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調査結果 - 相模原市立環境情報センター
3.2 調査結果 3.2.1 相模原市の哺乳類相(文献調査) (1)相模原市における哺乳類の記録種 相模原市の哺乳類については、以下の文献により整理した。 文献1:「第2回自然環境保全基礎調査 神奈川県動植物分布図」(環境庁,1981) 文献2:「神奈川県地域環境評価書−県央地域−」(神奈川県環境部,1992) 文献3:「かながわの鳥と獣」(神奈川県環境部,1992) 文献4:「相模原の動物生息状況等調査報告書」(相模原市教育委員会,1986) 文献5:「相模原の動物生息状況調査報告書」(相模原市動物調査委員会,1984) 文献6:「平成10年度一級河川道保川環境調査委託」(相模原市,1999) 文献7:「道保川アメニティー計画基礎調査報告書」(相模原市,1988) 上記の文献によると、相模原市では計5目8科12種の哺乳類の生息が確認されている。 相模原市の哺乳類リストを表4.3.1に示す。 文献4によれば、資料調査により市域に生息する大型動物はイノシシ、アナグマ、タ ヌキ、ハクビシン、キツネ、テン、イタチ、ノウサギ、リスなどの生息が記載されてお り、大部分が大島河原での確認とされている。このうちイノシシ、アナグマについては すでに絶滅。タヌキ、ハクビシン、イタチ、リスについては、現在でも大島河原、当麻 山無量光寺、下九沢、大野台などであるが、個体数、生息場所は限定されている。キツ ネについては大島河原で生息しており、個体数は増えているとの状況が報じられている。 また、文献1によれと、中型ほ乳類のタヌキ、イタチ、ノウサギ、ハクビシンが城山 ダムから田名の塩田付近までの地域と、上溝から下溝にかけての地域に生息する。また、 下磯部から相模川左岸に帯状に広がる低地にはタヌキ、イタチ、ノウサギなどが生息す る。丹沢山地でも希少な種であるテンは1989年に西大沼で偶発的に確認された。 神奈川県における哺乳類の分布メッシュ図(「第2回自然環境保全基礎調査 神奈川 県動植物分布図(環境庁,1981)」による)を図4.3.1に示す。市域に隣接する丹沢山地 や小仏山地ではアナグマ、ニホンザル、ニホンシカなどが生息しているが、相模原市内 での生息の記録はほとんどない。 以上のように、相模原市内には大規模な樹林環境が存在しないことから、大型哺乳類 はの生息は考えられない。生息可能な哺乳類はタヌキ以下の中型哺乳類や小型哺乳類で あり、過去の文献による記録ではこれを裏付ける状況となっている。また、現状の市域 の環境を考えると、台地上では市街地と小規模な農耕地が大半を占める状況から、生息 する哺乳類は個体数の上でも少ないことが推測される。一方、相模川や道保川沿いの河 岸段丘崖では連続的に斜面樹林が連続的に残地しており、わずかながら動物の良好な生 育環境となっている。 相模原市で確認される貴重種は法的あるいは国指定の天然記念物等の生息は認められ ないが、第2回自然環境保全基礎調査(環境庁,1981)の調査対象種としてタヌキ、キ ツネの2種、神奈川県レッドデータ調査報告書(神奈川県立生命の星・地球博物館,19 95)の減少種及び地域環境評価書の一級種、二級種としてムササビ、カヤネズミ、ハク ビシンがあげられる。 