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アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態
態 実 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 法 目次 助 二 大統領選挙運動国庫補助制度の概要 曙 一肇めに 麟 三大綾予纏挙に対す・国籍助の室思法実態 選 五 大統領一般選挙に対する国庫補助の憲法実態 靹 四大統領候補者指名全国大会に対す・国暴助の憲法実態 纈 六おわり〒結論的藁 刀 一はじめに 励大 野 上 修 市 ある。選挙資金を政治献金だけに頼る政党運営は、ややもすると、大口献金者の不当な影響を受け、政治を歪めるこ け穴の多い現行制度を改革し、適正な政治資金規制を行うことは、ここ何十年来、アメリカ憲法政治の大きな課題で 選挙費用の高騰が無理な資金調達をもたらし、政治に暗い影を落すのは、なにもわが国に限ったことではない。抜 「 1 となど、各種の弊害を招く恐れがあるが、アメリカ憲法政治史の中でも、こうした弊害がこれまでしばしば表面に現 03 律 104 叢 論 法 われ、そのたびに政治献金規制の法的手段が講じられてきた。この点、大統領選挙運動資金についても、同様である。 アメリカでは、一九〇七年に、大企業から多額の政治献金を受けて一九〇四年の大統領選で勝利を収めたセオド ︵1︶ ア・ルーズヴェルトが、当選後、大統領選挙費用を直接国費から支給する国庫補助制度をはじめて提唱している。次 ︵2︶ いで戦後の一九五六年に、トルーマン大統領も、同様な提唱を行っている。しかし、この考え方を具体的な法制度と して確立させようと試みたのは、ジョンソン大統領であった。同大統領は、一九六五年一月、上下両院合同会議で発 表した年頭一般教書の中で、﹁選挙が、ますます複雑かつカネのかかるものになっているおりから、われわれは、個人 的な富のない人たちが、小人数の人たちからの多額の寄付金にたよることなしに、公的生活にはいれるようにしなけ れぽならない。﹂と述べ、アメリカにおける政治資金規制論議に一石を投じたのである。同大統領は、本教書の趣旨 を具体化するため、すでに一年前の六五年五月に、上下両院議長に書簡を送り、﹁選挙資金改革法案﹂と呼ぽれる新し い選挙資金規制法の立法化を要請していた。この法案は、大統領の強い要望にもかかわらず、結局は成立しなかった。 そこで、同大統領は、あらたな角度から政治資金問題に取り組み、六五年末、突如、重要産業設備投資の課税控除に 関する税法案の付加条項として、大統領選挙運動基金法案を提出し、上院民主党副院内総務ラッセル・ロングを先頭 ︵3︶ に立て、あっという間に上院を通過させてしまったのである。この法律が、通称ロソグ法と呼ぽれる六六年の大統領 選挙運動基金法︵勺器ω乙①馨一巴O鋤日℃巴αQづ閃鑑民>9︶である。ところが翌年、この法律に対し、ロバート・ケネ ディ上院議員らが反対に回り、ロソグの議会対策の失敗も手伝って、六七年五月以降は効力を持たないという動議が ︵4︶ 上院で可決され、一度も実施されずに葬られてしまった。しかし、こうした動きが、七〇年代に開花した大統領選挙 運動資金法制の改革の出発点となった。 七〇年代に入ると、連邦議会は、連邦選挙運動資金のあり方について、ドラスティックな法制を次々に構築した。 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 105 ︵5︶ ケ9ヨ巴閃①<窪ロ①>9︶および一九七四年、七六年、七九年の改正FECAが、その代表的な法律である。これ 一九七一年の連邦選挙運動法︵閃①自興巴 国﹁。。二〇口 Op日噂⇔一σq昌﹀。↓°以下FECAと略す。︶、同年の国内歳入法 ︵6︶ ︵7︶ ︵8︶ ︵9︶ 約一億三三〇万ドル、そして、八八年の場合は一億七七八〇万ドルが候補者および指名大会への補助金として支払わ のである。一九七六年の大統領選の場合には総額七〇九〇万ドル、八〇年の場合は一億六〇万ドル、八四年の場合は 格を有する大統領予備選および本選の候補者ならびに大政党の指名全国大会の費用をカバーするため、設立されたも る。大統領選挙運動基金の原資を税金からのチェックオフという形で集めるこのシステムは、基金の援助を受ける資 一ドル︵夫婦共同申告の場合はニドル。︶を大統領選挙運動基金に払い込むよう指定するというその好意に依存してい 大統領選挙運動を公の資金で賄うという制度の実効性は、一ドル以上の連邦所得税を納める納税者が、その税額中 者に援助を求める基盤の拡大を図るよう奨励することにある。 統領候補者指名全国大会に出席する代議員の獲得レースをより競争的にし、かつ、大統領候補者が数多くの少額寄付 響力の及ぶ機会を最小限にとどめようとすることにある。そして第三の目的は、予備選においては、国庫補助が、大 ら金を受け取ることの必要性を減少させもしくは排除することによって、資金提供者による大統領に対する不正な影 とができるよう、それに要する資金を候補者に提供することにある。第二の目的は、大口の寄付者や利益グループか 大統領選挙の資金を国庫で補助するという制度の第一の目的は、候補者自身の人格と思想を有権者に正しく示すこ とを認めると同時に、選挙運動資金のあり方に一定の規制を加えている。 て、①一般選挙︵本選挙︶、②政党の指名全国大会、③予備選挙のそれぞれに分けて、国庫から補助金を支給するこ ︵10︶ 具体化され、七六年の大統領選から実施されることになったのである。そして、前記の各法は、大統領選挙に関し らの法律のうち、七一年のFECAおよび歳入法によって、大統領選挙運動に対する国庫補助制度が法的にはじめて (一 律 れている。他方、納税者の払い込み指定率は、 一九七四年から八五年までは二三%から二八・七%を示し、納税 者が徐々にチェックオフ方式を理解してくれるようになったと評価されてきたが、八八年は二一%︵総額三三〇〇万 政治腐敗を防止し、大統領候補者間における資金上の不平等性を除去し、かつ、選挙資金の悪用も排除し、さらに、 現行法上、寄付および支出について、一定の制限が法定化されている。これらの法的規制は、大口の寄付者による 増えてきている。 麺︶と低迷したことを契讐・例奎一〇%以下であること蚤くみて・このシステムのあり方疑問を持つひとが 106 れたかどうかについて、一定の結論を引き出すことができるといえよう。そこで本稿では、わが国においても、選挙 ので、今日、さような法律が大統領選にどのようなイソパクトを与えたか、また、各法の制定目的が現実には達成さ ところで、一九七六年以降の大統領選は、FECAとその改正法および国内歳入法の枠組みの中で実施されてきた るとともに、選挙資金が正しく運用されることを監視しているのである。 選挙資金の受領や支出に関して完全かつ適時の報告を義務づけ、有権者が候補者の選択を正しくできる情報を提供す 叢一 論 一部を国庫で負担するという考え方が貫かれているが、その費用を税金からの天引きで賄うとの考え方はすてて、会計検査 ︵4︶ ジョンソン大統領は、六七年に再び大統領選挙運動資金法案を議会に提出している。この法案でも、大統領選挙の費用の ︵3︶ 読売新聞﹁政治資金第二部⑦ーアメリカの場合㊦﹂一九六六年五月二九日朝刊。 ︵2︶ 久保田きぬ子﹁アメリカの﹃連邦選挙運動法﹄に関する一考察﹂田中二郎先生古稀記念・公法の理論下−一六〇〇頁。 ︵1︶ ﹀°=$昆層日冨Ooω房o=︶①日o。冨昌︵H㊤8︶uやおピ しよう。 九七六年、八〇年、そして八四年の大統領選挙を素材にして、その憲法実態を考察し、問題点を指摘してみることに 公営の問題が検討される際、なんらかの形で話題の対象になるアメリカの大統領選挙運動国庫補助制度について、一 ︵12︶ 一法 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態一 107 ︿下﹀﹂一九六六年六月二六日朝刊︶。 院長の勧告に基づき、議会に適当な額の大統領選挙費を予算化する権限を与えている︵朝日新聞﹁米国での政治資金規制 ︵5︶ ℃ロ三凶゜い四≦81悼卜。9°。①ωけm“ω︵H竃゜。︶°なお、本法の内容と制定過程については、詳しくは石田栄仁郎﹁アメリカにお ける﹃一九七一年の連邦選挙運動法﹄制定経緯とその後の動向﹂比較法政五号一頁以下参照。 ︵7︶ ℃昏ぎい餌≦O°。ムお”。。。。ωけ螢“誌①ω゜なお、本法の邦訳として、石田栄仁郎﹁アメリカ合衆国﹃一九七四年の改正連邦 ︵6︶ぎび=。ピ署o卜。山刈。。”ω9ぎロ刈Oド為oω’°。o岸゜。O卜。、°。㎝ωけ舞お8密Oふ録︵お﹃b。︶° ︵8︶ ℃ロび=oい卯毛逡山o。も。℃8ω梓9什゜ミ9 選挙運動法﹄︵その一︶・︵その二︶﹂比較法政六・七号がある。 ︵9︶国窪。9毛り①山゜。S ︵10︶ なお、大統領選挙運動基金法の制定過程については、詳しくは宮川成雄﹁大統領選挙運動の公費助成と選挙資金規制﹂同 志社アメリカ研究二二号一八五頁以下参照。 ︵12︶ この点に関しては、もっぱら=°中≧①×p巳oぴ﹀ヨΦ臥o雪勺話゜。こo昌臨巴国一①o臨o諺■■言゜⑦勺ρ窪8閃o昌象昌αq、Hり刈①1◎°幽” ︵11︶ 読売新聞一九九〇年七月一八日朝刊。 工。国゜≧①×帥a①び巴二〇〇ヨ℃舞舞ぞ⑦勺o=菖。9凋貯餌ロooぎ臣06°。O。・ρO°。り︶°を参考にしたことをお断りしておく。な いては、=°国。≧①器註①さ閃ぎき。一昌σq爵oμ⑩。。O国冨。岳o昌︵Hりo◎G。︶、そして八四年については、雷゜国。≧。×Q巳碧即切゜﹀° お、一九七六年の大統領選の憲法実態については、国゜戸≧。κ四民①ひ閃冒磐9ロσq島①お蕊里①。ユoPρ㊤刈Oy八〇年につ 国餌σqαq。昌ざ国昌碧。冨αq島。HO。。心国①。ユoづρ㊤。。刈︶が有益な文献である。 各州議会の定める方法によって選出される﹁選挙人﹂︵国一①90屋︶によ 二 大統領選挙運動国庫補助制度の概要 ︵幅︶ 大統領選国庫補助の合憲性 アメリカ連邦憲法は、大統領選について、 律 108 叢 論 法 る間接選挙を明記するにとどまり︵二条一節二・三項︶、大統領候補を指名する過程などについては、なんら規定を 設けていない。そのため、大統領選にかかわる選挙規制および国庫補助についても、その合憲性が問題となる。この 点、連邦最高裁は、連邦憲法一条四節の定める連邦議会の連邦選挙規制権を拡大解釈し、同議会の権限が大統領選に ついても及ぶ・とを認めて馳・大統領選挙覇国庫補助制度も・毛九六年のバ・クリ毒幾合憲と判断された ︵3︶ ため、憲法上の疑義は一応クリアーされたといえよう。 ︵二︶ 国庫補助基金の原資 大統領選挙運動基金の原資は、一ドル以上の連邦所得税の納税者が指定する納税額中の一ドル︵夫婦の場合はニド ル。︶である。すなわち、納税者が連邦所得の申告の際、納税額のうち一ドルを大統領選挙運動基金に税金の天引き ︵4︶ により当てると指定することができ、この指定された一ドルは財務長官が管理する基金として積み立てられ、大統領 候補者︵これに同伴する副大統領候補者を含む。︶が希望すれぽ、この基金から法定の補助金が支給されることにな ︵5︶ る︵連邦法二六編六一章六〇九六条および大統領選挙運動基金法︵以下PECFAと略す。︶九〇〇六条︶。 ︵三︶ 大統領選国庫補助資格条件 大統領選挙運動基金から補助を受ける資格を有する者︵適格候補者︶は、各政党の大統領候補者で、次の一般的要 件を満たした者でなけれぽならない。 ①連邦選挙委員会に対し、選挙費用に関する証拠の提出に同意すること。 ② 連邦選挙委員会に対し、選挙費用に関する記録・書類およびその他の情報を提出することに同意すること。 