持続可能な開発 - 日本オペレーションズ・リサーチ学会

1−E−10
2000年度日本オペレーションズ・リサーチ学会
秋季研究発表会
地球温暖化防止
一持続可能な開発−
小田中 敏男
東京都立科学技術大学
ODANAKATbshio
AMEMIYATakashi
雨宮 孝
界域を示している。（松岡、1997）3）〃
1．はしがき
最近「環境と開発」に代わる新しい概念として、
「持続可能な開発」という言葉が用いられるように
このような限界域を「安全排出コリダー」と呼び、
このコリダーの中で、或る適当な経路を求めるべき
なった。これは「将来の世代の必要性を満たす能力
だ、というのが生態学的な持続可能性の意味すると
を害することなく、現在の世代がその必要性を満た
ころであるとした。
すことができるような開発」と定義されている。こ
次節にその理論的基礎を示す。
の意味は地球的環境の実質的改善は経済社会開発と
一体となった合理的な環境保全策を追求する必要が
3 確率制御過程
あるということである。しかし、有限な資源を枯渇
安全排出コリダーの基礎となるある制御過程を議論
させたり、再生可能な資源の再生産を不可能にする
する。
ような過度の利用、開発は許されぬ。あくまでも生
時点tにおける大気中の二酸化炭素の量をV（りとす
態系を破壌することなく、子々孫々の代までこれを
る。
享受し続けることができる範囲内で、生活の物的、
これが状態変数であり、Ⅴ（0）＝Cとする。
時点tにおいて大気中に排出される二酸化炭素の
質的改善を図るよう努力すべきでなければならぬと
量をⅤ（り，これは制御変数でレ（如Aとする。時点t
いうことである。
地球温暖化の研究では、これまで種々の接近が図
られ、大きな論争を巻き起こしている。これは持続
における確率変数をS（りとする状態方程式は
V（J＋1）EV（り＋V（り−〝叩）＋∫（り
亡αⅥり＋γ（り＋∫（り，α三ト〃
可能な発展概念を経済学的に処理するか、または生
態学的に処理するかによって結果が異なって来る。
（l）
となる。
経済学的な処理をする論文は、図1に示すように、
有限時限又は無限時限におけるある確率関数を最
将来の大気中の二酸化炭素濃度を550ppmvに安定化
小にする問題を考えよう。式で書けば、Pは確率と
することを目標とする場合、人為政策の二酸化炭素
して
の排出量を削減する経路はいくつも存在することを
示した。
J（りき門（だ禁V（り≧α（り）
1）2ノ
（2）
Or（minV（り≦β（り））
0≦l≦T
と書ける。ただ．制約条件は
ヱ 安全排出コリダー（回廊）
St∝ker等は経済学的持続可能性は、あくまでも生態
tv（相≦互
（3）
学的持続可能性の許容の範囲内で成り立つことを示
した。
と書ける。離散的に書けば、初期条件
ユ）
ん＿1（C）＝1，（C≧α，C≦β）
図2は10年当たりの許容気温上昇を0．2℃以内と
＝0，（β＜Cくα）
した場合に、経済先進国の二酸化炭素の排出許容限
−122−
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（4）
かにしたか、経済セミナー、515、16−21．
として
（C≧α（り，C≦β（り）
ム（C）＝1
5）T．Odanaka，（1990），PynamicManagementDecidons
忠＝膿りw￠（岬・￡。＿W榊お
andS加hasdcCon鵬1Processes，WorldScientific．
A＿“
・ぷ：∵：ん（W＋∫）榊明
︵＞∈︵l︹一︶曇
（β（りくCくα（り）
（5）
ここにw＝C＋Ⅴ・この式より政策（V上）と関数
蔓
扶（C））は決定される。
単的政策は
vたコA
（C＋貫≦▽上）
︵−．−︵り一こ〓l二≡萱“
＝Vた−C （C≦∇上≦C＋A）
（6）
コー（C−ち）（C一元≦ち≦C）
＝一
（屯≦C−A）
となる。
1
1
1
（7）
1
︵U︼じ〓−二≡≡一−諜
f：；’二（1−ん（伸上十V））頼）dvヒ0
0 ∩り り 一lU
り ハリ O ハU
6 一4 ︵ソ︶ 0
ここに∇たは次の方程式の単一解である。ゴ）
4 議論
2一冊）2050 21りl）2150 22Ul）2250 2300年
ここでは
ん＿1（C）コ1，（C≧α，C≦β）
図．1異なった二酸化炭素排出削減の経路
＝0，（β＜Cくα）
（Wigl町etd．1996）．
としたが、確率的な場合又はファジィ的場合は今
参考文献
11・−・・−ゝ′
Ora血0甲b血Cq00n以血adons，Nalu℃，379，240・
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243．
1リ！州2Uりり
2）S加her，T．F．andSchmith占s，A．（1997），lmfluenceof
Cq E血s血nR如SOnS血山中Or血enmoh血Ie
21川）咋
図．2 経済先進国の安全排出コリダー
（松岡、1997）．
C正c山ado叫Na山陀，338，S62−865．
3）松岡鼠、（1997）、地球温暖化一科学の最前線、
環境（環境創造研究センター発行）、79、3−9．
声
4）森田恒幸、（1997）、温暖化対策モデルは何を明ら
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ー123−
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2
l）Wiglqy，To，Richels，RJandEdmonds，）（1996），
3
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後の問題として残されている。