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要 請 書 - 岩手弁護士会
要 請 書 平成24年12月3日 財務省 財務大臣 城島光力 殿 岩手弁護士会 会長 第1 渡 辺 正 和 要請の趣旨 1 財務省は、国家公務員共済組合法施行規則14条を改正し、「東日本大 震災の影響によって返済が困難となった債務者から、個人債務者の私的整理 に関するガイドライン(以下「被災ローン減免制度」という。)に基づき債 務整理の申出があった場合には、当該ガイドラインの手続に従い、当該債務 者に係る債権について、債権の全部又は一部の放棄その他の適切な措置を講 ずること」を定めるよう要請する。 2 財務大臣は、上記1の改正がなされるまでの間、被災ローン減免制度に 従った債務の減免が、国家公務員共済組合法施行規則14条の「やむを得な い理由」に当たること及びその減免を承認することを、所管する共済組合に 通知するよう要請する。 第2 1 要請の理由 問題の所在 被災ローン減免制度は、東日本大震災の影響で債務を弁済できなくなった個 人を対象に債務整理を行い、生活再建を促すための制度であるところ、被災者 の中には、国家公務員共済組合法に基づいて設立された共済組合(以下「国家 公務員共済組合」という。)に対する債務を負っている者もいる。 ところが、私的整理ガイドライン運営委員会は、国家公務員共済組合が被災 ローン減免制度による債務の減免に応じることは現実的に困難であるという理 由で、国家公務員共済組合を、被災ローン減免制度による債務の減免の対象債 権者から外すように、債務者に求め、そのように当該ガイドラインを運用して いる。これは、国家公務員共済組合に対して適用される国家公務員共済組合法 施行規則(以下「本件規則」という。昭和33年10月11日大蔵省令第54 号)の14条が、「組合の債権は、その全部若しくは一部を放棄し、又はその 効力を変更することができない。ただし、・・・、その他やむを得ない理由が ある場合において財務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。」と規定 している点に原因がある。つまり、本件規則14条は、「やむを得ない理由が ある場合において財務大臣の承認を受けたとき」には国家公務員共済組合が債 権放棄をできる旨を定めているが、被災ローン減免制度に従った債務の減免が 「やむを得ない理由」に当たるか否か及び財務大臣の承認がなされるか否かが 不明確であるため、私的整理ガイドライン運営委員会は、国家公務員共済組合 を被災ローン減免制度の対象債権者に加えることに否定的なのである。 2 本件規則を改正すべきであること しかし、以下のとおり、国家公務員共済組合も、被災ローン減免制度による 債務の減免に応じるべきであり、また、財務省は、本件規則を改正して、国家 公務員共済組合が被災ローン減免制度による債務の減免に応じることを明示す るべきである。 すなわち、まず、国家公務員共済組合は、国家公務員共済組合法に基づいて 設立された法人であるところ、同法1条は、「国家公務員の・・・、災害、・・ 又はその被扶養者の・・・災害に関して適切な給付を行うため、相互救済を目 的とする共済組合の制度を設け、・・・、もって国家公務員・・の生活の安定 と福祉の向上に寄与する」ことが同法の目的であると規定している。被災ロー ン減免制度に従った債務の減免をすることは、災害にあたり相互救済をし被災 者たる国家公務員の生活の安定を図るという同法の目的に合致する。 また、民間金融機関は、被災者救済という被災ローン減免制度の趣旨に賛同 し、被災ローン減免制度による債務の減免に応じている。それにもかかわらず、 国からの負担金も事業の財源としており、公的な負担の下に事業運営している 国家公務員共済組合が、被災ローン減免制度の利用に応じないということはあ ってはならない。国家公務員共済組合は、その公的な性格上、民間金融機関よ りも積極的に被災ローン減免制度の活用に応じるべきである。 また、私的整理ガイドライン運営委員会作成のQ&Aには、「住宅貸付を行 う共済組合」も被災ローン減免制度の対象債権者に含まれると記載してあり、 そもそも被災ローン減免制度は、国家公務員共済組合を対象債権者にすること を予定していた。また、被災ローン減免制度の運用に復興予備費10億700 0万円を使用することは、平成23年8月19日に閣議決定されており、政府 も被災ローン減免制度の運用を推進している立場である。また、財務省の大臣 官房政策金融課長は、私的整理ガイドライン研究会にオブザーバー参加してい るのであり、財務省は被災ローン減免制度の制定に関与しているといえる。そ れにもかかわらず、国家公務員共済組合が被災ローン減免制度による債務の減 免に応じるということが本件規則で明示されていないのは、本件規則を所管す る財務省の省令整備の不備である。国土交通省及び財務省が所管している独立 行政法人住宅金融支援機構(以下「住宅金融支援機構」という。)は、住宅金 融支援機構の債権について被災ローン減免制度を適用させるために、主務大臣 たる国土交通大臣及び財務大臣の認可を受けた上で、平成23年12月26日 にその業務方法書を改正し、「機構は、東日本大震災の影響によって返済が困 難となった債務者から、被災ローン減免制度に基づき債務整理の申出があった 場合には、当該ガイドラインの手続に従い、当該債務者に係る債権について、 弁済の請求の中止その他の適切な措置を講ずるものとする。」という条項を追 加した(独立行政法人住宅金融支援機構業務方法書第36条1項)。同じ財務 省が所管している住宅金融支援機構の例にならい、本件規則についても、国家 公務員共済組合が被災ローン減免制度による債務の減免に応じることを明示す る改正がなされるべきである。 震災によって全壊した住宅の住宅ローン等の震災以前の債務を合理的に整理 し、新たな債務を負担して再度住宅を建築する等の生活再建をできるようにす ることが、被災地の復興のために必要不可欠である。また、被災ローン減免制 度による弁済計画は、破産手続による回収の見込みと同様又はそれ以上の回収 を得られる見込みがあるなど、対象債権者にとっても経済的に合理性があるも のである。 以上のとおり、国家公務員共済組合も、被災ローン減免制度による債務の減 免に応じるべきであり、また、財務省は、本件規則を改正して、国家公務員共 済組合が被災ローン減免制度による債務の減免に応じることを明示するべきで ある。本件規則の不備が被災地の復興の妨げにならないためにも、早急に改正 がなされるよう、当会は求める。 3 改正までの間は大臣の承認により対応するべきである このように、本件規則の改正は早急になされるべきであるが、仮に改正まで に一定の時間がかかるというのであれば、財務大臣は、本件規則の改正がなさ れるまでの間は、被災ローン減免制度に従った債務の減免が、本件規則14条 の「やむを得ない理由」に当たること及びその減免を承認することを、所管す る共済組合に明らかにすることにより、被災者救済を図るべきである。 上述のとおり、被災ローン減免制度に従った債務の減免は、被災地の復興の ために必要不可欠であること、対象債権者にとっても経済的合理性があること、 国家公務員共済組合法の目的に合致すること、民間金融機関が被災ローン減免 制度による債務の減免に応じていること、政府は被災ローン減免制度の運用を 推進していること、公的金融機関であり同じ財務省が所管している住宅金融支 援機構も被災ローン減免制度の利用に応じていることを考慮すれば、被災ロー ン減免制度に従った債務の減免が、本件規則14条の「やむを得ない理由」に 当たることは明白である。財務大臣は、国家公務員共済組合が債権の全部又は 一部を放棄することを承認するべきである。 被災者救済のためには、本件規則の改正を待たずに、早急に、財務大臣は、 国家公務員共済組合が債権の全部又は一部を放棄することを承認するべきであ る。よって、当会は、要請の趣旨第2項の事項を求める。 以上