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 109 ③大統領選挙運動基金法九〇〇七条に定める連邦選挙委員会による会計検査に同意し、かつ、同法九〇〇四条の 定める資格額を超える選挙運動費用の支出をした場合には、超過額を財務長官に支払うことに同意すること︵PEC FA九〇〇三条︶。 ︵四︶ 大統領選の一般選挙に対する補助 ω 大政党︵前回の大統領選の一般投票で、二五%以上の得票を獲得した政党。︶の候補者には、選挙運動費用の 支出限度額︵二〇〇〇万ドル︶に物価上昇調整率︵基準年は一九七四年。︶を乗じた額を補助する。 ② 小政党︵前回の大統領選の一般投票で、五%以上二五%未満の得票を獲得した政党。︶の候補者には、大政党 の候補者への補助額に前回の大政党の候補者の一般投票における平均得票数に対する当該小政党の候補者の得票数を 乗じた額を補助する。 ③ 新政党︵大政党および小政党の要件を満たさない政党。︶の候補者には、支給時の選挙の一般投票における得 票率が五%を超えた場合のみ、小政党の候補者への補助金と同様の方法で算出した額を補助する。ただし、この補助 金は選挙後に交付される︵PECFA九〇〇四条︶。 ︵五︶ 大統領候補者指名全国大会に対する補助 ω 政党の全国委員会に対し、大統領候補者指名全国大会の経費を補助する。 ② 本補助は、大政党および小政党で、次の要件を満たした場合のみ支給される。 A 補助金は、全国大会のためのみ使用し、候補者または代議員のために使用しないこと。 110 叢 論 律 B 全国大会のために、⑬・叫の補助額を超える支出をしないこと。 C 全国委員会の組織・財政状況および連邦選挙委員会規則で定められた事項の説明書を同委員会に提出するこ と。 ⑧ 大政党の場合は、三〇〇万ドルに物価上昇率を乗じた額を補助する。 ㈲ 小政党の場合は、大政党への補助額に前回の大政党の候補者の一般投票における平均得票数に対する当該小政 党の候補者の得票率を乗じた額を補助する︵PECFA九〇〇八条︶。 ︵六︶ 大統領予備選挙に対する補助 ω 財政長官は、大統領選挙運動資金の中に、大統領予備選挙寄付金相当額支払い会計︵℃器ω乙Φロ↓一巴℃H一日⇔蔓 ζ9。8三づσq評︽ヨ①三>80ロづ仲︶を設け、大統領選の一般選挙に対する補助および大統領候補者指名全国大会に対す る補助を行った後になお残額がある場合には、当該会計より大統領予備選挙の候補者に対し、選挙運動費用の補助を ︵6︶ 票しなかった者は、一定期間を経て資格を失うが、その後の予備選で二〇%以上得票した場合は、資格を再び取得す 以上を二〇州以上で受領したことを証明する者に限られる。ただし、連続二回の予備選において、一〇%未満しか得 ㈲ 本補助金の交付を受ける適格候補者は、寄付者一人当たり二五〇ドル以下の寄付で、一州当たり五〇〇〇ドル %を超えてはならない︵PPMPAA九〇三四条︶。 を差し引いた額の総計である。ただし、一九七一年のFECA三二〇条の定める予備選の選挙費用支出限度額の五〇 ② 補助額は、大統領選挙年の前年の初日以降受領した寄付金額から、寄付者一人当たり二五〇ドルを超える部分 行うことができる︵大統領予備選挙寄付金相当額支払い会計法︵以下PPMPAAと略す。︶九〇三七条︶。 一法 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 111 ることになっている︵PPMPAA九〇三三条︶。 ︵七︶ 大統領選の選挙運動費用に対する制限 ω 大統領候補者の支出制限 大統領選挙運動基金による国庫補助の交付を受ける大統領候補者は、次の額を超えて選挙運動費用を支出すること ,A 大統領選挙の一般選挙の場合には、二〇〇〇万ドルに物価上昇調整率を乗じた額。 はできない。 B 予備選の場合には、一〇〇〇万ドルに物価上昇率を乗じた額。ただし、一つの州においては、一六セントに当 該州の投票年齢人口を乗じた額または二〇万ドルのいずれか大きい額に物価上昇調整率を乗じた額とする︵FECA 四四一a条㊨・ω︶。 ω 政党全国委員会の支出制限 政党全国委員会は、大統領選の一般選挙において、ニセントに全国の投票年齢人口を乗じた額に、さらに物価上昇 率を乗じた額を超えて支出することはできない︵FECA四四一a条㈲・ω︶。 ︵1︶ この点は、正副大統領選を規制する連邦議会の権限が問題となったゆロ昌oロσq冨く°d巳け&ω9酔①ωbOOdゼψα゜。蔭︵巳ω幽︶ 三七−二二八頁参照︶Q において、肯定されている︵石田栄仁郎﹁会社・組合の政治献金に関する米連邦最高裁の新判例﹂比較法政一一号注︵1︶一 ︵2︶bd琴匹醸∼<号9誌戯G°ψH︵6♂︶° ︵3︶ しかし、バックリi事件に関する最高裁判決には、憲法上さまざまな問題点があることは確かである。この点に関して は、詳しくは落合俊行﹁アメリカにおける選挙運動資金の問題状況的﹂海外事情研究一一巻二号三四頁以下、および芝゜ 律 112 ω。ぎ①こ①びbug匹畠タ<巴①9目冨ω口冒Φ日①Oo信コ⇔民閏a錠巴O=■ヨ唱巴αq昌菊①ho同ヨ噛刈①Ooピヨ三印ピ’因Φ<゜。。認 ︵4︶ 以下の叙述には、尼形敏紀﹁諸外国の選挙制度㈹ーアメリカ合衆国︵五・完︶﹂選挙四〇巻五号三一頁以下、および時澤 ︵HO刈①︶ を 参 照 。 忠﹁アメリカの政治資金制度︵三・完︶﹂選挙四〇巻九号五頁以下を大いに参考にしたことをお断りしておく。 ︵5︶ 現行国内歳入法は、連邦法二六編九五章を大統領選挙運動基金法︵℃冨。・己Φ口菖巴匹①゜臨○路O⇔ヨ℃繊σq旨閃ロ巳b9︶と呼 ︵6︶ 現行国内歳入法は、連邦法二六編九六章を大統領予備選挙寄付金相当額支払い会計法︵牢窃こ窪件巴℃誌日①蔓ζ国9ぼ口σq んでいる︵同法九〇〇一条︶。 剛⇔︽日゜三﹀°8ロ三︾簿︶と呼んでいる︵同法九〇三一条︶。 三 大統領予備選挙に対する国庫補助の憲法実態 選挙を意味する。﹂︵PPMPAA九〇三二条七項︶。 明のため、政党により開催される決選投票の選挙︵⇔ 吋口昌O中①一①Oけ一〇昌︶、指名大会またはコーカス︵oき。霧︶を含む への代議員︵匹①一①αqβ。8ω︶の選出または合衆国大統領職の選挙候補者の指名に関する優先選択︵餌胃9。器口8︶の表 ︵2︶ め、現行法上も次のように定義されている。﹁”予備選挙”︵冒一日β。q①一①。蕗o⇔︶という語句は、政党の指名全国大会 州の法律︵選挙法︶で規定するところが多い。予備選挙制度は、独特の面を持つとともに、相当複雑なものであるた 候補者を発堀するために、アメリカ政党政治の発達とともに確立された慣行である。しかし、今日では、この制度を ある。この制度は、本来、政党の党内制度であり、政党が、大統領候補者を正式に指名する前段階において旨有力な ︵1︶ 大統領予備選挙は、連邦憲法の定める大統領選挙とは、法的には直接関係を持たないアメリカ独特の複雑な制度で ︵一︶ 一般的考察 叢一 論 一法 113 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態一 表1大政党大統領選挙運動支出限度額および国庫補助 (単位:100万ドル) 1指名大会 大統領予備選 年 度 連邦法上 資金調達 総支出限 の支出限 費用 度額 度額 大 統 領 選 連邦法上 総支出限 国庫補助 の政党支 出限度額 度額 {1) (2} 1976 10.9十 2.2= 1980 1984 (3) 13.1 2・2(4) 21・8十 3・2= 25.0 14.7十 2.9= 17.7 4.4 29.4十 4.6= 34.0 ・・− P・4・・ 8・・1・…+16・・一 47.3 20. 2十 (1}基礎額1,000万ドル+物価指数調整額(1974年を基礎年とする)。 (2)基礎額2,000万ドル+物価指数調整額(1974年を基礎年とする)。 (3)基礎額2セント×連邦投票年齢人口+物価指数調整額(1974年を基礎年とする)。 (4)基礎額200万ドル+物価指数調整額(1974年を基礎年とする)。1979年改正FECA においては,基礎補助額は300万ドルに増額された。しかし,1984年,連邦議会は 基礎額を400万ドルにさらに引き上げている。 ︵3︶ さて、大統領予備選挙寄付金相当額支払い基金︵ヨ簿。霞ロσq 津民ω︶から補助を受けた一九八四年の大統領予備選候補者 は、FECAに基づき、二〇二〇万ドルに二〇%の物価上昇調 整額︵四〇〇万ドル︶を加えた支出が認められた。表1が示す ように、この支出額は、↓九七六年に比較すると、約一一一〇 万ドルの増加であり、また、 一九八〇年に比較すると、約六 五〇万ドルの増加である。さらに、一九七四年の改正FECA は、前にも述べたように、各州において有権老一人につき一 六セントとそれに物価上昇率を加えた額、または二〇万ドルに 物価上昇率を加えた額に支出を制限している。マッチング・ ファンドを受領しない予備選候補者は、全国および各州におけ る支出限度額に拘束されない。なお、FECAを遵守するため の法律上および会計上の役務にかかわる支出は支出限度額か ら除外されるが、さような支出は報告することが義務づけられ ている。そして、予備選候補者にはFECAの支出限度額の 二〇%まで、資金調達の経費として支出することが認められ ているので、予備選候補者の事実上の支出限度額は一〇〇〇万 ドルに物価上昇額を加え、それに資金調達費用を加えた額とな 律 114 叢 論 る。 予備選候補者は、EECAの定める寄付制限に拘束される。いかなる候補者も、個人寄付者から一〇〇〇ドル以上 の寄付を受取ってはならないし、多数候補者政治委員会︵ζ巳臨$ロ島α舞。勺o一一江。,・﹁Ooヨ巨暮①⑦︶からは五〇〇〇 ︵4︶ ドル以上の寄付を受領してはならない。国庫補助を受ける候補者は、自己または家族の資金から、年間五〇〇〇〇ド ルを超えて選挙運動費用を支出することはできない。FECAの定めるマッチング・ファンドを受ける資格を獲得す るためには、候補者は二五〇ドルの個人寄付で、五〇〇〇ドル以上を二〇州以上で調達しなければならない。これ は、泡沫候補を除くための措置である。連邦議会は、一九八四年の候補者に対し、二〇二〇万ドルの半額である一〇 一〇万ドルを超えて補助することができないという制約があるにせよ、各適格候補者に寄付老一人当たり二五〇ドル を超える部分を差引いた額を補助することができる。この背景には、二五〇ドル以下の小口の寄付を広い範囲で調達 することを適格候補者に望むという思想がある。予備選における寄付および支出制限の設定とマッチング.ファンド 方式の導入は、候補者たちが選挙運動委員会を創設するという効果をもたらした。候補老に対する国庫補助の支給は ︵5︶ ち若干は法律の立法目的を完全に打ち砕いている。 運動の戦略や戦術の転換を迫った。その多くは、立法者が予想もしなかったところのものであり、かつ、これらのう 一九七〇年代に制定された各連邦選挙運動規制法は、大統領予備選候補者とその支持者たちに対し、伝統的な選挙 ︵二︶ 総支出規制 マッチング・ファンドを受けるための寄付に関する記録を提出し、適格候補者としての認定を求めることができる。 選挙年に限られるが、しかし、その前年に連邦選挙委員会︵閃巴霞巴国一。9一〇口Ooヨヨ一゜・ω圃ob.以下FECと略す。︶に 一法 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 115 マッチング.ファンドによる補助を受ける候補者に対する一九八四年の二四二〇万ドル︵二〇二〇万ドル+二〇% の物価指数︶という総支出の規制額は、候補者にその補助金を適正に使用する計画の立案を要求している。