表4.3.1 目 科 モグラ モグラ コウモリ ウサギ ネズミ ネコ 種 ヒミズ アズマモグラ ヒナコウモリ アブラコウモリ ウサギ ノウサギ リス ムササビ ネズミ アカネズミ カヤネズミ イヌ タヌキ キツネ イタチ テン イタチ ジャコウネコ ハクビシン 5目8科12種 相模原哺乳類リスト(文献調査) 文献 文献 文献 1 2 3 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 8 6 8 a b c 選定基準 e f g h 減少種 二級種 減少種 二級種 調査対象 調査対象 減少種 減少種 一級種 一級種 二級種 1文 部 川 奈 神 ( 央 県 − 書 価 評 境 環 域 地 : 1 献 92) 文献2:神奈川の鳥と獣(相模原市教育委員会1992)(分布情報から確認地が市外であることが明らかな場合は除いた) 文献3:相模原の動物生息状況等調査報告書(相模原市教育委員会1986) 選定基準 a:種の保存法 b:国および県指定天然記念物 c:ほ乳類レッドリスト(環境庁1998)による絶滅危惧種IA類(CR)、絶滅危惧種IB類(EN)、絶滅危惧種Ⅱ類(VU)、 準絶滅危惧種(NT)、情報不足(DD) d:第1回自然環境保全基礎調査(環境庁1976)の主要野生動物 e:第2回自然環境保全基礎調査 (環境庁1977)の調査対象種 f:神奈川県レッドデータ生物調査報告書(神奈川県生命の星・地球博物館1995)による危惧種、減少種等 g:地域環境評価書−県央地域−(神奈川県環境部1992)による一級種、二級種 ※分類は「日本産野生生物目録(脊椎動物編)」(環境庁編1993)に準じた。 図4.3.1 哺乳類の分布メッシュ図(1) 出典:「第2回自然環境保全基礎調査 神奈川県動植物分布図(環境庁,1981)」 図4.3.1 哺乳類の分布メッシュ図(2) 出典:「第2回自然環境保全基礎調査 神奈川県動植物分布図(環境庁,1981)」 3.2.2 現地調査における哺乳類の記録 (1)生息確認種 現地調査及び聞き取り調査により、6目9科14種(キツネ、ネズミ類sp.を除く)の哺乳 類を記録した。表4.3.2に哺乳類生息確認種一覧を示す。 現地調査による確認種は、アズマモグラ、アブラコウモリ、ノウサギ、ムササビ、ア カネズミ、ハタネズミ、ドブネズミ、クマネズミ、アライグマ、タヌキ、イタチ、ハク ビシンの 6目 9科14種であった。また、現地調査時の聞き取りにより、ニホンザル、ム ササビ、カヤネズミ、ハクビシンの4種が聞き取りにより確認された。また、キツネの情 報もあったが、数年前の状況であり、現在はほとんどみられないと判断されたことから、 本調査のリストの種数からは除外した。 上記の生息確認種の状況から、相模原市のように大規模な樹林環境が少ないため、大 型哺乳類の生息は不可能である。したがって、生息可能な哺乳類は、タヌキ以下の中型 哺乳類と小型哺乳類であり、前出の文献による記録を裏付けるものである。 また、相模原台地上の市域の大部分を占める市街地では、生息する哺乳類の種類、生 息数はきわめて少ないものと予測される。一方、相模川地域や斜面樹林を含む段丘地域 では、樹林環境や水辺が連続的に残存することから、種類、生息数は少ないものの哺乳 類が生息可能な地域といえる。 表4.3.2 目 モグラ コウモリ サル ウサギ ネズミ ネコ 科 モグラ ヒナコウモリ オナガザル ウサギ リス ネズミ (ネズミ亜科) アライグマ イヌ 6目 イタチ ジャコウネコ 9科 哺乳類生息確認種一覧 種 名 1.アズマモグラ 2.アブラコウモリ 3.ニホンザル 4.ノウサギ 5.ムササビ 6.カヤネズミ 7.アカネズミ 8.ハタネズミ 9.ドブネズミ 10.クマネズミ 11.ネズミ類sp. 12.アライグマ 13.タヌキ 14.キツネ 15.イタチ 16.