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フロンティア人材研究会 報告書

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フロンティア人材研究会 報告書
フロンティア人材研究会
報告書
2012年3月
経済産業省
目次
Ⅰ 研究会の問題意識
p.4
1.日本経済成長に向けた現状と課題
p.5
2.研究会における問題意識
p.9
Ⅱ 日本企業の新事業創造の現状(上場企業アンケート等から)
p.11
1.新事業創造の現状
p.12
2
2.フロンティア人材の特性
人材 特性
p.20
20
(1)フロンティア人材に対する問題意識
p.21
(2)人材像
p.22
Ⅲ 新事業創造における世界的潮流
p.36
1.グローバルな動向
p.37
2.米国の動向
p.41
3.北欧の動向
p.47
4.アジアの動向
5.世界的に実践されるイノベーション創出の方法論
p.57
p.61
6.新事業創造における世界的潮流に関する結論
p.63
1
目次
Ⅳ 企業及び社会において新事業創造を持続的に創出するための課題
1.経営上の課題
p.65
p.66
①「経営者は新事業創造の重要性を理解しつつも、十分なリソース配分をしていない」
p.67
②「技術革新」に加えて、「ユーザー起点」という視点でイノベーションを実現するための
新たな方法論が身についていない」
p.68
③「自社内に新事業創造のためのエコシステムが装備できていない」
p.69
④「トップマネジメントがリスクテイクできていない」
p.72
⑤「組織運営におけるKPIやコンプライアンスがイノベーションを阻害している」
p.73
⑥「社員の創造性を引き出せるようなオフィス環境が整備されていない」
p.74
2.人材マネジメント上の課題
p.75
(1)人材マネジメントにおける共通的課題
p.76
(2)人材発掘における課題
p.78
(3)人材育成における課題
p.81
(4)人材活用における課題
p.83
3.社会システムとしての課題
p.86
(1)人材育成・働き方における課題
p.88
(2)リスクマネー供給の課題
p.91
(3)産官学連携上の課題
p.93
目次
Ⅴ 課題解決の方向性と産官学の連携による取組(例)
1.企業における課題解決の方向性(例)
(1)新事業創造を主軸に据えた経営革新へ
(2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
2.社会における課題解決の方向性(例)
(1)ユーザー起点イノベーション教育の推進
(2)フロンティア人材が活躍する社会環境の整備
(3)産官学連携による新事業創造の実践の場の提供
3.取組例
p.94
p.95
p.97
p.100
p.108
p.110
p.111
p.113
p.115
(1)イノベーションの現状診断ツール開発、活用の事例
p.117
(2)エグゼクティブ向け意識啓発の事例
p.118
(3)フューチャーセンター等の装備促進 【紺野委員】
p.119
(4)新事業創造のための人材ポートフォリオ戦略の研究
p.121
(5)新事業創造の成功例の研究、ケース化、公開事例
p.123
(6)新事業創造実践の場の設置 【安藤座長】
p.125
(7)新事業創造実践の場の設置事例
p.126
(8)労働時間規制の柔軟化
p.128
Ⅵ 研究会としての提言
p.129
Ⅰ 研究会の問題意識
4
1.日本経済成長に向けた現状と課題
5
1.日本経済成長に向けた現状と課題
過去20年間日本経済は停滞してきた。
1990年代以降の日本のGDP推移
注)年度ベース。93SNA連鎖方式推計。平均は各年度数値の単純平均。1980年度以前は「平成12年度国民経済計算年
報(63SNAベース)、1981~94年度は年報(平成21年度確報)による。それ以降は2011年10-12期・2次速報。
出所)内閣府SNA
6
1.日本経済成長に向けた現状と課題
一方で、日本企業は過去20年間、コストカットを中心とした「減量経営」を主軸に進めてき
ており、真の顧客志向でのグローバルに通用する新事業が創造されていない。
【新分野・新事業への進出の必要性
(今後5年程度)と実績(過去10年)】
日本企業の1990年代以降の資産構造
0%
20%
40%
60%
80%
100%
進出を検討中・必要 71.9%
29.8
既に検討している
0%
42.1
検討の必要性は感じている
20%
40%
19.1
検討の必要性は感じていない
60%
分からない
80%
8.2 0.8
無回答
100%
進出を継続 37.6%
37.6
(出所)法人企業統計年報
6.2
1.2
5.2
1.8
48.0
進出し、現在も継続
進出したが、現在は継続していない
進出はしていない
創業10年以内のため、該当しない
その他
無回答
(出所)経済産業省「企業と地域経済の成長・発展に関するアンケート調査」
(平成22年3月)
7
1.日本経済成長に向けた現状と課題
現状では新事業創造が進められていないが、我が国企業は中長期的な課題としては新事
業創造を最重要課題と認識している。
現在ならびに将来(2013年度/2015年度)の経営課題認識
2010年の課題認識
2015年の課題認識
2013年の課題認識
(n=632)
1位
収益性向上
57.6
1位
収益性向上
45.4
2位
売り上げシェア拡大
(販売力の向上含む)
55.9
2位
売り上げシェア拡大
(販売力の向上含む)
42.4
3位
人材強化(採用・育成・多様化)
37.0
3位
人材強化(採用・育成・多様化)
41.5
4位
新製品・新サービス・新事業
開発
21.4
(n=510)
(n=632)
4位
新製品・新サービス・新事業
開発
31.0
新製品・新サービス・新事業
1位
開発
13.5
2位
収益性向上
3位
売り上げシェア拡大
(販売力の向上含む)
12.2
4位
グローバル化(グローバル経営)
10.8
10.2
13.1
5位
技術力の強化
17.4
5位
グローバル化(グローバル経営)
19.9
5位
人材強化(採用・育成・多様化)
6位
顧客満足度の向上
17.2
6位
顧客満足度の向上
17.9
6位
ブランド価値向上
7.3
7位
現場の強化(安全・技能伝承など)
13.3
7位
技術力の強化
16.6
7位
顧客満足度の向上
7.1
3つまで回答
3つまで回答
1つのみ回答
(出所)社団法人日本能率協会 「第32回 当面する企業経営課題に関する調査」(2010年11月)
8
2.研究会の問題意識
9
2.研究会における問題意識
研究会では、義憤や面白がりなどのこだわりを持ってマーケット起点で新事業創造を構想・実行する人材を「フロン
ティア人材」と定義し、こうした人材の発掘・育成・活用を中心にして、今後のイノベーション、企業経営、人材マネ
ジメント、社会システムの在り方を議論し、産官学の取組の方向性と具体策について提言。
人材機能と育成実態・所在場所
人材機能
定義(人材機能)
育成実態
技術系:
技術開発・発明
知財を生みだす
技術面でソリューション考
案をサポートする
政策・経営共に手厚く対応
がなされている
• 社内R&D
• 大学
• 中小ベンチャー経営者
• 国の機関
フロンティア系
義憤や面白がりなどのこだ
わりを持ってマーケット起点
で新事業創造を構想・実
行する人材
重要性が認識されておら
ず、育成対象となっていな
い
• 存在はしているが埋もれ
て点在している可能性が
高い
• ヘッドハンターの対象外
各ファンクションの事業を
主導・支援する
社内人材育成の重点分野
であり、日本企業における
この分野の機能を担える
人材は潤沢
• 大企業・中堅企業のホワ
イトカラーの大多数
• 人材マーケットも存在して
おり、一定の流動性があ
る
ファンクション系:経
営企画・財務・人事
等
所在場所
研究会で着目
した人材機能
10
Ⅱ 日本企業の新事業創造の現状
(上場企業アンケート等から)
11
1.新事業創造の現状
12
1.新事業創造の現状
我が国企業のほとんどは、自社の新事業創造の状況について満足していない。
問7.貴社における現在の新事業創造の状況について満足されていますか。以下の選択肢
の中から最も近いものをお答えください。(○は1つだけ)
問7. 現在の新事業創造の状況の満足度 [SA] N=330
0%
満足している
10%
20%
どちらかと言えば満足していない
55.2%
23.0%
0.6%
50%
60%
N=64
19.4%
満足していない
40%
N=6
1.8%
どちらかと言えば満足している
無回答
30%
N=182
N=76
N=2
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
13
1.新事業創造の現状
我が国企業では、既存市場重視の傾向が強く、将来的な必要性は感じつつも新市場開
拓・新ビジネスモデルの構築ができておらず、そのためのリソースも割いていない。
問1.貴社の事業戦略において、現在重点を置かれている分野と、将
来(5年後)的に重点を置く必要があるとお考えの分野は何ですか。
問1. 貴社の事業戦略において、現在重点を置かれている分野と、将来(5年後)
的に重点を置く必要があるとお考えの分野は何ですか。
0%
現在の最重点分野
20%
11.5% 7.6%
40%
60%
17.9%
80%
問9. 新事業創造を目的としたプロジェクト(業務や活動)の重視度 [SA] N=330
0%
100%
N=330
61.8%
1.2%
将来の最重点分野
31.2%
19.1%
22.4%
問9.貴社において、新事業創造を目的としたプロジェクト(業務や活動)
はどの程度重要視されていますか。以下の選択肢の中から最も近いもの
をお答えください。(○は1つだけ)
20%
30%
40%
50%
N 85
N=85
25.8%
新事業創造を目的としたプロジェクト(業務や活動)を、経営上の重
要プロジェクトとして位置付けているが、人員や資金等のリソースの
配分は十分でない
N=130
39.4%
新事業創造を目的としたプロジェクト(業務や活動)よりも、通常の業
務遂行の方が重要視されている
N=330
25.2%
10%
新事業創造を目的としたプロジェクト(業務や活動)を、経営上の重
要プ ジ クトとして位置付けており 人員や資金等のリソ スを十
要プロジェクトとして位置付けており、人員や資金等のリソースを十
分に配分している
N=66
20.0%
新事業創造を目的としたプロジェクト(業務や活動)は存在しない
4.5%
N=15
わからない、該当しない
3.3%
N=11
無回答
7.0%
N=23
2.1%
新規ビジネスモデル&(国内外)新規市場
新規ビジネスモデル&(国内外)既存市場
既存ビジネスモデル&(国内外)新規市場
既存ビジネスモデル&(国内外)既存市場
無回答
注)現在最も重点をおいている分野を集計。また、市場については、国内市場、海外市場を合算。
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
14
1.新事業創造の現状
ほとんどの企業において新事業創造まで3年しか我慢できない状況。また新事業創造への期待値
も低く、十分なリソースが投入できていない上、成果も把握できていない。こうした経営戦略がイノ
ベーションを阻害しているのではないか。
問2. 貴社が新事業を創造する際、新事業の黒字化を求めるまでの
期間は通常どの程度でしょうか。以下の選択肢の中から最も近いもの
をお答えください。(○は1つだけ)
問2. 新事業の黒字化を求めるまでの期間 [SA] N=330
0%
1年
10%
20%
30%
40%
50%
問3. 貴社が新事業を創造する際、通常、すべての新事業に期待する売上高の
総合計は、貴社の全売上高の何パーセント位に相当しますか。以下の選択肢の
中から最も近いものをお答えください。(○は1つだけ)
問3. 新事業に期待する売上高の総合計は全売上高の何パーセントに相当か [SA] N=330
60%
70%
0%
N=22
6.7%
1%未満
5%
N=58
無回答
50%以上
N=2
0.6%
問5.貴社が新事業を創造する際、通常、期待する売上高に応じた人
員数を投入していますか。以下の選択肢の中から最も近いものをお答
えください。(○は1つだけ)
投入する人員数は、期待する売上高に比べかなり少ない
10%
8.5%
35.5%
投入する人員数は、期待する売上高と同等である
投入する人員数は、期待する売上高に比べかなり多い
24.5%
12.7%
0.9%
わからない、該当しない
無回答
N=22
N
24.8%
N=82
0.6%
N=2
問6.貴社が新事業を創造する際、通常、新事業に対する投資額は、新事業
への期待売上高の何パーセント位に相当しますか。以下の選択肢の中から
最も近いものをお答えください。(○は1つだけ)
0%
40%
5%未満
N=117
5%~10%未満
N=81
10%~20%未満
N=42
20%~50%未満
N=3
17.6%
0.3%
30%
N=28
投入する人員数は、期待する売上高に比べ少ない
投入する人員数は、期待する売上高に比べ多い
20%
N=20
問6. 新事業の投資額は新事業の期待売上高の何パーセントに相当か [SA] N=330
問5. 新事業の創造における投入人員数と期待売上高 [SA] N=330
0%
N=74
N=67
0.6%
わからない、該当しない
無回答
N=68
6.1%
N=49
14.8%
30%
20.3%
10%~20%未満
20%~50%未満
わからない、該当しない
25%
22.4%
5%~10%未満
17.6%
5年以上
20%
N=15
N=199
60.3%
15%
20.6%
1%~5%未満
3年
10%
4.5%
N=58
N=1
50%以上
10%
30%
50%
N=35
14.2%
N=32
N=46
13.9%
N=14
4.2%
46.7%
0.6%
40%
N=47
9.7%
わからない、該当しない
無回答
20%
10.6%
N=154
N=2
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計 ・送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
15
1.新事業創造の現状
経営者は、「技術革新」よりも、マーケットの潜在ニーズに合わせた商品作りや、新たなビ
ジネスモデル構築ができていないことを問題視している。
問8.問7で、「3. どちらかと言えば満足していない」または、「4. 満足していない」を選択した
方にお伺いいたします。
新事業が満足に創造できない要因について、以下の選択肢から該当するものを最大3つま
でお選びください。(○は最大3つまで)
問8. 問7で、 「どちらかと言えば満足していない」または、「満足していない」を選択した方に
お伺いいたします。新事業が満足に創造できない要因について、以下の選択肢から該当
するものを最大3つまでお選びください。(○は最大3つまで) [MA] N=258
0%
20%
技術革新が起こせていない
開発した技術の活かし方がわからない
40%
N=15
5.8%
53.5%
ビジネスモデルを組み立てることができていない
80%
N=77
29.8%
マーケットのニーズに基づいた製品・サービスの開
発ができていない
60%
63.6%
N=138
N=164
11.6%
N=30
わからない、該当しない
4.3%
N=11
無回答
1.9%
N=5
その他
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
16
1.新事業創造の現状
新事業創造において外部との連携が不可欠であえるが、現状では企業内部に閉じる傾
向が強い。
委員による意見
野田委員
安藤座長
ソニーは従来、社員自身がリードユーザーであったため、社員が創りたいも
のを創り出すことがイノベーションにつながっていた。しかし、今は社員のサ
ラリーマン化が進んでいる。(野田委員)
会社が大きくなりすぎたことが要因である。外部との接点を拡大することが求
められている。(安藤座長)
松本委員
夏野委員
もはやイノベーションは中だけでは起きない。いかに外部のアイデアやビジ
ネスモデルを取り入れるかということが重要。(松本委員)
企業内で何事も解決するのは無理である。(夏野委員)
17
1.新事業創造の現状
新事業創造は経済的価値を生むことが重要であるという認識が十分でないという現状が
ある。
委員による意見
表委員
夏野委員
「技術はキャッシュを知恵に変えることであるが、イノベーションは知恵を
キャッシュに変えること」である。イノベーションを完結するには経済的価値を
生まなければならない。(表委員)
「キャッシュに変える」ということに対し拒絶反応を起こす者が多いのが問題
である。(夏野委員)
18
1.新事業創造の現状
日本企業の新事業創造の現状に関する結論
「過去の成功体験から抜け出せず、結果と
過去の成功体験から抜け出せず、結果と
して、既存ビジネスの現状維持を前提とし
た経営となり、現状否定を出発点とする破
壊的なイノベーションは起こっていない」
19
2.フロンティア人材の特性
20
2.フロンティア人材の特性 (1)フロンティア人材に対する問題意識
企業は新たなビジネスモデルの構築に苦手意識を持っており、その原因を「人材」に求めている。新
事業創造のためには、「技術」や「事業性」に加え、「ユーザー」視点を統合的にデザインする「フロン
ティア人材」の活用ができていない。
質問 ビジネスモデル構築について、苦
手意識はありますか?