ところ が、モンデール︵妻巴8Hζo巳巴①︶陣営は、予備選の初戦の段階で、高額の資金を投入した。前副大統領という肩 書きと知名度が高く、資金を十分に持った候補者には、指名全国大会への代議員の選出は有利に展開するという確信 に勇気づけられ、モンデール陣営は逃げ込み作戦を選択したのである。そして、代議員の三分の一しか選出されてい なかった一九八四年三月の第三週目までに、総支出限度額の約六〇%近くを支出してしまった。ニューハンプシャー 州やニューイングランドの各州および若干の南部諸州において、驚異的な勝利を収めていたハート︵O餌q国9。馨︶ 上院議員の挑戦に対し、当時、外見上無敵の選挙戦とみられていたモンデール側のこうした戦略は、選挙資金の高騰 という結果を招くだけに終った。事実、八四年三月一三日に開かれた六つの予備選会と五つのコーカス選会に続く大 きな戦いのすべてにおいて、ハート陣営は少なくとも二対一の割合で、モンデール陣営を金銭面で突き放していた。 モンデール側は総支出限度額に悩まされ、選挙戦を財政的に支援する他のよき手段によって、キャンペソ寄付の獲得 を図ることを余儀なくされた。これらの手段のうちの若干は、労働組合の施設、フォーンバンク︵98①げ゜。蒔ω︶、ボ ランティアの利用であり、また、労働組合の政治活動委員会︵℃o年凶$一︾。↓一〇づOo日ヨ葺①9以下PACと略す。︶ の資金によって一部賄われている代議員委員会︵UΦ一①σq簿ΦOoヨヨ一洋①①︶の活用であった。しかし、これらの手段は、 モソデールのイメージを特別な利益に結びついた候補者と植えつけることに貢献した。二〇二〇万ドルにのぼる選挙 運動資金を支出したモンデールは、近差で民主党の指名を勝ち取ったが、しかし、特別の支持者の世話になった候補 者というイメージは、敗北に終った大統領選挙運動中つきまとったのである。他方、強力な対立候補者に直面しなか ったため、共和党の再指名を得ようとするリーガン︵男o昌巴鎚ヵ①β。σqき︶大統領にとっては、総支出限度額の規制は 叢 116 論 律 法 いかなる問題をも引き起こさなかった。けれども、一九八〇年のリーガンは、一九八四年のモンデールと同じような 状況のもとにあった。リーガンは、一九八〇年の予備選の冒頭に多額の資金を支出している。豊富な資金を持ったブ ッシュ︵O①oHσqΦゆ口゜・げ︶が正式の挑戦者として現われてきた時、リーガン陣営は、挑戦に勝つための必要な資金を十 分に持ち合わせていなかった。それにもかかわらず、指名を受けたのは、リーガンが予備選キャンペーンの当初から 高い評価と強い支持を得ていたからである。 一九七六年以降、予備選候補者たるチャンスを持った若干のひとは、総支出限度額があまりにも低すぎることに不 満の意を示している。たとえその限度額はインフレを考慮に入れ、調整を行っているとしても、選挙キャンペーンに 必要な費用は、それをはるかに超えているからである。たとえぽ、一九八〇年と八四年との間で、全国ネットのテレ ビ広告料は約五六%も値上りしている。政治宣伝マンに支払う費用の高騰は、これ以上である。けれども、同期間中 の消費者物価指数は三七・四%の上昇であった。予備選に参加する多数の潜在的投票者に接近するためには、テレビ に頼る以外に道はないと思う候補者たちは、資金の大半をテレビ宣伝費の支払いに充当しなけれぽならない。たとえ ぽ、ハート陣営は、テレビ宣伝費に五六〇万ドル以上も支出しているのである。候補者たちは、国民大衆にメッセー ジを送るためには、マスコミの注意を引くことが一番よい方法であると信じる場合には、いかなるキャンペーソ費用 も犠牲にして、マスメディアの宣伝費に資金を当てるのである。この点、ジャクソン︵冨ωω①冒爵゜。8︶が、モンデ ール陣営の調達した四分の一以下の選挙資金しか集めなかったが、テレビ・ラジオのネットワークによって、大衆を 引きつけることに成功したのは、このよき実例である。 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 117 ︵三︶ 各州における制限 総支出の制限と同様、FECAによって確立された各州における支出限度は、とくに予備選の開始段階において、 戦略的なキャンペーンの展開を余儀なくさせた。この制限はまた、候補者および選挙運動の規制に関係する公務員の 批判の的となった。なぜなら、国庫補助を受ける候補者に課せられた総支出限度額と各州の総限度額との間に、大き な不平等が存在したからである。もしかりに各候補者が、五〇州のすべてにおいて、六〇二〇万ドルにのぼる限度額 まで資金を調達することができたなら、連邦法上の支出限度を数倍超えることになる。かように矛盾するギャップが あるため、候補者たちは、いずれの州が選挙運動の展開に当って重要になるかということを慎重に選ぶことになる。 勿論、候補者たちは、予備選の初戦の段階においては、代議員数よりも、慣例上ニュースメディアの重要と選定する 州におけるキャンペーンに、とくに力を入れる必要性を自覚している。候補者たちは、ニューハンプシャ;のような 人口が少なく、支出限度額︵四〇四、○○○ドル︶の低い州では、選挙予算を引き締め、全国的キャソペーン組織は、 州における支出を固くコントロールすることになる。またかような州では、低い限度額を上手に避けるため、さまざ まなごまかしを行う。たとえば、早く予備選を開催する州では、候補者は、連続四日半という期間よりも少ないが、 支出が認められる最長限の期間までキャンペーンを行うのである。この場合、FECの決定では、州の支出制限に服 することなく、費用の勘定書きを自己の全国キャンペーン組織にまわすことができる。また、候補者は、予備選会や コーカス選会の開かれる州で使用する車を借りるため近くの州に行き、その費用を当該州の支出制限に当てはめるこ ともできる。さらにまた、ニューハソプシャー州のほとんどの有権者に届くボストン局のテレビ広告時間を買い、そ ︵6︶ の費用を比較的に大まかなマサチューセッツ州の支出制限に適合させることもできるのである。 伝えられるところによると、クランストン︵≧ppO鑓屋8昌︶とグレン︵旨oげロ08昌づ︶のキャンペーンは、全国 律 118 で最初の代議員選が開かれたアイオワ州では、支出限度額を超えていた。グレンはまた、ニューハンプシャー州で も、限度額を超えていたそうである。両州においては、モンデールも限度額にギリギリであった。しかし、両州にお いて、法定限度額に服することなく、支出することができた。アイオワ州では、彼の支持を訴えるに要した通信費は 労働組合が支払い、そして、労働組合の電話、建物、その他の施設の無償提供を受けたからである。ニューハンプシ ャー州では、モンデールのキャンペーンとは一応独立していた二つの代議員委員会の支出によって、一〇万ドル以上 の恩恵を受けている。 〇〇〇ドルまでと、据え置かれたままである。物価指数が一つの目安として使われたわけであるが、一九八四年の候 を巻き起こした。支出限度額はインフレを考慮し、調整を図っているが、個人寄付限度額は、一人の候補者につき一 寄付制限は、シャープな予備選キャンペーンの戦略を構築することを手助けし、選挙運動家やオブザーバーの批判 ︵四︶ 寄付制限 叢一 論 寄付制限はまた、資金調達のパターソを変えた。かって大口寄付者によって果たされた役割は、最高一〇〇〇ドル ことになってしまった。 かつ、知名度の低い候補者は、指名大会の一年または半年前からキャンペーン資金の調達を開始しなけれぽならない って資金を一挙に集めることを候補者に禁じたため、すでに相当な知名度を有している老にアドバンテージを与え、 する直接の大口寄付を排除しようとする寄付制限の立法目的は、﹁応達成されたといえる。しかし、大口の寄付によ 価値しか有していない。一九七六年および八〇年と同様、八四年においても、裕福な寄付者による大統領候補者に対 補者に対する一〇〇〇ドルの寄付は、制限が実施された一〇年前の︸○○○ドルの購買力に比較すると、半分以下の 一法 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 119 まで寄付することができる大勢の人たちを説得するよきボランティアの資金調達者にとって代わられている。主な民 主党の候補者たちは、さような数多くの“エリート勧誘員”︵①﹁搾①ωo目98N。。︶の努力に頼っている。候補者たちは また、資金調達に際して、多くの場合、小口寄付者に接近するためのもっともよき方法と考えられているダイレクト メールによる懇請や、一九七四年の改正FECAの制定以来、政治キャンペーンで重要な力を発揮してきたダイレク トメールの専門家に依存している。一九八四年においては、民主党の候補者たちは、一般的にはダイレクトメールに よる大きな成果は収めていない。けれども、モンデール陣営は、郵便勧誘で約四一〇万ドルの純益をあげ、そのうち の若干は、指名大会後に集められ、三五〇万ドルのキャソペーン負債の穴うめを助けた。結局、モンデールは、約一 七四〇万ドルの寄付を集め、さらにマッチング・ファンドから八九〇万ドルを受領した。これに対し、リーガンは、 一九八四年四月までに、当時調達していた一六〇〇万ドルの約四分の三に当たる一二〇〇万ドルを郵便寄付で集める ことができた。そして、五月には資金調達活動は中止したが、しかし、寄付は相変らずキャンペーン司令部に集まり 続けたのである。リーガンは、目立った挑戦者もなかったが、指名大会が終った時、法定の支出限度額と資金調達費 用をプラスした二〇二〇万ドルのほとんどすべてを支出していた。若干の候補者は、資金調達のために、コンサート を開く必要から、エンターテーナーに頼ることもある。さような個人によるボランティア活動は、一〇〇〇ドルの寄 付制限には無関係である。ただし、エソターテーナーは、一九八四年の場合には、一九八〇年に果たしたほど重要な 役割を演じなかったように思われる。 一般に、PACとして知られている多数候補者委員会は、一選挙一候補者につき、五〇〇〇ドルまで寄付すること が許されている。けれども、FECAのもとでは、PACの寄付はマッチング・ファンド補助の対象にならないこと もあって、同委員会は、大統領予備選を直接財政的に援助することについて、 一般的には大きな役割を果たしてい ない。一九八四年、一〇万ドルを超える資金調達を行った一四人の大統領候補老に対するPACの寄付は、当該候補 ︵7︶ 寄付および支出に制限を設けたことは、独立支出︵ぎ儀8Φ巳Φ三Φ毯Φ匿圃εHΦω︶や大統領政治活動委員会および ︵五︶ 制限のがれ る独立の支出は、相当な額であった。 出するために組織化されたPACは、労組系のPACからも寄付を受けており、そして、労組系の若干のPACによ 者の全収入の一%をわずかに超える=二〇万ドルであった。しかし、モンデールを支持する指名全国大会代議員を選 ㎜ 判決を下した。それ故、一九八〇年には、さような支出をしたいと考えたところのひとたちは、予備選キ汐ンペーン の候補者の当選または落選を主唱する通信について、個人またはグループは無制限に資金を使うことができるという て、連邦最高裁は、もしその支出が候補者または候補者の選挙運動委員会との協力・協議なしに行われるなら、特定 代議員委員会のような、制限のがれの方式を活用するということをもたらした。一九七六年のバックリi事件におい 叢一 論 律 一九八〇年の大統領選が開始されるかなり以前に、リーガン、ブッシュ、 コネリー︵匂o﹃昌Ooロ昌p一ぞ︶、ドール は落選を主唱する独立支出であった。そのほとんどすべては、個人ではなく、政治委員会によって支出されている。 用紙にリーガソの名前を記入させるキャンペーンに貢献した。約八九〇万ドルのすべてが、予備選候補老の当選また 多数派のための基金﹂︵閃ロ⇒匹︷9⇔08°。