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トップに聞く - 日本鉄道車輌工業会

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トップに聞く - 日本鉄道車輌工業会
新年のご挨拶 / トップに聞く
トップに聞く
新日鐵住金株式会社
常務取締役 ( 交通産機品事業部長 )
なかた
まち
仲田 摩智
さ
ん
今回は、東京都千代田区丸の内の新日鐵住金株式会社に仲田常務取締役をお訪ねし、インタ
ビューさせていただきました。
インタビューの要旨をご理解いただく上で参考にしていただきたく、始めに仲田常務取締役の
ご経歴を簡単にご紹介いたします。
仲田常務取締役は 1981 年 住友金属工業 ( 株 ) に入社され、2002 年 交通産機品カンパニー製
鋼所鉄道台車製造部長、2011 年 常務執行役員 ( 交通産機品カンパニー製鋼所長兼チタン事業本
部副本部長 )、2012 年 新日本製鐵 ( 株 ) との経営統合により新日鐵住金 ( 株 ) となり、執行役員 ( 交
通産機品事業部製鋼所長 ) を歴任され、2015 年 常務取締役 ( 交通産機品事業部長 ) にご就任され
ました。
インタビューを通じて、経営方針、事業展開、鉄車工への期待など幅広くお考えを伺いました。
( インタビュア 鉄車工常務理事 山中 秀一 )
インタビュア (Q) 本日は、お忙しい時にも拘
らず、インタビューにお時間を割いていただ
き、ありがとうございます。
早速ですが、2014 年度は会社全体で増収・
増益の業績を上げられましたが、鉄道車両品
分野の 2014 年度の実績と 2015 年度の見通
しについてお聞かせいただけますでしょうか。
仲田常務 交通産機品事業部としても 2014
年度の販売、生産は好調で、2013 年度を大
幅に上回る実績でした。2015 年度も交通産
機品事業は総じて堅調で、鉄道車両品もほぼ
また、その動向を踏まえ、事業拡大に向け
前期並みの売上高を確保出来る見込みです。
た戦略・施策について差し支えのない範囲で
今年度上期の製鋼所の車輪生産はほぼフル操
お聞かせください。
業。台車についても、操舵台車や動揺防止制
御装置といった高付加価値品を中心にハイレ
仲田常務 北陸、北海道新幹線等の新線需要
ベルな生産、販売が継続する見込みです。
は一段落しましたが、今後、2020 年の東京
オリンピックに向けて、底堅い需要が見込ま
インタビュア (Q) 最近の国内の鉄道車両品の
れます。また、観光列車等の乗り心地に着目
需要動向について、どのように見ておられる
した新しいジャンルの車両や、低騒音、快適
でしょうか。
性、高性能化へのニーズが高まっています。
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当社としては「お客様に評価される製品」の
長期的には堅調な需要の増加が見込まれます。
拡販に引き続き注力したいと考えています。
現在、当社では高荷重貨車用に高硬度車輪の
具体的には先ほど申し上げた、乗り心地の向
開発を進めており、米国を始めとして、カナ
上を図るための動揺防止制御装置や、曲線通
ダや豪州、ブラジル等のお客様にその長寿命
過性能を向上させる空気ばね式車体傾斜制御
化メリットが認識されつつあります。
装置、低騒音駆動装置等のお客様のニーズに
当社は日米両拠点から、北米を中心に、こ
沿った製品の更なる拡販です。
のようなハイエンドな製品を中心とした、拡
販活動を行っていきたいと考えています。
動揺防止制御装置
スタンダード・スティール社全景
インタビュア (Q) 本年 4 月、グループ会社の
インタビュア (Q) 御社は 2011 年に米国の
鉄道関連事業を統合再編され、鉄道エンジニ
鍛造車輪・車軸のトップメーカであるスタン
アリング会社として、日鉄住金レールウェイ
ダード・スティール社を買収され、日米 2 拠
テクノス ( 株 ) を設立されました。統合再編の
点での製造・販売体制を確立されました。海
目的、新会社の事業展開、方針などについて
外の市場における事業拡大・新市場開拓など
お聞かせください。
の戦略・施策について差し支えのない範囲で
お聞かせください。
仲田常務 交通産機品事業部と一体となって
車両部品の供給からメンテナンスのサポート
仲田常務 スタンダード・スティール社へは、
まで一貫して取り組むことを目的に統合再編
本年 2 月、真空脱ガス設備や回転鍛造プレス
しました。新会社設立後、半年が経過しまし
の導入といった設備投資を行いました。操業
たが、堅調な受注、技術開発の促進等、着実
方法が変わったこともあり、立ち上げに時間
に成果が出ています。統合会社では、本年開
を要しましたが、鋼の清浄度向上や、車輪の
業した北陸新幹線を始めとした、新幹線の検
高精度化といった効果を期待通り発揮しつつ
修工場等に輪軸・駆動装置を検修する設備を
あります。当社の海外の主要市場である米国
納入しています。また、海外の車両メンテナ
では、リーマンショック以降大幅に減少した