質問 ビジネスモデル構築を苦手とする要
因として、どのようなものが考えられ
ますか?
N=884
28.2%
0%
苦手である
苦手ではない
71.8%
20%
40%
60%
80%
人材が不足しているから
61.0%
顧客ニーズ優先だから
61.2%
考えなくてもうまくいっていたから
構築方法がわからないから
33.9%
12.9%
なかなかうまくいかないから
情報が不足しているから
その他
100%
35.8%
7.3%
2.2%
全体(n=634)
(出所)経済産業省「我が国企業の研究開発投資効率に係るオープン・イノベーションの定量的評価等に関する調査」
21
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
多くの日本企業では、フロンティア人材に「推進力」、「構想力」、「挑戦心」を求める一方で、研究会
委員からは、 「利他精神」、「自己管理力」、「質問力」、「捨てる力」が重要との指摘。
問18. 【問11で1または2を選択した方】【問11で3を選択した方】
「新事業創造を牽引する人材」にとって、重要だと思われる能力や素養を以下の選択肢から
最大3つまでお選びください。(○は最大3つまで)
研究会委員によるコメント
問18. 「 新事業創造を牽引する人材」にとって、重要だと思われる能力や素養 [MA] N=280
0%
10%
20%
30%
40%
推進力
36.8%
構想力
33.2%
32.5%
挑戦心
未来トレンドや社会課題に関する感度
24.6%
連想力
20.0%
19 3%
19.3%
16.4%
15.4%
15.0%
14.6%
コーディネート力
コ
ディネ ト力
粘り強さ
コミュニケーション能力
外部パートナーシップ形成力
目標設定力
観察力
他者活用力
分析力
リスクテイク精神
再定義力
計画力
ロジカルシンキング
技術力
試行錯誤力
捨てる力
質問力
自己管理力
その他
利他精神
無回答
N=103
N=93
N=91
N=69
N=56
N=54
N=46
N=43
N=42
N=41
N=28
10.0%
10.0%
8.6%
7.9%
7.1%
6.4%
4.6%
3.2%
2.9%
2.5%
0.7%
0.7%
0.7%
0.4%
0.0%
N=28
N=24
N=22
N=20
アンケートで新事業創造をけん引する
人材に重要な能力・素養として「推進
力」、「構想力」、「挑戦心」が最上位層
にあがっているが、これらの能力に秀
でた「なりすましイノベーター」がイノ
ベーションを阻害しているケースがある。
ションを阻害しているケ スがある。
「真のイノベーター」に必要な能力は、
「利他精神」、「自己管理力」、「質問
力」、「捨てる力」。これらはアンケート
では最下位層にあがっている。
経営者が「真のイノベーター」に必要な
能力をわかっていないことが課題であ
る。(紺野委員)
N=18
N=13
N=9
N=8
N=7
N=2
N=2
N=2
N=1
N=0
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質
問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として
課題を設定し、課題解決のためのビジネスモデルの構築ができる
人材
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで
集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本
経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者 22
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
フロンティア人材に求められる素養として、問題発見力とイノベーション実行力が挙げられ
る。
フロンティア人材に求められる素養
問題発見力
イノベーション実行力
試行錯誤力
義憤
面白がり
利他精神
質問力
自己管理力
俯瞰力
商人感覚
スキル
外部の巻き込み
リスクテイク精神
マインド
23
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
【問題発見力(スキル)】
フロンティア人材に求められるスキルは、質問力、ビジネス機会への嗅覚、試行錯誤力など
委員によるフロンティア人材のタイプ、要件認識
夏野委員
表委員
グループ
ディスカッ
ション
答に窮する質問をする人
課題以上のことを発見する人
余計なことを言う人
技術や物づくりだけに興味を持っているだけでは無く、広くビジネス機会に強
技術や物づくりだけに興味を持
ているだけでは無く 広くビジネス機会に強
い興味を持つ事が重要。
顧客ニーズを発掘できる人材
試行錯誤力のある人材
24
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
【問題発見力(マインド)】
フロンティア人材に求められるマインドは、強い好奇心・義憤を持つことや、変革への意欲。
委員によるフロンティア人材のタイプ、要件認識
紺野委員
本当に必要な素養は、「世の中のためにやってやろう」、「これは壊さないと
いけない」といった利他精神である。
野田委員
正しく怒れること、また、面白がれること。これが課題の発見やイノベーション
につながる。
西口委員
知的好奇心が高く、新し物好きで、現状維持をしたくないという性格(エネル
ギー)。
夏野委員
人生のリスクを取れる人。
大久保
委員
一つだけ重要な要素を挙げるとすれば、利他精神である。
25
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
【イノベーション実行力】
商人感覚や試行錯誤力等、イノベーションを実行していく上で重要な素養も求められる。
委員によるフロンティア人材のタイプ、要件認識
紺野委員
自己管理力、質問力、捨てる力、試行錯誤力がある。これらの項目は非常に
重要である。
野田委員
自己管理力が重要となる。病気になっては意味がない。
商人感覚や利他精神を持った人物をどのように見つけ、活用させるのか、と
いう点が課題である。
グループ
ディスカッ
ション
内部にクローズしているのではなく、“外部オープンな人材”
26
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
企業において、従来の企業や事業にはない視点、新しいことに挑戦したことがあるという
経験値などがフロンティア人材の要件として挙げられている。
企業ヒアリング結果
キリンビール
株式会社
メンバー選定時、既存のコア事業に染まっておらず新しい視点を持っている
中途入社の者を選定
新しいことをやった人(新分野の商品を開発した人等)を、リーダーに登用
プラス
株式会社
空想力のある人(既存の枠に縛られない発想がる)と、実行力がある人
企業の過去のいきさつ、しがらみを経験していない人、分かっていない人材
を抜擢しなければならない
事業対象分野を熟知はしていない人材(熟知していないからこそ外部の知恵
を借りようとする)(なまじ業界の構造を知っていれば、既存の枠の中の発想
になってしまう)
B-C
製造業A社
ディレクションする立場で成功体験と共に修羅場体験がある
苦労を苦笑いしながら楽しめる
分かるようにコミュニケーションできる、人の話をまず聴く
大きな失敗経験がない:このことにより空気を読まずに進むことができる
技術が分かる
コンセプトを人に伝えることが出来る
現場から連想することが出来る
27
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
多くの企業では、30代、40代にフロンティア人材が多いと回答している一方、研究会で
は、若者の方がイノベーションを起こせる可能性が高いとの指摘もあった。
研究会委員によるコメント
問14.【問11で1または2を選択した方】
貴社における「新事業創造を牽引する人材」はどの年代の方が最も多いですか。(○は1つだけ)
問14. 「新事業創造を牽引する人材」はどの年代が最も多いか [SA] N=186
0%
代
20代
10%
20%
40%
50%
2.2%
N=4
30代
35.5%
N=66
44.1%
40代
N=82
16.1%
50代以上
無回答
30%
N=30
2.2%
N=4
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定し、課題解決のためのビジネスモデルの構築
ができる人材
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
自分の印象だと、若者の方がイノベー
ションを起こせる可能性が高いと思う。
40代以上は、何でも「みんなで一緒に
やる」という文化である。それに対し、
今の20代から30代前半の若者は、趣
味だけでなく、人生自体が多様化して
いる。 (夏野委員)
イノベーション創出人材の共通点:28
歳までに思ったことを実現している(グ
ループディスカッション)
リクルートの新規事業創造の仕組み
にRINGがあるが、色々なグループが
チャレンジした中で、内定者が一番よ
かったという結果がある(大久保委員)
正しく怒れること、また、面白がれるこ
と。これが課題の発見やイノベーション
につながる。今の学生は感情が平たん
と言う印象を持っている。若者は周囲
からはじかられないように感情をコント
ロールしている傾向がある。(野田委
員)
28
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
アンケートでは、フロンティア人材のキャリア属性として、新卒で入社し、自社に務め続けている者が
多く挙がっている一方、研究会や国内企業ヒアリングでは、中途入社の者が新しい視点をもたらすと
の指摘があった。
研究会委員によるコメント
問15.【問11で1または2を選択した方】
貴社における「新事業創造を牽引する人材」はどのようなキャリア属性の方が最も多いです
か。(○は1つだけ)
問15. 「 新事業創造を牽引する人材」はどのようなキャリア属性が最も多いか [SA] N=186
0%
10%
新卒で入社し、自社に勤め続
けている者
同業他社から自社に転職した
者
異業種から自社に転職した者
20%
30%
40%
74.7%
7.5%
13.4%
50%
60%
70%
80%
N=139
30年間同じ釜の飯を食った仲間だけ
で事業を行うのは、種の保存の法則か
らみても弱いだろう。 (夏野委員)
大企業で問題意識のあるところは、
「パートタイム社会」のようだ。うまく外
部の力を使っている (夏野委員)
部の力を使っている。
N=14
国内企業ヒアリング結果
N=25
その他
2.7%
N=5
無回答
1.6%
N=3
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定し、課題解決のためのビジネスモデルの構築
ができる人材
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
上司が本人を気に入った要因としては、
中途入社であり、新しい視点を持って
いることや、やる気に満ち溢れていた
ことがあったと思う。(キリンフリー)
本人は元々異なる業種の企業に勤務
していたため、業界の過去のしがらみ
がなかったから出来た。しがらみをど
んどん切り捨てることができた(プラス)
29
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
日本企業の多くは、フロンティア人材の社内キャリア経験として、主力事業部門での業務経
験が長い者、または異なる分野間での異動経験がある者を挙げている。
問16.【問11で1または2を選択した方】
貴社における「新事業創造を牽引する人材」はどのような社内キャリア経験(業務経験、異動
経験)の方が最も多いですか。(○は1つだけ)
問16. 「新事業創造を牽引する人材」はどのような社内キャリア経験が最も多いか [SA] N=186
0%
10%
20%
主力事業部門での業務経験が長い者
30%
40%
50%
N=87
N
87
46.8%
N=5
低迷事業部門での業務経験が長い者
2.7%
子会社等での業務経験がある者
4.3%
N=8
海外現地法人や海外支店での業務経験がある者
6.5%
N=12
技術部門から営業部門等、異なる分野間での異動経験がある者
その他
無回答
N=60
32.3%
4.3%
N=8
3.2%
N=6
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定し、課題解決のためのビジネスモデルの構築
ができる人材
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
30
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
新事業創造の状況に満足している企業では、新卒採用比率が低く、中途採用比率が高い
傾向。
新事業創造状況の満足度別クロス集計結果
問20.貴社における全採用者について、新卒採用・中途採用比率はどの程度ですか。回答欄に直接ご記入く
ださい。※直近年度における、おおよその数値で結構です。
新卒
【 クロス分析】問7と問20の「全採用者における新卒採用・中途採用の比率
新卒」 N=328
0%
「満足している」、
「どちらかと言えば満足している」
20%
5.7%
8.6% 7.1% 11.4%
40%
60%
80%
28.6%
30.0%
5%未満
5%~20%未満
20%~50%未満
50%~70%未満
41.9%
70%~90%未満
90%以上
【 クロス分析】問7と問20の「全採用者における新卒採用・中途採用の比率
中途」 N=328
0%
100%
8.6% N=70
4.3%
「どちらかと言えば満足していない」、
7.4% 5.0% 11.2% 24.0%
「満足していない」
中途
6.2% N=258
無回答
「満足している」、
「どちらかと言えば満足している」
「どちらかと言えば満足していない」、
「満足していない」
5%未満
5%~20%未満
7.1%
14.7%
20%~50%未満
20%
40%
30.0%
31.0%
50%~70%未満
60%
28.6%
80%
100%
5.7%
11.4% 5.7% 11.4% N=70
26.0%
70%~90%未満
4.3%
7.8%
14.0%
2.3%
90%以上
N=258
無回答
注)問7は新事業創造の状況について問う設問。(貴社における現在の新事業創造の状況について満足されていますか。以下の選択肢の中から最も近いものをお答えください。(○は1つだけ))
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
31
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
研究会では、フロンティア人材の育成に向けて、フロンティア人材本人と周囲の合計4タイプ
に着目。
フロンティア人材育成に向けた人材タイプの考え方
フロンティア人材
本人
フロンティア人材の
周囲
すでに実績のある
フロンティア人材
• すでにイノベーションを創出した実績のある人材
• 多くの場合、「尖っている」ため、組織で「扱いにくい」存在と捉えら
れがち
潜在的な
フロンティア人材
• 「世の中を変えたい」といった想いはあるものの、イノベーションに
取組めていない人材
• 組織内で顕在化しておらず、本人も自身の可能性に気づいてい
ない場合が多い
フロンティア人材の活動を
支援する人材
• フロンティア人材を信頼し、重要なミッションを任せる経営者
• イノベーションに理解を示し、フロンティア人材を支援するミドルマ
ネージャー
• イノベーションに理解を示し、フロンティア人材を支援する人事、
財務、総務、情報システム部門など
フロンティア人材の活動を
阻害する人材
• イノベーションに理解を示さず、フロンティア人材の活動を認めな
い人材
32
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
イノベーションは、一個人のフロンティア人材によってではなく、フロンティア人材チームによ
り実現されている。
企業ヒアリング結果
マツダ
株式会社
SKYACTIVEシリーズを生み出す源泉となった長期戦略立案にあたっては、
各部門から1-2名ずつ、計10名程度のプロジェクトチームをつくった。チームメ
ンバーのうち、30代後半から40代前半の3-4名(技術畑の人材、顧客・市場情
報を有する部門の人材、車のハードウェア全体を理解している人材)が、チー
ムのコアとなり長期戦略プロジェクトを推進した。
SKYACTIVEシリーズの開発にあたっては、高い志(Vision)に共感した設計、
実験の有志が小さなチームをつくり、開発プロジェクトを推進しはじめた。
ビジネスモデル変革を実現するためには、高い志(Vision)を共有化した開
発~製造(含む調達・購買)に渡る部門を超えた人材が一緒になってONE
TEAMとして進める必要がある。
キリンビール
株式会社
KIRIN FREEの開発にあたっては、専門領域が異なる技術者が新製法の開発
に携わったが、その際プロジェクトを統括する人材が開発コンセプトや方針を
示したり、普段あまり接点のない技術者同士がコミュニケーションを図れる場
を作るといった活動を展開したことで、イノベーションの実現につながった。
33
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