臼く⇔二く①ζ巴o葺︽︶は、ニューハンプシャー州において、民主党の投票 ︵勺O一一け一〇⇔一 ∩︶Oヨ日一けけ①①︶は、リーガンのために約八六〇万ドルの支出を行ったと報告している。たとえぽ、﹁保守 ︵8︶ の支払いを行う方式を開発した。一九八四年には、リーガンは再び独立支出から大きな恩恵を受けた。政治委員会 において、合計二七〇万ドルの独立支出を選挙法が認めていることを利用して、リーガンのために約一六〇万ドル 一法 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 121 ︵勾oげΦ詳Uo一〇︶という四人の共和党のホープたちは、支持候補者と政党委員会のために金を集める政治活動委員会 を堂々と作った。これらのPACは、疑いもなくスポンサーになった候補者に援助を行う組織であり、かつまた、ス ポンサーが将来大統領候補になるよう努める道具であった。PACは、そのスポンサーに現金寄付を行うことによっ て、連邦・州・地方のスポンサーの組織および州・地方の政党組織の支持と援助を獲得することを助けた。そして、 将来の大統領候補者が、マッチング・ファンドによる補助を受けた場合に生じる支出制限に違反することなく、マス メディアの注意を引き、政治活動家および一般有権者に対し知名度を上げるため、全国を遊説することを助けたので ある。 一九八四年の民主党の有力な大統領候補とみなされていた前副大統領のモンデールと上院議員ケネディ︵国匹毛霞臨 国Φ詳口①幽団︶は、八一年に、予備選に備え、資金を調達するため、PACを創設した。一九八一年から八二年の選挙期 ︵⑦一①9一8畠。一Φ︶に、モンデールのPACである﹁アメリカの将来のための委員会﹂︵Oo日巨暮8♂同岳o閏葺¢同① o︷﹀ヨΦ二8°以下CFAと略す。︶は二二〇万ドルを集め、同額を支出した。同委員会は、解散前の八三年には、さ らに三〇万ドルを集めている。ケネディのPACである﹁民主党多数派のための基金﹂︻︵閏琶匙︷oH鋤∪①ヨo。轟二。 ζβ。一〇葺団︶は二三〇万ドルを調達し、約二二〇万ドルを支出した。 九八二年の上院議員再選後、ケネディは大統領 候補になることを断念した。けれども、彼のPACは、八三年から八四年の選挙期も活動を続け、三六〇万ドルを集 め、三〇〇万ドルを使っているのである。モンデールは、PACによる大統領選のための資金調達に、新しい道を切 り開いた。FECに登録したCFAのほかに、大統領候補者を助けるために金を集めるPACを四つの州にも作った のである。これら州レベルのPACは、登録した当該州の法律に従って寄付を集めることができた。州法は、個人寄 付者に対して、連邦法より比較的規制がゆるやかであり、連邦法が禁止した額または出所の寄付を認めている。会社 122 からの約一五万ドル、労組から↓六万ドルを含む合計四一万ドルが、これら州レベルのPACによって集められた。 そのうち約一〇万ドルは、州および地方の公職候補者に寄付された。その他は、PACの活動費用の支払いのために 使われた。州レベルのPACの活動は、連邦レベルのCFAの活動と一体的であった。連邦の政治資金公開法よりも 州法の規制を受ける州レベルのPACの存在は、CFAとその州の子会社︵ωロげ゜。凶象⇔二①゜・︶が活動を停止してからか なり経過した一九八四年七月、コロムビア特別区のビジネス誌によってはじめて公にされるまでは、まったく知られ ていなかったのである。 いた。結局、モンデールを支援する代議員委員会は一〇〇以上作られ、七四〇万ドルを使ったのである。同委員会の 誓約していたとしても、代議員委員会はPACの金の受領の当否について自由に決定することができる、とも述べて 候補者たちに代議員委員会の設立をすすめるメモランダムを出したのである。そして同メモは、たとえ大統領候補者 ︵9︶ 自身がPACの寄付を彼の主たる選挙運動委員会︵勺昌⇒。首巴O鋤ヨ唱巴σq昌Ooヨ巨簿Φ。︶が受け取ることを認めないと るいは候補者のための独立寄付とみなされる。ところが、一九八四年の初めの頃、モンデール陣の司令部は、代議員 の選出および大統領予備選候補者の指名を主唱する政治広告のための支出は、大統領候補者に対する現金寄付か、あ ないし、そして、受領したすべての寄付は報告しなければならない。勿論、支出についても同様である。ある代議員 れら代議員委員会は、いかなる個人からも、また、他の政治委員会からも、五〇〇〇ドル以上の寄付を受けてはなら もしくはそれ以上の代議員の選出を援助するなら、そのグループは、政治委員会であるとみなされることになる。こ し一グループとして行動する何人かのひとが、一年に一〇〇〇ドルを超える寄付を受領し、または支出を行い、一人 て、連邦の選挙寄付と支出に対する制限を回避する方法を、さらに切り開いたのである。FECの決定によると、も モンデール陣営は、モンデールを支持する指名大会の代議員候補者を援助するための委員会を創設し、それによっ 叢一 論 律 法 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態一 123 多くは、労組系のPACと、すでにモンデール陣営に対し、直接に最高限度額を献金していた個人から寄付を集め た。若干のPACと個人は、モンデールの数多くの代議員委員会に献金した。代議員委員会の存在が大衆の公知の事 実となり、ジャーナリストのリポートで、同委員会とモソデール陣営との間の協力と連携が暴かれると、モンデール は、同委員会は自分とは無関係であり、自分のキャンペーン組織は同委員会に対し、いかなるコソトロールもしてい ないと主張した。そこで、一九八四年四月、ハート陣営は、FECに対し、代議員委員会は選挙運動支出規制法に違 反するごまかしであると訴えた。これに対し、モンデールは自分とは無関係であることを主張し続けた。しかし、四 月の終り頃、ハート陣営の批判と世論の攻撃を受け、モンデールは、同委員会の解散命令を下した。そして、同委員 会の支出は、モンデールの支出限度額に違反するものであるとみなし、同委員会に対する個人寄付およびPACのす べての献金を国庫に返金することを宣言した。モンデールは、五月の中頃、銀行から四〇万ドルを借り入れしたが、 その金は寄付者には渡らなかった。それどころか、本選挙後の一九八四年=月二七日、FECが、ハート上院議員 と﹁国民の働く権利委員会﹂︵Z巴8巴空σq﹃8毛o葺Ooヨ巨§。︶の訴えに対し、四対二の票決で、モンデール の予備選キャンペーソ委員会に一つの和解協定を提案することを決定し、その協定にもとづき、同委員会は、連邦財 務省に同委員会に対する直接の寄付としては認められなかった額である三五万ドルを支払うことで、問題の決着がつ いたのである。同委員会はまた、代議員委員会と同委員会のニューハンプシャー州におけるマッチング.ファンドの 補助額を超える支出額であった二九六四〇ドルを、さらに返金することに同意した。そして、モソデールの委員会は、 最後に、一八五〇〇ドルの民事上の罰金の支払いにも同意した。それにもかかわらず、同委員会は違法行為を認めず、 ﹁この問題に関する長期的訴訟を避けるため﹂、和解に同意したのであった。結局、代議員委員会に返金するために借 り入れた金は、一転して財務省に転がり込み、寄付者に対する返金計画はキャンセルとなったのである。 叢 124 論 律 法 ︵六︶ マッチング・ファンド 一九七六年の大統領予備選において、連邦のマッチング・ファンドシステムがはじめて導入されて以来、この方式 は、知名度のないあるいは大口の私的寄付に縁遠い潜在的候補者に、大統領指名の戦いに参加する機会を与えた。も し寄付制限と国庫補助の組合せがなかったならば、民主党の大口寄付の伝統的源泉に近づきえなかったカーター Q巨ヨ︽O母酔興︶は、ジャクソン︵=窪蔓ζ゜冨。訂o昌︶上院議員のように、一九七六年の予備選の初戦の段階で、 候補者競争から脱落していたであろう。一九八〇年、国庫補助は、ブッシュをトップランナ;にさせ、かつまた、リ ーガンの対抗馬として予備選レースに臨むことを助けた。国庫補助はまた、アンダーソンQoず旨﹀昌匹角ωoけ︶が共和 党予備選の初戦の段階で有力者となることを助け、そして、彼が独立した大統領候補として立ち上るために必要であ った知名度と全国的組織を築き上げることについても、重要な要素となった。一九八四年、マッチング・ファンドは、 ハート上院議員が、ニューハンプシャー州の予備選で予想外の勝利を得た後、彼のカラになった金庫を再び満たすこ とを助け、かつ、彼に対するその後の寄付に弾みを与えた。さらに、ジェシー・ジャクソンが資金力不足であるにも かかわらず、その知名度で予備選を戦い抜くことも手助けした。以上のケースはすべて、FECAの定めるマッチン グ・ファンド条項がなけれぽ、戦いに生き残ることさえできなかった候補者たちに対し、選挙過程を開放したことを 意味している。 一九八四年、リーガンは、マッチング・ファンド制度がスタートして以来、その方式が候補者に対し付与できる最 高の補助額を受けた最初のひととなった。彼は一〇一〇万ドルの国庫補助を受領した。けれども、選挙運動委員会 が、一五〇万ドルの余剰金を持って活動を終了したため、納税者の資金から集められた分の五〇万ドルは財務省に返 還した。 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 125 一九七六年および八〇年と同様、八四年にマッチング・ファンドからの補助を受けた候補老たちは、彼らの選挙運 動費用がFECAの定める支出限度内にあることを証明する完全な書類を、FECに提出することが義務づけられて いた。そして、その運動が寄付制限に従って行われ、かつ、収支の公表義務を実行する正規の報告書を提出すること もまた、義務づけられていた。法律従って行動することは、キャンペーソの出費をさらに増やすことになる︵弁護士 や会計士の雇用費用は相当な額である。︶。たとえ、法定の収支報告の提出および公開の義務を履行するために要する 費用は総支出限度額から免除されたとしても、前述のごとき法的義務は、資金および資金調達力をキャンペーンから そらすことにもなりかねない。モンデール、グレソ、リーガソという一九八四年の三人の候補者たちは、法律の遵守 義務関係の費用として、各目一〇〇万ドル以上の支出があったことを報告している。 ︵1︶ アメリカの大統領予備選制度については、詳しくは中村泰男﹁アメリカ大統領予備選挙制度の概要﹂レファレンスニ一八 ︵2︶ コーカスとは、政党の幹部会のことを指す。 号五三頁以下、および尼形・前掲二九頁以下参照。 ︵4︶ 多数候補者政治委員会とは、連邦選挙委員会に六ヵ月間以上登録されている政治委員会で、五〇人以上から寄付を受け、 ︵3︶ マッチング・ファンドとは、各候補者の受領した寄付金額に応じて、国庫から補助金を支給する基金を意味する。 ︵5︶ FECは、一九七四年の改正FECAにより創設された独立の委員会であり、上院の同意を得て、大統領が任命する六人 かつ、五人以上の連邦公職候補者に寄付を行った組織を指す︵FECA四四一条ω︶。 の委員︵ただし、同一政党から三人を超える委員を任命することはできない。︶と議決権を持たない上・下両院の二人の事 ︵6︶..ω冨巳ぢσq=巳蔓﹀旨。ぎ∼..z睾ω幕①ぎζ鴛卑oし⑩゜。仁”,悼゜。’ 務総長で構成され、任期は六年である︵FECA四三七c条︶。 ︵7︶ 独立支出とは、候補者または候補者の政治委員会との協力または協議なしに、特定の候補者の当選または落選を主唱する 者による支出を指す。 ︵8︶ 政治委員会とは、委員会.クラブ・協会・その他のグループで、年間一〇〇〇ドル以上の寄付を受領し、または支出を行 126 った組織を指す︵FECA四三一条︶。 ︵9︶ 主たる選挙運動委員会とは、候補者により指定かつ承認された政治委員会で、 のことを指す。 四 大統領候補老指名全国大会に対する国庫補助の憲法実態 一候補者につき一つに限定されている組織 る。一九七六年の実績を基礎に連邦補助を受ける適格小政党は、現われなかった。けれども、アンダーソンが、一九 勺母な︶もまた、候補老が前回の大統領選で五%以上の得票を獲得すれぽ、同様の補助を受ける資格が認められてい 九八四年の各政党の全国大会に対する国庫補助は約八一〇万ドルであった。FECAのもとでは、小政党︵ζ言oH 会開催直前に、連邦議会は四〇〇万ドルに増額している。増額の理由としては、警備費用の高騰を挙げている。一 価上昇調整額を受領する資格を有する。一九七九年の同法は基礎額を三〇〇万ドルに増額し、さらに八四年、指名大 一九七四年の改正FECAに基づき、大政党︵ζ餌UoH勺霞蔓︶は、大統領チェックオフ基金から二〇〇万ドルと物 付与する。FECAは、こうした政党の全国大会に対し連邦補助を行うことを認めている。 の開催日時および場所を決定、同時に、各州への代議員の割り当てを発表し、州の党組織に対し代議員選出の権限を 特の制度である。通常大統領選の前年、ワシントソ︵首都︶で開かれる全国委員会︵Zpユ8巴Oo日巨↓冨①︶が、そ ︵−︶ ︵2︶ して一八五六年に共和党が、それぞれ全国大会を開いて正副大統領候補を指名したことにより確立をみたアメリカ独 るとともに、党の正式の大統領候補者および副大統領候補者を指名するイベントであり、一八三二年に民主党が、そ 大統領候補者指名全国大会は、予備選挙によって選出された各州の代議員が一堂に集って、党の政策綱領を決定す 叢一 論 律 一法 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 127 八四年の選挙に第三の政党の候補者として立候補していたなら、一九八〇年の選挙で六・六%の得票を獲得していたた め、彼の政党に対し連邦補助が支給されたことであろう。指名大会の警備、印刷、電話、遊説、大会スタッフ、食糧 および宿泊のような大会経費に対する連邦補助は、開催市や地方業老が政党の大会に資金およびサービスを供与し、 また、全国的企業が全国大会のプ・グラムの中に広告スペースを購入することによって、大会財政を賄ってきた以前 の方式に、とって代わろうとするものである。けれども、FECの勧告意見によれぽ、連邦補助金以外にも、大会準 備委員会に対する外部からの一定の寄付や同委員会のために行う支出は許されることになっている。大会開催地の州 および地方政府が、大会ホール、輸送、警備のような一定の施設およびサービスを政党に提供することも認められて いる。また、政党は、他の政党が同規模の大会を開催し、同様の恩恵を受ける限り、ホテルルームや会議施設の無料 提供のごときものを受け取ることができる。地方企業および地方支店を持つ全国的企業も、一定の条件のもとで、主 ︵3︶ 催委員会や指名大会を支援する市民団体に対し寄付することができる。 共和党が、一九八四年の指名大会をテキサス州のダラス市で開催したところ、州法と長い間の伝統が、税収入とテ キサス州以外の政府の金を大会関係費用を賄うために使用することを妨げた。そこで、ダラス市はEECに訴え、次 のような決定を受け取ったのである。すなわち、同市は、もし公正な市場価値で、指名大会の設備やサービスのため ︵4︶ に資金が支払われるならば、非営利的・非党派的な大会基金をさような目的のために確立し、執行することができる。 つまり、大会の設備やサービスに対する市の資金による支払いおよびその資金に対する寄付は、共和党全国委員会に 対する寄付とはならないし、また、同委員会の支出限度額である八一〇万ドルに違反するものではないということ を、同決定は宣告しているのである。その結果、大会資金として、個人、団体、業界、会社から無制限に寄付を集め ることができることになった。さらに、﹁ダラス市指名大会基金﹂︵︼︶P=⇔ωOOコ︿①づ↓一〇昌閏唱HF畠︶は、国税庁︵ぎ8葺巴 律 128 叢 論 ヵo︿①ロq①QQ角く一8︶から、大会基金への寄付は、すべて一〇〇%の税免除を受けるという決定を受け取った。その ため、共和党大会のために支払われた支出総額は、わずか一三ドル七〇セントに過ぎなかったのである。一九八四年 の民主党全国大会の開催地であるサンフランシスコ市は、八三年に、同市の﹁指名大会促進およびサービス基金﹂ ︵08︿窪二8勺No日o臨o旨鋤巳Qり①同<8窃閃ロ民︶に対し、FECから同様の決定を受け取った。しかし、民主党大 ︵5︶ 会の総支出額は一八〇万ドルにのぼった。さらに、両政党とも、代議員の飛行機運賃、電話および資料作成サービス のような項目について、大会の公認の下請業者として供給者の指定に同意することにより、割引価格の協定を結ぶこ とができるのである。 現在までのところ、政党の指名大会を公的および私的資金の双方で賄うという方式は、スムーズに機能しているよ うである。けれども、一九八四年に、大会の資金調達過程の中に、私的資金を導入するための新しい方式が開発され たことは、その過程をさらに変えるように思われる。 ︵1︶ この点に関しては、中村・前掲五六頁、および尼形・前掲二八頁参照。 ︵5︶蜀国ρ>OH㊤゜。ω−卜。P閃国O勾①8算U①8ヨげ①目HO°。ω”℃°°。° ︵4︶閃国ρ>OH㊤゜。卜⊃ゐS閃両O菊①8昼言ロ①HO°。b。”や9 ︵3︶ 国国ρ︾OHり謡ーピ閃a臼巴菊①喩ω酔①さ匂三︽5︾Hミ9戸悼①①8° ︵2︶ 全国委員会とは、政党の規約により、全国レベルでの日常活動に責任を負う組織で、FECが認定したものを指す。 一法 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 129 五 大統領一般選挙に対する国庫補助の憲法実態 ︵一︶ 一般的考察 前述のように、大統領選の資金を国庫で賄うという制度は、一九六六年の大統領選挙運動基金法によりはじめて法 制化された。その主な内容は次の通りである。①一ドル以上の連邦所得税の納税者は、納税額中一ドルを大統領選挙 運動資金に払い込むよう指定できる。②前回の大統領選において、五〇〇万票以上の得票を獲得した政党は、その得 ︵1︶ 票数に応じ、法定資金の補助を受ける、ということである。六六年の大統領選挙運動基金法は一応成立をみたが、共 和党と民主党の一部が結託し、修正につぐ修正が加えられ、最後には﹁通ったのは法律の名前だけで、中身はゼロ﹂ ︵2︶ といわれるくらい骨抜きにされてしまった。そのうえ、翌六七年、ケネディ上院議員らの巻き返しに遭い、六八年の 選挙から、共和.民主の二大政党に対し各三〇〇〇万ドルを大統領選挙費用として支出する予定であった同法は、そ の実施を延期されることになった。ケネディの反対理由は、表向きは、政党の自主性の擁護ということであったが、 実際の理由は、同法の成立によって民主党の台所が豊かになると、﹁党費がジョンソソ大統領の主流派に有利に使わ れ、これまで豊富な政治資金にものをいわせて来た反主流派のケネディ一家にとって、相対的に不利になると見たた ︵3︶ めだ⋮とアメリカの政界消息通は観測している。﹂。ともあれ、税金のうち一ドルを大統領選挙基金に振り込んでもよ いとする法律は、政治家の﹁税金ピンハネ﹂との印象を避けるための苦肉の策だと評価されながらも、一九七一年、 連邦議会は国内歳入法を改正し、新たにH項︵Q。βげ酔一二Φ誠−閏ぎ碧。ぎσqoh中Φ。■置窪二ρ。一国一Φ。↓一〇ロOp日唱巴σq昌ω︶ を追加し、七三年↓月から︵実際には、七六年の大統領選から実施。︶、大統領一般選挙に対し国費の支給を認めるこ 130 叢 訟 fi冊 律 法 とを法制化したのである。 一九七一年の国内歳入法および七四年の改正FECAに基づき、大統領一般選挙︵本選挙︶において国庫補助を受 ける大政党の候補者は、私的寄付を受領することはできないし、また、法定の国庫および政党資金の限度額を超えて 支出することはできない。小政党の候補者には、大政党候補者への補助額に、前回の大統領一般選挙における大政党 候補者の平均得票数に対する小政党候補者の得票数を乗じた額を、国庫から選挙前に支給される。小政党候補者には また、大統領本選挙において全投票総数の五%以上を得票した場合には、本選挙終了後、連邦補助金が支給されるこ とになっている。一九四七年の改正FECAが定めた基準に従って、一九八四年には、大政党候補者は四〇四〇万ド ルの補助金を受け取った。そして、この連邦補助金に、各大政党が大統領選挙の支出のために調達した資金を加算す ることができるのである。一九七四年の改正FECAのもとでは、大政党の支出限度額は、一九八四年の場合、六九 〇万ドルであった。大政党のキャソペーン組織の命令のもとで支出できる四七三〇万ドルという総額は、一九七〇年 の場合よりも二二三〇万ドル多く、八〇年の場合よりも=三二〇万ドル多い。なお、国庫補助を受ける大統領候補者 には、支出制限額の二〇%までは資金調達のための経費として認められている。また、国庫補助を受ける候補者に対 する個人寄付は、法律上禁じられているが、もし当該寄付が、収支報告書の作成義務など法律を遵守するために要す る費用の支出を助けるために行われる場合には、さような寄付は一寄付者につき一〇〇〇ドルまでは許される。 一九八四年に連邦補助金を受け取った二人の大政党候補者は、一般選挙の結果に影響を与える資金を調達し、支出 したという観点からみると、三つの異なった、しかし、類似したキャソペーンを展開した。その結果、約四七三〇万 ドルが各候補者のキャンペーンに使われる以外に、各候補老は、リーガン陣営に与えられた財政上のアドバンテージ よりもより以上の額を、表2が示しているように、現実には寄せ集めているのである。 131 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態一 表2 1984年の大統領一般選挙における大政党候補者の資金源 (単位:100万ドル) 候補者と資金との関係 資 金 源 リーガン 1翻禰 制限選挙 40。4 40.4 6.9 2.7 候補老コントロール可能 政党全国委員会 ①政党州・地方委員会 非制限選挙 15.6(1) ②労働組合(3) ①会社・業界団体(3) 1.5 ②法律遵守費用 2.4 陣鼓出{4) 候補者無関係 合 6.0(2) 2.0 計 20. 0 11 2 0 候補者統合可能 モンァーノレ 8.5 0.7 77.3 71.1 (1)政党全国委員会により調達され,政党州および地方委員会に渡された金銭と州・ 地方委員会の独自の資金源から調達された金銭を含む。 ② 政党全国大会により調達され,州および地方委員会に渡された金銭のみを含む。 独自の資金源から州および地方委員会が大統領キャンペーン資金として調達した金 銭は,使用不可能である。 (3)国内通信費(法律によって,報告が義務づけられている2,000ドル以上と義務づ けられていない2,000ドル以下の双方を含む。),選挙人登録運動および投票老狩出 し運動支出,人件費,その他の関係費用を含む。 (4)候補者に反対するための運動の支出額は含まれていない。 ︵一一︶ 一九七六年の大統領選挙 一九七六年の大統領選は、法律上選挙資金の 支出額が制限され、かつ、その大半が連邦財務 省による補助金の支給で賄われ、そして、大政 党の大統領候補者とそのキャンペーン組織のコ ントロールのもとで展開された。つまり、七六 年の選挙運動は、国庫補助と大政党の全国委員 会が大統領選の支出のために調達した資金によ って、もっぽら賄われたのである。