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業界の未来を担う人材の確保は至上命題

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業界の未来を担う人材の確保は至上命題
特集
業界の未来を担う人材の確保は至上命題
1億2,589万1,742人 ー。 こ れ は、
る と、2015年 の 総 整 備 売 上 高 は5兆
一方で整備士の給与は年々上昇傾向
総務省が発表した今年1月1日時点の
5,133億円で前年比0.1%減とほぼ横ば
にはあるものの、他の自動車関連業種
住民基本台帳に基づく人口動態調査の
いの結果となったが、整備士数は前年
と比較すると労働時間は平均を上回る
結果である。国内の人口は前年に比べ
比0.7%減の339,999人となった。整備
も、給与水準は大きく平均を下回って
約27万人(0.2%)減と7年連続で減少
士は2011年以降4年連続で減少してお
おり、整備士の労働環境が改善された
し、その減少幅は過去最大。さらに死
り、年々整備士1人当たりの業務量が
とは言いがたい。
亡者数が出生数を上回る「自然減」は
増加していることが予想される(グラ
国土交通省はこうした緊急事態を踏
9年連続で拡大し、いよいよ日本の人
フ4)。
まえ、2015年6月∼ 2016年4月にかけ
口減少は現実味を帯びてきた。
人口減はあらゆる方面に影響を与え
る。経済成長、産業の発展、社会保障、
グラフ1 整備士不足の現状
地域活動など、その大きさは計り知れ
■不足で支障をきたす ■不足であるが影響は少ない ■不足状態にない ■不足
ない。少子高齢化社会と呼ばれて久し
い我が国だが、その弊害は車体修理業
界にも及んでいる。
日本自動車整備振興会連合会(日整
連)が行った実態調査によると、整備
工場の半数近くが「整備士不足」と回
答。専業でも8.7%、ディーラーに至
っては14.9%が人材不足で業務に支障
全体
10.9
専・兼業
8.7
14.9
自家
14.8
0
37.0
45.2
31.2
ディーラー
をきたす、と訴える(グラフ1)。そ
※出典:国土交通省「自動車整備人材の確保・育成に関する検討会資料」
54.3
48.3
5.8
28.3
41.2
25
6.9
8.5
31.0
50
13.0
75
100
(%)
の一方で、自動車整備学校の入学者数
は10年間で半減(グラフ2)。事業者
全体の約2割、専業工場では約4割が
グラフ2 専門学校入学者数とJAMCA加盟校入学者数の推移
人材を採用できなかったと回答してお
24 万人
19 万人
り、ディーラーでさえ8.9%は「採用
22 万人
17 万人
できなかった」
、44.3%が「一部採用
できたが不足している」と嘆く有様で
20 万人
15 万人
専門学校入学者数
ある。その結果、整備要員の平均年齢
18 万人
13 万人
は上昇の一途を辿り(グラフ3)、ま
16 万人
11 万人
さに「一寸先は闇」である。
特に問題視されているのは整備士不
足による、1人当たりの業務量の増加
である。日整連が公開する「自動車分
9 千人
14 万人
12 万人
10 万人
JAMCA入学者数
7 千人
2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
5 千人
(年)
解整備業の実態調査結果の概要」によ
出典:JAMCA 全国自動車大学校・整備専門学校協会資料
26
ボデーショップレポート 2016 年 11 月号
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2016/10/04 13:24
特集
嶋原隆太郎・学生部副課長
28
五感を刺激する体験型イベントと
手厚いサポートで
未来の技術者を育成
トヨタ東京自動車大学校(東京都八王子市)
トヨタ東京自動車大学校は日本自動
さらに、「子どものころから車の存
るよう呼びかけているため、この数年
車学校(現:トヨタドライビングスク
在を身近に感じてほしい」との思いか
の早期退職率はゼロに等しい」。
ール東京)に整備科が創設されて以
ら、カーメーカーとタイアップした子
五感を刺激する体験型イベントを通
来、トヨタ直営の自動車技術教育機関
ども向けワークショップをショッピン
して未来の技術者たちを育て、卒業後
と し て60年 以 上 に わ た っ て 累 計
グモールなどで行っている。「タイヤ
も充実のフォロー体制を敷く同校は、
23,000人以上の人材を業界に輩出して
の取り付けや展示車両の清掃体験など
今後も業界の人材育成に貢献していく。
きた。
を通して探究心や好奇心を育み、未来
過去5年間の入学者数は4年制の1級
のエンジニアやメカニックたちを育成
自動車科が100人前後、2年制の自動
する」ことを目的としており、今後も
車整備科が200 ∼ 300人程度で推移し
継続して実施する方針である。
ている。自動車整備科修了後は上級課
卒業後に即戦力として活躍できる人
程に進学でき、その中でも鈑金塗装や
材を育成するため、同校ではトヨタの
故障診断などの技術を学べるボデーク
サービス技能検定に係る授業を展開
ラフト科は過去5年間、定員以上の応
し、合格率は100%を誇る。「ただ資
募がある。
格を取得するのではなく、卒業後に資
同校では入学者確保のために、授業
格を活用するための授業もカリキュラ
見学や施設見学のほかに体験型のオー
ムに組んでいる」。
プンキャンパスを積極的に開催。「オ
就職についてはトヨタ系ディーラー
ートサロン展示車両やエアブラシを使
以外にも全国の企業から求人があり、
った作品を展示したり、塗装体験イベ
2016年卒業生の就職率は100%。在学
ントなどを実施することで、高校生の
中はもちろん卒業後も仕事に関する相
心をつかんでいる」(嶋原隆太郎・学
談受付や就職の斡旋をするなど、手厚
生部副課長)。また、高校での模擬授
いサポート体制が整っている。「早期
業も定期的に実施しており、近年はト
離職を防ぐため、各就職先とは勤務の
ヨタ・ミライを使った水素に関する講
様子などの情報交換を密にしている。
義が人気を博している。
学生側にも困った時にはすぐ相談に来
ボデークラフト科の授業風景
オートサロン2016の展示車両
業界を背負う
「整備女子」たち
同校には毎年10名前後の女子学生が
入学しており、新しい知識や技術を習
得するために日々勉学に励んでいる。
彼女たちは何を思い、どんな将来を描
いているのか。ボデークラフト科に在
籍する2人の女子学生に話を聞いた。
向山真綺氏(右)、古川純奈氏
向山氏は子どものころからの車好きで、休日
も愛車のカスタムにいそしむなど、その愛は深
い。
「前々から鈑金塗装に興味があり、中学生の
ころから仕事にしたいと思うようになった」と
話す。
授業は「知らないことばかりで毎日が貴重な
体験」であり、特にハンマリングやスプレーテ
クニックに強い関心を抱いている。来春からは
ディーラーでの勤務が内定しており、
「まずは整
備から学び、車に関する知識を深めたい」と意
気込む。現場での活躍が大いに期待される。
知人からの紹介で同校を知ったという古川氏
は「オートサロンに出展できることが入学の決
め手だった」と語る。
数ある授業の中でも塗装作業にもっとも興味
を惹かれており、「同じ作業でも二度と同じ色に
ならないところが面白い」と目を輝かせる。現
在はオートサロン出展に向け、製作活動に励む。
来春にはトヨタ系の整備工場に入社予定であり、
「女性目線を大切にして仕事に取り組みたい」と
笑顔を見せた。
ボデーショップレポート 2016 年 11 月号
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