フロンティアを支援するマネジメント層に求められるのは、青黒さと、見て見ぬふりをする姿
勢。スタッフ部門もイノベーションへの理解を向上させる必要がある。
委員による意見
野田委員
「おれも暴れたのだから下も暴れさせる」というマネジメント層が必要である。
「青黒い人材」が適任。
シニアはイノベーションを「温かい目で見守る」のではなく、「見て見ぬふりを
する」ことが重要である。
必要な層は、巻き込まれ屋である。「裸の男」動画にもあるように、フォロイン
グリ ダ がいないといけない 問題なのは 日本では フォロイングリ
グリーダーがいないといけない。問題なのは、日本では、フォロイングリー
ダーが激減しているという点。これは、人を助けても評価されない人事制度
があるためである。
夏野委員
イノベーションを起こすには、フロンティア人材を支援する人事、財務、総務、
情報システム部門の理解を向上させる必要がある。
34
2.フロンティア人材の特性 (2)人材像
新事業創造の状況に満足している企業では、男性の新卒採用比率が低く、女性の新卒採
用比率が高い傾向。
新事業創造状況の満足度別クロス集計結果
問21.貴社における新卒採用者について、男女の比率はどの程度ですか。回答欄に直接ご記入ください。
※直近年度における、おおよその数値で結構です。
男性
女性 【クロス分析】問7と問21の「新卒採用者における男女の比率 女性」 N=328
【 クロス分析】問7と問21の「新卒採用者における男女の比率 男性」 N=328
0%
20%
40%
60%
80%
4.3%
「満足している」、
2.9%11.4% 14.3%
「どちらかと言えば満足している」
38.6%
21.4%
7.1% N=70
1.6%
「どちらかと言えば満足していない」、 0.8%
20.2%
「満足していない」
7.0%
10%未満
10%~30%未満
30%~50%未満
40.3%
50%~70%未満
26.0%
70%~90%未満
0%
100%
4.3% N=258
90%以上
無回答
「満足している」、
「どちらかと言えば満足している」
20%
4.3%
「どちらかと言えば満足していない」、
6.6%
「満足していない」
10%未満
10%~30%未満
40%
41.4%
60%
14.3%
44.6%
30%~50%未満
50%~70%未満
80%
100%
2.9%
18.6% 2.9% 15.7%
N=70
0.4%
24.8% 10.1%
9.3% N=258
4.3%
70%~90%未満
90%以上
無回答
注)問7は新事業創造の状況について問う設問。(貴社における現在の新事業創造の状況について満足されていますか。以下の選択肢の中から最も近いものをお答えください。(○は1つだけ))
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
35
Ⅲ 新事業創造における世界的潮流
36
1.グローバルな動向
37
1.グローバルな動向
OECDレポートでは、イノベーションに対する新たな定義付けを行い、各国のイノベーション
政策をモニタリングしている。
イノベーション統計の対象
OECDの取り組み
•
•
1999年より各国のイノベーション政
策を分析、モニタリング
OECD Science, Technology and
Industry Scoreboard 2011
プロダクト・イノベーション
•
– 製品&サービス
プロセス・イノベーション
•
– 製造や流通など
– Innovation and growth in knowledge
economies
マーケティング・イノベーション
•
– 価格、デザイン、パッケージ、価格など
– 「市場との対話」
組織・イノベーション
•
– ビジネスの仕方、組織運営、他社との
関係など
38
1.グローバルな動向
OECD諸国では、「プロダクト」「プロセス」「マーケティング」「組織」の4領域での総合的なイ
ノベーションが主流となっている。
2006-2008対象
ドイツを始めとする諸国は
2006年頃から、「4領域すべ
て」でイノベーションを行っ
ている
韓国も同様
(%)
0.0
10.0
20.0
30.0
40.0
50.0
60.0
70.0
80.0
90.0
ドイツ
デンマーク
イタリー
スエーデン
「プロダクトとプロセスのみ」
が4領域を上回るのは、ロ
シアのみ
韓国(2005-2007)
アメリカと日本は統計に含
まれていない
2009年のスコアカードでは
プロダクトとプロセスのみを
対象(2003ー2005を対象)
フランス
フィンランド
ブラジル
カナダ(2007-2009)
ノルウエイ
イギリス
ロシア
プロダクトとプロセスのみ
マーケティングと組織のみ
4領域すべて
出所) OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2011
注)大企業のみのスコア/掲載企業のうちG8、スカンジナビア諸国、アジア、BRICSに該当する国のみ抽出
39
1.グローバルな動向
背景には世界的環境変化があり、その影響で技術探求型イノベーションに加えて“ユー
ザー起点イノベーション”を重視することが求められている。
グローバルな環境変化
求められるイノベーションの力点のシフト
ブロードバンド化
顧客が持てる情報が飛躍的に増大し顧
客自身がイノベーションを起こせるよう
になってきたため、より深い顧客理解が
必要となっている
技術
新興国の成長
先進国とは異なるニーズを持つマーケッ
トが台頭し、深いマーケット理解が不可
欠となっている
市場
産業
人・社会
技術探求型イノベーション
デジタル化
一部高度アナログ技術以外は誰でも技
術を扱えるようになってきたため、技術
やモノはコピーされやすくなっている
ユーザー起点イノベーション
※ユーザー起点イノベーションとは、ユーザーの本質的かつ潜
在的なニーズをくみ取り様々な製品、サービスを組み合わせ
たビジネスモデル革新を実現すること
40
2.米国の動向
41
2.米国の動向
イノベーションを「社会的洞察に基づく社会的・経済的価値」と定義。技術、ビジネス、デザ
インを融合した「人間中心のイノベーション」を展開。
パルミサーノ・レポートにおけるイノベーションに対する認識
イノベーションとは、
社会洞察と発明・発見との結合から生まれ、社会的・経済的価値を生み出すもの
イノベ ション自体の変質
イノベーション自体の変質
イノベーションがどこで(地理的、産
業)、どのように、なぜ生じるのか
流動化が進展
イノベーションのスピード、影響の
大きさ、担い手が変化
イノベーションの競争レベルが平準
化、イノベーションへの障壁が低下
発明 発見と社会洞察の掛け算での
発明・発見と社会洞察の掛け算での
社会価値創造(技術的高度化に加え
て社会ニーズを踏まえることが重要)
価値創造の仕組みの転換
成功尺度の転換
競争優位条件の転換
※パルミサーノ・レポートとは、米国競争力協議会が国家イノベーション・イニシアティブサミットを開催し、産学官の代表者400名以上のリー
ダーが15カ月かけて作成した報告書「Innovate America:Thriving in a World of Challenges and Change(2004年12月発表)の通称
42
2.米国の動向
スタンフォード大学d.schoolでは、ビジネス、テクノロジー、人間の願望を融合させ、事業を
デザインできる人材育成のために「型」としてのデザインシンキングを教えており、またプロ
トタイプ作成などを行う「場」も設置している。
スタンドード大 d.schoolとは
d.schoolが教える「型」としてのデザインシンキング
【概要】
イノベーション教育においてデザインシンキングを活用し成
果を上げている世界的に着目されている大学
正式名称は、Hasso Plattner Institute of Design at Stanfordで
ある。ドイツのソフトウェア企業であるSAPの共同設立者、
Hasso Plattnerが、3,500万USドルを寄付し、2005年にIDEO創
(
)
設者兼CEO(当時)であり、スタンフォード大学教授のDavid
Kelleyがディレクターとなって設立
デザイン思考を学び、実践するための場を提供
学生が直接所属しているわけではなく、スタンフォード大の
各学部/大学院の学生がデザイン思考をここで学び、それぞ
れの分野で活かしてもらうことを目的としている
Understand > Observe >
Define
>
Ideate
> Prototype
>
Test
プロトタイプ作成を行うための「場」
【設立背景】
【養成している人材像】
ビジネス、テクノロジー、人間の願望を融合させ、事業をデ
ザインできる人材
【教育内容・手法】
デザインシンキングを学ぶための実践型の授業と、プロトタイピング
が行える「場」も設定されている
MBA、education、engineerなど多様な人々が共同で履修をする
企業やVCなどが資金提供、そこからstartupに入るcaseもある
出所)スタンフォード大学d.schoolホームページ
43
2.米国の動向
スタンフォードd.Schoolと並ぶイリノイ工科大学デザイン大学院は、より戦略領域での人材
育成を重視し、デザイン思考を体系的に教え、IDEOなどに多くの人材を輩出している。
Illinois Institute of Technology
The Institute of Design
デザイン思考プロセス
• イリノイ工科大学のデザイン大学院。デザ
抽象
イン学部としての歴史も長く、また初めてデ
ザインの修士号を設置した先駆的大学でも
ある。
分析
統合
(Analysis)
(Synthesis)
• 人間中心型のデザインアプローチを基礎と
した教育プログラムの開発、デザイン理論
化・メソッド化・ツール化に力を入れている。
世界中の主要な人間中心思考、戦略思考
問題の特定
(Problem
Framing)
知る
フィールド
ワーク
プロト
タイプ
つくる
コミュニ
ケーション
を持ったデザイナー輩出校のひとつ。
• IDEOやGravityTankのコンサルタントやデザ
具象
イナーを多く輩出しており、スタンフォード
d.Schoolよりも戦略領域での人材づくりを重
視している。
44
2.米国の動向
IDEO社を初めとするイノベーションコンサルティングファームの層の厚さが特徴。ビジネス戦
略コンサル企業に代わる、グローバル成長企業のパートナーとして注目を集めている。
•
世界最大級のデザインイノベーションコンサルティングファーム。
•
サンフランシスコ・シリコンバレーを本拠地としてP&G, Microsoft, Samsung等、世
界中のトップ企業を相手に生活者視点の新しい製品開発、サービス開発、事業
開発コンサルテーションを行う。過去に数々の成功事例がある。
•
デザインプロセスを体系化し、ビジネス領域にデザイン思考を浸透させた功績
は大きい。
user
desirability
business
viability
(望ましさ)
(実行可能性)
insights &
opportunities
洞察と機会の発見
technical
feasibility
(実現可能性)
45
3.北欧の動向
46
2.米国の動向
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院は、産官学のリーダーに対話とネットワーキング
の場を提供し意識啓発を図っている。
Kellogg Innovation Networkとは
KINのPhilosophy
【概要】
ケロッグ・イノベーション・ネットワーク(KIN)は、2003年に設立さ
れたケロッグの持つイノベーションに関する知見・資産と企業
リーダー、非営利団体および政府間でイノベーション創出に向
けた共同作業を行うプラットフォームである。
企業リーダー向けの対話セッション、ネットワーキング等を
業リ ダ
け 対話 ッ
、 ッ
キ グ等を
行っている。
【設立背景】
社会が直面する多くの挑戦がクロス・セクターでの解決が必
要であり、個々の組織の範囲を越えた革新的な取組を要求し
ている。これらの挑戦に取組むためには協創が求められてい
るため、グローバルな産官学ネットワークを形成するに至って
いる。
【基本的な考え方・哲学】
出所)KINホームページ
繁栄についての大局的な見方を実現するためにサミットの参
加者のビジョン、経験および考え製品に多様な分野と先端的
な理論を注入することにある。
47
3.北欧の動向
国内市場が狭く、海外市場に活路を見出さざる得ない北欧では、「技術探求型イノベー
ション」に加えて、「ユーザー起点イノベーション」を重視。
北欧における諸機関が持つイノベーションへの認識
Copenhagen Living
Lab
Nokia
イノベーションは、price-driven ⇒technology-driven ⇒humandrivenと変わってきている
技術型(technology driven)プロセスでしばしば行われているよ
うに、とにかく研究開発に資金をつぎこむ、という方法ではうま
くいかない
21世紀のイノベーションは、Democratizing Innovationである
Finish Industry
Investment
VCもユーザー・オリエンテッドに案件を評価するようになってて
きている
Copenhagen Institute of
Interaction Design
(CIID)
技術イノベーションからインタンジブルデザイン注へのイノベー
ションの力点のシフトが起きている
注)「インタンジブルデザイン」とは、目に見えていない潜在的なニーズを「見える化」し、事業をデザインすること
48
3.北欧の動向
フィンランドのAalto大学では、ビジネス、テクノロジー、デザインの素養を横断的に持つコ
ーディネーター人材を養成している。
Aalto大学とは
Aalto大学が養成している人材像
【概要】
2010年2月に世界的に教育水準が高いとされるヘルシ
ンキ工科大学、ヘルシンキ経済大学、ヘルシンキデザ
イン大学の3つの大学を合併して設立
イノベーションをけん引する人材育成を先端的に実践
する大学として世界的に着目されている
現在の学生数は2万人。卒業生は7.5万人
スタッフは4,300人、うち教授(professors)が300人
2011年の年間予算は4億€
Aalto大学が養成する3つの
領域のコーディネート人材
Business
経営企画 財務など
経営企画・財務など
の経営機能を担う
【設立背景】
フィンランドをイノベーション大国とするための主要政策
の一つとして、大学教育を新たに求められているイノ
ベーションに即したものとする必要があると考えた
【養成している人材像】
Technology
知財や技術開発
などをけん引
Design
マーケットニーズを
くみ取りコンセプト
や事業を構築
ビジネス人材、技術人材、デザイン人材の全ての素養
を持ったコーディネーター人材を養成している
49
3.北欧の動向
フィンランドAalto大学では、学士課程で専門性を深め、修士課程で専門性を横につなげ
ることで、ビジネス、デザイン、テクノロジーをコーディネートできる人材を養成している。
Aalto大学の教育内容・方法
Aalto大学のカリキュラム
【教育内容】
学士課程では、ビジネス、デザイン、テクノロジーのいずれ
かの分野について研究し、それぞれの分野の専門性を高め
る
修士課程では学士課程で研究した分野とは別の分野につ
いて研究を行い ビジネス デザイン テクノロジーを横断的
いて研究を行い、ビジネス、デザイン、テクノロジーを横断的
に扱えるように教育される
実際に、学士と修士課程で研究分野が異なる人材が9割以
上。学士課程の専門分野を修士でも引き続き研究する人は
全体の1割程度
横に専門性
を広げる
【教育方法】
教授は、既存の3つの大学の教授で構成されている
修士課程では、一つのカリキュラムを専門分野の異なる教
授2名が担当するといった対応をとっている。例えば、デザイ
ンの授業においてデザインを専門とする教授とテクノロジー
を専門とする教授の2名体制で教えることで分野横断的な
考え方や手法を養っている
縦に専門性
を深める
50
3.北欧の動向
フィンランドAalto大学では、ディスカッションにより具体化されたコンセプトをすぐにプロトタイ
プ化するための実践の「場」を設けており、高速で価値の見える化と試行を可能としている。
Aalto大学の設置する「場」(左はディスカッションスペース、右は実験ラボ)
51
3.北欧の動向
デンマークのCIIDでは、人の経験及び事業を、技術を活用してデザインできる人材を養成
している。
CIID(Copenhagen Institute of Interaction Design)とは
CIIDが養成する人材像
【概要】
デンマークのイノベーション創造の中核拠点であり、主に人
材育成を行う教育機関
顧客にBeautiful experienceをデザインするために、design と
technology をブレンドした新しい考えを生み出すための場所
として設置
ボードメンバーは、6人。IDEOの共同創業者であるBill
ボ
、 人。
共同創業者 ある
Moggridgeもボードメンバーの1人
15人のコンサルタントとリサーチャーからなる。スタッフの専
門分野は、コンピューターサイエンス、グラフィックデザイン、
社会学など多様
機能として、①デザインコンサルティング、②リサーチ、③教
育(エグゼクティブ教育、インタラクションデザインプログラ
ム)の3つを持つ
【設立背景】
デンマークは従来技術志向であったが、元々技術利用国で
あり創造国ではなかった。世界的環境変化を踏まえて、新し
いイノベーションを生み出すための場が必要であると考えた
人材像①顧客経験と事業がデザインできる
人を中心とした、ビジネスにフォーカスした、