大政党の候 補者であるリーガンとモンデールは、各自国庫 補助として四〇四〇万ドルを受け取ったので、 七六年の選挙戦における支出はおおむね均等で あった。けれども、リーガソ側に有利な不均衡 があったことを看過してはならない。というの も、共和党全国委員会︵力Φ宕三一$昌Zp臨o昌β。一 〇〇日邑詳。ρ以下RNCと略す。︶は、リーガ ン︵大統領︶1ーブッシュ︵副大統領︶ラインの キャソペーン資金以外に、共和党の大統領切符 律 132 叢 論 法 を獲得するために支出が認められていた六九〇万ドルを、いとも簡単に調達することができたからである。他方、民 主党全国委員会︵O。日o。屋諏。Zp二〇ロ巴Ooヨ日置叶①ρ以下DNCと略す。︶は、二七〇万ドルしか調達し、支出す ることができず、最高額には達しなかった。 ︵三︶ 一九八〇年の大統領選挙 一九八〇年の大統領選は法律上選挙資金の定めはあるが、しかし、その支出は無制限であり、そして、ある部分は 候補者とその組織の直接のコントロールを受けながら、他の部分はこれらのコントロールを受けない形で展開され た。けれども、候補者のコントロールが及ぼないところのキャンペーンで使われる資金は、実際には候補者による支 出と連携することができた。八〇年の選挙活動は三つのタイプの資金で賄われた。第一は、法律の規定を遵守するた めに生ずる法的および会計的費用に充当するため、FECAに基づき、候補者のキャンペーン組織が私的寄付から集 めた資金である。第二は、一九七九年の改正FECAに基づき、特定政党の大統領切符の獲得のために展開されるボ ランティア活動に対し無制限に支出することが認められている州および地方政党委員会によって、または両委員会の ために集められた資金である。第三は、労組、会社、業者団体および会員制グループによって、これらの支持者に対 する党派的通信および一般大衆に向けられる名目上は非党派的活動に対し、候補者のために支出される資金である。 リーガン陣営は、八〇年のキャンペーソで、有利な状況にあった。というのも、モンデール陣営よりも、より多く の資金を支出することができ、また、選挙資金の支出をキャンペーン組織の支出と効果的に連携させることができた からである。法律の遵守義務から生じる費用として、リーガンは二四〇万ドルを使い、モソデールはその半額しか使 わなかった。これらの費用は、選挙期間中の収入と支出の追跡および報告書の提出、のみならず選挙後、FECAの 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 133 定めにより、FECによって行われる会計監査期間中に要する諸費用を含んでいる。 一九八〇年のキャンペーンでは、リーガンーーブッシュ委員会とRNCは、民主党の委員会よりも、一九七六年の大 統領選のキャンペーソでは見落とされていた地方活動を奨励するために制定した一九七九年の改正FEC△の規定 を、完全に利用することに成功した。七九年の改正法のもとでは、州と地方の政党委員会は、党の大統領候補者のた めに行うボランティアによる電話勧誘・有権老登録運動・投票狩出し運動を含むキャンペーン活動に対し、無制限の支 出を行うことが認められている。そこで、一九八〇年、リーガソーーブッシュ委員会は、州と地方の政党委員会の金庫 をいっぱいにすることをねらって、資金調達イベントに取り組んだのである。とくに注目すべきことは、RNCが、 年間二五〇〇〇ドルの連邦選挙寄付限度額にすでに達していた個人と連邦選挙キャンペーンには寄付を禁じられてい た会社から約九〇〇万ドルの資金を調達し、そして、さような政党委員会に対する寄付が許され、有権者登録運動や ︵4︶ 投票狩出し運動が大きな利益をもたらすところの州に対し、金を流したことである。州政党委員会は、合計一五〇〇 万ドルのうち、少なくとも六〇〇万ドル以上を集めた。連邦の規制外にあるため、 一般にソフト・マネー︵ωo坤 ヨo⇒①︽︶と呼ぽれるこれらの寄付の大部分は、連邦法に従うよりも各州のキャンペーン資金法に従って調達・支出 し、かつ公開されるのである。というのも、かなり多くの州は、会社および労組の政治献金を認め、個人およびPA Cの寄付に対し、連邦法よりも規制がゆるやかなためである。 一九八〇年、民主党は、キャンペーンの終り頃になって、はじめてソフト・マネー獲得運動に取り組んだ。地方政 党委員会が別に二七〇万ドルを調達したが、全国レベルでは、個人と労組から約=二〇万ドルしか集めることができ ず、その金は、さような寄付が許される州および地方政党委員会に渡されたのである。一九八四年、モソデールーーブ ェラロ陣営は、州政党委員会に渡すため、個人・会社・その他のグループから二五〇〇万ドルのソフト・マネーを集 法 134 める運動を宣言した。けれども、実際に集められた公表額は、それに達していなかった。ある民主党のスポークスマ ンは、四つの州に流した八三年と八四年のソフト・マネーの合計は九四〇万ドルであったと述べている。けれども、 別のひとは三〇〇〇万ドルであったと見積っている。モンデールーーフェラロ陣営の運動員は六〇〇万ドルしか集めら れなかったと話している。民主党のソフト・マネー調達活動の若干の実態は、三つの州において、別々に非連邦会計 で活動するDNCの存在が、州キャンペーン法の定めに従って、DNCが提出した声明書または報告書の中で公開さ ある。一九八四年八月、﹁責任政治のためのセンター﹂︵O。三興♂隠ヵΦ゜・℃o湯一く①勺o一一二8︶は、FECに、二大政党 ソフト・マネー獲得運動は下火となった。そのうえ、一九八〇年のソフト・マネ:の利用は、批判の的となったので ことができなくとも、州委員会によってさような活動に支払われるために集められる資金を不要とした。かくして、 たとえその金は、法的にはリーガンロブッシュのために行われる州および地方のボランティア党活動に対し使用する ヨo口o団︶を、 同委員会の豊かな金庫から州の党へ移し変えて、州の党資金を補填することをしぼしば行っている。 し、報告されている。さらに共和党全国委員会は、FECAの限度額に従って集めた金であるハード・マネー︵げ霞自 ︵い①巴霞゜・露喝.。。ら︶の援助を受けて、多額の資金を調達することができた。しかし、この金は連邦法に基づいて調達 会の前委員長によって設立され、そして、なかんずくRNCによって雇われた私的会社である﹁リーダーシップ魍﹂ た若干の州党財政ディレクターの給料を支払ったRNCの助力、またはリーガソーーブッシュ予備選キャンペーソ委員 多くの州政党委員会は、自らの力で、あるいは一九八〇年から八四年の間、州の資金調達能力を構築するために働い 一九八〇年の共和党のソフト・マネー獲得運動は成功であったにもかかわらず、一九八四年は下降線をたどった。 れた時、明らかとなった。それによると、何人かの裕福な個人から各一〇万ドルと数多くのさまざまな会社および業 ︵6︶ 社から小口の寄付が集められていたことが分かる。ともあれ、六〇〇万ドル余りが使われている。 叢一 論 律 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 135 の全国レベルの委員会によるソフト・マネーの過去および現在の利用とも、連邦選挙に影響を及ぼす非連邦資金の違 法な使用であると主張し、訴えたからである。それにもかかわらず、ソフト・マネーは、共和党のキャンペーンを賄 ううえで重要な役割を果たした。ある共和党スポークスマンは、共和党の指名全国大会と大統領本選挙の期間中に、 約五六〇万ドルのソフト・マネーをRNCの指導のもとで集めたことを認めている。この金は、主に各州における選 挙人登録運動および投票狩出し運動のために使われた。そして、州委員会は、合計一五六〇万ドルのうち、一〇〇〇 万ドルのソフト・マネーを集めたと、同スポークスマンはさらに述べている。RNCはソフト・マネーにあまり力を 入れなかったが、共和党のために働く﹁リーダーシヅプ翅﹂は個人・団体・会社から金を集め、それを、選挙人登録 運動や投票狩出し運動に従事する数多くの非党派的・非営利的・租税免除の保守グループに渡すことに、勢力を集中 した。これらの資金が渡された団体の中には、教会のメンバーをねらって選挙人登録運動を行った正統派キリスト教 組織や軍関係の職員および銃の統制・廃止の反対者に対し同様な運動を展開したグループがある。民主党もまた、個 人やグループから金を集め、選挙人登録運動を行った数多くの新しく設立された非党派的・租税免除組織に、金を渡 した。そして、この運動は、民主党に投票する傾向がある、たとえぽ黒人、ヒスパニックおよび低所得者のような支 持者たちの間で、しぼしぽ行われたのである。 両政党とも、税免除の寄付を選挙人登録運動を展開する組織に渡すことに、かなりの成功を収めた。たとえば、保 守主義を支持する非課税の財団である﹁保守政治を支持するアメリカ人﹂︵﹀日①は$口゜。臣o同菊Φ゜■Oo昌゜■一び一。Oo<霞㌣ ヨ①三︶は、選挙人登録運動などを行った別の保守グループに金を渡すために、﹁リーダーシップ翅﹂の活動を利用 し、二〇〇万ドル以上を集めた。さらに、以前よりもきわめて数多くの財団が、選挙人登録運動を行うグループに、 援助金を渡した。一説によれば、さような運動のために集めた財団の金は、一九八四年以前の段階では約一二〇万ド 136 ルであったが、八四年では約六〇〇万ドルと、五倍も増えているそうである。しかし、これは低い見積りであるよう に思われる。なぜなら、前述のごときグループに対する寄付およびその支出は連邦の運動資金公開法のコントロール を受けず、従って、さような活動のために正確にはいくら支出されたかは決して知ることができないからである。 労組によって集められた多額の金と業界団体・会社・会員制グループによって集められたそれより少額の金が、大 統領切符を獲得するための通信費およびその他の費用に当てられるために、使われた。この点では、モンデールーーフ ェラロ陣営はアドバンテージをとり、二〇〇〇万ドルを使った。圧倒的多数の労組がモンデールを支援した。そし 一九八四年の大統領選は、独立支出、 つまり資金の調達も支出も、候補者またはその政治委員会と関係なく行われ ︵四︶ 一九八四年の大統領選挙 くわずかな労組が、約二〇〇万ドルを援助したにすぎないのである。 費の支出のための費用として、約一五〇万ドルをリーガン陣営に援助した。そして、トラック運転手たちのようなご 援するために計画することができた。それに反して、若干の会社、業界団体および会員制グループのみが、国内通信 的とみなされる部分の通信であった。そして、表面上非党派的な選挙人登録および狩出し運動が、民主党候補者を支 たとしても、党派的通信のために使われたことは確かである。さらに、若干のモンデール支持のアピールは、非政治 る。けれども、労組によるモンデール陣営のために支払われた多額の金は、たとえ二〇〇〇ドルには達していなかっ の家族に対する党派的通信費用が一選挙につき二〇〇〇ドルを超える場合のみ、報告が義務づけられていたからであ 労組、会員制グループ、業界団体および会社は、FECに対し、その構成員と家族または株主、役員・管理職員とそ て、モンデール陣営のために労組が行ったごくわずかの支出部分しか、連邦公開法のコントロールを受けなかった。 叢一 論 律 法 る資金運用によって、完全に賄われた。 一九八〇年の場合と同様、リーガン陣営は、﹁全国保守政治活動委員会﹂ ︵Z緯ざu銑Oo霧興︿魯ぞΦ℃o年8巴﹀。銘§Oo日日詳け。ρ以下NCPACと略す。︶、﹁保守多数派のための基金﹂ ︵閃口旨自hoHpOo印゜。段く鋤二くoζ⇔一〇二蔓゜以下FCMと略す。︶、および﹁クリスチャン・ボイス.