給式システム
起動用ブロワ
■ 開発技術の内容 ■
過給機
煙突
汚泥
白煙防止
予熱器
(加圧)流動炉
空気予熱器
集塵機
白煙防止ファン
排煙処理塔
白煙防止
空気予熱器 予熱器
煙突
汚泥
本システムの特長
従来の高温焼却(850℃)に比べて、
冷却塔
①
N2O の削減率 50%以上
②
補助燃料使用量削減による CO2 の削減率
排煙処理塔
流動炉
流動ブロワ
白煙防止ファン
10%以上
③
従来型システム
電力量削減による CO2 の削減率 40%以上
図1
バグフィルタ
開発した「過給式流動燃焼システム」と従来型システムの比較
-2-
誘引ファン
本プラントにより、燃焼排ガス中の N2O 排出量を測定した結果、従来型の高温焼却より
も排出量が概ね半減している。開発システムでは、加圧により燃焼速度が加速されるため
に、燃焼炉内の下部領域に局所的な高温域が形成しており(図3)、ここで N2O が分解さ
れることによりその排出量が低減されていた。
これまでに、本プラントは 2000 時間以上の安定運転を達成しており、流動ブロワと誘引
ファンを省略した開発システムは安定したシステムであることが実証されている。
以上より、開発した次世代型汚泥焼却システムは、従来型の下水汚泥焼却システムより
も電力消費量および N2O 排出量の大幅な低減を可能にした画期的なシステムである。
また、本プラントでは、下水汚泥と草木類との混焼システムの開発も実施した。この結
果、下水汚泥に木質チップや破砕した刈草(写真1)等を混練して炉内に供給することに
より、混焼するシステムを開発し、草木類の混合比率に応じて補助燃料である重油の投入
量を削減することが可能であることを実証している。
■ 今後の予定 ■
本技術については、平成 23 年 2 月に東京都下水道局の発注工事を月島機械(株)が受注
し、平成 25 年度末には東京都の葛西水再生センターにおいて 300 トン/日規模の施設が完
成し運転を開始する予定である。
今後、地方自治体における下水汚泥焼却設備が更新期を迎えることから、土研及び産総
研では、本技術の国内外への展開に向けて情報発信と応用技術の開発に努めるとともに、
下水汚泥以外への適用も進めていくこととしている。
加圧流動層燃焼炉
実証炉(加圧流動炉)
空気予熱器
排ガス
排ガス分析器
T6
冷水
煙突
過給機
脱水汚泥
T5
セラミック
集塵機
フィルタ
(セラミック
T4
フィルター)
フィーダ
大気
T3
起動用
ファン
T2
T1
A重油
(写真:実証炉本体の状況)
図2
次世代型汚泥焼却実証プラント概略図
(北海道長万部町下水処理場内)
-3-
10000
従来型
次世代型
燃焼炉の高さ [mm]
8000
6000
4000
2000
写真1 下水汚泥と混焼する刈草の破砕処理状況
0
900
1000
1100
1200
1300
燃焼炉内温度 [K]
図3 燃焼炉内温度分布の比較
【用語の説明】
◆ 下水汚泥
下水の処理は生物的な処理が主流で、その過程で大量の余剰汚泥が発生する。わが国では、発生した余
剰汚泥の多くが脱水後、焼却処分されている。水分を多量に含むため通常は自然燃焼させることは困難で、重
油や都市ガスなどの補助燃料により焼却している。
◆ 過給機 (ターボチャージャー)
排ガスのエネルギーを利用して、空気を圧縮する機械。通常内燃機関と共に用いられ、過給機を付設すると
小排気量のエンジンでも大出力が得られる。特に大型ディーゼルエンジンでは、効果が大きいためトラック用デ
ィーゼルエンジン、舶用ディーゼルエンジンに良く用いられる。ガスタービンに比べ、極めて安価。
◆ 流動(焼却)炉
上向きに流す空気により浮遊状態にした硅砂を高温にして、その中に固体燃料(下水汚泥焼却炉の場合は
下水汚泥)を連続的に供給して燃焼させる形式の燃焼装置。浮遊状態の硅砂は激しい混合状態にあるため、
熱と物質移動速度が大きくなる。このため、塊状の燃料や水分を多く含む燃料でも乾燥、蒸発が速やかに起こ
るため、安定的な燃焼が可能である。この特性を生かして、都市ゴミの焼却炉、下水汚泥焼却炉等によく使用
される。
◆ 亜酸化窒素(N2O)
温室効果ガスの主要4ガス(二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、HFCs)の一つである。温暖化係数が二酸化
炭素の 310 倍で、また、オゾン層破壊ガスでもある。燃料の燃焼過程からも生成され、人為的な発生源では燃
焼プロセスの寄与は大きい。特に、窒素分を多く含む燃料を低温で燃焼させたときに生成しやすく、下水汚泥
の焼却プロセスは亜酸化窒素を生成する燃焼プロセスの中で最大の N2O 発生量である。
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