Beautiful
B
iful experienceをデザインできる人材
デザインの素養と事業構築の素養が必要
人材像②顧客経験・事業デザインに技術が
活用できる
経験と事業をデザインする際に、効果的に技術
を活用できる人材
技術理解が必要
【養成している人材像】
顧客経験と事業構築を技術を活用して行うことができる人
材を養成している
52
3.北欧の動向
デンマーク CIIDでは、デザインシンキングを中心としたイノベーション創出の「型」を身につ
けるための教育を実践している。
CIIDが教えるイノベーション創出の「型」としてのデザインシンキング(プロセス)
53
3.北欧の動向
デンマーク CIIDでは、デザインシンキングを中心とした「型」を身につけるために、課題発
掘からプロトタイプまでを一貫して実践できる「場」を一体的に提供している。
CIIDの設置する「場」
CIID建物内のプロトタイプ作成スペース
インタラクションデザインプログラムのクラス写真
54
3.北欧の動向
フィンランド Aalto大学では、学生及びOBに対するビジネス立ち上げ支援を政府系イノ
ベーション支援機関(政府組織)であるTEKESと連携して実施し、養成された人材に対す
る現実の事業機会を創造している。
Aalto Center for Enterpreneurshi(ACE)におけるビジネス立ち上げ支援スキーム
Directed to other supporting organizations
Back to Communication with Feedback
215
Aalto community
・Aalto Univ
・Coporatie Spin-offs
300
250
50
TEKESとは
フィンランド技術庁MIT
(ministry of trade and
industry)から予算が付与さ
れ大学、研究機関、企業の
R&Dプロジェクトに助成金や
ローン形式で資金援助する
政府関係機関。
Concept
Development
Evaluation
Proposal
10
Validation
30
5
10
10
Start-up
IP
License
Innovation Fast Track
【起業支援スキームの概要】
四角内の数値は、2011年のケース数(推計)
Proposal⇒Evaluationへの移行の際には、主に技術的な実現可能性をチェックする
各段階の投資額として、Evaluationでは0-5,000€の範囲のPre-seedファンドが、Concept Development では0-50,000€の範囲のPreseedファンドと20,000€以下の知的財産保護資金が、Validation では150-200TEKES Super POCと20,000€以上の知的財産保護資
金が用意される
資金提供はTEKESと協働で実施している
55
3.北欧の動向
スウェーデンでは、国内マーケットが小さいことからグローバルでの競争に内化すためにイ
ノベーションが重視されている。企業と大学が深く連携しイノベーション創出に共同歩調を
とっている。
スウェーデンにおけるイノベーション創出に向けた考え方、取組
イノベーション創出に
対する考え方
スウェーデンは日本とは異なり、国内マーケットが非常に小さいので、グローバルに出て行くしかな
い。これまでは、EU内が中心だったが、今後は新興国も含め、もっと出て行く必要がある。
大学連携の在り方
日本と比べるとスウェーデンの大学と産業界はより強い関係を持っている。共同研究などの形で協
働することも一般的である。
スウェーデンの大学は、企業のニーズに合った人材を育成することに対して企業側から大きなプ
レッシャーを受けていることもあり、積極的な取組を行っている。特に、ここ10年でこのような傾向は
強まっている。
日本に比べ スウェーデンの企業は
日本に比べ、スウェ
デンの企業は、企業内教育が充実していないという背景もある。
企業内教育が充実していないという背景もある
学生(特に修士課程)は、入社する時点ですでに企業ニーズに合った形に育成されていることが期
待されている。特に、エンジニアについては、修士論文(6ヶ月かける)を、企業と共同で執筆するこ
とが一般的であり、推奨されている。
Education, Research, Innovationの3つは大きくリンクしていると考えられている。
大学の取組
ここ10年、大学では企業ニーズに応えた人材育成に取組んでいる。例えば、起業に関するプログラ
ムなど。
大学間のジョイントプログラムも行っている。これは、文系理系や専攻の壁、大学の壁を越え、科学、
経済、起業などに関して学ぶ共同プログラムである。日本の大学にはない、真の学際的な教育
(multidisciplinary education)である。
大学が危機感を持ってこのような取組みを行う背景には、熾烈な大学間競争(国内だけでなく、海
外の大学も含めて)があるためである。
そもそも国内の学生数が少ないことに加え、優秀な学生は海外に留学することも多い。いかにして
優秀な学生を国内外からひきつけるか、という観点においても、企業ニーズに応えた教育を行って
いるか、という点が重要となる。(特に学部教育では重視されている。)
出所)スウェーデン大使館ヒアリング結果より
56
4.アジアの動向
57
4.アジアの動向
韓国 サムスンでは、90年代よりユーザー起点のイノベーション創出に取り組んでいる。
サムスンにおけるユーザー起点イノベーション創出に向けた取組
○1994年頃~ デザイン重視姿勢の採用
○2006年~ Product Innovation Team(PIT)設立
【特徴的な出来事】
【概要】
1994年、デザインセンターを水原(Suwon)からソウル
へ移転することにより、若く優秀なデザイナーを採用
デザインセンターでは、様々な分野を専門とする多様
な年代のメンバーを集め、チームで活動
年齢に関係なく対等な立場で意見を言い合う とを奨
年齢に関係なく対等な立場で意見を言い合うことを奨
励、ドレスコードを自由にするなど、韓国の伝統的な企
業風土を脱却し、デザイナーが活躍しやすい場づくりを
実施
後に、ロンドン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、東
京、上海にもデザインセンターを設立
同年、米デザインコンサルティング会社、IDEOと提携
し、デザインアプローチを用いた新製品開発への取
組開始
1995年、社内デザイナーが、世界の著名デザインス
クールの教授などから直接学ぶことができる、
Innovative Design Lab of Samsung(IDS) の立ち上げ
デザイナーの活躍を促進する、Chief Design Officerの
ポストを用意
2002年、ソウルに消費者によるプロトタイプテストの
場としてUsability Labを開設
ミッションは、BtoC製品の開発プロセスを、技術ドリブン
から消費者ドリブン(ユーザー起点)に変えること
2006年シリコンバレーに設立。その後、イギリス、中国、
インド、シンガポールにも展開
、
展開
PITで開発された商品例として、2-Viewデジタルカメラ、
uVending自動販売機など
【プロセス:New Concept Development(NCD)】
消費者の観察・理解から
始まるプロセス(右図参
照)
大企業で継続的にイノ
ベーションを起こすため
の再生可能でシンプル
なプロセスとしている
製品には、機能価値と
感性価値の双方が備
わっていることを重視
Understand the consumer
Ideate
Concept Development
Concept Finalization
58
4.アジアの動向
シンガポールでは、国を挙げて「フロンティア人材」の育成に取組んでいる。
シンガポールにおける「フロンティア人材」教育に関する国家的な取組
○The DesignSingapore Council
【概要】
2003年、経済再生員会がシンガポールの新しい成長
産業として、教育、ヘルスケア、クリエイティブ産業を
特定したことをきっかけに設立
Ministry of Information, Communications and the
Arts(情報芸術省)傘下に設置されている
デザインのイノベーションによりシンガポールの競争
力強化を目指し、デザイン産業の育成、企業におけ
るデザインの適用の促進、デザインを通じた協働、イ
ノベーションを起こす風土醸成に取組む
【主な活動内容】
デザイナー人材育成(デザインに関する教育プログラ
ムの提供、奨学金の付与)
2009年、International Enterprise(国際企業庁)、
SPRING(規格生産性革新庁)と共に、Design for
Enterprises (DFE) programmeを設立。企業におけ
るデザイン活用の有効性や、経営戦略へのデザイン
適用について教育を実施すると共に、デザインを適
用する企業に対して助成金や優遇税制を提供
(活動内容続き)
2010年、The Design Thinking & Innovation
Academy(DTIIA)を設立。デザインシンキングの手法
について民間、公共セクターを対象とした教育を実施
Asian Insights & Design Innovation (AIDI)において、
アジア各国でのエスノグラフィースタディーを実施。調
査結果はシンガポールの企業に共有される予定
○Singapore Polytechnicにおけるデザインシンキ
ング教育の実施
【概要】
2006年、School of Design設立。デザインシンキング
に関する教育を提供すると共に、Diploma in
Experience and Product Designを提供
各ディプロマコースにデザインシンキングの要素を取り
入れた教育も実施
Inspiration Corridorと呼ばれるラボを設置
シンガポールの中小企業を対象とした人材育成やコン
サルティングを提供
なお、シンガポールでは、2010年Economic
Strategies Committeeレポートにおいて、教育機関に
おけるデザインシンキング教育の実施を促進している
59
4.アジアの動向
世界の工場である中国においても、国家的技術、ビジネス、デザインが分かる「フロンティ
ア人材」の育成を本格化させている
中国におけるフロンティア人材育成に向けた取組
○国家全体としての取組
○地方政府としての取組(浙江省寧波市)
【国家高技能人材振興計画」】
【中国版スティーブ・ジョブズ養成プロジェクト】
目的
目的
専門性が高く、高度な熟練した技能を持ち、そ
してイノベーション力のあるリーダー的人材を
育成すること
内容
中国において、ビジネス、テクノロジー、デザイ
ンを統合しイノベーションを創出できる人材を輩
を統合しイ
ショ を創出できる人材を輩
出する
内容
技師の養成、高技能人材の訓練拠点の設置と
技師作業室の設置を重点とし、2011年から
2020年までに全国で350万人の技師と100万人
の高級技師を育成し、最終的にはあわせて
1000万人を養成していく
高技能人材の訓練拠点を1200ヶ所建設し重点
産業と中心都市をカバーできる高技能人材育
成ネットワークを構築します。さらに1000前後
の高級技師作業室を設置して、重点業種と特
色ある業種の技能を受け継ぎ、そのネットワー
クを普及していく
プログラムはNingbo Innovative Talent Training
Program.と呼ばれている
2020年までに2,800人の卒業生を送り出す予定
現時点で700人が対象となっている
5年単位で5千万元を投じている
60
5.世界的に実践されるイノベーション創出の方法論
61
5.世界的に実践されるイノベーション創出の方法論
これらの国々では、徹底的な顧客志向の追及と新事業創造のスピード向上のため、イノベーションの
新たな方法論(文化人類学的な手法等を用いたマーケット・リサーチや、高速でのプロトタイピング手法
等)を実践。
諸外国が取組むイノベーション創出の新たな方法論(デザインシンキングによるプロセス)
テーマ設定
関与型観察
課題定義と
コンセプト化
エスノグラフィなど文化
人類学的な手法を用い
たマーケットリサーチ
プロト
タイピング
ビジネスモデ
ル
デザイン
事業化
高速での試作の繰り
返し
62
6.新事業創造における世界的潮流に関する結論
63
6.新事業創造における世界的潮流に関する結論
「世界各国で、技術革新のみならず、新た
なイノベーションの方法論に対する産官学
のコンセンサスが形成。国を挙げて、こう
したプロセスをけん引できる『フロンティ
ア人材』も育成」
64
Ⅳ 企業及び社会において新事業創造を
持続的に創出するための課題
65
1.経営上の課題
66
1.経営上の課題
①「経営者は新事業創造の重要性を理解しつつも、十分なリソース配分をしていない」
問17.【問11で1または2を選択した方】
貴社において、現在、「新事業創造を牽引している人材」はどのような権限が与えられている方が最も多いです
か。以下の選択肢の中から該当するものをすべてご選択ください。(○はいくつでも)
問17. 貴社において、現在、「新事業創造を牽引している人材」はどのような権限が与えら
れている方が最も多いですか。以下の選択肢の中から該当するものをすべてご選択くださ
い。 ( ○はいくつでも) [MA] N=186
0%
20%
新規事業の提案を行う権限
40%
78.5%
60%
80%
100%
N=146
プロジェクトや業務のアサイン(担当者
の割り当てや配置)を行う権限
45.7%
N=85
社外の協力者と協働する権限
44.6%
N=83
その他
1.6%
N=3
無回答
2.7%
N=5
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定
し、課題解決のためのビジネスモデルの構築ができる人材
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
67
1.経営上の課題
②「『技術革新』に加えて、『ユーザー起点』という視点でイノベーションを実現するための
新たな方法論が身についていない。」
企業ヒアリング結果
マツダ
株式会社
日本企業には、素晴らしいこだわりのある各々の要素技術があるが、それを
商品化する際(商品化とは、要素技術を組み合わせ、新しい価値創造も含む)
に、その価値(機能的な価値と意味的価値を含む)を理解して世に問うことが
できていない。本来持っているものづくりの力を価値に変える方法論を理解し、
実践する人材が必要である。
日東電工
日東電
株式会社
テクノロジーは「お金を使って知識にする」ことで、イノベーションは「知識を
キャッシュ化する」こと。日本企業は「テクノロジー:お金を使って知識にする」
は進んでいるが、「イノベーション:知識をキャッシュ化する」ための方法論が
確率されていない。
プラス
株式会社
イノベーションは、顧客発以外にあり得ない。多くの企業が顧客の声を聴いて
いると言っているが、実は聴いていない。
顧客の声を起点としたイノベーション創出の方法が定着していない。
B-C
製造業A社
新製品に向け、企画部門から技術を進化させず、ユーザー起点での技術活
用をするという方針を社内で発表したところ、他のすべての部署から反対の
声が上がった。
理由は、同業他社が技術の高度化を進める中で、技術を進化させないことで
他社に後れを取るのではないかという恐怖感があったからである。
また、ユーザー起点での技術活用に対する明確な方法論を示せていなかっ
たことも要因である。
68
1.経営上の課題
③「自社内に新事業創造のためのエコシステムが装備できていない」
(トップのコミットメントが不十分である)
我が国企業において、社長直轄で新事業創造が進められる場合は少ない。
問4.貴社において、新事業の創造はどのような推進体制で進められていますか。以下の選択肢の中から最も
近いものをお答えください。(○は1つだけ)
問4. 新事業の創造における推進体制 [SA] N=330
0%
社長直轄プロジェクトとして推進している
20%
54.5%
13.9%
60%
N=68
20.6%
経営層(役員や本部長クラス)が責任を持って推進している
事業部の部長クラスが責任を持って推進している
40%
N=180
N=46
特に明確な責任を持っている主体はない
5.2%
N=17
わからない、該当しない
5.8%
N=19
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業(一部)代表者
69
1.経営上の課題
③「自社内に新事業創造のためのエコシステムが装備できていない」
(人材活用のための環境整備ができていない)
問23.貴社で実施されている、人材活用に関する取組をご回答ください。(各取組について○は1つだけ)
問23. 貴社で実施されている、人材活用に関する取組 [SA] N=330
0%
20%
40%
60%
80%
0.9%
「新事業創造を牽引する人材」に対し、通常の人事評価制度とは
異なる制度を導入している
1.2%
3.0%
社員の希望を反映した配属や異動の仕組みを導入している 12.1%
新事業創出の際には、所属部門・部署にとらわれることなく、最適
なチーム組成を実施している
10.6%
32.7%
41.5%
7.3%
63.0%
残業の禁止や社外ネットワーク形成の推進等、社員が仕事外で
5.2%20.0% 7.6%
時間を使えるような制度を整備している
39.7%
2.4%
8.5% 4.8%
社内ベンチャー制度等の仕組みを導入している
新事業創造を担当する組織を設置している
実施しており、十分効果があがっている
実施していない
7.0%
38.5%
実施しているが、効果は限定的である