モラル政治基金﹂ ︵O耳一ω二きくo一8ζo同巴Oo<葭口日。三閏ρ昌匹︶のような、イデオロギー的には保守的な委員会によって行われる多 起こした。同地裁は、FECによる独立支出制限規定の実施を認めなかった。そこで、FECは連邦最高裁に上告を 計画を発表していたNCPACとFCMの二つのグループを相手どり、ペンシルバニア州東部地区連邦地裁に訴、兄を いのである。一九八三年には、FECとDNCは、一九八四年の大統領選のキャンペーンで大規模な独立支出を行う 同数で割れたため、その判決は先例的価値を持たず、コロムビア地区巡回裁判所においてのみ、適用をみるにずぎな 年の改正FECAの中でも、連邦議会はふれないままにしていた。前記下級審の判断は、連邦最高裁に上告された時、 ︵8︶ ひとりの裁判官が新任直後のため、審理に参加しなかった結果、四対四の同数の票決で支持された。しかし、票決が 下して馳・独立支出制限規定は・一九七六年のバ・クリ車件においては葦の対象にならず、その鋒一九七六 し、政治委員会による一〇〇〇ドル以上の独立支出を禁止した大統領選挙運動基金法の規定が違憲であるとの判決を ︵Oo日日o口O窪ω①︿°Qooげヨ葺︶事件において、コロムビア地区連邦地裁は、国庫補助を受ける大統領候補者に対 一九八〇年のキャソペーン以来、かなりの数の裁判が独立支出を対象に起こされた。コモン・コーズ対シュ・、ット デール陣営に対し、独立支出を通じて支援したグループの中には、リーガン政権の環境政策に反対する組織があった。 たとなっている。モンデール陣営は、独立支出についてははるかに少なく、約七〇万ドルを使ったにすぎない。モン 再選を支援するため、独立支出として使ったと公言している。けれども、正式の報告書では八五〇万ドルが支出され 額の独立支出に、魅力を感じた。NCpACは一二〇〇万ドルを、FCMは二〇〇万ドルを、一九八四年のリーガン 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態一 137 律 138 行った。最高裁は、大統領本選挙前に解決で.きるとするこの問題の上告を、手早くかたづけることを拒絶した。そし て、一九八五年三月、リーガンが再選された後、七対二の票決で、国庫補助を受ける大統領候補者のために、政治委 ︵9︶ 員会によって独立の支出ができる額を一〇〇〇ドルに制限する法律は違憲であるとの判断を示した。最高裁は、独立 支出が大統領候補者およびその政治委員会と直接つながりのない支出であるから、選挙腐敗を招かないと判定したわ けであるが、しかし、実際には独立支出が候補者および政治委員会とつながっているのは、明白な事実であるといわ ︵9︶°。心炉臣゜卜。伍a窃︵6°。㎝︶. ︵8︶ a㎝q° Q Q ° 同 卜 ⊇ O ︵ H O ◎ 。 卜 ⊃ ︶ ° ︵7︶O巳閃゜ω巷唱誌゜。り︵Pρρ6°。O︶° ︵6︶即N盲訂§婁、、ω。津ζ。器︽.、℃>O節ピ。げげ陣①ω矯冒2鋤蔓H①しり゜。伊灯゜H° 日本選挙学会・アメリカにおける政治倫理二一頁。︶。 は、バージニア、ニューメキシコなど一四州に及んでいるそうである︵中邨 章﹁アメリカにおける政治倫理の中心概念﹂ ー、ノースカロライナ、ノースダコタ、ペンシルバニア、テキサス、ワイオミングの八州にすぎず、まったく規制のない州 ︵5︶ 一九八六年現在で、企業や労組からの政治献金を完全に禁止している州は、アリゾナ、コネチカット、ニューハンプシャ ︵4︶中∪おき﹀寄℃。器吋鷺ピp・σ・ρ、、窒三。°.鋤aζ§2自層”、↓冨z①≦団。時①ぴu§ヨσ①︻困ω弘Φ゜。ω”7爵 ︵3︶ 読売新聞一九六六年五月二九日朝刊。 ︵2︶ 朝日新聞・前掲。 ︵1︶ 時澤・前掲八頁。 ねぽならない。 叢一 論 一法 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態一 139 六 おわりに1結論的考察 三回の大統領選の憲法実態に関する考察から、FECAは、さまざまな効果をもたらしたということができよう。 大統領予備選の段階では、国庫補助を認めた選挙運動法の規定は、適度の私的資金を保持する候補者の金庫を補填す ることによって、予備選レースへの参加方法を改善した。国庫補助が比較的低額の個人寄付の制限と組み合わされる と、大口の寄付者をかかえていない候補者でも、さような寄付者を持っている候補者と十分に戦えるという可能性が 増大したといえる。その証拠は、一九七六年の当初ほとんど知名度のなかったカーターの勝利や、一九八〇年のブッ シュおよびアンダーソンの効率的なキャンペーンを行った能力、そして、一九八四年のハートおよびジャクソンの 知名度を上げた力量の中に見出すことができる。マッチング・ファソド方式は、予備選のキャンペーンを賄うことに おいて、小口の寄付が持つ重要性を大いに高めた。若干の識者は、個人からの寄付だけが、予備選のキャンペーン資 金を賄ううえで、組織体のグループが重要な役割を果たすという可能性を減少させることができると主張している。 この見解は、多分的を得ているといえよう。がしかし、多くの組織化されたグループは、政党の大統領予備選候補者 を決定する党内コンテストに深いかかわりを持つことを、伝統的に避けてきたことを指摘せねぽならない。さらに、 一九八四年において、労組とそのPACが、モソデール支持の国内通信に対して多額の支出およびモンデール支持の 代議員会に対して寄付を行ったのをみれぽ、PACの寄付をマッチング・ファンドの補助対象にしない限り、予備選 の結果に影響を与えることをねらって行われる利権グループの金の支出を、必ずしも阻止できるものではないという ことを証明している。そして、勿論、若干のPACは独立支出を行っているわけであるから、そうしたことができな 140 いのは当然であ る 。 法律による寄付制限は、大口献金者が政治的影響力を行使する可能性を少なくした。法律に定める公開規定は、以 前よりも大衆に役立つキャンペーン財政の情報をより多くもたらし、また、法律上の遵守義務規定は、キャンペーン が、金の管理や経理により大きなウェイトを置いて行われるようにさせた。法律が生み出したこれらの効果は、ある 面において、候補者、委員会、寄付者の行動を変えることに成功したことの現われであるといえよう。しかしなが ら、他の面では、法律の効果はあまり芳しいものではない。低額の個人寄付の制限は、候補者が、大口寄付者に選挙 候補者が新しい挑戦をかわしたり、また、新しい発展を取り入れようとして選挙の戦略や戦術を変えようとしても、 り頃では、キャンペーンに参加することをできなくさせる原因となっている。支出制限は、最高額に近い金を使う 寄付制限は、短期間に十分な資金を集めることを著しく困難にしているため、潜在的候補者が、予備選シーズンの終 低額の個人寄付および支出の制限は、キャンペーンから多様性を奪い、選挙運動過程を硬直したものにしている。 資金を使い果たす形で、大統領本選挙期間中も続けられるのである。 万ドルに達している。そして、予備選の借金を減らそうとする行動は、民主党の選挙キャソペーソから逃がれ、自己 ける資格のある民主党のすべての候補者は、予備選キャンペーンで高額の借金を背負い込み、その負債総額は一五〇〇 キャンペーソを行うために必要な資金を十分に集めることを困難にしているといえよう。マッチング・ファンドを受 員”を当てにすることなどが含まれている。マッチソグ・ファンドについてさえも、低額の寄付制限は、候補者が、 ロモーターに依存したり、あるいはまた、最高額まで寄付ができる個人のネットワークに入り込む“エリート勧誘 るため、コンサルタントに頼ったり、支持者を獲得するために、募金コンサートの開催を行う顧客を説得する興行プ 資金を依存していたのを、さまざまな資金調達者に鞍替えさせた。この中には、寄付者のダイレクトメールを入手す 叢一 論 律 法 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態一 141 それを困難にしている。他方、寄付制限は、知名度の高い候補者が素早く金を集め、他の候補者のキャンペーンを先 回りして妨げることができるというアドバンテージを作り出している。それはまた、知名度の低い候補者に早い段階 から資金の調達を開始させ、キャンペーン期間の長期化をもたらす原因ともなっている。一例を挙げれぽ、一九八四 年のキャンペーンを長期化させた原因は予備選の期間を短縮した民主党の決定にあったといえる。多くの州は候補者 とマスメディアに予備選レースの重要性をアピールするため、キャンペーン期間のはじまりのところに、予備選日を 移した。その結果、候補者は通常よりもかなり早く支持基盤を確立し、キャンペーソ資金を調達せざるを得なくなっ た。かくして、多くの候補老は費用のかかる紙上投票︵世論調査︶に参加し、一九八三年のほとんどをグループ支持 を獲得するために費やしたのである。 比較的低額の支出制限は、候補者が、草の根運動より教育的でなくとも、しかし、コストは高いが効果的であり、 かつ、時間の消費も少ないマスメディアによる広告を好むように仕向けている。それはまた、候補者が、支出制限内 にとどまることを確保するため、自己のキャンペーソに対するコントロールカを中央に集まるようにしたのである。 この中央集権化は、地方の権威と指導を犠牲にして行われた。さらにまた、低額の支出制限は、候補者が、その制限 を逃がれるために、さまざまなごまかしを行うことを余儀なくさせた。この実例は、一九八〇年のキャンペーンで、 共和党候補者のコネリーが支出制限を逃がれ、共和党候補者のトップランナーであったリーガンに勝つために、より 大きなバラエティーに富むキャンペーンを行うことの必要上、国庫補助を断った事件に見出すことができる。 ︵1︶ 低額の寄付と支出の制限は、近年の多くのキャンペーソで用いられたPAC、代議員委員会、独立支出を含むさま ざまな方法を、法律のねらいから逃がれるために発展させた。この結果、アメリカ憲法政治においては、金を厳格に 規制することはきわめて困難となっている。言論の自由が保障されているアメリカのような多元的な社会において、 律 叢 142 ti冊 選挙運動過程のある面で金の制限を行うことは、裕福な個人やグループがキャンペーンおよび公職者に影響を及ぼそ うとして求めることができる新しいごまかしのチャンネルを開発することに、往々にして終る。FECAの公開規定 があるため、大衆にとって利用できるキャンペ;ン資金に関する情報が増えたにもかかわらず、重要なデータを公表 することについて、これらの規定の中にいくつかの重大な欠陥がある。たとえぽ、一九八三年の一二月、FECは、 四対二の票決で、キャンペーン関係の運動に関して、第三者と契約した候補者は、単にその第三者に対する支払いを ︵2︶ 報告さえすれば、法律上の公開義務を果たしたことになるという決定を下している。そのため、この決定は、﹁モソデ 義務がきわめて複雑なため、政治への市民参加の過熱ぶりは静められたが、しかし、キャンペーンのプロ化は進んだ とができ、そして、その寄付者は大衆に知られることはないということを認めたことになる。最後に、法律上の遵守 免除し、報告を不必要とみなしたFECの決定は、政党の指名大会を援助する寄付をいかなる資金源からも集めるこ 集め、かつ、支出することを容易にした。さらにまた、指名大会開催市に対する寄付をFECAの定める限度額から レベルのPACの創設を認めたことは、FECに収支報告を行うことなく、モンデールの運動を助けるための資金を てしまった。また、モンデールの連邦レベルのPACである﹁アメリカの将来のための委員会﹂の子会社として、州 デールを支持する数多くの代議員委員会の存在は、大統領候補者を助けるための寄付および支出の公開を不透明にし いとも簡単に打ち砕かれてしまうことになるという法律顧問の忠告を、FECが無視したためである。