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法廷内でのストップウオッチの呈示に関する会長声明

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法廷内でのストップウオッチの呈示に関する会長声明
法廷内でのストップウオッチの呈示に関する会長声明
−鳥取地方裁判所 裁判員裁判第4号事件公判について−
2010年(平成22年)7月23日
鳥取県弁護士会会長
松
本
啓
介
平成22年7月15日、鳥取地方裁判所裁判員裁判第4号事件である殺人未遂被告事件
の公判における弁護人の弁論の最中、大崎良信裁判官(裁判長)が弁護人に対しストップ
ウオッチを指し示す動作等をした(以下、「本件行為」)。
鳥取県弁護士会は常議員会において審議した上、本件行為は弁護人に対する侮辱行為で
あり、弁護活動を妨害し、ひいては裁判の公正を疑わせることにもなりかねないものと判
断し、遺憾の意を表するとともに厳重に抗議する。
以下、本件に関する事実関係、問題点及び当会としての結論を順に述べる。
【事実関係】
弁護人の弁論は午前11時30分ころから始まった。11時45分ころから、大崎裁判
官はストップウオッチを手に持ち、2,3度見た後、ストップウオッチを弁護人の方に向
け時間厳守するようにとアピールするような仕草をした。そして、ストップウオッチのひ
もを持ち左右に振ったり、ストップウオッチを持ったまま腕時計を数回見た上、椅子にも
たれかかりストップウオッチをもてあそぶような動作をした。
弁論はもともと20分の予定であり、ほぼ時間どおりに終了した。なお、検察官の論告
求刑も20分の予定でほぼ時間どおり終了したが、大崎裁判官は論告求刑においては上記
のような動作はしていない(以上、公判を傍聴した当会会員の報告等による。)。
【問題点】
まず、刑事公判の場か否かにかかわらず、本件行為は、あまりに非常識かつ礼を欠くも
のである。およそ、人の話に真摯に耳を傾けようとする者のとる態度ではない。仮に予定
時間を大幅に超過している場合であっても口頭で指摘すれば足りるものであり、本件行為
のような態度を示すのは弁護人を侮辱するものである。まして、本件行為が始まったのは
予定時間の途中であって何らの指摘も必要ないものであった。
次に、弁護人が真剣に意見を述べている最中、法壇中央の裁判長が本件行為のような動
作を行った場合、弁護人は弁論に集中することができないばかりか、弁論の萎縮を招きか
ねず、弁護活動の妨害となりうるものである。
また、検察官の論告の際には同様な行為を行っていない。弁護人の弁論の際のみに本件
行為をとることは、何ら合理的理由のない偏頗、不公平なもの(そもそも訴訟指揮といえ
る行為ではない)である。
さらに、本件行為が裁判員裁判において行われたことも重大である。初めて裁判に参加
する裁判員が裁判長の本件行為を目にすれば、刑事事件の弁護活動を軽視することにも繋
がりかねず、ひいては裁判の公正を疑わせることになりかねない。
そもそも、弁論等の時間を予定するのは、十分に充実した審理を行うという前提のもと
で計画的に審理を進めるためである。充実した審理のためには、事案によっては予定され
た審理時間が短くなったり、長くなったりすることも十分ありうることである。時間遵守
を先行させ、審理の充実を危うくすることは全くの本末転倒である。
【結 論】
当会は、本件行為について特定の事件の公判における訴訟指揮の問題として片付けられ
るものではなく、刑事弁護人に対する侮辱行為であり、弁護活動の妨害を招き、ひいては
刑事裁判の公正を疑わせる重大な問題であると判断し、鳥取地方裁判所及び大崎良信裁判
官に対し、厳重に抗議するとともに、大崎良信裁判官に対しては猛省を促し再び本件のよ
うな行為を繰り返すことがないよう強く求める。
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