わからない、該当しない
20.6%
1.8%
2 1% N=330
2.1%
10.6% 18.2% 8.5%
44.8%
就業時間の一定割合を、新事業創出に向けた活動に使うことを
3.3%
16.1%4.5%
許可している
管理職に対し、多様性を受け入れ、活用するための取組(研修
7.6%
等)を実施している
2.1%
4.5% N=330
73.3%
52.7%
15.2%
部門を超えた活動から生まれた成果に対して評価する制度や仕
10.3%
組がある
1.8%
3.6% N=330
89.4%
「新事業創造を牽引する人材」に対し、新たな職種や役職を設け
12.7% 4.5%
ている
2.7%
100%
2.1%
6.1% N=330
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り
定義したうえで質問している。
2.1%
10.9%
N=330
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマー
ケットを起点として課題を設定し、課題解決のた
めのビジネスモデルの構築ができる人材
36.4% 3.9%
79.7%
7.9%
N=330
6.7%2.1%N=330
58.5%
10.3%
2.7%
2.7%
41.8%
3.0%
2.1%
N=330
1.8%
N=330
1.8%
N=330
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関す
るアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1
月13日回収分まで集計
•送付数:2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場
企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同
友会会員企業(一部)代表者
実施しているが、効果はみられない
無回答
70
1.経営上の課題
③「自社内に新事業創造のためのエコシステムが装備できていない」
(人材活用のための環境整備ができていない)
研究会委員による意見
大久保
委員
イノベーターになり得るポテンシャルを持っているが、大企業でその才能が
埋もれてしまっている人材がいる。
西口委員
企業内には10%程度はフロンティア人材としての素養を持つ人材がいると考
えられる。10%の人材を活用する意志もシステムも、社内外にないことが課
えられる。10%の人材を活用する意志もシステムも、社内外にない
とが課
題だろう。
夏野委員
イノベーションを起こす人材の発想は、理屈抜きで本来はこうあるべき、とい
うことにある。ただし、企業の中では、「個人のそんな感覚でやるなんて何事
だ、証拠を持ってこい」という話になる。
イノベーターに意思決定権限が与えられていない。
野田委員
イノベーションを三級の人に担当させる企業がある。一級の人をアサインす
れば良いが、本業から離すことをためらい、本業にロックインさせている。
71
1.経営上の課題
④「トップマネジメントがリスクテイクできていない」
研究会委員による意見
夏野委員
ベンチャーキャピタルでは、必ず2:8(2割成功、8割失敗)と言われている。2
割も成功すればすばらしいのに、企業では「コンプラ」と称して、8割または10
割成功を狙っている。経営側がリスクを取らないので現場はもっと萎縮してし
まう。
マネジメントのあり方について理解している人が経営者にいない。サラリーマ
ン経営者(課長島耕作)が経営者にな ている 経営者は自らリスクを取り
ン経営者(課長島耕作)が経営者になっている。経営者は自らリスクを取り、
リターンを得るという形であるべきである。
野田委員
3Mでも成功確率20%としているが、事業を起こした人は、それほど高い確率
で成功するのかと驚き、経験のない人は、そんなに低いのか、と言う。
同じカテゴリの中では先発企業は後発企業に絶対勝てない、という、流通業
界の「マクネアの法則」は、よく見てみると、製造業にも当てはまるのではな
いかと思う。例えば、アメリカ企業では以前はテレビを作っていたが、今は
作っていない。日本に追いつかれたため、テレビ製造を止め、違う産業の方
に力を注いだ。日本も今さら振り向いて戦っても勝ち目はないのではない
か。製品レベルではなく、産業レベルで別のことを考えないといけないのでは
ないか。
72
1.経営上の課題
⑤「組織運営におけるKPIやコンプライアンスがイノベーションを阻害している」
研究会委員による意見
野田委員
最近の新卒社員の80%が同じ会社で定年まで勤めたいと思っているという
調査結果に驚いた。今の若い人は、将来に対して不安があるのでクビになり
たくないということなのだろう。また、すごくまじめである。KPIがある、と言われ
ればそれを守る。
大久保
委員
先日、リクルートの若手社員から、自分たちで考えた新しいアイディアを実現
するNPOを作りたいという相談を受けた。なぜリクルートの新事業としてやら
ないのか、と尋ねたところ、リクルートのKPIに合わないため、と答えた。イノ
ベーションの元ネタは大抵反対される。それを政治力を発揮し、説得して進
めていくことが必要だが、そういうことを行っているロールモデルがいないこと
も問題である。個人個人は良いものを持っていても、イノベーションに仕立て
上げることができない構造が企業の中にある。
73
1.経営上の課題
⑥「社員の創造性を引き出せるようなオフィス環境が整備されていない」
問10.貴社では、新事業創造を目的として、社員の創造性が引き出されるようなオフィス環境を整備していますか。以下の
選択肢の中から最も近いものをお答えください。(○は1つだけ)
問10. 新事業創造目的のオフィス環境を整備 [SA] N=330
0%
社内の複数部門がコラボレーションしやすいようなオフィス(例:
クリエイティブ・オフィス等)を意識的に整備している
社外人材も含めてコラボレーションがしやすいようなオフィス
(例:フューチャー・センター等)を意識的に整備している
20%
40%
60%
80%
10.3%
N=34
5.2%
N=17
整備したいと思うが、現状ではそこまで取り組んでいない
63.3%
N=209
整備するつもりはない
9.7%
N=32
わからない、該当しない
8.2%
N=27
無回答
3.3%
N=11
74
2.人材マネジメントの課題
75
2.人材マネジメント上の課題 (1)人材マネジメントにおける共通的課題
①「フロンティア人材が不足している」
~人材に強い不足感。企業内で意識的な発掘・活用ができていない~
問12「貴社において、全正社員に占める「新事業創造を牽引する人材」の割合はどの程度ですか。」
問13「貴社において、全正社員に占める「新事業創造を牽引する人材」の理想的な割合はどの程度ですか。」
※割合を直接記入
60%
55%
全正社員に占める割合 (N=186)
50%
理想的な割合 (N=280)
40%
30%
30%
30%
20%
17%
14%
13%
10%
6%
13%
2%
9%
2%
5%
3%
0%
1%未満
1%~5%未満
5%~10%未満
10%~20%未満
20%~50%未満
1%
50%以上
無回答
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
76
2.人材マネジメント上の課題 (1)人材マネジメントにおける共通的課題
①「フロンティア人材が不足している」
~「新事業創造を牽引する人材」が社内にいない、またはいても活用できていない~
問11.貴社には、「新事業創造を牽引する人材」はいらっしゃいますか。また、その人材は活用で
きていますか。(○は1つだけ)
※ここで、「新事業創造を牽引する人材」とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定し、課
題解決のためのビジネスモデルの構築ができる人材と定義しています。
問11. 「新事業創造を牽引する人材」の有無と活用 [SA] N=330
0%
「新事業創造を牽引する人材」が社内におり、活用できている
20%
わからない、該当しない
無回答
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定
し、課題解決のためのビジネスモデルの構築ができる人材
77
60%
80%
N=89
27.0%
「新事業創造を牽引する人材」は社内にいるが活用できていない、
「新事業創造を牽引する人材」が社内にいないが必要の合計
「新事業創造を牽引する人材」は社内におらず、必要であるとも考え
ていない
40%
57.9%
N=191
0.6%
N=2
13.9%
N=46
0.6%
N=2
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び
経済同友会会員企業(一部)代表者
77
2.人材マネジメント上の課題 (2)人材発掘における課題
①「フロンティア人材が埋もれている」
研究会委員による意見
安藤座長
大企業では、よい人材がいるにもかかわらず、埋もれている。それが大きな
問題である。
最近の若い世代では 自らイノベ シ ンを起 そうというタイプが減 ている
最近の若い世代では、自らイノベーションを起こそうというタイプが減っている。
野田委員
イノベーションを起こす人材には、正しく怒れること(義憤を持つ)、面白がれ
る事が重要であるが、これらの人材が減ってきているのではないか。
78
2.人材マネジメント上の課題 (2)人材発掘における課題
②「フロンティア人材の発掘・育成・活用の方法が分からない」
~フロンティア人材の発掘ができていない~
採用に関する取組
社内における人材発掘に関する取組
問19.貴社で実施されている、採用に関する取組をご回答ください。(各取組
について○は1つだけ)
問19. 貴社で実施されている、採用に関する取組 [SA] N=330
0%
50%
新卒採用において、「新事業創造を牽引する人材」と
2.4%23.9% 12.7%
しての素養を考慮した選考を実施している
中途採用において、「新事業創造を牽引する人材」と
5.5% 28.5% 8.8%
しての素養を考慮した選考を実施している
他社に在籍する「新事業創造を牽引する人材」に対2.4%3.9%
するヘッドハンティング等を実施している
6.7%
問22. 貴社で実施されている、社内における人材発掘に関する取組 [SA]
N=330
0%
50%
100%
100%
46.4%
42.1%
70.6%
11.8%
2.7% N=330
12.7%
13.9%
問22.貴社で実施されている、社内における人材発掘に関する取組をご回答く
ださい。(各取組について○は1つだけ)
N=330
2.4%
2.4% N=330
17.6%
「新事業創造を牽引する人材」の要件を明確化し、
4.5%
7.9%
社内で発掘している
「新事業創造を牽引する人材」の素養を持つ社員に
2.7% 33.0%
ついて、情報を収集している
58.8%
17.6%
「新事業創造を牽引する人材」の近くにその予備軍
20.6%
を配置することにより、その素養の有無を見極めて2.1%
6.7%
いる
35.2%
57.9%
9.1%
N=330
2.1%
9.4%
N=330
2.1%
10.6%
実施しており、十分効果があがっている
実施しているが、効果は限定的である
実施しており、十分効果があがっている
実施しているが、効果は限定的である
実施しているが、効果はみられない
実施していない
実施しているが、効果はみられない
実施していない
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定
し、課題解決のためのビジネスモデルの構築ができる人材
N=330
2.1%
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
79
2.人材マネジメント上の課題 (2)人材発掘における課題
②「フロンティア人材の発掘・育成・活用の方法が分からない」
~フロンティア人材の発掘ができていない~
研究会委員による意見
表委員
イノベーションを起こすために最適な人材ポートフォリオがあるはずであるが、
現時点では科学されていない。サイエンスが必要である。
紺野委員
イノベーションプロセスを進めるだけで満足し成果には結びつかない「なりす
ま
ましイノベーター」が企業で重宝され、本物のイノベーターに光が当たらない
ベ タ が企業 重宝され 本物
ベ タ
光が
な
という現状は問題である。
野田委員
利他精神と承認感覚を持った人物をどのように見分け、発掘するかが課題と
なっている。
80
2.人材マネジメント上の課題 (3)人材育成における課題
①「フロンティア人材の発掘・育成・活用の方法が分からない」
~フロンティア人材の育成に取り組んでいるが成果が出ていない~
問25.貴社では、「新事業創造を牽引する人材」を、意識的に育成・開発していますか。(○は1つだけ)
問25. 新事業創造を牽引する人材」の意識的な育成・開発 [SA] N=330
0%
「新事業創造を牽引する人材」の育成・開発を行っており、効果
が上がっている
「新事業創造を牽引する人材」の育成・開発を行っているが、期
待された効果は上がっていない
20%
わからない、該当しない
無回答
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定
し、課題解決のためのビジネスモデルの構築ができる人材
N=68
20.6%
53.6%
3.3%
13.6%
2.1%
60%
N=22
6.7%
現在は、「新事業創造を牽引する人材」の育成・開発を行ってい
ないが、将来的には行いたいと考えている
現在、「新事業創造を牽引する人材」の育成・開発を行っておら
ず、将来的にも行う意志はない
40%
N=177
N=11
N=45
N=7
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
81
2.人材マネジメント上の課題 (3)人材育成における課題
②「フロンティア人材の発掘・育成・活用の方法が分からない」
~フロンティア人材の育成の方法論にノウハウがなく、自社のみでの対応は難しい~
問28. 【問25で2を選択した方】【問25で3を選択した方】
期待された効果が上がっていない、または、現在実施していない理由として、以下の選択肢の中から
該当するものすべてお選びください。(○はいくつでも)
問28. 期待された効果が上がっていない、または、現在実施していない理由とし
て、以下の選択肢の中から該当するものすべてお選びください。 [MA] N=245
0%
社内で実施する研修等のOFF-JTでは効果がな
いため
OJT等を通じた新事業創造の実践の場がないた
め
自社単独では十分な人材育成・開発ができないた
め
10%
30%
40%
50%
N=17
6.9%
N=61
24.9%
N=72
29.4%
人材育成・開発のノウハウが不足しているため
42.9%
人材育成・開発に割ける時間や予算が限られてい
るため
その他
20%
32.7%
5.7%
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定
し、課題解決のためのビジネスモデルの構築ができる人材
N=105
N=80
N=14
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
82
2.人材マネジメント上の課題 (4)人材活用における課題
①「フロンティア人材の実践の場がない」
~事業のリストラクチャリングにより、若手が修行できる新事業が少ない~
研究会委員による意見
安藤座長
昔は活躍の場があったことに加え、会社からは「自ら手を上げてやれ」、と言
われていた。
今でもチャンスはある場合もあるが、リスクを取らない傾向が強い。失われた
何十年で一般的な環境がそうなっているのかもしれない。
堀井委員
日本の教育は一般的に知識伝達型である。様々なことを知っていて成績が
日本の教育は
般的に知識伝達型である 様々なことを知 ていて成績が
良い学生が評価されるが、実践する場が不足しているため実践力が見につ
いていない
松本委員
イノベーションを推進するリーダー(ミドル層)をどう育成するか、という点が課
題である。
多くの大企業ではこのような人材の育成が滞っているが、これは「選択と集
中」の時代があったためだと考えている。
「選択と集中」によって新たな事業を創造し実行する機会が減少し、結果とし
て若手社員が伸びる場が不足している。
83
2.人材マネジメント上の課題 (4)人材活用における課題
①「フロンティア人材の実践の場がない」
~事業のリストラクチャリングにより、若手が修行できる新事業が少ない~
研究会委員による意見
表委員
日本には若い優秀な人材がたくさんいる。このような人材を見つけた後には、
多様性に触れさせる機会や、場を提供することが必要である。
亀田委員
日本の中には イノ
日本の中には「イノベーション難民」が多い。すなわち、上から「イノベーション
ション難民」が多い。すなわち、上から イノ
ション
を起こせ」と言われ、何をしたらよいかわからないという状況に陥っている人
のことである。イノベーションを起こせと言われているが、そのための場が不
足しているため、さまよう傾向にあるのではないか。
野田委員
日本人はポテンシャルは高いが、残念ながら(社会問題の解決等の)目的を
持てていない場合が多い。そのような目的意識を持つための機会、場が求
められている。
84
2.人材マネジメント上の課題 (4)人材活用における課題
②「人事上のダイバーシティが不足している」
~同質性が高い組織のためイノベーションが生まれにくくなっている~
