...

ハリケーン・サンディ

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

ハリケーン・サンディ
E S S A Y
ニューヨークとその近郊から
ハリケーン・サンディ
「次
川﨑 正人
三菱地所ニューヨーク社
回はニューヨーク市民が自
辺がどうであったかをご紹介させて
ら参加するスポーツについ
いただきます。サンディが上陸した
てご紹介させていただきます。
」と前
29日は月曜日でしたが、その前の週
回結んだ際は、今回の原稿で、毎年
からテレビでは、キューバやハイチな
11月の第1日曜日に開催される世界
どカリブ海諸国で 66人の生命を奪っ
最大の市民マラソンのひとつニュー
た大型ハリケーンが北上しつつあり、
ヨークシティマラソンを取り上げるつ
ニューヨーク近辺に被害をもたらす
もりでした。会社の同僚もエントリー
恐れがあると警告を続けていまし
していたので、応援しがてら彼の写
た。29日に予定していた私のワシン
真を撮って、その写真も添えてと考え
トン DC 出張は、前の週の木曜日時
ていたのですが・・・。
点で同行するアメリカ人の申し出によ
りキャンセルとなりました。台風慣れ
かわさき まさと
1987 年、三菱地所株式会
社 入 社、11 年 間 住 宅 事 業
に携わった後、広報部に異
動、 同 部 に も 11 年 所 属。
2009 年 4 月に海外事業を
東京でサポートするグロー
バル事業推進部に異動の後、
2010 年 4 月から三菱地所
ニューヨーク社に赴任中。
124
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.11
米東海岸沖を北上していた大型ハ
している我々からすると、過剰な反
リケーン
「サンディ」
が10月29日午後、
応だなあという印象で、土曜は気に
温帯低 気 圧となり、ニュージャー
せずゴルフをやりました。日曜も表
ジー 州 南 部 付 近に 上 陸、ニュー
面的には平穏でしたが、ブルムバー
ジャージー州、ニューヨーク州など
グ市長が、マンハッタン・ダウンタウン
東海岸一帯に、冠水や停電などの被
やブルックリンの河岸エリアの住民
害をもたらし、米国内だけで100人
に対し強制避難命令を出すととも
を超える命を奪いました。今年11月
に、バスや地下鉄などの公共交通機
3日に予定されていたニューヨークシ
関を日曜午後7 時から順次運休にす
ティマラソンは、被災直後ブルムバー
ると発表、我々の会社もそれらを踏
グ市長が開催の意向を表明していた
まえ、月曜のオフィスのクローズを決
ものの、各地の深刻な被災の状況
めました。
や、停電、交通機関の復旧に相当な
期間を要することが明らかになる中、
月曜も朝からお昼にかけてはやや
開催に反対する世論が高まり結局中
風が強いというぐらいでしたが、夕
止となってしまいました。
方から雨脚が強くなってきました。
前日からテレビを通じ避難区域の住
そこで今回は予定を変更し、サン
民に
「 避難しない人は Stupid
( 愚か
ディが東海岸を襲ったとき、私の周
者)
だ。
」と必死の形相で訴えていた
クリスティ・ニュージャージー州知事
も、
「もう避難するには遅い。部屋の
中で家族とじっとしていなさい」とコ
メントを変えました。昨年ニューヨー
クに上陸したアイリーンの方が数字
的には大型だったので、少々甘く考え
ていたのですが、実際にはサンディ
の方が強く感じました。アパートの
高層階が地震のように揺れたり、風
で窓ガラスが割れたりしたケースも
高層ビルから宙ぶらりになったクレーン
あったようです。私のアパートの窓ガ
ラスにも、風にとばされた枝のような
害だけでなく、河に近いオフィス街
十分起こりうる災害であり、もっと防
ものがあたって、バチバチ不気味な
では、多数のオフィスビルが浸水や
災を強化すべきではないかと、憤り
音をたてていました。
停電によりしばらく使用できなくなり
ながら警鐘を鳴らしていました。財
ました。未だに元のオフィスに戻る
政難の中、復旧だけでも膨大な費用
ハリケーン一過の火曜日、幸運に
ことができず、分散して仮住まいし
がかかり、そもそも何もしてこなかっ
も私のアパートは浸水や停電もなく、
ている日系企業も何社かあるようで
た防災をどこまで整備できるのか?
今回の災害の象徴の一つであった高
す。
アメリカ人の自己責任の気質を考え
層ビルから宙ぶらりになったクレーン
ると、なかなか難しい問題だと思い
を眺めながら、徒歩で通勤しました。
これまでニューヨークはハリケー
クレーンの下の道路にガス管があり、
ンに襲われることがほとんどありま
落ちると爆発の恐れがあることか
せんでした。そのため、そもそもイ
ニューヨークシティマラソンが行
ら、周辺のかなり広い範囲でものも
ンフラがハリケーンを想定していな
われるはずだった11月3日、遠方か
のしい警備や通行規制が行われてい
いことが、今回被害が大きくなった
らエントリーし宿泊先をキャンセルし
ました。その一帯には強制避難命
要因の一つだと思われます。あるテ
なかったのであろう多くの人たちが、
令が出され 、パスポートや着替えを
レビのコメンテーターが、市内で最
セントラルパークやマンハッタンの通
持たずに避難したホテル宿泊客は数
も患者が多い救急部門を持つ市営
りを走っているのを見かけました。
日間部屋に戻ることが許されず、大
病院から、入院患者約500人を避難
遠方からマラソンを走りに来た人の
変な目にあったようです。自宅から
させたことを取り上げ、過去はともか
中には走るかわりにボランティアで
強制避難させられたり、二週間近く
く昨年と今年二年続けてハリケーン
被災者支援活動を行った人もいたそ
自宅が停電となるなどの住まいの被
に見舞われたということは、今後も
うです。
ます。
January-February 2013
125
Fly UP