ハクビシン 14種 現地確認 ● ● ● ● 聞き取り ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 10種 ● ● ● ● ● 3種 確認状況 塚、坑道 目撃 聞き取り 目撃、糞 巣、皮剥 聞き取り 捕獲 坑道 足跡 足跡 足跡 足跡 足跡、糞 聞き取り 足跡、糞 足跡 *1 分類 、種 名 等 に つ い て は 、「 日 本 産 野 生 生 物 目 録 」 脊 椎 動 物 編 ( 環 境 庁 ,1993) に 従 っ た 。 *2 備 考 の W,Rは 神 奈 川 県 レッドデータ生 物 調 査 報 告 書 ( 神 奈 川 県 立 生 命 の 星 ・地 球 博 物 館 ,1995) における ステ ー タス(生 息 状 況 ) を示す 。 w: 普通 R: 少 な い L: 局地的 *3 キツネ及 び ネズミ 類 sp. に つ い て は 生 息 情 報 が 確 実 で な い た め 種 数 に は 含 ん で い な い 。 備考 W W R W − R W − W W − − W W R W (2) 各種の確認状況 以下に各種の確認状況について概説する。 なお、本調査では道保川沿いの調査対象しておらず本地域が空白とならないように、近 年の調査である「平成10年度一級河川道保川環境調査委託」(相模原市,1999)の中で 実施された調査結果を引用し、補完した。 ①モグラ目 モグラ目ではアズマモグラを確認した。本種の確認例は多く、特に市域では相模川沿 いの耕作地や河川敷で確認した。また、公園内の芝地などでも広く分布しているものと 考えられる。確認状況は塚や坑道による確認であった。 本調査では、相模川沿いのSA-1∼SA-4までの各地区、境川沿いのSK-1、SK-2の各地区 及びD-3大野台・西大沼地区などの都市部の公園に至るまで分布を確認した。 ②コウモリ目 コウモリ目ではアブラコウモリを確認した。本種は比較的人為的な環境下でも生息し、 都市部でも夕刻空中を飛び回る姿が確認できる。本市域でも広く分布してると思われる。 本調査では、相模川沿いのSA-1(大島地区大島河原)、SA-2(大島地区神沢)や境川 沿いのSK-2(鵜野森地区)などで飛翔個体を目撃により確認した。 ③サル目 ニホンザルは、聞き取りによる情報であり、本調査では実際に確認していない。聞き 取り情報によれば、春季に清水地域、冬季に大島の中州で群で目撃したとのことである。 相模川沿いでは稀に出没するとのことで、おそらく津久井方面に生息する個体群が移 動してきたものと考えられる。 ④ウサギ目 ノウサギは生体目撃及び糞により確認した。確認地区は相模川沿いのSA-2(大島地区 神沢)とSA-3(田名地区)及び勝坂遺跡周辺で確認したが、確認例は少なく、本市域で の本種の分布は、相模川沿い及び勝坂遺跡などまとまった樹林環境と草地がある場所に 限られると考えられる。 ⑤ネズミ目 ネズミ目は、カヤネズミ、アカネズミ、ハタネズミ、ドブネズミ、クマネズミの5種 を確認した。アカネズミは市域の代表地点3地区で捕獲調査により確認した。カヤネズ ミは聞き取りによる情報から、大島の中州の水田で巣を確認しているとのことであった。 ハタネズミは、SA-3(田名地区)の水田脇の水路の土手で坑道を確認した。ドブネズ ミ及びクマネズミはSA-2(大島地区神沢)で目撃及び足跡により確認した。 ⑥ネコ目 ネコ目はアライグマ、タヌキ、イタチ、ハクビシンの4種を確認した。 タヌキは、足跡もしくは糞による確認で、相模川沿いの各地区で比較的普通に確認し ており、特にSA-1(大島地区)、SA-4(磯部地区)で確認例が多く、相模川沿いでは広 く分布・生息しているものと考えられる。また、河岸段丘部の各地区では確認例は少な いものの、緑地のまとまった場所で細々と生息しているものと思われる。 