研究会委員による意見
大久保
委員
採用時に一番いい人材を落としてしまっている。日本の新卒採用は、面接官
が多様性を排除し、自分の範疇に収まる人材しか採用しない傾向にある。
本来はイノベーターが採用面接を行うべきである。
夏野委員
企業内のポジションにおいて、あまりに長い間「終身雇用と年功序列」という
枠組みを前提としてきたために、才能や能力よりも年齢や年次をベースにし
てポジションへの人材の配置が行われている。
マネジメント層においても、生え抜き社員で固められるなど同質性が高い。
外部経営人材の招聘なども進んでいない。
外部の人材を入れなければ、内部の人材だけではイノベーションは起こせな
い。
85
3.社会システムとしての課題
86
3.社会システムとしての課題
① 人材育成・働き方における課題
大学等のイノベーション教育は開始されたばかりであり、産学によるプログラ
ム開発や研究分野としての位置づけが未成熟
時間や場所に依存しない働き方ができない(労働時間規制等)
尖ったタイプの人材への受容度や社会的活用が不十分
② リスク
リスクマネー供給の課題
ネ 供給 課題
総量としてのリスクマネーが米国等に比べ不足し、VCのアーリー投資も不
十分。人材育成機関との連携ができていない。
③ 産官学連携上の課題
新事業創造のためのエコシステムが産官学連携で形成されていない
87
3.社会システムとしての課題
①人材育成・働き方における課題
~大学等のイノベーション教育は開始されたばかりであり、産学によるプログラム開発や
研究分野としての位置づけが未成熟~
研究会委員による意見
表委員
我が国では、イノベーターの素養がある人材の育成を支援するシステムが
未確立である。
堀井委員
大学は研究志向が強い。大学人にとって研究はかなり重要であるため、イノ
ベーション人材を育てるという活動に、研究的側面がないと支持されない現
実がある。したがって、イノベーション人材を対象とした研究を支援することも、
どこかで考えないと教育に継続性がないと思っている。
イノベーションに対応する研究分野が確率されていない。この状態ではイノ
ベーションを研究する大学人が育たない。
前野委員
慶応大学においてフロンティア型の人材を育成するための課程を設置し、社
会人に対する育成・開発に取り組んでいるが、我が国において力のある取組
主体が増えて行かなければならないと考えている。
88
3.社会システムとしての課題
①人材育成・働き方における課題
~時間や場所に依存しない働き方ができない(労働時間規制等)~
研究会委員による意見
表委員
イノベーションに取り組む者は、労働時間関係なく夢中になってやっているが、
定時で返さなくてはならないといった規制が厳しくやりずらい。
89
3.社会システムとしての課題
①人材育成・働き方における課題
~尖ったタイプの人材への受容度や社会的活用が不十分~
研究会委員による意見
夏野委員
40代以上は、何でも「みんなで一緒にやる」という文化である。それに対し、
今の20代から30代前半の若者は、趣味だけでなく、人生自体が多様化して
いる。例えば帰国子女も多いし、音楽の趣味も様々である。将来は、起業を
するのだ、という人もいれば、プログラミングに専念するのだ、という人もい
る。スポーツにおいても、近年はマイナースポーツが強くなってきている。多
様性はイノベーションの源泉なので良いことだと思う。適材適所で活躍できれ
ば くら もイ ベ シ
ばいくらでもイノベーションを起こすことができるだろう。社会においてこのよ
を起 す とが きるだろう 社会 お
よ
うな人材がどのように活躍の場が与えられるか、という議論に尽きるのでは
ないか。
イノベーション人材を社会システムとしてどのように発掘し、流動化させるか
が課題となっている。
堀井委員
日本社会の課題は、イノベーションを起こす若者を育てても、社会に受け入
れてくれる環境がなく、外資系に行ってしまう。
前野委員
イノベーションを起こす人材を育てたとしても、問題は、会社ではグループ
ワークのやり方が許されなかったり、つぶされたりする等、社会に戻ると発揮
できない点である。社会の方も変えていかなければならない。
90
3.社会システムとしての課題
②リスクマネー供給の課題
~総量としてのリスクマネーが米国等に比べ不足し、VCのアーリー投資も不十分。人材
育成機関との連携ができていない~
研究会委員による意見
夏野委員
シリコンバレーのベンチャーキャピタルはシリコンバレーでしか投資しない。
ベンチャーキャピタルの役割は、資金提供のみならず、経営に参画し、人材
を紹介することにある。
日本では経営に参画し、人材を送り込むことができないため、シリコンバレー
に引っ越してもらうよう要請する。
ベンチャーキャピタルの問題は、社会全体に総量としてのリスクマネーが足
りない、ということである。リスクマネーがあれば、もう少しトライアルをする人
が出てくるのではないかと思う。
91
3.社会システムとしての課題
②リスクマネー供給の課題
~総量としてのリスクマネーが米国等に比べ不足し、VCのアーリー投資も不十分。人材
育成機関との連携ができていない~
日米韓台 ベンチャー投資額のGDP比率
0.250%
0.200%
USA
0.150%
日本
0.100%
韓国
台湾
0.050%
0.000%
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
出所:VEC各年投資動向調査
92
3.社会システムとしての課題
③産官学連携上の課題
~新事業創造のためのエコシステムが産官学連携で形成されていない~
研究会委員による意見
安藤座長
産学連携を進めていかなければならないという意図は理解できるが、企業の
立場から言うと、産学連携がうまくいかないのは往々にして、学の研究至上
主義があるためである。つまり、「お金の臭い」がしないため、産と学が互い
を頼りにしていない状況である
を頼りにしていない状況である。
ただし、これからはそうあってはならないだろう。大学の先生も良いアイディア
があればビジネスをやればよいと思う。
夏野委員
教育システムだけではだめである。教育手法を確立し、また教育とセットで、
イノベーションを起こす人材が目指すべきロールモデルとなる、ということを
社会や会社の中で積極的に打ち出していく必要がある。
93
Ⅴ 課題解決の方向性と産官学の連携に
よる取組(例)
94
1.企業における課題解決の方向性(例)
95
1.企業における課題解決の方向性(例)
経営革新と人材政策を進め、新事業創造に向けた社内エコシステムを創り上げることが
課題である。
(1)新事業創造を主軸に据えた経営革新へ
①経営者自身が新事業創造を直轄で実施すること
②経営陣にイノベーション専任の役員を設けること
③異分野が融合した新事業創造チームに権限を与え、自社内に新事業創造
③
のエコシステムを作り上げること(例:フューチャーセンター等の装備)
②フロンティア人材を最大限活用するための人材政策へ
④フロンティア人材の意識的な発掘を行う
⑤フロンティア人材に新たなイノベーションの方法論を装備させる
⑥フロンティア人材を中心としたチームに「実践の場」を与えること
96
1.企業における課題解決の方向性(例) (1)新事業創造を主軸に据えた経営革新へ
①経営者自身が新事業創造を直轄で実施すること/②経営陣にイノベーション専任の役員を設けること
経営者自身が新事業創造を直轄で実施することと、経営陣にイノベーション専任の役員を設けることにより、
エグゼクティブのコミットメントを高めることが重要である。
「新規事業」で未来の経営者を育てるGEの取組
「新事業創出」を目的とした肩書きをつける「経営陣」
経験した
新規事業
会社名
人物
肩書き
ラルフ・コーディ
ナー
家電事業
GE
Viv Glodstein
Director,
Innovation Acceration
1960年代 フレッド・ボーチ
照明事業
Kraft
Foods
Barry Calpino
Vice President
Breakthrough
Innovation
ジャック・ウェル
チ
樹脂事業
SAP
Denis Browne
Senior Vice President
Imagineering
年代
1950年代
1980・90
年代
経営者
(Kellogg Innovation Network主催の”Scaling Innovation Impact”の出席者)
97
1.企業における課題解決の方向性(例) (1)新事業創造を主軸に据えた経営革新へ
①経営者自身が新事業創造を直轄で実施すること/②経営陣にイノベーション専任の
役員を設けること
研究会委員による意見
松本委員
現在、大阪ガスのトップは「ゲームチェンジャーになれ」というメッセージを発
信し、新規事業を起こすことを奨励している。
亀田委員
イノベーションが実現するまでは時間がかかる、というご意見があったと思う
イノベーションが実現するまでは時間がかかる
というご意見があったと思う
が、まさに、長期間厳しく見守ってくれるパトロネーゼ(青黒い人材)が必要だ
と感じている。その意味で、日東電工の取組が参考になった。月に1回でも良
いので、シニアマネージャーがイノベーションの現場に来て、都度介入してく
る仕組みやエコシステムがあるとよいだろう。
野田委員
「おれも暴れたのだから下も暴れさせる」というマネジメント層が必要である。
「青黒い人材」が適任だろう。
98
1.企業における課題解決の方向性(例) (1)新事業創造を主軸に据えた経営革新へ
③異分野が融合した新事業創造チームに権限を与え、自社内に新事業創造のエコシス
テムを作り上げること(例:フューチャーセンター等の装備)
研究会委員による意見
安藤座長
エコシステムについては、企業内のエコシステムだけでなく、社会システム全
体のエコシステムが機能していないことが一つの大きなポイントだと思う。
紺野委員
個々の企業が顧客を見るだけではイノベーションは起こらない。大きな社会
の動きやトレンドに乗ることができないとイノベーションは起こらないと思って
いる。このように、社会をどのように捉えるか、ということにおいてフュー
チャーセンターの場を活用したい。
表委員
素養のある人材を見つけた後には、多様性に触れさせる機会や、場を提供
することが必要である。フューチャーセンターにも非常に共感する。シリコン
バレーは全体としてそのようなシステムができている。
亀田委員
何をすれば分かっているのになぜかできない。そんな企業は、まずできるこ
とから始める。
Future Center (クロス・ファンクショナルFC)は、硬直化した組織風土の企
業には効果がある。
Future Center (オープン・イノベーションFC)は、新しい企業連携の形とし
て期待できる。
99
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
③異分野が融合した新事業創造チームに権限を与え、自社内に新事業創造のエコシステムを作り上げること
(例:フューチャーセンター等の装備)
イノベーションを創出するためには、イノベーションをけん引する人材、チーム、支援する経営陣及びシニアマネー
ジャー、イノベーション創出インフラ、プロセスの組み込みを核としたエコシステムを形成することが鍵となる。
エコシステムの構成要素
ポイント①
トップマネジメントの役割、コミットメント
トップマネジメント
ポイント②
トップと現場、組織間連携を
ミッションとするシニアマネ
ジャーの役割、コミットメント
Board
他ドメイン担当
シニアマネジャー
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
イノ
イノベーション担当
シ ン担当
シニアマネジャー
ポイント③
イノベーション創出人材・
チームの人材像・役割
人材マネジメント
イノベーション創出チーム
人材・チーム
イノベーション
プロセス
ポイント④
イノベーション創出
を実現するプロセス
の在り方
ポイント⑤
イノベーション創出
を支えるインフラの
在り方
イノベーション創出を支えるインフラ
(ソフトインフラ:組織風土等、ハードインフラ:組織、オフィス、制度等)
100
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
③異分野が融合した新事業創造チームに権限を与え、自社内に新事業創造のエコシステムを作り上げること
(例:フューチャーセンター等の装備)
日東電工では、支援するシニアマネージャーとイノベーション創出インフラを核としたイノベーション創出エコシステ
ムが構築されている。
日東電工のエコシステム例
トップマネジメントが、
イノベーション担当の
シニアマネージャーを任命
トップマネジメント
シニアマネージャーが、月1回「探索
グループ」の検討会に参加し、技術
者と同じ目線で議論。
Board
他ドメイン担当
シニアマネジャー
イノ
イノベーション担当
シ ン担当
シニアマネジャー
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
未知領域の新規テーマを発掘・実
践する「探索グループ」を設置。
技術者10-15名程度のグループ。
探索グループ
マネージャー
イノベーショ
ンプロセス
人材
・・・
人材
探索グループメンバーには、自由に時間を使っ
て何をしても良い期間(最大2年間)を付与
各メンバーのテーマについて、上長、テーマ担
当、グループメンバーそれぞれが評価する360
度評価を採用
イノベーション創出を支えるインフラ
(ハードインフラ:制度)
探索グループのマネジメントの基
本方針をつくり、方針にそってマ
ネジメントを実施。
一番の役割は、1日つきっきりで、
技術者と一緒にテーマをおもしろ
がること。
101
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
③異分野が融合した新事業創造チームに権限を与え、自社内に新事業創造のエコシステムを作り上げること
(例:フューチャーセンター等の装備)
ソニー・エリクソンでは、Senior Design and Relationship Managerを核としたイノベーション創出エコシステム
が構築されている。
ソニーエリクソンのエコシステム例
トップマネジメントはイノ
ベーションガバナンス
ボードのマネジメントが
ミッション
トップマネジメントが
シニアD&Rマネ
ジャーを任命
Top Management
分野別にイノベーション創出に
向けた戦略を推進。
Design and Relationship orgに
戦略方向性を提示する。
Innovation Governance Board
他ドメイン担当
シニアマネジャー
Senior Design and
Relationship Manager
イノベーション創出をミッションとし、
イノベーション創出組織( Design
and Relationship org)のマネジメン
トを担う。新規事業提案権限はこの
役職者にしかない Design and
役職者にしかない。
Relationship org内のチーム組成権
限者でもある。
組織間連携も担う。
イノベーション創出をミッショ
ンとした独立組織。
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
他ドメイン
Design and Relationship org
イノベーショ
ンプロセス
D i and
Design
d
Relationship
Manager
g
マーケティ
ング人材
IT技術
人材
現場でのイノベーションをけ
ん引する担当者(フロンティア
人材に相当)。チーム構成案
の立案者(承認者はシニ
ア)。
マーケティング人材とIT技術
人材とDesign and
Relationshipマネジャーの混
成がmust。
102
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
④フロンティア人材の意識的な発掘を行う
フロンティア人材発掘手法を確立すること、場を与えて発掘することが重要である。
研究会委員による意見
堀井委員
イノベーションしかやらない場を創りだし、そこで発掘すべき。芽を持っている
人に機会を与えることが必要。
表委員
今後は、イノベーション組織に必須な人材ポートフォリオを、決して属人的で
は無く、客観的なサイエンスを用いて大まかに見分ける手法を構築出来ない
かと考えている。
具体的な提案は以下の通り。
① イノベーション人材の定義を再度検証
② その定義に合致した人材分類を行える方法論を研究開発している研
究機関を見出し、共に開発し学ぶ。
③ ②で得られた理論をツールにまで落とし込む技術開発を進める
103
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
⑤フロンティア人材に新たなイノベーションの方法論を装備させる
イノベーションの確率を高めるための考え方や「型」に関する教育の実施が求められる。
研究会委員による意見
野田委員
大久保
委員
イノベーションの確率を高めるために型が必要であり、これは教育できると思
う。
もともとイノベーターだった人を活躍させることも重要だが、潜在的イノベー
ターを育てる教育が必要。
104
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
⑤フロンティア人材に新たなイノベーションの方法論を装備させる
イノベーションの確率を高めるための考え方や「型」に関する教育の実施が求められる。
企業ヒアリング結果
日東電工
株式会社
技術部門の一部の人材は、将来役立つ技術を開発しているエキスパート人
材として、技術開発部で遊ばせている(研究に没頭させている)..
