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柏崎刈羽原子力発電所7号機 ウエルライナーの損傷について
柏崎刈羽原子力発電所7号機 ウエルライナーの損傷について 平成20年7月14日 ボートサンプル元素分析(追加調査) 一般的に元素分析は、次の内容を確認することを目的に 実施する。 ①成分分析を実施することで、鋼材の鋼種を推定することができる。 ②破面に付着した付着物の成分分析ができる。(付着物が残存する場合) ③酸化膜の成分が確認することができる。(皮膜が残存している場合) 今回追加調査として実施する元素分析は、鋼材の鋼種を確 認することを目的に、母材部・溶接金属部に対して貫通断 面部より実施することとする。 ※現状のボートサンプル試験片は樹脂埋めされており、破面を保存した まま、本樹脂を完全に取り除くことは困難であるため、切出し後に付 着していた酸化物等の分析は実施困難である。 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 1 貫通傷発生箇所(ボートサンプル採取箇所) 貫通部 R1エリア貫通部と R5エリア貫通部は、 鏡対称位置 貫通部 180° R5エリア 90° R1エリア R5エリア R1エリア 第2溶接線 第3溶接線 270° 原子炉ウェル オペレーションフロ ア 0° R5エリア・貫通部拡大写真 第1溶接線 第1溶接線 第2溶接線 使用済み燃料貯蔵プール R1エリア・貫通部拡大写真 RWF-R13溶接線 第2溶接線 機器仮置きプール RWF-R11溶接線 第2溶接線 5.5mm 6mm 7mm オペレーティングフロア 1mm 原子炉ウェル 上部ヒナ段床 第3溶接線 1.5mm 機器仮置き プール 4mm 原子炉ウェル 使用済燃料貯蔵 プール SGN-17溶接線 第1溶接線 原子炉建屋 SGS-17溶接線 第1溶接線 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 原子炉ウェル 上部ヒナ段床 2 ボートサンプル元素分析方法(追加調査) 調査方法 発電所設置のSEM(走査型電子顕微鏡)にEDX※(エネルギー 分散型X線分析装置)が付随しており、本装置を用いることで、元 素分析を実施する。 ※試料に電子線を照射すると照射部位から 各種の信号が励起される。この信号を増 幅し,エネルギー別に信号を振り分ける ことで,構成元素と濃度が分かる。なお 測定精度は、5%程度とされている。 電子発生装置 入射電子 検出器 2次電子 反射電子 特性X線 試料 X線分析装置 原理 調査範囲 R1及びR5より採取したボートサンプル試験片について、母材 部及び溶接金属部に対し、各3箇所づつ元素分析※を実施した。 分析対象とする元素はFe,Cr,Ni,Mn,Si,Moの6元素とした。 ※母材は「SUS304」、溶接金属は「Y308L」を使用しており、JISに よる規格値及びミルシート記載値と分析値を比較することで使用され ている材料を特定する。 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 3 ボートサンプル試験片状態(R5) ① ウエルライナ損傷部を切り出し 第二溶接線 第二溶接線 原子炉ウ ェル側 貫通部 R5スロット部コーナ 第一溶接線 第二溶接線 上面からの図 スロットプラグ 第三溶接線 第三溶接線 第一溶接線 スロットプラグ 第三溶接線 :切欠き ② 貫通部の左右から切欠き を入れ、試験片を分割し 貫通部の破面を観察。 ③ 破面観察後、断面観察のため2つの試 験体を合体させ樹脂埋めし、直交する 方向に切断。 破面観察 ④ 現状の試験片 観察方向 奥から手前方向 R5スロット部コーナ 切断面 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 4 R1ボートサンプル測定結果 母材 溶接金属 単位(%) 対象箇所 測定位置 Fe Cr Ni Mn Si Mo 母材 JIS仕様 − 18.00-20.00 8.00-10.50 ≦2.00 ≦1.00 − ミルシート − 18.33 8.21 0.83 0.42 − 測定位置① 71.64 17.26 9.03 1.72 0.35 未検出 測定位置② 72.30 16.39 9.25 1.77 0.29 未検出 測定位置③ 71.25 16.87 9.90 1.48 0.49 未検出 JIS仕様 − 19.5-22.0 9.0-11.0 1.0-2.5 ≦0.65 − 測定位置④ 68.69 18.10 10.74 2.07 0.41 未検出 測定位置⑤ 66.85 19.28 11.35 1.81 0.70 未検出 測定位置⑥ 69.10 18.52 9.98 2.04 0.36 未検出 溶接金属 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 5 R5ボートサンプル測定結果 溶接金属 母材 単位(%) 対象箇所 測定位置 Fe Cr Ni Mn Si Mo 母材 JIS仕様 − 18.00-20.00 8.00-10.50 ≦2.00 ≦1.00 − ミルシート − 18.33 8.21 0.83 0.42 − 測定位置① 71.32 18.14 9.28 1.20 0.05 未検出 測定位置② 70.46 18.33 9.38 1.13 0.70 未検出 測定位置③ 71.25 18.06 9.02 1.25 0.43 未検出 JIS仕様 − 19.5-22.0 9.0-11.0 1.0-2.5 ≦0.65 − 測定位置④ 58.03 21.36 17.14 3.08 0.40 未検出 測定位置⑤ 58.84 21.95 15.75 3.00 0.46 未検出 測定位置⑥ 66.73 18.45 11.44 2.96 0.42 未検出 溶接金属 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 6 ボートサンプル元素分析まとめ(1/2) R1のボートサンプルの元素分析結果 z母材部については、Crの分析値がJISの規格値から若干低い値となっ ているが、全体的な成分割合から「SUS304」と推定される。 z溶接金属部も母材同様Crの分析値が若干低い値となっているが、測 定誤差範囲と考えられ、「Y308L」と推定される。 R5のボートサンプルの元素分析結果 z母材部についてはJISの規格の範囲内に入っており、ミルシート値と も大きな相違はなく「SUS304」と考えられる。 z溶接金属部についてはMn及びNi※の成分値が高めの値となっている が測定誤差範囲と考えられ、「Y308L」と推定される。 ※Niの成分は少し高めではあるが、溶接用ステンレス鋼溶加棒において、今回 のNiの分析値に最も近いJISの鋼種は、JIS「溶接用ステンレス鋼溶加棒及び ソリッドワイヤ」における「Y317」であるが、この鋼材はMoを含んでおり、 当該分析結果と異なる。今回の結果からは、「Y308L」が最も近い鋼種で ある。 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 7 ボートサンプル元素分析まとめ(2/2) R1及びR5のボートサンプルの元素分析結果は、母材は 「SUS304」、溶接金属部は「Y308L」と推定され、 材料は問題ないものを使用していた。 今回の元素分析結果からは、ライナードレン損傷における 推定原因に影響を与えるものでなかった。 貫通傷発生原因 地震によるスロットプラグ からの外荷重 溶接が困難な三面コーナー 部の溶接溶け込み不足 初層溶接後のPT未実施 溶接余盛り部の除去実施 無断複製・転載禁止 東京電力株式会社 8