一方、境川沿いでは、聞き取りによる確認であったが、2・3年前の目撃例で現在は ほとんど見ないとのことであり、環境からみて極めて生息状況は悪化してきているもの と考えられる。 イタチは、目撃、足跡及び糞により確認した。本種は水辺を好む種であり、本調査で も相模川沿いのSA-3(田名地区)、SA-4(当麻地区)、姥川の上流などの水辺で確認し た。 アライグマ、ハクビシンについては、神沢の河川敷で足跡により確認した。アライグ マは北米産の中型哺乳類で、近年、本邦にペットとして持ち込まれたものが、各地で野 生化し、分布を広げている状況にある。また、ハクビシンも同様に全国的に分布を広げ ている種でもあり、今後の生息・分布状況に注目される。 (3) 捕獲調査による小型哺乳類の確認状況 小型哺乳類特にネズミ類の生息状況を確認するため、調査地区のうちSA-2(大島地区 神沢)、SA-4(当麻地区)及び境川沿いのSK-2(鵜野森地区)の3箇所ではじき罠によ る捕獲調査を実施した。 調査の結果、捕獲されたのはすべてアカネズミであった。地点別にはSA-2で1個体、 SA-4で6個体、境川沿いのSK-2では捕獲確認はなかった。 表4.3.3には捕獲したネズミ類の各部の計測結果を示す。 表4.3.3 個体NO 種 名 回収日 地 小型哺乳類捕獲調査結果 点 餌 性別 全長 尾長 後足長 耳長 1 アカネズミ 5/18 SA-2 ピーナッツ ♂ 121 41 21 12 2 アカネズミ 5/18 SA-4 ピーナッツ ♀ 171 55 21 15 3 アカネズミ 5/18 SA-4 ピーナッツ ♂ 180 89 21 16 4 アカネズミ 5/18 SA-4 ピーナッツ ♀ 208 104 21 14 5 アカネズミ 5/18 SA-4 ピーナッツ ♂ 210 92 22 15 6 アカネズミ 5/18 SA-4 ピーナッツ ♂ 199 92 21 15 7 アカネズミ 5/18 SA-4 ピーナッツ 不明 192 82 21 15 3.2.3 注目すべき哺乳類 注目すべき哺乳類の一覧を表4.3.4に示す。 生息確認種のうち、注目される種に該当する哺乳類は、ニホンザル、ムササビ、カヤ ネズミ、タヌキ、イタチ、ハクビシンの6種が挙げられた。 なお、キツネは聞き取りによる情報は得られたが、数年前の目撃例であり、確実な生 息までは至っていないことから、注目種としては取り扱わないことした。 a.文化財保護法(文化庁,1950)における天然記念物、特別天然記念物 b.文化財保護条例(新潟県指定天然記念物) c.絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(環境庁,1994)におけ る国内希少野生動植物種、国際希少野生動植物種 d.哺乳類レッドリスト(環境庁,1998)における絶滅危惧ⅠA類,絶滅危惧ⅠB類, 絶滅危惧Ⅱ類,準絶滅危惧種,情報不足,絶滅のおそれのある地域個体群 e.自然環境保全調査報告書(第1回緑の国勢調査)(環境庁,1976)における主要 野生動物 f.自然環境保全基礎調査報告書(第2回緑の国勢調査)(環境庁,1981)における 調査対象種 g.神奈川県レッドデータ生物調査報告書(1995)における減少種、希少種 h.神奈川県地域環境評価書−県央地域−(神奈川県環境部1992)による一級種、二級 種 表4.3.4 目 科 種 サル オナガザル ニホンザル ネズミ リス ネコ 注目すべき哺乳類一覧 カテゴリー g h ムササビ 減少種 二級種 ネズミ カヤネズミ 減少種 二級種 イヌ タヌキ イタチ イタチ 一級種 ジャコウネコ ハクビシン 二級種 3目6科6種 a b c d e f 地 ● ● ● 0 0 0 1 1 2 2 4