ソニー
株式会社
現場の部長に数年後のトップ候補を流動化対象としてあげるように働きかけ
ることで、優秀な人材の現場での囲い込みを回避。
コーポレートユニバーシティにおいて、複数部門の人材に対して新事業創造
をテーマとした研修を実施。他社経営者を講師として招請
105
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
⑥フロンティア人材を中心としたチームに「実践の場」を与えること
実践の場を創造することでイノベーションを創出できる人材へと成長していく
研究会委員による意見
野田委員
「出島モデル」が有効である。企業本体だけでイノベーション実践の場を創造
することは困難であるため、出島を作ってはどうか。
表委員
イノベーションプロセスに有効である考え方や発想力についての教育プログ
ラムと評価を行う仕組みを具体化させる。つまり、ある程度の客観的手法に
もとずく選別に続いて、それら人材に多様な機能を身につけてもらうための
教育プログラムを実践する事が重要。
106
1.企業における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材を最大限活用する人材政策へ
⑥フロンティア人材を中心としたチームに「実践の場」を与えること
実践の場を創造することでイノベーションを創出できる人材へと成長していく
企業ヒアリング結果
ソニー
株式会社
優秀な人材には、海外の子会社の経営者や工場のトップを経験させるなど
の、出島体験を付与している。(出島となるポジションを確保している。)
社内大学において、複数部門の人材に対して新事業創造をテーマとした研
修を実施している。
日東電工
株式会社
技術者10 15名程度の探索グル プを設置し 自由に時間を使 て何をして
技術者10-15名程度の探索グループを設置し、自由に時間を使って何をして
も良い期間(最大2年間)を付与している。
狙いは、未知領域の新規テーマの発掘・実践と、人材育成。
株式会社
小松製作
所
社員からあがった発想に対して、開発部門内で吟味した後(開発技術の難易
度、自社商品における重要性など)、トップマネジメント層の「やってみようさ」
という掛け声のもとで、まずは機能・性能確認用として市販機器・材料を活用
してチャレンジすることができる。
プラス
株式会社
イノベーションはトップ自身が深くコミットメントし、現場の新事業創造チーム
に権限を与え、必要なリソースを調達し、時には抵抗勢力から防衛しなけれ
ばならない。
107
2.社会における課題解決の方向性(例)
108
2.社会における課題解決の方向性(例)
イノベーション教育、社会環境整備と実践の場の提供により、新事業創造に向けた社会
的エコシステムを創り上げる。
(1)ユーザー起点イノベーション教育の推進
①産学連携によるイノベーション・デザイン・スクールの高度化
(2)フロンティア人材が活躍する社会環境の整備
②フロンティア人材等にかかる労働時間規制の弾力化
③フロンティア人材の可視化による流動化促進
(3)産官学連携による新事業創造の実践の場の提供
④新事業創造のため、人材育成、リスクマネー、実践の場の提供がセットと
なった、産官学の連携による融合の場の構築
109
2.社会における課題解決の方向性(例) (1)ユーザー起点イノベーション教育の推進
①産学連携によるイノベーション・デザイン・スクールの高度化
大学を核として、産業界と連携しながらフロンティア人材を育成する。
研究会委員による意見
前野委員
3年前に慶應義塾大学日吉キャンパスに、学科横断・文理融合型でシステム
としてものを考えられる社会人を育てることを目指し、システムデザイン・マネ
ジメント研究科を創設した。システムとしてものを捉える学問と、デザイン思
考の実習をみっちりやっている。
特徴は、社会人を対象にした修士課程カリキュラムとしている点にある。
松本委員
外部のイノベーターや、様々なものを組み合わせてイノベーションを起こす
チームを作り出す人材が大事である。そのような人材を教育プログラムで作
ることが重要であり、イノベーション教育を行う大学に期待している点であ
る。
大阪大学ビジネスエンジニアリング専攻では、企業が大学に入り込み、企業
の課題を大学院生に解決させている。昨年度はヒット商品のプランニングを
行い、今年度は新規事業のプランニングをやらせているが、非常に良い成果
が出ている。このように、産学連携をトライアルしているところもあるので、そ
れをリサーチし、良いところを組み合わせていければよいと思う。
110
2.社会における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材が活躍する社会環境の整備
②フロンティア人材等にかかる労働時間規制の弾力化
労働時間規制を弾力化し、イノベーション創出活動に全力投球できる環境を創造すべき。
研究会委員による意見
表委員
特にイノ
特にイノベーション創出に関わる人材に対しては、労働時間規制を弾力化す
ション創出に関わる人材に対しては、労働時間規制を弾力化す
ることで、創出活動に全力を注げる環境を整備すべきである。
111
2.社会における課題解決の方向性(例) (2)フロンティア人材が活躍する社会環境の整備
③フロンティア人材の可視化による流動化促進
フロンティア人材を可視化し、流動化することで社会におけるイノベーション機会を増大する。
研究会委員による意見
人材のタグ付けをしてはどうか。例えば「フロンティア大賞」などを個人対象
に行うことが考えられる。このような仕組みを導入すると、イノベーション人材
の人材争奪戦が生じるであろう。
人材争奪戦が生じる あろう
イノベーティブ人材の発掘や育成等について、企業にはまったく期待できな
い。社会システムとして取組むしかないと思う。
夏野委員
112
2.社会における課題解決の方向性(例) (3)産官学連携による新事業創造の実践の場の提供
④新事業創造のため、人材育成、リスクマネー、実践の場の提供がセットとなった、産官学の連携による融合
の場の構築
多くの企業で、他社と共同での人材開発が行われておらず、今後必要な取組とされている。また、実践を通じた人材開発の場
に対するニーズも高い。
問27. 【問25で1を選択した方】【問25で2を選択した方】【問25で3を選択した方】
以下に挙げる、「新事業創造を牽引する人材」の育成・開発を目的とした取組の
中で、今後特に必要とお考えのものをご回答ください。(○は1つだけ)
問26. 【問25で1を選択した方】【問25で2を選択した方】
貴社で実施されている、「新事業創造を牽引する人材」の育成・開発を目的とし
た取組をご回答ください。(各取組について○は1つだけ)
問26. 貴社で 実施されている、「新事業創造を牽引する人材」の育成・開発を目的とした取
組 [SA] N=90
0%
20%
40%
60%
80%
100%
社内で研修等のプログラムを実施し
ている
63.3%
OJ T等を通じて意図的に新事業創
造の実践の場を提供している
他社との共同で人材開発を実施して
いる
大学や研究機関と連携し、人材開発
を実施している
実施している
33.3%
31.1%
63.3%
66.7%
25.6%
46.7%
実施していない
48.9%
わからない、該当しない
0.0%
3.3% N=90
4.4%
問27. 「 新事業創造を牽引する人材」育成・開発の取組に今後特に必要なもの
[SA] N=267
0%
10%
社内で実施する研修等のOFF-JTプログラム
20%
30%
40%
50%
N=43
16.1%
O JT等を通じた新事業創造の実践の場
N=126
47.2%
他社との共同人材育成・開発
N=58
21.7%
大学や研究機関と連携した人材育成・開発
N=31
11.6%
その他
1.5%
N=4
無回答
1.9%
N=5
1.1% N=90
1.1%
N=90
6.7%
問29.新事業創造のために必要な企業横断的な取組について、以下の選択
肢の中から、今後特に必要とお考えのものをご回答ください。(○は1つだけ)
1.1%
N=90
3.3%
問29. 新事業創造に必要な企業横断的な取組 [SA] N=330
0%
無回答
経営者に対する新事業創造に向けた経営革新に
関するナレッジシェアの場
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友会会員企業
(一部)代表者
注)「新事業創造を牽引する人材」を以下の通り定義したうえで質問している。
新事業創造を牽引する人材とは、生活者やマーケットを起点として課題を設定し、課題解決のため
のビジネスモデルの構築ができる人材
10%
50.6%
11.2%
事業構想を実現するために必要となるリソース(技
術、人材等)のコーディネート
22.1%
事業プランに対する投資受け入れ機会の提供(ビ
ジネスコンテスト、ベンチャーファンド等)
2.4%
その他
0.6%
無回答
30%
5.2%
40%
50%
60%
N=26
新事業創造を牽引する人材および予備軍に対する
実践を通じた人材開発の場
新事業創造を牽引する人材および予備軍に対する
研修の場
20%
7.9%
N=167
N=37
N=73
N=8
N=2
N=17
113
2.社会における課題解決の方向性(例) (3)産官学連携による新事業創造の実践の場の提供
④新事業創造のため、人材育成、リスクマネー、実践の場の提供がセットとなった、産官学の連携
による融合の場の構築
イノベーション創出環境を社会システムとして構築する必要がある。
研究会委員による意見
夏野委員
しっかりリスクをとり、人材を投入し、経営に参画するベンチャーキャピタルが
必要である。
西口委員
海外のイノベーション教育を先進的に行っている教育研究機関、ラボラト
リー、投資機関と連携し、新事業創造のための実践的な仕組みを構築する
必要がある。
堀井委員
イノベーション創出に向けた社会システムとして「イノベーション振興会」を設
置し、中小企業を対象としたイノベーション人材育成事業やイノベーション人
材を対象にした資格制度の創設などを検討してはどうか。
114
3.取組例
115
(1)イノベーション経営指標の開発
(2)エグゼクティブ向け意識啓発
(3)フューチャーセンター等の整備促進
(4)新事業創造のための人材ポ トフォリオ戦略の研究
(4)新事業創造のための人材ポートフォリオ戦略の研究
(5)新事業創造の成功例の研究、ケース化、航海
(6)新事業創造実践の場の設置
(7)新事業創造を実践した人材の可視化
(8)労働時間規制の柔軟化
116
3.取組例 (1)イノベーションの現状診断ツール開発、活用の事例
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授 Robert C.Walcottが、企業のイノベーション創出にお
いて求められる経営要素を4分類、16項目に分類した診断ツールを開発。
イノベーション指標例:Innovation Radar
出所)Robert C. Walcott “Innovation Radar”
Innovation Radarとは、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授 Robert C.Walcottが開発した、企業のイ
ノベーション創出において求められる経営要素を4分類、16項目に分類した診断ツール。
117
3.取組例 (2)エグゼクティブ向け意識啓発の事例
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院は、産官学のリーダーに対話とネットワーキング
の場を提供し意識啓発を図っている。(再掲)
Kellogg Innovation Networkとは
KINのPhilosophy
【概要】
ケロッグ・イノベーション・ネットワーク(KIN)は、2003年に設立さ
れたケロッグの持つイノベーションに関する知見・資産と企業
リーダー、非営利団体および政府間でイノベーション創出に向
けた共同作業を行うプラットフォームである。
け 対話 ッ
、 ッ
キ グ等を
企業リーダー向けの対話セッション、ネットワーキング等を
業リ ダ
行っている。
【設立背景】
社会が直面する多くの挑戦がクロス・セクターでの解決が必
要であり、個々の組織の範囲を越えた革新的な取組を要求し
ている。これらの挑戦に取組むためには協創が求められてい
るため、グローバルな産官学ネットワークを形成するに至って
いる。
出所)KINホームページ
【基本的な考え方・哲学】
繁栄についての大局的な見方を実現するためにサミットの参
加者のビジョン、経験および考え製品に多様な分野と先端的
な理論を注入することにある。
118
3.取組例 (3)フューチャーセンター等の装備促進 【紺野委員】
イノベーション創出に向けて、人材養成だけでなく、人材が如何なくその能力を発揮する
ために、フューチャーセンターのような「場」が必要である。
フューチャーセンター構想
【実現すべきフューチャーセンター】(要件)
① あるべき「次の」事業を早期に実現、実践する
ことを目的とする
② 当事者以外のバックアップのための人材ネット
当事者以外のバ クア プのための人材ネ ト
ワークを構築する
③ そのために機能横断、多様な世代構成(とくに
若い世代)、社内外の人材の集まる場を形成
④ 問題を解決するための知識、手順などを具体
的に抽出する
⑤ (プロではない、特定の知見を持つ)ファシリ
テーターを備える
⑥ 必ず事前事後の流れの手順を設定する
⑦ 企業のリーダーはこの場を必ず経験するような
仕組みを創ること
⑧ ハードウェアが主ではないが、右記のような
セッティングは不可欠
出所)第3回研究会 紺野委員提出資料
119
3.取組例 (3)フューチャーセンター等の装備促進 【東浦委員】
東急電鉄では、クリエイティブな人材や産業を集積しオープンイノベーションを進めるため
に「クリエイティブ・シティ・コンソーシアム」を設立している。
東急電鉄が設立したクリティブ・シティ・コンソーシアム
出所)第3回研究会 東浦委員提出資料
120
3.取組例 (4)新事業創造のための人材ポートフォリオ戦略の研究
ハーバード・ビジネス・スクール教授 Clayton M. Christensen等が、イノベーション創出において求められるスキル
を3分類、19項目に分類した診断ツールを開発。
イノベーション指標例:The Innovator’s DNA Skill Assessments( Self Assessment, 360 Assessment)
