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ビートルズのアイルランド性

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ビートルズのアイルランド性
The Extension Course of the BEATLES Part1
Instructor : Toshinobu Fukuya
(Ube National College of Technology)
The 3rd Session : Irishness in the Beatles
8/29 2005
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ビートルズのアイルランド性(Irishness)
リバプール
ビートルズはイギリスのバンドであるがゆえに、彼らのアイルランド性が真正面から語
られることは、これまでほとんどなかった。ビートルズの4人が生まれた育ったリバプールは、
18 世紀イギリスの産業革命の舞台となった工業都市である。また、アイリッシュ海を隔ててア
イルランドと対峙しているので、アイルランドからの移民を多く受け入れてきた街でもある。そ
れゆえに「リバプールこそがアイルランドの本当の首都」と言われることもある。それを裏づけ
るかのごとく、ビートルズの4人ともがケルト系(ここではほぼアイルランド系と同義として使
用)の血を引いている。
ビートルズの初主演映画 A Hard Day’s Night は、多くのアイルランド系労働者階級と
同じく、昼も夜も働き通し生活の中でも、自分たちの夢をあきらめまいと必死に前に突き進む
ビートルズのひたむきな姿が、リバプールの街角を背景に鮮やかに描かれている。
A Hard Day's Night からのワンカット
文化現象としてのビートルズ
彼らの姿勢の根底には、祖国の植民地化ゆえに移民を強要され、そして移民先の社
会において、常に底辺から這い上がることを余儀なくされてきたアイルランド系に特有の「上
昇志向」が存在した。しかし、当時はその「上昇志向」が彼らのアイルランド性の一つとして意
識されることはほとんどなかったと言ってよい。世界中の若者に伝わったのは、音楽好きの有
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人が集まってバンドを組み、自分たちの感性を信じて必死に鍛錬を積めば、世界を揺るがす
ようなことが可能なのだという「生き方」そのものであった。ビートルズが 20 世紀最大のロッ
ク・バンドであったことに疑いの余地はない。しかし、ビートルズの出現は、音楽現象にとどま
らず文化現象でもあった。
ビートルズの曲の中のアイルランド性
Paul McCartney は 、 故 郷 リ バ プ ー ル と そ こ に 住 む 素 朴 な 人 た ち へ の 気 持 ち を
"Yesterday" や "Penny Lane" といった曲に盛り込んでいる。また彼は、"Let It Be" や
"Eleanor Rigby" といったカトリック信仰に根ざした曲も作っている。"Let It Be" とは、「人生
は神の思し召しのままにしておきなさい」という教訓であり、その言葉をいったのが聖母マリア
だとある。この詞の内容は、神の力を絶対視し、人間は神が創造した秩序のなかで生かされ
ているのだとするカトリックの教義に一致する。加えて、聖母マリア崇拝は、正式にはカトリッ
クにだけ許されている信仰ゆえに、"Let It Be" はまさにカトリシズムに満ち溢れた歌というこ
とになる。"Eleanor Rigby" は、教会で行なわれる結婚式のライスシャワーの米を拾って生活
している女性の歌であり、その教会を司っているのが McKenzie 神父とされているゆえに、カ
トリックの教会とわかる。ちなみにプロテスタントの教会を司るのは牧師である。このように
Paul は、アイルランド性の重要な構成要素であるカトリシズムに回帰していこうとする曲を多く
書いている。なお、冒頭に Mc がつく姓はアイルランド系であることを示しており、Paul がこの
曲に込めたアイルランド性がひしひしと伝わってくる。
これに対して John Lennon は、カトリックの教えを離れて、人間の中に神性が宿るとし
たアメリカの思想家 Ralph Waldo Emerson の「自己信頼」の精神に至ったと考えられる。John
は "God" という曲の中で、"I don't believe in Jesus ... I just believe in me."と歌っている。ジョ
ンなら‘Let It Be’とは言わず、‘Make It Be’(「人生は自分自身がありといと思うかたちに自分
自身で創っていけ」)と言うかも知れない。
しかし John は、自分の体内にアイルランド系の血が流れていることを消し去ろうとしたわ
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けでは決してない。彼はアイルランド解放軍(IRA)に寄付をしたり、その活動を支持するコメン
トを発したりして、政治的に自分のルーツと関わろうとした。個人的には、小野洋子との間にも
うけた男子に John のアイルランド綴りである Shone を使い Shone Taro Lennon と名づけ
ている。"The Luck of the Irish"では、「1000 年の拷問と飢えの歴史が、アイルランド国民を自
分たちの国から追い出した。美と神秘に満ちた国は、イギリスの略奪者どもに強奪された。リ
バプールで皆は話してくれた。イギリス人がどのようにしてこの国を引き裂いたかを……」と
John らしい辛辣な言葉を連ねている。ここでの彼の歌詞は、「アイルランドでは移民が人生
を決定する」1と断言した社会学者 John B. Keane の言葉に共鳴する。移民という名の国外
追放(exile)も、まぎれもなくアイルランド性の一つなのである。映画 Titanic の主役 Leonard
DiCaprio 演じる Jack Dawson は、豪華客船の三等室に寝起きしつつアメリカでの成功を夢
見る貧しいアイルランド移民であった。
ジャックの夢を乗せてアメリカに向かうタイタニック号
1972年、北アイルランドのロンドン・デリー(カトリック教徒たちはロンドンというイギリ
スの地名を冠することを拒否したい心情からフリー・デリーと呼んでいる)で、差別をなくすよう
要求するカトリック系市民のデモ隊とイギリス軍が激しく衝突し、軍の発砲によって 13 人の民
間人が命を落とすという事件が起こった。これに対しては、それまで政治的発言を控えていた
Paul でさえ、"Give Ireland Back to the Irish" を書き、John は "Sunday Bloody Sunday" を
書きイギリス政府に抗議した。もちろんアイルランドを代表する U2 はすぐさまこの事件に反応
し、John と同名異曲の "Sunday Bloody Sunday" を世に送り出した。Bono は、「この歌は
単なる反逆の歌ではなくて、宗教的壁を乗り越えていこうとする歌だ」と公言している。
以上のように、アイルランドへの強い帰属意識を有するビートルズの中に脈打つアイリ
ッシュ・ハートビートを、彼らの音楽に接する際の新たな視点すれば、新たなビートルズ像が
見えてくる。
引用文献
1. Miller, Kerby and Paul Wagner, Out of Ireland: The Story of Irish Emigration to America
(London: Roberts Rinehart Publishers, 1977) p.11.
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Appendix 1
Let It Be
When I find myself in times of trouble
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom
Let it be
And in my hour of darkness
She is standing right in front of me
Speaking words of wisdom
Let it be
*
Let it be ×4
Whisper words of wisdom, let it be
And when the broken hearted people
Living in the world agree
There will be an answer, let it be
For though they may be parted
There is still a chance that they will see
There will be an answer, let it be
**
Let it be ×4
Yeah, there will be an answer, let it be
Repeat* ×2
And when the night is cloudy
There is still a light that shines on me
Shine until tomorrow, let it be
I wake up to the sound of music
Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom, let it be
Repeat**
Repeat*
5
Fly UP