さらに、モン 接支払った金額のみを報告すればよいとするならぽ、あらゆるキャソペーン支払の公開を求めている法律の目的は、 ぜ起きたかというと、キャンペーソ運動に関して、ある専門コンサルタント会社と契約を結んだ場合、その会社に直 け、単に報道フィルムに対して支払われた総額のみを報告さえすれぽよいことを認めてしまった。こうしたことがな ールを大統領にする委員会﹂︵ζoロユ巴Φ︷o﹁℃冨ω置①三〇〇ヨヨ一#。Φ︶がマスメディア関係費の項目別公表義務を避 一 ≡…ム 一法 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 143 ということを指摘しておこう。 大統領本選挙において、法律上の遵守義務に要する費用の支出に対するものは除き、大政党の候補者に対する私的 寄付の禁止と組み合わされた国庫補助は、大政党候補者間の支出を均等化し、キャソペーン支出をコントロールまた は制限し、そして、大統領選の結果に影響を与える大口の個人または利益グループの寄付を除去することをねらって いる。若干の例外はあるが、一九七六年では、この目的は達成されたように思われる。しかし、一九八〇年、さらに 一九八四年には、法律上の若干の変更と大部分は法律の規定に対する習熟度が増したため、政治的パルチザソは、大 統領候補者間の支出のバラソスを壊し、多額の私的資金をキャンペーソへ再導入するさまざまな方法を発見したので ある。この点、より具体的にいえぽ、①州および地方の政党委員会による大統領候補者のための活動に使われる支出 に対する寄付、②実際はある政党の候補者の利益のために行われるが、建前上は非党派的な投票者狩出し運動を展開 する非課税組織に対する寄付、③独立支出、そして、④労組およびその他の組織による候補者のための国内通信およ びその他の活動に対する支払いなどを、挙げることができる。 一九八四年の本選挙の経験は、アメリカのような、表現の自由が保障された各利益のさまざまな競争によって動か される政治制度を採用している国家においては、厳格に線引きされた支出制限のシステムは、うまく機能しないとい うことを強く示唆している。さような制限は、大統領選のキャンペーンの活力をかえって束縛しているだけかも知れ ない。なぜなら、中央のキャンペーン組織が直接支出できる額は制限しながらも、しかし、全く合法的に選挙の結果 に影響を与えることができる潜在的には無制限の支出を、キャソペ!ソに対するコントロ:ルの枠外に置いているか らである。予備選期間にみられるように、法律に定める公開規定は、政治的キャソペーン資金に関する情報を大衆に より多くもたらした。しかし、この点でも、欠陥がある。というのも、若干の政治資金は報告されていないからであ 144 る。このカテゴリーには、たとえぽ、三回の国庫補助を受けたこれまでの大統領選のすべてにおいて、民主党候補者 を援助する労組による報告の不必要な通信やその他の活動に対して、多額の支出が行われたことなどが該当するであ ろう。そしてまた、一九八四年のキャンペーンで、投票者狩出し運動を行った税免除の名目上非党派的組織に対する 寄付およびその支出なども、これに当てはまるといえよう。一九八〇年および八四年の全国政党委員会の主催で集め られ、大統領切符を獲得するために働らく州および地方のボラソティア活動を財政的に援助するため、州党組織に直 接に渡される金のような大統領選の結果に影響を与えるその他の支出を捕捉することは、きわめて困難である。さよ に、二〇州の各州において、一定の寄付を集める必要がもはやなくなるため、候補者の資金調達の地理的基盤を狭め 額の寄付をしないPACのスポンサーである利益グループの重要性を増強させることになる、②国庫補助を受ける前 し、いくつかの悪い結果をもたらすであろうと主張している。すなわち、①国庫で賄われるキャンペーンに対し、多 減になっているとも述べていた。チェックオフ方式の廃止に反対する者は、その廃止が大統領キャンペーソ財政に対 そして、税額控除は、一九八四年の場合には、五〇〇万ドルをわずか超えるに過ぎないのに反し、約三億ドルの収入 ︵3︶ プラソをほのめかしていた。財務省の職員は、チェックオフが税の形態を複雑にし、納税老を混乱させると主張し、 る寄付の五〇%の税額控除︵所得税の負担額から直接差し引かれるもの。︶の双方を廃止する大がかりな租税簡素化 ンを国庫で補助する所得税からのチェックオフ手続きと連邦・州・地方の候補者、PAC、政党の政治委員会に対す 出された税の簡素化をねらったものがある。一九八五年五月の終り頃、リーガン政府の財務省は、大統領キャンペー 大統領キャンペーンとその選挙に影響を与える近年の重要法案の中には、リーガン政権や下院の歳入委員会から提 州の担当公務員からのみ、入手できるにすぎないのである。 うな支出の多くは、連邦の報告義務から免除されている。それに関する特別の情報は、寄付や支出が行われた個々の 叢一 論 律 一法 一アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 145 ることになる、③寄付制限はいままで通りであるため、候補者は以前よりも資金を調達する時間を必要とし、早い段 階から金集めを始めることが必要になる、ということである。これに対し、賛成論者は、選挙キャンペーンにおいて、 公金はいかなる場合も使われてはならないと主張し、そしてまた、国庫補助を廃止することは、FECの重要性を減 少させるという歓迎すべき結果に通ずるとも、結論づけているのである。政治的税額控除を廃止する提案は、第九八 議会に提出されたキャンペーン資金法案、とりわけ、下院提出法案三七三七︵=菊ω刈ω刈゜ マックヒューグ︵H≦o出ロσqゲ︶ 1ーコナブル ︵8昌曽げ一Φ︶両議員共同提案。︶および下院提出法案四四二八 ︵國肉念卜Qc。°オベイ ︵○び。団︶1ーリーチ ︵ピΦきぴ︶1ーサイナー︵Q。賓昌臼︶ロフロスト︵津o馨︶四議員共同提案。︶の核心を打ち砕いた。下院に提出された法 案の支持者は、税額控除の廃止よりもその拡大の方が、キャンペーンに対する小口寄付を奨励し、PAC資金への一 層の依存を防止するもっとも効果的な方法であると主張している。税の簡素化問題について、下院の歳入委員会は、 リーガン政権の税からの天引き︵チェックオフ︶方式の廃止勧告には賛成投票をしなかったが、税額控除の廃止の方 には二度も賛成の意思を表明していた。けれども、一九八五年=一月の中頃、下院は、二三〇対一九六の票決で、税 額控除規定を残すのみならず、出身州の寄付納税者からの上院および下院議員候補者に対する政治献金の税額控除限 度額一〇〇ドルに対し、控除率を五〇%から一〇〇%に引き上げるマックヒューグ下院議員の税法案︵=閑ωooG。QQ︶の 修正案を支持したのである。しかし、税額控除規定は上院の税法案の中には含まれておらず、そして、マックヒュー グの修正案は、のちに議会が承認し、一九八六年の終り頃、法律となった税解体修理法案︵冨×o︿o筈餌巳露=︶を巧 みに作り上げた上下両院協議委員会の審議のあとまでは生き残れなかった。なお、同修理法案は、大統領選挙運動基 金として金を供給する税天引き手続きについては、手をつけないままにしている。 一九七〇年代のキャンペーソ資金に関する改革は、それ以前の大統領選挙運動資金制度を苦しめたすべての悪に対 146 叢 論 律 法 して、万能薬にはならなかったことを示している。現行の制度は欠陥を有しており、その若干はきわめて重大なもの である。しかし、欠点があるにせよ、注目すべき制度改革が実施されたのは、わずか十数年前の大統領選からであ る。改革者たちのねらいはきわめて大がかりなものであったが、そのすべてが達成されたわけではない。今後も改革 は継続されるであろうが、大統領選挙資金の新しい規制は、四年毎に行われる大統領選の厳しい試練を受け、かつ、 国民の監視の中で徐々に作り上げられて行くことであろう。 しかし、最近アメリカにおいて、政治の腐敗や汚濁に関する対応の仕方に、大きな変化が生じつつあることを看過 してはならない。つまり、いかに用意周到な法律を制度しても、それを破る者が必ず出てくるので、政治倫理の問題 を法制度によって解決しようとしても、それには限界があり、従って、法律による規制という消極的方法よりも、む しろ政治倫理に対する社会全体の意識を向上させるという積極的な方法によって、問題の解決を図ることが至当であ ︵4︶ るという考え方が、現われてきていることである。この点、七〇年代までのアメリカでは、政治の腐敗や汚濁を、法 制度の改革によって解決しようとする傾向が強かったが、八〇年代に入ると、政治家や公務員のような公職老の政治 モラルの向上を図るとともに、国民全体の政治に対する監視力を強化することの必要性が認識されつつあるといえよ う。この背景には、いかに法律を整備しても、その抜け道が発見され、法律の存在自体を無意味なものにしてしまう 状況に鑑み、政治倫理のあり方をいま一度見直すという意識がある。このため、今日、政治倫理教育の重要性が広く 理解されつつある。それ故、政治倫理の問題を選挙制度の改革や政治資金の規制などによって解決を図るだけではな く、社会全体の政治モラルの向上によって対応しようとするアメリカの近年の試みが、今後、大統領選のあり方にど のように反映するか、大いに注目されるところである。 ︵1︶ PACの数は、一九七四年には六〇八に過ぎなかったが、一九八九年では四八〇〇に増えている︵朝日新聞一九八九年四 アメリカ大統領選挙国庫補助の憲法実態 147 ︵2︶田ρ︾OHり。。・。山9田o菊①§阜閃・げ﹁岳蔓しり゜。倉弔阜9 月一五日朝刊︶。もっとも、最近の傾向として、その増加は、ピークを超えたという指摘もある。 ︵3︶ 連邦法は、長年、政治献金の税控除を認めなかったが、一九七一年の国内歳入法による税制改正により、候補者等への個 補者またはその政治委員会に政治献金した者は、税額控除または所得控除のいずれか一方を選択して受けることがでぎる。 人の小口寄付が控除の対象となるようになった。その主な具体的内容は、次の通りである。①連邦、州、地方の公職選挙候 ②その額は、税額控除の場合には、献金額の二分の一︵ただし、一人につき一ニドル五〇セント、夫婦共同申告の場合は二 五ドルを限度とする。︶、所得控除︵課税対象所得から差し引かれるもの。︶の場合には、献金額︵ただし、⊥人につき五〇 ドル、夫婦共同申告の場合は一〇〇ドルを限度とする。︶とする。③両控除とも、不動産や信託財産という形の献金には適 用されない。その後、一九七五年には、税額控除について、限度額が二五ドル︵夫婦共同の場合は五〇ドル。︶、所得控除は 一〇〇ドル︵夫婦共同の場合二〇〇ドル。︶に、それぞれ引き上げられた。一九七八年には、所得控除方式は廃止されたが、 税額控除の限度額は五〇ドル︵夫婦共同の場合は一〇〇ドル。︶に引き上げられた。税額控除方式に統一された理由は、次 の通りである。①個人の政治参加を寄付を通じて奨励するためには、税額控除方式がもっとも効果的な方法である。②選択 方式は、納税者にとって両方式の計算を行う必要性が生じ、面倒である。③税額控除される金額は所得の多寡に関係なく、 同額である。④税額控除の限度額は小額であるため、小口寄付を奨励することとなる。⑤所得控除方式を廃止することによ り、税の簡素化が図られる︵時澤 忠﹁アメリカの政治資金制度︵二︶﹂選挙四〇巻八号一〇頁参照。︶。しかし、税額控除 ︵4︶ この点に関して、詳しくは中邨・前掲七頁以下参照。 方式も、一九八六年には廃止されている。