発見力
実行力
イノベーションけん引力
関連づける力
現状に異議を唱える力
分析力
他者の関連づけを促す力
質問力
リスクをとる力
企画立案力
他者の質問を促す力
観察力
創造的なアイディアを
生み出す自信
行き届いた導入力
他者の観察を促す
実験力
規律ある実行力
他者のネットワーキングを促す力
ネットワーク力
スキル
他者の実験を促す
マインド
他者の現状への挑戦を促す力
他者のリスクテイクを促す力
The Innovator’s DNA Assessmentsとは、ハーバード・ビジネス・スクール教授 Clayton M. Christensen等が75カ国以上の500名以上のイノベーターと
5,000名以上の企業幹部のデータを基に「イノベータDNA」と呼ぶスキルを導き出し、イノベーション創出に求められるスキルを3分類、19項目(発見
力8項目、実行力4項目、イノベーションけん引力7項目)に分類した診断ツール。
57つの質問項目からなり、各スキルは7段階で評価される。
出所) The Innovator’s DNA :http://innovatorsdna.com/innovators-assessments/
121
3.取組例 (4)新事業創造のための人材ポートフォリオ戦略の研究【表委員】
人材ポートフォリオ上、新規事業創造人材は、ベンチャー型人材に該当すると思われ、これ
を見分け、教育でモチベーションとスキルを上げることで、スーパーリーダーを育成する事が
出来ないか。
企業における人材ポートフォリオ
スキルとマインドによる人材タイプ分類
122
3.取組例 (5)新事業創造の成功例の研究、ケース化、公開事例
感性価値創造バンク(ポータルサイト)では既存の成功事例や研究結果等を紹介。既存
のケーススタディを活用することも有効な手段。
感性価値創造バンクの概要
【感性価値創造バンクの概要】
感性価値創造活動を支援するための情報を提供するポータルサイト。
(財)機械産業記念事業財団がポータルサイトを運営。
【ポータルサイトの掲載内容】
感性価値を実現している製品事例を多数掲載。
感性価値創造に関する委員会での検討結果(報告書)を掲載。
感性価値を実際に体感してもらうイベント(国内外での展示会等)の映像等も掲載。
※「感性価値」とは、生活者の感性に働きかけ、感動や共感を得ることで顕在化する価値を意
味する。
出所)(財)機械産業記念事業財団「感性価値創造バンク」HPを基に作成
123
3.取組例 (6)新事業創造実践の場の設置 【安藤座長】
セクター横断的に人材が集い、プロトタイピングに取組むことで実践的な経験を積む「イノ
ベーション回転ドア制度」を構築しイノベーション活性化を図ることが可能。
安藤座長のInnovation Revolving Door:イノベーション回転ドア制度概要
【イノベーション回転ドア制度】
産学官を問わず、また海外人材も含め多様な
バックグラウンドを持つ20代から30代前半の若手
人材を集め、チームを組成し予算を与え、数ヶ月
から最長2年程度を目処に新たな課題解決へ挑戦
させる。プロジェクトの事業対象はサービス、ハイ
させる。プロジェクトの事業対象はサ
ビス、ハイ
テク等産業は問わないが、形態は何であれ必ずプ
ロトタイプまでを完成させることを必須とする。その
際には、支援企業や近隣コミュニティとのコラボ
レーションを積極的に展開する。
プロジェクト終了後はそれぞれ母体の組織・企業
に戻り、組織内でのイノベーション活性化に挑むも
良し、また、有望な芽であれば、そのまま更にリス
クマネーとプロのメンターを付けることで、起業の
道へと進ませる。
企業から派遣する場合、前途有為な人材を海外
留学に出すのに比し、より実践的な経験を積ませ
ると共に、プロジェクトの成果を企業に持ち帰り活
用する等のメリットがある。
海外人材
行政
IIn
nno
vat
io n
Innov
ation
大学・大学院
企業
出所)第3回研究会 安藤座長提出資料
124
3.取組例 (6)新事業創造実践の場の設置 【安藤座長】
日本の強みを活かしたテーマを設定し、世界最先端の研究と事業創造を行う
「Innovation楽市・楽座」の導入で世界の先進各国のフロントランナーに返り咲くことがで
きる。
安藤座長のInnovation楽市・楽座概要
【Innovation楽市・楽座】
Innovation Revolving Doorは謂わば人材の発掘・創
造であったが、Innovation楽市・楽座は更に一段進
み、日本的な事業創造エコシステムであり、世界の
中の日本という視点を鑑みた上で、日本そのものの
活性化に寄与するものを目指す。その活性化のコ
アとしての役割をイノベーターが担う
アとしての役割をイノベ
タ が担う。
日本の特徴・強みでもある、環境、健康、安全・防
災、コンテンツクリエーションの4つを大きなテーマ
に据えて、イノベーション立国を描く。環境であれば
グリーン・イノベーション、健康はメディカル・ヘルス
ケア、バイオ領域、安全は防災、セキュリティ、そし
てコンテンツクリエーションはジャパニメーション等で
ある。
これらテーマを中心に据え、世界最先端の研究と
事業創造を狙う。社会保障的な内容は北欧での取
組が多いが、日本を先進的な課題解決先進国とし
て確立させ、更には日本と同様の社会構造へ突入
する世界の先進各国のフロントランナーとして、確
立されたサービス・技術を展開していく。
知識人材の集積
Patient Risk Moneyの供給
海外人材
Venture Fund
Innovation
楽市・楽座
Innovation楽市・楽座
、
(環境、健康、安全・防災、
環境、健康、安全・防災
(環境、健康、安全・防災、
)
コンテンツクリエーション)
コンテンツクリエーション
コンテンツクリエーション)
• 法人税・固定資産税等の免除・軽減
• 外国人入国・滞在規制の緩和
• 特許・著作権等のコンプライアンス規制の免
除・緩和 など
出所)第3回研究会 安藤座長提出資料
125
3.取組例 (7)新事業創造実践の場の設置事例
未踏IT人材発掘・育成事業では、外部エコシステムを活用し、優れた能力と実績を持つフ
ロンティア人材のもとでフロンティア人材を発掘育成している。
未踏IT人材発掘・育成事業( (独)情報処理推進機構)の概要
【狙い】
ソフトウェア関連分野において、イノベーションを創
出することのできる独創的なアイディアと技術を有
し、これらを活用する能力を有する優れた個人
(スーパークリエータ)を、優れた能力と実績を持つ
プロジェクトマネージャー(PM)のもとに発掘育成す
る。
【事業概要】
クリエータからの提案をもとに、発掘育成対象とす
るクリエータを選出する。
選出されたクリエータは、自らが提案するテーマに
ついて、PMからの指導・助言を受け、開発プロジェ
クトを実施することで、能力・技術の向上を図る。
クリエータの中から、特に優れた能力を有するクリ
エータをスーパークリエータとして選出する。
スーパークリエータとして認定された者が、新たな
スーパークリエータ の発掘を行う等の人材育成へ
参画していく環境を整備する。
【提案者の条件】
個人又はグループ。年齢は25歳以下。
本事業の趣旨を踏まえ、IT業界で優れていると既
に社会的に認知されている人材。
人材育成/開発期間に日本に在住していること。
本事業への参画を所属組織から了解を得ているこ
と 未成年は 父母等の了解を得ていること
と。未成年は、父母等の了解を得ていること。
日本のIT産業の発展に寄与する意欲があること。
【2012年度プロジェクトマネージャー(PM) 】
竹内 郁雄 :早稲田大学理工学術院 ※統括PM
夏野 剛
:慶應義塾大学 ※統括PM
石黒 浩
:大阪大学大学院
越塚 登
:東京大学
後藤 真孝 :産業技術総合研究所
首藤 一幸 :東京工業大学
原田 康徳 :日本電信電話株式会社
藤井 彰人 :グーグル株式会社
増井 俊之 :慶應義塾大学
出所) IPA「未踏IT人材発掘・育成事業」HPを基に作成
126
3.取組例 (7)新事業創造を実践した人材の可視化
フロンティア人材の審査会、認定制度などにより社会的に可視化する仕組みが求められ
る。
研究会委員による意見
とにかくイノベーション人材を可視化したいと考えている。
「経済産業省が選ぶ100人」といった取組でも良いだろう。審査会を作り、業
界の中での有名人物や、推薦された者を審査し、可視化していく。
夏野委員
既に適材適所の仕事を持っていながらも権限が低い、年が若いなどの理由で、ポ
ジションのマッチングが欠けている、すなわち社会(会社)全体に与える影響が比較
ジ
グが欠
すなわ 社会 会社 全体
響が 較
的小さい、場合、そのような人材を社外からも発見しやすいようにし、現在属してい
る組織以外のところからもよりよいポジションのオファーが来るようにすることは効
果的であろう。
そのための一案は、一種の公共性を持った主体が、フロンティア人材の認定・発
表することにより、外部から、競合会社から、あるいは所属企業の中でも、該応す
る個人を目立ちやすくする。フロンティア人材が社会に顕在化することにより、その
社会内流動性を高めることで、彼らがより大きな社会貢献ができるような機会を提
供する。
127
3.取組例 (8)労働時間規制の柔軟化
フロンティア人材の時間に縛られない創造的な働き方を支援する。
アンケートからの意見
時間や場所にとらわれない働き方を制度的に支援してほしい。
新事業を創出する人材には柔軟な働き方が求められるため、労働規制など
の各種阻害要因の見直しが必要。
労働時間に対する許容(採量労働制の摘用拡大)
出所)「新事業創造と人材の育成・活用に関するアンケート調査」
•実施期間: 平成23年12月14日~平成24年1月13日回収分まで集計
•送付数:
2,451社(集計数330社)
•送付対象: 東証、大証、名証一部・二部上場企業代表者、日本経済団体連合会及び経済同友
会会員企業(一部)代表者
128
Ⅵ 研究会としての提言
129
価値創造経済の実現のためには、フロンティア人材の活用の重要性を、産官学で認識・伝
達することが重要。
また、新事業創造が持続的かつ戦略的に創出されるためには、一企業や一大学のみで行
うことは不可能であり、産官学が協働してグランドデザインを描くとともに、上記に掲げた具
体的な施策を企画・実行できる推進母体を早急に設立することが必須。
こうした推進母体が国内外の主要プレイヤーと連携して、我が国に新事業創造のエコシス
テムを構築するとともに、我が国における国際的なハブとして機能し、新たなイノベーション
の実行を強力に推進していくことが不可欠。
130
推進母体としての「新事業創造ラボ(仮称)構想」のイメージ
・我が国における新事業創造を活性化するため、国内外に点在する育成と経営のノウハウを組織の壁を取り払って集結し、新し
い事業を生みだす基礎インフラを、民間企業を中心として設立(経産省や経済団体も設立支援)。
・併せて、イノベーション教育に関する研究拠点も統合し、国内外のユーザー起点イノベーションのハブとして機能させる。
<新事業創造活性化振興会(仮称)のイメージ>
大・中・小企業
設立資金
経済産業省
設立支援
経済団体
世界のイノベーショ
ン教育の第一人者
海外大学・デ
ザインコンサ
ルティング等
国内デザイン
スクール等
ファンディング機能
(政府関係機関、VC、個人等の投資家)
アドバイザリー・
ボード
人材
<コミュニケーション・フォーラム>
<事業創造・人材育成フォーラム>
エグゼクティブ
実践の場
実践
(ラボ)
マネージャー
エントリーとマ
ネージャー教
育を経た人
が、具体的な
新事業創造
の実践を行う
場
エントリー
基礎コース
<アカデミック・フォーラム>
・ユーザー起点イノベーションに関し
て、国内外のコミュニケーション・ハブ
としての活動(セミナー開催、広報誌
発刊等)
・下記二つのフォーラムでの活動を統
合的に広報を行う
・新事業創造経営のグローバルベスト
プラクティスの共有の場
・国内外エグゼクティブ対象ネットワー
ク型活動
・新事業創造する現場のグローバルな
ベストプラクティスの共有の場
・講師:外国人・日本人ケース共有型
・デザイン思考などの事業構想の基礎
となる思考・行動パターンの習得の場
・講師:外国人・日本人講義・疑似体験
型
イノベーション教育に関する研究活動
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「新事業創造ラボ(仮称)構想」への委員意見
研究会委員による意見
安藤座長
「振興会」のように、何らかのコアや推進母体があった方が良いと強く思う。
日本版シリコンバレーを作る、といった議論のようだが、台湾、中国、インド
等、世界では同じようなものがどんどんできている。ところが残念ながら日本
には何にもない。「あそこに行けばアニメのコンテンツクリエーションできるん
だ」といったものがないのは課題である。ラボ構想には期待している。
純日本的な強みを極端に活かし、全世界の人が来たいと思えるようなものが
ないとだめである。そうしないと多様な人材をひきつけることができない。
大久保
委員
ラボは、自社の新事業創造を目的とした活動の場であって、それに関わった
人間が成長する、といったイメージだろう。どちらかと言うと、人材育成は後
からついてくるのではないか。
亀田委員
テーマを絞り込む必要があるだろう。テーマごとのフューチャーセンターがあ
るとよい。
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「新事業創造ラボ(仮称)構想」への委員意見
研究会委員による意見
紺野委員
どういう構造を作るかが鍵となってくるだろう。例えばテーマを決め、同じ産
業グループが一緒になって、セミクローズドで研究しながら人材を育成する、
というものも考えられる。オープンとクローズドの両方のメニューをそろえるべ
きである。
同時に そこでどのようなイノベーションが行われているかというメソドロジー
同時に、そこでどのようなイノベ
ションが行われているかというメソドロジ
の研究や、学習のシステムを研究する、縦軸も必要である。縦横の構造が
しっかりできるとよい。
前野委員
イノベーション人材の底上げはずっとやっていかなければならないと思ってお
り、それはオープンでやる。一方、企業の特許性が含まれるものはクローズ
ドにすべきと思っている。
松本委員
イノベーションの研究は非常に重要であり、「振興会」の中の「アカデミック・
フォーラム」の果たす役割は大きいだろう。
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