ンス工場へのメンテナンス装置納入をこれま
貨車の新造両数、輸送量が今年前半に再ピー
でも進めてきましたが、今後は人員を強化し
クを迎えました。今年後半から、石炭等の輸
て、拡販に取り組んでいきたいと思っていま
送量が落ち、調整局面に入っていますが、中
す。
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PQ モニタリング台車による監視システム
は 3 割低減され、車輪の軋り音も大幅に改善
に代表される鉄道関係ソリューションについ
されました。この他に両軸タイプの操舵台車
ても、当社の関係者と共同して商品化に取り
も開発しており、12 月に開業した仙台市交
組んでいて、手ごたえを感じています。
通局殿の東西線で、リニアメトロとして初め
て御採用いただいています。
インタビュア (Q) 御社は 2012 年に新日本
製鐵 ( 株 ) と住友金属工業 ( 株 ) が経営統合され
て新日鐵住金 ( 株 ) となり、軌条 ( レール ) と車
PQ モニタリング台車
インタビュア (Q) 御社は公益社団法人発明協
輪を一社で製造されておられます。技術、事
業拡大などにおける統合の効果についてお聞
かせください 。
会による平成 27 年度全国発明表彰において、
東京地下鉄 ( 株 ) 殿と共同開発した「鉄道車両
仲田常務 お客様でも軌条と車輪は異なる
用の操舵台車の開発」で「発明賞」を受賞さ
扱いをされることがよくあります。統合前も
れました。発明の背景、当該台車の特徴・性能、
我々は共同で研究する機会はありましたが、
今後の需要見通しなどについてお聞かせくだ
異なる組織の為、長期にわたる継続的な取り
さい。また、標準化など今後の台車の技術開
組みは出来ていませんでした。しかし、同じ
発動向についてお考えがあればお聞かせくだ
会社になった為、軌条、車輪両部隊が、実際
さい。
の使用条件等を加味し、それぞれの材質・形
状の変更がお客様にどういうメリットになる
仲田常務 一般的に鉄道台車では、走行安定
のかを研究しています。今後はこの成果を基
性確保のために、輪軸は台車枠に固定されて
に、軌条・車輪双方でご提案をしていきたい
います。その結果、曲線通過時でもレールに
と考えています。
対し輪軸は平行であり、横圧という大きな左
右方向の力や騒音が発生しています。操舵台
インタビュア (Q) 御社は台車、車輪、車軸
車は、曲線通過時にレールの曲線に沿うよう
など鉄道車両の安全に関わる駆動系の重要装
に、車軸の位置を調整する操舵装置を備えて
置・部品を製造・販売されておられます。駆
いる台車です。従来、この操舵機構は複雑な
動装置メーカとして、技術開発、品質の向上
為、実用化が限られてきましたが、今回、台
などのお取り組みについて差し支えのない範
車の 1 軸にのみ操舵機構をつけることで、比
囲でお聞かせください。
較的簡易な構造とし、東京メトロ殿の銀座線
1000 系で御採用いただいたものです。横圧
仲田常務 駆動装置については、静粛性や振
動特性の向上が望まれます。従来、それらを
評価するには、車両完成後、実際の営業路線
を使った現車走行試験を行う以外に方法が無
く、精度良く駆動装置単体の評価をすること
が出来ませんでした。そこでまず、ベンチで
操舵台車
音源、音響特性を高精度で調査できるように、
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半無響音室負荷回転試験機を導入しました。
います。今はぶどうです。将来はぶどう酒づ
この試験機を用いることで、騒音の発生源
くりにまで発展させたいです。
を正確に捉える事が出来、歯面形状の工夫に
よって騒音を低減した駆動装置を短期間で開
発することに成功しました。この低騒音駆動
装置は、現在、関西地区のお客様を中心に御
採用いただいていますが、今後は全国のお客
様に展開していくつもりです。
インタビュア (Q) 最後になりますが、仲田様
には鉄車工の理事として鉄車工の活動にご支
援いただいております。そうしたお立場から、
鉄車工として果たすべき役割につきまして、
忌憚の無いご意見をお聞かせください。
仲田常務 日本の鉄道車両工業は、その個々
半無響音室負荷回転試験機
の技術・品質の高さは世界でもトップクラス
です。ただ、総合力という点では、欧州や中
インタビュア (Q) お立場上、ご多忙な日々を
国メーカと比べて少し弱い部分もあることを
お過ごしかと思います。気分転換などはどの
感じています。例えば、規格の整備等ももっ
様にされておいででしょうか。
と必要と思います。そういう意味ではこの国
際化の時代、鉄車工に期待される、また担う
仲田常務 もともと「ものをつくる」ことが
べき役割はますます大きくなっていると思い
好きです。その延長線上で、気分転換という
ます。私も理事として、その役割を牽引して
わけでもありませんが、自宅で果樹を育てて
いく一翼を担えればと思っています。
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